修士論文
X 線観測による U Gem の矮新星爆発時および
静穏時におけるプラズマ空間分布の解明
武尾 舞
指導教官
:
石崎欣尚首都大学東京大学院 理学研究科 物理学専攻
2020
年1
月10
日目次
概要
1
第
1
章 序論3
第
2
章 矮新星とふたご座U星(U Geminorum) 5
2.1
矮新星. . . . 5
2.2
降着円盤. . . . 6
2.3
境界層. . . . 7
2.4
矮新星の爆発メカニズム. . . . 8
2.5
ふたご座U星(U Geminorum) . . . . 9
第
3
章X
線天文衛星「すざく」11 3.1
概要. . . . 11
3.2
軟X
線望遠鏡(XRT) . . . . 14
3.3 X
線CCD
カメラ(XIS) . . . . 15
3.4
硬X
線検出器(HXD) . . . . 17
第
4
章 観測とデータ処理19 4.1
観測. . . . 19
4.2
データ処理. . . . 20
第
5
章 データ解析23 5.1
スペクトル解析による質量降着率の見積もり. . . . 23
5.1.1
スペクトル解析方法. . . . 23
5.1.2
解析結果. . . . 25
5.2
反射シミュレーションによるプラズマの空間分布の推定. . . . 27
5.2.1
反射シミュレーション. . . . 27
5.2.2
評価方法. . . . 29
5.2.3
解析結果. . . . 30
爆発時
. . . . 30
静穏時
. . . . 33
第
6
章 議論37 6.1
質量降着率の見積もり. . . . 37
6.2
プラズマの空間分布の推定. . . . 37
6.2.1
爆発時. . . . 37
6.2.2
静穏時. . . . 38
6.2.3 6.4 keV
輝線のSS Cyg
との比較. . . . 40
6.2.4 R c − i = R p
という条件について. . . . 40
第
7
章 まとめと考察41
7.1
まとめ. . . . 41 7.2
今後の展望. . . . 41
参考文献
43
図目次
2.1
矮新星の模式図. . . . 5
2.2
矮新星における降着円盤形成の過程. . . . 6
2.3 SS Cyg
静穏時(
左)
および爆発時(
右)
の幾何学構造. . . . 7
2.4 S
字型熱平衡曲線. . . . 8
2.5 SS Cyg(
左)
、U Gem(
右)
の爆発時の光度曲線(Mattei 2000) . . . . 10
3.1
「すざく」の概観. . . . 12
3.2
衛星上での各検出器の配置(Astro-E2
実験報告書より転載) . . . . 12
3.3 XRT
の外観(
左)
と配置図(
右)(The Suzaku Technical Description
より転載) . . . . 14
3.4 XIS
検出器の外観(The Suzaku Technical Description
より転載) . . . . 15
3.5
表面照射型CCD(
左)
と背面照射型CCD(
右)
の模式図(
東海林雅之修士論文より転載) . . . . 16
3.6 HXD
の外観(The Suzaku Technical Description
より転載) . . . . 17
4.1 U Gem
可視光ライトカーブ(AAVSO
より転載) . . . . 19
4.2
爆発時イベントイメージと使用範囲(
上段)
、ライトカーブ(
下段) . . . . 20
4.3
静穏時イベントイメージと使用範囲(
上段)
、ライトカーブ(
下段) . . . . 21
5.1
水素柱密度nH
の値を変化させたときのtbabs*power-law
モデル. . . . 23
5.2
多温度モデルのcevmkl(
黒)
と単温度モデル(
赤) . . . . 24
5.3
すざく衛星によって得られた1.0-30.0 keV
のスペクトル(
上段)
と5.0-9.0 keV
のスペクトル(
下段) . 25 5.4
シミュレーションによって変化させられるパラメータを示した図. . . . 27
5.5
シミュレーションによるモデルの鉄輝線付近. . . . 28
5.6
爆発時の反射シミュレーション結果(1) . . . . 30
5.7
爆発時の反射シミュレーション結果(2) . . . . 31
5.8
爆発時の反射シミュレーション結果(3) . . . . 32
5.9
静穏時の反射シミュレーション結果(1) . . . . 33
5.10
静穏時の反射シミュレーション結果(2) . . . . 34
5.11
静穏時の反射シミュレーション結果(3) . . . . 35
6.1
爆発時の降着円盤内縁半径の上限値見積もり. . . . 38
6.2
静穏時の降着円盤内縁半径の下限値見積もり. . . . 39
6.3 SS Cyg(
右)
およびU Gem(
左)
の鉄輝線付近のラインプロファイル. . . . 40
表目次
2.1 U Gem
の基本パラメータ. . . . 9
3.1
衛星と検出器の諸元(Mitsuda et al. 2007) . . . . 13
4.1
各観測における基本情報. . . . 19
5.1
スペクトルフィッティング結果. . . . 26
5.2
爆発時の反射シミュレーション結果(1) . . . . 30
