H 形鋼を芯材とするソイルセメント杭に関する研究(その 1)
− 工法および試験の概要 −
大木建設(株) 正○平澤 雅己, (株)青木建設 日高 徳広, (株)奥村組 筒井 通剛 西松建設(株) 武内 義夫, (株)松村組 黒島 毅
1.
はじめに柱列式地中連続壁等の
H
形鋼を芯材とする土留め壁を本体に利用した事例報告が建築分野において増えており,土木分野においても,立坑や開削トンネル等の土木構造物を対象とした「設計の手引き」1)がまとめられている。
本研究は,柱列式地中連続壁と同様の施工方法で構築される
H
形鋼を芯材とするソイルセメント杭(以下,H
形 鋼ソイルセメント杭と呼ぶ)を本設の杭基礎構造物として適用する工法を開発し,基礎工事の合理化,環境負荷の 低減を図ることを目的としたものである。本報では,本工法の特長および工法開発のために実施した試験の概要に ついて報告する。シアコネクタ
荷重伝達
芯材(H形鋼) ソイルセメント
▽支持層
一般部先端部
シアコネクタ
2.
本工法開発の特長本工法の概要を図
1
に示す。本工法におけるH
形鋼ソイルセメント杭 は,大深度の施工にも実績のあるソイルセメント柱列壁工法2)の施工機械 を用い,土留め壁の構築と同時に施工する。荷重伝達機構は,外周部に設 置される場合は芯材フランジ面に取り付けたシアコネクタを介して(底盤 下では直接),芯材(H
形鋼)で構造物荷重を受けた後,芯材とソイルセ メントの付着力およびソイルセメント周面摩擦力により周辺地盤に荷重 伝達し, 付着力および先端部芯材ウェブに設置したシアコネクタとソイ ルセメントの支圧,あるいは芯材先端面とソイルセメントの支圧を介して 先端部支持地盤に伝達するものである。ソイルセメントと鋼材を合成させた杭基礎としては,既に鋼管ソイルセ
メント杭3),4)があるが,本工法には,
1)
土留め壁芯材と杭の芯材を同じH
形鋼で兼用,
2
) 施工単位は3連を基本,としていることのほか,3
) 一般 部・先端部ともソイルセメントの品質管理を行うことにより先端部の目標 強度を構造的に必要な強度(標準:5N/mm
2)に抑えた,特長がある。鋼管ソイルセメント杭と本工法の比較を表
1
に示す。 図1 本工法の概要
施工方法は,ソイルセメント柱列壁工法と同様としているが,本設の杭基礎構造物とするため,従来のソイルセ メント柱列壁工法(目標強度
0.5N/mm
2,固化材配合量:250
〜300 kg/m
3,W/C
:150
〜300%
,攪拌回数:30
回/m
程 度)と比較して,一般部,先端部とも高配合で十分な攪拌を行うこととしている。本工法の標準施工方法,標準施 工サイクルを表1,
図2
に示す。先端 部配
合
▽
GL
先端部 ▽支持層 攪拌回数 100回/m 一般部 攪拌回数
38回/m
タ
ーニン
グ
( 繰
返し攪拌
) 範
囲
表
1 工法の概要比較
鋼管ソイルセメント杭 H形鋼ソイルセメント杭 削孔攪拌 特殊先端機構による 既往の削孔・混練機構による 挿入鋼材 リブ付き鋼管 シアコネクタ付きH形鋼 挿入方式 同時挿入,後挿入 後挿入
施工規模 径:600〜1500mm,深さ<60m 径:350〜1100mm,深さ<50m
施工単位 単杭 3連,単杭
目標強度 一般部:1N/mm2,先端部:15N/mm2 一般部:1N/mm2,先端部:5N/mm2 固化材
配合量
一般部:300〜350kg/m3, 先端部:1000 kg/m3
一般部:353kg/m3, 先端部:705 kg/m3 W/C 一般部:100〜120%,先端部:60% 一般部:150%,先端部:80%
攪拌回数 一般部:33回/m,先端部: 100回/m 一般部:38回/m,先端部:100回/m
配合切替 一
般 部
配 合
削 孔
引上げ
孔底攪拌 3 分以上
図
2
標準施工サイクル キーワード:杭基礎,ソイルセメント,施工性確認試験,載荷試験連絡先:〒
270-1402
千葉県白井市平塚2668-3 TEL.047-492-5362 FAX.047-492-5319 [email protected]
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)‑603‑
III‑302
表
2
施工性確認試験の概要施工径×深さ×形状
*
1×試験体数 試験場*
2 試験内容 φ550×8.0m×3軸・1EL×4体φ550×8.0m×3軸・3EL×1体 φ
650
×17.5m
×3
軸・3EL
×2
体 φ900
×17.5m
×3
軸・1EL
×1
体1
φ650×33.5m×3軸・1EL×1体 2
施工時,直後 :注入液比重測定,注入液注入量測定,オーガー電流値測定,
電気比抵抗調査,芯材建込み難度試験
コア採取試料 :コア採取率調査,一軸圧縮試験,割裂強度試験,一面せん断試験 未固結採取試料:比重測定,一軸圧縮試験,流動性調査,電気伝導率調査 掘出し調査 :土塊混入率調査,ソイルセメントの施工径・鉛直精度調査 芯材の鉛直精度調査
*
1EL
(エレメントの略):施工単位,*
2試験場1
:千葉県白井市,試験場2
:茨城県境町3.
