博 士 ( 医 学 ) 小 谷 俊 雄
学 位 論 文 題 名
強皮症の問質性肺病変に関連する因子 学位論文内容の要旨
く 背 景 > 全 身 性 強 皮 症(Systemic sclerosis:SSc)は 、 微 小 血 管 傷 害 、 皮 膚 の 線 維 化 と 特 有 の 内 臓 障 害 を 特 徴 と す る 自 己 免 疫 性 の 結 合 組 織 疾 患 で あ る 。 強 皮 症 は 臨 床 的 に 多 様 な 疾 患 群 で あ り 、 内 臓 病 変 が 少 な く 皮 膚 硬 化 の み に 留 ま る 軽 症 型 か ら 広 範 囲 に 内 臓 障 害 を き た し 、QOLや 生 命 予 後 に 影 響 を 与 え る 重 症 型 ま で 多 彩 で あ る 。 そ の 中 で 、 問 費 陛 肺 病 変 (Interstitial lung disease:ILD)は 強 皮 症 患 者 の50% 以 上 に 合 併 す る 最 も 深 刻 な 合 併 症 の ー っ で あ る 。 造 血 幹 細 胞 移 植(Hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)は 皮 膚 硬 化 へ の 有 効 性 に つ い て は エ ビ デ ン ス が 確 立 さ れ つ っ あ る が 、ILDに 対 す る 有 効 性 に つ い て は ま だ 一 定 の 見 解 は な い 。 ま た 、 強 皮 症 関 連ILDの 発 症 に か か わ る 分 子 マ ー カ ー や 特 定 の 遺 伝 的 素 因 を み い だ し 、ILDの 発 症 及 び 増 悪 が 予 測 す る こ と が で き れ ぱ 、 発 症 早 期 に よ り 有 効 な 治 療 を 行 う こ と で 、 強 皮 症 関 連 問 質 性 肺 病 変 の 予 後 を 改 善 し 得 る と 期 待 さ れ る 。 し か し 、SSc−ILDに 特 異 的 な 遺 伝 的 背 景 や 関 連 因 子 を 検 討 し た 報 告 は ま だ 少 な い 。
【 研 究1】
く 目 的 > 皮 膚 硬 化 に 有 効 と さ れ るHSCTの SSc―ILDに お け る 有 効 性 を 検 討 す る 。 く 方 法 > 北 海 道 大 学 病 院 へ 通 院 し 、 高 分 解 能CT scan (highーresolution CT scan: HRCT) でILDの 有 無 ・ 画 像 パ タ ー ン を2点 以 上 評 価 し 得 たSSc患 者77例 を 対 象 と し た 。 罹 病 期 間 3年 以 内 か つ2年 間 以 上 の 観 察 が 可 能 で あ っ た40例 を 解 析 対 象 と し 、HSCTを 施 行 し た 群 (HSCT群 )10例 、 既 存 の 免 疫 抑 制 剤 な ど の 従 来 治 療 の み を 施 行 し た 群 ( 従 来 治 療 群 )30例 に 分 類 し た 。HRCT所 見 は 、 ス リ ガ ラ ス 状 陰 影(isolated groundーglass opacities:GGO), 肺 線 維 症(pulmonary fibrosis:PF)、 蜂 巣 肺(honeycombs:HCs)、 結 節 影(Nodule)に 分 類 し 、 べ ー ス ラ イ ン に お い てGGO、PF、HCsい ず れ か を 有 す る も の をILD群 、 い ず れ も 認 め な ぃ も の を 非ILD群 と し た 。 画 像 所 見 の 定 量 化 に はHRCT scoreを 用 い 、ILDの 分 布 、GGO の 有 無 に よ っ て 点 数 化 し 各 々 を 合 算 し た 。 得 ら れ た ス コ ア は 、 ◎ べ ー ス ラ イ ン と2年 後 、
◎ ベ ー ス ラ イ ン と 観 察 終 了 時 の2項 目 に お い てHRCT scoreの 差 (4HRCT score)を 算 出 し 、 従 来 治 療 群 とHSCT群 で 各 々 比 較 し た 。 ま た 、 呼 吸 機 能 検 査(%VC,%DLco). 血 清KL―6値 の べ ー ス ラ イ ン か ら の 変 化 率 、 臓 器 合 併 症 出 現 の 有 無 、 悪 性 腫 瘍 出 現 の 有 無 に っ い て も 後 ろ 向 き に 検 討 し た 。
