自己炎症疾患
井田 弘明
要 旨
自己炎症疾患(autoinflammatory disease)は,自己炎症症候群(autoinflammatory syndrome)とも 呼ばれる新しい疾患概念である.繰り返す全身性の炎症を来す疾患で,多くは発熱がみられ,関節・皮 膚・腸・眼などの部位の炎症を伴う.症状としては,感染症や膠原病に類似しているが,病原微生物は 同定されず,また,自己抗体や抗原特異的T細胞も検出されない.近年,Toll-like受容体や細胞内のNLR ファミリー蛋白の分子機構の解明が進み,また,これらの分子が,一部の遺伝性周期熱症候群の疾患遺 伝子でもあったことから,自己炎症疾患の概念が提唱され,現在注目されている.欧米の疾患と思われ ていた遺伝性周期熱症候群は,本邦でも存在が確認され,不明熱の鑑別疾患に挙げる必要性がでてきて いる.本稿では,自己炎症疾患の概念,分類を紹介するとともに,各疾患の臨床像と病因を簡単に解説 した. 〔日内会誌 97:438∼447,2008〕
Key words:Autoinflammatory disease,Autoinflammatory syndrome,periodic fever
はじめに
「自己炎症(autoinflammatory)」という言葉は, 最近提唱された概念,autoinflammatory disease (自己炎症疾患),autoinflammatory syndrome (自己炎症症候群)に使われ, 「自己免疫(auto-immune)」と対比される. 炎症に伴う発熱は,臨床医にとって身近で頻 度が多い症状のひとつである.古くから欧米で は,周期熱患者が多いこともあって,周期熱の 研究が盛んで,遺伝性周期熱症候群の疾患遺伝 子がこの約 10 年に次々と同定された(表 1).一 方,免疫学では,これまであまり注目されてこ なかった好中球と単球が,Toll-like受容体や細胞 内のNLRファミリー蛋白の分子機構の解明によっ て一躍注目をあびるようになった.この自然免 疫を担う分子が,一部の遺伝性周期熱症候群の 疾患遺伝子でもあったことから,自己炎症疾患 の概念が提唱され,現在脚光をあびている.表 2 に,自己炎症疾患が注目されている理由をまと めた.1.自己炎症疾患の定義と分類
「autoinflammatory(自己炎症)」という言葉は, 2000 年 前 後 にKastner,O Shea,McDermott 各博士らによって提唱された1).TNFreceptor-associated periodic syndrome(TRAPS)の研究 者であった彼らは,この疾患を含め,自己免疫, アレルギー,免疫不全などの従来言われてきた 免疫病に合わない疾患群があることを提唱し, 「autoinflammatory disease(自己炎症疾患)」, 「autoinflammatory syndrome(自己炎症症候群)」 いだ ひろあき:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療展開講座リウマチ免疫制御学(第一内科)
表 1. 自己炎症疾患の原因遺伝子発見 発見された年 変異蛋白 疾患遺伝子 疾患名 1997 Pyrin MEFV FMF 1999 Mevalonate kinase
MVK HIDS 1999 TNFRSF1A(TNFR1) TNFRSF1A TRAPS 2001 Cryopyrin(NALP3) CIAS1/NALP3 FCAS 2001 Cryopyrin(NALP3) CIAS1/NALP3 MWS 2002 Cryopyrin(NALP3) CIAS1/NALP3 CINCA 表 2. 自己炎症疾患がなぜ注目されてきたのか? 1)疾患概念の提唱 2)原因遺伝子の発見 3)Toll-like受容体,NLRファミリーなど自然免疫 研究の進歩と原因遺伝子との関連の証明 4)分子の多量体化と炎症メカニズムの解明 5)本邦における症例の増加 6)生物学的製剤の有効性の証明 と名付けた.自己炎症疾患とは,繰り返す全身 性の炎症を来す疾患で,多くは発熱がみられ, 関節・皮膚・腸・眼などの部位の炎症を伴う. 症状としては,感染症や膠原病に類似している が,病原微生物は同定されず,また,自己抗体 や抗原特異的T細胞も検出されない1∼3). このような経緯で自己炎症疾患という概念は 提唱されたため,どの疾患がその範疇に入るの か,その定義は意見が分かれるところである. 表 3 に自己炎症疾患の分類を示す4,5).自己炎症 疾患を狭義に定義するならば,IのHereditary periodic syndromes(遺伝性周期熱症候群)のみ となる.Familial Mediterranean fever(家族性 地中海熱;FMF),Hyper-IgD and periodic fever syndrome(高IgD症候群;HIDS),TRAPS,お よび疾患遺伝子が同一であったCINCA症候群・ Muckle-Wells症候群(MWS)・家族性寒冷蕁麻 疹(FCAS)の 3 疾患の総称であるCryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)が含まれ る.広義に自己炎症疾患を定義するならば,様々 な疾患が入ってくる.遺伝性ではないが,周期
