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福島県いわき市の五安層から産出したDesmostylusの頭蓋化石について

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(1)Sci.. Repts.. Yokohama. Nail.. Unれ,. Sec.. II, No.. 36, p. 571-70, October,. 1989.. 福島県いわき市の五安層から産出した Desmostylusの頭蓋化石について 佐藤. Early. Miocene. 篤1)・橋本一雄2)・長谷川善和1). desmostylid. Iwaki. City,. skull. Fukushima. Goyasu. from. Prefecture,. Formation, Japan. By. Atsushi. SATOH, Yoshikazu. and. Abstract・ Yosbiba. in. Prefecture.. A. his. desmostylid rice. The. consists of a nearly an incisor and seven Archipelago.. 丘eld. in. skull was Goheikubo,. lies within. outcrop. complete molars.. Kazuo. HASEIMOTO. HASEGAWA. found. early. in 1986. Shibahara, Miocene. proximal palatine, It is the earlist. by. the. late. farmer. Goyasu. Mr.. Tovn,. Ogawa-cho. formation.. parietal stylobyoideum to date desmostylid. Wataru. Fukushima The and. in. skull. mandibles,. the. Japanese. Ⅰ.はじめに 1986年,福島県いわき市小川町在住の吉葉キヨ子氏から,同町在住の草野文男氏を介. して,いわき市教育委員会に Desmostylusの頭蓋化石が寄贈された。この化石は,普 葉キヨ子氏の夫である渡氏(故人)が,以前,水田を開墾している時に発見したもので ある.その産出地点は,. J.R.磐越東線の小川郷駅から北北東-約2.5km離れた小川. 町柴原五平久保地内(第1図)である。この産地名に基づき,寄贈された化石を「五平 久保標本+と呼ぶことにする。いわき市からの. Desmostylusは,これまでに常磐湯本. 長倉の湯長谷層群亀ノ尾層から産出した長倉(-磐城)標本(徳永,. 1937)が知られて. いる。したがって,五平久保標本は,いわき市内から産出した二番目のものである。 五平久保標本は,上・下顎骨の大白歯が唆合した状態で直径約30cm. ほどの団魂に. 含まれていた。団魂より化石を割出したところ,頭蓋骨の大部分は損なわれていたが,. 口蓋付近,左右の下顎骨の一部,茎状舌骨の一部,上顎切歯1点,右上顎第1大白歯 (Ml),右上顎第2大白歯(M2),左上顎第2大白歯(乏M),右下顎第2第白歯(M2), 右下顎第3大白歯(M,)左下顎第2大日歯(丑M),左下顎第3大白歯(3M)が,確認さ れた。本論文では,五平久保標本を記載報告すると共に,五平久保標本と長倉標本,岐. 阜県瑞浪市より産出した戸狩標本との相対的な年齢関風・,日本列島におけるDes1) 横浜国立大学教育学部地学教室. 2) いわき市教育委員会..

(2) 58. A.. SATOfI,. K.. 第1図. mostylus. HASHIMOTO. and. Y.臼ASEGAWA. 五平久保標本の産出地点.. の生息期間と五平久保標本,長倉標本の産出層準の関係について報告する。. なお,この報告をするにあたり,いわき市教育委員会,国立科学博物館の冨田幸光博士, いわき市教育文化事業団の国府田良樹氏,鈴木直氏,福島県双葉郡広野町立広野小学校 の根本修行氏,双葉郡栖葉町の㈱渡辺技建工業社長の渡辺俊光氏,いわき市の相田千里 氏にお世話になりました。以上の方々に感謝する次第です。. ⅠⅠ.地質概略. 五平久保標本の産出ほ,場長谷層群五安層である。五安層は,一般に,下部が花尚閃 緑岩,片岩,珪岩,粘板岩,流紋岩の硬から成る磯岩,上部が細-粗粒砂岩から構成さ れており,層厚10-30cmの褐炭層を2杖爽在している(須貝ほか,. 1957)oま七,模式.

