水平的相互作用が中学生の作文の質や情意面に及ぼす影響
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(2) 目 次. 第1章問題と目的 1.授業場面における2つの相互作用の違い 2.水平的相互作用に関する先行研究 3.作文産出過程におけるメタ認知の働き 4.学校教育における作文指導の課題 5.本研究と先行研究との違い 6.先行研究を基にした作文の評価 7.本研究の計画 8.臼的と仮説. 第2章 方法 1.対象 2.実験形態 3.実施時期 4.実験材料 5.実験手続き 6.作文テストの評定. 第3章 結果 1.作文テストの分析 2.評定値 3.分析. 1−12. 13−16. 17−26. (1) 作文評定得点(全項日) (2) 作文評定得点(構造・内容面) (3) 作文評定得点(形式・表記面). 4.作文意識調査アンケートの分析 (1) 質問項臼得点 (2) 自由記述. 5.授業での水平的相互作用場面. 第4章 考察 1.教授法と作文方略の獲得との関係 2.教授法と作文方略の定着との関係 3。水平的相互作用が作文授業の前後で情意面に及ぼす影響 4。先行研究との比較検討 5.水平的相互作用に関する示唆. 難辮. 第5章 文献. 27−33. 34−35 36一一58.
(3) 第1章 問題と圏的 1.授業場面における2つの相互作用の違い 霞本では、伝統的な学習形態として学級を単位とした一斉学習があ る。そこでは、1人の教師が学級に藤属する多数の子どもに対して授 業時聞内に多くの知識や技能を勤率的に伝達していき、同じ課題に対 して学級全体で考えることができる、しかしその反面、教師から子ど もへ一方向の知識伝達になり、画一的で子ども岡士の交流や子どもの 主体的な学びに結びつきにくいといった問題点もある。. 坂本(2006a)は、適切な学習方略を使い、学習活動を意識的に灘 ントロールしていくことが、学業成績と関連しているとしたうえで、メ タ認知能力を育成する指導の必要性を搬摘し、最近の教授学習研究のテ. ーマとして、噛己制御学習」、すなわち、学習者が積極的に自らの学習 に関与する学びの力をいかにして育成していくかを挙げている。また、. 坂本(2006b)は、学習は、環境のみによって規定されるものでも個 人の内部だけに生じるものでもなく、傭人と環境の分かちがたい状況の 中でのみ成立するという学習観の転換にともない、学習の共岡性が注冒 され、子どもどうしが、あるいは教師と子どもたちとが、学びあい、助. けあいながら、協同で知識を構成していく学びの形態である協同学習が 脚光をあびているとしている。. 平出・吉鍼(2000)によれば、授業場面で見られるような相互作用 をKar加pは垂直的相互作用(vertical i醜erac疑。のと水平的相互 作用(horizo航al i麟eractio鷺)の2つに大きく分類した。この分類 は、相互作用をするパートナーが自分と比べて癸達的に同じ水準にあ るのか、それとも上の水準にあるのかで分けたものである.垂直的相. 互作用は教師と子どもとの関係にあたるもので、教師主導になりやす く、知識や技能を一方的に伝達してしまうために相互作用が起こりに くい。前述の伝統的な授業は、垂直的相互作用による知識伝達型教授 である。一方、水平的相互作用は同じような知識や経験をもつ仲間岡. 士あるいは多様な価値観や考え方をもつ仲間同士が、問題や状況を共 有し、そこで学び合い影響し合いながら考え行動するもので、活発な 1.
(4) 相互作用が見られる。また、平由・吉田(2000)によると、Rogof£ は「自分の考えや意見を言葉で表現してみようという活動、そして自. 分の意図や考えを相手に分からせようという活発な言語的相互作用 が展開されることで、自分の頭のなかで考えていた行動のプランニン グと調整というメタ認知的なスキルの向上へとつながる。」としてい る。つまり、メタ認知能力を育成するには、子ども同士の水平的相互 作用は有効な教授法と考えられる。. 2.水平的相互作用に関する先行研究 水平的相互作用の研究の中で、丸野(1994)は子どもの相互作用に よる知識獲得に関する最近の動向として、子ども同士の相互作用と子 どもと大人との相互作用の差異、大人と子どもという知識の違いがあ. るベアリングと子ども同士という知識ぶ同程度のベアリングの相互 作用について概観し理論的に考察している。また、権・藤村(2004) は、算数の比例に関する文章題で児童の方賂レベルの差により、協同 の学習効果やペアの相互作用の様子が変化する研究を行った。. 水平的相互作用をとおして知識獲得を図った研究として、佐藤 (1996)は小学生の国語の読みの授業の中で、学級での対話をとおし. て作品の意喋世界を変容させていく授業を行った。心組(1999)は小. 学校5年生を対象に道徳レベルが異なるペアが共同で道徳的判断課 題について話し合うことによって、下位レベルの被験児の課題成績が. 伸びたことを明らかにする研究を行った。大暗・吉田(2002)は、作. 文学習でプランニングと推敲に焦点を当てて介入したことで相互作 用の質や情意面が変化した研究を行った。坂本・戸田(2004)は、作. 文のプランを構築する踪に2入のペアで協力して話し合うことによ って、文章を書くことが苦手な大学生の作文の質を向上させたメカニ ズムの研究を行った。そこで本研究では先行研究をふまえ、国語の授. 業における作文産出過程の中で、水平的相互作用が中学生の作文の質 や情意面にどのように影響を及ぼすのかに焦点をあてる。. 2.
(5) 3.作文産出過程におけるメタ認知の働き 正本(2001)によれば、メタ認知は「メタ認知知識とよばれる人の. 認知活動に関する知識とメタ認知制御とよばれる認知活動を統制す る過程という2つの下位過程からなり、相互に関連しあいながら認知 活動を統制する過程」と定義されている(FIGURE 1)。. メタ認知 メタ認知嗣御・認知活動のプランづく. メタ認知知識 Eどのような要因や方略 @が影響するのか E方略を、いつ、どのよ. @り. @(プランニング). E認知活動の監視と制御 @(モニタリング). @うに適用すればよい @のか. 1認ントロール. 監視. 認知・思考 竭濶. FIGURE 1 メタ認知プロセス. 坂本(2006)によれば、Kayes&Flowerは、書くという活動を「課 題状況」、「書き手の長期記憶」、「作文過程」の大きく3つに分けてい. る(FIG膿82)。さらに、「作文過程」には何をどのように伝えるかに. ついての「プランニング」、プラン内容を言葉に置き換えていく「翻. 訳」、書こうと意図したものと書かれたものを比べる「推敲」の3つ の下位の過程が組み込まれている。作文の苦手な生徒は、題材を決め て一旦書き始めると、全体の構成や流れを意識せず、自分の知ってい 3.
(6) ること、思いついたことをそのまま書き進めるという一方向の流れに なる。そして、書いた文章を読み返したり、読み手に伝わるのか意識 したりはしない傾向にある。作文の得意な生徒は、員標にあったプラ ンを立てているのか、文章がプランどおりに進んでいるのか、表記や 語句の用法は正しいのか、論理の展開の仕方は適切であるか、読み手 に効果的に伝わるようにしているかなど、書きながら常に読み返し、 書いている文章を書き直すなど、前へ進んだり後ろに戻ったりして進 めている。つまり、よりよい文章を書くためには、一方向の流れでは なくfプランニング」・ギ翻訳」・「推敲」の3つの過程が相互に関連し. 合うことが必要である。そして、不十分な点をモニタリングし、修正 するメタ認知の働きが重要になってくる。. 課題設定 作文課題. 時々翔々産出. E話題は何か. ウれる文章. E読者は誰か E動機づけ. 書き手の長期認憶 ・話題についての. 作文過程 プランニング. 知識. 翻訳. 推敲. カ成され ス命題を セ語に置. ・読者についての. ォかえる. 知識. ・構想の立てかた についての知識. ‡ ‡ ‡ モニタリング. FIGUKE 2 %yes&Flo㈹rの作文産出過程のモデル. 4.