5.3
爆発時の反射シミュレーション結果(2) . . . . 31
5.4
爆発時の反射シミュレーション結果(3) . . . . 32
5.5
静穏時の反射シミュレーション結果(1) . . . . 33
5.6
静穏時の反射シミュレーション結果(2) . . . . 34
5.7
静穏時の反射シミュレーション結果(3) . . . . 35
1
概要
激変星とは白色矮星とロッシュローブを満たす晩期型星からなる近接連星系の総称であり、可視光で観測をした 時にその明るさが数秒から数年のタイムスケールで変動する。その中でも可視光で
10
日から数100
日程度の間隔で2-5mag
の小規模な爆発現象を繰り返すものを矮新星と呼ぶ。 代表的な矮新星はくちょう座SS
星(SS Cyg)
とふたご座
U
星(U Gem)
では2 keV
以上のX
線放射の振る舞いが大きく異なることが知られている。可視光での爆発時、SS Cyg
では極端紫外線の増光が始まるとX
線は減光するのに対し、U Gem
では爆発時にX
線放射も数倍明るくなり、期間中その明るさを保つ
(Mattei 2000)
。その違いは、硬X
線を放射する境界層が爆発時に光学的に厚い状態 に転移する臨界質量降着率(10 16 g s − 1 )
を、系の質量降着率が超えるかどうかで決まると考えられている。実際にSS Cyg
ではこれを超えていることが確認されているが、U Gem
ではこれまでにその定量的な評価をした結果は報告されていない。また、先行研究により、
SS Cyg
の場合は静穏時ではプラズマが白色矮星と降着円盤の間に存在し、爆 発時には降着円盤全面に広がっていることがわかっている。U Gem
ではX
線放射の違いから爆発時もSS Cyg
の静 穏時と同じようなプラズマの空間分布になっていると予想されるが、未だ実証はされていない。そこで我々は、
XIS(X-ray Imaging Spectrometer: XIS)
に加え、硬X
線領域で高感度な硬X
線検出器(Hard X-
ray Detector: HXD)
が搭載されているX
線天文衛星「すざく」のデータを用いてU Gem
の爆発時および静穏時における
X
線放射領域の状態を調べる研究を行った。矮新星でのX
線放射は銀河団のcooling flow
モデルで説明でき る。これは、降着するガスがすべてのエネルギーを光学的に薄いプラズマからの放射として解放しながら、定常流と して冷えていくことを仮定したモデルである。そこで、爆発時と静穏時のX
線スペクトルをcooling flow
とその反射 モデルで評価したところ、質量降着率はいずれも臨界値の10 16 g s − 1
以下であった。この結果は、矮新星において質 量降着率が臨界値よりも低い場合には境界層は光学的に薄いという従来の説に整合している。次に、放射領域の空間 分布を知るために、プラズマと反射体である白色矮星や降着円盤の位置関係を様々に変えた反射シミュレーションを 行なった。静穏時では白色矮星半径の1.30-1.45
倍くらいまでのところで降着円盤が切れていて、硬X
線を放射する プラズマはその内側にあり、中性の鉄の内核電離を引き起こすほど高温の成分の重心は降着円盤内縁に非常に近い位 置にあることが確かめられた。一方爆発時では、光学的に厚い降着円盤が白色矮星の表面付近まで迫ってはいるもの の、白色矮星半径の数%
程度のところで切れており、その内側には静穏時と同じように光学的に薄い高温プラズマが 存在しているという描像で説明できる。また、鉄輝線付近のラインプロファイルから、プラズマの重心は降着円盤内 縁付近に存在することが確かめられた。本論文ではこの予想外の結果の原因について議論するとともに、
2022
年に打ち上げを目指すXRISM
衛星での展望 を示す。3
第 1 章
序論
激変星とは白色矮星とロッシュローブを満たす晩期型星からなる近接連星系の総称であり、可視光で観測をした時 にその明るさが数秒から数年のタイムスケールで変動する。激変星は爆発の頻度や増光の幅などにいくつか種類があ り、その中の一種である矮新星は、可視光で
10
日から数100
日程度の間隔で2-5mag
の小規模な爆発現象を繰り返 す。先行研究により、代表的な矮新星はくちょう座
SS
星(SS Cyg)
とふたご座U
星(U Gem)
では2 keV
以上のX
線 放射の振る舞いが大きく異なることが知られている。可視光での爆発時、SS Cyg
は極端紫外線の増光が始まるとX
線は減光する。一方、U Gem
は爆発時にX
線放射も数倍明るくなり、期間中その明るさを保つ(Mattei 2000)
。そ の違いを説明する可能性として質量降着率の違いが挙げられる。Pringle Savonije (1979)
は、爆発時には降着率が 臨界値(10 16 g s − 1 )
を超え、降着円盤内縁と白色矮星の間にある境界層が光学的に厚くなるため、X
線は減光し、極 端紫外は増光するとしている。これはSS Cyg
の爆発時の振る舞いを良く説明している。U Gem
ではこの臨界質量 降着率を超えていないと推察されるが、これまでにそのような定量的評価は報告されていない。また、
SS Cyg
は境界層のプラズマの空間分布にも大きな違いがあり、静穏時にはプラズマが白色矮星と降着円盤の間に存在する一方、爆発時には降着円盤全面に広がっていることが分かっている
