インド憲法におけるアファーマティヴ・アクション : マンダル報告書(一九八〇年)及びマンダル判決
(一九九二年)を手がかりとして(一)
その他のタイトル Affirmative Action in Indian Constitution
著者 孝忠 延夫
雑誌名 關西大學法學論集
巻 45
号 5
ページ 1236‑1296
発行年 1995‑12‑10
URL http://hdl.handle.net/10112/00024580
関法 第四五巻第五号
孝
マンダル報告書(‑九八 0 年︶及び マンダル判決(‑九九二年︶を手がかりとして
目 次
‑.はじめに
1
問題の所在I
二.マンダル報告杏(‑九八
0
年 ︶
主報告及ぴ勧告︵要旨︶
第 一 章 第 一 次 後 進 階 層 委 員 会 第 二 章 い く つ か の 州 に お け る
OBC
の地位第 三 章 方 法 論 及 び 論 拠 と し た 資 料 第 四 章 社 会 的 後 進 性 と カ ー ス ト 第 五 章 カ ー ス ト の 社 会 的 原 動 力 第 六 章 社 会 正 義
︑ 成 績 及 ぴ 平 等
インド憲法におけるアファーマティヴ・
忠 アクション ( 一 )
第 七 章 社 会 正 義
︑ 憲 法 及 ぴ 法 律 第 八 章
OBC
の福祉についての南北比較︵以上本号︶第九穿中央政府及ぴ州政府による証言︵以下次号︶
第一
0
章一般国民による証言など第一︱章社会的・教育的現地調査及び後進性の基準
第︱二液
OBC
の認定第 一 三 章 勧 告 第一四章報告書の要約
三.マンダル事件最尚裁判決(‑九九二年︶
むすぴにかえて
1 0 0
延 ( ︱
二 三
六 ︶
夫
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション ﹁法の下の平等﹂が︑﹁機会の平等﹂及び﹁取り扱いの平等﹂
のみならず︑﹁結果の平等﹂を含むものなのか否か︑﹁結果の平
等﹂を実現するために︑国が採る措置は︑憲法上いかなる性質
を有するものなのかが論議されてきた︒アファーマテイヴ・ア
クションは︑﹁結果の平等﹂実現のための︱つの手段として知
られているが︑日本においても︑アメリカ合衆国においても︑
一般的には憲法上の明示規定によって国に義務づけられた行為
( l )
ではないと解されている︒したがって︑政策的判断によって︑
積極的に展開されたり︑あるいは否定的に扱われたりする傾向
が強いように思われる︵最近のアメリカ合衆国におけるア
ファーマテイヴ・アクションの動向も︑政治や経済との関係で
見匝しの主張が強まっている感がある︒︶これに対して︑イン
ド憲法には︑国に積極的な差別解消措置をとることを義務づけ
る明示規定が設けられている︒したがって︑政治・政策論では
なく︑憲法解釈論として︑この問題にアプローチすることが可
( 2 )
能であることは︑かなり以前から指摘してきたところである︒
インド憲法は︑﹁法の下の平等﹂︵第一四条︶を定めるととも
に︑インドの歴史上苛酷な差別を受けてきた被差別階層に対す はじめに問題の所在ー~
1 0
るアファーマテイヴ・アクションをおこなうことを憲法上︑国
に義務づけている︒この被差別階層とは︑まず第一に︑指定
カースト
( S
C )
と指定部族
( S
T )
であり︑とりわけ指定
カーストは︑長い間﹁不可触民制﹂の範の下にあった︵憲法第
一七条が不可触民制の廃止を明記していることはよく知られて
い る ︶ ︒ こ れ ら SC.ST に対する公務上・教育上の優遇措置︑
衆議院及び州議会での保留代表の憲法上の性格については︑イ
ンド憲法制定以前からすでに論議されてきており︑一応の論点
は出尽くした感もある︵もちろん︑今日でも憲法学上の重要な
考察の対象としてたえず取り上げられてきており︑なお︑政治
的対立の焦点となっていることをふまえたうえでのことである
が ︶ ︒
今日︑インドで大きな問題となっているものの一っに︑﹁そ
の他の後進階層
( o t h e r b a c k w a d r c l a s s e s
以下 OBC と略
記するー︶の問題がある︒この OBC の憲法上の地位につい
て︑主として関連する条文は︑次のものである︒
り﹁この条及び第二九条い項の規定は︑国が社会的・教育
的後進階層又は指定カースト及び指定部族のため特別規定
を設けることを妨げるものではない︒﹂︵第一五条田項︶
伽﹁この条の規定は︑国がその公務に適当に参加していな
︵ ニ
︱ ︱
二 七
︶
関法 第 四 五 巻 第 五 号 いと認める後進階層市民のために任命又は補職を保留する 旨の規定を設けることを妨げるものではない︒﹂︵第一六条
田 項
︶
︵﹁国は︑国民の弱者層とりわけ指定カースト及び指定部 族の教育上及び経済上の利益を特別の配慮をもって促進し︑
また︑これらの者を社会的不正義及び一切の搾取から保護
しなければならない︒﹂︵第四六条︶
①
﹁ m
大統領は︑命令で︑適当と認める者をもって構成す る委員会を岡き︑インド領内の社会的・教育的後進階層の 状態及びその困窮状態を調査し︑その困難の除去及び状態 の改善のために連邦又は州によって採られるべき措岡並び に当該目的のために連邦又は州によって与えられるべき交 付金及び当該交付金の交付条件に関し勧告させることがで きる︒委員会の設慨に関する命令は︑当該委員会が採るべ
き手続きを定めなければならない︒
①委員会は︑付託された事項を調究し︑収集した事実 及び適当と認める勧告を付した報告書を大統領に提出しな
ければならない︒
い大統領は︑報告を受けとったときには︑採られた措 置を説明する覚書を付し︑当該報告書の写しを国会の両議
と
( ︱
二 三
八 ︶
院に提出させなければならない︒﹂︵第三四 0
条 ︶
こ の
OBC
の定義︑その認定の基準︑さらには
OBC に対す
るアファーマテイヴ・アクションの是非︑程度をめぐって今日 大きな論争が続いている︒この論争のきっかけの一っとなった のが︑本稿で紹介するマンダル報告書である︒また︑新聞紙上 にもたえず登場し︑極めて政治的色彩も帯びたこの
OBC 問題
に︑法律家︑法学者がどのような姿勢で臨むべきか︑学問的考 察を提示すべきかについて︑﹃インド法曹雑誌
