博士(獣医学) ゴウタムシュリーハリ
学 位 論 文 題 名
Studies on the mechanism of Ca2
十
signaling in rat and pig olfactory receptor neurons:
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( ラ ッ ト お よ び ブ 夕 嗅 神 経 細 胞 の カ ル シ ウ ム シ グ ナ ル伝 達 機 構 に 関 す る 研 究: 刺 激 強 度 依 存 症 の 反 応 と
T型 カ ル シ ウ ム チ ャ ネ ルの 関与 )
学位論文内容の要旨
1
)嗅 神経 細胞
(ORNs)の 線毛 /嗅 小胞に 存在 する
G夕 ンパ ク質 共役型受容体が
におい物質と反応すると、cAMP 依存性に細胞内カルシウムイオン濃度が一過性
に上昇する。第1 章では、刺激の強さに依存する一過性カルシウム反応の特性
について、カルシウム指示薬のFluo −4 を負荷した単離ORNs を用いて共焦点顕
微螢光画像解析法で検討した。比較的小さなカルシウム反応は、嗅小胞に限局
して起こるのに対して、大きなカルシウム反応は細胞体にまで伝播した。また、
嗅小胞に限局していた反応は、におい物質への暴露時間を延長すると細胞体に
伝播するようになった。さらに、におい物質の濃度に依存して、低濃度では嗅
小胞に限局していたカルシウム反応が、高濃度になるにっれて細胞体にまで伝
播するようになった。f orskolin/IBMX 刺激の場合でも同様の現象が認められた。
MDL12330A
でアデニレートサイクラーゼを部分的に抑制すると、細胞体まで伝播
が認められた反応が嗅小胞に限局する反応に変化した。Ni fedipine でL 型カル
シウムチャネルを抑制すると、細胞体でのカルシウム反応の振幅は減少したが、
嗅小胞での反応は影響されなかった。以上から、嗅小胞に限局したカルシウム
反応は弱い刺激の場合に認められ、それは
ORNsの反応を全体として抑制するか、
あるいは微弱な興奮生反応として自発性ノイズを覆い隠すことに役立っている
カゝもしれなしゝ (Gautam et al. ,Neurosci. Res. ,2006 ,55: 410 ー420) 。
2) これまで、におい物質で惹起される嗅小胞から細胞体へのカルシウム反応の
伝播は、L 型カルシウムチャネルによって媒介されていると考えられてきた。
第
2章では、共焦点顕微螢光画像解析法と免疫染色法によって、L 型に加えて
T型のカルシウムチャネルの存在を同定し、カルシウム反応の伝播への関与を
明 らかにした。T 型カルシウムチャネルの特異的抑制物質であるmibef radil
(10―15 ロM )とNi2+ (100 ルM 冫は、におい物質あるいはforskolin/IBMX による
細 胞体および樹状突起におけるカルシウム反応を強く抑制あるいは消失させ
た 。これに対して、嗅小胞におけるカルシウム反応の抑制の程度は、前者の
― 56―
40
―50% であった。30 mMK 十による反応はmibef radil によって部分的に抑制され
たが、この抑制の程度には嗅小胞と細胞体とで差が認められなかった。また、
K
十濃度をわずか
2.5 mM上昇させただけでもカルシウム反応が惹起された。この
反応はmibefradil あるいはNi2+ で完全に抑制された。細胞外Na+ をNMDG で置換
してもカルシウム反応は影響を受けなかった。免疫染色により、T 型チャネル
のサプユニットであるCa ヤ3.1 、CaV3.2 およびCa ワ3 .3 の存在が細胞体、樹状突起
そして嗅小胞で確認された。以上の知見から、ORNs のT 型カルシウムチャネル
は、カルシウム反応の伝播のみならず電気生理学的反応を修飾し、におい物質
に対する感受性を上昇させている可能性が浮かび上がった(Gautam et al. ,
Neuroscience,2007 ,144 :702 ―713) 。
3
)第
3章 では 、T 型 カル シウ ムチャネルの関与についてブタの新鮮分離
ORNsで
検 討 し た 。mibefradil (10 ル め あ る い は
