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体育学研究 , 研究資料 競技者における心理的パフォーマンスに対するコレクティブ エフィカシーとその関連要因 荒井 弘和 Hirokazu Arai: Collective e cacy for psychological performance and corr

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Academic year: 2021

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法政大学文学部

〒1028160 東京都千代田区富士見 2171 連絡先 荒井弘和

Faculty of Letters, Hosei University

2171 Fujimi, Chiyoda-ku, Tokyo 1028160, Japan Corresponding author h-arai@hosei.ac.jp

研究資料

競技者における心理的パフォーマンスに対する

コレクティブ・エフィカシーとその関連要因

荒井 弘和

Hirokazu Arai: Collective e‹cacy for psychological performance and correlation factors among Japanese athletes. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci. 56: 229238, June, 2011

AbstractThe present study focused on collective e‹cacy (CE) among Japanese athletes. First, in study I, we prepared a CE scale to gauge psychological performance among 144 university athletes by revising a psychological performance self-e‹cacy scale using principle component analysis. The scale rated CEs for patience, aggressiveness, volition for self-realization, volition for winning, self-control, ability to relax, concentration, conˆdence, strategic planning, cooperation, and total psychological per-formance. The scale's content validity, test-retest reliability, and internal consistency were ensured. In study II, the psychological performance CE scores did not diŠer by gender, and the CE scores for non-regular players were higher than those for non-regular players. Some psychological performance CE scores were related to cooperation a measurement of psychological competitive ability. Study III identiˆed the relationship between psychological performance CE and group size (number of team members), demon-strating that some psychological performance CE prior to games was related to some aspect of psycho-logical performance or athletes' evaluation of game performance. It was concluded that the psychopsycho-logical performance CE scale would be a useful measurement for assessing a team's CE in psychological mance. In the future, this could be a valuable approach for obtaining basic data on psychological perfor-mance CE and for using CE as an indicator of team status for intervention in eŠective team-building. Key wordsteam e‹cacy, collective e‹cacy, team assessment, team building, mental training キーワードチーム・エフィカシー,集合的効力感,チーム評価,チームビルディング,メンタルト レーニング

.

競技スポーツを行う際,選手はチームという集 団に属することが多い.とくに,チームスポーツ では,個人での成功が必ずしもチームとしての勝 利に結びつかないことがある.たとえば,ラグ ビーでは,One for all, all for one(ひとりはみん なのために,みんなはひとりのために)というフ レーズが用いられる.このフレーズに代表される ように,選手は自らが属するチームに影響を与 え,そのチームから自らも影響を受ける. 現在,わが国のスポーツ振興基本計画の柱の 1 つに「国際競技力の向上」が挙げられている(文 部科学省,2006).そのための施策として,ス ポーツ医・科学の活用が強調されている.2008 年に行われた北京オリンピックにおいても,チー ムスポーツ(リレーや団体総合を除く)における わが国のメダル獲得は女子ソフトボールのみであ り,チームスポーツの強化が急務であると考えら れる.そのため,競技場面のチームに関する科学 的研究の実施が期待されている. Bandura(1997)は,「チームにおいて共有さ れる,固有の課題を遂行する能力の認知」をコレ ク テ ィ ブ ・ エ フ ィ カ シ ー ( collective e‹cacy: CE )注1)と し て 提 示 し て い る . Zaccaro et al.

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(1995) によれば,CE とは,「特定状況の要求に 対してうまく提携された反応における資源を配置 し,調整し,統合する時に,個人に共有された集 合的な有能感」である.競技スポーツ場面の研究 を 中 心 と し て , CE 研 究 を 概 観 し た 永 尾 ほ か (2010)によれば,様々な研究領域に共通した CE の定義は「チーム内における集団に対する有 能感に関しての共有された信念」である.