(3) Early. Miocene. desmostylid. from. skull. Goyasu. formation. 59. 地(いわき市常磐松久須根五安)付近の五安層からほ, nipponica, Penitella. Platyodon Spisura onnechiuria, kotakaeなど北海道の中新世中期の築別貝化石群の特徴種の産出が. 報告されている(OHARA. NEMOTO,. and. 1984)o五平久保標本の産出地付近の五安層は,. 次のような岩相変化をしめている。 上. 1.. 位. 細粒砂岩(層厚約15m+;黒灰色で炭質物をまばらに含ん でいる。). 下. 位. 2. 細-中粒ア+コーズ砂岩(約10m). 3. 頁岩(1.5m前後). 4 5. 石炭(0.3m前後) 頁岩(0.5m前後). 6. 細-粗粒ア-コーズ砂岩(約10m+) (各番号は,第2図の柱状図の番号に対応). そのうち,. 上位の頁岩(3.)とその上にのる細-中粒ア-コーズ砂岩. (2.)との境界ほ 明瞭な浸食面になっている。他の各地層はすべて整合で接している。五平久保標本は, 最上部の細粒砂岩(1・)の基底から約10m上位の層準から得られた。なお,五平久保 標本と同一層準(第2図)から個体数は少ないが,. 自生的産状を示すLucinoma. sp.が. 認められる。. ⅠII・五平久保標本の記載 1.頭蓋骨 辛. 頭蓋骨の大部分は損なわれていて, 鼻腔下面の口蓋付近だけが現存して. いる。現存部分ほ,上顎骨の遠心側 の一部,口蓋骨,翼状骨からなって いる。上顎骨にほ,右上顎第2大白 歯(M2)と左上顎第2大白歯(乞M)が 植立している。 2.. 腹面観(p-1. 1,丘g.. 1a):上顎骨,口. 蓋骨,異状骨間の縫合線ほ不明瞭で, 個々の骨を区別することほ出来ない。 この標本の発見によりデスモスチル. 5. 10. 4s.・ *. ス. Desmostylus. jaPonicus の翼状骨. の形状が明らかとなった。. 口蓋面は. 平担で,正中線にそって,. かなり高. ■l:石炭. G.. :泥岩 l. い口蓋稜が発達している。. 起ほ,近心は外側後方へ開き,遠心は. ヽ. ■■. ヽ. /. 口蓋孔は 認められない。左右の翼状骨の巽突. :五平久保標本産出層準. ヽ. ■′. :細粒砂岩. ヽ ヽ. l. Om. 第2図. ′. ヽ. ノ ′. ヽ. :細-Bl粒アーコーズ砂岩. 五平久保標本産出地付近の地質柱状図..

(4) A.. 60. K.. SATOH,. ○. HASHIMOTO. and. Y.. HASEGAWA. とフ. (○.  ̄ ̄ ̄†. 氏 -t●.l・■l-■. 1 =ヂ` ̄二ニ・. I_. こ=.` ●==1こ㌻.. B・十. ■一一-一■■-. C. ド. \. C). _i A. 計測部位 A. 呂 E ド. 第3図. 計測値(m). 1毒乙. 五平久保標本の口蓋部の計測部位と計測値・. 内側に曲っている。. 右側面観(pl.. 1,丘g.. 1b):翼状骨の後縁ほ,直線的で口蓋面に対して下方後側-大き. く突出する。口蓋骨の垂直板は翼状骨の縫合線付近で,舌側-くぼんでいる。口蓋骨の 水平板と翼状骨の縫合線は明らかでない。. 2.下顎骨 右側(pl.. 2,五gs.. 2a-b):筋突起,関節突起の基部周辺が残存している。残存部分に. は,右下顎第2大白歯(M乞)が植立しており,右下顎第2大白歯(M2)より遠心側に 1937)が認められる。嚢内膜には右下顎 は歯嚢骨内部の空隙,すなわち嚢内腔(井尻, 第3大日歯(M3)の形成途中の吹柱が2本(pl.. 2;fig・. 2dのclとc2)見られる。.

