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1 8 氏 名 阿久津

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Academic year: 2021

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1 8

氏 名 阿久津

さとる

学 位 の 種 類 博士(文学)

報 告 番 号 乙第335号

学 位 授 与 年 月 日 2018年3月31日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号) 第4条第2項該当

学 位 論 文 題 目 「音韻」に関する語誌的研究

審 査 委 員 (主査)沖森 卓也 (立教大学大学院文学研究科教授) 加藤 睦 (立教大学大学院文学研究科教授) 木村義之(慶應義塾大学日本語日本文化教育

センター教授)

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Ⅰ.論文の内容の要旨

(1)論文の構成

第一章 日本語研究における「音韻」

第二章 現代日本語における「音韻」

第三章 「音韻」の語誌

第四章 明治初期・中期の日本文典における「音韻」

第五章 明治後期・大正期の口語文典における「音韻」

第六章 漢語音韻学における「音韻」

第七章 音韻関連用語の語誌(一)-「母音」「子音」「音節」-

第八章 音韻関連用語の語誌(二)-「音素」「単音」その他-

結論 参考文献

(2)論文の内容要旨

本論文は「音韻」という語の意味・用法の変遷を語彙史的に明らかにするものである。

その際、日中語彙交流史の観点、意味論的な観点、日本語語彙学習の観点なども取り入れ、

さらに、関連する「母音」「子音」「音節」などについても、その用語の変遷の過程を考 察する。まず、第一章では、日本語研究において「音韻」がどのように捉えられているか について概観するとともに、研究方法について述べる。第二章では、「音韻」という語に ついて、現代日本語と現代中国語とにおける意味・用法を調査し、「詩や文章のことばの 響き」と「言語学的に見た言語音」という代表的な意味があることを述べる。第三章では、

中国で「音韻」は本来「音楽的に調和した美しい音」を表し、これから「楽器の音色」「歌 声」「ことばの音楽的な響き」の意が派生し、さらに「詩のリズムや韻律」「漢字音」な どの意も生じたことを述べる。日本には平安時代初期に伝わり、漢字音以外の「言語音」

を表す用法が発達し、明治以降、西洋言語学の影響のもとで「言語音」を表す専門語とし て使われるようになったという「音韻」の語誌を明らかにする。第四章では、明治初期・

中期の日本文典(日本語文語文法書)では、国学由来の、五十音図を基本とする音韻観が 見られることなどを述べ、第五章では、明治後期・大正期の口語文典において、五十音に おける理念的な音声ではなく、五十音以外の音をもはっきりと日本語音として認めるよう になるとともに、西洋由来の音声学の影響によって、音声学的な分析が精密になったこと を述べる。第六章では、中国音韻学における「音韻」と、その研究について概観し、日本 漢字音研究や漢字学習とのかかわりについて考察する。第七章では、音韻論における基本 的な用語「母音」「子音」「音節」について、第八章では、「音素」「単音」「発音」「音

声」「声音」について、その語誌をたどる。

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Ⅱ.論文審査の結果の要旨

(1)論文の特徴

本論文は、「音韻」という言語学における基本的な用語を、学史的な側面だけでなく、

その語誌、すなわち意味の変遷を明らかにする語彙論的な視点に立脚したものである。こ れまで専門語の定義付けとして歴史的な調査が行われることはあったが、漢語としての語 誌を資料に基づき論証するとともに、漢語音韻学における用法を精査し、中国語音として の「漢字音」という意、さらにはその要素・体系・研究などの意味が生じて、「梵語音」

などにも応用されていく過程を歴史的かつ総合的に記述している。また、西洋言語学とし ての概念が定着する以前の明治・大正期における意味・用法を精査して、 「音韻」と五十音 図との関係を明らかにしたこと、phonetics という概念が導入されると「音声」「声音」と 呼ばれるものが言語音研究の主流になり、「音韻」の使用が一時減少したこと、phonology が機能的な音に関する研究で用いられるようになると、「音韻」は単位音の意で用いられ るようになったことなどを、資料を博捜し実証的に解明する。

(2)論文の評価

「音韻」という漢語が日本に伝来し、その後漢字音以外の「言語音」の意を表すように なり、さらに五十音図と関係を深めていくという過程を丹念に辿り、この語が専門語に用 いられる前提を明らかにした功績は大きい。そして、明治期に、国学では五十音という直 音の清音を基本的な音韻(正音)と捉え、それ以外の濁音、半濁音、拗音、撥音、促音な どの音を五十音の変化したものと見なすという「音韻」の概念の広がりを指摘する点も注 目される。さらに、phonetics の概念の導入によって、音声学的な分析が精密になり、かえ って日本語音の体系的な整理がしにくくなる一方で、音を捉えるレベルを整理しようとい う試みの中から、松下大三郎が「声音」(音声)に「声音学的音価」と「文法的音価」と いう二つのレベルを認め、後者に現代音韻論の音韻(音素)に近い概念を見ることができ るという指摘も意義深い。また、「母音」「子音」は訳語として英文典では明治中期に一 般的になる一方、日本語研究では「母音」は明治中期から、「子音」は大正期以降に一般 的となったこと、「音節」は、1900 年ごろから

syllable

の訳語として使われるようになり、

「発音」は明治の初めごろから、「音声(おんせい)」は明治中期ごろから言語音に関す る意味で使われるようになったことなど、その数々の指摘は日本語学史研究として大きな 価値を有する。研究者個々の音韻をめぐる用語の定義づけについてはやや物足りなさが残 るものの、「音韻」の語誌を日中語彙交流の観点から有機的に捉え、その全貌を明らかに

した研究として高く評価される。

参照

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