(Ishida 2009)
。U Gem
ではX
線放 射の違いから爆発時もSS Cyg
の静穏時と同じようなプラズマの空間分布になっていると予想されるが、未だ実証は されていない。本研究では、これらの先行研究をもとに推測をしつつ、
X
線放射領域の状態を質量降着率の違いという観点から調 べることと、プラズマと反射体である白色矮星や降着円盤の位置関係を様々に変えた反射シミュレーションを用いて プラズマの空間分布を推定することを目的とし、解析を進めた。第2章で矮新星とふたご座U星に関する基礎知識、第3章で今回解析に用いたデータを取得した
X
線天文衛星「す ざく」について、第4章で観測されたデータの基本情報と行なったデータ処理について、第5章でスペクトル解析と 反射シミュレーションについて、第6章でそれらの解析結果に基づく議論、第7章でまとめと考察を示す。5
第 2 章
矮新星とふたご座U星 (U Geminorum)
2.1
矮新星矮新星は、図
2.1
に示すような磁場の弱い白色矮星と晩期型星(
伴星)
からなる連星系であり、可視光で10
日から 数100
日程度の間隔で2-5mag
の小規模な爆発現象を繰り返す激変星である。伴星から白色矮星に質量が転移するこ とで降着円盤( § 2.2)
を形成していて、爆発はこの降着円盤の状態変化によって引き起こされる。安定状態は低温で水 素は中性であり粘性の低い静穏時と、逆に高温で水素の電離が進んでいて粘性の高い爆発時が存在する。静穏時では 質量降着率が小さく、爆発時では大きい。矮新星は爆発時の特徴によって
U Gem
型、Z Cam
型、SU UMa
型の3
つのタイプに分類されるが、U Gem
型は 通常の爆発のみを起こし、SU UMa
型はその他に、それより1mag
ほど明るく継続時間が5
倍程度長いスーパーアウ トバーストと呼ばれる爆発を起こすという違いが見られる。代表的なU Gem
型矮新星として、はくちょう座SS
星(SS Cyg)
とふたご座U
星(U Gem)
が挙げられる。どちらも降着円盤が熱不安定の条件を満たすため、爆発時と静穏時を周期的に繰り返すような動きを見せる
( § 2.4)
。晩期型星 白色矮星
降着円盤
図
2.1
矮新星の模式図(https://www.star.le.ac.uk/%7eopj/nmcv.gif
より転載)
。激変星の一種であり、磁場 の弱い白色矮星と晩期型星からなる。6
第2.
矮新星とふたご座U星(U GEMINORUM)
2.2
降着円盤ある質量を持った天体に周囲からガスが落ち込む場合、角運動量を持っているガスは主星にはまっすぐに落ちず主 星の周りにリングを形成し、それが広がって円盤状となる。これを降着円盤という。
図
2.2
は、連星系で降着円盤が形成される過程を示している。二つの星が周りあっていることで、伴星から白色矮星 へ流れ込むガスが角運動量を持つ。リング内のガスはケプラー速度を持つため、内側ほど早く外側ほど遅く回ってい る。ガス同士は隙間なく接しているため、速度の違いにより摩擦が生じ角運動量は内側から外側へと受け渡される。つまり、内側を回っていたガスは角運動量を失い、どんどん内側へ落ち込み、最終的には白色矮星表面まで積もり、
定常状態のディスクが形成される。ガスの重力エネルギーは熱として解放され、電磁波が放出される。
図
2.2
矮新星における降着円盤形成の過程。伴星から角運動量を持ったガスが流れ込み、リングを形成してい く。リングの内側から外側へ角運動量の受け渡しが行われ(
内側を回っていたガスが角運動量を失って)
、やがて 白色矮星の表面に積もっていく。2.3.
境界層7
2.3
境界層X
線は、白色矮星表面と降着円盤内縁の間に形成される境界層から放射されると考えられている。白色矮星は、表 面でのケプラー速度よりも遅い速度で自転している。ケプラー速度で回転している降着円盤の物質が白色矮星へ落ち るためには、白色矮星表面との速度差分の回転エネルギーを摩擦による減速で熱に変え、さらにそれを放射で捨てな ければならない。このとき、落ちるガスは10 8 K
程度まで加熱され、光学的に薄いプラズマを形成する。この急減速・急加熱が起きているのが境界層である。
SS Cyg
では、質量降着率が低い静穏時には、境界層入り口で10
万度ほどだった降着円盤が、加熱のため1
億度以上の高温になって膨れ上がり
X
線を放射する。一方、質量降着率が高い増光時では、降着円盤の密度が高く冷却効率 も高いため、白色矮星表面付近でも低温のままになる。よって、光学的に厚い降着円盤が白色矮星表面まで届いてい るため、硬X
線の強度は落ちると考えられている(
図2.3)
。ま た 、矮 新 星 の 静 穏 時 の
X
線 は 、光 学 的 に 薄 い 多 温 度 プ ラ ズ マ か ら の 放 射 で あ る(Pandel et al. 2005)
。Mukai et al.(2003)
はこの静穏時のX
線スペクトルが、降着するガスが全てのエネルギーを光学的に薄いプラズマからの放射として解放しながら定常流として冷えていくことを仮定した、銀河団の
cooling flow
モデルで再現で きることを発見した。SS Cyg 爆発時
~10
5
K白色矮星 降着円盤
SS Cyg 静穏時
境界層 X線
~10
5
K~10
8
K図
2.3 SS Cyg
静穏時(
左)
および爆発時(
右)
の幾何学構造。8
第2.