(5) Early. Miocene. desmostylid. skull. from. Goyasu. formation. 61. 左側(pl. 2,丘gs. 1a-c):下顎体の遠心側の一部が現存し,左下顎第2大白歯(2M) が植立している。額側面ほ平面的であるが,舌側面は上部がゆるやかに膨らんでいる。. また,左下顎第2大白歯(2M)より遠心側には,右側同様,嚢内膜が認められ,嚢内鰹 には形成途中の左下顎第3大白歯(3M)の瞭柱が2本(pl.. 2;丘g.. 1bのclと2)存在. している。. 3.舌骨 1;丘g.. 茎状舌骨(pl.. 4)の一部が現存している。一端は関節部が残り,他方は破損. している。全体にゆるく湾曲し,その断面は長橋円形をなす。右茎状骨と思われる。現 存部分の最大長は,. 67mmである。. 4.切歯 先端部(pl.. 1;丘g.. 3)の80mmが現存している。横断面ほ亜楕円形をしており,そ. の最大径ほ15mmである。先端部ほ若干磨耗の痕跡が認められる。主軸に対して生長 輪が斜交する。左下と判定した。. 5.右上顎第1大白歯(Ml) 近・b額側の吹柱が失われており, ・. (pl. 1;丘gs.. 2a,b). 5唆柱のみ残っている。瞭柱配列ほ,. 1+・1+・2. 1である。現存部分の最大近遠心径は50mm,最大額舌径は28mmで,歯冠高は,. 頗側で第1列が12mm,第2列が11mm,第3列が8mm,第4列が6mmである。. 各校柱とも吹耗がかなり進行しており,内部の象牙質が露出している。校合両全体でみ ると,瞭粍は,近心頼側と遠心舌側で最もすすんでいる。第1列舌側吹柱は,舌側の半 分を欠く。舌側遠心側の歯茎付近にほ小結節が発達している。第2列舌側瞭柱は,校合 面における横断面が,近遠心方向にわずかに押しつぶされ亜円形をしており,その瞭柱 径は18mm. (最大値;以下同じ)の値をしめしている。第2列舌側瞭柱の唆柱径は,. 右上顎第1大白歯(Ml)の4吹柱(第1列舌側瞭柱を除く)の中で最も大きい。第3列 頼側吹柱は,校合面における横断面が,近心頼側と遠J[J舌側を結ぶ方向に長い楕円形に近 く,かつ,遁Lh頼側線と遠心舌側線が直線的になっているo第3列頼側吹柱の吹柱径は15 mmである。第3列舌側吹柱は校合面における横断面が真円に近く,唆柱径は15mm. である。第3列舌側吹柱の遠心面には,浅い按摩面が存在している。また,第3列舌側. 吹柱は,校合面において遠心舌側のエナメル質の一部が欠けている。第4列瞭柱は,吹 合面における横断面が四角形にちかく,近心の頼側線が直線的で,吹柱の径は13mm である。第1列舌側吹柱を除く4吹柱の中で最も小さい。第4列唆柱の舌側面にほ小結 節が発達し,遠心面には深く大きい按摩面が発達している。なお,第3列舌側嘆柱と第. 4列瞭柱の遠心面に存在する按摩面は,右上顎第2大白歯(M2)の第1列の頬側,舌側 唆柱の近心面の按摩面とびったり一致する。 6.右上顎第2大白歯(M2). (pl. 1;丘gs.. 1a-c). 大きな7本の瞭柱からなる。第1列頼側瞭柱の頬側面に唆柱が付着していた痕跡が認 められることから,本来は8蚊柱であったと考えられる。吹柱配列は2(+1). ・2・2・1.

