はじめに
2 1 世 紀 は 生 命 科 学 ( ラ イ フ サ イ エ ン ス ) の 時 代 と も い わ れ て お り 、 近 年 の ラ イ フ サ イ エ ン ス 研 究 の 発 展 に は 目 覚 ま し い も の が あ り ま す 。 我 が 国 に お い て も 2 0 0 7 年 の i P S 細 胞 の 作 製 法 発 ⾒ な ど 、 画 期 的 な 研 究 成 果 が 次 々 と 誕 生 し て い ま す 。 ま た 、 2 0 1 4 年 に は 、 「 薬 事 法 」 が 「 医 薬 品 医 療 機 器 等 法 」 と し て 大 幅 に 改 正 さ れ 、 再 生 医 療 に つ い て の 新 法 「 再 生 医 療 等 安 全 性 確 保 法 」 が 成 ⽴ す る な ど 、 ラ イ フ サ イ エ ン ス 分 野 に お け る 新 産 業 ・ 新 製 品 創 出 の た め の 環 境 整 備 が な さ れ て い ま す 。 こ の よ う な 中 、 創 薬 、 創 薬 ⽀ 援 、 再 生 医 療 、 機 能 性 ⾷ 品 な ど の 「 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 」 に お い て は 、 大 学 の 研 究 者 に よ る 新 た な ビ ジ ネ ス の 創 出 や 、 異 業 種 か ら バ イ オ サ イ エ ン ス 技 術 へ の 新 た な ビ ジ ネ ス 展 開 が 進 む 一 方 で 、 タ ー ゲ ッ ト と す る 事 業 分 野 に よ っ て は 、 事 業 期 間 の ⻑ 期 化 や 多 額 の コ ス ト を 必 要 と す る ケ ー ス も 少 な く あ り ま せ ん 。 バ イ オ サ イ エ ン ス 技 術 を 活 用 し た ビ ジ ネ ス を 進 め る 上 で は 事 業 戦 略 が 非 常 に 重 要 で あ る と 共 に 、 事 業 化 の 相 談 を 受 け る 士 業 や 公 的 機 関 の コ ー デ ィ ネ ー タ な ど の ⽀ 援 者 の 役 割 は 、 今 後 益 々 重 要 と な っ て く る こ と が 考 え ら れ ま す 。 そ こ で こ の 度 、 新 た に 事 業 を 展 開 し た い と 考 え て い る 研 究 者 ・ 事 業 者 や 、 そ れ ら を サ ポ ー ト す る ⽀ 援 者 に 対 し て 、 こ の 分 野 で の ビ ジ ネ ス を 始 め る 際 の ビ ジ ネ ス プ ラ ン ( 事 業 戦 略 ) 策 定 の た め に 参 考 に な る 情 報 を と り ま と め ま し た 。 第 1 章 で は 、 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 に お け る ベ ン チ ャ ー ビ ジ ネ ス の 特 徴 な ど を 説 明 し 、 第 2 章 で は 、 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で の ビ ジ ネ ス プ ラ ン 策 定 の た め の 主 な ポ イ ン ト に つ い て 、 知 財 面 、 法 務 面 、 事 業 面 に 分 け て 説 明 し ま す 。 第 3 章 で は 、 弁 護 士 ・ 弁 理 士 ・ 公 認 会 計 士 の 三 士 業 で 構 成 さ れ た 専 門 家 ⽀ 援 チ ー ム が 実 際 に 大 学 の 技 術 シ ー ズ の 事 業 化 ⽀ 援 を ⾏ っ た 事 例 を 紹 介 し 、 第 4 章 で は 、 事 業 化 に 役 ⽴ つ 相 談 窓 口 な ど の 各 種 情 報 を と り ま と め ま し た 。 本 冊 ⼦ に よ り 、 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の ビ ジ ネ ス へ の 理 解 を 深 め 、 更 に そ れ が 近 い 将 来 の バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 に お け る 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 事 業 化 促 進 に 繋 が る こ と に な れ ば 幸 い で す 。 平 成 2 7 年 2 月 近 畿 経 済 産 業 局 バ イ オ ・ 医 療 機 器 技 術 振 興 課目次
は じ め に 第 1 章 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の ビ ジ ネ ス ( 1 ) バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の ビ ジ ネ ス 環 境 の 動 向 . . . - 1 - ( 2 ) 国 内 バ イ オ ベ ン チ ャ ー の 動 向 . . . - 2 - ( 3 ) バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の ビ ジ ネ ス の 特 徴 . . . - 3 - ( 4 ) バ イ オ ベ ン チ ャ ー の 例 . . . - 4 - 第 2 章 ビ ジ ネ ス プ ラ ン 策 定 の 主 な ポ イ ン ト ( 1 ) 総 論 . . . - 5 - ( 2 ) 知 財 面 の ポ イ ン ト . . . - 7 - ( a ) 知 財 と は ︖ 特 許 と は ︖ . . . - 7 - ( b ) い か に し て 特 許 を 取 得 す る か ︖ . . . - 8 - ( c ) 外 国 へ の 出 願 . . . - 1 2 - ( d ) 特 許 に か か る 費 用 は ︖ . . . - 1 4 - ( e ) 知 財 を ど う 活 用 す る ︖ . . . - 1 4 - ( f ) 侵 害 調 査 . . . - 1 5 - ( 3 ) 法 務 面 の ポ イ ン ト . . . - 1 6 - ( a ) 技 術 移 転 ( ラ イ セ ン ス ア ウ ト ) に 向 け た 準 備 . . . - 1 6 - ( b ) 研 究 者 が バ イ オ ベ ン チ ャ ー を ⽴ ち 上 げ る と き . . . - 1 9 - ( c ) 中 小 企 業 が 産 学 連 携 を 始 め る と き . . . - 2 1 - ( 4 ) 事 業 面 の ポ イ ン ト . . . - 2 4 - ( a ) ヒ ト ( 経 営 者 、 研 究 開 発 要 員 、 経 理 ・ 財 務 要 員 ) . . . - 2 4 - ( b ) モ ノ ( 特 許 、 実 験 室 ( ウ ェ ッ ト ラ ボ ) 、 機 器 設 備 ) . . . - 2 5 - ( c ) カ ネ ( 資 ⾦ 調 達 、 収 ⽀ 予 測 ) . . . - 2 6 - ( d ) 情 報 ( 市 場 調 査 に よ る ニ ー ズ の 把 握 ) . . . - 2 9 - ( e ) 事 業 計 画 と し て ま と め る . . . - 3 0 - 第 3 章 ビ ジ ネ ス プ ラ ン の 策 定 事 例 ○ 近 畿 バ イ オ イ ン ダ ス ト リ ー 振 興 会 議 の 取 り 組 み . . . - 3 1 - ○ 関 ⻄ バ イ オ ビ ジ ネ ス 研 究 会 の 取 り 組 み . . . - 3 1 - 【 事 例 1 】 熱 応 答 性 磁 性 ナ ノ 粒 ⼦ の 事 業 化 . . . - 3 3 - 【 事 例 2 】 人 工 核 酸 B N A を 利 用 す る 遺 伝 ⼦ 検 査 診 断 法 の 事 業 化 . . . - 3 4 - 【 事 例 3 】 緑 茶 カ テ キ ン 誘 導 体 を 用 い た 感 染 症 対 策 部 材 の 事 業 化 . . . - 3 5 - 【 事 例 4 】 新 形 質 米 を 用 い た 生 活 習 慣 病 予 防 ⾷ 品 の 事 業 化 . . . - 3 6 - 【 事 例 5 】 ア ン チ エ イ ジ ン グ 効 果 の あ る シ ョ ー ト ペ プ チ ド の 事 業 化 . . . . - 3 7 - 第 4 章 各 種 問 合 せ 先 ( 1 ) 相 談 窓 口 . . . - 3 8 - ( 2 ) 情 報 収 集 . . . - 4 0 - ( 3 ) 補 助 ⾦ ・ 助 成 ⾦ . . . - 4 2 - ( 4 ) 融 資 ・ 投 資 . . . - 4 3 - ( 5 ) イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン 施 設 ・ レ ン タ ル ラ ボ 施 設 . . . - 4 4 -【 想 定 す る 主 な 読 者 】 本 冊 ⼦ で は 、 創 薬 、 創 薬 ⽀ 援 、 再 生 医 療 、 機 能 性 ⾷ 品 、 化 粧 品 等 の 「 バ イ オ サ イ エ ン ス 」 に 基 づ い た 「 事 業 」 に つ い て 、 一 方 に は 詳 し い が 他 方 に は 馴 染 み の な い よ う な 下 記 の 方 を 主 な 読 者 と し て 想 定 し て い ま す 。 ① バ イ オ サ イ エ ン ス 研 究 の プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル で は あ る が ビ ジ ネ ス の 経 験 は な い 大 学 や 公 的 研 究 機 関 等 の 研 究 者 ② バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で の 新 規 事 業 を 考 え て い る 他 分 野 の 中 小 企 業 経 営 者 ③ 上 記 研 究 者 や 経 営 者 等 か ら バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で の 新 規 事 業 の 相 談 を 受 け る 士 業 や 公 的 機 関 の コ ー デ ィ ネ ー タ 等 の ⽀ 援 者
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第 1 章 バイオサイエンス分野のビジネス
(1)バイオサイエンス分野のビジネス環境の動向
バ イ オ サ イ エ ン ス の 研 究 成 果 は 、 医 療 や ⾷ 料 な ど 人 類 が 直 面 す る 様 々 な 課 題 の 解 決 に 役 ⽴ つ 可 能 性 が あ り 、 熱 い 期 待 が 寄 せ ら れ て い ま す 。 ま た 、 近 年 の バ イ オ サ イ エ ン ス の 発 展 に は 目 覚 ま し い も の が あ り 、 日 本 で も 山 中 伸 弥 教 授 に よ る i P S 細 胞 の 作 製 法 発 ⾒ な ど 画 期 的 な 研 究 成 果 が 次 々 と 誕 生 し て い ま す 。 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の 産 業 は 、 グ ロ ー バ ル 市 場 で 拡 大 が 期 待 で き る 有 望 産 業 と し て 、 国 に よ る ビ ジ ネ ス 環 境 の 整 備 等 が 着 々 と 進 め ら れ て き ま し た 。 1 9 9 9 年 に は 「 産 業 活 ⼒ 再 生 特 別 措 置 法 」 ( 通 称 ︓ 日 本 版 バ イ ・ ド ー ル ) が 施 ⾏ さ れ 、 米 国 と 同 様 に 公 的 資 ⾦ に よ る 研 究 成 果 で あ る 知 的 財 産 権 を 大 学 に 帰 属 さ せ る こ と が 可 能 と な り 、 大 学 か ら の 最 先 端 の 技 術 の 移 転 が 促 進 さ れ ま し た 。 2 0 0 1 年 に は 経 済 産 業 省 よ り 大 学 発 ベ ン チ ャ ー 1 0 0 0 社 計 画 が 発 表 さ れ 、 ベ ン チ ャ ー 設 ⽴ の 機 運 が 高 ま り 、 日 本 で も 多 数 の バ イ オ ベ ン チ ャ ー が 誕 生 し ま し た 。 そ の 後 も 政 府 と し て 「 ⾰ 新 的 医 薬 品 ・ 医 療 機 器 創 出 の た め の 5 か 年 戦 略 」 ( 2 0 0 7 年 ) や 「 新 成 ⻑ 戦 略 」 に お け る 「 ラ イ フ ・ イ ノ ベ ー シ ョ ン に よ る 健 康 大 国 戦 略 」 ( 2 0 1 0 年 ) 、 「 医 療 イ ノ ベ ー シ ョ ン 5 か 年 戦 略 」 ( 2 0 1 2 年 ) 、 「 健 康 ・ 医 療 戦 略 」 ( 2 0 1 4 年 ) 等 、 ラ イ フ サ イ エ ン ス 産 業 の ⽀ 援 や バ イ オ ベ ン チ ャ ー の 育 成 等 が 政 策 の 重 点 項 目 と し て 継 続 的 に 取 り 上 げ ら れ て い ま す 。 2 0 1 4 年 に は 薬 事 法 が 改 正 さ れ 「 医 薬 品 医 療 機 器 等 法 」 と な る と と も に 、 新 た に 「 再 生 医 療 等 安 全 性 確 保 法 」 が 施 ⾏ さ れ る 等 、 法 規 制 の ⾒ 直 し も 進 ん で い ま す 。 2 0 1 5 年 4 月 に は 日 本 の 医 療 分 野 の 研 究 開 発 の 司 令 塔 と な る 「 ( 独 ) 日 本 医 療 研 究 開 発 機 構 ( A M E D ) 」 の 設 ⽴ や 、 ( 独 ) 医 薬 基 盤 研 究 所 と ( 独 ) 国 ⽴ 健 康 ・ 栄 養 研 究 所 の 統 合 に よ る 「 国 ⽴ 研 究 開 発 法 人 医 薬 基 盤 ・ 健 康 ・ 栄 養 研 究 所 」 の 発 足 等 、 組 織 再 編 の 動 き も ⾒ ら れ ま す 。 産 業 界 に お い て も 、 近 年 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン の 動 き が 欧 米 を 発 端 に 世 界 中 に 広 が っ て お り 、 バ イ オ ベ ン チ ャ ー へ の 注 目 度 も 高 ま っ て い ま す 。 例 え ば 医 薬 品 開 発 の 現 場 で は 、 創 薬 タ ー ゲ ッ ト の 枯 渇 や 臨 床 試 験 の 成 功 率 低 下 等 の 問 題 が 生 じ て お り 、 莫 大 な 時 間 と 開 発 費 を か け て も 以 前 ほ ど に は 新 薬 が 出 に く い 状 況 で す 。 そ の た め 製 薬 企 業 は 自 社 技 術 に 固 執 せ ず 、 有 望 な 創 薬 シ ー ズ や 研 究 ツ ー ル を 世 界 中 の バ イ オ ベ ン チ ャ ー 等 の 中 か ら 探 し 出 し 、 そ れ を 取 り 込 む こ と が 一 般 的 に な り ま し た 。 こ の よ う に バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で の ビ ジ ネ ス を 巡 る 環 境 の 変 化 や 後 押 し す る 動- 2 - き が 多 方 面 で み ら れ 、 バ イ オ ベ ン チ ャ ー に も 追 い 風 が 吹 い て い ま す 。
(2)国内バイオベンチャーの動向
オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン の 動 き は 日 本 で も 進 展 し て お り 、 バ イ オ ベ ン チ ャ ー が 大 ⼿ 製 薬 企 業 と 共 同 研 究 を 開 始 す る 事 例 も 増 加 し て い ま す 。 例 え ば 、 創 薬 開 発 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 技 術 を 有 す る ペ プ チ ド リ ー ム ( 株 ) は 、 N o v a r t i s P h a r m a A G ( ス イ ス ノ バ ル テ ィ ス 社 ) 、 G l a x o S m i t h K l i n e P l c . ( 英 国 グ ラ ク ソ ・ ス ミ ス ク ラ イ ン 社 ) 等 の 欧 米 の メ ガ フ ァ ー マ を 含 む 複 数 の 大 ⼿ 製 薬 企 業 と 共 同 研 究 開 発 契 約 を 締 結 し 、 マ イ ル ス ト ー ン の 達 成 を 実 現 し て い ま す 。 独 自 の ペ プ チ ド 模 倣 技 術 に よ り 新 薬 開 発 を す る ( 株 ) P R I S M P h a r m a は 、 契 約 一 時 ⾦ 、 マ イ ル ス ト ー ン 等 を 含 め て 2 5 0 億 円 以 上 と な る 大 型 の 共 同 研 究 契 約 を エ ー ザ イ ( 株 ) と 締 結 し ま し た 。 ま た 、 i P S 関 連 の ( 株 ) ヘ リ オ ス と テ ラ ( 株 ) 、 核 酸 医 薬 関 連 の ( 株 ) ジ ー ン デ ザ イ ン と ( 株 ) ジ ー ン テ ク ノ サ イ エ ン ス 等 バ イ オ ベ ン チ ャ ー 同 士 の 業 務 提 携 も ⾒ ら れ ま す 。 バ イ オ ベ ン チ ャ ー の 新 規 上 場 ( I P O ) に つ い て は 、 近 年 上 場 を 果 た し た ペ プ チ ド リ ー ム ( 株 ) や ( 株 ) ユ ー グ レ ナ が 時 価 総 額 1 0 0 0 億 円 を 超 え る 大 型 株 に な る 等 、 バ イ オ ベ ン チ ャ ー に 対 す る 市 場 の 期 待 感 は 依 然 大 き い と い え ま す 。 国 内 の バ イ オ ベ ン チ ャ ー の 企 業 数 は 2 0 0 6 年 を ピ ー ク に 減 少 傾 向 に あ り ま し た が 、 前 述 の 政 策 に 基 づ く ⽀ 援 や オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン の 動 き 等 の ビ ジ ネ ス 環 境 が 整 備 さ れ た 影 響 等 も あ っ て 、 2 0 1 1 年 以 降 は 再 び 増 加 し 、 2 0 1 3 年 に は 、 過 去 最 高 と な り ま し た 。 図 ︓ 国 内 の バ イ オ ベ ン チ ャ ー 企 業 総 数 推 移 (出 所 ︓ J B A 「 2 0 1 4 年 バ イ オ ベ ン チ ャ ー 統 計 ・ 動 向 調 査 報 告 書 」 )- 3 -
(3)バイオサイエンス分野のビジネスの特徴
バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の ビ ジ ネ ス と 一 口 に い っ て も 、 新 規 医 薬 品 創 出 を 目 指 す 創 薬 ベ ン チ ャ ー の ビ ジ ネ ス も あ れ ば 、 創 薬 研 究 者 向 け の 研 究 ツ ー ル を 提 供 す る ビ ジ ネ ス 、 再 生 医 療 や 細 胞 治 療 を サ ポ ー ト す る ビ ジ ネ ス 、 天 然 物 由 来 の 成 分 を 機 能 性 ⾷ 品 や 化 粧 品 の 原 料 と し て 供 給 す る ビ ジ ネ ス な ど 多 岐 に わ た り ま す 。 そ れ ぞ れ に 特 色 や 違 い は あ り ま す が 、 他 分 野 と 比 べ る と 、 全 般 的 な 傾 向 と し て 下 記 の 特 徴 が あ り ま す 。 ○ 産 学 連 携 に よ る 技 術 シ ー ズ が 多 い バ イ オ ベ ン チ ャ ー に お け る ビ ジ ネ ス の 核 と な る 技 術 ( コ ア 技 術 ) は 、 約 半 数 が 大 学 や 公 的 研 究 機 関 の 研 究 成 果 を 出 所 と し て い る ( 下 図 ) 。 そ の た め 、 大 学 等 と 企 業 が 連 携 し て 研 究 開 発 を 進 め る ケ ー ス が 多 い 。 ○ 特 許 が 重 要 バ イ オ ビ ジ ネ ス は 、 技 術 シ ー ズ を 基 に し た も の が 多 く 、 特 許 を 重 視 す る 。 医 薬 品 で は 、 一 つ の 特 許 が 年 間 数 千 億 円 を 売 り 上 げ る 医 薬 品 ( ブ ロ ッ ク バ ス タ ー ) の 独 占 販 売 の 拠 り 所 と な る こ と も あ る 。 ○ 事 業 化 ま で の 開 発 期 間 が ⻑ い 大 学 等 の 基 礎 的 な 研 究 か ら 派 生 す る こ と が 多 く 、 実 用 化 に 時 間 が か か る 。 新 薬 開 発 で は 基 礎 研 究 に 2 〜 3 年 、 非 臨 床 試 験 に 3 〜 5 年 、 臨 床 試 験 ( 治 験 ) に 3 〜 7 年 、 承 認 申 請 と 審 査 に 1 〜 2 年 か か る と い わ れ 、 ト ー タ ル 1 0 年 で 新 薬 を 上 市 で き れ ば 早 い ほ う で あ る 。 ○ 多 額 の 費 用 が か か る バ イ オ ビ ジ ネ ス の た め の 研 究 開 発 に は 、 研 究 用 試 薬 等 の 消 耗 品 、 研 究 開 発 要 員 の 人 件 費 、 理 化 学 機 器 等 、 多 額 の コ ス ト が か か る 。 特 許 取 得 の た め の 費 用 も 必 要 で 、 外 国 出 願 に は 高 額 な 費 用 が 発 生 す る 。 新 薬 の 開 発 に は 、 治 験 費 用 を 含 め る と 数 ⼗ 億 円 以 上 の 資 ⾦ が 必 要 で あ る 。 ○ 医 薬 品 は 、 開 発 の 成 功 確 率 が 低 く 、 承 認 審 査 が 必 要 医 薬 品 候 補 化 合 物 が 新 薬 と し て 世 に 出 る 成 功 確 率 は 約 3 万 分 の 1 と 言 わ れ て い る 。 承 認 審 査 は ( 独 ) 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 ( P M D A ) で ⾏ わ れ 、 最 終 的 に は 厚 生 労 働 大 臣 の 承 認 が 必 要 で あ る 。 ○ 実 験 室 ( ウ ェ ッ ト ラ ボ ) が 必 要 バ イ オ サ イ エ ン ス の 実 験 は 、 給 排 水 の 設 備 や 耐 薬 品 性 の 床 面 、 他 の 居 室 と 独 ⽴ し た 個 別 空 調 設 備 等 を 有 す る ウ ェ ッ ト ラ ボ で ⾏ う こ と が 必 要 と な る 。 特 に 遺 伝 ⼦ 組 換 え 実 験 等 を ⾏ う た め に は 、 法 令 で 定 め ら れ た 実 験 環 境 を 整 備 で き る 実 験 室 が 必 須 で あ る 。 図 ︓ バ イ オ ベ ン チ ャ ー の コ ア 技 術 の 出 所 ( 出 所 ︓ J B A 「 2 0 1 4 年 バ イ オ ベ ン チ ャ ー 統 計 ・ 動 向 調 査 報 告 書 」 )- 4 -
(4)バイオベンチャーの例
バ イ オ ベ ン チ ャ ー に も 様 々 な 事 業 形 態 が あ り ま す が 、 代 表 的 な も の を い く つ か ご 紹 介 し ま す 。 ◯ 創 薬 ベ ン チ ャ ー ( パ イ プ ラ イ ン 型 バ イ オ ベ ン チ ャ ー ) 医 薬 品 の 候 補 化 合 物 の 探 索 、 非 臨 床 試 験 、 臨 床 試 験 等 を ⾏ う ベ ン チ ャ ー 。 製 薬 企 業 と マ イ ル ス ト ー ン 契 約 を 結 び 、 段 階 的 に 研 究 開 発 費 を 調 達 し な が ら 医 薬 品 候 補 化 合 物 ( パ イ プ ラ イ ン ) の 開 発 を 進 め 、 最 終 的 に は 候 補 化 合 物 の 物 質 特 許 を 製 薬 企 業 へ ラ イ セ ン ス ア ウ ト ( 特 許 権 の 譲 渡 や 実 施 許 諾 ) す る こ と を 目 指 す 。 成 功 す れ ば 莫 大 な 利 益 が 期 待 で き る 一 方 、 数 ⼗ 億 円 規 模 の 膨 大 な 開 発 費 が か か り 、 開 発 資 ⾦ の 調 達 が 非 常 に 重 要 。 ◯ 創 薬 基 盤 技 術 ベ ン チ ャ ー ( プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 型 バ イ オ ベ ン チ ャ ー ) 新 薬 の 候 補 化 合 物 の 探 索 や 抗 体 作 製 等 、 創 薬 研 究 で 有 用 な 独 自 の 基 盤 技 術 ( プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 技 術 ) を 持 ち 、 受 託 ビ ジ ネ ス や ラ イ セ ン ス ビ ジ ネ ス 等 を 展 開 。 比 較 的 早 期 に 売 上 が ⾒ 込 め 、 株 式 上 場 時 に ⿊ 字 化 を 達 成 す る ケ ー ス も ⾒ ら れ る 。 ◯ 再 ⽣ 医 療 ベ ン チ ャ ー 新 分 野 と し て 注 目 度 の 高 い 再 生 医 療 技 術 に 関 連 す る ベ ン チ ャ ー 。 再 生 医 療 が 本 格 的 に 普 及 す る た め に は 、 コ ス ト 等 の 課 題 を ク リ ア す る 必 要 が あ る が 、 薬 事 法 の 改 正 や 再 生 医 療 の 特 殊 性 を 踏 ま え た 「 再 生 医 療 新 法 」 の 施 ⾏ 等 、 法 規 制 の 課 題 も 着 々 と 解 決 し つ つ あ り 、 ベ ン チ ャ ー に も 活 発 な 動 き が あ る 。 ◯ 機 能 性 素 材 ベ ン チ ャ ー 天 然 物 か ら の 機 能 性 素 材 の 探 索 や 天 然 で は 希 少 な 物 質 等 の 大 量 生 産 技 術 等 に よ っ て 、 ⾷ 品 や 化 粧 品 等 の 原 料 を 提 供 す る ベ ン チ ャ ー 。 医 薬 品 ほ ど 厳 し い 規 制 は な く 、 創 薬 と 比 べ れ ば 早 期 に 事 業 化 が 可 能 。 2 0 1 5 年 か ら は 、 サ プ リ メ ン ト 等 の ⾷ 品 に お い て 、 体 の 部 位 へ の 効 能 を 具 体 的 に 示 す 「 機 能 性 表 示 」 が 認 め ら れ る こ と も あ り 、 ベ ン チ ャ ー に と っ て も 新 た な ビ ジ ネ ス チ ャ ン ス が 生 ま れ る と 期 待 さ れ る 。 【 コ ラ ム 】 創 薬 ベ ン チ ャ ー 創 薬 ベ ン チ ャ ー と し て は 、 大 学 等 で 発 ⾒ さ れ た 医 薬 品 候 補 化 合 物 を も と に 開 発 を 進 め る 大 学 発 ベ ン チ ャ ー が 典 型 的 で す が 、 製 薬 企 業 等 の 開 発 チ ー ム が 独 ⽴ し 、 ス ピ ン ア ウ ト ベ ン チ ャ ー と し て 開 発 を 進 め る ケ ー ス や 、 他 の 製 薬 企 業 で 開 発 中 の 化 合 物 ( パ イ プ ラ イ ン ) の 中 か ら 有 望 な も の を ⾒ つ け 出 し 、 そ れ を 導 ⼊ し て 開 発 を 進 め る ケ ー ス 等 も あ り ま す 。- 5 -
第 2 章 ビジネスプラン策定の主なポイント
(1)総論
技 術 シ ー ズ を も と に し た 事 業 を 成 功 さ せ る た め に は 、 そ の 技 術 を ど の よ う に 世 の 中 に 出 し て い く か ( 事 業 化 す る か ) に つ い て 、 中 ⻑ 期 の ビ ジ ョ ン を 持 ち 、 事 業 戦 略 を ⽴ て る こ と が 大 切 で す 。 そ の と き に は 、 知 財 面 で の 戦 略 ・ 法 務 の 知 識 ・ 事 業 化 を イ メ ー ジ で き る 市 場 調 査 ・ 資 ⾦ 調 達 等 の 財 務 面 等 を ポ イ ン ト と し て 押 さ え て お く こ と が 重 要 で す 。 技 術 シ ー ズ を 事 業 に す る た め の 過 程 は 、 研 究 分 野 や 研 究 ス テ ー ジ 、 自 ら の ⽴ 場 ( 大 学 等 か 企 業 か ) 等 に よ っ て 様 々 で す が 、 一 例 を 図 示 し ま す 。 バイオベンチャーを起業 事業会社へライセンスアウト 大学等の基礎研究の成果 特 許 出 願 事業イメージを構想 各課題の検討 ビジネスプラン策定 経営チームの組成 資⾦調達 ベンチャー設⽴ 提携先の探索 提携先での技術評価 共同研究 事 業 化 財務 市場調査 知財 法務 経営者 こ の 図 に も あ る よ う に 、 知 財 ・ 法 務 ・ 財 務 ・ 市 場 調 査 等 の 各 課 題 を 検 討 す る 前 に は 、 将 来 の 事 業 イ メ ー ジ を 持 つ こ と も 重 要 で す 。 研 究 の 成 果 が 出 た ら 、 そ の 技 術 シ ー ズ を も と に 「 誰 に 何 を ど の よ う に 売 る の か ︖ 」 「 競 合 技 術 に ど う 勝 つ の か ︖ 」 等 を 考 え 、 事 業 イ メ ー ジ を 想 定 し 、 そ れ を 実 現 す る た め に 知 財 ・ 法 務 ・ 財 務 等 の 観 点 か ら 何 が 必 要 か を 考 え て 、 一 貫 性 の あ る ビ ジ ネ ス プ ラ ン を 策 定 し ま し ょ う 。 バ イ オ ベ ン チ ャ ー の ビ ジ ネ ス モ デ ル は 様 々 で す 。 創 薬 ベ ン チ ャ ー で あ れ ば 、 製 薬- 6 - 企 業 と 提 携 し 、 契 約 後 の 研 究 開 発 の 進 捗 に 応 じ て 、 契 約 一 時 ⾦ 、 研 究 開 発 協 ⼒ ⾦ 、 マ イ ル ス ト ー ン 、 ロ イ ヤ リ テ ィ 等 を 契 約 締 結 時 か ら 上 市 後 ま で 段 階 的 に 受 け 取 り ま す 。 こ の ビ ジ ネ ス モ デ ル は 、 創 薬 基 盤 技 術 ベ ン チ ャ ー 等 で も よ く 採 用 さ れ て い ま す 。 研 究 開 発 ス テ ー ジ に 応 じ た 資 ⾦ 調 達 契 約 一 時 ⾦ 契 約 締 結 時 に 一 定 の 権 利 の 付 与 に 対 し て 受 け 取 る 対 価 研 究 開 発 協 ⼒ ⾦ 研 究 開 発 の 経 済 的 援 助 と し て 受 け 取 る 対 価 マ イ ル ス ト ー ン ラ イ セ ン ス 契 約 に 基 づ き 、 研 究 開 発 の 進 捗 ( 予 め 段 階 的 に 設 定 さ れ た 目 標 の 達 成 ) に 応 じ て 受 け 取 る 一 時 ⾦ ロ イ ヤ リ テ ィ 製 品 上 市 後 に 売 上 額 の 一 定 比 率 を 受 け 取 る 対 価 研 究 用 試 薬 や 機 能 性 ⾷ 品 ・ 化 粧 品 の 原 料 等 の 自 社 製 品 を 販 売 す る ビ ジ ネ ス モ デ ル も あ り ま す 。 そ の 際 は 、 自 社 で 製 造 す る だ け で な く 、 下 図 の よ う に 外 注 す る こ と も あ り ま す 。 大学等 ベンチャーバイオ 販売先 製造委託先 ライセンス 許諾 ライセンス料 製品 代⾦ 委託料 製品 【 コ ラ ム 】 ベ ン チ ャ ー 起 業 か ︖ ラ イ セ ン ス ア ウ ト か ︖ [ 大 学 等 の 方 へ ] 最 近 は 大 学 発 ベ ン チ ャ ー に 対 す る ⽀ 援 策 が 充 実 し た 影 響 で 、 起 業 に チ ャ レ ン ジ す る 研 究 者 が 増 え つ つ あ り ま す 。 た だ し 、 技 術 シ ー ズ に よ っ て は 、 起 業 が ベ ス ト の 選 択 肢 で は な く 、 ラ イ セ ン ス 許 諾 や 権 利 譲 渡 等 の 他 の 選 択 肢 の ほ う が 適 当 か も し れ ま せ ん 。 そ の 判 断 を 的 確 に 下 す た め に も 、 ビ ジ ネ ス プ ラ ン を 策 定 す る こ と は 役 に ⽴ ち ま す 。 【 コ ラ ム 】 研 究 の 前 に 事 業 戦 略 [ 中 小 企 業 の 方 へ ] 企 業 は 初 め か ら 事 業 に よ る 利 益 追 求 を 目 的 と し ま す の で 、 大 学 等 と は 異 な り 、 研 究 に 着 ⼿ す る 前 に 市 場 調 査 や 特 許 調 査 、 侵 害 調 査 等 を ⾏ い 、 事 業 戦 略 を ⽴ 案 す る こ と が 基 本 で す 。 予 め 事 業 化 に 向 け て 解 決 す べ き 技 術 的 課 題 を 明 確 に し 、 そ の 研 究 に 集 中 投 資 す る こ と で 、 効 率 よ く 研 究 を 進 め る こ と が で き ま す 。