矮新星とふたご座U星(U GEMINORUM)
2.4
矮新星の爆発メカニズム矮新星の増光幅は可視光で
2-5
等級程度で新星の10
等級程度に比べて爆発の規模が1/100
以下と小さいため、矮 新星と呼ばれる。矮新星と新星ではその爆発メカニズムも大きく異なる。ここで矮新星の爆発メカニズムを説明でき るとされる円盤不安定モデルについて紹介する。図2.4
は円盤の熱平衡状態を線で結んだもので、S
字型熱平衡曲線 と呼ばれている。横軸は円盤の密度、縦軸は温度を表している。ここで、温度と質量降着率は1
対1
の関係になって いるため、温度を質量降着率に置き換えて考える。最初、円盤が安定したA
の状態にあるとする。A
の状態は、低温 で円盤のガスの大部分が中性水素である。そこへ一定の降着率で伴星からガスが流れ込んでくると、円盤の密度が上 昇しB
の状態へと移行する。温度が上昇することで中性水素が電離し、粘性が急激に増えるため質量降着率が一気に 上昇し、やがてC
の状態へと移行する。質量降着率の増大のために、解放される重力エネルギーも増大するので、そ れをディスク表面からの放射で捨てるために温度も急上昇する。C
の状態での質量降着率が伴星からの降着率を上回 るため円盤内の密度は次第に小さくなり、密度も低くなる。D
の状態に移行すると電離していた水素が中性水素にな るため、再びA
の状態に戻る。このサイクルが円盤不安定モデルである。温度の高いC D
の状態が爆発を起こして いる時期に対応する。図
2.4 S
字型熱平衡曲線。縦軸は温度T
、横軸は円盤の単位面積当たりの質量(
表面密度)
。このサイクルが円 盤不安定モデルであり、矮新星の爆発メカニズムを説明できるとされている。2.5.
ふたご座U星(U GEMINORUM) 9
2.5
ふたご座U星(U Geminorum)
U Gem
は1855
年に発見された最初の矮新星である。先行研究により分かっているU Gem
の基本パラメータを表2.1
に示す。表
2.1 U Gem
の基本パラメータ白色矮星質量
1.07 ± 0.08 M ⊙ *1
軌道周期
4.246 h *2
軌道傾斜角
69.7 ◦ ± 0.7 ◦ *3
距離96.4 ± 4.6 pc *4
爆発周期 〜
130 day *5
代表的な
U Gem
型矮新星SS Cyg
との違いとして、2 keV
以上のX
線放射の振る舞いが大きく異なることが知られている。図
2.5
左図を見ると、SS Cyg
では可視光の増光と同時にX
線も明るくなるが、極端紫外線の増光が始ま るとX
線は減光していることが分かる。一方、図2.5
右図を見ると、U Gem
は爆発時のX
線放射が静穏時に比べて 数倍明るくなり、期間中その明るさを保っている(Mattei 2000)
。その違いは、硬X
線を放射する境界層が爆発時に 光学的に厚い状態に転移する臨界質量降着率(10 16 g s − 1 )
を、系の質量降着率が超えるかどうかで決まると考えられ ている。境界層が光学的に厚くなるとX
線は減光し極端紫外は増光するが、実際にSS Cyg
では爆発時に臨界質量降 着率を超えていることが確認されており、X
線放射の振舞を良く説明している。U Gem
では爆発時もこの臨界降着 率を超えていないと推察されるが、これを観測的に検証した結果はこれまで発表されていない。*1 Harrison et al. (1999)
*2 Harrison et al.(2004)
*3 Zhang Robinson (1987)
*4 Gaia Archive
*5 Marsh et al. (1990)
10
第2.
矮新星とふたご座U星(U GEMINORUM)
図
2.5 SS Cyg(
左)
、U Gem(
右)
の爆発時の光度曲線(Mattei 2000)
。上から、可視光、極端紫外線、X
線と なっている。SS Cyg
では可視光の増光と同時にX
線も明るくなるが、極端紫外線の増光が始まるとX
線は減光 する。一方、U Gem
は爆発時のX
線放射が静穏時に比べて数倍明るくなり、期間中その明るさを保つ(
極端紫外 線の増光が始まっても減光しない。)
11
第 3 章
X 線天文衛星「すざく」
3.1
概要X
線天文衛星「すざく」は日本で5
番目のX
線天文衛星である。すざく衛星は宇宙科学開発研究機構のM-V-6
号ロケットによって2005
年7
月10
日に鹿児島県内之浦から打ち上げられた。衛星は直径1.91 m
の八角柱の 構体を基本とし、全長6.49 m
、太陽パネルを広げた幅は5.4 m
にもなり、1680 kg
の重量を持つ。 すざく衛 星には2
種類5
つの軟X
線検出器と1
つの硬X
線検出器が搭載されている(
図3.1)
。軟X
線望遠鏡は5
つのX
線望遠鏡(X-ray telescope;XRT)
と5
つの焦点面検出器(4
つのX-ray Imaging Spectrometer;XIS
と、1
つのX-ray Spectrometer;XRS)
からなる。4
台のX
線CCD
カメラから構成されるXIS
は0.2-12 keV
のエネルギー帯域 をカバーし、エネルギー分解能は6 keV
で130 eV
である。XRS
はX
線マイクロカロリメータで、エネルギー帯 域はXIS
と同程度、エネルギー分解能は6 keV
で6 eV
である。そして、さらに高いエネルギー(10-700 keV)
のX
線を観測するために開発されたのが硬X
線検出器(Hard X-ray Detector;HXD)
である。XRS
は使用している液体 ヘリウムが消失するという事故が発生し、観測が不可能になったが、すざくではXIS 4
台とHXD
で同じ天体を同時 に観測することができ、広いエネルギー帯で高感度のX
線分光が可能である。特に、硬X
線領域(10
‒300 keV)
に おいてこれまでで最高の感度、軟X
線領域(0.3-1 keV)
でこれまでのCCD
カメラに比べて高い感度と分解能を実現 しており、最大の特徴となっている。衛星上での検出器の配置を図3.2
に示す。また、各検出器の特徴や性能を表3.1
にまとめた。12
第3. X
線天文衛星「すざく」XRT
XRS
HXD
XIS
図
3.1
「すざく」の概観図
3.2
衛 星 上 で の 各 検 出 器 の 配 置(Astro-E2
実 験 報 告 書 よ り 転 載)
。S/C X, S/C Y
は 衛 星 座 標 系 、DETX, DETY
は検出器座標系である。また、観測時の衛星姿勢を考慮して赤道座標系に投影したのがSky
座標系
(ActX, ActY)
である。Sky
座標系を用いると、異なる検出器で得られたイメージを足し合わせることができる。
3.1.