熱とアフタ性口内炎,頸部リンパ節炎,咽頭炎 を主症状とするSyndrome of periodic fever with aphthous stomatitis,pharyngititis,and cervi-cal adenopathy(PFAPA),疾患遺伝子が同定さ れた肉芽腫疾患のBlau症候群と若年発症サルコ イドーシス,無菌性関節炎,壊疽性膿皮症,囊 胞性アクネを伴うSyndrome of pyogenic arthri-tis with pyoderma gangrenosum and acne (PAPA)なども含まれる.特異的な自己抗体が 存在しない膠原病・膠原病類縁疾患,Behçet s disease(ベーチェット病),Adult-onset Still s disease(成人スティル病),Systemic-onset juve-nile idiopathic arthritis(全身型若年リウマチ), Synovitis,acne,pustulosis,hyerostosis,and osteitis syndrome(SAPHO症候群)なども含ま れる.また,代謝疾患であるGout(痛風) ,Pseu-dogout(偽痛風)もCryopyrinとの関連が最近証 明され6),自己炎症疾患の仲間入りをした. Isabelleらは,INFEVERS(遺伝性の発熱症候 群などの突然変異の情報を掲示したサイト; http:!!fmf.igh.cnrs.fr!ISSAID!infevers!)を開 設し,世界中の自己炎症疾患患者の情報を集め, 世界へ発信している7).上記サイトを開くと図 1a の画面が出てくる.「Yes」をクリックすると, 図 1bの画面が開き,各自己炎症疾患の名前が掲 示されている.各疾患のボタンをクリックする とこれまで報告されている突然変異の部位など の情報が得られる仕組みになっている. 本稿では,病態がほぼ解明され,本邦でも報 告が増えている狭義の自己炎症疾患,遺伝性周
表 3. 自己炎症疾患の分類(文献 4を改編)
Genes orRisk Factors Syndromes
Ⅰ.Hereditary periodic syndromes
MEFV
★ FamilialMediterranean fever(FMF)
MVK
★ Hyper-IgD with periodic feversyndrome(HIDS)
TNFRSF1A
★ TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS) ★ Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)
CIAS1/NALP3
・Chronic, infantile, neurological, cutaneous and articular syndrome (CINCA syndrome) /Neonatal-onset
multisystem inflammatory disease(NOMID)
CIAS1/NALP3
・Muckle-Wells syndrome(MWS)
CIAS1/NALP3
・Familialcold urticaria(FCU)/Familialcold autoinfl amma-tory syndrome(FCAS)
Ⅱ.Idiopathic febrile syndromes
notdetected ★ Syndrome ofperiodic feverwith aphthous stomatitis,pharyngi
-titis,and cervicaladenopathy(PFAPA)
IL-6,MIF polymorphisms ★ Systemic-onsetjuvenile idiopathic arthritis(SOJIA)
notdetected ★ Adult-onsetStill’ s disease(AOSD)
Ⅲ.Granulomatous disorders
NOD2/CARD15
★ Chronic granulomatous synovitis with uveitis and cranialneur o-pathy(Blau syndrome)
NOD2/CARD15
★ Early onsetsarcoidosis(EOS)
NOD2/CARD15,ABCB1,etc
★ Crohn’ s disease(CD) Ⅳ.Pyogenic disorders
PSTPIP1
★ Syndrome ofpyogenic arthritis with pyoderma gangrenosum and acne(PAPA)
LPIN2(Majeed syndrome) ★ Chronic recurrent multifocal osteomyelitis(CRMO)and
con-genitaldyserythopoeitic anemia(Majeed syndrome)
notdetected ★ Synovitis,acne,pustulosis,hyerostosis,and osteitis syndrome
(SAPHO)
Ⅴ.Hemophagocytic disorders
PRF1,RAB27A
★ Primary hemophagocytic lymphohistiocytosis(HLH)
Pediatric rheumatic disease ★ Macrophage activation syndrome(MAS)
Ⅵ.Complementdisorders
C1NH
★ Hereditary angioedema Ⅶ.Vasculitic syndromes
HLAB51,MEFV
★ Behçet’ s disease(BD) Ⅷ.Metabolic disorders
CIAS1/NALP3 ★ Gout CIAS1/NALP3 ★ Pseudogout 期熱症候群を中心に解説する.