(7) 安西・内濁(1981)は小学生の作文産出過程で内観報告を分析し、. 初めに考えたプランを想起することによって自分の書いたことを確 認する、すなわちプランがモニターすることを示唆している。また、 プランは目標に向かって進行しているかどうかをチェックし、軌道が ズレるなど、必要に応じて警告を発するようなモニタリングの機能を 果たすのではないかと考えている。. 坂本・戸田(2004)によれば、Berei飴r&Scarda搬a1三aは作文産出 過程の違いから「知識陳述」(Knowledge−te11沁g)方略とf知識再編 成」(K駐。滑edge−transfor磁ng)方略の2つに大きく分けた。「知識陳. 述」方略は読み手のことを考慮せず、自分が何を知っているのかを単. に書き連ねるという初心者に見られる作文産出過程であり、f知識再 編成」方略は書くことによって自分自身の考えをはっきりさせ、さら に深めていこうとするという熟練者に見られる作文産出過程である。 作文教育では、自分の知っていることをそのまま書き進める「知識藻 述」方略ではなく、「プランニング」「翻訳」「推敲」の3つの過程を. モニタリングしながら書き進めていく「知識再編成」方略を身につけ させる必要がある。. 4.学校教育における作文指導の課題 平成19年度全国学力・学習状況調査(2007)の團答結果集計[生 徒質問紙]では、「国語の授業では,自分の思いや考えを書くことぶ 多いですか」という質問に対して、fそう思う22.0%、どちらかとい えばそう思う42.2%、どちらかといえばそう思わない26.9%、そう 思わない8.7%」、『国語の授業では,友達と話し合ったりして意見を. 交換する場面が多いですか」という質問ではfそう思う10.5%、どち らかといえばそう思う28.9%、どちらかといえばそう思わない41.2%、. そう思わない19.3%」と回答している。この結果から、まず国語の授. 業で自分の思いや考えを書く機会を増やすことに加えて、自分の作文. に対しても意見交換する場を設定していくことが必要であると考え られる。. 5.
(8) 文部科学省の願断力育成協力者会議f第8回資料言語野の育成方策 について」(2007)では、経済協力開発機構(0εCD)が2003年実施し た国際的な学習到達度調査では、前回(200◎年)8位だった「読解力」. が0£CD平均レベルの14位まで低下していること、いじめやニート など人間関係にかかわる問題が喫緊の課題となっていることなどを 受けて、学習の面でも生活の面でも、子どもたちの生きる力を育成す るために、言語力の必要性がますます高まっているとしている。そし て、学習で用いる言語を精査し、国語科を中核としつつ、すべての教 科等での言語の運用を通じて、種々の能力を育成するための道筋を明 確にしていくことを求め、言語に関する感覚や思考力を高めていくた め、メタ認知能力を育成すること、特に小学校段階から各教科等で振 り返りの時間を適切に授業に組み入れることを指摘している。このこ とからも今後の作文指導においては、国語科の時間だけではなく学校 教育活動全体の中で書く時間を確保し、メタ認知機能を働かせるよう に指導方法を改善し、作文力の育成に取り組んでいくことが必要だと 考えられる。. 申学校学習指導要領(1999)において、f書くこと」の指導に配当. する授業時数の国語科の授業時数に対する割合は,各学年とも10分 の2∼10分の3程度となっていることからも、授業のなかで「書くこ と」の比重は大きいことがわかる。国語教育の研究会においても『書 き表す能力を高め、身に付けさせる」ことは重要なテーマの一つにな っている。しかし、生徒は書くことに関して必ずしもいいイメージを. もっているとは言えない。兵庫県教育委員会の平成17年度総合的な 全県基礎学力調査報告書(2006)によると、「記録や報告などの文章. を書くことは好きか」という質問に対して、中学1年生は「好きだ 10.8%、どちらかといえば好きだ19.4%、どちらかといえば好きでは. ない32.1%、好きでない36.7%」と答えている。実に約7翻近くの 生徒が書くことが好きでないと答えている。そして、「好きでない」. と回答した生徒ほど基礎学力が定着していない傾向が見られた。広瀬 Q984)は作文が好きでない理由として、「書くことがないから」、「何. 6.
(9) を書けばよいかわからないから」などをあげることが多いと指摘して いる。つまり、作文嫌いになるのは、すでにプランニングの段階でつ まずいているからだといえる。. 一方、内田Q999)は作文の推敲に関して、作文を清書し終えてか ら始まるものではなく、自分のアイディアや意識を明確にするために 組み立てメモを作る段階からすでに始まっていると指摘している。ま た、作文を相互評蝕することについて、自己の活動をとらえ直し相対 化することにつながり、頭の中で進行する作文過程を意識化し対象化 することができるとしている。これに対して、国語科の作文授業では、. 清書した作文を教師が評価や修正を行ったり、清書した作文をクラス やグループの友だちに発表したり、相互評価したりすることが見られ る。これからの作文指導では、プランニングと推敲に時問をかけ、一 方向の流れではなくモニタリングをとおして書き進め、その過程で子 ども嗣士の相互評価などを取り入れるなどの工夫が求められる。 Graha醗, Harris,&Troia(1998/2007)は、書き行動においてプラン. ニングや見直しをするような自己調整方略の形成に関する研究をア. メリカの小学5・6年生の学習障害児6人を対象に6つの指導段階で 行った。第1殻階は、生徒が意見文について何をすでに知っているか を検討した(背景知識を形成すること)。第2段階は、生徒ごとの弓 頭相談を行った(書き行動方略を討論すること)。第3段階は、教師 が口に出して考えるときに、どうやって書き行動方略を使うのか見本 を示した(書き行動方略の見本を示すこと)。そこでは教師と生徒は. 一緒になって、論文を書いている間そのプランを修正し続けた。第4 段階は、生徒は書いているときに自分に向けて発した(書き行動方略 に関する)具体的な言葉を記憶することに取り組んだ(書き行動方略 を記憶すること)。そのために、生徒たちがお異いに質問するという. 練習を行った。第5段階は、生徒が論文を書いているときに記述方略 と自己調整の手法を利用するように、教師からの支援を受けた(書き. 行動方略をサポートすること)。第6殺階は、3、4本の論文を書い た後で、全部の生徒が教師のサポートなしで論文を書いた(自立した. 7.