( I n d i a n B a r R e v i e w
) ﹄で特集が組まれるなど︑インド憲法研究者にとって
も貨重な研究が相次いでいる︒
① マ ン ダ ル 報 告 書 本稿は︑この問題を考察する前提として︑第一に一九八
0 年 の
マンダル報告書を紹介する︒一九八
0 年︱二月=︱‑日に提出さ
れたマンダル報告書は︑憲法第三四
0 条にもとづいて一九七九
年一月一日に設悩された第二次後進階層委員会の報告書である︒
この委員会への付託事項は︑次のとおりである︒
﹁い社会的・教育的後進階層を決定する基準を確定するこ 団定義した社会的・教育的後進階層の発展のためにとる
べき措置を勧告すること
1 0
②
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション 図連邦又は州の公務に充分参加していない後進階層市民 のために︑任命又はポストの保留についての規定を設ける ことが望ましいか否か調資すること 団委員会が検討した事実を明記した報告書を大統領に提 出し︑適切と認めた勧告を行なうこと﹂ 委員会は︑多くの困難と制約をかかえながらも精力的に活動 し︑一九八 0 年︱二月=二日︑報告書をまとめた︒この報告書
の内容は︑大きな反響をよび︑インドをゆるがす政治問題とも
なっている︒報告書は︑第一部と第二部に分けられ︑第一部は︑
第一巻と第二巻で構成されている︒第一巻︵主報告及び勧告︶
は︑第一章から第一四章︑第二巻︵第一次後進階層委員会の構
成と付託事項︶は︑付表 1 ー
2 1 を含んでいる︒第二部は︑第三
巻から第七巻で構成されており︑その内容は︑第三巻︵インド
法律研究所の作成した調査研究︶︑第四巻︵南北四州の比較考
察︶︑第五巻︵社会的・教育的実地調壺票及び同調査票につい
ての覚書︶︑第六巻
( O B C
の州別リスト︶︑並びに第七巻︵反
対意見書︶である︒本稿では︑第一部第一巻第一章から第一四
( 3 )
章の概要を紹介する︒
マンダル事件最高裁判決
一 九
九
0 年八月一三日︑インド政府は︑政府公務における社 会的・教育的後進階層のための保留を拡大する覚書
( O
M )
を
出した︒この
O
M は ︑
SC.ST に保留していたものに加え︑
OBC に定員の二七パーセントを保留しようとするものであっ
た︒この
O
M が憲法違反であるとする令状訴訟が提起され︑決
定が下されたものの︑最終的な決着にはいたらなかった ( 1 9 9 2
S u p p
( 1 )
SCC
2 1 0 )
︒ 一
十 夕
+ 一
午 十
吟
g 湿 ⇔
淫 す 後 ︑
一九九一年九月二五
日︑インド政府はその姿勢を明確にして新たな
O
M を出し︑問
題の解決をはかったが︑この新
O
に対しても令状訴訟が提起 M
された︒この事件は︑最高裁の九人の裁判官で構成する特別法
廷︵憲法法廷︶で審理されることになり︑一九九二年十一月一
六日︑判決が下された ( 1 9 9 2
S u p p
(3) SCC 2 1 7 ) ︒この判決の
概要を本稿で紹介する︒
③ 憲法第一五条田項及び一六条い項をめぐる解釈論
第一五条及び第一六条は︑第一二編﹃基本権﹄に位置している
ので︑それらの条項が﹁基本権﹂ー権利規定であることは当
然のようにも考えられるが︑これらの条項の性質をめぐって判
例・学説上の論議が続いている︒それぞれのい項との関係が︑
﹃原則﹄と﹃例外﹄の関係にあるのか︑あるいは﹃目的﹄と
﹃手段﹄の関係にあるのか︑などの論点︑さらには︑﹃基本権﹄
としての性質をもつものなのか︑﹃政策的﹄性質を帯びた規定
1 0
三
︵ ︱ ‑ ︱
‑ ︱ ‑ 九
︶
匡坦嫁回
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ユ巨ヤ
t‑Q..,;J G)
如甜~\-J.W-v!.2.-'J~-Q-i-!.:;. 0
Mahendra P. Singh,
V.N.Shukla's Constitution of India, 9th ed., 1994.
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"""";、ユ搬坦~.;q:!;:-r-01ilK 剖瞑製如「 f>--t'°'i'--
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ト""':!:--.t>--~ ふ m;
ヽ」心茎玲l)A)
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啜炉器
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竺,i 忌遥乏・ 0.. • ,;‑, ; ヽ抵怒 s~
覆据S
竺全'M. Galanter, Compet 切 g Equalities, 1984.
さ勾~\且径゜
インド憲法におけるアファーマティヴ・アクション
第一次後進階層委員会 第一次後進階層委員会は︑インド憲法第三四
0 条にもとづく
大統領命令により︑一九五三年一月二九日に設置され︑
第一章 マンダル報告書(‑九八 0
年 ︶
主報告および勧告︵要旨︶
一 九
五
( 2
) 拙稿﹁
B.R
・アンベードカルとインド憲法
m ー
少数者保護規定を中心としてー﹂関西大学法学論集第 三四巻六号七七頁(‑九八五年︶以降の一連の論文・資 料などで︑このことは繰り返し指摘してきた︒最近のも のとして︑﹁インド憲法における﹃マイノリティ﹄﹂同・
第四五巻ニ・三号二六五頁(‑九九五年︶参照︒
( 3
) 第一章から第一四章の見出しは︑報告書の通りである が︑それぞれの章中の小見出しは訳出にあたって付した ものである︒なお︑インドの現状からすれば︑日本語と しては現在あまり使われなくなった言葉の方が︑その実 態に則しており訳語としてふさわしいと思われるものも 幾つかあった︒全体の文脈をそこなわない訳語を使用す ることに努めたが︑適切な表現がみつからず︑不本意な 表現にとどまった箇所もある︒ご指摘︑ご教示下されば
幸 い で あ る ︒
( 4
)
校正中のものを︑
M .