く 結 果 > べ ー ス ラ イ ン の 患 者 背 景 は 、HSCT群 【 平 均 年 齢39.3歳 (14.2) 、 罹 病 期 間21.O ケ 月 (2―36)、観 察 期 間69ケ 月(36−111) 、ILD群 (Nニ6) 、 非ILD群 ( 阯4) 】 、 従 来治 療 群 【 平 均 年 齢48.8(12.0) 歳 、 罹 病 期 間13.0ケ 月 (2−36)、 観 察 期 間61ケ 月(24―120)、ILD群
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(Nニ21) 、 非ILD群 (Nニ9) 】 で あ り 、 性 別 、 年 齢 、罹 病 期 間 、 観 察期 間 、 喫 煙 歴の 有 無 、 強 皮 症 の 表 現 型(Diffuseも し く はLimited cutaneous type)、ILDの 合 併 率 、 自 己 抗 体 の 陽 性 率 に つ い て 、 両 群 問 に 差 は な か っ た 。 血 清KL―6、 呼 吸 機 能 、HRCT所 見 、HRCT scoreに お い て も 、 両 群 問 に 差 は な か っ た 。 観 察 開 始 前 後 に お い て 、HSCT群 は 従 来 治 療 群 と 比 較 し 、2 年 後 、 観 察 終 了 時 両 方 でAHRCT scoreを 有 意 に 改 善 し た 。HSCT群 で は 移 植 関 連 死 (transplant related mortality: TRM)や 強 皮 症 の 進 行 に よ る 死 亡 例 は な く 、 従 来 治 療 群 で 悪 性 腫 瘍 も し く は 肺 病 変 の 悪 化 に よ り3例 が 死 亡 し た 。
く 結 論 > 造 血 幹 細 胞 移 植 は 、 強 皮 症 患 者 の 問 質 性 肺 病 変 に お け る 画 像 所 見 を 改 善 し 、 発 症 早 期 の 強 皮 症 関 連 問 質 性 肺 病 変 に 対 し 造 血 幹 細 胞 移 植(HSCT)は 有 用 で あ る と 考 え ら れ た 。
【 研 究2】
く 目 的 > 強 皮 症(SSc)患 者 の 問 質 性 肺 病 変(ILD)発 症 に 関 連 す る 因 子 を 解 明 す る 。 く 方 法 >SSc患 者 の 末 梢 血 単 核 球 由 来 のRNAを 用 い て 、2セ ッ ト のDNAマ イ ク ロ ア レ イ か ら 候 補 遺 伝 子 を 抽 出 し た 。 次 に 北 海 道 大 学 病 院 へ 通 院 す るSSc患 者43例 、 他 の 自 己 免 疫 疾 患 患 者42例 、 健 常 人10例 を 対 象 に 、ILD合 併SScに お い て2セ ッ 卜 と も に 共 通 し て 高 発 現 し て い た 遺 伝 子 で あ るHLA―DRB5、 及 ぴ 強 皮 症 や 問 費 陸 肺 炎 に お い て 報 告 例 の な いERAP2に 関 し て 、 末 梢 血 単 核 細 胞(peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)に お け る 遺 伝 子 の 個 々 の 発 現 量 を 、 リ ア ル タ イ ムPCR法 を 用 い て 検 討 し た 。 最 後 にSSc患 者70例 、 健 常 人 147例 を 対 象 に 、 個 々 の 遺 伝 子 発 現 量 が 亢 進 し て い たHLA−DRB5に 関 し て 、Polymerase Chain ReactionーSequence Specific Primer (PCR―SSP)法 を 用 い て ゲ ノ タ イ プ を 決 定 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 、 東 京 女 子 医 科 大 学 病 院 に 通 院 す るSSc患 者79例 、 健 常 人83例 を 対 象 と し た2nd コ ホ ー 卜 に お い て 、 同 様 の 方 法 で ゲ ノ タ イ プ を 確 認 し た 。