(10) 遂行)。第6段階の指導の結果、指導前には、生徒はただ2,3のア イディアしかない程度の低い論文を作成しようとして、すぐに書き始 めた。指導後は、たいていの論文は、事前に構想され、出来上がった 論文の質は向上した。論文は長くなり、仮定を支持する理由の数が多 くなり、本文は論理的に配列された。さらに、良い論文を書く自分の 能力におおむねこれまでより自信がもてたのである。この研究から、 作文の授業では、プランニングや見直しのような自己調整方略を形成 することに重点をおき、子どもにその方略の使い方を学ばせ、方略を 使える機会をたくさん与えていくことが必要であるといえる。そして、. 最後には、他人からのサポートがなくても、子ども自身の力で良い作 文を書くことができるように指導していかなければならない。そのた めには、作文指導のなかで自分の意見や考えを表明しあえる相:互作用. 場面を作ることが大切である。この研究では教師と生徒の垂直的相互 作用であるが、その際教師は子どものレベルに合わせていることから 実質的にはむしろ水平的相互作用をしているともいえる。というのも、. 教師は指導者という立場より一緒に協同で取り組むサポーターとし ての役割を担っているからである。時には一緒にプランを立てるとき にわざと間違いをして、そこから間違いの影響と理由を検討するなど、. 自己調整方略に関するコミュニケーションをとりながら活発な相互 作用がみられる。. 5.本研究と先行研究との違い 大暗・吉田(2002)は、小学校5年生を対象に作文におけるプラン ニングと推敲に焦点をあてた介入を行った。実験群ではプランニング と推敲の段階で、作文の内容、巨的、文章のしきたり、読者意識とい. う4つの視点を意識させ、子ども同士がグループで意見交流するとい う子ども同士の相互作用をさせた。これに対して、テキスト群ではテ ーマ決定・素材収集・構想・構成・下書き・推敲という伝統的な作文 指導のなかで、子ども同士がグループで意見交流するという子ども同. 士の相互作用をさせた。この2つの群を比較検討した結果、子ども同 8.
(11) 士の相互作用場面において、実験群では自らのプランや推敲内容につ いてより詳しく説明を与え、考え方の根拠も付加され、発言した子ど もに対しての疑問や異なる提案もなされていた。一方、テキスト群で は感想レベルに止まり、自分のプランや書きに対する考察や見直しは 行われず、発言に対する疑問点を表明したり、新たな提案を行ったり といった深い処理はされていなかった。また、実験授業の前後で書か. れた作文を大際・吉田(20◎2)が作成した13の評定項肖により比較 すると、作文の質について、構造・内容面でも形式・表記面でも、実 験群のほうがすぐれた作文を書いたことが明らかになった。さらに、 実験授業前後に行った意識調査を比較すると、作文に対する自信や楽 しさといった情意面においても、実験群の上昇率がテキスト群に比べ て大きかった。しかし、大孔・吉田(2002)の研究では、プランニン. グと推敲に焦点をあてた実験群と伝統的な作文指導を行ったテキス ト群とでは授業内容において:大きな違いがあった。また、全体の授業. 時間は同じであるが、指導過程において実験群ではプランニングと推. 敲の段階でテキスト群よりそれぞれ1時悶ずつ授業時間を多くとり、 子ども岡士の相互作用の時間をふやした。このため作文の質や情意面 の差は授業内容の違いが大きく影響したのか、子ども同士の相互作用 の差が大きく影響したのか、どちらの要因に、より影響を受けたのか を明確に説明することができない。そこで本研究では、先行研究の知 見をさらに発展させるため、授業の流れは変えず、相互作用場面にお いてのみ、教師と子どもとの垂直的相互作用と子ども同士の永平的相 互作用という異なった教授法をすることで、水平的相亙作用が中学生 の作文の質や情意面にどのような影響を及ぼすのかを比較検討する。. 坂本・戸碩(2004)は、大学生を対象に協力的プランニング法が作 文にもたらす効果について研究した。Flowerが提唱した協力的プラン. ニング法は、作文のプランニングを書き手とその援助者の2人で協力 して行うものである。書き手は自分の立てたプランを援助者に説明し、. それによって精緻化を行い、援助者はそのプランに対して質問するこ とによって、書き手がプランを発展させることを促す。研究では、協. 9.
(12) 力的プランニングによる作文を3セッション実施し、プレテストとポ ストテストで効果を検証した。作文のテーマはそれぞれ「友だち」f自. 分」であった。分析の結果、評定得点の向上は、作文の苦手な被験者 においてのみであった。この研究では、プランニングの段階において 同じ大学の学生の中で、自己申告に基づき作文の苦手な被験者と比較 的得意な被験者がペアを組んでいる。しかし、中学校では苦手な子ど もと得意な子どもを意図的にペアにしにくい現実がある。また、クラ. ス内で学力的に大きな差があることから、2人1組での話し合いが難 しいペアができると考えられる。そこで本研究では、垂直的相互作 用・水平的相互作用のどちらの教授法もプランニングだけでなく推敲. の段階でも相互作用させ、水平的相互作用させる群では4人を基本と. したグループのなかで協力的プランニングの方法を取り入れた詣し 合いを行う。. 前述の坂本・戸田(2004)、大磯・吉田(2002)の先行研究では、. プレテストと直後ポストテストを実施しているが、本研究ではさらに 遅延ポストテストを加えている。これは、遅延ポストテストを行うこ とで、直後ポストテストでの実験授業直後の成果だけでなく、授業で 学んだことの定着度をはかることができるからである。. 6.先行研究を基にした作文の評価 梶井(2001)は、現行の学習指導要領(1989)を反映させ、内容構 成6項目(例 主題や要旨がはっきりしている)、文章構成6項目(例. 書きだしから結びまでが一貫した整った文章である)、叙述・描写6. 項目(例 最も伝えたいことがよく分かる文章である)の計18の評 価愚蒙の妥当性・信頼性の検討を行い、評定者問で評定結果カミ一致す. る傾向の強い羅臼を検出した。大爵・吉田(2000)は、先行研究の内. 容において作文過程を観察する中で見いだされた能力や作文を書く 上で必要だと考えられる技能を抽出し、構造・内容面7項員(例 適 切に段落分けがなされ、各段落がよくまとめられているか)、形式・表. 記面6項巨(例 符号や句読点などは正しく用いられているか)の計 10.
(13) 13項日の評価:項目を作成した。坂本・戸田(2004)は、梶井(2001). の評価項碧、および、Flowerが捷画した3つの領域(目的・キーポイ ント、読者、文章のしきたり)を考慮に入れて15の評価項目(例 興 味をひく具体例、あるいはエピソードが書かれている)を作成した。本. 研究では、3つの研究における評価項目と「現代の国語1(三省堂)」 (2006)の「ことばのしおり 推敲の仕方や観点1」にある全体の構. 成や内容に関すること6項目(例 意見を支える根拠は、はっきりし ているかどうか〉、文章の書き方や表現の仕方に関すること9項目(例 「だ・である」(常体)と「です・ます」(敬体)とが、混ざっていない. かどうか)、表記に関すること3項目(例 誤字や脱型などはないかど. うか)の計18項圏を参考に、作文評価表にある評価項臼を実験者が 作成して使用する。具体的には、梶井(2001)、大暗・吉田(2000)、. 坂本・戸田(2004)、「現代の国語(三省堂)」において使用頻度の高. い評価項臼で、梶井(2001)の評定者間で評定結果が一致する傾向の 強い項日を作文評価属託として採用する。また、作文意識調査アンケ ートは、無暗・吉田(2000)の楽しさ、自信、工夫などを質問したア ンケートを基にして作成する。. 7.本研究の計画 中学校1年生を対象に「現代の国語1(三省堂)」(2006)にある「体 験文を書こう」(P.92∼97)という教材を用いて、教科書にある学習 活動の流れ「プランニング」・「翻訳」・「推敲」・「清書」に沿って授業. を行うが、その中でも「プランニング2と「推敲」に焦点をあてた介 入を行う。第1の教授法は、学習活動の流れの「プランニング」と「推 敲」の殺階で教師による垂直的相互作用を取り入れた授業を展開する. 方法である。第2の教授法は、「プランニング」と「推敲」の段階で. 小グループによる対話的コミュニケーションによる生徒どうしの水 平的相互作用を取り入れた授業を展開する方法である。この2つの教 授法の効果を作文の質および生徒の情意面において検討する。. 11.
