長支間および斜角を有するバイプレ方式 PC 桁の架設
極東興和株式会社 法人正会員 ○野口 裕介 同上 田原 宗
1.はじめに
本工事は,広島県発注の県営基幹農道のうち,庄原市高茂町から 口和町金田間に位置する西城川上での橋梁工事である.このうち,2 号橋は,バイプレストレッシング方式
2
径間連結I
桁橋であり,引張 縁に圧縮プレストレスを与える一般的な方法に加え,圧縮縁に引張 プレストレスを与えることで低桁高化を図った構造である(図-1,図-2).その施工方法は,同形式では国内最大級となる最大桁長
48.8m,
重量
136t
のPC
桁を上り勾配で引き出して,上路式架設桁・門構併 用工法により架設を行うものである.本稿では,2 号橋における品 質・安全性に配慮したPC
桁架設時の工夫について報告する.2.主桁組立て
主桁組立てにおいて,先行施工した
1
号橋(PC3径間連続中空 床版橋)の橋面上を主桁セグメントの接合ヤードとして使用した.工場にて分割製作したセグメントを接合ヤードへ搬入し,160tク レーンで取り降ろして,接合作業(プレストレス導入)を行った.
接合ヤードは縦断勾配
7%と急勾配であるため,A1
側に台車ス トッパーを設置し,さらに橋面に取り付けたアンカーとレバーブ ロックで接合台車を固定して逸走防止対策を図った(写真-1).また,桁長が長いため,プレストレス導入時の横たわみの増大 が予想された.本工事では,緊張装置を
2
組使用し,横たわみを 随時調整しながらプレストレスを導入した.具体的には,支間部 キーワード バイプレ方式PC
桁,長支間,斜角,架設桁架設連絡先 〒
732-0052
広島市東区光町2
丁目6-31
極東興和株式会社 TEL082-261-1206
A1 P1 P2 P3 P4 A2
75
A1 P2 P3
P4
A2
P1
75
図-2 橋梁一般図
図-1 2 号橋標準断面図
80 80
写真-1 逸走防止処置
台車ストッパー
アン カ ー,レバーブ ロ ック
Ⅵ-8
土木学会中国支部第67回研究発表会(平成27年度)― 423 ―
で断面中心に配置される
C1
ケーブルを緊張した後,左右対称位置に配置される緊張材(C2とC3,C4
とC5)
を同時に緊張し,横たわみを±10mm以内に制御した(図-3,写真-2).
3.主桁引き出し
主桁の引き出しについて,一般的には
1
台のウィンチにより引 き出しを行うが,本工事では,急勾配での引き出しであることに 配慮し,2台の単胴ウィンチを設置して2
倍以上の安全率を確保 した.さらに,不測の事態に備えて,逸走防止ワイヤーを追加設 置し,安全に主桁を引き出すことができた(図-4,写真-3). 4.主桁架設P3-P4
径間は,起終点側の斜角が異なる(P3側:90°,P4側:77°30′)ため,各桁位置における門構間距離が異なる.そこで,
P3
門構をP4
門構と同様の77°30′で設置して門構間距離を一定に
し,P3
側の桁吊用鋼材(ゲビンデ鋼棒)の埋込位置を桁毎に調整 して主桁を平行に移動できるよう架設を行った(図-5,写真-4).5.おわりに
国内最大級の支間を有するバイプレ方式
PC
桁橋の施工において,計画段階で施工検討を密に行い,施工中 も作業手順の確認・改善を行うことで,大きな問題はなく,無事故で施工完了できた.P3 P4
S1 S2 S3
G1
G6
ℓ
主桁横移動可能
P3 P4
S1 S2 S3
G1
G6
ℓ
L
ℓ < L
主桁横移動不可能
平 面 図
門 構
ℓ
図-5 門構設置位置(P3-P4)
主桁引き出し
セグメント組立 (Wmax=24.8t)
セグメント桁
門構(70t吊り)
門構(70t吊り)
控えワイヤー
架設桁(手延べ桁)
P1
A2
P4 P2 P3
A1
油圧式トラッククレーン
(160t吊り)
図‐4 架設計画図
C2 C1
C5 C4 C3 外桁外側 中 桁 外桁内側
シースφ80 N=5本 主桁引張PC鋼より線 SWPR7BL 12S15.2mm
3 2 1 3 2
シースφ80 N=5本 SWPR7BL 12S15.2mm 主桁引張PC鋼より線 外桁外側
中 桁 外桁内側
ケーブルNO.
緊張順序 C3
C5 C1 C2 C4 2
1
2 3
3 ケーブルNO.緊張順序
図-3 主桁ケーブル配置および緊張順序
1号橋
P3
桁吊用鋼材
写真-4 桁吊用鋼材位置(P3)
写真-2 緊張装置 2 組による緊張状況
緊張ジャッキ
単胴ウィン チ
逸走防止ワイ ヤー
引き出し方向
写真-3 主桁引き出し装置設置状況