バイオメトリック認証システム : 5.バイオメトリック認証技術の標準化動向
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(2) 特集 バイオメトリック認証システム アプリケーションごとの考慮事項 アプリケーション毎の考慮事項 アプリケーションプロファイル アプリケーションプロファイル 認証モジュール 認証モジュール API API. 相互運用. . データフォーマット (モダリティごと) (モダリティ毎 ). IC ICカード内 カード内 格納形式とコマンド ファイルフォーマット API, API, Format Format 適合性 適合性. 導入基準. 導入環境. セキュリティ評価 用語統一 用語統一. 性能評価 性能評価 社会的課題へのガイドライン. 図-1 標準化の主な対象項目. は処理方式に応じた複数のフォーマットが標準化されて. しい.このような考え方は,特にプライバシーに敏感な. いる.たとえば,技術的に成熟している指紋の場合,指. 欧州において顕著である.標準化の一環として,社会的. 紋画像形式だけでなく,指紋特徴点を格納する形式等も. 課題に対するガイドラインをテクニカルレポートとして. 標準化されている.. 策定する作業が進行中である.. ■導入基準. 標準化の体制. 現状のバイオメトリクス製品においては,認証アルゴ リズム/実装がブラックボックスとして扱われている.. バイオメトリック技術にかかわる標準化は,情報処理. またその認証精度についてもベンダが独自基準で算出し. 技術に関する公的な標準を策定するISO/IEC JTC1内. た精度がカタログに表記されているため,導入現場にお. の第37分科委員会(SC37)を中心として進められている.. いてどの程度の性能が確保できるかを導入側の視点では. このSC37を中心とした標準化体制を図-2に示す.. 判断しにくい状況となっている.このような状況を打開 するため,精度評価方法および評価結果の表記方法に関. ■ISO/IEC JTC1 SC37. する標準化作業が進められている.. SC37は2002年12月に初回総会が開催された歴史の. また,バイオメトリック技術をセキュリティ技術と捉. 浅い分科委員会である.2001年9月の米国同時多発テ. えた場合には,精度評価のみならず, 「3. 認証システムの. ロ以降,国土安全保障の強化策としてバイオメトリクス. 安全性を明らかにする取り組み」で述べられているような. 導入を積極的に推進している米国の働きかけが,SC37. バイオメトリクス特有の脆弱性に対するセキュリティ評. 設立に強く反映されており,幹事国は米国,議長も米国. 価が重要となる.そのため,バイオメトリクス特有の脆. から輩出されている,. 弱性に対する評価基準の標準化が進められている.. SC37では,2006年4月現在,22カ国の参加国およ び6カ国のオブザーバがメンバとなり,年1回の総会お. ■導入環境. よび年2回のWG会議を通じて標準化作業を進めており,. バイオメトリックシステムがさまざまな分野で応用さ. 日本では,(社)情報処理学会情報規格調査会内に設置. れ始めている一方,使われている用語は現状統一されて. されたSC37国内委員会が対応している.2006年1月の. おらず,実装者/利用者が混乱する可能性が指摘されて. WG会議は,日本がホスト国となり京都において開催さ. いる.このため,標準化の一環として用語集の作成が実. れた.. 施されている.. SC37内には表-1に記した6つのWGが設置されており,. また,バイオメトリック認証を社会インフラにおける. 前述の対象項目の標準化作業が進められている.. 本人確認手段として用いる場合には,利用者のプライバ シー確保やハンディを持つ人の使いやすさの考慮(アク. ■ISO/IEC JTC1 SC17. セシビリティ)等の社会的課題に対し,技術的な措置の. カードおよび個人識別を取り扱うSC17においては,. みならず,運用面でも適切な処置が施されることが望ま. SC37設立以前よりバイオメトリクスに関連した標準化. 614. 47 巻 6 号 情報処理 2006 年 6 月.