概要13
表
3.1
衛星と検出器の諸元(Mitsuda et al. 2007)
衛星 軌道遠地点高度
568 km
軌道周期
96 min
軌道傾斜角
31 ◦
観測効率 〜43 %
XRT
焦点距離4.75 m
視野 〜
17 ′ at 1.5 keV
〜
13 ′ at 8.0 keV
有効面積
440 cm 2 at 1.5 keV
250 cm 2 at 8.0 keV
空間分解能2 ′ (HPD)
XIS
視野17 .8 ′ × 17 .8 ′
エネルギー帯
0.2-12.0 keV
エネルギー分解能 〜
130 eV at 6 keV (FWHM)
有効面積
330 cm 2 (FI), 370 cm 2 (BI) at 1.5 keV 160 cm 2 (FI), 110 cm 2 (BI) at 8.0 keV
時間分解能8 s (normal mode), 7.8 ms (P-sum mode)
ピクセル数1024 × 1024 pixels
HXD
視野34 ′ × 34 ′ ( ≤ 100 keV) 4 ◦ .5 × 4 ◦ .5 ( ≥ 100 keV)
エネルギー帯10-70 keV
40-600 keV
エネルギー分解能 〜
3.0 keV (PIN, FWHM) 7.6/ √
E MeV (GSO, FWHM)
有効面積 〜
160 cm 2 at 20 keV
〜
260 cm 2 at 100 keV
時間分解能61 µ s
14
第3. X
線天文衛星「すざく」
3.2
軟X
線望遠鏡(XRT)
X
線は物質中で強く吸収され、屈折率が1
よりわずかに小さいという特徴を持つ。これは、X
線の光学系を作る上 で反射鏡には、入射角度の小さいX
線を反射させる「全反射」が適切であることを意味する。すざく衛星搭載のXRT
は、口径40cm
の多重薄板X
線望遠鏡であり、全反射鏡と呼ばれる特殊な反射鏡を用いている。回転双曲面と回転放 物面で2
回全反射させ、光軸から外れた方向での像収差を小さくした光学系をWolterI
型と呼ぶ。XRT
はこれを円 錐2
段で近似して用いている。XRT
は全部で5
台搭載されており、そのうち4
台はXRT-I
、残りの1
台はXRT-S
と呼ばれる(
図3.3)
。XRT-I
は175
枚の反射鏡で構成されており、焦点距離は4.75m
で、その焦点面にはXIS
が配 置されている。一方、XRT-S
は168
枚の反射鏡で構成され、焦点距離は4.5m
、その焦点面にはXRS
が配置されて いる。図
3.3 XRT
の外観(
左)
と配置図(
右)(The Suzaku Technical Description
より転載)
。XRT
は、口径40cm
の多重薄板X
線望遠鏡であり、全反射鏡が用いられている。XRT-I
が4
台、XRT-S
が1
台配置されている。
3.3. X
線CCD
カメラ(XIS) 15
3.3 X
線CCD
カメラ(XIS)
CCD (Charged Coupled Device)
カメラは、半導体検出器を2
次元アレイ状に並べたものである。10 keV
以下 のX
線の相互作用は光電吸収が支配的であるため、あるエネルギーE
のX
線光子がCCD
の空乏層に入射すると、ある確率で光電吸収を起こす。光電吸収によって生成された光電子は、エネルギーを失うまで半導体物質中の荷電子 帯にいる電子を次々に励起して約
E/W
個の電子正孔対を作り出す。ここでW
は半導体物質の種類で決まる平均電 離エネルギーで、ケイ素(Si)
の場合はW
〜3.65eV
である。こうして生成された電子を正確に検出することで、入射X
線光子のエネルギーを測定することが可能である。図
3.4 XIS
検出器の外観(The Suzaku Technical Description
より転載)
X
線CCD
カ メ ラ に お い て 電 荷 の 読 み 出 し に は 、Frame Transfer
型 と 呼 ば れ る も の が 主 流 に な っ て い る 。Frame Transfer
型は通常の撮像領域の他に露光後のCCD
フレームデータを一時的に保持しておく蓄積領域を持ち、そこには
X
線を遮断するシールドが設けられている。撮像領域のデータを短時間で蓄積領域に転送し、そこか ら読み出し口まで転送が行われている間に、受光面では次の露光が行われる。そのため露光中、1
ピクセルに複数のX
線光子が入射した場合、個々のX
線光子を区別できず各X
線光子のエネルギーの和を持つ1
つの光子として判別 されてしまう。これをパイルアップと呼び、非常に明るい天体を観測した場合に起こりやすい。XIS
は4
台のX
線CCD