(6) 62. A.. である。近遠心径は,. SATOI1,. K.. HASIIIMOTO. and. Y.. HASEGAWÅ. 71mm,原音径ほ第1列が32mm+,第2列が42mm,第3列. が39mm,第4列が14mmである。. 7喫柱のうち,第2列頼側と舌側嘆柱,第3列頬. 側唆柱の3瞭柱だけがわずかに攻耗しているが,. ・′内部の象牙質が露出するまでには至っ. ていない。他ほ,末吹耗の状態にあり,各校柱の先端部にほ頂高がある。吹耗を開始し. ている3瞭柱は,他の未吹耗の唆柱に比べて相対的に唆柱径が大きい。第1列頼側と舌 側吹柱は遠心側に,第2列席側吹柱は遠心舌側に,第2列舌側吹柱ほ遠心頼側に傾いて いる。第3列頼側瞭柱は近J亡上古側に,第3列舌側校柱は近心境側に,第4列吹柱は近心 側に傾いている。吹柱の傾きの度合いは,第1列額側と君側嘆柱,第3列舌側吹柱,第 4列瞭柱が,第2列頼側と君側吹柱,第3列頬側瞭柱に比べて強くなっている。特に第 1列額側と舌側瞭柱は,屈曲の程度が著しく,その先端面が第2-4列の唆柱に対して 調和的でなく,斜交するようになっている。吹柱の高さは下端が破損しているため明瞭. でないが,第2列舌側瞭柱が現存する7吹柱の中で最も高く,次いで第3列額側吹柱, 第2列君側瞭柱の順になっている。第1列頬側,舌側唆柱と第3列舌側吹柱は,ほぼ同 じ高さで,第2列舌側唆柱に次いで高い。第4列吹柱は,. 7吹柱の中で最も低い。なお,. 第1列頬側と舌側吹柱の近J[J面には接磨面があり,この按摩面は右上顎第1大日歯(Ml) の第3列舌側瞭柱と第4列瞭柱の遠心面に存在する接磨面とびったり一致する。 7.左上顎第2大白歯(2M). (pl. 1;丘gs.. 1a-c). 近心の吹柱が失われており,第3列頻側と舌側唆柱,第4列瞭柱の3吹柱だけがみら れ,これら3吹柱とも未攻耗で,各校柱の先端面にほ頂高がある。唆柱の高さほ,第3. 列頼側唆柱が3瞭柱のなかで最も高く,次いで第3列舌側瞭柱,第4列瞭柱の順になっ ている。. 8.右下顎第2大日歯(M2). (pl. 2;丘gs.. 2a-d). 6吹柱からな′り,吹柱配列ほ2・2・2である。近遠心径は. 66mm,頬舌径は第1列. が36mm,第2列が38mm,第3列が32mmである。. 6嘆柱のうち,第1列舌側. 唆柱と第2列額側瞭柱ほ先端面の舌側半分が頂寓を残しながらもわずかに瞭耗している。 第1列頼側嘆柱ト第2列舌側唆柱,第3列頼側と舌側瞭柱ほ,未唆耗で先端面に頂高が. 存在している。第1列頬側唆柱ほ遠心側に,第1列舌側吹柱は遠心舌側に傾いている。 第2列額側瞭柱は近心側に,第2列舌側瞭柱は近心類例に傾いている。第3列頼側と舌. 側吹柱は近心側に傾いている。唆柱の傾きの度合いは,第3列頼側と舌側唆柱が,第1 列頼側と舌側瞭柱,第2列の頻側と舌側唆柱に比べて強くなっている。吹柱の高さほ,第 1列頼側と舌側瞭柱,第2列頬側と舌側唆柱の近心2列の4瞭柱が,第3列頬側と舌側. 吹柱より高くなっている。近心2列の4唆柱の中では,第1列舌側瞭柱が最も高く,吹 いで第2列舌側吹柱が高い。第1列頼側吹柱と第2列額側吹柱は,ほぼ同じ高さで第2 列舌側唆柱よりわずかに低い。第3列では,頼側瞭柱が舌側唆柱よりわずかに高い。ま. た,第1列感側と舌側瞭柱の近心面には,按摩面が存在する。 9・左下顎第2大白歯(2M). (pl. 2;丘gs.. 6瞭柱からなり,瞭柱配列は2・2・2であるo. 1a-d). 6唆柱とも未瞭耗で,各暁柱の発端面.