(3) 5:バイオメトリック認証技術の標準化動向. アプリケーション. 金融分野 金融分野 (ISO (ISO TC68) TC68). ISO/IEC JTC1. ICカード併用 IC カード併用 (SC17) (SC17). PKI 環境下 PKI 環境下 (ITU-T (ITU-T SG17) SG17). バイオメトリクス一般 (SC37) (SC37). セキュリティ (( SC27) SC27). バイオメトリック技術. 図-2 標準化体制. WG. スコープ. 主な標準化項目. WG1. 用語. 用語. WG2. インタフェース. API(BioAPI, BioGUI),ファイルフォ ーマット(CBEFF),適合性試験. WG3. データ交換形式. モダリティごとのデータフォーマット 顔画像撮影ガイドライン,データ品質. WG4. アプリケーション プロファイル. 相互運用とデータ交換のためのプロ ファイル (共通アーキテクチャ,空港従業員の アクセスコントロール,船員認証). WG5. 性能試験. 性能評価に関する原則とフレームワ ーク 試験方法論.モダリティ依存試験法, データ交換形式での精度と互換性試験. WG6. 社会的課題. 社会的課題に対するガイドライン ピクトグラム. への取り組みが行われてきた.具体的にはICカードへ のバイオメトリック情報の格納形式および通信コマンド を規定したISO/IEC 7816-11の標準化が完了している. 最近では,ICAOと協力して,電子パスポートへのバイ オメトリック情報の搭載方法に関する検討を行っている.. ■ISO/IEC JTC1 SC27. 表-1 SC37のWG体制と主な標準化項目. 情報セキュリティを取り扱うSC27においては,主に セキュリティ技術としてのバイオメトリクスに関連した. 保できず,運用上支障をきたす場合がでてくる.今後は,. 標準化が行われている.前述のバイオメトリクスのセキ. マルチベンダ環境においても最善の認証性能を確保する. ュリティ評価に関する標準化が進行中のほか,テンプレ. ために,データ品質に関する標準化を迅速に進めること. ート保護技術,バイオメトリクスを用いたリモート認証. が重要であろう.. 環境を保証する仕組み等の標準化が今後実施される予定. また,導入基準としての標準化が進められている精. となっている.. 度・セキュリティ評価は,方法論ベースの標準化であり, 標準手法に基づいて適切に評価されたことの裏付けが重. ■ISO TC68. 要となる.精度評価手法に関する標準化については,日. 特定のアプリケーション分野におけるバイオメトリク. 本国内では,SC37における策定作業以前から,モダリ. ス関連の標準化としては,金融分野で利用される情報通. ティごとの精度評価方法に関するJISTR文書を策定する. 信技術の標準化を担当するTC68における活動が現時点. といった先駆的な取り組みがなされてきたが,今後は,. では唯一である.具体的には,金融業務にバイオメトリ. 標準に基づく評価の妥当性を検証する評価機関の設立等,. ック技術を適用する際のシステム設計・管理上の留意点. 運用面での体制整備が重要と考える. に関するガイダンスを標準として策定中である.. なお,刻々と進展する各標準化項目の最新状況につい. 1) ,2). .. ては紙面の都合もあり紹介を割愛した.この詳細につい. ■ITU-T SG17. てはISOのWebサイトを参照していただくほか,年2回. ITU-T SG17では,オープンネットワークにおいて. のWG会議開催後にバイオメトリクスセキュリティコン. 安全なバイオメトリック認証を提供する仕組みとして,. ソーシアムが主催して実施される標準化最新動向セミナ. PKIと組み合わせたバイオメトリック認証システムメカ. にご参加いただければ幸いである.. ニズムの標準化作業が進められている.. 最後となるが,本稿における見解は,筆者個人に属し, 筆者の所属するセコム(株) の公式見解ではないことを念. 今後の課題 バイオメトリック技術に関する標準化が本格的にスタ ートし3年強が経過した.特に,仕様上の互換性を確保 するための標準化は急ピッチで進展している.その一方 で,実際にマルチベンダ環境で相互運用を行う場合には, 仕様上の互換性を確保するだけでは十分な認証精度を確. のため申し添えさせていただきたい. 参考文献 1)(独)情報処理推進機構:各国バイオメトリクスセキュリティ動向の 調査, http://www.ipa.go.jp/security/fy15/reports/biometrics/ index.html (2004). 2)( 独 ) 情 報 処 理 推 進 機 構: バ イ オ メ ト リ ク ス 評 価 に 関 す る 調 査, http://www.ipa.go.jp/security/fy16/reports/biometrics/index. html (2005). (平成18年5月12日受付). IPSJ Magazine Vol.47 No.6 June 2006. 615.
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