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(2)知財面のポイント
(a)知財とは︖特許とは︖
バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で の 事 業 展 開 に お い て 、 最 も 重 要 な 戦 略 の 一 つ が 知 財 戦 略 で す 。 知 財 は 最 大 の 武 器 で あ り 売 り 物 で も あ り ま す の で 、 細 心 の 注 意 を 払 っ て 検 討 す べ き で す 。 知 財 、 つ ま り 知 的 財 産 権 は 無 形 の 財 産 権 で 、 特 許 権 、 実 用 新 案 権 、 意 匠 権 、 商 標 権 、 著 作 権 、 育 成 者 権 、 営 業 秘 密 な ど 多 岐 に 渡 り ま す 。 そ の 中 で も バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 で 最 も 重 視 さ れ る の が 特 許 権 で す 。 特 許 権 は 、 発 明 を 独 占 実 施 で き る 権 利 で す 。 特 許 権 と し て 認 め ら れ れ ば 、 所 定 の ⼿ 続 き に よ り 出 願 日 か ら 2 0 年 後 ま で 権 利 を 保 持 す る こ と が 可 能 で す 。 ( 医 薬 品 に つ い て は 、 新 薬 と し て の 承 認 を 受 け る ま で 販 売 が で き ず 、 そ の 間 に 特 許 を 実 施 で き な い 期 間 が 生 じ ま す の で 、 そ れ を カ バ ー す る た め に 最 大 5 年 の 権 利 期 間 の 延 ⻑ が 認 め ら れ ま す 。 ) た だ し 、 特 許 出 願 の 内 容 は 、 通 常 は 出 願 か ら 1 年 半 後 に ウ ェ ブ ペ ー ジ 等 で 公 開 さ れ ま す の で 、 世 界 中 の 誰 も が 技 術 内 容 を 知 る こ と が で き ま す 。 ( 出 所 ︓ 特 許 庁 「 平 成 2 6 年 度 知 的 財 産 権 制 度 ⼊ 門 」 ( 一 部 改 変 ) )- 8 - 最 終 製 品 か ら は 検 出 で き な い 製 造 方 法 の ノ ウ ハ ウ 等 ( 営 業 秘 密 ) は 特 許 出 願 せ ず 、 秘 匿 す る 戦 略 も 考 え ら れ ま す 。 た だ し ノ ウ ハ ウ 等 は 一 旦 外 部 に 漏 れ る と 、 法 的 ⼿ 段 が 取 れ ず 打 つ ⼿ が な く な る お そ れ が あ り ま す 。 ま た そ の ノ ウ ハ ウ 等 と 同 じ 技 術 を 他 者 が 後 か ら 特 許 出 願 す る と 、 そ ち ら の 特 許 が 成 ⽴ す る 可 能 性 も あ り ま す 。 後 者 の 場 合 、 先 使 用 権 が 認 め ら れ れ ば 事 業 の 継 続 は 可 能 か も し れ ま せ ん が 、 市 場 の 独 占 は 難 し い で し ょ う 。 ビ ジ ネ ス で は 商 標 も よ く 使 わ れ ま す 。 商 標 と は 、 商 品 や サ ー ビ ス に 付 け る マ ー ク の こ と で す 。 模 倣 品 の 出 や す い 製 品 を 海 外 で 販 売 す る の で あ れ ば 、 商 標 が 強 ⼒ な 武 器 に な り ま す 。 な お 、 商 標 は 特 許 と 異 な り 、 申 請 に よ っ て 存 続 期 間 を 何 度 で も 更 新 す る こ と が で き る た め 、 2 0 年 以 上 権 利 を 持 つ こ と も 可 能 で す 。
(b)いかにして特許を取得するか︖(特許調査から出願後 2 年半まで)
特 許 権 を 取 得 す る た め に は 、 数 多 く の ⼿ 続 き が 必 要 で す 。 こ こ で は ビ ジ ネ ス プ ラ ン 策 定 段 階 か ら 知 っ て お く と よ い 事 柄 を 中 心 に 説 明 し ま す 。 出願から2年半までに … 出願から1年半(公開)までに … 出願から1年までに … 【大学等】 出願後に 学会等で発表する ことを徹底 中小企業では 【中小企業】 公開後に 展示会等で発表する ことが望ましい 研 究 発 明 特許調査(先⾏技術調査) 特許明細書の作成 特 許 出 願 外国出願、国内優先権主張出願 改良発明の新たな出願 各国移⾏手続き 事業戦略の⽴案 市場調査、特許調査、侵害調査 発 表 発 表 ◯ 特 許 調 査 〜 適 切 な 権 利 範 囲 を ⾒ 極 め る 〜 発 明 を 特 許 出 願 す る 前 に 、 特 許 ⽂ 献 や 学 術 論 ⽂ 等 の 公 知 ⽂ 献 で 先 ⾏ 技 術 調 査 を ⾏ い 、 そ の 発 明 と 同 一 ま た は 類 似 の 技 術 が 既 に 知 ら れ て い な い か 調 査 し ま す 。- 9 - 同 一 ま た は 類 似 の 技 術 が ⾒ つ か ら な け れ ば 、 広 い 権 利 範 囲 の 特 許 を 取 得 で き る 可 能 性 が あ り ま す 。 も し 類 似 技 術 が ⾒ つ か れ ば 、 同 じ 分 野 の 専 門 家 で あ っ て も 、 そ の 類 似 技 術 か ら 容 易 に 思 い つ く 発 明 で は な い ( 進 歩 性 が あ る ) こ と を 特 許 明 細 書 で 強 く 主 張 す れ ば 、 特 許 に な る 可 能 性 が 高 ま り ま す 。 特 許 調 査 は 、 外 部 の 専 門 家 ( 弁 理 士 、 特 許 調 査 会 社 、 知 財 コ ン サ ル テ ィ ン グ 会 社 等 ) に 依 頼 す る こ と も で き ま す し 、 特 許 庁 の 特 許 電 ⼦ 図 書 館 ( I P D L ) 等 を 用 い て 自 ら で 検 索 し て ⾏ う こ と も で き ま す 。 な お 、 特 許 出 願 は 出 願 か ら 1 年 半 経 過 し な い と 公 開 さ れ ま せ ん 。 つ ま り 、 あ る 時 点 で 調 べ た 特 許 ⽂ 献 の 中 に は 、 直 近 の 1 年 半 の 特 許 出 願 は 含 ま れ ま せ ん 。 そ の た め 、 出 願 時 の 調 査 で は 気 に な る 特 許 ⽂ 献 が な か っ た と し て も 、 安 心 す る の は 早 計 で す 。 特 許 ⽂ 献 の 調 査 は 継 続 的 に 適 宜 ⾏ い ま し ょ う 。 大 学 等 の 研 究 者 は ご 自 身 の 研 究 分 野 の 最 新 動 向 を 熟 知 し て い る の で 、 自 ら の 発 明 が 世 界 初 か 否 か は 既 に 知 っ て お り 、 特 許 調 査 は 不 要 と 思 わ れ る か も し れ ま せ ん 。 確 か に 、 単 に そ の 部 分 だ け で 特 許 を 取 る の で あ れ ば 、 そ れ で も 構 い ま せ ん 。 し か し 、 事 業 化 を 目 指 す の で あ れ ば 、 “ 使 え る ” 特 許 に し な け れ ば な り ま せ ん 。 ラ イ セ ン ス ア ウ ト す る の で あ れ ば 、 特 許 は ま さ に 「 売 り モ ノ 」 で す の で 、 可 能 な 限 り 権 利 範 囲 を 広 げ て 価 値 を 高 め る 必 要 が あ り ま す 。 と は 言 え 、 闇 雲 に 権 利 範 囲 を 広 げ る と 、 先 ⾏ 技 術 が ⾒ つ か り や す く な り 、 特 許 と し て 認 め ら れ に く く な り ま す 。 