(7) Early. Miocene. desmostylid. skull. from. Goyasu. formation. にほ頂窟が存在している。近遠心径ほ71mm,頬舌径は,第1列が41mm,第2列が 40mm,第3列が28+mmである。第1列頼側瞭柱ほ遠心舌側に,第1列舌側瞭柱は 遠心頬側に傾いている。第2列頼側吹柱は近心に,第2列舌側唆柱ほ近心横側に傾いて いる。第3列頬側と舌側瞭柱は近心側に傾いている。傾きの度合いは,第1列舌側唆柱, 第2列舌側唆柱,第3列頼・舌側吹柱が,第1列頼側吹柱,第2列頼側瞭柱に比べて強 くなっている。攻柱の高さは,第1列頬側と舌側吹柱,第2列頼側と舌側吹柱の4唆柱 が,第3列頬側と舌側瞭柱の2瞭柱に比べて高くなっている。近心2列の4唆柱の中で は,第1列舌側瞭柱が最も高く,次いで第2列舌側瞭柱が高い。第1列頼側嘆柱と第2 列額側瞭柱ほ,ほぼ同じ高さで第2列舌側嘆柱よりわずかに低い.第3列でほ頼側吹柱 が舌側吹柱よりわずかに高い。. (pl. 2;負g.. 10.右下顎第3大白歯(M3). 2d). 形成途中の状態にあり,未完成の吹柱が2本認められる。′歯嚢骨内に存在しているた めクリ-ニソグ作業に限度があり,瞭柱の全体の形ほ把握できないが,′おそらく,左下. 顎第3大白歯(3M)同様,. 「犬歯+状の形をしていると思われる。吹柱は,茶褐色のエ. ナメル質からなっているが,象牙質が欠落しているため,瞭柱の内部が空洞になってい る。エナメル質の厚さiま, 0.6-0.8mmである。 ll.左下顎第3大白歯(3M). (pl. 2;五gs.. 1b, d). 右下顎第3大白歯(M3)同様,歯嚢骨内で形成途中にあり,未完成の攻性が2本だけ 認められる。未完成の瞭柱は,. 「犬歯+状の形をしており,その大きさは,最大長25mm,. 最大径8mmである。エナメル質の厚さほ非常に薄く1mm以下である。. ⅠⅤ.五平久保標本の歯種同定の根拠. 五平久保標本では,大E]歯は,右上顎第1大日歯(Ml),右上顎第2大白歯(M2),左 上顎第2大日歯(2M),右下顎第2大白歯(M2),右下顎第3大白歯(M3),左下顎第2 大白歯(2M),左下顎第3大白歯(3M)の計7点が得られている。そのうち,右上顎第 1大白歯(Ml)だけが顎骨から遊離しており,また,右下顎第3大白歯(M3)と左下 顎第3大白歯(3M)は歯嚢骨内で形成途中にある。これら7点の大白歯の歯健の同定 ほ,次のような根拠に基づいている。. 7点の大白歯のうち,ただ1点だけ顎骨から遊離している右上第1大白歯ほ,その遠 心面に按摩面が存在している。この接磨面は,右上顎の大白歯の近心面に発達している. 接磨面とびったり一致する。従って,遊離した第1大白歯ほ右上顎のものと判定される。 このことから,顎骨から遊離している大日歯と上顎骨に植立している右上顎の大白歯 ほ,. Ml・M2,或るいはM2・M3である。ところが,上顎骨を背面から観察すると上顎骨. に植立している右上顎の大白歯より後方に厚さ約1mm程度の薄い板状の骨が,道三角 1937)がある。嚢外腔が存在してい ドーム形を形成している。すなわち嚢外艦(井尻, ることは,植立している右上顎の大白歯に加えてその奥にもう1点の大白歯が形成されて. 63.

