博 士 ( 工 学 ) 城 野 理 佳 子
学 位 論 文 題 名
絹フィブロインとハイドロキシアパタイトの 複合化によるバイオマテリアルの開発
学位論文内容の要旨
第1章は序 論であり,本研究の背景及び目的を明らかにした。骨の再生を促すには、生体吸収性と 骨伝導能をあわせ持つ足場材料が必要である。骨の主成分であり骨伝導能を有するハイドロキシア パタイトを必須成分として、生分解性の合成高分子(ポリ乳酸)や生体高分子(コラーゲン、キトサ ン、アルギン酸)をど種々の高分子との複合化が検討されてきた。しかし、ポリ乳酸は体内で分解 して乳酸とをり、患部周辺に炎症反応を引き起こすことが報告されている。そのため、ハイドロキ シ アパタ イト(HAp)/ポリ乳 酸複合体は機械特性に優れるものの、安全性の問題から実用化は困難 で ある。 一方、HAp生体高分子は生体親和性に優れているが、機械特性に劣るという問題がある。
以 上の理 由から 、優れ た生体 親和性と機械特性を併せ持つHAツ生体吸収性高分子複合体を開発す ることは極めて重要である。そこで著者は、高い機械強度を持ち、かつ生体吸収性/生体親和性を有 す る絹フ ィプロ インに 着目し た。絹 フィプ ロインとHApの新規複合化技術を確立し、骨再生材料 の基盤材料を開発した。
第2章では 再生絹フィプロインフィルムの作製と、生物鉱物作用(バイオミネラリゼーション)に よ る絹フ アブロ インとHApの複合 化につ いて述 べた。 絹フィプロインは繊維の状態では非常に生 体安定性が高いため、生体吸収性のある再生絹フアプロインフィルムを作成した。しかし、再生絹 フ ィプロ インとHApを単純にブレンドすることは、静電的を相互作用の影響により困難であった。
そ こで、 バイオ ミネラ リゼー ション による 絹フアプ ロインとHApの複合化技術を検討した。骨誘 導 能を有 する材料を擬似体液に浸漬すると、HApが析出することが知られている。しかし、絹フイ プ ロイン は骨誘 導能を 示さを かった。そこで、絹フィプロインフィルムに塩化カルシウムを配合 し 、擬似 体液中 にてカ ルシウ ムイオ ンを放 出するこ とで、絹フアプロインフィルムの表面にHAp を 析出さ せるこ とが可 能とを った。 本章で はHAp析出 条件の検討及び、析出に伴う擬似体液中の イ オン濃 度の変 化を検 討した 。さら に析出 したHApに ついて もX線回 折によ る分析や電子顕微鏡 による観察を行った。
第3章で はGuidedBoneRegeneration膜 材 料へ の 応 用 を指 向 し、 上記で 作製し た絹フ ィプロ イ ン /HAp複 合シ ー トmAp‐SFDの 多 層化 を検討 した。HAp‐SFFを重 ねて熱 圧着し ても、HApの層 に 阻まれ て接着しをいため、塩化カルシウムを加えていをい絹フィプロインフィルム(SFDを接着 剤 として 用いる 方法を 考案し た。SFFとm却‐SFFを 交互に5層重ね て、熱 圧着することにより多 層 構造材 料を作 製した 。この ときの 熱圧着 条件は、HAp‐SFFとSFFの2層の 引き剥がし強度によ り 決定し 、最適 な条件 を求め た。さ らに、 引き剥が し面の分析から、HApの鱗片状結晶の隙間に
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絹フ ィプロインが入り込み、そのアンカー効果によって接着していることが分かった。また、多層 構 造 材 料 の機 械特 性 を評 価し 、HApと の複 合化 に よる 機械 強度 への 影 響に つい て検 討 した 。 第4章 ではインプラント材料のめvitroにおける現象を理解す るため、生体吸収性・分解性を検討 し た。 第3章で 作 製し た多 層構 造材料のプロテアーゼに よる酵素分解速度を測定し 、HApとの複 合化 による効果を検討した。ハイ ドロキシアパタイトとの多層構造材料は絹フィプロインのみを4 枚 熱圧 着した材料よりも生 分解性が遅かった。これはHApの層によってプロテアーゼ の侵入が阻 まれ たためと考えられる。また、SFFとHApー駆乎上でマウス 骨芽細胞による細胞増殖性とアルカ リ フオ ス ファ ター ゼ(ALP)活性 を検 討 した とこ ろ、SFFは骨親和性の高いHApと遜色 のをい細胞 増殖 性及びALP活性を誘導した。
第5章 は 結 論 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 と そ の 意 義 に つ い て ま と め た 。 本研 究で得られた成果は以下の通 りである。
・ バイ オ ミネ ラリ ゼー シ ョン を応 用し 、新 規 を絹 フィ プロインとHApの複合材料を 作製した。
・ 誘導 結合プラズマ発光分 光分析により、HApの析出に 伴う擬似体液中のイオン濃度 変化を測定 しHApの結晶成長速度について知 見を得た。
・熱 圧着により絹フアプロインとHApの多層構造材料を作製し た。
・ 絹フ ィ プロ イン とHApを 多層 化することで、機械特性 に優れた材料が得られ、か つHAp層の数 によ って生分解速度を調節するこ とが出来た。
・ 絹フ ィ プロ イン はHApと 同等 、も し くは それ 以上 の 細胞 増殖 性とALP活性 を誘導 することか ら 、絹 フ ィプ ロイ ンとHApの多 層構 造 材料 のバ イオ マ テリアルとしての可能性が示 唆された。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
絹フィブロインとハイドロキシアパタイトの 複合化によるバイオマテリアルの開発