Lochner et al. (1999) によれば,CE は,セル フ・エフィカシー(self-e‹cacy: SE; Bandura, 1977)と同様に,状況固有であり,一般的なも のではない.CE は,集団という要素を扱ってい ることにおいて,「ある結果を生み出すために必 要な行動をどの程度うまく行うことができるかと いう個人の確信の程度」を表す SE とは異なる. CE は,特性的というよりも状態的であり,将来 の達成への要求,資源・計画・方略の活用,目的 の達成に費やす努力,即時に結果を生み出さない 時,強力な対戦相手に遭遇した時においても発揮 される耐久力,および落胆に対する脆弱性に影響 を与える可能性がある(Bandura, 1997).池田 (2009)は,チームワークの心理的側面に関する 概念の 1 つとして CE を挙げており,CE の機能 として,チーム全体として何らかの活動に着手す るための「実行機能」を持っていると指摘してい る.Chaw and Feltz (2008) によれば,CE の特 徴は,1)特定の状況や課題に対するセルフ・エ フィカシーの合同であること,2)集団の成員間 で 共 有 し て い る 信 念 を 表 す こ と , 3 )成 員 の 知 識・能力・技術に対する認識だけでなく,統合さ れた集団の能力に関する評価を含むこと,および 4)行動目標を達成するのに必要な相互依存の程 度に関連することである. ホッケー選手を対象に研究を行った Feltz and Lirgg (1998) は,選手個人の SE はチームのパフ ォーマンスを予測しないが,CE はチームのパフ ォーマンスを予測することや,選手個人の SE は チームの勝敗に影響されないが,CE はチームの 勝 敗 に 影 響 さ れ る こ と を 明 ら か に し て い る . Chaw and Feltz (2008) によれば,実験室内また は実際のスポーツ場面の両方で,CE とチームの パフォーマンスの間には,肯定的な関連が明確に 認められているし,Gully et al. (2002) のメタ分 析では,CE はチームの成果に影響を与えること が示されている.CE 向上の先行要因は SE と異 な る が 類 似 し て い る と い う 指 摘 が あ る 一 方 で (Zaccaro et al., 1995),CE の向上に関連する要 因はほとんど明らかになっていないという指摘も ある(Tasa et al., 2007). わが国にも,CE に関する記述は散見される. 高田(2003)によれば,高い CE を持つと,直 面する問題を解決するために,各メンバーが強い 使命感を持って問題に取り組み,一致団結して良 い成果を出すために協力し合い,困難に対する耐 性を持つ.他には,高木(2002)や藤原(2003) が,CE に関する記述を行っている.最近では, 永尾ほか(2010)が,チームスポーツにおける CE の有効性について言及している.しかしわが 国では,CE の実証的な研究は少なく,競技ス ポーツ場面における CE の研究もほとんど行われ ていない. わが国の競技スポーツ場面において,わずかに 行われている研究として,芹澤ほか(2008)が ある.高校生男子の野球部員を対象として調査を 行ったこの研究では,Short et al. (2005) で用い られている尺度を邦訳して,高校運動部員版集団 効力感尺度を開発している.この尺度は,「能力 発揮(項目例私のチームは,対戦相手よりも高 い技術を発揮することが出来る)」「協力体制(項 目例私のチームは,チームの結束力を高めるこ とが出来る)」「準備態勢(項目例私のチームは, 対戦のための準備をすることが出来る)」の 3 因 子によって構成されている. 競技スポーツ場面における CE 研究を進展させ る た め に は , 芹 澤 ほ か ( 2008 ) が 対 象 と し た 「野球選手」「高校生」「男子」以外の者も対象と して,評価尺度を準備することが求められる.も っといえば,選手に対する心理的サポートを実践 するためにも,評価指標は重要である(石井, 2005).先行研究では,パフォーマンスとの関連 が示唆されている CE であるが,メンタルトレー ニングを行う場合に注目すべきは,競技中の心理