p
.シン教授よりいただいた︒
1 0
五
マ マ
五年三月三 0 日に報告書を提出した︒
この委員会は︑その付託事項について︑州政府と一般国民の 考えを知るため︑一八二項目からなるアンケートを行なった︒
また︑現地での証言を得るために広い範囲にわたる国内現地調
査も実施した︒
このようにしてまとめた事実を選択・分類し︑委員会は︑社 会的・教育的後進階層を認定する次のような基準をたてた︒
いヒンドゥー社会の伝統的カースト秩序の中における低
い社会的地位
閲カースト又はコミュニティの主要部分の中における一
般教育の不足
い公務への参加の不充分性又は欠如 団商業︑取引及び工業の分野における不充分な参加 委員会は︑全国で二三九九の後進階層又はコミュニティのリ ストを作成したが︑その中の八三七を﹃非常に後進的
( m o s t b a c k w a r d
) ﹄と分類した︒
後進階層向上のための委員会の勧告は︑きわめて広範で包括 的なものである︒この勧告は︑広い範囲での土地改革︑村経済 の再編成︑ボーダン運動︑家畜の飼育︑日常農作業︑畜牛保険︑
養蜂︑豚舎︑漁業︑地域産業の発展︑農村部住居︑公衆衛生及
( ︱
‑ ︳
四 一
︶
一 級 職
二級職 関法
第 四 五 巻 第 五 号
級
び農村部での水供給︑成人読み書き能力︑大学教育︑公務への
後進階層の参加など各種のテーマを扱っている︒注目に値する
勧告のいくつかは次のものである︒
国 一 九 六 一 年 人 口 調 査 を も と に カ ー ス ト 別 人 口 試 算 を 試
みること
印 階 層 の 社 会 的 後 進 性 と
︑ ヒ ン ド ゥ ー 社 会 の 伝 統 的 カ ー
スト秩序の中での低地位とを関係づけること
︵ す べ て の 女 性 を
﹁ 後 進
﹂ 階 層 と 扱 う こ と 団 資 格 を 有 す る 後 進 階 層 学 生 の た め に
︑ す べ て の 技 術
・
専門教育施設定員の七 0 %を保留すること
e
全政府公務及び地方公共団体の欠員補充にあたって 0
B
C への保留最小限枠を次のように定めること
⁝二五%
⁝四
0%
…三―――•1/3%
職•四級職
委員会は︑全員一致の報告害を提出できず︑五人の委員が反
対意見を明らかにした︒
A
・ シ
ン ( A n u p S i n g h )
︑アルナン
シュ・ディー
( A r u n a n g s h u D e ) 及び P.G
.シャー
( P .
G.S h a h )
が︑カーストと後進性とを結びつける見解に反対した︒
彼らは︑カーストを基準とする公職の保留にも反対した︒他方︑
s.D.S
・チャウラーシア(S•D . S . C h a u r a s i a ) は︑その反
対意見害の中で︑後進性の基準としてカーストを承認すべきこ
とを強く主張した︒ T ・マリアッパ
( T.
M a r i a p p a )
の反対意
見 は
︑
OBC のリストに二つのカーストを含めることに関する
ものであった︒ K ・カラールカル
( K a k a K a l e l k a r )
委 員 長 は ︑
この点について曖昧な態度をとった︒彼は正式の反対意見を表
さなかったけれども︑大統領への回送状の中で︑カーストを後
進性の基準と認めることには反対であると述べ︑また︑委員会
が行なったその他の重要な勧告についても保留を表明している︒
□
K ・カラールカル委員会報告害に対する政府の対応
政府は︑委員会報告書を詳細に検討したのち︑憲法第三四〇
条り項の規定にしたがって︑政府の対応を明記した覚書をそ
え︑一九五六年九月三日国会両院に報告書の写しを提出した︒
この政府覚書は︑次のように述べていた︒﹁憲法第三四 0 条に
定められた調査を行なうためには︑その他の後進階層部門を適
切に分類するための方法と基準を検討することが必要である︒
委員会は︑かかる分類を行なう︑目的テストと基準︑すなわち︑
社会的・教育的後進性をはかることのできる基準を確定しなけ
ればならなかったのである︒報告害は︑この点について全員一
致の結論を出してはいないし︑かなりの意見の相違があったこ
とを明らかにしている︒委員会の作成したリストは︑二三九九
1 0
六
︵ ︱
二 四
二 ︶
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション
コミュニティを含んでいるが︑その中の九三
0 ︑人口にして一
億一千五百万人のみを明らかにしている︒ SC.ST はそれと
は別の七千万人になる(‑九五一年人口調査をもとにすると︶︒
インドがギ等社会へ向けて発展していくうえで︑カースト制度 が最大の障害であることは否定しえない︒また︑特定のカース トを後進的だと認めることは︑カーストを基盤とする現在の差 別を維持し︑その差別を行なうことになるだろう︒⁝⁝いくつ かのカースト及びコミュニティを後進的だと認めることに関し ては︑わずかの例外を除き︑コミュニティ全体を後進的だとみ なしてしまうと本当に必要なことがあいまいになり︑特別の配 慮も︑充分な援助も与えられなくなる︒このことは︑憲法第三
四 0 条のめざすところではない︒﹂
この覚書の中で︑政府は﹁社会的・教育的後進階層の特定化 のために︑何らかの積極的かつ機能的な基準が考えられるべき であり﹂︑さらなる調査が﹁委員会の認定の中にある欠陥を是 正するために⁝⁝﹂行なわれるべきだと考えた︒さらに︑覚書 の中では計画委員会
( P l a n n i n g C o m m i s s i o n ) が後進性除去の ための発展計画をすでに作成していることが指摘され︑﹁強調 すべき主要なポイントは︑後進階層の特別の必要性が現在の計 画の枠組みの中で︑重点を適切に移動することによって︑ある
1 0
七
いは優越度を再調整することによって集中的・効果的になしう るのか否か︑又は︑補充的な計画を立案することが必要である のか否か︑ということである︒﹂と述べられている︒なお︑委
員会報告害は︑国会での審議の対象とはされなかった︒
国会に巫見書を提出した後︑政府は︑﹁カースト以外に︑後進
性を決定するにあたって実際に適用することのできる︑何らか の基準を発見すること﹂に努めた︒戸籍庁副長官
( T h e D e p u , t y R e g i s t r a t a r G e n e r a l ) は︑カーストのかわりに職業コミュニ ティを後進性に結びつけることが可能かどうかの検討を試みる よう求められたが︑適切な甚準を作り出すことはできなかった︒
この問題は︑州代表者会議(‑九五九年四月七日︶でも論議さ
れ︑内務大臣が招集した州高官会議でも検討された︒しかし︑
これらの努力の結果として何の一致も生みだされなかった︒
最終的に︑中央政府は︑後進階層についての全インドのリス
トは作成すべきではないし︑ SC.ST 以外の OBC のいかな
るグループに対しても中央政府公務に関するかぎり保留は行な うべきではないという結論に達した︒その後︑一九六一年八月
一四日内務大臣は︑すべての州政府に次のような通達を出した︒
﹁州政府は︑後進性を定義する基準をそれぞれ選択することが できる︒しかし︑インド政府は︑カーストを基準にして行なう