(14) 8、目的と仮説 本実験での「プランニング」とプランニングと関連づけて行う「推 敲」の段階で、教師から訂正されたリアドバイスをされたりしたもの を基にして個人で考える垂直的相互作用群よりも、自分でプランや練 り直したところを発表し、他者からの質問や意見を聞いて議論を深め る水平的相互作用群のほうが、多様な視点からの活発な相互的な働き かけがあり、不十分な点や問題点をモニタリングして発見し、修正す ることが起こりやすくなると考えられる。その結果、水平的相互作用 群のほうがメタ認知機能をより働かせ、作文の質を向上させると予測 される。また、水平的相互作用群では、自分の意見を発表し互いの意 見を交流する中から、認め合い、助け合い、支え合うことで、自信を 身につけ、前向きに取り組むといった情意面に影響を与えると予測さ れる。これらの予測を以下の実験によって検討する。. 12.
(15) 第2章 方 法 1.対象 兵庫県内公立中学校1年生2クラス57名(男子31名、女子26名). の被験者のなかで、1年2組28名(男子16名、女子12名)を垂直的 相互作用群に、1年1組29名(男子15名、女子14名)を水平的相互 作用群に割り当てた。実験授業前作文アンケート、実験授業後作文ア ンケート、プレテスト、直後ポストテスト、遅延ポストテストのすべ. てを受けた生徒46名(男子24名、女子22名)を分析対象者とした ため、垂直的相互作用群は1年2組21名(男子10名、女子11名)、. 水平的相互作用群は1年1組25名(男子14名、女子11名)となっ た。. 2.実験形態 垂直的相互作用群は、生徒の所属する教室を使って、すべての時間 一斉授業形式の座席で行った。水平的相亙作用群は、生徒の所属する. 教室で、第2時、第4時、第6時、第7時はグループ形式の座席で、. 第1時、第3時、第5時、第8時、第9時は一斉授業形式の座席で行 った。. 3.実施時期 実験授業・作文意識調査アンケート・ポストテストは2007年3月、. 作文意識調査アンケート・プレテストは2007年2月中旬、遅延ポス トテストは20◎7年4月中旬に行った。. 4.実験材料 作文用紙(400字詰め原稿用紙)、教科書、作文意識調査アンケート. 用紙、構想表(主題、読む相手、構成など、自分のプランを記入する 用紙)、作文評価表、作文相互評価表、ヒントカード(グループの話 し合いで使用する質問例)、ビデオ(記録用)。. 13.
(16) 作文意識調査アンケート 事前アンケートでは、「作文学習は楽し いですか」、「作文を書くことに自信がありますか」、「作文を書くとき. に何か工夫していましたか」という質問項函をそれぞれ4件法で回答 させた。事後アンケートでは、f作文学習は楽しかったですか」、「作 文を書くことに自信がつきましたか」、f作文を書くときに工夫しなが. ら書こうと思いますか」という質聞項霞をそれぞれ4件法で回答させ た。具体的には、「とても楽しい(楽しかった)」「どちらかといえば 楽しい(楽しかった)」「どちらかといえば楽しくない(楽しくなかっ. た)」「楽しくない(楽しくなかった)」などである。さらに、事後ア ンケートではf作文学習で楽しかったこと」、「作文を書くときに気を つけたこと」、「作文学習をとおして思ったこと」を自由記述させた。. 5.実験手続き 作文意識調査アンケートとプレテストは、実験第1時の約半月前の 授業で実験者によって行われた。実験授業は、垂直的相互作用素と水. 平的相互作用群の2群とも、実験者によって行われた。実験授業は国. 語の授業時間を使って1臼1時間(50分または45分を1時間とする もの)を9回、毎時問各実験条件の下で行った。各群の学習計画は TABL81に示されているとおりである.実験授業第9時に作文意識調 査アンケートと直後ポストテストを行った。実験第9時の約3週間後 に遅延ポストテストを行った。. 14.
(17) TABLε1 両群における主な授業内容 垂直的相互作用群 水平的相互作用群 授業のねらいを知った後、プリントの作品を「作文評価表」. 第1時 で評価し、プリントの模範作文で観点のポイントを確認す る。 生徒作品「添乗員さんと出会 って」を読んだあと、題材に. 生徒作品「添乗員さんと出会 って」を読んだあと、題材に. 第2時. なりそうな話題を題材カー. なりそうな話題を題材カー. ドに複数書き出し、クラスで. ドに複数書き出し、斑で発表. 発表する。. し、質問に答える。. 各自でプランニングし、構想表に記入し提出する。(以下、. 第3時 提出物については両群とも特にアドバイスが必要な部分に は教師が横に線を引いて返却する). 第4時. 教師のアドバイスをもとに、. グループの中で自分のプラ. もう一度各自でプランニン. ンを説明し、他者からの質問. グし、構想表に記入し提出す. 意見を聞いてもう一度プラ. る。. ンニングし、構想表に記入し 捷轡する。(ヒントカードを 活用)。. 第5時. 生徒各自でプランに基づいて原稿用紙に作文を下書きす る。. 自分の下書きを、作文下弦表 で自己評価する。完成した人. 第6時. は教師のアドバイスを受け る。下書きを提出する。. 自分の下書きを、作文相互評. 価表をもとにグループで評 価する。グループのアドバイ スをもとに、もう一度見直し 提出する。. 第7時. 教師のアドバイスをもとに、 もう一度下書きを見直す。. グループの中で質問意見の 交流をし、グループのアドバ イスをもとに、もう一度下書 きをする。. 第8時 各自で下書きする。 第9時 各自で清書し、作文意識調査アンケートに答える。. 作文テスト プレテストでは「友だち」というテーマで、直後ポス トテストでは「体験文」を、遅延ポストテストでは罫自分」というテ. ーマで、授業時間1時間を使って、それぞれ400字詰め原稿用紙1枚 程度で作文を書かせた。なお、直後ポストテストは、実験授業で清書 した作品を見ながら書かせた。そして、生徒の作文(プレテスト、直 後ポストテスト、遅延ポストテスト)を構造・内容面11項冒、形式・. 表記面4項目の計15項目からなる作文評価表に基づいて評定を行っ た。作文評価表はTABLE 2に示されているとおりである。 15.
(18) 丁認聡2 作文評価表の作文評価項冒 〈構造。内容面〉 話題が整理されている。. 適切に段落分けがなされ、各段落よくまとまっている。 主語と述語の対応がなされている。. 場面や事柄の順序を表す接続語が正しく使われている。 書き出しが巧妙に効果的に表現されている。 事実と意見が区別されている。. 興味をひく具体例、あるいはエピソードが書かれている。 意見を支える根拠は、はっきりしている。 書こうとするものの様子がよく分かる文章である。 書きだしから結びまでが一貫した、整った文章である。 最も伝えたいことがよく分かる文章である。. <形式・表記面> 12 一文の長さが適当である。 13 「だ・である」(常体)と「です・ます」(敬体)とが適切に用い られている。. 14 句読点やかぎかっこなど原稿用紙が正しく使われている。 15 誤字や予予などがなく正しく用いられている。. 6.作文テストの評定 プレテスト、直後ポストテスト、遅延ポストテストの評定にあたっ ては、筆跡などによる作文の作者の同定や、文字の巧拙によるハロー 効果を防ぐためワープロで打ち直した作文で行った。作文評価表をも. とに実験者を含む独立した2名が基準の統一を図り、15項日を4段階 で評定し、作文評定得点としては2人の平均値を採用した。2人の作 文評定合計得点の相関係数は、プレテスト(r=.86,p〈.01)、直後ポス トテスト(r=.93,pぐ01)、遅延ポストテスト(rへ93,p〈.01)であり、. 2人の評定間の信頼性が確かめられた。 16.
