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腹部呼吸介助が呼吸機能と横隔膜機能に与える影響

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(1)

腹部呼吸介助が呼吸機能と横隔膜機能に与える影響

Effects of Expiratory Abdominal Compression on Respiratory Function

金子 秀雄

1)

  大野 正也

2)

  諸富 誠一

3)

今山 隆士

3)

  永井 良治

1)

  松田 憲亮

1)

HIDEO KANEKO1), MASAYA OHNO2), SEIICHI MORODOMI3), TAKASHI IMAYAMA3), YOSHIHARU NAGAI1), KENSUKE MATSUDA1)

1) Department of Physical Therapy, Fukuoka School of Rehabilitation Sciences, International University of Health and Welfare:

137–1 Enokizu, Okawa-shi, Fukuoka 831-8501, Japan. TEL+81 944-89-2000 E-mail: [email protected]

2) Department of Rehabilitation, Nijigaoka Hospital

3) Department of Rehabilitation, Takagi Hospital

Rigakuryoho Kagaku 26(5): 661–665, 2011. Submitted Apr. 25, 2011. Accepted Jun. 3, 2011.

ABSTRACT: [Purpose] To investigate the effects on respiratory function of expiratory abdominal compression designed as an alternative technique to expiratory rib cage compression. [Subjects] Ten healthy male subjects participated. [Methods] Subjects underwent manual expiratory compression of the upper rib cage, lower rib cage and abdomen in the supine position, and that of the abdomen in Fowler’s position. The tidal volume (VT), minute ventilation (VE), respiratory rate (RR), changes in diaphragm thickness (ΔTdi%), and ΔTdi%/VT during quiet breathing and the interventions were compared. [Results] Compared to quiet breathing, VT and VE significantly increased and RR significantly decreased during all the interventions. However, there were no significant differences between the interventions. ΔTdi% significantly increased in expiratory abdominal compression in Fowler’s position compared to quiet breathing; ΔTdi% was not able to be measured in the lower rib cage compression. ΔTdi%/VT in expiratory abdominal compression in Fowler’s position indicated the highest value and it was significantly increased compared to that in the expiratory compression of the upper rib cage and abdomen in the supine position. [Conclusion]

These results suggest that expiratory abdominal compression increases ventilation as well as expiratory rib cage compression, and that in Fowler’s position, it enhances diaphragmatic contribution to tidal volume.

Key words: manual expiratory compression, respiratory function, diaphragm

要旨:〔目的〕胸郭への呼吸介助の別法として考案した腹部への呼吸介助が呼吸機能と横隔膜機能に与える影響につ いて検証した.〔対象〕健常男性10名を対象とした.〔方法〕対象者に背臥位での上部胸郭,下部胸郭,腹部の呼吸

介助とFowler位での腹部呼吸介助を行った.安静呼吸および呼吸介助中における一回換気量(VT),呼吸数(RR),

分時換気量(VE),横隔膜の筋厚変化(ΔTdi%),VTにおける横隔膜寄与率(ΔTdi%/VT)を比較した.〔結果〕安 静呼吸と比べ,すべての呼吸介助でVT,VEが有意に増大し,RRが有意に減少したが,呼吸介助間に有意差はなかっ た.ΔTdi%は,測定できなかった下部胸郭呼吸介助を除き,Fowler位での腹部呼吸介助だけが安静呼吸時より有意 に増大した.ΔTdi%/VTはFowler位での腹部呼吸介助が最も大きく,背臥位での上部胸郭および腹部呼吸介助より 有意に増大した.〔結語〕健常者に対する腹部呼吸介助は,胸郭呼吸介助と同様に換気を増大させ,特にFowler位で 行うことによりVTにおける横隔膜寄与率を増大させることがわかった.