そ こ で 、 特 許 調 査 が 活 き て き ま す 。 特 許 調 査 に よ り 先 ⾏ 技 術 の な い 限 界 を ⾒ 極 め て 、 適 切 な 権 利 範 囲 を 設 定 し ま し ょ う 。 特 許 出 願 後 、 数 年 経 っ て 、 ラ イ セ ン ス 交 渉 等 を す る と き に 、 権 利 範 囲 が 狭 す ぎ た と 気 づ い て も 遅 き に 失 す る こ と に な り ま す 。 “ 使 え る ” 特 許 に す る た め に も 、 特 許 調 査 を す る こ と を お 勧 め し ま す 。 【 コ ラ ム 】 パ テ ン ト マ ッ プ に ま と め る 調 査 し た 特 許 情 報 を 整 理 ・ 分 析 し 図 面 や 表 等 で 表 し て パ テ ン ト マ ッ プ に す る こ と も 有 用 で す 。 先 ⾏ 技 術 を マ ッ ピ ン グ す る こ と で 、 権 利 化 の ⾒ 込 み の 高 い 領 域 を 絞 り 込 む こ と が で き ま す 。 た だ し 、 パ テ ン ト マ ッ プ を 自 ら 作 る に は ⼿ 間 や コ ス ト が か か る の で 、 対 象 と す る 技 術 分 野 の パ テ ン ト マ ッ プ が 特 許 庁 の 「 特 許 出 願 技 術 動 向 調 査 報 告 書 」 等 で 公 開 さ れ て い れ ば 、 そ れ を 活 用 し て も よ い で し ょ う 。
- 10 - ◯ 特 許 明 細 書 の 作 成 〜 ビ ジ ネ ス で の 活 用 法 ま で 想 定 〜 特 許 の 権 利 範 囲 は 、 「 特 許 請 求 の 範 囲 」 と し て 記 載 さ れ た 内 容 で す 。 こ の 書 き 方 一 つ で 権 利 範 囲 が 広 く も 狭 く も な り 、 将 来 の ラ イ セ ン ス 交 渉 等 を 左 右 す る こ と に も な り ま す 。 「 特 許 請 求 の 範 囲 」 の ⽂ 言 は 、 将 来 の 事 業 イ メ ー ジ を 具 体 的 に 想 定 し 、 細 部 ま で 配 慮 す べ き で す 。 詳 細 に つ い て は 専 門 家 で あ る 弁 理 士 に お 任 せ す る こ と に な り ま す が 、 大 学 等 の 研 究 者 等 も 特 許 明 細 書 を 書 く た め の ポ イ ン ト を あ る 程 度 知 っ て お く 方 が 弁 理 士 と の 話 も ス ム ー ズ に 進 み ま す 。 参 考 に な る 書 籍 も 市 販 さ れ て い ま す し 、 特 許 庁 や 特 許 事 務 所 の ウ ェ ブ ペ ー ジ 等 に も 有 用 な 情 報 が あ り ま す の で 、 ご 参 照 く だ さ い 。 ま た 、 特 許 明 細 書 の 作 成 に お い て は 、 学 術 論 ⽂ を 法 律 的 な ⽂ 章 に 単 に 置 き 換 え る だ け で は 不 ⼗ 分 で す 。 そ の 技 術 を も と に ど の よ う な ビ ジ ネ ス を 展 開 す る の か を 理 解 し な け れ ば 、 ビ ジ ネ ス で 有 効 な 特 許 に は な り ま せ ん 。 そ の た め 、 弁 理 士 と は 、 技 術 内 容 だ け で な く 将 来 の 事 業 イ メ ー ジ 等 も 共 有 し て 、 ビ ジ ネ ス で の 活 用 方 法 を 想 定 し な が ら 作 成 す る こ と が 望 ま し い で す 。 特 許 の 権 利 範 囲 に は 限 界 が あ り ま す 。 研 究 者 や 中 小 企 業 経 営 者 の 中 に は 、 一 つ 特 許 を 出 す と 、 そ れ に こ だ わ り 過 ぎ て し ま い 、 言 わ ば 「 点 」 で 事 業 を 守 ろ う と す る ( 守 れ る と 思 い 込 ん で し ま う ) 方 が い ま す が 、 ラ イ バ ル 企 業 の 視 点 に ⽴ て ば 、 障 害 と な る 特 許 が 一 つ あ る の な ら 、 そ の 周 辺 特 許 を 抑 え る こ と で 相 ⼿ の 特 許 の 使 用 を 実 質 的 に 封 じ 込 め る 戦 略 が 可 能 か も し れ ま せ ん 。 そ れ に 対 抗 す る た め に も 、 一 つ の 特 許 出 願 で 安 心 せ ず 、 追 加 の 研 究 成 果 も 随 時 特 許 出 願 し 、 特 許 群 と し て 言 わ ば 「 面 」 で 守 る 発 想 を 持 つ こ と も 重 要 で す 。 【 コ ラ ム 】 職 務 発 明 [ 大 学 等 の 方 へ ] 大 学 等 に 所 属 す る 研 究 者 が 発 明 を し た と き に は 、 職 務 発 明 と し て 扱 わ れ 、 発 明 届 の 提 出 等 が 職 務 発 明 規 程 で 定 め ら れ て い る こ と が 多 い で す 。 職 務 発 明 規 程 は 各 大 学 等 で 異 な り ま す の で 、 不 明 な 点 は 各 大 学 等 の 産 学 連 携 本 部 等 の 担 当 部 署 に 相 談 し 、 適 切 に 対 処 し ま し ょ う 。 ◯ 特 許 出 願 〜 出 願 は 学 会 等 で の 発 表 前 に 〜 大 学 等 の 研 究 者 で あ れ ば 、 よ い 実 験 結 果 が 得 ら れ る と 、 す ぐ に で も 学 会 発 表 し た い と 思 わ れ る 方 も 多 い で し ょ う 。 し か し 事 業 化 を 考 え る の な ら ば 、 発 表 前 に 特 許 出 願 を 済 ま せ て お き ま し ょ う 。 も し 学 会 等 で 発 明 を 公 表 し て し ま う と 、 新 規 性 が 失 わ れ ま す の で 、 そ れ が 原 因 で 特 許 を 取 れ な く な り ま す 。 後 々 に 禍 根 を 残 す こ と に な り
- 11 - ま す の で 、 原 則 と し て 発 表 前 に 特 許 出 願 を し て お き ま し ょ う 。 な お 、 卒 業 論 ⽂ や 修 士 論 ⽂ 等 の 発 表 で あ っ て も 、 特 段 の 対 策 を し な い 限 り 、 発 明 の 新 規 性 が 喪 失 し ま す の で 、 ご 注 意 く だ さ い 。 大 学 等 と 共 同 研 究 を す る 中 小 企 業 も 同 様 で す 。 自 ら が 学 会 や 展 示 会 等 で 発 表 す る の は も ち ろ ん 、 共 同 研 究 先 の 研 究 者 に も 学 会 発 表 前 に 特 許 出 願 す る こ と を 徹 底 し て も ら い ま し ょ う 。 【 コ ラ ム 】 新 規 性 喪 失 の 例 外 特 許 法 に は 、 学 会 等 で 発 表 し て か ら 6 月 以 内 に 出 願 す れ ば そ の 発 明 の 新 規 性 は 失 わ れ な い と い う 救 済 措 置 ( 新 規 性 喪 失 の 例 外 ) の 規 定 が あ り ま す が 、 こ の 規 定 は あ く ま で 日 本 の 法 律 で あ っ て 日 本 国 内 で し か 通 用 し ま せ ん 。 欧 州 や 中 国 等 で は 同 様 の 救 済 措 置 が な い た め 、 一 旦 発 表 し て し ま う と 、 そ れ ら の 国 々 で の 特 許 権 取 得 は 諦 め ざ る を 得 ま せ ん 。 出 願 は 必 ず 発 表 前 に す る と い う 意 識 を 持 ち ま し ょ う 。