2.自己炎症疾患の特徴
遺伝性周期熱症候群の特徴を表 4 に示す.発 症年齢は,一部のFMF,TRAPS,MWS以外は, 乳児∼幼少時期であり,小児科医へのこれらの 疾患の啓蒙が必要である.臨床症状は,各疾患 で異なるが,共通の症状としては,周期熱,皮 疹,関節症状がある.これらの 3 つの症状は, 他の膠原病・膠原病類似疾患でも多くみられる ため,それらの疾患との鑑別が必要である.以 下に各疾患について,その特徴を簡単にまとめ た8). 1)FMF: 周期熱と漿膜炎(腹膜炎,胸膜炎)を特徴と する世界で最も患者が多い遺伝性周期熱症候群 である.大関節中心の単関節炎も併発,なかに図 1. INFEVERSの画面(http://fmf.igh.cnrs.fr/ISSAID/infevers/)
まず,図 1aの画面が現れ,「Yes」をクリックすると,図 1bの画面となる.各疾患のボタンをクリック
すると,各疾患の情報が得られる.
Current number(546)of sequence variants in the database
152 70 111192 74 12 17103 51 22 10 83 93 396 33 415 7512 56 65 31 Associated phenotype=NO Associated phenotype=Unknown Associated phenotype=YES NLRP3(CAPS) MEFV(FMF) MVK(MKD) TNFRSF1A(TRAPS) LPIN2(Majeed Syndrome) PSTPIP1(PAPA) NOD2(CD/BS/EOS) NLRP7(RMHs)
a
b
は,1 カ月以上遷延する場合がある.漿膜や滑膜 への著明な多核白血球浸潤が特徴で,それが症 状発現にも関連している.本邦からの報告も年々 増加傾向であるが,すべてE148Q,あるいはM694I表 4. 遺伝性自己炎症疾患の特徴 CAPS TRAPS HIDS FMF 疾患名 CINCA MWS FCAS 常優 常優 常優 常優 常劣 常劣 遺伝樣式 1q44 1q44 1q44 12p13 12q24 16p13.3 染色体 CIAS1 CIAS1 CIAS1 TNFRSF1A MVK MEFV 遺伝子名 Cryopyrin Cryopyrin Cryopyrin TNFRSF1A Mevalonate kinase Pyrin 責任蛋白 1歳以下 小児期 1歳以下 2週~ 50歳代 1歳以下 5~ 20歳 発症年齢 持続的 2~ 3日 12~ 24時間 7日以上 3~ 7日 12~ 72時間 発熱期間 2カ月~数カ月 4~ 6週 1カ月 発熱間隔 蕁麻疹樣 感音性難聴 視神経乳頭浮腫 関節障害 特有の顔貌 成長障害 蕁麻疹樣 感音性難聴 結膜炎 関節炎 腹痛 寒冷誘発 蕁麻疹樣 結膜炎 関節痛 四肢痛 移動性発疹 漿膜炎 (腹痛・胸痛) 関節炎 筋痛 斑丘疹樣発疹 頚部リンパ節 腫脹 腹部症状(下痢) 関節炎 丹毒樣紅斑 漿膜炎 (腹痛・胸痛) 関節炎 臨床症状 成人期に出現 25% まれ 10~ 15% まれ あり アミロイドーシス アナキンラ アナキンラ アナキンラ エタネルセプト ステロイド スタチン ステロイド コルヒチン 治療 の変異を含んでいる.