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博士(医学)橘 剛 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)橘   剛 学位論文題名

ウサギ脊髄虚血再灌流モデルにおける

calcineurin inhibitor の神経細胞保護効果について 学位論文内容の要旨

【目的】胸 腹部大動 脈瘤手術 における 脊髄障害 は重篤な 合併症であり,この対策とし て現在ま で数多く の技術的 改良や薬 剤投与の 研究がな されている ,FK506は脳虚 血再 灌流時の神 経保護効 果が数多 く報告さ れ,臨床 研究が進 められているが,本剤による 脊髄虚血 再灌流障 害に対す る神経保 護効果に っいての 報告は数少 なぃ.FK506が 神経 保護効果を示す機序の詳細は不明だが,本剤が12−kDa FK506 binding protein (FKBP12) と結合し てりン酸 化蛋白質calcineurinを抑制す ることと 関係があ るという説 が有カ であ る ,一 方 ,FK506がFKBP12 knockout mouseのhippocampus神経 細胞培養 モデル にお い て細 胞 増 殖を 促 進す る ことか ら,本剤 の神経細 胞に対する 働きはFKBP12と 無 関係 と の報 告 も あり , またFKBP52とsteroid receptor complexが神経 細胞の再 生と 密接な関係 があると の報告も 見られる .本研究 の目的は ,ウサギ脊髄虚血再灌流モデ ルにおけ るFK506の細胞 保護効果 を検討す るととも に,その 作用機序に ついて特 に,

calcineurin pathwayの面から検討することである.

【方法】New Zealand White Rabbits雄2.6〜3.3kg36匹を以下の6群に分け,Balloon catheterを 用 い た 腎 動 脈 下 腹 部 大 動 脈 遮 断 に よ り 脊 髄 虚 血 を 引 き 起 こ し た . くDcontrol (C) group(n二ニ6):vehicleを静 脈内投与 して30分後 に15分問の 脊髄 虚血,  |

◎FK506 (FK) group (n=6):FK506 Img/kgをvehicleの 代 わ り に 投 与 .

◎CyclosporinA(CsA) group (n=6):CyclosporinA30mg/kgをvehicleの 代 わ り に 投 与 . CyclosporinAはCyclophilinと 結 合 し てcalcineurinを 抑 制 す る ・

@Rapamycin (R) group(n 6) :Rapamycinlmg/kgをvehicleの 代 わり に 投与 , Rapamycinは FKBP12, FKBP52と 結 合 す る がcalcineurinを 抑 制 し な い .

◎R+FKgroup(n 6) :Rapamycinlmg/kgをFK506の 更 に20分 前に 静 脈内 投 与 , それ以外はFKgroupと同様・

◎CyclosporinA慢 性 投 与 (CsA−C)group:CyclosporinA20mg/kgを9日 問 慢 性 静 脈 内 投 与 し , 手 術 日 に も 同 量 を 静 脈 内 投 与 し て30分 後 に15分 間 脊 髄 虚 血 ,   脊髄保護効 果の評価 は神経機 能につい てJohnsonの方法による客観的5段階評価を,

病理学的に は脊髄前 角細胞数 の比較を行った.統計学的検討は,2群問のJ0hnsonscore の 比 較 に はMannwhitneyUtestを 用 い , 連 続 変 数 の 比 較 は0ne−wayanalysisof varianceを用いた.p―valueは0.05未満で有意とした.

【結 果 】Johnsonscoreに よ る神 経 機 能評 価 は, 虚 血8時 間後 は群問 に有意差を 認め なかったが,24時間後,48時間後では有意差を認め,FKgroup,R+FKgroupがC―group CsAgroup,Rgroupよ り 有 意 に 高 く , ま たCsAーCgroupがC―group,Rgroupより 有 意に 高 かっ た , 病理 学 的評 価 では, 脊髄前角 においてFKgroupとR+FKgroup,CsA― Cgroupで は多 数 の 大き な 運動 神経 細胞が認 められ, 大部分の 核は核膜が 平滑で核 小

(2)

体を 確認 でき た, これ に対 し他 のgroupでは灰白質は死んだ細胞が抜け落ちた跡と考 えら れる 空胞が散在し,残っている運動神経細胞は萎縮し,核は消失しているか濃縮 して おり その 構造 はは っき りし なか った.脊髄前角細胞数は,FK groupはR+F group を除 く全 てに 対し て有 意に 細胞 数が 多か った . R+FK group,CsA−CgroupはCgroup より有意に細胞数が多かったが,R group,CsA groupとは有意差が無かった,Rgroup CsA groupはCgroupと有意差は無かった.