カメラ(XIS0, XIS1, XIS2, XIS3)
から構成される検出器であり(
図3.4)
、それぞれがXRT-I
の焦点面に配置されている。また、CCD
には表面照射型(Frontside Illuminated;FI)
と裏面照射型(Back- side Illuminated;BI)
がある。XIS0, XIS2, XIS3
の3
台がFI-CCD
、XIS1
がBI-CCD
である。FI
ではX
線を電極 側から入射するため、エネルギー分解能に優れる反面、低エネルギーのX
線は電極や絶縁層で吸収されてしまうので、低エネルギー
X
線の検出効率は悪い。一方、BI
ではX
線を電極の逆側から入射するため、X
線の吸収点が電極から 遠くなりエネルギー分解能が悪くなるが、低エネルギーのX
線に対して高い検出効率を得ることができる(
図3.3)
。16
第3. X
線天文衛星「すざく」軟X線 硬X線
酸化膜 絶縁層電極 空乏層
中性領域 基板
中性領域
空乏層 絶縁層 電極
硬X線 軟X線
電荷雲
電荷雲
図
3.5
表面照射型CCD(
左)
と背面照射型CCD(
右)
の模式図(
東海林雅之修士論文より転載)
。3.4.
硬X
線検出器(HXD) 17
3.4
硬X
線検出器(HXD)
HXD
は、10-700 keV
の広いエネルギー範囲の硬X
線をこれまでにない高い感度で観測することを目的とした検出器である。
X
線望遠鏡に全反射鏡を使う場合、望遠鏡の焦点距離を一定にすると、X
線を集光できる望遠鏡の開口 面積はエネルギーの2
乗に比例して小さくなる。そのため、10 keV
以上のエネルギーでは、衛星で実現できる焦点 距離の範囲では十分な集光面積を確保することが困難である。また、硬X
線領域では天体からの信号に比べて宇宙線 や検出器由来のバックグラウンドが大きく、これらを低減することが非常に重要となる。そこで、これらを解決するために、バックグラウンドには検出器の正面から入射するもの、視野外からシールドを 通過して入射してくるもの、検出器に内在するものなどの成分、全てを低減するよう開発された井戸型フォスイッチ カウンタの技術が
HXD
では応用されている。フォスイッチ型検出器は、天体からの信号検出用シンチレータと、そ れを取り囲むように配置した蛍光の減衰時間の異なる遮蔽用シンチレータを一体化させ、ひとつの光電子増倍管で読 み出す検出器にコリメータを組み合わせたものである。フォスイッチ型では、検出した光子が検出用のシンチレータ だけでエネルギーを失ったのか、シールド用のシンチレータでもエネルギーを失ったのかを信号波形から判別するこ とができるため、効率的にバックグラウンドを除去することが可能である。すざくに搭載されている
HXD
では、基本となる井戸型フォスイッチカウンタは16
本あり(Well
ユニット)
、その 周りをBGO
結晶のアンチカウンタ(Anti
ユニット)20
本が取り囲む。Well
ユニットの主検出部はPIN
型半導体検 出器(
厚さ2 mm)
とGSO
シンチレータ(
厚さ5 mm)
を上下に重ねた形で構成され、10-700 keV
という広帯域を実 現する。図
3.6 HXD
の外観(The Suzaku Technical Description
より転載)
。4 × 4
で配置された16
本の井戸型フォス イッチカウンタにより天体の信号を検出する。HXD
は、10-700 keV
の広いエネルギー範囲の硬X
線をこれまで にない高い感度で観測することができる。19
第 4 章
観測とデータ処理
4.1
観測本研究では、すざく衛星で
2012
年4
月12
日に観測された爆発時のデータと2012
年4
月24
日に観測された静 穏時のデータをそれぞれ使用する。各観測における基本情報を表4.1
にまとめた。図4.1
はU Gem
の可視光ライト カーブである。青帯、黄帯は、それぞれ「すざく」による爆発時、静穏時の観測時期に当たる。表
4.1
各観測における基本情報ID State Observation date Detector Exposure(ks) Count Rate(s − 1 )
407035010
爆発時2012 Apr 12 XIS 50.3 1.149 ± 0.003
HXD 44.4 0.009 ± 0.002
407034010
静穏時2012 Apr 24 XIS 119.1 0.491 ± 0.001
HXD 93.1 0.010 ± 0.002
Magnitude(V-band)
Julian Days
図
4.1 U Gem
可視光ライトカーブ(AAVSO
より転載)
。縦軸は波長帯V-band
で等級を表し、横軸は時刻をユ リウス通日で表している。20
第4.