ただし,E148Qの変異は, 本邦の健常者にも十数%存在することから,症 状をよく観察して診断をつける必要がある.コ ルヒチンが特効薬であり,使用されるようになっ てから,アミロイドーシスを合併する頻度も低 下した. 2)HIDS: 乳幼児期からの周期熱,頸部リンパ節腫脹, 関節痛・関節炎,腹痛,下痢,嘔吐,発疹をし めし,血清IgD値上昇,尿中メバロン酸排泄増加 を特徴とする疾患である. 高脂血症治療薬HMG-CoA還元酵素阻害剤が,メバロン酸の蓄積を減 らし,有効である. 3)TRAPS: 発熱期間が長い周期熱,腹痛,筋肉痛,発疹, 関節痛・関節炎,眼症状,胸膜炎,など多彩な 症状をしめす.最近では,心外膜炎,血管炎, 神経症状などの合併も報告されている.現在ま で本邦における報告があったTRAPS患者は,6 家系 17 例で,TNFRSF1A遺伝子の突然変異は 5 カ所(C30R,C30Y,T61I,C70S,C70G)であ る.治療として,コルヒチンは無効で,ステロ イド剤の効果はあるが,発作の回数は減少でき ない.生物学的製剤エタネルセプト(TNFRSF1B 融合蛋白)が使用され,発作の回数の減少とス テロイド剤の減量ができたとの報告がある. 4)CAPS: 同じCryopyrinの異常であるが,臨床症状が異 なる 3 疾患の総称である.症状が最も軽い家族 性寒冷蕁麻疹(FCAS)は,寒冷暴露後に発熱, 蕁麻疹様皮疹,関節痛,結膜炎などを来す疾患 である.次に症状が 重 いMuckle-Wells症 候 群 (MWS)は,発熱,蕁麻疹様皮疹,関節炎,結 膜炎などの発作を繰り返し,アミロイドーシス を約 25% に合併する.感音性難聴が徐々に進行 することが,特徴である.小児期から難聴があ り,大人になって診断がつく症例がある.最も 重症の病型を示すCINCA症候群は,新生児期に 発症し,発熱,蕁麻疹様皮疹,中枢神経病変, 関節症,精神発達遅滞,リンパ節腫脹などを特 徴とする.北米では,NOMID(neonatal onset multisystem inflammatory syndrome)と呼ばれ る.責任遺伝子は,CIAS1(cold-induced
図 2. NLRファミリー分子のシェーマ
基本骨格は,N末側に下流分子と結合するエフェクタードメイン, 中央に核酸結合性多量体化ドメイン(NOD),C末に病原体を認識 するセンサードメインの 3つからなる.
CARD;caspase recruitment domain, NOD;nucleoti de-binding oligomerization domain, LRRs;leucine rich r e-peats,PYD;pyrin domain
エフェクタードメイン 核酸結合性多量体化ドメイン センサードメイン Cryopyrin PYD NOD LRRs Apaf-1 CARD NOD WD40Rs Nod 1 Nod 2 CARD NOD LRRs CARD NOD LRRs CARD PYD CARD ASC が,Cryopyrin(NALP3,PYPAF1)である.ヒ トIL-1 受容体アンタゴニストである生物学的製 剤のアナキンラが有効である.