- 12 - ◯ 出 願 後 1 年 ま で 〜 外 国 出 願 、 国 内 優 先 権 主 張 出 願 〜 外 国 で の 権 利 化 の た め に は 、 日 本 で の 出 願 ( 先 の 出 願 ) か ら 1 年 以 内 に 外 国 に 出 願 す る こ と が 好 ま し い で す 。 先 の 出 願 か ら 1 年 以 内 で あ れ ば 、 パ リ 条 約 上 の 優 先 権 を 主 張 す る こ と が で き 、 外 国 出 願 の 出 願 日 が 日 本 で の 出 願 日 ま で 遡 及 す る か ら で す 。 ま た 、 外 国 出 願 す る 場 合 、 P C T 国 際 出 願 を す る こ と が で き ま す 。 P C T 国 際 出 願 と は 、 ひ と つ の 出 願 願 書 の 提 出 に よ っ て 約 1 5 0 カ 国 の P C T 加 盟 国 す べ て に 同 時 に 出 願 し た こ と と 同 じ 効 果 を 与 え る 出 願 で す 。 先 の 出 願 か ら 1 年 以 内 で あ れ ば 、 改 良 発 明 や デ ー タ ・ 実 施 例 等 を 追 加 し 、 国 内 優 先 権 を 主 張 し て 、 新 た な 出 願 を す る こ と が で き ま す 。 国 内 優 先 権 を 利 用 し た 場 合 、 先 の 出 願 に 記 載 さ れ て い る 発 明 に つ い て は 、 先 の 出 願 時 を 基 準 に 進 歩 性 等 が 判 断 さ れ る メ リ ッ ト が あ り ま す 。 た だ し 、 追 加 に よ る 効 果 等 に つ い て は ⼗ 分 に 検 討 す る 必 要 が あ り ま す の で 、 弁 理 士 と よ く 相 談 の 上 で ⾏ い ま し ょ う 。 ◯ 出 願 後 1 年 半 ま で 〜 改 良 発 明 は 基 本 特 許 の 公 開 前 に 出 願 す る の が 理 想 〜 出 願 後 1 年 半 を 経 過 す る と 、 特 許 明 細 書 が 公 開 さ れ ま す 。 そ の 後 に 別 の 出 願 を す る と 、 先 の 出 願 が 、 自 ら の 出 願 か 否 か に 関 係 な く 公 知 の 先 ⾏ 技 術 ⽂ 献 と な り 、 そ れ に 対 す る 新 規 性 ・ 進 歩 性 が 問 わ れ 、 権 利 化 の ハ ー ド ル が 高 ま り ま す 。 そ の た め 改 良 発 明 は 、 遅 く と も 先 の 出 願 の 公 開 前 に 出 願 す る こ と が 望 ま し い で す 。 な お 、 公 開 前 に 出 願 を 取 り 下 げ れ ば 公 開 を 避 け る こ と が 可 能 で す ( た だ し 、 公 開 特 許 公 報 発 ⾏ の 準 備 に ⼊ っ て い る 場 合 、 公 開 前 に 出 願 を 取 り 下 げ て も 公 開 さ れ る 場 合 が あ り ま す ) 。 こ の 方 法 は 、 一 旦 特 許 出 願 し た も の の 、 ノ ウ ハ ウ と し て 秘 匿 し た く な っ た 場 合 等 に 利 用 で き ま す 。 ◯ 出 願 後 2 年 半 ま で 〜 外 国 へ の 移 ⾏ 手 続 き の タ イ ム リ ミ ッ ト 〜 出 願 後 1 年 以 内 に P C T 国 際 出 願 を し た 場 合 、 出 願 後 2 年 半 以 内 に 権 利 化 を 図 り た い 国 を 決 定 し て 、 各 国 へ の 申 請 ( 移 ⾏ ⼿ 続 き ) が 必 要 で す 。 そ の た め に は 翻 訳 料 や 海 外 の 特 許 事 務 所 ( 現 地 代 理 人 ) の ⼿ 数 料 等 に 高 額 な 費 用 が 発 生 し ま す の で 、 こ の 時 期 ま で に 資 ⾦ の 目 処 を ⽴ て て お く 必 要 が あ り ま す 。
(c)外国への出願(国内出願時から意識する)
バ イ オ ビ ジ ネ ス は 、 戦 略 に よ っ て は 外 国 で の 特 許 が 重 要 に な り ま す 。 た だ し 特 許 に は 、 全 世 界 で 独 占 実 施 権 を 得 ら れ る 「 世 界 特 許 」 の よ う な も の は 存 在 し ま せ ん 。 基 本 的 に 特 許 は 各 国 に 申 請 し 、 各 国 で 審 査 さ れ 、 各 国 で 権 利 が 発 生 し ま す 。- 13 - 各 国 へ の ⼿ 続 き に は 各 国 特 許 庁 へ の 費 用 の 他 に 、 翻 訳 料 や 現 地 代 理 人 の ⼿ 数 料 も 必 要 で す 。 ま た 、 特 許 と し て 認 め ら れ れ ば 権 利 を 維 持 す る た め の 特 許 料 ( 維 持 年 ⾦ ) も 各 国 で 必 要 で す 。 こ の よ う に 外 国 で の 権 利 化 に は 高 額 な 費 用 が か か る の で 、 将 来 の 事 業 を ⾒ 定 め て 、 必 要 な 国 に 絞 っ て 効 率 よ く 出 願 す る 必 要 が あ り ま す 。 ど の 国 に 出 願 す べ き か に つ い て は 事 業 戦 略 に よ っ て 異 な り ケ ー ス バ イ ケ ー ス で す が 、 一 般 論 と し て 、 事 業 は 最 終 的 に は 製 品 や サ ー ビ ス を 市 場 に 提 供 す る こ と に な り ま す の で 、 「 市 場 国 」 が 重 視 さ れ る こ と が 多 い で す 。 次 に 重 視 さ れ や す い の は 「 生 産 国 」 で す 。 競 合 会 社 が 生 産 し よ う と す る 国 に お い て 予 め 特 許 権 を 確 保 す れ ば 、 競 合 会 社 の 生 産 ⾏ 為 の 排 除 や ラ イ セ ン ス 料 獲 得 が 可 能 に な り ま す 。 外 国 で 特 許 権 を 取 得 す る た め に は 、 P C T 国 際 出 願 や 直 接 出 願 な ど の 方 法 が あ り ま す 。 一 般 的 に は ま ず は 日 本 国 内 で 出 願 し 、 そ れ を 基 に P C T ル ー ト で ⼿ 続 き を 進 め る こ と が 多 い で す が 、 い ず れ に し て も 国 内 出 願 か ら 1 年 以 内 に ⼿ 続 き を し な け れ ば な ら な い 点 で は 共 通 で す の で 、 国 内 出 願 を し た と き か ら こ の 期 限 を 意 識 し ま し ょ う 。 ま た 、 外 国 出 願 の タ イ ミ ン グ で 実 施 例 等 の 追 加 も 可 能 で す 。 そ れ ま で に 実 験 デ ー タ を 揃 え て お く 、 特 許 請 求 の 範 囲 を 事 業 に 即 し た 内 容 に す る な ど 、 明 細 書 を ブ ラ ッ シ ュ ア ッ プ で き る よ う に 準 備 し ま し ょ う 。 【 コ ラ ム 】 特 許 明 細 書 の 翻 訳 大 学 等 の 研 究 者 は 英 語 の 論 ⽂ を 日 常 的 に 書 き 慣 れ て い る こ と も あ り 、 日 本 語 の 特 許 明 細 書 の 翻 訳 を ご 自 身 で や ろ う と す る 方 も い ま す 。 し か し 、 特 許 明 細 書 は 技 術 用 語 と 法 律 用 語 が ⼊ り 混 じ り 、 例 え ば 単 数 と 複 数 の 扱 い に も 独 特 の ル ー ル が あ り 注 意 が 必 要 で す 。 そ う い っ た 事 情 を 把 握 せ ず に 翻 訳 す る と 、 後 々 権 利 関 係 で 問 題 に な る お そ れ が あ り ま す 。 翻 訳 は 、 特 許 事 務 所 や 特 許 ⽂ 献 に 慣 れ た 翻 訳 会 社 等 の 専 門 家 に 依 頼 す る こ と も 考 え て み ま し ょ う 。 ( 出 所 ︓ 特 許 庁 「 平 成 2 6 年 度 知 的 財 産 権 制 度 ⼊ 門 」 )
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(d)特許にかかる費用は︖(バイオサイエンス分野は高くなりがち)