(19) 第3章 結 果 1.作文テストの分析 作文テストは、プレテストと直後ポストテストの分析、プレテスト と遅延ポストテストの分析を行い、直後ポストテストと遅延ポストテ ストの分析を行わなかった。直後ポストテストでは、実験授業の最初. からテーマが与えられ、9時間の授業をかけて仕上げた作品を見なが ら書いた作文であるのに対して、遅延ポストテストでは、その時間に テーマが与えられ、何も見ないで自力で書いた作文であった。そのた. め2つの作文の条件が違いすぎることから、直後ポストテストと遅延 ポストテストの比較分析は行わなかった。. 2.評定値 作文評定の各項§は、「たいへんよい」を4点、「おおむねよい」を. 3点、「すこしよくない」を2点、「まったくよくない」を1点として 得電化した。全15項日を合計したものを作文評定得点(全項目)、構 造・内容面の11項目を合計したものを作文評定得点(構造・内容面)、. 形式・表記面の4項目を合計したものを作文評定得点(形式・表記面). とした。可能得点範囲は、それぞれ15∼60点、11∼44点、4∼16点 となった。. 3.分析 (1) 作文評定得点(全項目). 垂直的相亙作用群と水平的相互作用群におけるプレテスト、直後ポ ストテスト、遅延ポストテストの作文評定得点(全町観)の平均値を FIGU麗3に示す。. 17.
(20) 60 55 50 45 40 平35 均30 値25. ロプレテスト. ■直後ポストテスト ロ遅延ポストテスト. 20 15 10. 5 0 垂直的相互作用群 水平的相互作用群 FIGURE3 両群における作文評定得点(全項目)の平均値. 実験授業における教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違 いが、作文評定得点(全項目)にどのように影響を及ぼすのかを検討 するために、2(教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用)×2(実 施時期:プレテスト、直後ポストテスト)の2要因分散分析を行った。. その結果、全項目で実施時期については主効果が見られ (F(1,44)ニ34.60,p〈.01)、教授法×実施時期の交互作用は有意傾向で. あった(F(1,44)=2.86,p〈.10)。交互作用の下位検定の結果、直後ポ. ストテストでは教授法の単純主効果は有意傾向であり (F(1,44)=3.32,p〈.10)、水平的相互作用群の平均値が垂直的相互作. 用群の平均値よりも高かった。プレテストでは教授法の単純主効果は 見られなかった(F(1,44)ニ0.01,n.s.)。また、垂直的相互作用群、. 水平的相互作用群両群とも実施時期の単純主効果は有意であった (F(1,44)ニ8.08,p〈.01, F(1,44)ニ3L41,p〈.01)。. 続いて教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違いが、実験 授業後においても作文評定得点(全項目)に影響を及ぼすのかどうか を検討するために、2(教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用). x2(実施時期:プレテスト、遅延ポストテスト)の2要因分散分析 18.
(21) を行った。その結果、全項目で実施時期の主効果が有意であり (F(L44)ニ12.64,p〈.01)、教授法×実施時期の交互作用は:有意傾向で. あった(F(1,44)=3.15,p〈.10)。交互作用の下位検定の結果、水平的. 相互作用群では実施時期の単純主効果が有意であり (F(1,44)=15.56,p〈.01)、遅延ポストテストの平均値がプレテストの. 平均値よりも高かった。垂直的相互作用群では実施時期の単純主効果 は見られなかった(F(1,44)=1.46,n.s.)。. (2) 作文評定得点(構造・内容面). 垂直的相互作用群と水平的相互作用群におけるプレテスト、直後ポ ストテスト、遅延ポストテストの作文評定得点(構造・内容面)の平. 均値をFIGURE4に示す。. 45 40 35 30 叢25. ロプレテスト ■直後ポストテスト ロ遅延ポストテスト. 値20 15 10 5 0 垂直的相互作用群 水平的相互作用群. FIGURE4 絶群における作文評定得点(構造・内容面)の平均値. 実験授業における教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違 いが、作文評定得点(構造・内容面)にどのように影響を及ぼすのか を検討するために、2(教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用). ×2(実施時期:プレテスト、直後ポストテスト)の2要因分散分析 19.
(22) を行った。その結果、構造・内容面で実施時期の主効果および、教授. 法x実:施時期の交互作用は有意であった(F(1,44)=28.72, p〈.OLF(1,44)ニ4.42, p〈.05)。交互作用の下位検定の結果、直後ポス. トテストでは教授法の単純主効果は有意傾向であり( F(1,44)=3.72,p〈.10>、水平的相互作用群の平均値が垂直的相互作用. 群の平均値よりも高かった。プレテストでは教授法の単純主効果は見 られなかった(F(1,44)=0.38,n.s.)。また、垂直的相互作用群、水. 平的相互作用群両目とも実施時期の単純主効果は有意であった( F(1,44)=・4.88,p〈.01, F(1,44)=30.49, p〈.01)。. 続いて教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違いが、実験 授業後においても作文評定得点(構造・内容面)に影響を及ぼすのか. どうかを検討するために、作文評定得点(構造・内容面)に対し、2 (教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用)×2(実施時期:プレ. テスト、遅延ポストテスト)の2要因分散分析を行った。その結果、 構造・内容面で実施時期の主効果が見られ(F(1,44)級0.65,p〈.01)、. 教授法×実施時期の交互作用は有意傾向であった(F(1,44);4.01,. p〈.10)。交互作用の下位検定の結果、水平的相互作用群では実施時期 の単純主効果が有意であり(F(1,44)=15.18,p〈.01)、遅延ポストテス. トの平均値がプレテストの平均値よりも高かった。垂直的相互作用群 では実施時期の単純主効果は見られなかった(F(1,44)=0.73,n.s.)。. (3) 作文評定得点(形式・表記面). 垂直的相互作用群と水平的相互作用群におけるプレテスト、直後ポ ストテスト、遅延ポストテストの作文評定得点(形式・表記面)の平 均値をFIGURE 5に示す。. 20.
(23) 16. 12. 8. 平均値. 【1プレテスト. ■直後ポストテスト ロ遅延ポストテスト. 4. 0. 垂直的相互作用群 水平的相互作用三 日GURE5両群における作文評定得点(形…t・表記面)の平均値. 実験授業における教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違 いが、作文評定得点(形式・表記面)にどのように影響を及ぼすのか を検討するために、2(教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用). ×2(実施時期;プレテスト、直後ポストテスト)の2要因分散分析 を行った。その結果、形式・表記面で実施時期については主効果が見られ たが(F(1,44)ニ28.54,p〈.01)、教授法の主効果および、教授法×実施時期の 交互作用は有意ではなかった(F(1,44)ニ2.76,n.sりF(1,44)=.11,n.s.)。. 続いて教授法(垂直的相互作用、水平的相互作用)の違いが、実験 授業後においても作文評定得点(形式・表記面)に影響を及ぼすのか. どうかを検討するために、作文評定得点(形式・表記面)に対し、2 (教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用)×2(実施時期:プレ. テスト、遅延ポストテスト)の2要因分散分析を行った。その結果、 形式・表記面で実施時期の主効果が見られ(F(1,44)=10.15,p〈.01)、. 教授法の主効果は有意傾向であった(F(1,44)=3.11,p〈.10)。教授法 x実施時期の交互作用は有意ではなかった(F(1,44)=.02,n.s.)。. 21.