3.自己炎症疾患の病態・病因
遺伝性周期熱症候群の疾患遺伝子は同定され ており,そのメカニズムも解明されつつあるが, 特に,細胞質の病原体センサーというべきNLR ファミリー(Nucleotide-binding domain and leucine rich repeat containing family),別名NOD 蛋白(Nucleotide-binding oligomerization do-main protein)ファミリーの発見が,遺伝性周期 熱症候群をはじめとする自己炎症疾患を注目さ せることになった9).20 世紀末に細胞死のひとつ であるアポトーシス研究が盛んとなり,多くの 分子が同定された.その中で,内因性のアポトー シス誘導において,重要な役割を果たしている 分子にApaf-1(apoptotic protease activating factor-1)分子がある.Apaf-1 分子は細胞質に存 在し,ミトコンドリアから逸脱した酵素,チト クロームcを認識すると,お互いの分子が多量体 を形成,Caspase 9 を活性化させる.この多量体 化のメカニズムは,その分子以下の反応を増強 させるためには,大変理にかなった仕組みであっ た.分子生物学の発展により,容易に遺伝子検 索が可能となり,1999 年にApaf-1 分子と相同の 分子が単離され,NOD1!CARD4 と命名された. 以降,同様にNOD2 分子が発見され,Crohn病の 疾患責任遺伝子であることがわかり,このNLR ファミリーが注目されることとなった.2002 年には,NOD1 との相同性検索から同定された 遺伝子(pypaf1!NALP3)が,CAPSの連鎖解析 による責任遺伝子(CIAS1)であることも判明し た.その遺伝子産物が,Cryopyrinである. NLRファミリーは,基本骨格として核酸結合 性多量体化ドメイン(NOD)をもち,N末側に 下流分子と結合するエフェクタードメインを, C末に病原体を認識するセンサードメインをもつ (図 2).チトクロームcが,Apaf-1 分子のセンサー ドメインに結合したように,細菌やウイルスの 成分,結晶成分などが,各NLRファミリー分子 のセンサードメインに結合,多量体化が生じ, 下流への反応が増強,炎症を始め多くの反応が図 3a. FMFと CAPSの病態(文献 10を改編)
① ASC/cryopyrin complex,② Procaspase-1,③ Caspase-1/cardinal complexが結合して,Caspase-1が産生,Pro IL-1βは IL-1βに変換される. Cryopyrinは,細胞内では活性化されないように構造上折りたたまれ,自己抑制 されている.また,ASCは Pyrinと結合して ASC sequesteredとなり,ASC と Active cryopyrinとの結合が抑制されている.このように,この経路には,暴 走しないような抑制があらかじめかかっている.
FMF患 者 の 場 合,Pyrinに 突 然 変 異 が み ら れ,ASCと の 結 合 が 抑 制, ASC/cryopyrin complexが増加する.一方 CAPS患者の場合,Cryopyrinに 突然変異がみられ,Active cryopyrinが多く供給,ASC/cryopyrin complex が 増 加 す る.FMF患 者,CAPS患 者 と も に,ASC/cryopyrin complex, Procaspase-1,Caspase-1/cardinalcomplexが会合,多量体化し,多量の活 性化された Caspase-1が産生,Pro IL-1βは IL-1βに変換され,多量の IL-1β
が産生.これらの反応の過程で NF-κBの活性化も生じる.
