博 士 ( 薬 学 ) 家 里 篤 史
学 位 論 文 題 名
塩 化 ク ロ ム ( 皿 ) を 用 い た 環 状 化 合 物 の 新 規 合 成 法 の 開 発 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
J.館どめだ
環状化合物の構築を行うにあたりその骨格をどのようにして逆合成するか考えたとき、
様々な置換基を環に導入するためには、できる限ルシンプルな合成単位と導く必要がある。
例えば、環状化合物であるピリドンを合成するには、アルキン二分子とイソシアナー卜と いう三つの合成単位ヘ、更に三環以上の化合物の合成では、ビアリール体とアルキンやニ トリル、イソシアナー卜というニつの合成単位へと逆合成できる。本研究では、このよう な逆合成に基づぃた合成戦略により、様々な環状化合物が合成できると考え、ジルコニウ ム及びクロムを用いた方法の開発を行った。
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ピリドン骨格は、強い生理活性を示す有機天然物中にも見られ、その誘導体が示す性質 には興味が持たれる。しかしながら、種々の置換基を有するピリドン誘導体を構築する効 率的な合成法はあまり数多くは知られていない。我々の研究室ではジルコナシクロペンタ ジェンから、種々の環状化合物を合成しているが、ジルコナシクロペンタジェンにイソシ アナートを反応させてピリドンを合成することに、まだ成功していなぃ。これまではピリ ドン誘導体構築法として、ジルコナシクロベンテンとイソシアナートから生成した、ジル コナサイクルに対し、二分子目のアルキンを反応させ合成していた。そこで本研究では、
ジルコナシクロペンタジェンを経由した、アルキン二分子とイソシアナートとの【2十2十2] 環化付加反応によるピリドン合成法を検討した。
窒素雰囲気下、THF中、‑78℃で調 製したジルコノセンジブチルと二当量のアルキンを 反応させてジルコナシクロペンタジ ェンとしたのち、二当量の塩化クロム(nDとイソシア ナートを加え50℃に加熱することで、対応するピリドン誘導体が良好な収率で得られた。
二環式ジルコナサイクルを用いた場合には、単環式では単離困難であったアルキルイソ シアナートも用いることができる。この反応は、ジルコナシクロペンタジェンからクロム へのトランスメタル化反応を経て進行していると推測される。この方法では、アルキン二 分子とイソシアナートとを環化できるので、ピリドン誘導体の新たな合成法として有用で ある。
墨 : 二 ニ 呈 ど ア ツ ニ 些 缶 幺 釟 診 と 種 = 々 の ア ノ レ 牛 シ 堕 壌 縫 塑 み 声 当研究室では、アセン類の様な直鎖型縮合環合成をこれまで開発してきた。これに対し て、 芳香環 が非直鎖型に縮合した骨格を有する多環式芳香環を合成 するには、(結合で 結ばれた2つの芳香環のオルト位同士をアルキンで架橋させ、得ることができる。しかし ながら、従来のNiやPdを用いたビア リール体とアルキンを利用したフェナントレン誘導 体の合成法では、フェニル置換アセチレンを用いなければならないなど、利用できるアル キンの置換基に非常に大きな制限が あった。本研究では、塩化クロム(nDを用いたトラン スメタル化を使って、三環式化合物であるフェナントレン合成を試みた。窒素雰囲気下、
THF中、 ジブロモビフェニルから‑78℃で調製したジリチオビフェニルに塩化クロム(IID を加え、トランスメタル化を起こした。これに種々のアルキンを加え、50℃で反応させ、
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対 応 す るフ ェ ナ ン 卜レ ン 誘 導 体を 合 成 し た。 塩 化 ク ロム(iiDを用い ること で、よ り幅広 い 置換 基を用 いる事 ができ るよう になっ た。
続い て 、 こ の反 応 を 応 用し て 、 段 階的 に 環 を 増環 さ せ て 、多環 式化合 物が合 成でき なぃ か 考 え た。 まず ジブロモ ビフェ ニルに 第一の アルキ ンを反 応させ 、9.フ ェニル‑ 10‑トリメ チ ル シ リ ル フ ェ ナ ン 卜 レ ン を 合 成 す る 。 次 い で 、 得ら れ た フ ェナ ン ト レ ンのTMS基 を ヨ ウ素 化し、9 フェ ニル.10.ヨー ドフェ ナン卜 レンを 生成す る。こ れに、同 様の反応を繰り 返 し 、 第 二 の ア ル キ ン を 反 応 さ せ 、 対 応 す る ベ ン ゾ ク リ セ ン 誘 導 体 が 得 ら れ た 。 ま た 、 こ の 方 法 を 用 い 、 よ り 簡 潔 な 縮 合 環 も 合 成 で き な い か 考 え た 。 その 結 果 、 こ の 反 応 は、 ジ フ ェ ニル ア セ チ レン か ら の ナフ タ レ ン 誘導 体 合成 にも応 用できた 。