(8) 64. A.. SATOrI,. K.. HASHIMOTO. Y.. and. HASEGAWA. いることを意味する。よって按摩面が一致する顎骨から遊離している大白歯に植立して いる右上顎の大臼歯は,それぞれ右上顎第1大白歯(Ml),右上顎第2大白歯(M2)に 同定される。また,左上顎の大白歯は近位の四境柱は欠如しているが遠位の三嘆柱が右 上顎第2大白歯(M2)と対称的な位置に植立している。また,三嘆柱の磨粍はなく, 右上顎第2大白歯(M2)と同様であることから萌出時期が同じと考えられ,左上顎第2 大白歯(望M)に同定される。 右下顎骨の現存部分でほ,大日歯が1個植立し,植立している大日歯より遠・Lh側には 歯嚢骨内で形成途中にある分離した嘆柱が2本(cl,. C2)存在している。左の下顎骨でも,. 左下顎の大白歯が1個植立し,その大白歯より遠心側には歯嚢骨側で形成途中にある瞭 柱が2本(cl,C2)存在している。左・右の下顎骨において植立している大白歯と歯嚢骨 内の形成途中の大白歯の歯種は, Ml・M2,或るいはM2・M3の可能性がある。そこで 上顎と下顎の大白歯の吹耗の程度を比較してみる。右上顎第1大白歯(Ml)ほ嘆耗が進 衣,歯冠高が小さい。右上顎第2大白歯(M2)ほ現存する7唆柱のうち,第2列頼舌側, 第3列頼側の3唆柱のみがわずかに唆耗しているだけである。一方,右下顎骨に植立し ている大白歯は6瞭柱のうち,第1列舌側と第2列額側?2吹柱のみにわずかな唆耗の 痕跡が認められるだけで,左の下顎骨に植立している.大白歯は6吹柱すべてが未吹耗の 状態にある。左右の下顎骨に植立している大日歯の暁耗状態は,右上顎第2大日歯(M2) に近い。よって左右の下顎骨において植立している大白歯は第2大白歯,歯嚢骨内の形 成途中の大白歯は第3大日歯に同定される。. Ⅴ.五平久保標本の意義 これまで日本において,. Desmostylus. の頭蓋や大日歯がある程度まとまって発見さ 1902),長倉(-磐城)標本(徳. れているのは,戸狩標本(YosHIWARAandlwASAKI,. 1951),上徳志別標本(秋山・熊野,. 永, 1936),気屯標本(井尻・亀井,. 1988・)である。そのうち五平久保標本のよ. 1984),歌登Ⅰ標本(大塚,. 本(木村・赤松,. 1973),穂別標. うに口蓋骨の形願が良好に保存されているのは,歌登Ⅰ標本だけである。また,五平久 Desmostylusの3M,. 保標本ではじめて,. M3. の形成初期の状態を知ることができるo. 五平久保標本は,歯種を正確に知ることができたので,他の歯種が明らかにされてい. る標本との相対的な年齢関係を考察することが可能である。五平久保標本と長倉標本, 戸狩標本を比較した結果は次のとうりである。なお,戸狩標本の上顎骨に存在している 右上顎の3点の白歯をYosHIWARA ・M2. MATSUMOTO. としたが,. and. (1918)ほ,. IwASAKI P4・M之・M3. (1902)は,近心から遠心へP2. ・. Ml. に同定している。五平久保標. 本のM2は戸狩標本の3点の右上顎の白歯のうち大白歯と吹柱配列のパターンや大きさ が類似しているので,. YosHIWARA. であると考えられる。本論では. 倉標本は,乞M. ・. and REINHART. IwASAKI. (1902)がMlとした大白歯ほM2. (1959)の歯種同定に従うことにした。長. 3Mを使用していたのに対し,戸狩標本はM3が歯嚢骨内で形成途中に. あり,五平久保標本はM乞が,ほぼ萌出を終えたばかりである。また,戸狩標本のM2 は,. 8吹柱すべてが唆耗しているが,五平久保標本のM望は現存する7吹柱のうち,. 吹柱だけが瞭耗し,その吹耗の程度も,唆柱内部の象牙質が露出するまでには至ってい. 3.

