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別添3 

                       

総括研究報告書

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厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 

平成 28 年度 総括研究報告書 

 

在宅医療患者等における多剤耐性菌の分離率及び分子疫学解析 

 

研究代表者  荒川宜親(名古屋大学大学院医学系研究科  分子病原細菌学/耐性菌制御学分野) 

       

研究要旨  本調査研究を開始するにあたり、初年度の平成27年度に、研究計画書等の倫理 審査書類を作成し、名古屋大学大学院医学系研究科の「疫学研究専門調査委員会」および 金沢医科大学、群馬大学、岐阜大学の研究倫理審査の委員会の承認を得て研究を開始した。

平成27年度末より平成28年度にかけて愛知県、岐阜県、群馬県、石川県および富山県の 高齢者施設(介護施設、療養施設)の入所者や在宅患者または代諾者の同意を得て、咽頭 スワブ、便、尿などの提供を受け、それらの検体よりVRE、MRSA、CRE、ESBL産生菌、

MDRA、MDRP、PR(I)SPの7種類の薬剤耐性菌について、統一あるいは同等の感度等のス クリーニング法を用いて分離と同定を試み、得られた菌株について詳しい遺伝子解析を開 始した。その結果、調査研究への協力が得られた施設入所者や在宅医療患者の総数は目標 の200名を超えるとともに、各被験者の検体からは、MRSAやESBL産生株が一定の頻度 で分離された。MRSAの分離頻度は、施設間にかなりのばらつきが見られ、分離された施 設では2.9%-9.5%であり、ESBL産生株のそれは、分離された施設では11.8%-57.1%とばら つきが見られた。一部の施設でのMRSAとESBL産生菌の分離頻度は、急性期医療機関の 入院患者におけるそれらの分離率や市中の健常者における保菌率より高い状況が確認さ れた。しかし、幸いなことに、国際的に問題となっている、CREやMDRA、MDRPやVRE は研究時点では分離されず、また、肺炎球菌についてはdisk拡散法で「耐性」と判定され る株は検出されなかった。なお、MRSAやESBL産生菌の分離頻度の高い施設では、それ らの施設内拡散が発生している可能性もあり、平成 29 年度には、分離株の型別や株相互 の関連性などについて遺伝的観点から詳しく解析する計画である。 

 

研究分担者

(敬称略、50 音順) 

金沢医科大学医学部基礎医学系生体防御学        教授 飯沼由嗣  名古屋大学大学院医学研究科 医療技術学  専攻 病態解析学講座(微生物学研究室) 

      准教授 川村久美子  東海大学医学部基礎医学系生体防御学        教授 藤本修平  岐阜大学医学部附属病院副病院長  

       生体支援センター長 教授 村上啓雄   

研究協力者

(敬称略)

 

岐阜大学医学部附属病院検査部  

          副技師長 太田浩敏  名古屋大学大学院医学系研究科   

  分子病原細菌学/耐性菌制御学分野        准教授 木村幸司        講師 和知野純一   

研究協力施設および責任者氏名

(敬称略)

 

社会福祉法人健生会 特別養護老人ホーム        花の苑 施設長   高橋 英郎  医療法人 かがやき 理事長 総合在宅        医療クリニックグループ代表 市橋 亮 

医療法人社団  高徳会  高木医院  

      院長 高木寛治  医療法人社団  光成会  鳥澤医院  

      院長   鳥澤英紀  医療法人 育寿会 理事長 兼 

    MIWA 内科胃腸科 CLINIC 院長   三輪佳行  北医療生活協同組合 生協わかばの里 

               施設長    宮本憲治  愛知県厚生農業協同組合連合会  

           安城更生病院    院長  浦田士郎  同  上  介護老人保健施設あおみ 

         施設長  木野本武久  デイサービス/ショートステイ/ 

        在宅介護支援事業所         プエトルアズール 

          理事長  梅田貴之  住宅型有料老人ホーム 

        エステートドーブィル小牧 

          理事長  梅田貴之 

 

A. 研究目的 

  国内外の医療現場では, 1980年代より、メチ シリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコ マイシン耐性腸球菌(VRE)が徐々に問題となり はじめ、2000年頃よりカルバペネムなどに耐性 を獲得した多剤耐性緑膿菌(MDRP)や多剤耐性 アシネトバクター(MDRA)、さらに2010年以降 カルバペネムを含む広範な抗菌薬に耐性を獲

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6 得した腸内細菌科の細菌(CRE)が、急性期医療 機関のみならず、市中環境などからも分離され るようになり国際的に大きな関心事となって いる。

  比較的規模の大きい急性期医療機関におけ る各種薬剤耐性菌の分離頻度などは、医療関係 者や研究者の個別的な調査研究とともに厚生 労 働 省の 院内 感染 対策サ ー ベイ ラン ス事 業 (JANIS)などにより、その実態が概ね把握されて いる。しかし、在宅医療を受けている患者や療 養型施設等の入所者における、薬剤耐性菌の保 菌実態については不明な点が多い。そこで、今 回、国内の在宅医療患者や療養施設・介護施設 等でケアを受けておられる入所者等における 多剤耐性菌の実態を明らかとすることを目的 として研究を実施した。