近年高齢 化社会が進むにっれて、骨 粗鬆症患者が急増している。生命に直結しをいものの、骨欠 損による運 動機能の低下、す橡わちQuality of life(QOL)が甚大に損をわれることを意味する。こ のようを患 者に対しては、これまで金 属やセラミックス趣どの非生体吸収性インプラントを用いた
「補強・補 填」による治療が行われて きた。短中期的には良好をQOLの改善が認められるものの、
長期的には インプラントの摘出・再手 術に至る場合があった。再生医療工学による骨の再建は、再 手術の要ら をい、いわば究極の骨治療 である。
骨を再建 するためには生体吸収性と 骨伝導能をあわせ持つ足場材料が必要にをる。骨の主成分で あ り骨 伝導 能 を有するハイド ロキシアパタイト(HAp)を必 須成分として、種々の生体 吸収性高分 子が複合化 されてきた。しかし、HAp/合成高分子複合体は高強度で あるものの生体親和性に乏し く、HAp/生 体高分子はその逆の特性を 示した。以上の理由から、優 れた生体親和性と機械特性を 有 するHAp生体 吸収性高分子 複合体を開発することは極め て重要である。そこで著者 は、高い機 械強度を付 与でき、かつ生体吸収性/ 生体親和性を有する絹フィブロインに着目した。絹フィブロ イ ン と HApの 新 規 複 合 化 技 術 を 確 立 し 、 骨 再 生 材 料 の 基 盤 材 料 を 開 発 し た 。 絹フィプ ロインは繊維の状態では非 常に生体安定性が高いが、再 生絹フィブロインは生分解性 を 有す る。 し かし、再生絹フ ィプロインとHApを単純にプ レンドすることは、静電的 を相互作用 の 影響 によ り 困難である。そ こで、バイオミネラリゼー ションを用いた絹フィプロイ ンとHApの 複 合化 技術 を 検討した。高濃 度のLiBrに絹フィプロイン を溶解し、4日間純水で透析 した。得ら れた絹フア プロイン水溶液に塩化カルシウムを5wt.ワ。混合し、シャーレにキャストして室温で乾 燥させ、透 明を絹フィプロインフィルム(SFF.5)を得た。SFF15を擬似体液に浸漬するとカルシウ ムイオンが 溶出し、擬似体液中のミネ ラルバランスが変化し、バイオミネラリゼーションが誘発さ れ 、 骨 様 の 低 結 晶 性HApをSFF15の 表 面 に 析 出 さ せ る こ と が で き た (HAp‐SFめ 。 次に、GuidedBoneRegeneranon膜材料 への応用を指向し、上記で 作製した絹フィプロイン/HAp 複合シート の多層化を検討した。塩化カルシウムを加えていをい絹フィブロインフィルム(SFF)と HAp―SFFを 交 互に5層重ねて 熱圧着法によルラミネート化 し、HAp/SFFの多層構造材 料(muld‐
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信 睦
一 次
正
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方
木
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田 田
授 授
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教
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査
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査
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主
副
副
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HAp/sFF、 膜圧:290pm)を作 製した。このときの熱圧着条件は、HA・p−SFFとSFFの引き剥がし 強度に よって 決定し た。引 き剥がした接着面をエネルギー分散型電子顕微鏡によって分析した結 果 、SFFがHAp‐SFF表面 のHAp結晶 の隙間 に入り 込み、 アンカー 効果に よって 接着し ている こ とが分かった。この時、熱によって絹フィプロインの構造がロターン構造(Si瓜I型)からBシート 構造(S弧H型) に転移 したこ とで、 強度の 高い材 料が得られた。さらに、muln‐HAp/SFFは絹の みを積 層化した材料(muld―SFF、膜圧:270pm)よりも、機械強度に優れた材料特性を示し、HAp との複合化による効果が認められた。
インプラントの生体吸収性・分解性を沈vf釘.Dで理解しておくことは、沈vfvDにおける現象を理 解するために重要を知見とをる。そこで、プロテアーゼによる酵素分解性を検討した。その結果、
multi―HAツSFFはmIlln‐SFFよりも 生分解 速度が 遅かった。これはHApの層がプロテアーゼの浸 透を阻んだことで生分解速度が遅くをったと考えられた。
最後 に、機械 強度が 絹フア ブロイ ンより はるか に向上 したnmltiーHap/SFFのmvffmでの細胞 親和性 の検討 を行っ た。マ ウス骨 芽細胞MC3T3‐E1のmuld―HaツSFF上 での細 胞増殖性と骨細胞 分化マ ーカーのアルカリフオスファターゼ(ALP)活性を検討し、絹フィプロインには劣るものの SFFの約80%程度 の細胞 増殖性,ALP活性を有していることが分かり,インプラント材としての有 用性が推察された。
これを要するに、著者は、絹フィプロインとハイドロキシアパタイトの複合材料についてバイオ マテリアルとしての新知見を得たものであり,再生医療工学および高分子材料工学に対して貢献す るところ大をるものがある。よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるも のと認める。
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