(24) 4.作文意識調査アンケートの分析 (1) 質問項目得点. 作文調査アンケートの質問3項目への回答は以下のように得点化 した。作文の楽しさでは、「とても楽しい」を4点、「どちらかといえ. ば楽しい」を3点、「どちらかといえば楽しくない」を2点、「楽しく ない」を1点、作文の自信では、「とても自信がある」を4点、「どち らかといえば自信がある」を3点、「どちらかといえば自信がない」 を2点、「自信がない」を1点、作文の工夫では、「よく工夫する」を 4点、「どちらかといえば工夫する」を3点、「どちらかといえば工夫. しない」を2点、「工夫しない」を1点与えた。垂直的相互作用群と 水平的相互作用群における実験授業前後の作文の楽しさ、自信、工夫 の得点の平均値をFIGURE 6に示す。. 4.0. 30 平 均2.0 値. ロ実験授業前 咀実験授業後. 1.0. 0.0. FIGURE6 相互作用の各回における作文の意識の程度. 垂直的相互作用群と水平的相互作用群の2つの教授法が生徒の情 意面にもたらす影響の違いを検討するため、楽しさ、自信、工夫の各 得点に対し、2(教授法:垂直的相互作用、水平的相互作用)×2(実. 施時期:実験授業前、実験授業後)の2要因分散分析を行った。その. 結果、楽しさの項目では、実施時期については主効果が見られたが. 22.
(25) (F(1,44>=40.92,p<.01)、教授法の主効果および、教授法×実施時期 の交互作用は有意ではなかった(F(1,44)=。29,n。s.,F(1,44)ニ.27,n.s.)。自儒. の項目では、実施時期については主効果が見られたが(F(1,44)ニ11L69,. p〈.01)、教授法の主効果および、教授法X実施時期の交互作用は有意で はなかった(F(1,44)=.49,海.sりF(L44)諜1.28,n.s.)。工夫の項日では、婁施. 時期については主効果が見られたが(F(1,44)=74.41,p<.01)、教授法. の主効果および、教授法×実施時期の交互作用は有意でなかった (F(1,44)=.01,H.s.,F(1,44)=.05,n.s.)。つまり、実験授業後には、. 実験前に比べて作文の楽しさ、自信、工夫の得点が向上した。. (2) 自由記述. 実験授業前後の作文調査アンケートで、ギ作文学習で楽しかったこ と」、「作文を書くときに気をつけたこと」、「作文学習をとおして思っ. たこと」に対する生徒の自由記述を、教授法の2群間で比較した。ま ず、回答の文字数を検討した。各質問における、文字数の平均値を、 群ごとにτABLε3に示す。 t検定によって分析した結果、「作文学習で. 楽しかったこと」においては、群議の差は有意傾向であった (t〈44)ニ1.90,p<.10)。「作文学習をとおして思ったこと」においては、. 群問の差は有意であった(t(44)=2,07,p<.05).このことから、自由. 記述では、水平的相互作用群のほうが垂直的相互作用群よりも多くの 文字数を書いていたといえる。. 23.
(26) TABL£3 相互作用の各群における一人あたりの 回答文字数の平均値(標準偏差). 垂直的相互. 楽しかったこと. 気をつけたこと. 思ったこと. 29.0(16.2). 28.6(13.7). 38.0(30.0). 40.4(23,2). 36.4(20」). 59」(37.8). @作用群 水平的相互. @作用群 続いて、記述内容を検討した。水平的相互作用群において子ども同 士の相互作用について書かれた代表的な記述をTAB聡4に示す。「作文 学習で楽しかったこと」に対しては、水平的相互作用群ではグループ で意見を出し合ったり、話し合ったりする水平的相互作用が楽しかっ. たと答えた人が20人中の11人いたが、垂直的相互作用群では教師と の相互作用が楽しかったと答えた人はいなかった。ギ作文学習をとお して思ったこと」に対しては、水平的相互作用群ではグループのなか. での水平的相互作用が良かったと答えた人は、25人中の14人いた。 その中でも、自分では気づかないところをアドバイスしてもらったと. いったモニタリングについて評価している人は10人に及んだ。垂直 的相互作用群では、モニタリングに関する記述がなかった。「作文を 書くときに気をつけたこと」に対しては、できるだけ相手にわかりや. すく伝えるといった読者を意識している回答が水平的相互作用群で. は25人中8人、垂直的相互作用群では25人中9人にいた。. 24.
(27) TABLE 4 水平的相互作用について書かれた生徒の自由記述例 〈楽しかったこと〉 ・グループになって、質問したり、アドバイスをするのが楽しかった。 ・自分の作文を書いた時の悪い所などがわかって、それを薩して一番 いい作文をかけた時の満足感があって、自分で作文を時間をかけて 作るというのが楽しかったです。 ・初めは、全然おもしろくなさそうな気持ちがあったけど、みんなで グループになって考えたりすることは、とても重要なことだという のがわかりました。だから、作文を書く工夫なども楽しく学ぶこと ができました。 ・友達の意見や感想を闘いて、自分の作文を手直しすることが楽しか つた。 〈気をつけたこと〉 ・これまでの作文は話がずれていったり、漢字をまちがえたりしてい. たけど、そういうことを考えながら書くことができたこと。自分は できたと思っていても、ほかの人が読むと質問がたくさんできるか ら、しっかり伝わるように書かないといけないと、グループでやる 作業をやっていて思いました。 〈水平的相互作用をしてよかったこと〉 ・構想を考えるのは、大変だったけどみんなと見せ合いをしたり、お たがいの作文についての意見を言い合う時間が良かった。自分の作 文を読んでもらったあとに感想を響けたのがよかったです。 ・前よりうまく書けるようになって、作文のいい所がわかった。最初 は文を書くだけだと思っていたけど、読む相手のことを考えたりし て書いてよかった。 ・グループになって話し合うということでは、自分に対して人がどの. ような意見をもっているのかなどがわかって作文を書くのに役た ちました。. ・私はグループでやったことは、良かったと思う。理由は、自分が読 んで「完壁」と思っている所を、班の人が読んで、ギここおかしい で!」とか「ここをこうゆうふうに変えた方がいいんちがう?」と かアドバイスを言ってくれて、自分が気がついたからです。 ・最初は作文が苦手な方だったので、少し嫌やなあと思ったけど、構 成をきっちり考えて班の人からアドバイスを受けながら書いてい ると、前までよりは自分の作文に自信を持てた。これから、作文を 書く時は今習ったことをよく思い出して書きたい。 ・グループ活動は、とても良かったです。理由は、自分や相手の仲間 の作文を読みあって、悪い点がみつかり、相手の良い点で自分にた りなかったものや相手よりも良かった所がみつかって、まねをする 齎もいっぱいあったし、相手にたくさんのアドバイスをもらって、 自分的にはいい収穫になりました。 ・友達と話し合ってやっていったら、作文はとてもよくなったので、 疑問に思うことは聞いてみたらいいなと思った。 ・最初は、作文学習って、何するのかな。どんなことするのかな。と 不安だったけど、実際やってみると、意外と楽しいし、おもしろか つた。みんなの作文を読んでみて思ったことを言葉にするのは、ち よっと難しかったけど、いい体験にはなったと思うので、良かった。. 25.
