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心臓超音波後方散乱信号

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Academic year: 2021

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心臓超音波後方散乱信号 (integrated backscatter) を指標とした左心房及び左心室線維化の評価と

心房細動アブレーション後再発の予知 (要約)

日本大学大学院医学研究科 内科系循環器内科学専攻

山口 直子

修了年 2016 年

指導教員 平山 篤志

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背景

心房細動 (AF) では、その持続及び病態の進行により、心房筋の電気的、構造 的リモデリングと総称される心房筋の不応期の短縮、伝導時間の延長及び心房 筋の脱落・線維化などの変化が生じることが知られており、それを反映した電 気生理学的、解剖学的諸指標によるカテーテル・アブレーション後の再発予測 が報告されている。心臓超音波後方散乱信号 (integrated backscatter; IBS) は、二次 元超音波の gray-scale を用いて測定される指標の一つであり、超音波の通常の反 射波よりも細かい組織情報を反映する後方散乱信号により、非侵襲的に心筋組 織の線維化や変性を定量評価することが可能な指標である。しかしながら、 IBS を用いた心筋線維化の定量評価による AF 患者のアブレーション術後成績を評 価した報告は殆どない。

目的

本研究では、 AF 患者と AF を有さない対照患者で IBS を指標とした左房及び 左室の線維化を評価し、それら結果及び患者背景とアブレーション後の再発と の関連性を検討した。

方法

AF に対してカテーテル・アブレーションを施行した患者連続 113 例 [ 発作性 AF ( 発症後 7 日以内に洞調律に復帰したもの ) 56 名、持続性 AF ( 発症後 7 日以上 AF が 持続しているもの ) 57 名、男性 95 名、平均年齢 59±10 歳 ] および年齢、性別を 一致させた対照群 21 例に対し経胸壁心臓超音波検査を施行し、左房 (LA) と左室 (LV) の線維化の程度を、 IBS を用いて評価した。 IBS は、解析ソフト (EchoPAC BT 11, GE Healthcare UK) を用いて、傍胸骨長軸像および短軸像の連続 3 心拍の動画か

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ら計測した。長軸像の LA 中央部の後壁及び LA 後壁側の心外膜で IBS を測定し、

LA 後壁側心外膜の IBS 値を LA 後壁の IBS から減じ、これを補正値、 calibrated IBS として求めた ( 図 1) 。同様に、短軸像の乳頭筋レベルの LV で、前壁および後壁、

後壁側の心外膜の IBS を測定し、 LV 前壁および後壁の IBS も、それぞれ心外膜の IBS により補正した。 AF 患者に対するカテーテル・アブレーション治療に関して は、 2 本のリング状カテーテル (15 mm Lasso®, 4.5 mm 間隔 ; 20 mm Lasso®, 6 mm 間隔 ; Biosense Webster, Diamond Bar, CA) とアブレーション用イリゲーションカ テーテル 3.5 mm tip(Navistar ThermoCool®, Biosense Webster) または 4 mm

tip(Safire BLU®, St. Jude Medical Inc., St. Paul, Minnesota) を用い、 3 次元マッピング システム NavX®(St. Jude Medical Inc.) あるいは CARTO3®(Biosense Webster Inc.) で 作成した LA と肺静脈の 3 次元画像ガイド下に、拡大同側肺静脈隔離術 (PVI) を施 行した。 PVI にて AF が停止しなかった場合、もしくは洞調律の症例では AF 誘発 後に 5 分以上持続した場合、 LA 内に線状焼灼を追加した。

結果

AF 患者および対照群の患者背景及び心臓超音波検査所見を表 1 に示す。 AF 患 者では心不全の合併率が高く、 β 遮断薬および抗不整脈薬の使用率が高かった。

LA 径と LA 容積は、発作性 AF 群および対照群に比べて持続性 AF 群で有意に大き く、同様に LV 駆出率は低下していた (P < 0.05) 。 LA および LV の IBS 値は、図 2 に 示すように対照群で最も低値であり、持続性 AF 群で最も高値を示した (P < 0.01) 。 アブレーション治療後、中央観察期間 13.8(8.7-19.9) ヵ月の間に、発作性 AF の 17 例 (30.4 %) 、持続性 AF の 34 例 (59.6 %) において AF が再発した。持続性 AF 群では、

LA 容積増大 (60.3 ± 25.7 mL/m

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vs. 47.3 ± 15.9 mL/m

2

, P = 0.0357) 、 LA IBS 高値 (−10.8 ± 3.6 dB vs. −13.3 ± 5.3 dB, P = 0.0332) 、 LV 前壁 IBS 高値 (−16.4 ± 4.4 dB vs.