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的な状態である「心理的パフォーマンス(psy-chological performance徳永・橋本,1988橋 本・徳永,2000)」だと考えられる.心理的パフ ォーマンスは,特定の競技に特化していない評価 尺度を用いることができる,自己評価が可能であ る,自己評価の結果を受けてメンタルトレーニン グに移行しやすいという特徴を持つ.米国空軍に おいて研究を行った Hirschfeld and Bernerth (2008) は,CE を心理的な要素と身体的な要素 に分けて評価している.心理的パフォーマンスに ついては,すでに,荒井ほか(2006)が心理的 パフォーマンスに対する SE 尺度を作成してい る.この心理的パフォーマンスに対する見込み感 をチームという集団にも適用して,CE として扱 うことも興味深いと考えられる. ところで,Bandura(2000)によれば,集団が 認知するエフィカシーを測定する主な方法は 2 つある.1 つは,各メンバーがその集団において 実践する特定の機能を達成するための,彼ら自身 の個人的な能力の評価を合計する方法である.も う 1 つの方法は,全体として作用する集団の能 力に対するメンバーの評価を合計する方法であ る.後者は,集団内で機能する協調的で相互作用 的な側面を含む全体的な評価である.アイスホッ ケー選手を対象に研究を行った Feltz and Lirgg (1998) は,CE の総和は,SE の総和よりも,パ フォーマンスを予測することを明らかにしてい る.そのため,CE を個人が自分の属する集団に 対して評価するものとして扱うことを優先的に考 えるべきなのかもしれない.また,スポーツ場面 における CE に関する研究のほとんどは,チーム の構成員が,自らが所属するチーム全体に対して 持っている感覚をたずねる方法を採用している (Feltz et al., 2008). 以上のことから,本研究では,わが国の競技者 を対象として,心理的パフォーマンスに対する CE(心理的パフォーマンス CE)を評価し,そ の関連要因を包括的に検討する.具体的には,ま ず,本研究で用いる心理的パフォーマンス CE を 測定する尺度を準備する(研究).その後,心 理的パフォーマンス CE と選手の属性や協調性と の関連を明らかにし(研究),さらに,先行研 究(ハガー・ハヅィザランティス,2007)の指 摘に基づいて,インターネット調査によって,対 象者が所属する部の人数と心理的パフォーマンス CE との関連を検討する(研究).これらの研 究を通じて,わが国の競技者における心理的パフ ォーマンス CE の基礎資料を得ることを目指す.

.

研究では,試合前における心理的パフォーマ ンス CE を測定する尺度を準備し,さらにその尺 度の信頼性・妥当性を検討する.研究では,横 断的調査と再検査の 2 つの調査を実施する. . 方 法 .. 対象者と調査の手続き 横断的調査では,6 つの大学から招集され,調 査用紙において極端な欠損,または CE 項目にお いて欠損が認められなかった大学生の競技スポー ツ選手144名を対象とした.対象者は全員,体育 会の運動部に所属しており,調査は部ごとに実施 した.競技種目は,サッカー,バレーボール,硬 式野球,準硬式野球,またはハンドボールのいず れかであった.調査用紙のカバーシートに研究の 趣旨を記述し,回答した内容の秘密性は保持され ること,研究参加の任意性について十分に説明し た上で,同意の有無は調査用紙に記名をする行為 によって確認することを明記して,調査を実施し た.回答された調査用紙は,他の者の目に触れな いように,調査用紙と同時に配布した封筒に用紙 を入れて,厳封の上回収した.再検査信頼性の検 討は,16日間(約 2 週間)の間隔をあけて,対 象者の一部である大学生女子選手20名(19.50± 0.83 歳 ) を 対 象 と し て 行 っ た . 調 査 時 期 は , 2005年 2 月―2006年 3 月であった. .. 評価尺度  対象者の属性 年齢,性別,チーム内での地位(レギュラー・ 準レギュラー・非レギュラーの 3 つから選択) について質問した.