FK506の 脊髄 虚血 再灌 流障害 にた いす る神 経保 護効 果は ,ラ ット モデルでの1報告を み る に す ぎ な い . 本 実 験 は こ の 効 果 を ウ サ ギ モ デ ル で 追 試 し た の み な ら ず , CyclosporinA慢性 投与 が同 様に 脊髄 保護 効果 を有 する こと ,Rapamycinの 単独 投与 では保護効果を発揮しないことを初めて確認した,

【 考 察 】FK506 Img/kg投与 とCyclosporinA20mg/kg慢性 投与 では ,脊 髄虚 血再 灌流 時の 神経 保護 効果 が得 られ た. この 結果は神経保護効果の機序にcalcineurinの抑制 が関 わる とす る以 前か らの 多く の報 告を 支持 して いる. CyclosporinAはBBB透過性 が低 いこ とが 知ら れて いる が,20mg/kgの慢性投与では十分な脳内への薬物移行が得 ら れ る と 報 告 され てい る. 一方 本実 験で はCyclosporinA30mg/kg一回 投与 では 神経 保 護 効 果 は 発 現し なか った .こ の投 与量 は,CyclosporinAのcalcineurin抑制 効果 がFK506の 約30分 の1と され てい るこ と, 脳神 経領 域に おい てはB.B.Bを 破壊 する 処置 をし なくてもこの量で効果を発揮するとの報告がみられたこと,一回投与量とし ては 極量 と考えられたこと,から設定したが,結果的には中枢神経系に移行する量が 少なかったと考えられた.

  一 方Rapamycin単独 投与の 脊髄 保護 効果にっいては報告が無い,RapamycinはFK506 以上 にFKBP12と親和性が高く,B.B.B.も通過し,また分子量はFK506とほぼ同等で あ る , し た が って 本実 験で は投 与量 とし てFK506と 同量 のImg/kgを用 いた が, 神経 保護 効果 は発 現し なか った .こ の結 果もFK506の神 経保 護効 果に おけるcalcineurin 抑制 の関 与を 支持 して いる ,一 方, 本実 験で はFK506の 効果 はRapamycinの同時投与 では ,神 経学的,病理学的評価とも完全には拮抗されなかった,これは1:対1の投与 量で は拮 抗させるために充分ではなかった可能性も考えられ,さらなる検討が必要で ある.  FK506の神 経に 対す る作用 の機 序と しては,steroid receptor複合体の一部分を成 すFKBP52の関 与に つい ての 報告 も散 見さ れる .今 回の検 討に おい ては,神経機能評 価 お よ び 病 理 学 的 評 価 の いず れ に お い て もFK506がCyclosporinA慢 性 投 与 よ り保 護効 果が 強い 傾向 が見 られ た. これ はcalcineurinの抑制以外にも神経保護効果を発 揮す る経 路が 存在 する 可能 性を 示唆 する とも 考え られ, 今後 の検 討が必要である.

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ウサギ脊髄虚血再灌流モデルにおける

calcineurin inhibitor の神経細胞保護効果について

  本 研 究 の 目 的 は , ウ サ ギ 脊 髄 虚 血 再 灌 流 モ デ ル に お け るcalcineurin inhibitor (FK506cyclosporinA) の 神 経 細 胞 保 護 効 果 を 検 討 す る と と も に ,FK506の 作 用 機 序 に っ い て 特 に ,FKBPの 面 か ら 検 討 す る こ と で あ る .