(9) Early. Mioeene. desmostylid. skull. from. formation. Goyasu. 65. ない。つまり,戸狩標本のM2は,五平久保標本のM2より唆耗が進行している。従っ て各標本を年齢順に若い方から並べると,五平久保標本,戸狩標本,長倉標本という順 になる。なお,五平久保標本,戸狩標本,長倉標本の上顎第2大日歯と下顎第2大臼歯 の測定値を第1表,第2表に示す。. 第1表. 上額第2大白歯の測定値の比較. (単位はmm,. 標. 本. 名. 五平久保標本 長 倉. 標 本. 戸 狩 標. 本. 左右. 近遠心径. R.. 71. 42. L.. 62. 45. R.. 66. 45. 第2表. 標. 本. 名. 左右. 五平久保標本. 頬舌径l. R;右側, 備. 頬舌径l. R. 66. 38. L. 71. 41. 長 倉 標. 本. R. 67. 45. 戸 狩標. 本. L. 64. 40. また,五平久保標本ほ,これまでの日本における. 考. 頬舌径ほ,第2列の数値 徳永(1936)より引用. 下顎第2大白歯の測定値の比較. (単位はmm, R;右側, 近遠J亡J径. L;左側). L;左側). 備. 徳永(1936)より引用. Desmostylus. の産出層準でほ最も. 下位になる。鎮西(1984)によると日本におけるDesmostylusの生息期間は,約16.5Ma とされている。常磐炭田地域の新第三系ほ,下位から上位-湯長谷層群,. (N.8)-13Ma. 白土層群,高久層群,多賀層群に区分されている(第3表)が,そのうちDesmostylus の生息期間の下限のN.8に相当するのは,高久層群沼ノ内層である(KATO. 1980)0. 五平久保標本産出層の五安層,長倉標本産出層の亀ノ尾層が属する湯長谷層群は,白土 層群を間に挟んで,高久層群より下位'Kある。鎮西(1984)は,長倉標本の産出層準を N.8にしたが,その後,小泉(1986)の研究によって平層は,珪藻化石層序でほKoIZUMI (1985)の. Kisselviella. carima帯(?-17.9Ma)に対比されることが判明し,珪藻化 N.6にされているので,平層の下位 石層序と浮遊孔虫化石層序の対応によって平層が の亀ノ尾層は,. N.6. かそれ以下である。五安層は,亀ノ尾層よりさらに下位にあるの. で,五平久保標本の産出層準は, N・3. ぐらいまで逆のぼるかもしれない。現在のとこ. ろ,五安層の徴化石に関するデータがないので推論の域を出ないが,少なくともN.6 よりは確実に古い。. 以上のことをまとめると,五平久保標本は,これまで余り明らかでなかった stylus. の口蓋骨遠J山部の形態やM3. ・. 3M. Desmo-. の形成初期の状態を知ることができる重要な. 標本で,年齢的には戸狩標本より若干,若い個体である.そして,従来の日本における. Desmostylusの産出層準より下位から産出した重要な資料である。.