く 結 果 >DNAマ イ ク ロ ア レ イ に お い て 、 計18個 の 遺 伝 子 が 抽 出 さ れ た が 、2セ ッ ト 共 通 し て 高 発 現 し て い た 遺 伝 子 はHLA−DRB5の み で あ っ た 。 リ ア ル タ イ ムPCR法 の 結 果 、HLA− DRB5はSScのILD群 に お い て 、 非ILD群 と 比 較 し 統 計 学 的 有 意 に 遺 伝 子 発 現 量 が 亢 進 し て い た (p 0. 007)。 他 の 自 己 免 疫 疾 患 で は 、 両 群 問 に 統 計 学 的 有 意 差 は な か っ た 。19個 の HLA−DRB5ア リ ル を タ イ ピ ン グ し た と こ ろ 、HLAーDRB5の 発 現 と 関 連 す るHLA―DRB5*01:05ア リ ル の 頻 度 はSScのILD群 で 健 常 人 よ り 有 意 に 高 か っ た(OR:8. 07,95% C.1.3.06―21. 28)。 2ndコ ホ ー ト に お い て も 、 同 ア リ ル 頻 度 はSScのILD群 に お い て 健 常 人 よ り 有 意 に 高 く (OR:17. 39,95% C.1. 2.06−146. 94)、 こ の 多 型 がILD発 症 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ た 。 く 結 論 > HLA―DRB5*01: 05ア リ ル は 、 強 皮 症 関 連 問 質 性 肺 病 変 の 発 症 に 強 く 関 連 す る 独 立 し た り ス ク 因 子 で あ る 。
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学位論文審査の要旨 主査 副査
副査 副査
教授 清 教授 西 教授 清 教授 有
水 宏 村 正 治 野研一郎 川 二 郎
学 位 論 文 題 名
強皮症の問質性肺病変に関連する因子
全 身 性 強 皮 症(Systemic sclerosis: SSc)は 、 微 小 血 管 傷 害 、 皮 膚 の 線 維 化 と 特 有 の 内 臓 障 害 を 特 徴 と す る 自 己 免 疫 性 の 結 合 組 織疾 患 で あ る 。そ の 中 で 、 問 質性 肺 病 変(Interstitial lung disease: ILD)は 強 皮 症 患 者 の50% 以 上 に 合 併 す る 最 も 深 刻 な 合 併 症 の ー っ で あ る 。 造 血 幹 細 胞 移 植(Hematopoietic stem cell transplantation: HSCT)は 皮 膚 硬 化へ の 有 効 性 につ い て は エ ビ デ ン ス が 確 立 さ れ つ っ あ る が 、ILDに 対 す る 有 効 性 に つ い て は ま だ 一 定 の 見 解 は な い 。 ま た 、SSc‑ILDの 発 症 に 関 与 す る り ス ク 因 子 に つ い て も い ま だ 解 明 さ れ て い な ぃ 。 研 究1に お い て 、HSCTのSSc‑ILDに お け る 有 効 性 を 検 討 し た 。 対 象 は 高 分 解 能CT scan (high‑resolution CT scan: HRCT)でILDの 有 無 ・ 画 像 パ タ ー ン を2点 以 上 評 価 し 得 たSSc 患 者77例 で 、 罹 病 期 間3年 以 内 か つ2年 間 以 上 の 観 察 が 可 能 で あ っ た40例 を 抽 出 し 、HSCT を 施 行 し た 群(HSCT群 )10例 、 既 存 の 免 疫 抑 制 剤 な ど の 従 来 治 療 の み を 施 行 し た 群 ( 従 来 治 療 群 )30例 に 分 類 し た 。 画 像 所 見 の 定 量 化 は 、 過 去 の 報 告 に 従 いHRCT scoreを 用 い 、HRCT scoreの 差 (AHRCT score)に て 従 来 治 療 群 とHSCT群 を 各 々 比 較 し た 。 呼 吸 機 能 検 査
( %VC. %DLco)・ 血 清KL‑6値 の べ ー ス ラ イ ン か ら の 変 化 率 、 臓 器 合 併 症 出 現 の 有 無 、 悪 性 腫 瘍 出 現 の 有 無 に つ い て も 検 討 し た 。
HSCT群 は 従 来 治 療 群 と 比 較 し 、 治 療 開 始 前 後 でAHRCT scoreを 有 意 に 改 善 し た 。HSCT 群 で は 移 植 関 連 死 や 原 病 の 進 行 に よ る 死 亡 例 は な く 、 従 来 治 療 群 で 悪 性 腫 瘍 も し く は 肺 病 変 の 悪 化 に よ り3例 が 死 亡 し た 。 こ の 結 果 か らHSCTは 、SSc‑ILDに お け る 画 像 所 見 を 改 善 し 、HSCTは 有 用 な 治 療 法 の ー っ と 考 え ら れ た 。