( ‑ ︱ 一
四 一 ︱ ‑
︶
に な
る ︒
﹂
2 関法
第四五巻第五号
よりも︑経済的テストを適用することが望ましいと考えている︒
⁝⁝︵後進階層のリストの作成に関しては︶憲法第三三八条伺
項にもとづいて︑中央政府が人民のある特定の集団を
O B
C に属すると明示したとしても︑各州政府は︑第一五条及び一
六条に基づいてそれぞれのリストを作成することができる︒し
たがって︑州政府は自らのリストを維持することができること
になるし︑中央政府が作成したリストは実際上役立たないこと
K ・カラールカル委員会報告書についての若干の検討
カラールカル委員会報告書は︑憲法制定後︑この種の全国規
模の調査としては最初のものである︒その後︑一 0 の州が一五
の委員会を設置し︑それらの報告書はこの問題についての豊富
な資料を提供している︒さらに︑吾々の委員会は︑ S C . S T
以外の後進階層に各種の特典を及ぼす問題については最高裁及
び高裁による多数の司法判断という付随的な恩恵も受けている︒
しかし︑ハンディキャップがあったことを認めるとしても︑
カラールカル委員会報告書には︑方法論上の重大な欠陥と深刻
な内部矛盾があることを指摘しないわけにはいかない︒例えば︑
委員会は︑社会的・教育的後進階層の基準を決定し︑かかる基
準にしたがってこの後進階層のリストを作成することを求めら
︵ ︱
二 四
四 ︶
れていた︒しかし︑この報告書からは︑後進階層のリストがそ
の基準の適用によってどのように作られていったのか明らかで
はない︒委員会が作成した州別リストは︑一九四九年︑﹁その
他の教育的後進階層﹄に対して奨学金などを交付するために文
部省が作成したリストにもとづいて作られている︒文部省は︑
各州政府から受けた勧告に基づいて順次これらのリストを作成
し て
い っ
た ︒
委員会は︑自らが収集した証言をふまえて︑この文部省の元
のリストを修正している︒しかし︑全く異なった目的のために
別の政府機関によって作成された﹃その他の教育的後進階層 j
のリストを広く採用し︑それをインドの社会的・教育的後進階
層のリストとしたという事実は動かせない︒委員会は︑その目
的から文部省のリストの妥当性をチェックする何の現地調査も
実施せずに︑このリストを採用したのである︒また︑社会的・
教育的後進階層を認定するために︑委員会が作りだした基準の
検証もなされてはいない︒
委員会は︑教育施設︑政府公務などにおける
OBC
への定
員・欠員補充の保留について︑それぞれ異なった割合を勧告し
ている︒例えば︑委員会は第三級と第四級で定員の四
0%
︑第
一級で二五%︑専門・技術施設で七 0 %の保留を勧告している︒
1 0
八
インド憲法におけるアファーマティヴ・アクション
しかし︑異なったグループのポストに異なった割合を定めるこ との理由が説明されていないので︑このアプローチはどこか裁
量的に思われる︒
上記の欠点は重大ではあるけれども︑この報告書の本当の弱 点は︑その内部矛盾にある︒三人の委員が︑報告書の最も重要 な勧告の一っ︑すなわち︑カーストを社会的後進性の一基準と 認め︑政府公職の保留をその基準に基づいて行なうことに反対 していた︒意見のこの相違の大きさが委員会勧告の力を非常に そこなっている︒しかし︑報告書のまさに基本を破壊してし まっているのは︑カラールカル氏が大統領に宛てた回送状であ る︒この書状で彼は︑次のように述べている︒
﹁ヒンドゥーの高位カーストは︑﹃低位﹄カーストに罪を 負っているということの無視を償わなければならないとい う確信を除いて︑私は︑全ての特別の援助は後進階層のみ に与えられるべきであり︑高位カーストの中の貧困者及び それに相当するものはこの特別援助からは確実に除外すべ きだと政府に勧告するつもりであった︒しかしながら︑そ れが国内のムスリム及びクリスチャン部門に非常に不健全 な影椰をもつことになると気づいたとき︑私の関心はカー ストを基礎とする救済策を提示することの危険性に向けら
1 0
九
れた︒⁝⁝このことは︱つの激しいショックを私に与え︑
吾々が提示した救済策は︑吾々が闘うべきはずの悪弊より ももっと悪いものだという結論に導いた︒⁝⁝この苦痛に みちた理解は︑吾々の作業の終わるころになって私をとら えた︒したがって︑まことに不本意ではあるが︑私は︑
カーストを基礎とする救済策を定式化するにさいして︑一 貫して私と協力してきた多数派の立場にたって最終的に決 定した︒最終段階になってから︑私は新しいことを考えは じめ︑後進性の基準については︑カースト以外のいくつか の基準に取り組まなければならないことに気づいた︒この 段階で私ができたのは︑委員会の勧告を破壊しようとした ことに同僚の多数の疑念を引き起こしたことだけである︒
このことが︑私が反対意見も明らかにせず︑何故報告書に サインしたかのもう︱つの理由である︒⁝⁝
かかるコミュニティが教育をおろそかにしてきたとする なら︑それは彼らがそれを使う必要がなかったからである︒
その誤りに気づいたなら︑彼ら自身がその風圧差を埋める のに必要な努力をなすべきである︒⁝⁝最近まで︑健全な 多くのコミュニティは︑カースト会を組織し︑自分たち自 身のコミュニティの子どもたちに奨学金を交付するために
( ‑
︱ 一
四 五
︶
関法 第 四 五 巻 第 五 号
資金を集めていた︒このことは︑自助の良い教訓であり︑
︷かなりの数のコミュニティがこのようにして実質的な福利
をめざして歩んできている︒しかし︑今日では︑全ての負
担は共通の国庫に課されようとしており︑過去に教育に無
関心であった人々が政府サーヴィスでの特別扱いを求めて
いる︒このことは決して公正ではない︒⁝⁝私は︑政府の
サーヴィスは︑社会全体のためになされるべきであるとい
う単純な理由で︑政府が特定のコミュニティに公務職を保
留することにはっきりと反対する︒⁝⁝私は︑第一級及び
第二級の公務職において︑後進階層が道徳的にも物質的に
も︑欠員補充の保留割合を要求せず︑後進階層のために︑
優遇が行なわれることを行政の公正性に委ねる立場にたっ
だろうと信じている︒⁝⁝﹂
右に記したのは︑後進性及び社会正義についての︑カラール
カル氏の雄弁な﹃遺言 j からの抜粋である︒カーストが社会的
後進性を決定する主要な基準の︱つであるとする報告書に︑正
式の反対意見を記すことを控えたことは︑この穏健なガンジー
主義者に終わりのない苦悩を引きおこしているに違いない︒彼
の見解のかかる明白な表明にもかかわらず︑この書状の後段は︑
次のように述べている︒﹁﹃刺を抜くのに刺を使え﹄︵毒を以て 毒を制する︶との諺にならって︑吾々はカーストの悪弊はカー ストの観点から考えうる手段によって除去しうると考えた︒﹂
内容的構成の点で︑このように一貫しない報告書は︑それ自
体の中に︑自らを否定する論理を内包している︒
い政府の対応についての若干の考察
K ・カラールカル委員会の報告書が︑政府の最大の関心を引
いたことは確かであるが︑それに政府がどのように対応したか
の方が問題である︒政府の考えは︑社会的・教育的後進階層に
特別の救済を与えることの必要性を認めながらも︑全体として
