長崎大学学芸学部自然科学研究報告第12号19‑23 (1961)
尿素及チオ尿素を活剤とする石英の気泡摘出
川崎晴通
Pick up of Silica by Urea or Thiourea as Activator Harumichi KAWASAKI
1.陰イオン捕集剤による石英の浮選
石英の浮選に醇する実験的研究はかなり以前より行われており,脂肪酸または石鹸だけでは 浮かないが,ある種の金属塩によって活性化されると浮くこと,またpHの調節が重要なこと がわかっていた(‑> GaudinとRizo‑PatronはBa"1で石英を活性化しオL,イン酸で捕集す るときに,オVイソ酸イオ‑/とバリウムイオ‑/のモル比が1 : 1のときにpH10.6で最良の石 英浮選が行われることを見出しており(2)またGaudinとFurstenauは界面の電気二重層 の考えからZeta電位を測定し,石英表面に吸着されたラウIJv酸イオソはStern層内に選 択的に吸着されたバリウムイオ‑/との会合のみによって保持され界面の電荷の符号をかえると 考えた(3)以上のことからも考えられるように,石英の石鹸浮選には使用する石鹸と等モル の多価陽イオ‑/が必要になってくる。従来はこの目的のためにBa" CaH AV FeH等 の無機イオ‑/が使用されたが(4)窯業原料の浮選にこれら無機イオンを使用することは製品 の可塑性や軟化点のことを考えると余り好ましくなくC5)できれば有機塩で活剤として適当 なものがあれば,たいていの低分子有機化合物は焼成温度では揮発するから,製品に対する影 響も少ないものと考えて本研究に着手したわけであるO多価有機イオンとしては短鎖のヂ了ミ ソや,トl)了ミ‑/のイオソが考えられるのが本研究では現在比較的安価に且多量に供結されて いる尿素をまず対象として研究をすすめた。
2.尿素を活剤とする石英の気泡摘出 了ミソは水中では次のように電離する(6)。
R‑NHz+H20 +± R‑NH3++OH‑
したがってヂ了ミソの場合は次のように電離することも考えられる。
(CH*¥(NH*)*+2H*0 ≠と(CH.XLNHs)2.+++20H‑
この電離はCa(̲OH¥やBaQOH)zの電離に類似しているからカルシウム塩や!くリウム塩の かわりに,ヂ了ミソである尿素も活剤として使用可能であることが予憩されるO
夷験は筆者の考案した気泡摘出法により行なった(7)(8)試料はなるべく純粋な石英を鉄製
*長崎大学学芸学部化学教室
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川 崎 晴 通
乳鉢で粉砕し,45〜60メッシュの飾分をとり,王水中に一夜放置後数回水洗後,加熱乾燥1た ものをもちいた。
まず試料0。1gを経25mmの中型試験管に入れ水30ccを加え10分間空気を送入してかきまぜ る。傾斜法により水及スラィムをすて水及pH調節剤を加えて10分間かきまぜ,尿素溶液を加 えて30分間・オレィγ酸ナトリウム溶液を如えて30分間かきまぜ,気泡摘出を行ない摘出され た粒子数をしらべた。摘出時の溶液は30ccになるようにあらかじめ加える水の量を加減した。
第1図はパルプのpHが9〜10,オレィγ酸ナトリウムの0.01%,溶液1ccを加えたとき,
尿素の0・001%水溶液の添加量に対する石英の摘出粒子数の変化を示す。
上記の考え方の通り石英が活性化され摘出を行なうことができた。また加えたオレィγ酸ナ トリウムは0.1mgであるから,それと等モルの尿素,すなわち0.02mg (0.01%,溶液2cc)
を加えた場合に最高の摘出数を示3一はずである。図から見ると等モルの2倍の尿素を必要とし ているが,これは使用したオレイγ酸ナトリウム,および尿素の含水量の測定の誤りによるも のか,あるいは後述するように尿素自身の親水性にもとづくものではないかと考えられる。
第2図はパノレプ30cc中にオレイγ酸ナトリウム0.01%,溶液1cc,尿素の0.001%,溶液4 ccを含むときのpH摘出曲線である。ただし図中の黄鉄鉱と鏡鉄鉱の摘出粒子数は実測値に石 英に対する比重を乗じた数である。図より明らかなようにpHに9〜10において石英は最大の 摘出数を示し,pH=10においては黄鉄鉱とほとんど完全に分離し,鏡鉄鉱ともかなり分離す
ることが予知される。
UO
lOO 90 80 山 700
図 Q 60
国
0角 50
←
40 寓
030
⇔
Q
20 10
0
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●
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Jl23456789ユ011
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Fig・1
山 ⇒
寓
Q山 り
oh
← 呂
o
⇒
Q
100 90 80 70 60 50 40 30
20
ユ0
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56 78910111213
pH
Fi響・2
尿素及チオ尿素を活剤ヒする石英の気抱摘出
2ユ3. チオ尿素を活剤とする石英の気泡摘出