キーワード:呼吸介助,呼吸機能,横隔膜

1) 国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部理学療法学科:福岡県大川市榎津137–1(〒831-8501)TEL 0944-89-2000

2) 虹が丘病院 リハビリテーション部

3) 高木病院 リハビリテーション科

受付日 2011年4月25日  受理日 2011年6月3日

(2)

I.はじめに

胸腹部外科術後や人工呼吸器管理でベッド上安静が強 いられる状況では,肺合併症予防のため体位変換ととも に呼吸介助がしばしば併用され,局所換気の改善が図ら れる.また、進行した慢性閉塞性肺疾患のように換気が 亢進している場合では,換気を補助し呼吸調整を図るた めに呼吸介助が用いられる.日本では,伊藤1)によって 取り纏められ,紹介された手技であり,患者の胸郭に手 掌面を当てて呼気時に胸郭を圧迫し,次の吸気時に圧迫 を除去することが繰り返される.結果として、胸郭圧迫 による呼気量の増大と呼吸器系の弾性力を利用した吸気 量の増大によって換気を改善させることができる.逆に,

換気改善が期待できない場合は適応外となる2).特に,

胸郭を圧迫しても呼気が促されない場合,その効果は期 待できない.

しかし,換気には胸郭だけでなく腹部も連動する.吸 気時は横隔膜の下制により腹部が膨隆し,呼気時は腹筋 群の収縮により腹部が陥凹する.特に,腹筋群の呼気活 動は,横隔膜を挙上させより大きな張力を発揮させるだ けでなく3),吸気直前に腹筋群をリラックスさせること で吸気を補助する4)ことが知られている.つまり,胸郭 への呼吸介助(胸郭呼吸介助)と同様,腹筋群の働きを 補助するように腹部への圧迫と除去を繰り返すことは,

局所換気の改善や呼吸仕事量を減少させる可能性があ る.一般に,呼気時に腹部圧迫を加える手技は咳嗽介助 として利用されているが,呼吸介助を目的とした効果に ついては知られていない.先行研究では,胸腹部を同時 に圧迫する胸腹式呼吸介助の効果について検証した報 告5)はあるが,腹部への呼吸介助について触れた先行研 究は見当たらない.

そこで,本研究では,胸郭呼吸介助と同様な手順を用 いた腹部への呼吸介助(腹部呼吸介助)を考案した.そ して,その影響を検証するために,健常者を対象に胸郭 および腹部呼吸介助中の呼吸機能と横隔膜機能について 測定した.

II.対象および方法

1.対象

健常男性10名を対象とした.年齢は20.6±0.5歳,身 長は1.72±0.10 m,体重は61.8±7.0 kg(平均±標準偏差)

であった.胸腹部外科術後,呼吸器疾患,循環器疾患,

神経疾患の既往のある人は除外した.本研究は所属施設 の倫理委員会の承認を得た後,すべての対象者に書面に て本研究の説明と同意を得た.

2.方法

背臥位における上部および下部胸郭呼吸介助と背臥位

とFowler位の2肢位における腹部呼吸介助を行った.腹 部呼吸介助は姿勢による影響を検討するため,Fowler 位の条件を加えた.上部および下部胸郭への呼吸介助で は,術者は対象者の側方に位置し,両手掌をそれぞれ両 側の上部および下部胸郭に置き,呼気時にゆっくりと胸 郭に圧迫を加え,胸郭の動きが自然に止まるところまで 行い,吸気に移行すると同時に圧迫を完全に除去するよ うに行った2)

腹部呼吸介助では,一側の手掌を対象者の臍部から上 腹部にかけて置き,呼気時にゆっくりと頭背側方向へ圧 迫を加え,腹部の動きが自然に止まるところまで圧迫を 加えた.吸気に移行すると同時に圧迫を完全に除去した.

圧迫部位を広げるため手指は外転位にし,腹腔臓器を頭 側に移動させるイメージで圧迫を加えた.その強さは不 快感の訴えや腹筋群の収縮を認めない範囲でできるだけ 腹部を陥凹させ、繰り返せることを目安とした.

対象者には意識的な吸気と呼気を行わないよう指示し た.術者には対象者の呼吸リズムに合わせて呼吸介助を 行い,そのとき対象者に声かけをしないよう指示した.

呼吸機能を評価するために,多機能型のスパイロメー タ(HI-801, Chest)を用いて,一回換気量(VT),呼吸数

(RR),分時換気量(VE)を測定した.このスパイロメー タは,換気量を1分間測定できる測定モードがあり,VT,

RR,VEを求めることができる.