は︑社会の異なった階層間の経済的不均衡をなくしていこうと
する国家的使命によって条件づけられていた︒このことは︑内
務大臣が︑報告書を十分に検討したのちに︑全ての州政府に出
した書簡の中に明確に出ており︑その結びは次のようになって
いる︒﹁州政府は︑それぞれ独自に後進性を定義する基準を採
択する裁量を有しているのではあるが︑インド政府としては︑
カーストの基準よりは経済的テストを適用することが望ましい
と 考
え て
い る
︒ ﹂
政府の発展計画の主要な対象が常に大衆の貧困の除去であり
続けてきたので︑後進性を決定するのに政府が経済的基準を第
一次的なものと考えることは充分に理解できる︒しかし︑その ︱
1 0
︵
︱ 二
四 六
︶
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション 目的がいかに賞賛すべきものであったとしても︑それは︑委員 会設置の根拠条文となっている憲法第三四 0 条の精神と調和し
ない︒第一五条い項と第三四 0 条い項は︑ともに﹁社会的・
教育的後進階層﹂を明記している︒﹁経済的後進性﹂はこれら
の条文からは故意に省かれている︒吾々は︑このテーマについ
てさらに論ずるつもりであるが︑ここでは︑憲法第三四 0 条に
定められた後進性の類型を決定するにあたって政府が﹁経済的
テスト﹂に優位を与えることは︑この問題における憲法上の要
請に配慮するというよりは︑むしろ不注意であるということを
指摘しておくにとどめたい︒﹁社会的・教育的後進性﹂を定義
する基準としてカーストを認めないで︑もっともらしい事例を
作成することは可能かもしれない︒しかし︑カーストを経済的
テストに置き換えることは︑インド社会における社会的後進性
の本質を無視することになる︒
第二章いくつかの州における
OBC の地位
インド英領州政府が社会の被抑圧・被差別部門の福祉のため
に特別の計画を実行していたときから約百年たっている︒その
第一の段階は︑マドラス政府が被抑圧階層学生へ特別の便宜を
提供する︑教育施設への財政補助を定めた一八八五年補助金法 を制定したことに始まる︒その後︑一九ニ︱年︑州立法参事会 の決議にもとづき︑マドラス政府は政府公務における非プラー ミンの代表割合を高めるための措置をとった︒この計画は一九 二七年に見直され︑代表の範囲はさらに拡大された︒すなわち︑ 同州の全てのコミュニティを五つの大きな範疇にわけ︑それぞ れに異なった定数割り当てを行なったのである︒
被差別コミュニティからの陳情にもとづいて︑マイソール藩
王は︑州公務における非プラーミンの充分な参加へ向けての措
置を勧告するため︑当時のマイソール首席判事であった
L ・
C ・ミラー卿
( S i r
L . C . M i l l e r )
を委員長とする委員会を任命
した︒このミラー委員会の勧告にもとづいてマイソール政府は︑
一九ニ︱年︑教育及び州公務の募集にあたって後進コミュニ
ティに特別の便宜をはかることを内容とする政令を制定した︒
ボンベイ政府が︑後進階層を認定し︑その発展のための特別
規定を勧告する委員会(O·H.B・スタルテ(0•
H. B.
S t a r t e )
委員長︶を設けたのは︑一九二八年であった︒一九三
0 年に提出した報告書の中で︑この委員会は後進階層を三つの
範疇︑すなわち︑﹁被抑圧階層﹂︑﹁原住・高地部族﹂及び﹁そ
の他の後進階層﹂に分類した︒委員会は︑学生及び公務員募集
にあたって︑上記三つの範疇の後進階層に対する特別規定を設
︵ ︱
二 四
七 ︶
関法 第 四 五 巻 第 五 号
けるよう勧告している︒
﹁被抑圧階層﹂の福祉のための全インド規模での取り組みは︑
一九一九年モンタギュー・チェルムスフォード改革の一っとし てなされたものである︒この一九一九年には︑いくつかの公共 団体への特別代表が被抑圧階層構成員に与えられた︒公の用語 法では︑当時の﹁被抑圧階層﹂という包括的な用語は﹁指定 カースト﹂︑﹁指定部族﹂及び﹁その他の後進階層﹂を含んでい た︒一九三一年のインド人口調査では︑﹁被抑圧階層﹂という 用語は不可触カーストだけを意味する﹁アウト・カースト﹂に 使用されていた︒原住・高地部族は︑﹁原始部族﹂という名称
で数えられていた︒
被抑圧階層に加えて︑クリミナル部族と呼ばれる︑社会の非 常に後進部門であるもう︱つの範疇があった︒彼らは一八七一 年クリミナル部族法にもとづいて公表され︑いくつかの規定が
かれらの更生のために設けられていた︒
一九三五年インド統治法にもとづいて︑﹁被抑圧階層﹂が
﹁指定カースト
( S
C )
﹂に置き換えられ︑
S
C のリストが各
英領州ごとに一九三六年︑公表された︒同時に︑﹁原始部族﹂
という用語は﹁後進部族﹂に置き換えられ︑それらのリストも 各英領州ごとに公表された︒﹁指定部族
( S
T )
﹂という用語が
その後︑かなりの州政府が後進性の基準を定め︑その除去の
︵ ︱
二 四
八 ︶
﹁後進部族﹂について用いられたのは︑独立後︑憲法において
で あ
っ た
︒
一九三五年統治法にもとづいて︑ SC.ST に与えられた主
要な特典は︑連邦立法府及び州立法府における政治的代表で
あ っ
た ︒
中央政府が 0BC
の発展のために特別規定を設けるという立 場で︑この定義を試みたのは︑独立後のことである︒第一五条 い項及び一六条い項が社会的・教育的後進階層又は
S c
. s
T
のための特別規定を設けることを要請している︒カラールカ
ル委員会が憲法第三四 0
条にもとづいて一九五三年に任命され たのは︑この目的からである︒中央政府は︑同委員会の主要な 勧告を棚上げし︑州政府にそれぞれの碁準で後進階層のリスト を自由に作成することを認め︑適切と考えた措置をとることを
求 め
た ︒
ための措置を勧告する目的をもつ審議会又は委員会を設置した︒
今日までに一 0
の州政府が︑一五の審議会・委員会をこの目的
のために設置している︒これらの州は︑アンドラ・プラデー
シュ︑ビハール︑グジャラート︑ジャム・カシミール︑カル
ナータカ︑ケーララ︑マハーラーシュトラ︑パンジャプ︑ウッ
インド憲法におけるアファーマティヴ・アクション タル・プラデーシュ及びタミール・ナードゥである︒また︑こ れらとは別に八の州及び連邦領が各種の教育︑雇用その他の分 野についての特典を付与するために OBC のリストを公にして
きた︒これらの州及び連邦領は︑アッサム︑デリー︑ハリヤー
ナ︑ヒマチャール・プラデーシュ︑メーガーラヤ︑オリッサ︑
ポンディシェリー及びラジャースタンである︒これらの州政府
及び連邦領の殆どが依拠したのは︑一九四四年︑文部省が入学
後の奨学金支給などのために作成した OBC リスト︑及び第一
次五ケ年計画案作成時に Sc.ST コミッショナーが作成した
リストである︒
公務において︑被抑圧階層に公正な代表を与えようとする最
初の試みは︑一九三四年インド政府が︑﹁これらの階層の適切
な資格を有する志願者が公開競争試験で合格できないという理
由だけで︑任命の公平な機会を奪われるべきではない﹂という
指令を出したときである︒しかし︑募集人員のはっきりした割
合が彼らに保留されたわけではなかった︒
S
C に募集人員の
八 .