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Table 1 Items of psychological performance CE scale, mean scores, and result of principle component analysis 項 目 測定内容 平均得点 標準偏差 負荷量 1 最後まであきらめずに,がんばることができる 忍耐力 CE 77.29 17.39 .77 2 闘争心(闘志)を持って,試合をすることができる 闘争心 CE 78.68 16.69 .77 3 自分の目標を達成するという気持ちを持って,試合をする ことができる 自己実現意欲 CE 79.65 15.71 .79 4 勝つという意欲を持って,試合をすることができる 勝利意欲 CE 83.40 16.90 .77 5 自分を見失うことなく,試合をすることができる 自己コントロール能力 CE 63.61 17.49 .72 6 緊張しすぎることなく,試合をすることができる リラックス能力 CE 65.76 18.00 .58 7 集中力を持って,試合をすることができる 集中力 CE 68.82 17.16 .78 8 自信を持って,試合をすることができる 自信 CE 66.46 18.11 .79 9 作戦や状況判断を,うまく行うことができる 作戦能力 CE 64.03 17.71 .72 10 試合中や試合の合間に,仲間と励ましあったり,協力する ことができる 協調性 CE 80.63 18.10 .69  心理的パフォーマンス CE 徳永(1999)が開発した試合中の心理状態診 断検査(Diagnostic Inventory of Psychological State During Competition: DIPSD.2)の10項目 を元にして作成された心理的パフォーマンス SE 尺度(荒井ほか,2006)の項目を用い,教示を 「あなた自身」から「あなたのチーム全体」に変 更することで,心理的パフォーマンス CE の評価 を行うことを目指した.ボート選手を対象にして CE の研究を行った Magyar et al. (2004) も,「あ なたは」という教示を「あなたのクルーは」とい う教示を併用することによって,22項目中12の 項目で測定内容を同一にして研究を行っている. 心理的パフォーマンス CE 尺度の教示は,「試合 中のあなたのチーム全体について,右欄の数字か らあなたの考えに最も当てはまる数字 1 つに○ 印をつけてください」とした.回答においては, 0 から100までの数字を11段階で選ばせる形式を 採用した.回答欄には,「完全にできないと思う 0」「どちらともいえない50」「完全にできると 思う100」という表記を付加した. .. 分析 心理的パフォーマンス CE 尺度の構造は,主成 分分析を用いて検討した.つづいて,尺度の信頼 性を確認するために,a 係数を算出して内的整合 性を検討し,検査再検査間の相関係数(Pear-son)を算出することで,安定性を検討した. . 結果と考察 .. 対象者の属性と心理的パフォーマンス CE 尺度の平均得点 平均年齢は19.63±1.14歳,男子が46名,女子 が98名であり,チーム内での地位については, データが欠損していた 2 名を除き,レギュラー 47名,準レギュラー24名,非レギュラーが71名 であった.各項目の得点は Table 1 に示すとおり であり,心理的パフォーマンス CE 得点(10項目 の平均得点)は72.83±12.77点であった. .. 心理的パフォーマンス CE 尺度の構造 心理的パフォーマンス CE 尺度の各項目の得点 (素点)を用いて,主成分分析を行った結果を Table 1 に示す.その結果,心理的パフォーマン ス CE 尺度は 1 因子構造(寄与率54.85)であ ると判断された. .. 心理的パフォーマンス CE 尺度の信頼 性・妥当性 心理的パフォーマンス CE 尺度の a 係数は .91 であり,尺度の内的整合性が確認された.また, 検査再検査の関連を検討した結果,r=.79(p <.001)という相関係数が得られ,尺度の安定性 が確認された.心理的パフォーマンス CE 尺度 は,先行研究で開発されている尺度(DIPSD.2 および心理的パフォーマンス SE 尺度)を基にし ているため,内容的妥当性は確保されていると考 えられる.信頼性も 2 つの側面から確認されて

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おり,本研究で用いる心理的パフォーマンス CE 尺度は,CE を測定する尺度としての要件を満た しているといえる.

.