B. 研究方法 

  1.研究実施にあたっての準備 

  今回の研究では、在宅患者や、療養施設、介 護施設などの入所者における、MRSAや多剤耐 性緑膿菌、ESBL 産生菌、カルバペネム耐性腸 内細菌科細菌(CRE)など7種類の薬剤耐性菌の 分離状況とともに、それぞれの耐性株やそれら が保有する耐性遺伝子の遺伝型などを明らか にすることを目的としている。そのため、在宅 患者や入所者よりより、咽頭拭い液、便、尿な どの検体の提供を受ける必要があり、それを可 能とするため、平成 27 年度に名古屋大学大学 院医学系研究科の「疫学研究専門調査委員会」

に研究計画書等を提出し、審査と許可を得て研 究を開始した。

 

  2.研究対象 

調査対象者:訪問診療等により在宅医療を受け ている者および療養型施設、介護施設の入所者 で、本人または代諾者により調査への協力意思 が確認できた者

対象とする多剤耐性菌:メチシリン耐性黄色ブ ドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PR(I)SP)、多 剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバク ター(MDRA)、基質特異性拡張型 β-ラクタマー ゼ(ESBL)産生菌及びカルバペネム耐性腸内細 菌科細菌(CRE)

調査対象の検体:咽頭拭い液、糞便、尿、褥瘡 拭い液

  3.耐性菌検出方法 

  インフォームド・コンセントの手続きを経て 在宅患者や入所者より提供された検体を、直接 または数時間増菌培養した後、種々の抗菌薬を 含んだ選択培地に塗布し、一夜 37℃で培養後、

それぞれの薬剤耐性菌の候補株を分離した。薬 剤耐性菌の分離方法は、金沢医科大学等のグル ープと原則的に同等の方法を採用した。

  具体的には、咽頭拭い液については、MRSA、

MDRP、MDRA選択培地および血液寒天平板に スワブを用いて菌を接種し、一夜37℃で培養後、

コロニーの発育の有無を観察した。さらに、血 液寒天平板でα溶血を示し、コロニーの形態か ら肺炎球菌が疑われた場合には、オプトヒンテ ストを実施した。その後、肺炎球菌と確定した ものについて disk拡散法により、PR(I)SPであ るかを判定した。尿、糞便および褥創滲出液つ いては、MRSA、VRE、ESBL/KPC産生菌、MDRP、

MDRAの各選択培地に検体を接種し、一夜37℃

で培養後、コロニーの発育の有無を観察した。

なお、糞便検体については、VREとESBL/KPC 産生菌を対象とした増菌培養を行った。 

 

4.耐性菌確認方法 

  各々の選択培地で得られたコロニーについ ては、通常の細菌同定試験法に加え、質量分析 装置などを活用して菌種を同定するとともに、

PCR および PCR 産物の塩基配列のシークエン ス解析により耐性遺伝子の検出と確認を実施 した。

(倫理面への配慮) 

非侵襲的手法での検体の採取による調査研 究であるが、名古屋大学の「疫学研究専門調査 委員会」で、研究の目的、方法、および研究倫 理的な要点について説明を行い、審査を受け、

承認が得られた(承認番号 2015-0304)後、各 施設において、職員等を対象とした説明会を行 い、その後、検体の採取等を開始した。

C. 研究結果と考察 

  愛知県内の療養施設の協力により研究者分 担者である川村久美子准教授のグループでは 2017年3月末までに尿 63検体、糞便52検体、咽 頭拭い液82検体の合計197検体を入手し耐性菌 の分離と解析を実施した。

  咽頭拭い液および尿検体の培養の結果、

MRSAが11検体で陽性と判定された。また、咽 頭拭い液、便、および尿検体の培養の結果、第 3世代セファロスポリン耐性腸内細菌科細菌

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7 が25株、CREが疑われる腸内細菌科細菌株が6 株分離された。しかし、VRE、MDRP、MDRA およびCREは全ての検体で陰性であった。

  ESBL産生大腸菌の解析の結果、CTX-M group-1産生株が8株、group-9産生株が42株確認 された。ESBL産生肺炎桿菌の解析ではCTX-M group-1が3株、group-9が2株確認され、ESBL産 生Proteus属では、group-2産生株が1株確認され た。 

  ESBL産生大腸菌50株についてO血清型別や

系統発生群、multilocus sequence typing(MLST) を解析した結果、世界的流行型(international clone)であるO25-B2-ST131が31株確認され、そ れらの産生するCTX-M型の内訳は、CTX-M-3 が3株、CTX-M-15が4株、CTX-M-55が1株、

CTX-M-24が3株、CTX-M-27が20株であった。

以上の結果から、在宅患者においても、一定の 割合で世界的流行株であるCTX-M-15産生大腸 菌O25-B2-ST131が保菌されていること、またセ フタジジムにより高い耐性傾向示す進化型 ESBLであるCTX-M-15、-55、-27が多く確認さ れた。

