40 第6. 議論
41
第 7 章
まとめと考察
7.1 まとめ
本論文では、X線天文衛星「すざく」のデータを用いて、矮新星U Gemの爆発時と静穏時の硬X線放射領域の状 態や幾何学的配置を調べる研究を行った。
スペクトル解析により質量降着率の見積もりを行なったところ、質量降着率は、爆発時でM˙ = 2.78×1015g s−1、
静穏時でM˙ = 1.36×1015g s−1となった。これにより、爆発時も境界層が光学的に厚い状態に転移する臨界質量降
着率(1016g s−1)を超えていないことが確認され、観測事実と矛盾がないことが分かった。
スペクトル解析結果から、爆発時、静穏時ともに臨界質量降着率を超えていないことが確認された一方で、6.4keV 付近のスペクトルの様子は両者で大きく違っていることも確認された。この中性鉄輝線は冷たい反射物質に由来する 成分であるため、プラズマの空間分布が異なっているという予想のもと、反射シミュレーションによりプラズマの空 間分布の推定を行なった。
爆発時では、降着円盤が白色矮星表面付近まで迫っていて、今回解析を行なった、プラズマの降着円盤表面からの高 さが白色矮星半径の10%以下の領域に限れば(Dv≤0.1)、降着円盤内縁半径の上限値は白色矮星中心から1.03RW D 程度であるという結果となった。また鉄輝線のプロファイルから、プラズマの重心は降着円盤内縁に非常に近い位置 に存在すると考えられる。
静穏時では、降着円盤が白色矮星表面付近まで届いておらず、今回解析を行なったDv ≤0.1の領域に限れば、降着 円盤内縁半径の下限値は白色矮星中心から1.15RW D程度であるという結果となった。また鉄輝線のプロファイルか ら、プラズマの重心は降着円盤内縁に近い位置に存在すると考えられる。
7.2 今後の展望
今後の展望としては、§6.1.2でも述べたように、白色矮星質量の不定性も考慮し解析することが挙げられる。また、
U Gemは蝕を起こすため、硬X線ライトカーブの蝕の入りかけと出かかりの形から、放射領域の広がりが確認でき
ると考えられる。エネルギー別に見ることで温度分布の推定も行いたい。仮に、エネルギーの高いX線の方が蝕の始 まりが早く終わりが遅ければ、温度の高い領域がより外側にあることになり、降着円盤の内縁に空洞が空いていると いうことに結びつく結果となる。
42 第7. まとめと考察
一方で、2022年打ち上げ予定のX線天文衛星XRISMに搭載されるResolveはすざくの約30倍ものエネルギー 分解能を持つことで知られている。このエネルギー分解能を持ってすれば、今回すざくでは区別できなかった鉄輝線 付近の細かいラインプロファイルの観測も可能であり、プラズマの物理状態をさらに詳しく決定できると考えられる。