研究では,研究で準備された心理的パフ ォーマンス CE 尺度と,選手の属性および心理的 競技能力の 1 つである協調性との関連を明らか にする.本研究では,選手の属性として,性別, 学年,またはチーム内での地位(レギュラー・準 レギュラー・非レギュラー)の 3 つを取り上げ て検討を行う.協調性を取り上げたのは,協調性 がチームワーク,チームのメンバーとの関係性, およびチームに対する考え方などを評価する指標 であり,「チーム内における集団に対する有能感 に関しての共有された信念(永尾ほか,2010)」 を評価する CE との関連が想定できるためである. . 方 法 .. 対象者と調査の手続き 大学生競技スポーツ選手144名を対象とした (研究の横断的調査の対象者と同一である).調 査の手続きは,研究と同一である. .. 評価尺度  対象者の属性 年齢,性別,学年,およびチーム内での地位に ついて質問した.  心理的パフォーマンス CE 研究で準備された,10項目から構成される 尺度を用いた.  協調性 心理的競技能力を測定する評価尺度である心理 的競技能力診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological-Competitive Ability for Athletes: DIPCA.3徳永・橋本,2000)を用い,その下 位尺度の 1 つである,「協調性」得点を協調性の 指標として使用した. .. 分析 心理的パフォーマンス CE を従属変数として, 性別またはチーム内での地位を独立変数とする場 合は,独立したサンプルの t 検定を行い,学年を 独立変数とする場合は,一要因の分散分析を行っ た.分散分析を行って,有意な F 値が得られた 場合は,多重比較(Tukey HSD)を行った.な お,チーム内での地位の分析では,準レギュラー 群の数が24名と比較的少なかったために,レギ ュラー群(47名)と準レギュラー群をあわせて 分析を行った.学年の分析では,4 年次生が16名 と比較的少なかったために,3 年次生(30名)と 4 年次生をあわせて分析を行った.心理的パフ ォ ー マ ン ス CE と DIPCA.3 の 協 調 性 と の 関 連 は,相関係数(Pearson)を算出することで検討 した. . 結果と考察 .. 心理的パフォーマンス CE と選手の属 性との関連 各属性による心理的パフォーマンス CE 得点を Table 2 に示す.性による比較では,男子選手と 女子選手との間に,差は認められなかった.学年 間で差が認められたのは協調性 CE のみであり, 1 年次生よりも 3・4 年次生の得点が高かった. これは,学年が上がるにつれて,チームで重要な 試合に臨んだり,チームで協力して困難な局面を 打開しようとしたりする経験を積んでいるためで あると考えられる.チーム内での地位による比較 では,レギュラー・準レギュラー選手と比較し て,非レギュラー選手の方が,「自己実現意欲 CE」「勝利意欲 CE」「心理的パフォーマンス CE」 において高い得点を示していた.非レギュラー選 手の方が,レギュラー・準レギュラー選手よりも 心理的パフォーマンス CE を高く評価していたの は,自身の心理的パフォーマンス(心理的パフ ォーマンス SE)を低いと認知している場合,周 囲の選手を含めた心理的パフォーマンス(心理的 パフォーマンス CE)を相対的に高く見積もって いるのかもしれない.今後は,対象者数を増し て,属性の変数を包括的に扱った分析を行うこと も期待される(たとえば,学年とチーム内での地 位を独立変数として設定した 2 要因の分散分析 など).