前述のように尿素は石英浮選の活剤として相当有効なことがわかったが,尿素はその分子内 に親水性の一CO一の結合をもっており(9),活剤としてはたらく場合逆効果が考えられる。し たがって一CO一のかわりに一CS一の結合をもつものを考えればこの欠点もなくなるものと考 え,チオ尿素による摘出試験を行なった。
第3図はパルプのpHが9〜10,オレィγ酸ナトリウムの0.001%溶液l ccを加えたとき,
チオ尿素の0.001%水溶液の添加量に対する石英の摘出粒子数の変化を示す。
図より明らかなように最高摘出数は尿素を活剤として使用したときの1倍半に近く,また最 高摘出物のチオ尿素の添加量はオレィγ酸ナトリウムの添加量とほとんど等モルである。すな わち尿素の一CO一結合は活剤としての作用に影響があることがわかる。
第4図はパルプ30cc中にオレイγ酸ナトリウム0.01%溶液1cc,チオ尿素の0.001%溶液2 ccを含むときのpH摘出曲線である。全般に摘出量は尿素の場合より増加しているが選択性に は大きな差はみとめられない。
120
UO
lOO 90
山 80P Q図 70
山
6Q
角
o← 50
属
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10
0
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012345ノδ78910U
C。C。 OF O.001% (NH2)2CS
Fig.3
220
UO
100 90 80
山
P 70図 Q 60 山 ぱ
国 50
0
← 名 40
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● 1 ● HEMAT【TE,
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PYRITE,
5 6 7 8 9 10 星1 12 13
pHFig.4
4.石英と長石の摘出比較
従来の如き金属イオγを活剤とする石鹸浮選では石英と長石の分離は困難であるが(1。),尿
素やチオ尿素の場合はまた異った結果が得られるのではないかと考え,長石に対する摘出試験
を行ない,石英の場合と比較した9第5図は第2図と7第6図は第4図の場合と同様の条件で
22 川崎晴通
行なったpH摘出曲線である。図よりも明らかな様に石英と長石は,尿素叉はチオ尿素を活剤 とする石鹸浮選により容易に分離されることがわかる。
角
P図
Qり 山
o
角
← 濱
P oQ110 100 90 80 70
60 50 40 30 20
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0
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■θ
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,〜6789101112夏3
pH
Fig.5
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P出
Qぱ 山 属
o← 宕
P oQ120 110 100 90
80 70 60 50 40 30 20 10
0
σ●。●噂
● ●の
●
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1 8 陰 0 0 ● σ
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4
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l
5 6 7 8 9 10 11 12 13
pH:
Fig.6
5.結 語
1)石英の石鹸浮選において尿素は活剤として有効であり,石鹸と尿素のモル比が1:2のと き最良の気泡摘出が行われた。
2)チオ尿素は活剤として更に有効であり,石鹸とチオ尿素の比が1:1のとき最良の気泡摘 出が行われた。
3)石英の石鹸浮選において活剤として尿素を使用した場合も,叉チォ尿素を使用した場合も,
叉チオ尿素を使用した場合も,鏡鉄鉱,黄鉄鉱に対する分離性には大差がない。
4)尿素叉はチオ尿素を活剤として石鹸浮選を行なった場合,石英と長石は大きな分離性を示
す。
参 考 文 献
(1)Gau(1in,Glover,Hansen and Orr:Flotation Fundamentals I,University of Utah Tp.
P.78(1928)
(2)Gaudin :Trans.AIME p.462(1945)
(5)Gaudin an(1Furstenau:Mining Engineering,p.66てJan.,1955)
尿素及チオ尿素を活剤どする石英の気抱摘出
25(4)Schuhmann,Prakash:Mining Engineering,P。591(May,195D)
(5)川崎:工化p.910(1955)
、
(6)赤堀,奥村:解説有機化学p。127(1956)、
(7)川崎:浮選No.6,P.25(1957)
(8)川崎:浮選No.7,P。19(1957)
(9)小田,寺村:界面活性剤の合成と:其応用p・502,(1957)
(10)Gaudin.(林訳)浮選P・581,(1944)