試験の概要 表3
載荷試験の概要工法開発にあたっては,前述の特長を考慮して本設構 造物としての品質および性能を確保できる設計,施工方 法を確立するため以下の試験を実施した。施工性確認試 験および載荷試験の概要を表
2
,表3
に示す。1)
ソイルセメントの品質確認のための室内配合試験,2
) 品質確認のための施工性確認試験,3
) 応力伝達機構の解明と確認のための構造実験および解析的検討,4) 支持性能確認のための鉛直・水平載荷試験 鉛直/水平・試験数
−施工径・形状・芯材長(m)
試験 場
*
先端地盤・
加力方向 鉛直・2 本−φ900・3連・41.0,27.3
3
砂礫, シルト 鉛直・2 本−φ650・3連,単杭・32.9 細砂鉛直・2 本−φ
650
・3
連,単杭・18.0
砂質シルト 水平・1 本−φ650・単杭・15.0H
形鋼強軸 水平・2 本−φ650・3連,単杭・15.02
H
形鋼弱軸*
試験場3
:茨城県猿島町,試験場2
:茨城県境町室内配合試験では,砂質土,粘性土を対象として水セメント比,固化材配合量をパラメータとして検討を行い,
所要の目標強度(1N/mm2,5N/mm2)を確保し,かつ,混練から
2
時間程度経過した後でもH
形鋼を挿入できる程 度の流動性を確保できる配合として標準配合(一般部:W/C=150%,
固化材配合量= 353 kg/m
3相当,先端部:W/C=80%,
固化材配合量=705 kg/m
3相当)を選定した。なお,流動性はベーンせん断強さ(3kN/m2以下)で評価した。施工性確認試験では,施工速度,ターニングの有無,先端部の注入量,
3
軸単体(1EL
)/連続施工(3EL
)など をパラメータとして,施工性およびソイルセメントの品質などについて各種試験を行った。これより,表1,図 2
に示す標準施工方法・標準施工サイクルとすることで,H
形鋼を問題なく建て込むことができ,所要の品質のソイ ルセメント柱を構築できることが確認された。ソイルセメントの強度特性については(その2)
5) で述べる。構造実験では,ソイルセメントの強度,付着の有無,スタッド(シアコネクタ)の有無・径などをパラメータと した模型実験を行い,支圧・付着力および支持力に関する関係式(ソイルセメントと
H
形鋼の付着強度τ = 0 . 13 ⋅ qu0.5
(qu :
ソイルセメントの一軸圧縮強度),スタッドのせん断耐力qs = 8 . 0 ⋅
sca ⋅ qu
(sca :
スタッドの軸部断面積))を得た。
載荷試験では,試験場
2
箇所において,先端地盤,杭径・杭長,3連/単杭をパラメータとして,鉛直・水平支 持力を確認し,本工法の鉛直・水平支持力は既往の支持力算定式により安全側に評価できることを確認した。鉛直 載荷試験については(その3)
5) で述べる。水平載荷試験では,ソイルセメント柱径を載荷幅とした計算値が実測値 に近い傾向があることと,本工法の標準的な配置パターンである芯材の弱軸方向の連続配置においては群杭とみな す必要がないことが確認された。以上,本工法開発のために実施した各種試験の概要を述べたが,詳細については,(その
2
),(その3
)に示す他,他学会発表論文6),7)でも述べている。
4.
まとめ本設の杭基礎構造物として適用可能な
H
形鋼を芯材とするソイルセメント杭の特長と工法開発のために実施し 各種試験の概要を示した。本報告は青木建設,淺沼組,安藤建設,大木建設,奥村組,鴻池組,五洋建設,住友建設(現三井住友建設),錢高組,鉄建建 設,戸田建設,西松建設,松村組,三井建設(現三井住友建設)の
14
社による共同研究の成果をまとめたものである。【参考文献】
1) (社)日本トンネル技術協会:H形鋼を芯材とする土留め壁本体利用の設計の手引き,2002.7
2) (社)日本材料学会:ソイルミキシングウォール(SMW)設計施工指針,2002.3
3) (財)国土開発技術開発センター:ガンテツパイル(鋼管ソイルセメント杭),一般土木工法・技術審査証明報告書,2000.3
4) (財)国土開発技術開発センター:HYSC杭(鋼管ソイルセメント杭),一般土木工法・技術審査証明報告書,2000.12
5) 金澤他:H形鋼を芯材とするソイルセメント杭に関する研究(その2)〜(その3),土木学会第58回年次学術講演会(投稿中),2003.9 6) 金子他:高強度ソイルセメントの品質に関する研究(その1)〜(その2),第38回地盤工学研究発表会(投稿中),2003.7
7) 中村他,ソイルセメント本設杭工法の開発(その1)〜(その8),日本建築学会大会(投稿中),2003.9 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
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