横隔膜機能を評価するために,横隔膜の筋厚(Tdi)を 測定した.測定には6.0 MHzの超音波画像計測装置とB モード,リニア式プローブ(Mirucube,Healthscan)を利 用した.プローブは右中腋窩線から前腋窩線上の間の第 8または第9肋間にプローブを置き,横隔膜に垂直にな るようにし,腹膜,横隔膜,胸膜の三層構造からなる横 隔膜を確認できるようにプローブ位置を微調整した.プ ローブ位置には印をつけ,再測定時に同じ位置になるよ うに配慮した.超音波画像はビデオファイルとして記録 した.パソコン上にて吸気終末時と呼気終末時の静止画 像を3呼吸分抽出し,筋厚測定には画像処理ソフト(NIH,

Image J)を用いた.Tdiは胸膜中央から腹膜中央までの 距離とし,0.1 mm単位で測定した6).呼気終末時のTdi

(Tdi,ex)と吸気終末時のTdi(Tdi,in)の差(∆Tdi)を計算 し,Tdi,exに対する百分率で表した(∆Tdi%).横隔膜は 短縮すると,横隔膜長に反比例してTdiが増大する.ゆ えに,横隔膜が伸張されTdiが最小となる呼気終末時の 値をTdi,exとし,逆に,横隔膜が短縮しTdiが最大とな る吸気終末時の値をTdi,inとした.この差であるΔTdiは,

横隔膜の形態的変化として,筋収縮だけでなく筋量も反 映される.そのため,横隔膜機能評価の指標にはTdi,ex に対する∆Tdiの割合,∆Tdi%が用いられている5,6).∆

Tdi%は肺気量や吸気圧に応じて変化し6,7)非侵襲的に測 定できる横隔膜機能の指標として補助的診断にも利用さ れ て い る8-10).さ ら に,本 研 究で は,VTに対す る∆

(3)

Tdi%の割合を求め,VTにおける横隔膜寄与率の指標 として利用した.超音波画像は測定に熟練した同一検者 によって行われ,その信頼性については先行研究によっ て示されている11)

対象者は,まずフェイスマスクを装着し,①安静背臥位,

②背臥位での上部胸郭呼吸介助,③背臥位での下部胸郭 介助,④背臥位での腹部呼吸介助,⑤Fowler位での腹 部呼吸介助,の5条件で測定を行った.最初に3分間の 安静状態を保った後に背臥位にて測定を行った.次に②

〜⑤の条件をランダムに実施した.呼吸介助は1名の熟 練した理学療法士によっておよそ2分間行われ,その間 は対象者に意識的な呼吸を行わないように指示した.術 者は対象者の呼吸と同調した呼吸介助が実施できている と判断した時点で合図を送り,これに合わせて超音波画 像を30秒間,VT,RR,VEを1分間測定した.各条件 間の休憩は1〜2分間とした.術者および対象者には,

呼吸介助によって期待される効果および結果が伝わらな いように配慮した.

測定した結果は平均値と標準偏差として表した.呼吸 機能および横隔膜機能について条件間の違いを比較する ためにSPSS,14.0J を使い,Tukey法による多重比較を 行った.有意水準は5%未満を有意とした.

III.結 果

安静時と呼吸介助時における呼吸機能と横隔膜機能を 表1に示す.安静背臥位と比較すると,すべての呼吸介 助においてVT,VEが有意に増大し,RRが有意に減少 した.しかし,呼吸介助間に有意差はなかった.∆Tdi%

の平均値は,上部胸郭呼吸介助,背臥位での腹部呼吸介 助,そしてFowler位での腹部呼吸介助が安静時より増 大した(それぞれ20%,56%,139%).しかし,安静背 臥位との比較で有意差を認めたのはFowler位の腹部呼 吸介助だけであった.さらに,Fowler位の腹部呼吸介助 は,上部胸郭呼吸介助と背臥位の腹部呼吸介助よりも有

意な増 大を認め た.Tdi,exに有 意 差は な かった が,

Tdi,inと∆Tdiは,上記の∆Tdi%と同様な変化を示した.

∆Tdi%/VTについては,Fowler位の腹部呼吸介助が背臥 位の腹部呼吸介助と上部胸郭呼吸介助よりも有意に増大 したが,安静背臥位との間には有意差が認められなかっ た.一方,上部胸郭呼吸介助の∆Tdi%/VTは,安静背臥 位より減少する傾向を示したが、統計的には有意ではな かった(p=0.06).