2

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−19.5 ± 5.4 dB, P = 0.0236) が AF 再発と有意に相関していた ( 図 2) 。多変量解析にて 調整後も、 LA IBS 高値は強い再発予測因子であった ( ハザード比 +1-dB の変化 , 1.07; 95% 信頼区間 1.01 - 1.04; P = 0.0334) 。

結論

心筋の線維化を定量的に評価する IBS を用いることにより、非侵襲的に AF 患 者における LA の構造的リモデリングの進行度を評価することが可能であった。

さらに、 AF 患者では、 LA のみならず LV にも構造的リモデリングを認めた。

LA IBS 値は、持続性 AF 患者のアブレーション術後再発を予測する指標として

有用である。

略語一覧

AF: 心房細動、 IBS: 後方散乱信号、 LA: 左房、 LV: 左室、 PVI: 肺静脈隔離術

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1. Clinical characteristics and echocardiographic variables in the three study groups.

Characteristic

Control (n = 21)

Paroxysmal AF (n = 56)

Persistent AF

(n = 57) P value

Age, years 60.8 ± 9.6 59.4 ± 9.3 57.8 ± 10.2 0.4216

Sex, male 17 (81) 49 (88) 46 (81) 0.5837

AF duration, months 36 (14-59) 49 (22-85) 0.0888

Body mass index, kg/m2 23.4 ± 3.0 23.6 ± 4.1 23.7 ± 3.4 0.9525 Comorbidity

Hypertension 9 (43) 29 (53) 36 (63) 0.2364

Diabetes mellitus 2 (10) 3 (5) 5 (9) 0.7456

Ischemic heart disease 1 (5) 3 (5) 0 (0) 0.2103

Dyslipidemia 3 (14) 8 (15) 3 (5) 0.2432

Heart failure 0 (0) 15 (27)* 18 (32)* 0.0142

Medications

Class I AAD 0 (0) 24 (44)** 28 (49)** 0.0003

Class III AAD 0 (0) 13 (24)** 26 (44)** ,† 0.0002

ARB or ACEI 9 (43) 20 (36) 28 (47) 0.4975

Beta-blocker 1 (5) 24 (44)** 27 (47)** 0.0019

Calcium channel blocker 2 (10) 13 (24) 15 (26) 0.2809

Statin 3 (14) 7 (13) 3 (5) 0.3098

Echocardiography

LAD, mm 34.3 ± 6.0 37.2 ± 5.6 41.0 ± 6.0**,†† <0.0001

LAV, mL/m2 29.2 ± 10.7 41.6 ± 16.0* 54.1 ± 22.1**,†† <0.0001 LV diastolic dimension, mm 47.7 ± 4.1 48.9 ± 5.8 50.2 ± 6.0 0.2052

IVS thickness, mm 9.2 ± 1.3 9.5 ± 1.7 9.5 ± 1.7 0.7051

PW thickness, mm 9.5 ± 1.5 9.5 ± 1.4 9.8 ± 1.4 0.4096

LVEF, % 70.2 ± 4.7 66.5 ± 9.0 64.0 ± 7.0** 0.0064

LVEDV, mL/m2 90 ± 11 93 ± 23 96 ± 21 0.4372

E/A § 1.0 ± 0.3 1.3 ± 0.6 1.1 ± 0.4 0.1166

E/E′ (septal) 10.7 ± 3.7 10.5 ± 5.1 11.0 ± 5.2 0.8710

E/E′ (lateral) 8.1 ± 3.5 6.8 ± 2.5 8.6 ± 6.0 0.1158

変数は、平均値±標準偏差、中央値(第1-3四分位値)、あるいはn (%)で表した。3群間比較のた め、分散分析後にTukey法で多重比較を行った。*P < 0.05, **P < 0.01 vs. 対照群。P < 0.05, ††P <

0.01 vs. 発作性AF群。§は発作性AF 16例と持続性AF 43例では計測時AFのため測定していな

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い。AF = atrial fibrillation, 心房細動; AAD = antiarrhythmic drug, 抗不整脈薬; ARB =angiotensin receptor blocker, アンギオテンシン受容体拮抗薬; ACEI = angiotensin-converting enzyme inhibitor, アンギオテンシン変換酵素阻害薬; LAD = left atrial dimension, 左房径; LAV = left atrial volume, 左房容積; IVS = interventricular septum, 心室中隔; PW = posterior wall, 左室後壁; LVEF = left ventricular ejection fraction, 左室駆出率; LVEDV = left ventricular end-diastolic volume, 左室拡張末 期容積。

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2Predictors of AF recurrence in patients with paroxysmal AF and persistent AF