PYD;pyrin domain,NOD;nucleotide-binding oligomerization domain, LRRs;leucine rich repeats,CARD;caspase recruitmentdomain,MDP; muramyldipeptide
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ Pyrin ASC Autoinhibited cryopyrin Active cryopyrin MDP ASC/cryopyrin complex Procaspase-1 Procaspase-1
Pro IL-1β IL-1β Cardinal Inflammasome Cryopyrin Caspase-1/cardinal complex Inflammation ③ ② ①
Pyrin mutation Cryopyrin mutation FMF
CAPS
NF-κB
PYD NOD LRRs
FIND CARD Caspase catalytic domain
ASC sequestered Pyrin 健常者 健常者 ASC 生じる. 次に,具体的な各疾患の病態を解説する10).FMF の責任蛋白はPyrinであるが,CAPSの責任蛋白 Cryopyrinと関連がみられる.図 3aのように,細 胞質内でASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD)!cryopyrin plex,Procaspase-1,Caspase-1!cardinal com-plexが会合する.特にこの巨大な蛋白質複合体を Inflammasomeと呼ぶ.Caspase-1 によって,Pro IL-1βはIL-1βに変換される.この経路には,暴走 しないように抑制があらかじめかかっている. Cryopyrinは,細胞内では活性化されないように 構造上折りたたまれ,自己抑制されている.ま た,ASCはPyrinと結合してASC sequestered となり,ASCとActive cryopyrinとの結合が結果 的に抑制される.このような仕組みで,正常で は,これらの反応は最小限にくい止められてい る.ところが,FMF患者の場合,Pyrinに突然変
異がみられ,ASCとの結合が抑制される.その た め,フ リ ー のASCが 多 く 供 給 さ れ,ASC! cryopyrin complexが増加する.一方CAPS患者 の場合,Cryopyrinに突然変異がみられ,自己抑 制がかからず,Active cryopyrinが多く供給され る.結果的に,ASC!cryopyrin complexが増加す る.FMF患者,CAPS患者ともに,ASC!cryopyrin complex , Procaspase-1 , Caspase-1!cardinal complexが会合し,多量体化する.多量の活性化 されたCaspase-1 によって,Pro IL-1βはIL-1β に変換され,多量のIL-1βが産生される(図 3a). これらの反応の過程で,詳細はまだ解明されて いないが,NF-κBの活性化も生じる. HIDSは,メバロン酸経路におけるメバロン酸 キナーゼ(MK)活性低下が原因である.発熱の 機序としては,MK活性低下によるメバロン酸の 蓄積,イソプレノイド化合物減少に伴う細胞内 シグナル伝達物質低下によるIL-1βの産生亢進が 考えられている.MKは,温度上昇に伴い,酵素 活性が低下することから,体温上昇によって, 炎症がさらに増大する. TRAPSは,TNFRSF1A(TNFR1)分子が細 胞表面に留まり,TNFからの反応が持続するた め,発熱などの様々なTRAPS症状が出現すると 単純に考えられてきた(図 3b).ところが,最近, TNFRSF1A分子の切断異常がみられない症例や 突然変異のないTRAPS症例もあること,さらに 孤発例も存在することが判明し,TRAPSとは大 変heterogeneousな症候群であることがわかって きた.TNFRSF1A分子がinternalizationされる 時,plasma membraneが陥入し,細胞外部分は plasma membraneの中に取り込まれる.その過 程でNF-κBの活性化が誘導される(図 3b).また, 細胞表面に発現されないTNFRSF1A分子が, TNFと無関係に細胞内で凝集し,NF-κBの活性 化やアポトーシス誘導を生じている(図 3b)こ と も 報 告 さ れ,TRAPSの 病 因 は 混 沌 と し て いる11).遺伝性周期熱症候群のうち,最も病因が 解明されていない疾患と考えられる.
4.自己炎症疾患責任分子と他の慢性炎症
疾患