(28) 5.授業での水平的相互作用場面 水平的相互作用群では、作晶を推敲する際にグループ内の子ども同 士で相互評価をして、それを基にして話し合うことをした。この場面. ではf最初は、砂漠のことが書きたいのかと思ったけど、最後に何を 本当に伝えたかったのかがわからなくなった。」、「知り合いの人の話. なのか、スキーのことを書きたいのかわからないからどっちかにした 方がいいと思う。」、「『はじめ』『なか』『おわり』それぞれ話題が違う. からもっとまとめた方ぶいいと思う。」という読み手側からのアドバ イスがあり、友だちの意見から自分の気づかない視点を与えられ、自 分の課題を知ることができた。また、「事実と意見がちゃんと区別さ れていて、言いたいことがよくわかるのでとてもいいと思う。」、「自. 分の思いがそのまま伝わってくる作文だから良いと思う。『はじめ』 の書き出しが良いからひきつけられる。次へ次へと読みたくなる。」. という書き手踊の模範を示すものがあり、グループのメンバーは友だ ちの良かった点を参考にすることができた。一方、垂直的相互作用群 では、自分の作品を自己評価してから教師のアドバイスを受け、疑問 点は個別に質問するため、他の生徒のよいところをモデリングするこ とができなかった。. 26.
(29) 第4章 考 察 本研究では、「プランニング」とプランニングと関連づけて行う「推. 敲」の段階で、グループの中での話し合いを基にして考える水平的相 互作用が、教師からの指導を基にして考える垂直的相互作用に比べて、 どのように作文の質や情意面に影響を及ぼすのかを検討した。. 1.教授法と作文方略の獲得との関係 直後ポストテストは、「プランニング」と「推敲」に多くの時間を. かけて仕上げた作品であった。そして、直後ポストテストは9時間の 授業成果が発揮されたことでプレテストより構造・内容面、形式・表 記面ともすぐれた作文を書き、作文の質が向上したといえる。直後ポ ストテストでの群群を比較すると、水平的相互作用群のほうが垂直的 相互作用域よりも作文評定得点(構造・内容面)が高いことから、「プ. ランニング」とf推敲」の段階で教師と子どもとの垂直的相互作用よ りも子ども同士の水平的相互作用のほうが、構造・内容面において作 文の質を向上させることができたのが明らかになった。水平的相互作 用場面においては、①自分のプランや考えをグループのメンバーに表 明する、②友だちの多様な視点での考えを理解する、③自分では気づ かない問題点を知る、④友だちのよかった点をモデリングする、とい うプロセスをとおしてメタ認知機能を働かせ、作文の質を向上させた と考えられる。直後ポストテストの作文評定得点(形式・表記面)で は、水平的相互作用群、垂直的相互作用群両群とも同じような得点の 上昇が見られたことから、子どもの質問を受けて教師が教えていく垂 直的相互作用も、子ども同士で教え合う水平的相互作用も、どちらと も効果があるといえる。. 2.教授法と作文方略の定着との関係 水平的相互作用群では遅延ポストテストでプレテストより構造・内 容面ですぐれた作文を書き、作文の質が向上したといえる。しかし、 27.
(30) 垂直的相互作用群では構造・内容面で作文の質の向上が見られなかっ た。遅延ポストテストは、プレテストと作文テーマが異なるだけで、 あとは全く同じ条件で実施した。つまり、実験授業のように先生や友 だちのアドバイスをもらわず、授業で学んだことをいかしてあくまで 自分の力で書いたものである。また、遅延ポストテストは実験授業終. 了から3週間が経過して行われた。その問に春休みをはさみ、2年生 の薪しいクラスで実施したため、同じ教室内に垂直的相互作用群と水 平的相互作用群の生徒が混ざって行われた。このような条件において、. 水平的相互作用群のみプレテストより作文評定得点(構造・内容面) が高く、作文の質を向上させることができた。これは、実験授業での 子ども同士の水平的相互作用の経験から、実験授業とは別のテーマで あっても、前述の内田(1999)のいうヂ頭の中で進行する作文過程を 意識化し対象化できた」といえる。つまり、実験授業終了後において も前述の安西・内着(1981)の「プランは日標に向かって進行してい るかどうかをチェックし、軌道のずれには警告を発するようなメタ認 知を働かせる」という作文産出過程になり、作文方略を意識化し、獲. 得するという認知的側面が向上したと考えられ、Bereiter& Scarda鵬aliaのいう「知識陳述」方略から「知識再編成」方略へと移 行したといえる。. 3.水平的相互作用が作文授業の前後で情意面に及ぼす影響 作文の情意面について、水平的相互作用群、垂直的相互作用群両群 とも実験授業前後で、作文の楽しさ、自信、工夫の3項目の得点は向 上したが、教授法の問で差は見られなかった。しかし、作文学習で「楽 しかったこと」、f気をつけたこと」、「思ったこと」についての自由記. 述では、水平的相互作用群のほうが垂直的相客作用群より多くの文字 数を書き、内容面においても水平的相互作用群にのみ、相互作用が楽 しかった、良かづた、さらに、水平的相互作用でのモニタリングを評 価している記述が見られた。. 水平的相互作用群、垂直的相互作用群両個とも作文の楽しさ、自信、. 28.
(31) 工夫の3項霞の得点が向上したのは、作文産出過程で「書くべき内 容・旨的・文章のしきたり・読者」を意識させたこと、「プランニン グ」と「推敲」に多くの時間をかけたことで、自分の伝えたいことが うまく書けるという実感をもっことができ、自信や意欲につながった と考えられる。記述面や文字数や内容面において両群に違いがでたの は、水平的相互作用場面では、生徒自身の体験の中から自分の書きた. い事実や意見をグループの友だちにわかりやすくしっかりと伝える ことを意識して発表したこと、自分の発表に対して友だちからのアド バイスをもらったり、友だちをモデリングしたりすることで情意面と 認知的側面の向上が反映されたと考えられる。. 4。先行研究との比較検討 前述の大崎・吉田(2002)の研究では、「プランニング」と「推敲」. に焦点をあてた介入を行った実験群のほうが、伝統的な作文指導を行 ったテキスト群よりも、構造・内容面でも、形式・表記面でも作文の 質の高いことが示された。また、作文学習に対する自信や楽しさの程 度といった情意面においても実験群のほうが、テキスト群よりも事前 テストから事後テストへの評定の上昇率が見られた。これは指導過程. において実験群ではプランニングと推敲の段階でそれぞれ1時間ず つ授業時間を多くとり、子ども同士の相互作用の時間をふやすなど、. 授業内容の違いとそれに関連する子ども応酬の相互作用の差が大き な要因と考えられる。本研究では、授業時間は変えずに「プランニン グ」と「推敲」の段階での相互作用場面だけ異なる教授法をとった。 その中で、直後ポストテストでは水平的相互作用群のほうが垂直的相 互作用群より作文評定得点(構造・内容面)が高く、先行研究にはな い遅延ポストテストでは、水平的相互作用群のみプレテストより作文 評定得点(構造・内容面〉が向上したことは注穆に値する知見である。. 作文意識調査アンケートでは、水平的相互作用群のほうが文字数を多 く書き、内容面でもモニタリングの記述が見られる。このことから、 作文の質や情意面の向上には、「プランニング」や「推敲」の段階で 29.