1 /
3 %を保留するという指令が出されたのは︑一九四三
年のみであった︒一九四六年六月︑この保留割合は︱ニ・
五%に引き上げられた︒後進部族の一般教育レヴェルは︑政府
公務になんらかの人数を留保するには低すぎると考えられたた め︑保留は行なわれなかった︒
奇妙なことに︑被抑圧階層への教育普及のための規定は︑
ずっとあとになって作成されている︒文部省が
Sc
学生のため
の入学後の奨学金計画を策定したのは一九四四年のことであり︑
その計画は一九四八年︑
ST
にも及ぽされた︒
上 記
一
0 州政府が設慨した審議会・委員会の主要な勧告と︑
それにもとづく措置の簡単な説明を以下に記しておく︒ m ァンドラ・プラデーシュ
一九六六年︑アンドラ・プラデーシュ政府は︑ OBC に属す
る一︱二のコミュニティのリストを公にし︑彼らのために政府
公務及び専門学校などでの定員保留枠を定めることを命じた︒
この命令に対して︑いくつかの令状訴訟が提起され︑アンド
ラ・プラデーシュ高裁は︑州がリストに挙げたコミュニティの
社会的・教育的後進性に関する資料を提出できないという理由
で︑この命令を無効とした︒この判決は︑最高裁でも支持され
この判決をふまえ︑アンドラ・プラデーシュ政府は︑
八年四月 M ・ペルシャード︵
Ma no ha r Pe rs ha d)
を委員長とす
る後進階層審議会を任命した︒この審議会は一九七 0 年六月に
その報告書を提出した︒この中で︑審議会は︑ OBC の 異 な っ
f こ ︒
~ ︵
︱ 二
四 九
︶
一 九
六
た四つの範疇を認定し︑専門学校及び政府公務の両方における 関法
第 四 五 巻 第 五 号
定員保留を勧告した︒
州政府は︑公開自由競争で成績にもとづいて選考される志願
者は︑保留定員に不利益に調整することは出来ないという︑審
議会の勧告も認めた︒二五%の保留が︑地方公共団体︑州政府
企業などの所轄の下にあるすべてのポストにも及ぽされた︒
州政府は︑住宅局の整備・建設した住宅用地の二五%︑住宅
の一五%を OBC のために保留した︒世帯収入が年六千ルビー
未満の後進階層学生は︑授業料の支払いを免除され︑奨学金︑
寄宿舎などの便宜をうける資格を有していた︒
また︑政府は︑ OBC に住宅用地および遊休地を割り当てる
べきだという勧告も受け入れ︑そのための独立した財団を設立
した︒経済的な基準にもとづいて奨学金その他の特典を拡げる
べきだとする勧告も州政府に受け入れられた︒
そ の
後 ︑
A ・ヴィーラッパ
(A gi sa mV ee ra pp a)
を委員長と
する第五期立法院の委員会が設置され︑後進階層の福祉のため
に一層の措置をとることが勧告された︒この委員会は︑一九七
七年に報告書をまとめたが︑政府が受け入れたその重要な勧告
のいくつかのものは︑次の通りである︒
国 一 般 的 な 慣 行 に し た が い
︑ 第 六 学 年 か ら で は な く
︑ 第
一九七一年六月 M
・ ラ
ー ル
(M un ge ri L al )
︵ ︱
二 五
0 )
一学年から奨学金を支給すること
奨学金の額を引き上げること
. .
b
団 ~.
各 施 設 へ の OBC の入学資格成績を四
0
%から三五
パーセントに引き下げること
切 ビ ハ ー ル
一九五一年︑ビハール政府は︑文部省の始めた計画にもとづ
いて︑入学後の奨学金などを支給するため︑一 0 九の後進階層
のリストを作成した︒内務省は︑一九六一年八月一四日の書簡
の中で︑州政府がカラールカル委員会の勧告したリストにもと
づいて後進階層リストを作成することは認められないと述べて
いた︒したがって︑ビハール政府は︑一九五一年にすでに作成
していたリストを継続することに決めた︒
一九六四年︑パトナ高裁は︑バラージ事件での最高裁判決に
したがい︑ピハール政府の後進階層リストは︑後進性の基準と
してカーストを用いているので無効であると判示した
( A
I R
1965
Pa tn a,
3 7 2 ) ︒この輝り決をうけ州政府は︑教育扶助を︑そ
の世帯収入が月五百ルピー未満の OBC 学生にのみ支給するこ
とを決定した︒医科大学への入学については︑その収入限度額
は︑月二五 0 ルピーに定められた︒
ピハール政府は︑
︱ ︱
四
インド憲法におけるアファーマティヴ・アクション を委員長とする後進階層審議会を任命し︑審議会は一九七六年 二月に報告書を提出した︒審議会は︑ニ︱八のコミュニティを ﹁後進的﹂と認定し︑その中の九四のコミュニティを﹁著しく 後進的
( m o s
t b a c k w a r d
) ﹂と分類した︒審議会の勧告は︑次
の 通 り で あ る ︒
り
OBC の志願者のために全ての政府省庁︑地方団体及
び州政府企業の欠員募集の二 0 %を保留する︒また︑三%
を女性のために保留し︑さらに三%を経済的弱者部門に保
留 す
る ︒
固
OBC 学生のために︑工学︑医学その他の専門教育施
設定員の二四%を保留する︒
団
OBC に対して︑宅地の割り当て︑奨学金の支給︑授
業料の払い戻しなど各種の特典を与える︒
州政府は︑上記勧告を一九七八年に受けとったが︑この勧告
は多くの騒乱を引き起こした︒発展コミュニティも後進コミュ
ニティも政府に不満をもった︒勧告の実施も多くの論争をまき
おこした︒多くの採用実施機関が︑成績で選考する後進階層志
願者受け入れの上限を定めたものと誤解した︒
その後︑ビハール政府は︑一九七九年七月にこの誤解を訂正
し︑保留定数は最小限を示すものであり︑後進階層志願者の最 大限を示すものではないことを明確にした︒また︑成績で選考 される後進階層志願者の割合が︑その保留定数に不利になるよ う計算されてはならないことも明らかにされた︒ い
グ ジ ャ ラ ー ト
グジャラート政府は︑一九七二年八月︑ A.R ・バクシー
( A .