  研究分担者の飯沼らのグループは石川県内 の介護療養型老人保健施設と特別養護老人ホ ームにおいて調査研究を行った。前者の施設で は、74名の入所者におけるMRSAとESBL産生菌 の分離率は、それぞれ、12.2%と21.6%であっ た。後者の施設では、34名の入所者における MRSAの分離率は2.9%、ESBL産生菌の分離率 は11.8%であった。しかし、両施設とも、VRE、

MDRP、MDRAは分離されなかった。分離され たESBL産生菌21株はすべて大腸菌であり、

CTX-M遺伝子別では、CTX-M-1 Group:10株、

CTX-M-2 Group:1株、CTX-M-9 Group:10株と なった。またST131であると推定された株が17 株(81%)と大多数を占めた。

  研究分担者の村上らのグループは、岐阜県内 の在宅医療患者診療を行う2施設で5月から6月 にかけてそれぞれ21名と11名の合計32名から 検体採取を行った。検出された薬剤耐性菌率は それぞれの施設においてMRSAは4.7%、9.0%、

ESBL産生菌(糞便)は、52.3%、36.3%であった。

しかし、両施設とも、PRSP、VRE、MDRP、

MDRA、CREは検出されなかった。一方、特別 養護老人ホーム1施設での検体採取は、入所者 65名から11月に検体採取を行い、詳しい菌株解 析は名古屋大学大学院医学系研究科 医療技術 学専攻 病態解析学講座(微生物学研究室)に おいて実施中である。

  研究分担者である藤本は、平成27年4月より、

従来の臨床研究指針と疫学研究指針に替わっ て「人を対象とする医学系研究に関する倫理指 針」が施行されたことを受け、通常、医学系研 究の専門家が常駐ないし勤務しない在宅、介護 施設等において薬剤耐性菌の分離状況把握等 の調査を実施するにあたり、検体採取などの際 に倫理性、科学性、信頼性を保証して行くため、

現行の指針と今回の調査の実績に照らし合わ せて、在宅等における耐性菌の分離状況に関す る調査を評価し、今後、同様の調査を円滑に進 めて行く際に留意すべき現実的な方法を模索 し、一方で、今後の倫理指針において考慮すべ き点の提案を行うことを目指して研究を実施 した。さらに、検体採取の科学性、信頼性の保 証のための方法についての検討を試みた。その 結果、現在の指針に沿うと、1)倫理審査はそ れぞれの検体採取施設が受ける必要があるが、

最初に研究責任者の施設で受審しておけば迅 速審査の対象となる可能性が大きいこと、2)

インフォームド・コンセントについては、鼻 腔・咽頭の擦過、褥瘡拭い液の採取を軽微な侵 襲とすれば簡略化が可能であるが、侵襲がある と判断する限り、オプトアウトを利用した承諾 の対象とはならない可能性が残ることなどが 明らかとなった。

  研究代表者である荒川のグループは、藤本の グループや村上のグループと協力しつつ、川村 のグループとも連携しつつ、主に、群馬県内の 1施設および岐阜県内の2施設の入所者等か ら分離された菌株について、詳しい解析を担当 した。その結果、3施設の在宅患者等からは PR(I)SP、VRE、MDRP、MDRAは分離されなか ったものの、総合的に見た場合、MRSAの分離 率は4.8-9.5 %、ESBLの分離率が29-57.1 %であ ることが確認された。

 

(結  論) 

在宅医療患者や療養施設等の入所者からは、

全体を通じて、これまでに、PR(I)SP、VRE、

MDRP、MDRA は分離されなかったものの、

MRSAは2.9% - 9.5%、ESBL産生株は11.8% - 57.1%の割合で分離されることが明らかとなっ た。これらの分離率は、施設間で大きく異なり、

しかも、急性期病院におけるそれぞれの分離率 より高率な事例もあり、今後、療養型施設、介 護 施 設 の 入 所 者 や 在 宅 医 療 患 者 に お け る MRSAおよびESBL産生菌等の動向を定期的に モニタリングする必要性とその方法について

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8 検討すべき時期に来ていることが示唆された。

なお、これらの施設の入所者等では、自主的な 意思決定や意思疎通が難しい高齢者が多く、ま た、廃棄物である便や尿、さらに体表面からの 非侵襲的方法による検体の採材法を採用する 今回のような調査を実施する場合のインフォ ームド・コンセント、インフォームド・アセン ト等のあり方について、検討する余地が残され ている。

D. 健康危険情報 

  一部の高齢者施設等では、入所者等からの、

MRSAやESBL産生菌の分離率が、急性期病院 におけるそれぞれの分離率を上回っている施 設も存在することから、今後、高齢者施設等に おける耐性菌対策とその監視体制の構築も検 討する必要性が生じつつある。

E. 研究発表 

1. 論文発表

なし 2. 学会発表

(発表誌名巻号・頁・発行年等も記入)

  なし

F. 知的財産権の出願・登録状況 

   (予定を含む) 

1. 特許取得  なし 

2. 実用新案登録  なし 

3. その他  なし

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