Ni2+ (100ル め の 存 在 下 で は 、
forskolin/IBMXによる細胞体でのカルシウム反応は、比較的強い刺激の場合に
は強く◇60 %)抑制され、中等度の刺激の場合には完全に消失した。これに対
して、嗅小胞での反応はいずれの刺激強度においても部分的に(く60%) 抑制さ
れただけであった。30 mMK 十による反応もまた細胞体、嗅小胞いずれにおいても
部分的に(〜60 %)抑制されただけであった。また、ラットORNs で認められた
のと同様、2.5 mM の細胞外K 十濃度上昇によってカルシウム反応が認められ、こ
れはmibef radil あるいはNi2+ で完全に抑制されたが、TTX あるいはNMDG による
Na+の置換では影響を受けなかった。これらのことは、ブタのORNs にT 型カルシ
ウムチャネルが存在することを示唆し、におい刺激に続くカルシウム反応の嗅
小胞から細胞体への伝播に関与していることを推測させる(Gautam et al. ,
Neurosci. Res.,2007 ,57 :129 ―139) 。
以上を総合して、においの受容と認識機構について以下の結論を得た。(1 ) 各々のORNs は様々な強度(濃度)のにおい物質に対して異なった反応性を示し、
におい物質の認識にっながる情報の符号化は、高次中枢より前のORNs レベルで 既になされている。(2 )ORNs の嗅小胞、樹状突起および細胞体すべての部位に 存在するT 型カルシウムチャネルを介して流入するカルシウムイオンが、にお い物質の情報の処理と感受性の修飾に寄与している。(3 )カルシウム反応が嗅 小胞に限局する微弱なにおい刺激の際には、カルシウム依存性K 十チャネルを活 性化して過分極反応を惹起することにより、ORNs での電気的な自発性ノイズを 抑制しているかもしれない。これらの特性は、におい物質を検出して、混在す る他のにおい物質からそのにおい物質を差別化して上位中枢で認識するという
ORNsの 基 本 的 な 能 カ の 達 成 に 深 く 関 わ っ て い る と 思 わ れ る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 葉 原 芳 昭 副 査 教 授 伊 藤 茂 男 副 査 助教 授 太田 利男 副査 助教授 岩永ひろみ
学 位 論 文 題 名
Studies on the mechanism of Ca2 十 signaling in rat and pig olfactory receptor neurons :上ffect ¢厂inte7zsity ¢厂 sti7nulation and 励ぴ〇あ¢所¢耐ザT‑type くゲ十chan Tzels
(ラットおよびブ夕嗅神経細胞のカルシウムシグナル伝達機構に 関する研究:刺激強度依存症の反応とT 型カルシウムチャネルの関与)
博士(獣 医学)学位の申請者、シュリー・ハリ.ゴウタム氏の博士論文は3章から構成され ている。
第1章は、刺激の強さと細胞内カルシウム反応の特性について単離嗅神経細胞を用いて共焦点蛍 光顕微画像解析法で検討したものである。比較的弱いカルシウム反応は、嗅小胞に限局して起こるの に対して、大きなカルシウム反応は細胞体にまで伝播した。また、喚小胞に限局していた反応は、に おい物質への暴鱈時闇が延長されると、細胞体にまで伝播する反応に変化した。さらに、低濃度のに おい物質刺激では嗅小胞に限局していたカルシウム反応が、高濃度になるにっれて細胞体にまで伝播 するという濃度依存性の変化を認めた。forskolin/IBMX刺激でも同様の現象が認められた。アデニ レートサイクラーゼ活性を部分的に抑制すると、細胞体にまで伝播していた反応が、嗅小胞に限局す る反応に変化した。L型カルシウムチャネルを抑制すると、細胞体でのカルシウム反応の大きさは減 少したが、嗅小胞での反応は影響されなかった。以上のことから、におい刺激が弱い場合には、カル シウム反応は嗅小胞に限局し、嗅神経細胞の情報伝達は抑制されているか、あるいはごく弱い興奮性 反応を示すと考えられる。これによって、自発性ノイズが覆い隠され、におい物質に対する感受性と 識別能が増大しているのではなぃか、という新しい仮説を提唱した。