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Ta bl e 2 Re la ti o n sh ip be tw e e n p syc h o lo g ica l pe rf o rm a nce C E a nd d e mo g ra p hic d a ta 性別 学年 チーム内での地 位 男子 ( 46 名 ) 女子 (98 名 ) t 値 1 年次生 (44 名 ) 2 年次生 (54 名 ) 3 ・ 4 年次生 ( 46 名 ) F 値 Tu k e y 's HS D レギュラー・ 準レギュラー ( 71 名 ) 非レギュ ラー ( 71 名 ) t 値 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準 偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標 準偏差 平均 標準偏差 忍耐力 C E 77. 17 19. 51 77. 35 16 .4 1 .06 75. 2 3 16. 49 7 7 .7 8 17. 98 78. 70 17. 71 0 .48 75. 2 1 16. 64 79. 15 18. 19 1. 35 闘争心 C E 80. 22 19. 38 77. 96 15 .3 3 .76 76. 3 6 17. 93 8 0 .0 0 16. 02 79. 35 16. 38 0 .63 76. 3 4 16. 41 80. 85 16. 97 1. 61 自己実 現意欲 C E 77. 83 18. 37 80. 51 14 .3 1 .96 79. 3 2 15. 16 7 9 .0 7 16. 05 80. 65 16. 11 0 .14 75. 7 7 14. 99 83. 24 15. 65 2. 90   勝利意 欲 C E 80. 22 21. 03 84. 90 14 .4 5 1 .5 6 82. 5 0 18. 19 8 4 .8 1 16. 22 82. 61 16. 66 0 .30 80. 2 8 16. 65 86. 20 16. 85 2. 10  自己コ ントロール能力 C E 61. 30 19. 16 64. 69 16 .6 4 1 .0 9 61. 5 9 19. 28 6 4 .2 6 17. 55 64. 78 15. 74 0 .43 62. 1 1 16. 55 64. 79 18. 51 0. 91 リラッ クス能力 C E 61. 52 18. 62 67. 76 17 .4 4 1 .9 6 68. 1 8 18. 96 6 3 .8 9 18. 16 65. 65 16. 95 0 .69 64. 5 1 18. 27 66. 76 17. 95 0. 74 集中力 C E 66. 09 18. 07 70. 10 16 .6 5 1 .3 1 69. 7 7 16. 35 6 6 .4 8 18. 34 70. 65 16. 52 0 .83 66. 9 0 18. 72 70. 42 15. 53 1. 22 自信 C E 63. 04 21. 79 68. 06 15 .9 7 1 .5 6 69. 0 9 17. 76 6 5 .5 6 18. 29 65. 00 18. 35 0 .68 63. 3 8 18. 59 69. 30 17. 43 1. 96 作戦能 力 C E 62. 61 18. 67 64. 69 17 .3 0 .66 66. 8 2 19. 97 6 3 .1 5 17. 36 62. 39 15. 80 0 .81 60. 9 9 18. 61 66. 76 16. 54 1. 95 協調性 C E 81. 09 19. 91 80. 41 17 .2 9 .21 74. 3 2 18. 85 8 2 .5 9 18. 03 84. 35 16. 15 4 .14    1 < 3 ・ 4 7 9. 86 18. 32 80. 99 18. 06 0. 37 心理的 パフォーマンス CE ( 10 項目の平均得点) 71. 11 15. 06 73. 64 11 .5 5 1 .1 1 72. 3 2 13. 46 7 2 .7 6 12. 83 73. 41 12. 28 0 .08 70. 5 4 13. 00 74. 85 12. 31 2. 03  (チ ーム 内での 地位 につい ては , 2 名 分 の データ が欠 損して いた ため, 合計 人数が 14 2 名とな って いる)  p< .0 5 ,   p< .01,    p< .0 0

1 Table 3 Correlation coe‹cient between psychological performance CE and Cooperation

協調性 心理的 パフォー マンス CE 尺度 忍耐力 CE .21 闘争心 CE .30 自己実現意欲 CE .23 勝利意欲 CE .25 自己コントロール能力 CE .13 リラックス能力 CE .12 集中力 CE .09 自信 CE .03 作戦能力 CE .06 協調性 CE .39 心理的パフォーマンス CE (10項目の平均得点) .24 p<.05, p<.01, p<.001 .. 心理的パフォーマンス CE と協調性と の関連 Table 3 に示すように,いくつかの CE との間 に関連が認められた.興味深いのは,協調性 CE や10項目の平均得点である心理的パフォーマン ス CE だけでなく,忍耐力 CE,闘争心 CE,自 己実現意欲 CE,および勝利意欲 CE という,競 技意欲に関連する CE との間に関連が認められた ことである.横断的なデータのため,因果関係に ついて断定することはできないが,このことは, 自らのチームのメンバーが高い競技意欲を持ちな がら競技することができると感じられるようにな ると,チームワーク,チームのメンバーとの関係 性,およびチームに対する考え方などの協調性も 好ましくなる可能性があるという点で,興味深い 知見を提供しているかもしれない.

.

研究では,CE と集団のサイズとの関連が解 明されていないというハガー・ハヅィザランティ ス(2007)の指摘や,スポーツにおけるチーム サイズと CE との関連は,先行研究の結果が一致 していないという Chaw and Feltz (2008) の指摘 に基づいて,対象者が所属している集団のサイズ (部に所属している者の人数)と心理的パフォー