観測とデータ処理4.2
データ処理本研究には
XIS0, 1, 3
およびHXD
のデータを用いた。XIS2
は打ち上げ1
年後の2006
年11
月9
日に、軌道上の デブリ(orbital debris)
、もしくは微小隕石(micro meteorite)
の直撃を受けて視野の2/3
が破壊され使用不能になっ たため、データが存在しない。データ処理で使用したソフトウェアはNASA
のゴダード宇宙飛行センターが提供して いるHEADAS version 6.26 *1
である。XIS
では1.0-10 keV
、HXD
では15-30 keV
のエネルギー帯域を用い、また、天体からのイベントとして天体中心から半径
4 ′
の円内に含まれるものを使用した。バックグラウンドとして、円と同 心の内径4 ′
、外径8 ′
の円環に含まれるイベントを使用した(
図4.2
、4.3
上段)
。XIS
の応答関数は、xisrmfgen
およ び、xissimarfgen(Ishisaki et al. 2007)
を用いて作成した。0 2 5 11 24 50 102 204 411 820 1634 0 1 2 6 12 25 51 101 204 407 812
0 104 2×104 3×104 4×104
0123
Count/sec
Time (s) U GEM IN OUTBURS
Start Time 16030 5:04:10:184 Stop Time 16030 17:50:02:184 Bin time: 128.0 s
0 104 2×104 3×104 4×104
0123
Count/sec
Time (s) U GEM IN OUTBURS
Start Time 16030 5:04:10:184 Stop Time 16030 17:50:02:184 Bin time: 128.0 s
XIS0 + XIS3
爆発時
XIS1
図
4.2
爆発時イベントイメージと使用範囲(
上段)
、ライトカーブ(
下段)
。XIS
のデータを使用し、1.0-10 keV
のエネルギー帯域を用いた。また、天体中心から半径4 ′
の円内に含まれるイベントを天体からのイベントとして 使用し、円と同心の内径4 ′
、外径8 ′
の円環に含まれるイベントをバックグラウンドとした(
上段)
。ライトカーブ(
下段)
ではバックグラウンドは引いてある。*1 http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/software/lheasoft/
4.2.
データ処理21
XIS0 + XIS3
静穏時
XIS1
0 2 5 12 26 53 108 217 437 872 1738 0 1 3 6 13 27 55 111 223 446 888
104 2×104 3×104 4×104 5×104
0123
Count/sec
Time (s) U GEM IN QUIECSE
Start Time 16043 21:46:01:184 Stop Time 16044 12:59:05:184 Bin time: 128.0 s
104 2×104 3×104 4×104 5×104
0123
Count/sec
Time (s) U GEM IN QUIECSE
Start Time 16043 21:46:01:184 Stop Time 16044 12:59:05:184 Bin time: 128.0 s
図
4.3
静穏時イベントイメージと使用範囲(
上段)
、ライトカーブ(
下段)
。XIS
のデータを使用し、1.0-10 keV
のエネルギー帯域を用いた。また、天体中心から半径4 ′
の円内に含まれるイベントを天体からのイベントとして 使用し、円と同心の内径4 ′
、外径8 ′
の円環に含まれるイベントをバックグラウンドとした(
上段)
。ライトカーブ(
下段)
ではバックグラウンドは引いてある。23
第 5 章
データ解析
5.1
スペクトル解析による質量降着率の見積もり
5.1.1
スペクトル解析方法
U Gem
の爆発時および静穏時のスペクトルに対し、星間吸収(tbabs)
と反射成分(reflect)
を考慮した多温度プラズマモデル
(cevmkl)
を用いてフィッティングを行なった。tbabs(The Tuebingen-Boulder ISM absorption)
モデルは、ガス状態のISM
、粒子状態のISM
、分子のISM
の 各状態におけるX
線吸収断面積の和としてISM
全体のX
線吸収断面積を計算するモデルである。粒子状態のISM
は大きなX
線吸収断面積を持つものの、全体に与える影響は非常に小さい。ISM
に寄与する分子は水素分子のみを 考えている。ガス状態のISM
は、各元素ごとの光電離断面積を考えており、元素の存在比はWilms et al.(2000)
を 元に重みづけをしている。図5.1
はモデルパラメータである水素柱密度nH
の値を変化させたときのスペクトルで ある。熱的放射モデルにはpower-law
を用いた(phoindex=1)
。H, He
のX
線に対する断面積が小さいので、主にC, N, O, Ne, Si, S, Fe
のK
殻とL
殻電子による光電吸収が支配的である。−5−4−3
0.1 10 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 16:15
−5−4−3
0.1 10 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 16:10
−5−4−3
0.1 10 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 16:15
−5−4−3
0.1 10 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 16:16
−5−4−3
0.1 10 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 16:16 nH(1022 cm-2)
0.01 0.1 1.0 10 100
Fe Ni S
Si Mg
Ne
Fe-L N O
C
Al
Cr Ar Ca
図
5.1
水素柱密度nH
の値を変化させたときのtbabs*power-law
モデル。C-K
からNi-K
までの吸収端が見えている。24
第5.