IV.考 察

本研究は,胸郭呼吸介助の別法として腹部呼吸介助を 考案し,その影響について呼吸機能,横隔膜機能の観点 から検証した.その結果,腹部呼吸介助は,胸部呼吸介 助と同様,VTの増大とRRの減少,そしてVEの増大を 生じさせることがわかった.さらに,Fowler位の腹部呼 吸介助は,背臥位の腹部呼吸介助や上部胸郭呼吸介助に 比べて∆Tdi%,∆Tdi%/VTが有意に増大し,横隔膜を利 用した換気であることが示された.

胸郭呼吸介助は,呼気時に胸郭圧迫により呼気を促し,

安静呼気位を越えることによって生じる胸郭の弾性力を 利用することで吸気を促すことができる5,12-14).伊橋 ら12)は,介助部位に関係なく呼吸介助を行うとVTが約 2倍に増加することを報告している.本研究における呼 吸介助によるVTは1.7〜1.9倍の増大と伊橋らの報告12) よりやや少ない結果であった.しかし,この結果は本研 究における安静時VTが高値であったことに起因するも のであり,呼吸介助時のVTは同程度の値であった.安 静時VTに関しては,呼吸介助の影響を検討した他の先

行研究5,13,14)と近似した値であり,フェイスマスク装着

による死腔増大の影響が反映したものと考えられる.ゆ えに,本研究における胸郭呼吸介助は先行研究と同等な 効果があったと考えることができる.結果として,本研 究で提案した腹部呼吸介助は,胸部呼吸介助のVTと同 等な値を示したことから,VT改善には有効な手法であ

表1 安静時および呼吸介助時の呼吸機能と横隔膜機能(n=10)

安静 腹部(背臥位) 腹部(Fowler位) 上部胸郭 下部胸郭 VT (l)

RR (回/min) VE (l/min) Tdi,in (mm) Tdi,ex (mm)

∆Tdi (mm)

∆Tdi% (%)

∆Tdi%/VT (%/l)

0.67±0.13 16.2±2.9 10.61±2.24

2.07±0.60 1.63±0.39 0.44±0.25 25.8±10.3 39.3±17.2

1.11±0.34*

12.6±2.8*

13.31±2.60*

2.34±0.72 1.66±0.46 0.68±0.36 40.2±19.1 37.1±16.0

1.20±0.30*

12.0±2.6*

14.15±3.34*

2.73±0.77*†‡

1.68±0.37 1.05±0.50*†‡

61.7±26.0*†‡

51.4±19.2†‡

1.22±0.34*

12.5±2.4*

14.81±3.80*

2.15±0.62 1.63±0.35 0.52±0.32 30.9±14.7 26.1±13.1

1.26±0.34*

12.0±1.8*

14.92±4.16*

値は平均値±標準偏差.VT:一回換気量;RR:呼吸数;VE:分時換気量;Tdi,in:吸気終末時の横隔膜筋厚;

Tdi,ex:呼気終末時の横隔膜筋厚;∆Tdi:Tdi,in-Tdi,ex;∆Tdi%:∆Tdi/Tdi,ex×100.

*:安静時との比較(p<0.05);†:腹部(背臥位)との比較(p<0.05);‡:上部胸郭との比較(p<0.05).

(4)

るといえるであろう.

本研究では腹部呼吸介助におけるVT改善のメカニズ ムとして,徒手的な圧迫とその解放による横隔膜作用の 増大が関連すると仮定した.すなわち,腹部圧迫により 横隔膜と腹壁が伸張されることによって,横隔膜の発揮 張力と腹筋群のリラックスが促され,横隔膜運動が増大 し,その結果としてVTを増加させると考えた.しかし,

安静背臥位と比較して∆Tdi,∆Tdi%が有意に増大した

のはFowler位の腹部呼吸介助だけであり,背臥位の腹

部呼吸介助では有意差を認めなかった.Fowler位の Tdi,inとTdi,exをみるとTdi,inが有意に増大しており,

これが∆Tdi,∆Tdi%の増大に反映していることがわかる.