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Table 4 Correlation coe‹cient between psychological performance CE and group size (number of team members) 集団の サイズ 心理的 パフォー マンス CE 尺度 忍耐力 CE .17 闘争心 CE .18 自己実現意欲 CE .17 勝利意欲 CE .19 自己コントロール能力 CE .14 リラックス能力 CE .12 集中力 CE .22 自信 CE .20 作戦能力 CE .21 協調性 CE .17 心理的パフォーマンス CE (10項目の平均得点) .21 p<.05, p<.01, p<.001 マンス CE との関連を検討する. . 方 法 .. 対象者と調査の手続き 研究では,集団のサイズが多様になることを 意図して,社会調査会社の登録モニター(調査実 施時点で約170万人)を対象としたインターネッ ト調査を実施した.本研究では,1)大学または 短期大学に所属している,2)大学または短期大 学で体育会の運動部に所属している競技者という 抽出条件を設定し,モニターの個人用ページに調 査の案内を掲載した.調査時期は,2010年 1―2 月であった. 調査実施にあたっては,研究の背景と目的,研 究実施方法,問い合わせ先,研究参加の任意性, 個人情報の取り扱い(プライバシーの厳守),お よび研究が公表されることなどを説明した上で, 同意を得られる場合のみ,調査に参加するよう依 頼した. インターネットによる調査に回答した場合,社 会調査会社のポイントが贈呈された.回答者が 300名に達した時点で,調査を終了した.回答者 の中に,年齢が25歳以上の者,5 年次以上の学年 の者,選手ではなくマネージャーを担当している 者,競技の名称が不明瞭な者が含まれていたが, その者は対象者から除外した. 以上の過程を経た結果,本研究の対象者は,大 学または短期大学 1―4 年次生で,運動部に所属 しているスポーツ選手252名となった. .. 評価尺度  対象者の属性 年齢,性別,および学年について質問した.  心理的パフォーマンス CE 10 項 目 か ら 構 成 さ れ る 尺 度 を 用 い た . 教 示 は,「試合中のあなたのチーム全体について,右 欄の数字からあなたの考えに最も当てはまる数字 1 つに○印をつけてください」であった.  集団のサイズ 対象者が所属している部全体の人数(指導者や マネージャーも含む)をたずねた. .. 分析 心理的パフォーマンス CE と集団のサイズとの 関連は,相関係数(Pearson)を算出することで 検討した. . 結果と考察 .. 対象者の属性と心理的パフォーマンス CE 尺度の平均得点 平均年齢は21.27±1.43歳,男子は162名で女子 は90名であり,学年の内訳は,1 年次が38名,2 年次が72名,3 年次が58名,4 年次が84名であっ た.心理的パフォーマンス CE 得点(10項目の平 均得点)は64.85±17.91点であった.集団のサイ ズの平均は,33.65±32.71人であった. .. 心理的パフォーマンス CE と集団のサ イズとの関連 Table 4 に示すように,ほとんどの心理的パフ ォーマンス CE は,集団のサイズと関連してい た.しかし,相関係数に鑑みて,両者の関連は強 いとはいえないと考えられるため,さらに詳細な 検討が期待される.たとえば,Chaw and Feltz (2008) が指摘しているように,種目の特性など が関連している可能性も考えられる.

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.