第2章 は、共焦点蛍光頭徽画像解析法と免疫組織化学法によって、L型に加えてT型のカルシ ウムチャネルの存在をラットで明らかにし、カルシウム反応の伝播への関与を検討したものであ る。T型カルシウムチャネルの特異的抑制によって、におい物質あるいはforskolin/IBMXによる 細胞体およぴ樹状突起におけるカルシウム反応が強く抑制された。これに対して、嗅小胞におけ るカルシウム反応の抑制は、前者の40−50%であった。30 rnMFによる反応は、T型カルシウムチ ヤネル抑制薬によって部分的に抑制されたが、この抑制は嗅小胞と細胞体とで差がなかった。一
一 58―
方、7.5 mMK十に 対す る 反応 は、T型 カル シウ ムチ ャ ネル 抑制 薬で 完全 に 抑制 され た。 免疫 組織化 学により、T型チャネルの サプタイプであるCa、311、Ca,3.2およぴCa,3.3の サブユニットの存在 が 、 細 胞 体 、 樹 状 突起 そし て 嗅小 胞で 確認 され た 。以 上の 知見 から 、 嗅神 経細 胞に 存 在す るT型 カル シウ ムチ ャ ネル は、 カル シウ ム 反応 の伝 播の み なら ず、 電気 生理 学 的反 応を 修飾 する と考え た。
第3章 は、T型 カル シウ ムチ ャネ ル の関 与に っい て 、ブ タの 嘆神 経細 胞 で検 討し たも ので ある。
T型カ ル シウ ムチ ャネ ル 抑制 薬は 、forskolin/IBMXに よる 細胞 体 でのカルシウム反応にたい して、
比較的強い刺激の場合に は部分的に抑制し、中等度の刺激の場合には完全に抑制した。これに対して、
嗅小 胞で の反 応 は、 いず れの 刺激 強 度に おいても部分的に抑制 されただけであった。30 mMFに対す る反応も細胞体、嗅小胞 いずれにおいても部分的に抑 制されただけであった。ま た、ラット嗅神経細 胞同 様、7.5 mMむに 対し てカ ルシ ウ ム反 応が 認め ら れ、 これ 熾T型カルシウムチャネル抑制 薬で完 全に 抑制 され た 。これらのことから 、プタの嗅神経細胞にもT型 カルシウムチャネルが存在す ること が示 唆さ れ、 に おい 刺激 によ るカ ル シウ ム反応の嗅小胞から細 胞体への伝播に関与している と考え た。
以上の知見を総合して 、ゴウタム氏は、においの受 容と認識機構にっいて以下の結論を得た。(1) 各々の嗅神経細胞は、様 貴な強度(濃度)のにおい物 質に対して異たった反応性 を示し、におい物質 の認識にっながる情報の符号化は、高次中枢よりも前の、嗅神経細胞レベルで既に詮されてV、る。(2) 嗅神 経細 胞の 嗅 小胞、樹状突起およ ぴ細胞体すぺての部位に存在 するT型カルシウムチャネル を介し て流 入す るカ ル シウムイオンが、に おい物質の情報の処理と感受 性の修飾に寄与している。 (3)弱 いに おい 刺激 の 場合、カルシウム反 応は嗅小胞に限局し、カルシ ウム依存性K十チャネルを活 性化し て過分極反応を惹起する ことにより、嗅神経細胞での 電気的な自発性ノイズを抑 制している可能性が 浮 か ぴ 上 が っ た 。 本 知 見 は 、 嗅 覚 の 生 理 学 領 域 に 新 し い ア イ デ ア を 提 供 す る も の で あ り 、 Neuroscience Researchに2報 、Neuroscienceに 1報 、 公 表 あ る い は 印 刷 中 で あ る 。 よ っ て 、 審 査 委 員 一 同 は 、 上 記 博 士 論 文 提 出者 シュ リ ー・ ハリ .ゴ ウタ ム 氏の 博士 論文 は、
牝 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 定 第6条 の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う博 士 論文 の審 査等 に合 格と認めた。
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