R . B a k s h i )
を委員長とする後進階層審議会を設置し︑こ
の審議会は一九七六年に報告書を提出した︒審議会は︑社会
的・教育的後進階層として八つのカーストおよびコミュニティ
を挙げ︑それらの発展のために次の措置をとることを勧告した︒
り医学︑工学その他の専門教育機関で定員の一
0 %を保
留すること
9 9
b
︱ ︱
五
政府公務の三級職及び四級職全体の欠員補充の一
0%
を保留すること
因全政府公務︑地方団体︑州企業などの一級職及び二級
職の欠員補充の五%を保留すること
団生産増進訓練センターの定員の一 0 %を保留すること
国 親 の 収 入 が 年 四 八
0
0 ルピーを超えないことを条件と
し て
︑
OBC 学生に奨学金その他の教育上の特典を与える
こと︵この収入制限は︑遊牧部族及び周縁部族の場合には︑
七 二
00
ルピーに引き上げる︶
︵ ニ
︱ 五
一 ︶
関法 第四五巻第五号
バクシー審議会の勧告の全てを︑グジャラート政府は受け入
れ た
︒ り ジ ャ ム
・ カ シ ミ ー ル
一九五六年︑ジャム・カシミール政府は公務員規則を告示し
たが︑その中に︑州政府が後進階層のために政府公務における
保留を行なう旨定めていた︒一九六七年十一月︑州政府はガ
ジェンドラガドカル
(G aj en dr ag ad ka r)
委員会を任命したが︑
この委員会への付託事項の︱つは︑政府雇用における各地域︑
コミュニティ及び後進階層への公平な代表をみたす措置を勧告
するために︑現在の募集のあり方を検討することであった︒委
員会は︑一九六八年︱二月に報告書をまとめ︑経済的後進性︑
職業︑住居︑読み書き能力及びカースト︵ヒンドゥーの場合︶
が後進コミュニティを判断する基準になると勧告した︒そして︑
こ の 認 定 作 業 は
︑ 強 力 な 権 限 を 有 す る 委 員 会
(H ig h Po we r Co mm it te e)に委ねるべきだとも勧告した︒
これをうけて、
J•N
・ワジール(J.N .
W az ir )を委員長と
する後進階層委員会が一九六九年二月に設置され︑その報告書
が一九六九年十一月に提出された︒この委員会の勧告にもとづ
き︑州政府は﹃一九七 0 年ジャム・カシミール SC.ST
︵ 保
留︶規則﹄を制定した︒最高裁は︑ある事件において︑この規
︵ ︱
二 五
二 ︶
則の間隙を指摘し︑それらの間隙は規則を実施する前に修正し
なければならないと述べた︒そこで︑州政府は一九七六年八月︑
委員会
( A . S
・アーナンド
( Dr . Ad ar sh
S
.
A na nd )委 員
長 ︶
一 般 学 生 よ を任命した︒この委員会は︑ 次の勧告を行なった︒
﹁州の定住者であって︑次の範疇に入る者は︑後進階層とみ
な す
り二二の弱小かつ恵まれない階層及び ︒
固特定の後進地域に居住する者﹂
弱小・恵まれない階層は︑その大部分が居住コミュニティで
あり︑後進地区は︑不便な場所︑劣悪な環境︑低い読み書き能
カ︑医療施設の不足などを基準に認定された︒
委員会は︑州の後進階層のために次の特典を与えることを勧
告 し
た ︒
りすべての州公務の欠員補充の四二%の保留 伯すべての技術・職業専門教育施設定員の四二%の保留 い世帯年収が三千ルピー未満の学生に対する奨学金と年
金の支給︑及び同年収の後進学生に対しては︑
り高額の奨学金と年金の支給
公務及び教育における上記保留に加えて︑
S
C のために八% 一九七七年九月に報告書を提出し︑ ︱
︱ 六
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション の保留が加えられる︵なお︑ジャム・カシミール州には
S
T は
い な
い ︶
︒ 国 カ ル ナ ー タ カ
州の再編成の結果できたカルナータカは︑マイソール︑クー
ルク︑ボンペイ︑ハイデラバード及びマドラスのそれぞれの州
の全体又は一部によって構成された州である︒これらの州が以
前作成していた幾つかのリストにもとづいて︑カルナータカ州
は︑後進階層のリストを作成した︒このリストは︑マイソール
高裁によって無効とされ︑一九五九年になされた同種のこころ
みも同じ運命にあった︒一九六 0 年一月︑カルナータカ政府は︑
R•N・ゴウダ(Dr.
R .