総 合 論 議

競技スポーツ場面における心理的パフォーマン ス CE に注目した本研究では,心理的パフォーマ ンス CE を評価し,3 つの研究によって,心理的 パフォーマンス CE の関連要因を包括的に検討し た.研究では,競技中の心理的パフォーマンス CE 尺度を準備した.研究では,心理的パフ ォーマンス CE と選手の属性との関連が検討され たことに加えて,競技意欲に関連する CE が協調 性因子(DIPCA.3)と関連するという知見も示 された.研究では,心理的パフォーマンス CE が集団のサイズと関連することが明らかになった. 本研究では,3 つの研究を通して,CE の関連 要因として,学年,チーム内での地位,協調性, 集団のサイズが示唆された.このことに,本研究 の意義があると考えられる. CE と同じ効力感であり,個人の感覚に焦点を 当てている SE の特徴の 1 つは,SE を改善・増 強させる 4 つの情報源(遂行行動の達成,代理 的 経 験 , 言 語 的 説 得 , 情 動 的 喚 起  Bandura, 1977)が明確に規定されている点である.した がって,これらの情報源から SE を高める働きか け(トレーニング)を行うことで SE が高まり, その結果として,試合中のパフォーマンスが改善 される可能性がある.Bandura(1997)は,CE も SE と同様の方法で操作することができると述 べている.しかし,CE の関連要因は,SE の関 連要因と異なるということを示唆している研究も ある(Chen and Bliese, 2002).もっといえば, CE の向上に関連する要因はほとんど明らかにな っ て い な い と い う 指 摘 も あ る ( Tasa et al., 2007).今後は,競技や年代を限定して,CE に 関連する要因を検討することが期待される. 心理的パフォーマンス CE の特徴は 3 つあると 考えられる.それらは,1)チームのメンバーの 主観を通してチーム状態を評価できる,2)通常 の練習時から試合直前まで幅広い期間でチーム状 態を評価できる,3)パフォーマンスに関連させ てチーム状態を評価できることである.また, チームに所属しているのは選手だけとは限らな い.監督,各種コーチ,およびスタッフ(マネー ジャーなど)が所属している場合も多い.本研究 で扱ったチームの心理的パフォーマンス CE のよ うに,チーム全体を資源と考えて,チームの評価 を行う視点は実際的であり,有意義であると考え られる. 本研究にはいくつかの制約がある.研究・ で得られた結果は横断的な調査による結果であ り,心理的パフォーマンス CE と関連要因との因 果関係については言及することができない.康永 ほか(2006)が指摘しているように,研究で 行ったインターネット調査には,調査者と回答者 双方の利便性が高いことや,データ回収が迅速で あるなどの利点があるが,モニター登録という有 意抽出法であるために,標本誤差が生じてしまう という限界も認識しておくべきであろう. ハガー・ハヅィザランティス(2007)は,CE がスポーツチームのパフォーマンスを規定するメ カニズムや,スポーツ場面での CE を規定したり 誘発したりする心理的プロセスが検討され始めて いることを示唆している.これらの検討を行うこ とで,わが国におけるスポーツ場面の CE 研究が 発展するだけでなく,Gully et al. (2002) が述べ ているように,より良いチームづくりを行うため の介入方法(チームビルディング)の実践を行う ことができる.

.

本研究では,心理的パフォーマンス CE を評価 する尺度が準備され,その尺度を用いて,学年, チーム内での地位,協調性,集団のサイズが, CE と関連することが示唆された.今後は,CE の関連要因に関する基礎的なデータの蓄積と, CE を指標としたチームビルディングの実践が期 待される. 謝辞 本研究は,平成21―22年度文部科学省科学研 究費若手研究(B)「競技者を対象としたコレク

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ティブ・エフィカシー増強プログラムの開発」か ら援助を受けました.また,本研究を行うにあた り,多くの競技者の方々に調査へのご協力をいた だきました.皆様に記して感謝の意を表します. 注 注 1 ) 本 研 究 で は , チ ー ム ・ エ フ ィ カ シ ー ( team-e‹cacy)も,CE と同義と考え,先行研究を引用し ている. 文 献 荒井弘和・大場ゆかり・岡 浩一朗(2006)大学生競 技者における心理的パフォーマンスに対するセル フ・エフィカシー.体育測定評価研究.6: 3138. Bandura, A. (1977) Self-e‹cacy: Toward a unifying

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平成22年 8 月23日受付 平成23年 1 月18日受理

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Advance Publication by J-STAGE Published online 2011/2/10

Table 1 Items of psychological performance CE scale, mean scores, and result of principle component analysis 項 目 測定内容 平均 得点 標準偏差 負荷量 1 最後まであきらめずに,がんばることができる 忍耐力 CE 77.29 17.39 .77 2 闘争心(闘志)を持って,試合をすることができる 闘争心 CE 78.68 16.69 .77 3 自分の目標を達成するという気持ちを持って,試合をす
Table 4 Correlation coe‹cient between psychological performance CE and group size (number of team members) 集団の サイズ 心理的 パフォー マンス CE 尺度 忍耐力 CE .17闘争心 CE.18自己実現意欲 CE.17勝利意欲 CE.19自己コントロール能力 CE.14リラックス能力 CE.12集中力 CE.22  自信 CE .20 作戦能力 CE .21 協調

参照

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