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第2章  床版に用いるアルミニウム合金 

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Academic year: 2022

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第2章  床版に用いるアルミニウム合金 

2.1  はじめに 

アルミニウムは単体としては強度が低いため,マグネシウムや亜鉛などの元素を添加し て合金にすることによって強度を上げる.板材や押出材など展伸材用アルミニウム合金に は1000系から7000系までの7種類がある.これらのアルミニウム合金の主要添加元素を 以下に示す.

(1) 1000系アルミニウム合金(純アルミニウム)

(2) 2000系アルミニウム合金(Al-Cu)

(3) 3000系アルミニウム合金(Al-Mn)

(4) 4000系アルミニウム合金(Al-Si)

(5) 5000系アルミニウム合金(Al-Mg)

(6) 6000系アルミニウム合金(Al-Mg-Si)

(7) 7000系アルミニウム合金(Al-Zn-Mg)

これらのアルミニウム合金のうち,1000系,3000系,4000系,5000系合金は圧延,押 出しおよび引抜きなどの冷間加工によって所定の強度を得る非熱処理合金であり,2000系,

6000系,7000系合金は焼入れや焼もどしなどの熱処理によって所定の強度を得る熱処理合 金である.

構造材として用いられるのは引張強度が高い 2000系,5000 系,6000系および 7000系 合金である.2000系と7000系合金は強度が高く航空機用材料として用いられる.2017合 金はジュラルミン,2024合金は超ジュラルミン,7075合金は超超ジュラルミンとも呼ばれ る.2000系合金は銅を含有するため耐食性に,7000系合金は応力腐食割れ性に劣る.

これらを考慮して,アルミニウム土木構造物の設計指針 1)では,5000 系と 6000 系合金 を使用材料としている.これらの合金のうち5000系合金は変形抵抗が高く押出性に難点が あるため,多くは板材として使用される.押出形材を用いて組立てられるアルミニウム床 版用合金には,耐食性および押出性の面から6000系合金を用いる.

(2)

9 2.2 化学成分と機械的性質 

アルミニウム床版に適用できる 6000 系アルミニウム合金押出形材として A6061S-T6,

A6N01S-T5 および A6N01S-T6 がある.ここで,これらアルミニウム合金の呼称について 説明する2,3).最初の”A”は,JISのアルミニウム合金であることを示す.続く4桁の数字 は合金分類である.第 1位の”6”は,6000系合金であることを示す.第 2位の数字は 0が 基本合金を示し,その他の数字は基本合金の改良あるいは派生合金であることを示す.わ が国で開発され,国際アルミニウム合金に相当する合金を見出せない場合は第2位目の数 字に代えて”N”を記す.第 3,4 位の数字は,第 1,2 位の数字が示す合金の中の識別を示 す.4桁の数字に続けて 1から 3 個の英文字が付けられるが,これは材料の形状や製造法 を示す記号である.上記の呼称の”S”は押出形材であることを示す.これ以外に,”P”がよ く使われるが,これは圧延板であることを示す.

ハイフンに続く”T”は,熱処理による調質を示す識別記号である.”T5”は高温加工から冷 却後に人工時効硬化処理をしたもの,”T6”は高温加工から急冷する容体化処理後に人工時 効硬化処理したものであることを表す.6N01 合金が 2005 年に国際登録され,合金名が 6005Cに変更された.近いJIS規格の見直しでは,6N01は6005Cに合金記号が変更される.

したがって,本論文では6N01合金を6005C合金と呼ぶ.

JIS規格 4)で規定される6061合金および 6005C合金の化学成分を表‑2.1,A6061S-T6,

A6005CS-T5および A6005CS-T6 の機械的性質を表‑2.2 に示す.また,アルミニウム合金 の主要な物理的性質を表‑2.3に示す.

A6061S-T6の機械的性質は,板厚が6mm以下と 6mmを超えるものについて規定されて いるが,A6005CS-T5の機械的性質は板厚が12mm以下,A6005CS-T6のそれは板厚が6mm 以下のものについてだけが規定されている.

アルミニウム床版では,板厚が15mm程度になるので,アルミニウム床版に用いるアル ミニウム合金押出形材として A6061S-T6 を選定した.近い将来,JIS 規格で A6005CS の T5およびT6の板厚規定が厚くなれば,A6005CSのT5やT6もアルミニウム床版に用いる ことができる.6005C合金は新幹線など車両の構体への使用に実績があり,6061合金より 押出性と焼入れ性に優れるため,アルミニウム床版に用いるのに適している.

(3)

10

表‑2.1 6061合金と6005C合金の化学成分のJIS規格値 化学成分    (%)

合金 

番号 Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ti Al

6061 0.40〜

0.8 0.7

以下

0.15〜

0.40 0.15

以下

0.8〜

1.2

0.04〜

0.35 0.25

以下 0.15

以下 残部 6005C 0.40〜

0.9 0.35

以下 0.35

以下 0.50

以下

0.40〜

0.8 0.30

以下

0.25 以下

0.10

以下 残部

表‑2.2 A6061S-T6,A6005CS-T5およびA6005CS-T6の機械的性質の JIS規格値 合金番号 質別 板厚 (mm) 引張強さ

(MPa)

0.2%耐力

(MPa) 伸び (%) 6以下 265以上 245以上 8以上 6061 T6

6を超えるもの 265以上 245以上 10以上 6以下 245以上 205以上 8以上 T5 6を超え12以下 225以上 175以上 8以上 6005C

T6 6以下 265以上 235以上 8以上

表‑2.3 アルミニウム合金の主要な物理的性質 密度  (kg/m3) 2.7×103 ヤング係数  (MPa) 70×103 せん断弾性係数  (MPa) 27×103

ポアソン比 0.3 線膨張係数  (1/K) 24×106

(4)

11 2.3  床版に用いるアルミニウム合金のまとめ 

ア ル ミ ニ ウ ム 床 版 に 用 い る ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 押 出 形 材 と し て , 構 造 用 6000 系 合 金

(Al-Mg-Si)押出形材であるA6061S-T6を選定した.JIS規格でA6005CS-T5およびT6の 板厚規定が厚くなれば,A6061S-T6より押出性と焼入れ性に優れる A6005CS-T5およびT6 もアルミニウム床版への適用が可能になる.

第2章の参考文献 

1) 日本アルミニウム協会:アルミニウム合金土木構造物設計・製作指針案 第1次改訂試 案,土木構造物委員会,1998.

2) 日本アルミニウム協会:アルミニウムハンドブック(第7版),2007.

3) 大倉一郎,萩澤亘保,花崎昌幸:アルミニウム構造学入門,東洋書店,2006.

4) JIS H 4100:アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材,2006.

参照

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