窒素 雰囲 気 下 、Hexane中 、 ジ フ ェ ニ ル ア セ チ レ ン とn‑BuLiか ら 調 製 で き る ジ リ チ オ 体 に 、 塩化 ク ロ ム(iiDを反 応 さ せ 、ク ロ マ サ イク ル を 生 成す る 。 こ れに 、新た なるジ フェニ ルアセ チ レ ン を 加 え 、1. ブ チ ル .2,3,4. ト リ フ ェ ニ ル ナ フ タ レ ン を 収 率87% で 得 た 。 更に 、 複 素 環を 含 む ビ アリ ー ル 化 合物 を 用 い ると 、 対 応 する多 環式複 素環化 合物が 生成 する ことを 見出し た。1・ フェニ ルピロ ールとn‑BuLiから調 製でき る2.2 ージリチオフェニ ル ピ ロ ール に 、 塩 化ク ロ ム(iiDを 反応 さ せ 、 クロ マ サ イ クル を生成 する。 これに 、アル キ ンを 加えて 、対応 するピ ロロキ ノリン 誘導体 を高収率 で得た 。
この 得 ら れ たピ ロ ロ キ ノリ ン 誘 導 体に 、 同 様 の反 応 を 行 った。 先の反 応の反 対側を ジリ チ オ 化 させ 、 塩 化 クロ ムaiD、 アル キ ン を 順次 反 応 さ せて 、 環 化 付加 反 応 を 行い 、 四 環式 の ア ザ シク ロ ペ ン タフ ェ ナ レ ン誘 導 体 を 合成 し た 。 アル キ ンの 置換基 として、 エチル 、フ ェ ニ ル 、ト リ ル 、2‐ チエ ニ ル を 有す るアル キンを 用いて も、そ れぞれ 中程度の 収率で 目的 物が 得られ た。
得ら れ た 四 環式 の ア ザ シク ロ ペ ン タフ ェ ナ レ ン誘 導 体 は 、X線 構造 解 析 に より そ の 構造 を 決 定 し、 窒 素 原 子を 含 む 四 つの 縮 合 環 を構 成 す る 炭素 原 子と 窒素原 子は、ほ ば同一 平面 上に 存在す ること がわか った。
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ビア リ ー ル 化合 物 に ニ トリ ル を 反 応さ せ る と 、フ ェ ナ ン トリジ ンの生 成が予 想され た。
し か し な が ら 、 窒 素 雰囲 気 下 、THF中 、 ジ ブ ロモ ビ フ ェ ニル か ら‑78℃ で調 製 し た ジリ チ オ ビ フ ェニ ル に 塩 化ク ロ ム(nDを用 い 、 こ れに 種 々 の ニト リ ル を 加え 、50℃で 反 応 させ る と 、 フ ェナ ン ト リ ジン 誘 導 体 は全 く 得られ ず、対 応する9‐アミ ノフル オレン誘 導体が 高選 択的 に生成 した。
ま た 、 塩 化 ク ロ ム(nDの 代 わ り にHMPA存 在 下 で ニ ト リル を 直 接 反応 さ せ る と、 対 応 す るフ ェナン トリジ ン誘導 体を高 選択的 に合成 した。
さら に 、 窒 素雰 囲 気 下 、THF中 、 ジ ブ ロモ ビ フ ェ ニル か ら 調 製し た 、 ク ロマ サ イ クル に 対 し 、 イソ シ ア ナ ート を50℃ で 反 応 させ た と こ ろ、SH‑フ ェナ ントリ ジン‑6‑オン誘導 体は 全 く 得 ら れ ず 、 対 応 す る フ ル オ レ ン‑9‑イ リ デ ン ア ミン 誘 導 体 が高 選 択 的 に生 成 し た 。 この よ う に 、そ れ ぞ れ 単一 の 化 合物 として 、9|ア ミノフ ルオレ ン、フ ェナン トリジ ン、
フ ル オ レ ン ‑9‑イ リ デ ン ア ミ ン 誘 導 体 を 合 成 し 分 け る こ と を 見 出 し た 。 5.妄 と め
従 来 出来 な か っ たジ ル コ ナ シク ロ ペ ン タジ ェ ン と イソシ アナー トとの 反応を 塩化ク ロム (iiDへ の 卜 ラ ンス メ タ ル 化を 利 用 し て行 う こ と に成 功 し た 。
ビ ア リー ル 体 を 用い て ク ロ マサ イ ク ル を経 由 し 、 様々な 置換基 を有す るアル キン、 ニト リ ル 、 イ ソシ ア ナ ー トと 反 応 し 、フ ェ ナ ン トレ ン 、 種々 のフル オレン 誘導体 が得られ た。
ま た 、 ジ リチ オ ビ フ ェニ ル に ニ トリ ル を 反 応さ せ る こと によっ て、フ ェナン トリジン を合 成 す る こ とが 出 来 た 。
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学位論文 審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
高橋 松田 小笠原 周東
学 位 論 文 題 名
保 彰 正道 智
塩化クロム(ni )を用いた環状化合物の新規合成法の開発
家 里篤史君 の、「塩 化クロ ム(nDを 用いた 環状化合物の新規合成法の開発」と題され た博 士論文 はく全四 章からなる。大きく分け、二種類の反応を議論している。一っは、