言い換えれば,腹部圧迫により呼気を促しても横隔膜は あまり伸張されず,むしろ腹部圧迫の解放が横隔膜の尾 側への移動を増大させることで横隔膜運動を促している と考えることができる.そして,この効果はFowler位 にのみ認めたことから,姿勢の影響,つまりは腹部臓器 に作用する重力に関係していることが考えられる.

Fowler位では,呼気時に重力に逆らうように腹部を頭

側へ圧迫することになる.そこに蓄えられた腹部臓器の 位置エネルギーは,腹筋群がリラックスした状態で腹部 圧迫が解放されることで運動エネルギーへと変換され,

隣接した横隔膜の吸気運動を補助する作用を生じさせた ことが推察される.ただし,腹筋群や腹壁の緊張が高い 場合,おそらく横隔膜の吸気運動を妨げるため横隔膜の 吸気運動を促す効果は期待できないであろう.もし腹部 圧迫が明らかに不快であれば,腹筋群の緊張は高まり今 回のような結果は得られなかったかもしれない.今回の 結果は不快感の訴えや腹筋群が緊張しない範囲で行った 腹部圧迫であり,そのことによって得られた効果であっ たと考える.

一方,背臥位の腹部呼吸介助においても,∆Tdi,∆

Tdi%は有意に増大しなかったが,他の呼吸介助と同様 にVTは有意に増大した.Fowler位のように腹部臓器の 重力が利用できない背臥位では,∆Tdi%/VTがFowler位 より有意に低値を示し,横隔膜の動員は少ないことがわ かる.これまでに腹部圧迫は横隔膜活動を反射的に抑制 し,肋間筋の活動を増大させることが報告されてい る15).したがって,背臥位の腹部呼吸介助では,横隔膜 ではなく胸郭吸気筋が動員されることでVT増大を達成 している可能性が考えられる.しかし,本研究では胸郭 吸気筋の活動は測定しておらず,この点に関しては今後 更に検証していく必要がある.

上部胸郭呼吸介助時の∆Tdi%/VTは,Fowler位の腹部 呼吸介助のおよそ半分であり,安静背臥位に対しても統 計的に有意ではないが減少傾向を示した.この結果は,

上部胸郭呼吸介助が胸郭弾性力を利用した換気であるこ とを裏付けるものである.利用される呼吸運動によって 換気される部位にも違いが生じることを考えると16)

上部胸郭呼吸介助ではより肺尖部の換気を,Fowler位 での腹部呼吸介助ではより肺底部の換気が促されている 可能性が考えられる.

本研究は,腹部呼吸介助の効果を検証するために,姿 勢の影響を考慮して背臥位とFowler位の2つの肢位を設 定した.しかし,今回は対象者への負担に配慮して胸郭 呼吸介助ではFowler位を設定していない.そのため,

Fowler位での腹部呼吸介助と胸郭呼吸介助の比較には

姿勢の影響を考慮する必要があり,手技による純粋な結 果として解釈することはできない.だが,背臥位よりも 座位の方が胸郭コンプライアンスは高い17),すなわち 座位では胸郭弾性力の利用しにくさがあると考えると,

背臥位を超えるVT増大をFowler位で得るのは難しいよ うに思われる.また,座位では腹部コンプライアンスが 低下し横隔膜運動が生じにくくなる17)ことも考えると,

Fowler位での腹部呼吸介助による横隔膜への効果は,

Fowler位であることよりFowler位で腹部呼吸介助を行 うことにあるように思われる.いずれにしても,この点 は今後の課題として残る.また,下部胸郭呼吸介助の横 隔膜機能は,超音波画像の乱れから解析できなかったた め,他の条件と比較することができなかった.さらに,

今回の結果は対象者数が少なく,健常者に限られたもの である.今後は,測定方法について検討を加え,呼吸障 害のある対象者も含めた検証を行っていく必要あると考 えている.

本研究では,胸郭呼吸介助の別法として腹部呼吸介助 を考案し,その影響について健常者を対象に呼吸機能,

横隔膜機能の観点からを検証した.その結果,腹部呼吸 介助は胸郭呼吸介助と同等の換気量増大が得られ,

Fowler位で行うことで横隔膜を利用した換気が促され

ることがわかった.

引用文献

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参照

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