Factor

Paroxysmal AF (n = 56) Persistent AF (n = 57) No recur

n = 39

Recur

n = 17 P value No recur n = 23

Recur

n = 34 P value

Age, years 60 ± 9 58 ± 10 0.4099 58 ± 9 58 ± 11 0.9094

Sex, male 34 (87) 15 (88) 0.9125 19 (83) 27 (79) 0.7641

AF duration, months 32 (13-60) 37 (18-59) 0.3183 49 (12-73) 49 (23-99) 0.6424 Body mass index, kg/m2 22.9 ± 3.7 25.0 ± 4.6 0.0823 23.1 ± 3.6 24.0 ± 3.3 0.2967

Hypertension 19 (49) 10 (59) 0.5447 12 (52) 24 (70) 0.1574

Heart failure 12 (31) 3 (18) 0.2837 8 (35) 10 (29) 0.6694

Class I antiarrhythmic drug 16 (41) 8 (47) 0.7321 9 (39) 19 (56) 0.2145 Class III antiarrhythmic drug 11 (28) 2 (12) 0.1657 7 (30) 19 (56) 0.0584

ARB or ACEI 12 (31) 8 (47) 0.2701 10 (43) 17 (50) 0.6285

Beta-blockers 15 (38) 9 (53) 0.3520 8 (35) 19 (56) 0.1145

Calcium channel blocker 8 (21) 5 (29) 0.5001 7 (30) 8 (24) 0.5613

AF termination by PVI 30 (79) 13 (76) 0.8372 9 (39) 8 (24) 0.2066

LAD, mm 37 ± 6 38 ± 4 0.4028 40 ± 5 42 ± 6 0.1892

LAV, mL/m2 40 ± 17 45 ± 14 0.3246 47 ± 16 60 ± 26 0.0357

LV diastolic dimension, mm 49 ± 5 50 ± 7 0.4304 50 ± 6 51 ± 6 0.4993

IVS thickness, mm 10 ± 2 9 ± 1 0.8393 10 ± 2 10 ± 2 0.8329

PW thickness, mm 10 ± 2 10 ± 1 0.9994 10 ± 1 10 ± 2 0.6983

LVEF, % 67 ± 9 67 ± 10 0.9876 66 ± 7 63 ± 7 0.0728

LVEDV, mL/m2 93 ± 22 94 ± 25 0.9526 97 ± 24 95 ± 18 0.7545

E/A § 1.3 ± 0.6 1.3 ± 0.7 0.8765 1.0 ± 0.3 1.2 ± 0.5 0.3362

E/E′ (septal) 10.2 ± 4.9 11.2 ± 5.5 0.5190 9.9 ± 3.5 12.0 ± 5.4 0.1218

E/E′ (lateral) 7.0 ± 2.7 6.6 ± 1.8 0.6159 7.4 ± 3.0 9.4 ± 7.2 0.0776

LA IBS, dB -13.7 ± 3.7 -13.9 ± 3.5 0.8793 -13.3 ± 5.3 -10.8 ± 3.6 0.0332 LV anterior IBS, dB -20.4 ± 5.4 -20.6 ± 5.3 0.8873 -19.5 ± 5.4 -16.4 ± 4.4 0.0236 LV posterior IBS, dB -20.0 ± 5.3 -20.3 ± 4.8 0.8305 -19.9 ± 4.2 -17.9 ± 5.1 0.1205 変数は平均値 ± 標準偏差、中央値(第1-3四分位値)、あるいはn (%)で表した。

PVI = pulmonary vein isolation, 肺静脈隔離術。その他略語は表1を参照。

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図説

図 1. Integrated backscatter(IBS) の測定。 (A) 左房後壁側心外膜 ( 赤線 ) と左房後壁 ( 黄 線 ) の IBS を示す。左房後壁 IBS は心周期により変動している。心外膜 IBS を減 じて左房 IBS の補正を行う。 (B) 乳頭筋レベルにおける左室後壁側心外膜 ( 赤線 ) 、 左室前壁 ( 黄線 ) および左室後壁 ( 緑線 ) の IBS を示す。左室 IBS も心外膜 IBS によ り補正する。

図 2. 患者群別の左房及び左室の integrated backscatter(IBS) 値の比較。発作性 ( 黒 丸 ) 、非発作性心房細動 (AF)( 白丸 ) および対照群 ( 灰丸 ) それぞれの左房 (A) 、左室 前壁 (B) および左室後壁 (C) の IBS を示す。 左房および左室 IBS は、対照群と比し、

心房細動 (AF) 群で高値であり、さらに非発作性 AF 群では発作性 AF 群より高値である。

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表 1. Clinical characteristics and echocardiographic variables in the three study groups
表 2 . Predictors of AF recurrence in patients with paroxysmal AF and persistent AF  Factor  Paroxysmal AF (n = 56)  Persistent AF (n = 57) No recur  n = 39  Recur n = 17  P value  No recur n = 23  Recur  n = 34  P value  Age, years  60 ± 9  58 ± 10  0.4099

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