    

  New Zealand White Rabbits26‑3.3kg 36匹 を 以 下 の6群 に 分 け ,Balloon catheterに よ る 腎 動 脈 下 腹 部 大 動 脈 遮 断 に よ り 一 過 性 脊 髄 虚 血 を 誘 発 し た . 虚 血 時 間 はapoptosisが 優 位 に 生 じ る と さ れ る15分 間 に 設 定 し た 。 薬 剤 投 与 は 静 脈 内 投 与     

で 遮 断30分 前 に 行 っ た ,C群 :vehicle投 与 ,FK群 :FK506 Img/kg投 与 ,CsA群 : cyclosporinA30mg/kg投 与 .CsAC群 :cyclosporinA20mg/kg9日 連 日 投 与 ,R 群 :  rapamycin Img/kg投 与 ,R+F群 :rapamycin Img/kgFK50620分 前 に 投 与 . cyclospolinAに 関 し て は 血 液 脳 関 門 を 通 過 し に く い こ と が 知 ら れ て お り 、 今 回 は 血 液 脳 関 門 を 通 過 す る と 報 告 さ れ て い る2種 類 のdosage scheduleを 用 い た , 脊 髄 保 護 効 果 の 評 価 は 、 神 経 機 能 をJohnsonの 方 法 に よ る 客 観 的6段 階 評 価 に て , 病 理 学 的 に HematoxylinEosin染 色 に よ る 脊 髄 前 角 細 胞 の 形態 的評 価と 細胞 数の 比較 を行 った .   神 経 学 的 機 能 は ,FK群 ,R+F群 ,CsAC群 はC群 と 比 較 し て 有 意 に 良 好 で あ っ た 。 病 理 学 的 評 価 で は , 脊 髄 前 角 の 運 動 神 経 細 胞 数 は 、FK群 ,R+F群 ,CsAC群 はC群 と 比 較 し て 有 意 に 多 か っ た 。 ま たFK群 ,R+F群 ,CsAC群 で は 、 核 は 核 膜 が 平 滑 で 核 小

秀 顯

田 畠

安 北

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

体を確認できたが,その他の群では核は消失しているカゝ濃縮しておりその構造ははっ きりしな かった.す なわち,FKBP12と 結合してcalcineurinを抑制するFK506, cyclophillinAと結 合してcalcineurinを 抑制するcyclosporinAの両 者に脊髄神 経保護効果が証明されたが、FKBP12と結合するがcalcineurinを抑制しないrapamycin には脊髄神経保護効果を認めなかった。

  一方,本実験では、FK506の効果はFKBP12に対する拮抗剤であるRapamycinの同 時投与では,神経学的,病理学的評価とも完全には拮抗されなかった.この理由とし ては、1対1の投与量では拮抗させるために充分ではなかった可能性と、FKBP12を介 するcalcineurinの抑制以外にも神経保護効果を発揮する経路が存在する可能性との 2点が考えられる.

  公開発表では,副査の劔物教授から脳虚血モデルと脊髄虚血モデルの違いに関して と,他の 脊髄保護効 果が証明さ れている薬 剤との比較 に関して, 北畠教授から calcineurinが神経障害を生じる機序と,FK506の投与法に関して,また本実験にお ける細胞死の形態にっいて,主査の安田教授から大動脈外科における本研究の意義に 関して等,質問がなされた.これらの質問に対し,申請者は自らの実験結果,臨床体 験,この 分野に関する文献などをもとに,誠実に,かつ妥当な回答を成しえた,

  FK506の脊髄虚血再灌流障害にたいする神経保護効果は,ラットモデルでの1報告 をみるに すぎない。 本実験はこ の効果をウ サギモデル で追試した のみならず,

cyclosporinA慢性投与が同様に脊髄保護効果を有すること,rapamycinの単独投与 では保護効果を発揮しないことを初めて確認したものである.さらに,大動脈手術に 伴う脊髄障害に対するFK506の臨床応用にむけて,胸腹部大動脈瘤治療の今後の展開 に重要な寄与をしうるものと評価される,

  審査員一同は,申請者の学識に合わせて,この研究が関連領域研究と臨床成績の向 上に果たす役割を評価し,大学院課程における研鑽や単位取得なども併せ申請者が博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

参照

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