ジル コニウ ムからt、ク ロムへの トランス メタル 化を用いたピリドン誘導体の新規合成 法、 もう一 方は、ク ロムを 用いた、 ビアリ ール体と アルキン 、ニト リル、イソチオシ ア ナ ート と の 反 応に よ る 、様 々 な 環状 化 合 物の合 成開発 について 述べら れている 。 第 一章では 、本論文 の研究 における 鍵とな るクロム 錯体の 反応例に ついて述べられ てい る。遷 移金属錯 体を用 いた反応 が有機 合成の分 野で重要 な役割 を演じるようにな った 近年、 クロム錯 体もま た、その 特有な 反応性が 注目を集 めてい る。クロムは二価 の塩 が一電 子還元剤 として 、また六 価の塩 は酸化剤 として古 くから 有機合成に利用さ れて きてい る。しか し、今 まで、塩 化クロ ム(nDを 用いた反応は、極めて少ない。家里 君は、クロムの特有な反応性に着目し、塩化クロム(uI)を用いた、挿入反応による化合 物の新規合成法の開発に着手した。
第 二章では 、ジルコ ナシク ロペンタ ジェン を経由す るピリ ドン誘導 体の合成につい て述 べられ ている。 本研究 では、調 製した ジルコノ センジブ チルと アルキンを反応さ せて ジルコ ナシクロ ペンタ ジェンと した後 、塩化クロム(nDとイソシアナートを加え、
加熱 するこ とで、対 応する ピリドン 誘導体 が良好な 収率で得 られる ことを見出した。
二環 式ジル コナサイ クルを 用いた場 合には 、単環式 では単離 困難で あったアルキルイ ソシ アナー トも用い ること ができた 。この 反応の興 味深い点 は、今 まで合成すること ので きなか ったジル コナシ クロペン タジェ ンからの ピリドン 誘導体 の合成を、塩化ク ロム(iiDを用いることで可能にした点である。
第 三章では 、塩化ク ロム(nDを用い た、ビ アリール体とアルキンのH十2]環化付加反 応に ついて 述べられ ている 。ジブロ モビフ ェニルか ら調製し たジリ チオビフェニルに 塩化 クロム くiiD、 種々の アルキン を順次 加えて反 応させ、対応するフェナントレン誘 導体 を合成 した。従 来のフ ェナント レン誘 導体の合 成法では 、利用 できるアルキンの 置 換 基に 非 常 に 大き な制限が あった が、塩化 クロム(nDを用 いること で、よ り幅広い ―914―
置換 基を用 いる事が できる ようにな った。ま た、こ の反応を 応用して、段階的に環を 増 環 させ る こ とで 、 対 応 する 五 環 式化合 物.ベン ゾクリ セン誘導 体が合 成できた 。 更に 、複素 環を含む ビアリ ール化合 物を用 いると、 対応する 多環式複素環化合物が 生成することを見出した。1‐フェニルピロールから調製できる2,2 ‐ジリチオフェニル ピロ ールに 、塩化ク ロム(iiD、 アルキン を加え て、対応 するピ ロロキノリン誘導体を 高収 率で得 た。この 得られ たピロロ キノリン 誘導体 に、同様 の反応を行った。先の反 応の 反対側 に、環化 反応が 進行し、 四環式の アザシ クロペン タフェナレン誘導体を中 程 度 の収 率で 合成し た。得ら れたア ザシクロ ペンタ フェナレ ン誘導体 は、X線構造 解 析に より構 造を決定 し、窒 素原子を 含む四っ の縮合 環を構成 する炭素原子と窒素原子 は、ほば同一平面上に存在することを見出している。
第四 章では 、ビアリ ール体 とニトリ ル、イ ソチオシ アナート との環化付加反応につ い て 述べ ら れ てい る 。 ジ リチ オ ビ フェニ ルにHMPAを 加え、こ れに種 々のニト リルを 直接 反応さ せると、 対応す るフェナ ントリジ ン誘導 体が高選 択的に生成した。これに 対 し 、こ の 反 応に お い て 、HMPAを 用 いずに、 塩化ク ロム(iiD存在 下でニ トリルを 反 応さ せると 、対応す る9. アミノ フルオレ ン誘導体が高選択的に合成できた。このよう に、 反応条 件の違い によっ て、フェ ナントリ ジンと アミノフ ルオレンとを作り分ける こと に成功 した。ま た、塩 化クロム くiiDを用いた反応で、ニトリルの代わりにイソチ オ シ ア ナ ー ト を 用 い る と 、 対 応 す る フ ル オ レ ン ー イ ミ ン 誘 導 体 が 生 成 し た 。 以上 のよう に、家里 君の研 究は、塩 化クロ ムくnDを用 いるこ とにより、ジルコナシ クロ ベンタ ジエンの 反応に おける新 規ピリド ン合成 を見出し ており、また、ビアリー ル体 からの 様々な環 状化合 物が合成 方法を開 発して いること などから、博士の学位に 十分値するものと判断した。
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