Na ga nn a G ow da )
が委員長をつとめる
後進階層委員会を任命し︑この委員会は︑一九六一年五月に報
告書を提出した︒
委員会は︑公務上の保留のための後進コミュニティと︑教育上
の特権付与のためのコミュニティとを提示した︒委員会は︑職
業・専門教育施設の定員の五 0 %を後進階層学生のために保留
すべきことを勧告し︑また︑後進階層志願者のために政府欠員
募集の四五%を保留することも提案した︒
これらの勧告にもとづいて出された一九六一年政令は︑有名
なバラージ判決において︑州政府が憲法を不当に用いていると
︱ ︱
七
して無効とされたのである︒この判決をふまえて︑州政府は一
時的な措置として︑特典を与えるための﹁後進性﹂を︑階層で
はなく個人単位に取り扱うこととした︒
カルナータカ政府が L.G .ハヴァヌーア
( L . G•
Ha va nu r)
が委員長をつとめる後進階層審議会を設置したのは一九七二年
八月であり︑この審議会は︑一九七五年十一月に報告書を提出
した︒この報告書の中で審議会は︑カースト及びコミュニティ
の社会的後進性を決定するにあたって︑カーストの基準には依
らなかったことを述べている︒そのかわり︑カースト及びコ
ミュニティの社会的後進性を判断するものとして︑経済︑住居︑
職業などの多面的な要件を基準とした︒また︑後進性の範疇に
もとづいて︑州内のそれぞれの人口割合を算出し︑政府公務に
おける欠員保留を勧告した︒同じような保留は︑教育施設にお
いても行なうことが提案された︒さらに︑審議会は︑ OBC の
ための単独の金融機関と理事会
( Di r e ct o r at e )
を設立すること
も勧告した︒
州政府は︑審議会の勧告を広く受け入れるとともに︑さまざ
まの範疇の後進階層のために︑公務及び教育施設における保留
を命じた︒命令を出すにあたって︑政府が︱つの新しい範疇の
後進階層︑すなわち﹁特別のグループ﹂を加え︑このグループ
︵ ︱
二 五
三 ︶
ケーララ 関法
第 匹 五 巻 第 五 号 に一五%の保留を行なっていることが注目される︒また︑ハ ヴァヌーア審議会が後進コミュニティのために政府公務と教育 施設の一六%の保留を勧告していたのに対して︑政府は︑それ
を各々一八%と︱
1 0
%に引き上げている︒
6
ケーララ政府は︑ OBC のためにこれまでに三つの委員会・
審議会を設立している︒最初のものは︑一九六一年六月︑>.
K
・ヴィシュヴァナータン(V•K .
Vi sh wa na th an )
が委員長を っとめた検討委員会である︒この委員会は︑一九六三年一
0 月
に報告書を提出したが︑その主要な勧告は次の通りである︒
田
OBC 学生のために職業・専門学校の定員の四
0
% ︑
及 び SC.ST 学生のために一 0 %の保留を行なうこと
閲 国 の 保 留 割 合 は
︑ 州 政 府 の 下 で 新 た に 任 命 さ れ る 全 て
のものに適用する
︵ 後 進 コ ミ ュ ニ テ ィ の 再 分 類 の 問 題 を 調 査 す る 専 門 委 員
会の任命
州政府は︑職業・専門教育施設での
OBC
学生のための定員 保留は︑二五%のみに限定されているという点を除いて︑上記
勧告を受け入れた︒
その後︑憲法第一五条い項にもとづく︑教育施設での定員
︵ ︱
二 五
四 ︶
保留に関する政府の決定は︑ケーララ高裁で異議を申し立てら れた︒そして︑州政府は事実認定調査をはじめ︑後進階層に教 育上の特典を与えるための客観的基準を明示することを命じら
れた︒その後︑州政府は一九六四年七月︑ G.K ・ ピ ラ イ
( G .
Ku mu ra Pi l l ai )が委員長をつとめる審議会を任命し︑この審 議会は︑一九六五年︱二月報告書を提出した︒その勧告の主要
なものは︑次の通りである︒
田九一のコミュニティを﹁後進的﹂と分類し︑特典は︑
世帯年収が四二
0
0 ルピー未満の後進階層構成員のみに及
ぶことを明記する︒
固 職 業
・ 専 門 教 育 施 設 の 定 員 の 二 五 パ ー セ ン ト を OBC
のために保留すること︒この割り当てについて︑ OBC の
それぞれの範疇に別個の割合を明記する︒
州政府は︑上記の勧告中︑年収四二
0
0 ルピーの上限を六 0
0
0 ルピーに引き上げる修正を加えて受け入れた︒高裁は︑州
政府が憲法第一五条︵項のみにもとづいて︑
OBC に教育上
の特典を与えるための調査を行なうことを求めていたことが注
目されよう︒この点について︑ケーララ政府は︑ OBC に対す
るポスト保留に関する現在の割合を変更する措置をとらなかっ
t こ ︒
︱ ︱
八
インド憲法におけるアファーマテイヴ・アクション その後︑ケーララ高裁は︑後進コミュニティに対する職務の 保留に関する諸規則は︑古い時代遅れのデータに基づくもので あり︑それゆえ定期的に詳細な調査をおこない︑関連資料を収 集すべきであると判ホした︒これをうけて︑州政府は一九六七 年 一
0
月 ︑
M.P ・ダーモダラン
( M .
P .
D am od ar an )が委員
長をつとめる後進階層保留審議会を任命し︑この審議会は一九
七 0 年六月︑その報告書を提出した︒政府は︑この報告書の検
討に八年以上費やし︑最後の段階になって︑このように長い時
間が経過してしまうと審議会の認定はその妥当性を失うことに
なるだろうと考えた︒このような状況の中で︑政府は︑新たな
審議会を再度任命することがその事態を満足に解決しうる途だ
と判断した︒政府は︑全体の四 0 %という保留枠を変えずに︑
一定の変更を行なったが︑今までのところ︑新審議会を任命で
き て い な い ︒
り マ ハ ー ラ ー シ ュ ト ラ
以前のポンベイ州が二つに分かれた後︑マハーラーシュトラ
政府は︑一九六一年十一月︑﹁公務における後進階層の保留に
ついて報告書をまとめる﹂ための委員会
( B . D
・デシュムー
ク
( Sh r i
B .
D . D es hm uk h)委員長︶を任命した︒一九六四年
一月に提出されたその報告書の中で︑委員会は︑次の勧告をお
こ な
っ た
︒
, 9 .
a~.
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九
後進階層は︑四つのグループ︑すなわち①指定カース
ト及び新仏教徒︑②指定部族︑③周縁・遊牧部族︑④その
他の後進コミュニティ︑にグループ分けすべきである︒
固それぞれの範疇の後進階層に対する公務及び教育施設
での保留は︑州のそれぞれの人口割合と相関していなけれ
ば な ら な い ︒
政府は︑上記の勧告を大胆に受け入れ︑後進階層の四つの範
疇に対する州公務及び教育施設における保留をおこなった︒
その後︑一九七九年四月︑州政府は︑州政府︑地方団体など
の下にあるすべての欠員補充の八 0 %を社会の経済的弱者部門
に保留しなければならないとする政令を出した︒これらの弱者
部門は︑世帯月収が二百ルピー未満のものと定義された︒この
基準で資格を有する志願者数が八 0 %にみたないときには︑世
帯月収二百ー四百ルビーの範囲内の志願者に優先順位を与える
も の と し た ︒
この政令では︑八 0 %の保留に︑その他の後進階層︑
S C
. S
T などへの以前からの保留を含むことが明記されていた︒
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