NLRファミリー分子の特徴的な機能(多量体 化)は,慢性炎症を生じている疾患にも関与し ている可能性がある.遺伝性周期熱症候群では, ひとつの疾患遺伝子の変異が病態へ及ぼす影響 が大きいが,その他の多くの自己炎症疾患では, proinflammatory effect,つまり,それらの遺伝 子変異が炎症を増強していると考えられる.現 に,クローン病ではNOD2 分子の関与が存在し た. 慢性炎症疾患の代表である関節リウマチ(RA) においては,NOD2 分子の関与は否定的であっ た が,RA滑 膜 組 織 で は,CryopyrinのmRNA 発現が,変形性関節症滑膜組織より増強してい た12).また,FMFの遺伝子であるMEFVのE148 Q変異が存在するRAグループの方が,存在しな いグループより重症で,E148Q変異が,RA炎症 の増悪因子であると報告している13). 乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis)における 遺伝子検索では,NOD2 分子の関与が認められ た14).一方,強直性脊椎炎(Ankylosing Spondy-litis)では,発症への危険因子としては,NOD2 分子の関与は否定的であった15). 自己炎症疾患のひとつで,まだ責任遺伝子が 同定されていないBehçet病において,他の自己 炎症疾患の責任遺伝子であるMVK,CIAS1, PSTPIP1の変異は,コントロール群と差がなかっ た16).しかし,FMFの遺伝子MEFVにおいては, 複数の部位の突然変異において,コントロール 群より有意に変異率が高かったことから,MEFV は疾患感受性遺伝子の可能性が示唆された17).おわりに
新しい概念「autoinflammatory disease(自己 炎症疾患)」について,解説した.まだ,概念が図 3b. TRAPSの病態
TNFと結合する場合,preligand assembly domain(PLAD)間の結 合は解離し三量体を形成,TNFと結合する.TNFのシグナルによって, アポトーシス誘導,あるいは,NK-κBの活性化が誘導される.健常者の 場合,三量体 TNFRSF1A分子は切断され,可溶性 TNFRSF1A(sol u-ble TNFRSF1A;sTNFRSF1A)分子となる.それによって,TNFを 中和するとともに,細胞内では TNFからのシグナル伝達が結果的に抑制 される(図上部).TRAPS患者の場合,次の 3つの異常が考えられる. ① TNFRSF1A分子の細胞外ドメイン(エキソン 2,3,4の部分)に 突然変異が存在した場合,切断酵素の働きが阻害され,TNFRSF1A分 子が細胞表面に留まり,TNFからの反応が持続する.
② TNFRSF1A分 子 が internalizationさ れ る 時,plasma mem-braneが陥入し,細胞外部分は plasma membraneの中に取り込ま れ,その過程で NF-κBの活性化が誘導される.さらに,trans-Golgi vesicleと internalizationされた TNFRSF1A分子全体が融合(f
u-sion)し,その後アポトーシスが誘導される.
③突然変異が存在する TNFRSF1A分子は,小胞体内,あるいはゴルジ 体内に停滞し,一部が細胞質内へ移動する.細胞質内の TNFRSF1A 分子は,ユビキチン化(Ub)され,一部はプロテオゾームで分解され, 残りの TNFRSF1A分子は,うまくお互いが結合できず,凝集する (misfold & aggregate).その後 TNFからのシグナルなしで,アポ
トーシス,あるいは,NF-κBの活性化が誘導される. TNF sTNFRSF1A 健常者 Apoptosis NF-κB NF-κB ER Golgi TNF Plasma Membrane ① ② ③ TRAPS 提唱されて間もないため,どの疾患がその範疇 に入るのか,意見が分かれるところである.欧 米の疾患と思われていた遺伝性周期熱症候群は, 本邦にも存在が確認され,今や,不明熱の鑑別 に挙げなければならなくなっている.今後,本 邦における症例の蓄積が必要であるが,その結
果をまとめ,発信していく場も必要である.全 国には,不明熱患者は多く,診療の場で困って おられる医師も多い.早急な組織づくりの必要 性を痛感している.
ところで,3 年に一度,自己炎症疾患研究者が 集まり会議が開かれ(The International Congress on FMF and Systemic Autoinflammatory Dis-eases),疫学,病態,病因,定義などについて話 し合いが行われている.2005 年は,米国のNIH で議論され,また,2008 年 4 月には,イタリア のローマで第 5 回目の会議が開かれる予定であ る.この会議の決定事項を本邦症例に照らし合 わせ,さらに検討する必要がある.
追記
この原稿をお読みになった先生方やお知り合 いの先生で,不明熱・周期熱患者(原因不明の 38.3℃ 以上の発熱が 3 週間以上持続し周期的に出 現する)をおもちの方は,ご遠慮なくidah@net. nagasaki-u.ac.jpまでご連絡ください. また,全国の有志の先生方と平成 20 年中に全 国規模で「自己炎症疾患研究会」を立ち上げ, 本邦症例の蓄積,ガイドライン作成など行って いく予定です.ご賛同いただける方はご連絡く ださい. 文 献1)Galon J, et al : TNFRSF1A mutations and autoinflamma-tory syndromes. Curr Opin Immunol 12 : 479―486, 2000. 2)Hull K, et al : The expanding spectrum of systemic
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