(10) 66. A.. 第3表. SATOH,. K.. HASHIMOTO. and. Y.. HASEGAWA. 常磐炭田地域新第三系の層序と浮遊性有孔虫生層序の対比表・ Kato(1980). 地層名(層厚). 地質時代. 小泉(1986). 多賀層群(310m) N.8′. N.9. 下高久層(21Pm). 節. N.8. 高久層藤沼ノ内層(125.m) 上高久層(120m). 第. N.7. 二亘互車重工車-:B-_-:_i-_-:iLi車S-i_二 平層(430-465m). N.6 __________?.____∴__-__. ★亀ノ尾層(135m) 場長谷層群. 水野谷層(130m). 紀. *五安層(260m) 和平層(110m) Mitsui. 層序は須貝托か(1957),. ★:長. *:五平久保標本産出層,. (1971)に基づく。. 倉標本産出層. 参. 考. 献. 文. 78ト786・ 秋山雅彦・熊野純男(1973)北海道歌登町上徳志別産デスモスチルス・地質雑,了9, 鎮西清高(1984)デスモスチルス類の産状と時代的・古地理的分布・地団研専報28,デスモスチ. ルスと古環免13-18. Desmostylus 井尻正二(1937) 44, dentis).地質雑,. 1177-1193・. NAGAOと岐阜県産のPaleoPara-. mirabilis. 井尻正二・亀井節夫(1961)樺太産のDesmostylus doxia. sacculi. jaPonicusに於て発見された新歯牙発生組織・歯嚢骨(Os. 44,. (ToKUNAGA)の頭蓋骨の研究,地球科学, 犬塚則久(1984)デスモスチルスの研究と諸問題.地団研専報, tabatai. 1-271. 28,デスモスチルスと古環境卜. 12. 39, 3, 139-180・ 犬塚則久(1988)北海道登町産Desmostylusの骨格Ⅰ・頭蓋,地調月報, jaPonicusの模式標本(戸狩標本) 犬塚則久(1989) Desmostylus白歯の歯種同定の再検討-D・ 95,. を中心として-地質雑, KATA,. (1900) Planktonic in the Joban coal丘eld, (Geol.), 50, 35-95.. I, 17-31.. foraminiferal. M.. biostratigrapby. Honsbu,. northeast. Japan.. of the Takaku S°i. Rep., Tohoku. 木村万一・赤松守雄(1984)北海道穂別町産デスモスチルスについて(第1報) 館研究報告, I, ll-23. KoIZUMI,. Ⅰ. (1985) Geol.. 小泉. Soc.. late. Cenozoic. 2nd. ser・. ・穂別町立博物. Northwest. Jour・. Pacific・. 91, 3, 195-211.. Japan,. 念地質学論文集, of. oflARA,. for. biochronology. Univ‥. 格(1986)常磐炭田新第三系の珪藻年代層序-湯長谷・白土・高久属群-北村信教授記 H.. MATSUMOTO, MITSUI,. Diatom. Groups. Taga. and. 175-191.. (1918). Desmostylus・. A Sci・. contribution Rep・ Tohoku. to. the. lmp・. morphology, Univ・, ser・.,. paleobiology, 3, 6l-74・. and. in the lwaki Studies on (1971) the mechanism rocks of sedimentary S°i. Rep. Toboku Univ・, Prefecture. Joban coaト丘eld, Fukusbima tbe (Geol.), 42, 3, 199-272. S.. S. and. NEMOTO,. N.. (1984). Molluscan. fossils. from. the. type. Goyasu. systematic of. area. 2nd. ser・. formation.

(11) Early. of. the. REINHART,. Miocene. desmostylid. skull. from. Goyasu. formation. Joban coal丘eld. Jour. Colt. Art. S°i. Chiba Univ., 45-61. (1959) A Review Desmostylia. Univ. of the Sirenia and. R.. in Geol. SIIIKAMA,. T. Special. California. Pub.. S°i., 36,ト146.. (1966) Papers,. 須貝貫二・松井. Postcranial. skeletons. of. Japanese. Desmostylia.. 寛・佐藤. soc.. Japan,. 茂・喜多川庸二・佐々木実・宮下美智夫・河内英幸(1957)日本炭 地質調査所,. 1-143.. 徳永垂康(1936)福島県湯本町附近より発見せる「デスモスチラス+.地学雑48, YosHIWARA, S・ and IwASAKI, I (1902) Notes on new fossil mammal. Univ.,. Paleont.. 12,ト202.. 田図I・常磐炭田地質図ならびに説明各. Imp.. 67. Tokyo,. Japanリ16.. art.. 6,ト13.. 473-484.. Jour. Coil. Sci.,.

(12) 図 図版Ⅰ 図1 2 3 4. 図版Ⅱ 囲1 2. 版. 説. 明. 五平久保標本頭蓋の一部; a,腹側. b,右側面. 同上右上顎第1大白歯; a,舌側. b,校合面. 同上,切歯;頬側, 同上,茎状舌骨後面.. c,背側. -cl,C2はM3の暁桂一. b,遠心イ凱 c,頬側・ d,校合面・ 五平久保標本左下顎骨; a,舌側. b,舌札 同上 右下顎骨;a,頬側. -Cl,C2はM3 c,校合面. d,腹側I. の咲柱-.

(13) A.. SATOⅢ,. K.. HASHIMOTO. 2a. 2b. 3. 4. and. Y.. HASEGAWA. Sec.. ⅠⅠ,Plate. 1.

(14) A.. SATOH,. H.. HASEIMOTO. and. Y.. HASEGAWA. Sec.. ⅠⅠ, Plate. 2.

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