データ解析cevmkl
モデルは、電離平衡に達した光学的に薄いプラズマ放射モデルをもとに、温度T
のemission measure
がf(T )dT ∝ (T /T max ) α − 1 dT (5.1)
で与えられるような、多温度の光学的に薄いプラズマ放射モデルである。このモデルでは、
C
からNi
までの主要な13
種類の元素の存在量を独立に与えることができる。図5.2
は、黒が多温度のcevmkl(
最高温度20keV)
、赤が単温度モデル
(
温度20keV)
を示す。cevmkl
の方が、各元素で制動放射に対する輝線の強度が強い。このことから多温度プラズマであることが分かる。
−4−3
0.1 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 29−Jan−2020 15:31
−4−3
0.1 10 10 0.01 0.1 1 10 1 10
Photons cm
−2s
−1keV
−1Energy (keV) Current Theoretical Model
mt 27−Jan−2020 18:08
Fe Ni S
Si Mg Ne O N C
Al
Ca Ar Na
図
5.2
多温度モデルのcevmkl(
黒)
と単温度モデル(
赤)
。両者ともに温度を20keV
とした(cevmkl
は最高温度)
。これらに加え、放射された
X
線が白色矮星の表面で反射することによるコンプトン散乱および光電吸収成分をreflect
モデルで取り入れた。また、
6.4keV
付近に中性鉄輝線も見られた。cevmkl
は高温プラズマからの放射を仮定しているため、高階電離した鉄の
Kα
輝線は存在するが、中性鉄のKα
輝線はこのモデルには含まれない。よってこれを白色矮星付近の冷たい 反射物質に由来するものだと考え、gaussian
モデルを用いて再現した。これらのモデルのフィット結果から分かる全輻射光度
L Bol
と、白色矮星質量M (
表2.1
参照)
、白色矮星半径R
をL Bol = GM M ˙
2R (5.2)
に用い、質量降着率
M ˙
を求める。ここで、白色矮星表面に到達したときのエネルギーの半分は円盤で放射、半分 はケプラー運動として保持されるため、L Bol
は円盤光度の1/2
となる。ただし、白色矮星半径
R
はR
とM
の関係式(Nauenberg 1972) R
R ⊙ = 0.0225 µ
[1 − (M/M 3 ) 4/3 ] 1/2
(M/M 3 ) 1/3 (5.3)
M 3
M ⊙ = 5.816
µ 2 (5.4)
により算出したものを使用する。
µ
は一電子あたりの平均分子量でµ=0.62
を用いた。また、M 3
はチャンドラセ カール限界質量を表す。5.1.
スペクトル解析による質量降着率の見積もり25
求めた
M ˙
が臨界質量降着率(10 16 g s − 1 )
を超えているか否かで、爆発時および静穏時それぞれ境界層が光学的に厚 い状態に転移していないという観測事実と整合しているかどうか検証した。
5.1.2
解析結果5.1.2
は爆発時および静穏時それぞれ、1.0-30.0 keV
の帯域に対しモデルtbabs × (reflect × cevmkl + gaussian)
でフィッティングを行った結果である(
図5.3)
。検出器ごとの検出効率の違いは、キャリブレーションに基づく定数 をかけることで補正した。また、フィット結果から分かる主要なパラメータを表5.1
にまとめた。10−5 10−4 10−3 0.01 0.1 1 10
normalized counts s−1 keV−1
data and folded model
10
2 5 20
−2 0 2 4
ratio
Energy (keV)
mt 2−Sep−2019 02:06
爆発時
Energy(keV)
10−6 10−5 10−4 10−3 0.01 0.1 1 10
normalized counts s−1 keV−1
data and folded model
10
2 5 20
−2 0 2 4
ratio
Energy (keV)
mt 2−Sep−2019 02:19
静穏時
XIS0 XIS1 XIS3 HXD
counts cm
-2s
-1keV
-1ratio ratio
10−3 0.01 0.1
normalized counts s−1 keV−1
data and folded model
5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9
0 0.5 1 1.5 2
ratio
Energy (keV)
mt 2−Sep−2019 02:13
9.0 z
8.0 7.0
5.0
ratio
10−3 0.01
2×10−3 5×10−3 0.02
normalized counts s−1 keV−1
data and folded model
5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9
0 0.5 1 1.5 2
ratio
Energy (keV)
mt 2−Sep−2019 02:21
5.0
6.4keV7.0 8.0 9.0 Energy(keV)
ratio
6.4keV
Energy(keV)
2.0 5.0 10 20
Energy(keV)
2.0 5.0 10 20
XIS0 XIS1 XIS3 HXD
XIS0 XIS1 XIS3 HXD XIS0
XIS1 XIS3 HXD
counts cm
-2s
-1keV
-1counts cm
-2s
-1keV
-1counts cm
-2s
-1keV
-1図
5.3
すざく衛星によって得られた1.0-30.0 keV
のスペクトル(
上段)
と5.0-9.0 keV
のスペクトル(
下段)
。左 列が爆発時、右列が静穏時。黒はXIS0
、赤はXIS1
、緑はXIS3
、青はHXD
を表す。図下段のratio
は、データ/
モデルの値である。26
第5.
データ解析 表5.1
スペクトルフィッティング結果State Z F e (Z ⊙ ) α T max (keV) LineE (keV) Sigma (keV) χ 2 red (dof) L Bol ( × 10 31 g cm 2 s − 3 ) OB 0.83 +0.06 − 0.06 1.17 +0.10 − 0.08 11.6 +0.7 − 0.6 6.50 +0.03 − 0.04 0.12 +0.02 − 0.03 1.51(807) 3.30
Q 0.90 +0.05 − 0.05 1.01 +0.07 − 0.07 17.7 +1.2 − 1.3 6.41 +0.06 − 0.05 0.07 +0.06 − 0.07 1.15(801) 1.62 N H /10 22 =0.0031 cm − 2
、Z=0.58 Z ⊙
で固定した。フィット結果から求められる