研 究2で は 、SSc‑ILDの 発 症 に 関 連 す る り ス ク 因 子 を 解 明 す る こ と を 目 的 と し 、 末 梢 血 単 核 球(peripheral blood mononuclear cells: PBMCs)に お け る 遺 伝子 発 現 の 網 羅的 解 析 及 びHLA ゲ ノ タ イ ピ ン グ を 行 っ た 。SSc患 者 のPBMCs由 来 のRNAを 用 い て 、2セ ッ ト のDNAマ イ ク ロ ア レ イ か ら 候 補 遺 伝 子 を 抽 出 し た 。 次 にSSc患 者43例 、 他 の 自 己 免 疫 疾 患 患 者42例 、
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健 常 人10例 を 対 象 に 、SSc‑ILD群 に お い て2セ ッ ト と も に 共 通 し て 高 発 現 し て い た 遺 伝 子 で あ るHLA‑DRB5に 関 し て 、PBMCsに お け る 遺 伝 子 の 個 々 の 発 現 量 を 、 リ ア ル タ イ ムPCR 法 を 用 い て 検 討 し た 。 最 後 にSSc患 者70例 、 健 常 人147例 を 対 象 に 、 個 々 の 遺 伝 子 発 現 量 が亢進していたHLA‑DR8.ラに関して、PolymeraseChainReaction‐SequenceSpecifi・cPrimer法 を 用 い て ゲ ノ タ イ プ を 決 定 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 、SSc患 者79例 、 健 常 人83例 を 対 象 と した2ndコホートにお いて、同様の方法でゲノタ イプを確認した。
DNAマ イ ク ロ ア レ イ に お い て 、 計18個 の 遺 伝 子 が 抽 出 さ れ た が 、2セ ッ ト 共 通 し て 高 発 現 し て い た 遺 伝 子 は 肌 イ ―D刪 び の み で あ っ た 。 リ ア ル タ イ ムPCR法 の 結 果 、 鬥L4−D魁び はSSc‐ILD群 に お い て 、 非lLD群 と 比 較 し 統 計 学 的 有 意 に 遺 伝 子 発 現 量 が 亢進 し てい た。
口以 −硼B5ゲノ タイ ピン グ の結 果、HM―DRロ5*0´ご舛アリルの頻 度はSSc―ILD群で健常人よ り 有 意 に 高 い こ と が2っ の コ ホ ー ト に お い て 確 認 さ れ 、 同 ア リ ル がILD発 症 に 関 与 し て い ると考えられた。
学 位 審 査 会 に 際 し 、 副 査 の 清 野 研 一 郎 教 授 か ら 、 自 己 免 疫 疾 患 に お け るHSCTの 位 置 づ け ・ 治 療 成 績 に 関 す る 質 問 が な さ れ た 。 副 査 の 有 川 二 郎 教 授 か ら は 、 他 疾 患 に お け る H以 −D船5の 関 連 や 、 モ デ ル動 物に おけ る検 討 につ いて 質問 がな さ れた 。副 査の 西 村正 治教 授 か ら は 、 画 像 所 見 の 改 善 と 肺 拡 散 能 の 変 化 率 の 結 果 に 解 離 が 出 た 理 由 に つ い て 、 ま た DRB5゛甜 ; 彷がILDの発 症に 関与 する 理 由に っき 質問 が なさ れた 。主 査の清水宏教授からは、
HSCTが 強 皮 症 に 対 し て 有 効 で あ る 理 由 、HSCTの ソ ー ス と し て 自 家 移 植 を 選 択 し た 理 由 に つ い て 質 問 が な さ れ た 。 こ れ ら に 対 し て 申 請 者 は 、実 験成 績と 過 去の 文献 を引 用 し、 丁寧 かつ適切に回答した 。
こ の 論 文 は 、 強 皮 症 関 連 問 質 性 肺 病 変 に 対 す る 有効 な治 療法 に 加え 、問 質性 肺 病変 にお け る り ス ク 因 子 の ー っ を 解 明 し た も の と し て 高 く 評価 され 、今 後 更な る解 析に よ り強 皮症 関 連 問 質 性 肺 病 変 の 治 療 成 績 の 向 上 に 寄 与 さ れ る も の と し て 期 待 さ れ る 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学院 課程 にお け る研 鑽や 取得 単 位な ども 併 せ 、 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。
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