(32) 水平的相互作用をさせることが有効であるといえる。水平的相互作用 では、自分とは異なった考え方や経験を受け止め、軽し合いによって 自分の課題を解決していくものである。その過程では、他人の意見を 聞いて、自分の作文はこれでよいのか、どうずればよくなるのかとい った葛藤が起こる。このように様々な異なる意見の交流をとおして自. 分の問題を解決していく中から、メタ認知能力を身につけ、作文の質 と情意面が向上したと考えられる。大暗・吉田(2002)は、深いレベ ルでの子ども同士の水平的相互作用が生じたのは、「プランニング」. や「推敲」で、作文の内容、目的、文章のしきたり、読者の4つの視 点を指導にいれたことと関連づけている。筆者はこれに加えて、グル. ープの中で参考となる表現をモデリングしたことが作文の質を高め たと考えている。また、水平的相互作用のみ遅延ポストテストで作文. 評定得点(構造・内容面)が向上したことから、実験授業内容のギ体 験文」を書くときだけではなく、作文全般においてその方略を獲得し、. メタ認知機能を働かせ、作文産出過程ではどのようなことが重要で注. 意していかなければいけないのかといったコントロールが的確にで きるようになったと考えられる。つまり、前述のGrah舳et al.(1998). のいう自分のカでプランニングや見直しをするような自己調整方略 が形成され、自立した遂行ができたといえる。このように、子ども自. 身の力でより良い作文を書けるようにするためには、水平的相互作用. を取吟入れた授業を積極的に展開していくことが有効な方法である と考えられる。また、本研究では9時間の作文授業を行ったが、作文 指導は一単元の終了をもって終わるものではない。授業で学んだ「知 識再編成」方略を子ども自身が正しく使える機会をたくさん与えるこ とが大切である。言語力の必要性がますます高まっていくなか、国語. 科の時間だけでなく他の教科や教育活動をとおして子どもの書く力 を育てていく場面をつくることが必要であろう。. 坂本・戸韻(2004)の研究では、協力的プランニング法によって作. 文の苦手な被験者の評定得点の向上が見られた。先行研究では2人1 組のペアで「プランニング」の段階で話し合いをさせたが、本研究で. 30.
(33) は4人を基本としたグループで「プランニング」と「推敲」の段階で 話し合いを行った。そのなかで、作文の質や情意面の向上が見られた のは、協力的プランニングの手法がグループの話し合いでも効果的な. ことを示している。グループサイズを2人から4人に増やしたことで、. 様々な異なる考えや経験をもつ者の影響をより多く受ける機会がで き、他人の意見を取り入れたり参考にしたりするのに役立ったと考え. られる。本研究では、グループの人数を最初4∼5名にしていたが、 5名のグループでは自分の意見を表明する時間が少なくなり、話し合. いも深まりにくいと判断して、次からは3∼4名に変更した。このよ うに人数を変えたことで、1人の作文に対して話し合う時間が以前よ り確保され、グループの意見交流も活発になった。グループの構成メ ンバーについては普段の座席を基本としながらも、能力・習熟度が岡. レベルの子どもたちばかりで集まらないように配慮して事前に教師 が編成した。それは、異なるレベルのペアでは下位レベルの人が伸び たという坂本・戸田(2004)、倉盛(1999)の研究もあることから、. 様々なレベルの子どもがいることでグループでの相互作用が深まり、 作文の質が向上すると考えたからである。今後、どのようなグループ サイズで、どのレベルのメンバーでグループを構成することが、水平 的相互作用を活発にさせ、子どもの学力の向上につながっていくのか を検討していく必要があろう。. 5.水平的相互作用に関する示唆 水平的相互作用をすることで効果があらわれるためには、その前提 としては、話し合いのルールが学級やグループ内で了解され、定着し. ていることが必要である。本研究では、最初の水平的相互作用の場面 において、グループで題材になりそうな話題をそれぞれ発表させる際. に、1人の発表に対して他のメンバーは制限時間内(2分)で順番に 一つずつ質暗し、一つの質問にその場で答えるという方法をとった。 これには、話し合いのルールを学ばせるねらいがある。そして、次か らの話し合いでは、グループのメンバーは、1人が発表する制限時間 31.
(34) 内において最低一回は発書させるというルールをつくった。また、積. 極的な話し合いができるようにヒントカードやグループの作文を相 互評価した作文相互評価表を使ってそれぞれに意見を発表した。この. ように、話し合いの場面では、1人ひとりの意見を尊重し、グループ 全員が平等に発言できる機会をもつようにすること、限られた時間内. に積極的にまとまった意見が発表できる工夫をすることが大切であ る。そして、意見の異なる人との話し合いをとおして問題を解決して. いくという意識を集団として身につけさせることが水平的相互作用 を有効に機能させる条件になるといえる。そのためにも、授業や学級 活動において水平的相互場面を設定していくこと必要である。子ども 同士の相互作用をとおして、コミュニケーション能力が向上し、話し 合いのルールが定着し、集団としての学習力を高めていくことにつな がっていくと考えられる。さらに、集団内に話し合いのルールが定着 することで、自分の気持ちを本音で安心して話し合えるリレーション が確立され、自信や意欲といった情意面にもプラスに作用するであろ う。. 本研究では、同じような知識や経験をもつ仲間同士、あるいは多様. な価値観や考え方をもつ仲間同士による水平的相互作用を授業の中 で取り入れることで、学び合い影響し合いながら活発な相互作用が行 われた。その結果、教師と子どもとの垂直的相互作用よりも作文の質. や情意面における向上が見られた。このような水平的相互作用ぶ効果 的に機能するためには、ただ子ども同士の相互作用場面を設定すれば よいというものではない。丸野(1994)は、子ども同士が相互作用を. する時に、自分の考えや視点と他者の視点や考えを対立させ、そこに 生じる他者との問の認知的葛藤をどのように克服するかによって、子. どもが相互作用から何をどれほど学び取るかが決定されると述べて いる。本研究では、「体験文を書こう」という教材を使って水平的相. 互作用をさせたことで、体育大会、文化祭、スキー学習といった共通 の体験な中から異なった見方や考え方に触れたり、自分の知らない体 験を聞くことで発見や疑問が生まれたりした。また、クラスの友だち 32.
(35) に自分のプランや作品しっかり伝えることを意識したことや、友だち. の作文でわかりにくいところをアドバイスしたことで自分の気づき につながった。このような様々な意見の交流をとおして、丸野(1994). のいう認知的葛藤が起こり、自分の作文をもう一度新たな視点から見 直すことができたといえる。水平的相互作用を効果あるものにするに は、活発な相互作用が起こるように仕組んでいくことが必要であろう。. 学校では、学級を単位とした一斉学習の学習形態をとり、授業で教. 師から子どもへの知識伝達という垂薩的相互作用をさせているケー スが多い。しかし、学級全体での一斉授業においても、前述の佐藤 (1996)のように、学級の中で子ども同士の積極的な話し合いを取り. 入れた水平的相互作用を展開させることが重要であり、話し合いが活 発になるような課題を教師が工夫して準備する必要がある。これまで 見られた教師は子どもを教えるという発想から、教師は子どもの主体 的な学びを指導・支援するという発想の転換が求められる。一方、学 級内で小グループによる話し合い活動においても、先述のグループサ イズ、グループ編成、話し合いのルール、葛藤する課題などを十分検 討し、教師がしっかりとした準備をして授業に臨まなければならない。 今後、水平的相互作用を取り入れた実践が学校現場で数多く展開され ることで、子どもが主体的に学び、子どもの学力が向上することを切 に願う。. 33.
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