特 許 権 を 確 保 す る た め に は 権 利 取 得 ま で の ⼿ 続 き や 取 得 後 の 権 利 維 持 等 に 相 当 の 費 用 が か か り ま す 。 バ イ オ サ イ エ ン ス 分 野 の 特 許 取 得 に か か る ⾦ 額 は 、 機 械 系 な ど 一 般 的 な 分 野 と 比 べ る と 、 発 明 の 内 容 が 複 雑 で 、 実 施 例 の 説 明 等 が ⻑ く な る た め ペ ー ジ 数 も 多 く 、 比 較 的 高 額 に な る 傾 向 が あ り ま す 。 こ の 負 担 は バ イ オ ベ ン チ ャ ー に と っ て は 重 く な り ま す が 、 特 許 は 事 業 の 根 幹 を な す こ と も 多 い た め 、 計 画 的 に 資 ⾦ を 確 保 し ま し ょ う 。 こ の 場 合 、 国 の ⽀ 援 制 度 を 活 用 す る こ と で 、 費 用 を 軽 減 す る こ と が で き ま す 。 中 小 企 業 で あ れ ば 、 国 内 出 願 に 関 し て は 、 特 許 庁 へ の 審 査 請 求 料 や 特 許 料 の 減 免 制 度 が あ り ま す 。 外 国 出 願 に 関 し て は 、 特 許 庁 、 ( 独 ) 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( J E T R O ) 、 ( 独 ) 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 な ど の 助 成 等 が 活 用 で き ま す 。 ( 第 4 章 参 照 ) ま た 、 日 本 弁 理 士 会 は 、 中 小 企 業 や 大 学 が ど ち ら も 対 象 と な る 特 許 出 願 等 援 助 制 度 を 実 施 し て い ま す 。 日 本 弁 理 士 会 の ウ ェ ブ ペ ー ジ で は 、 地 方 自 治 法 等 に よ る 特 許 に か か る 助 成 制 度 を ま と め 、 「 助 成 制 度 調 査 結 果 」 と し て 公 開 さ れ て い ま す 。(e)知財をどう活用する︖(自己実施、ライセンス許諾、権利譲渡)
知 財 は 取 得 す る だ け で な く 、 活 用 し て こ そ 意 義 が あ り ま す 。 活 用 法 も 複 数 あ り 、 そ れ ぞ れ 一 ⻑ 一 短 が あ り ま す の で 、 各 々 の 特 性 を 理 解 し た 上 で 、 目 指 す 事 業 に 適 し た 方 法 を 選 択 す る こ と が 大 切 で す 。 自 己 実 施 自 ら が 特 許 を 使 用 し 、 他 者 に は 一 切 使 用 さ せ な い 。 価 格 や 利 益 を 維 持 し や す く 、 大 き な 利 益 が 期 待 で き る 。 た だ し 、 侵 害 品 の 監 視 や 他 者 か ら の 権 利 上 の 攻 撃 へ の 対 応 、 特 許 の 維 持 管 理 費 等 が 必 要 。 ラ イ セ ン ス 許 諾 特 許 権 者 ( ラ イ セ ン サ ー ) が 権 利 を 保 持 し な が ら 他 者 ( 実 施 権 者 ・ ラ イ セ ン シ ー ) に 対 し て 、 実 施 を 許 諾 す る 方 法 。 そ の 対 価 と し て ラ イ セ ン ス 料 を 獲 得 す る 。 複 数 の 他 者 へ ラ イ セ ン ス 許 諾 を す れ ば 事 業 の リ ス ク 分 散 が 図 れ 、 市 場 拡 大 も 期 待 で き る 。 一 社 の み に 独 占 的 な 実 施 権 を 付 与 す れ ば 、 ラ イ セ ン ス 料 を 高 く 設 定 す る こ と も 可 能 。 た だ し 、 自 己 実 施 と 同 様 に 、 特 許 の 維 持 管 理 費 等 が 必 要 。 権 利 譲 渡 他 者 に 特 許 権 を 譲 渡 し 、 対 価 を 得 る 方 法 。 自 ら は 研 究 開 発 に 専 念 し 、 そ れ 以 降 の 製 造 ・ 販 売 等 は 他 者 に 委 ね る 場 合 等 に 適 す る 。 ラ イ セ ン ス 許 諾 よ り も 大 き な ⾦ 額 を 請 求 し や す く 、 特 許 の 維 持 管 理 費 が 不 要 。 た だ し 、 自 ら も 特 許 を 使 用 で き ず 、 権 利 譲 渡 し た 後 で は 取 り 返 す こ と が 容 易 で な い た め 、 慎 重 な 判 断 が 必 要 。- 15 - な お 、 ラ イ セ ン ス 許 諾 や 権 利 譲 渡 に お い て は 、 対 象 と す る 特 許 は 、 既 に 審 査 が 終 了 し 特 許 権 と し て 登 録 さ れ て い る も の に 限 ら ず 、 審 査 前 や 審 査 中 の も の ( 特 許 が 成 ⽴ す る か 不 確 定 な も の ) を 対 象 と す る ケ ー ス も あ り ま す 。
( f )
侵害調査
(
特許を取得しても、他者の特許が大きな壁になることも
)
特 許 を 取 得 で き て も 、 そ れ を 実 施 す る と き に 他 者 の 特 許 を 侵 害 し な い と は 限 り ま せ ん 。 特 許 を 持 っ て い て も 別 の 特 許 を 侵 害 し て い れ ば 、 他 者 か ら 訴 え ら れ る 可 能 性 が あ り ま す 。 他 者 の 特 許 を 侵 害 す る と 、 ⺠ 事 上 の 損 害 賠 償 や 差 ⽌ 請 求 を 受 け る こ と に な り 、 刑 事 罰 の 対 象 と も な り 得 ま す 。 他 者 の 真 似 を し た わ け で は な く 独 自 に 研 究 開 発 し た 成 果 で あ っ た と し も 、 そ れ で 侵 害 を 免 れ る わ け で は あ り ま せ ん 。 相 ⼿ の 権 利 範 囲 に 含 ま れ て い れ ば 特 許 権 侵 害 と み な さ れ ま す 。 想 定 す る ビ ジ ネ ス が 他 者 の 特 許 権 を 侵 害 し な い か を 調 査 す る こ と は 、 事 業 を ⾏ う 上 で 非 常 に 重 要 で す 。 調 査 の 結 果 、 も し 想 定 す る ビ ジ ネ ス に 影 響 を 与 え る 他 者 特 許 を 発 ⾒ し た 場 合 に は 、 本 当 に 侵 害 に あ た る の か ど う か 弁 理 士 な ど の 専 門 家 に 相 談 し て 的 確 に 分 析 す る こ と が 必 要 で す 。 【 コ ラ ム 】 侵 害 が 認 め ら れ る 場 合 の 対 処 法 ・ 相 ⼿ の 特 許 の 出 願 日 よ り も 前 の ⽂ 献 で あ っ て 、 そ の 特 許 の 新 規 性 ・ 進 歩 性 を 否 定 で き る も の を ⾒ つ け 出 し 、 そ れ を 根 拠 に 無 効 審 判 を 請 求 す る 。 ・ 相 ⼿ の 特 許 出 願 日 よ り も 前 に 、 自 ら が 同 じ 発 明 の 使 用 等 を し て い た の で あ れ ば 、 そ れ を ⽴ 証 で き る 証 拠 ( ラ ボ ノ ー ト 等 ) を 確 保 し 、 先 使 用 権 ( そ の 発 明 を 継 続 し て 実 施 で き る 権 利 ) を 主 張 す る 。 ・ こ ち ら の 事 業 を 、 相 ⼿ の 特 許 権 を 侵 害 し な い も の に 変 更 す る 。 ・ 相 ⼿ と 交 渉 し 、 特 許 権 の 譲 渡 や ラ イ セ ン ス 許 諾 を 受 け る 。- 16 -
(3)法務面のポイント
法 務 は 、 事 業 活 動 の 様 々 な 局 面 で 重 要 と な り ま す 。 こ こ で は 3 つ の 場 面 を 想 定 し 、 法 務 面 の 主 な ポ イ ン ト を 説 明 し ま す 。(a)技術移転(ライセンスアウト)に向けた準備
○ 技 術 シ ー ズ の 評 価 技 術 移 転 に 関 す る 流 れ は 一 般 的 に は 下 図 の よ う に な り ま す 。 大 学 等 や 中 小 企 業 の 技 術 シ ー ズ を 、 大 ⼿ ・ 中 堅 の 企 業 へ ラ イ セ ン ス 許 諾 ま た は 権 利 譲 渡 す る た め に は 、 ま ず は 技 術 シ ー ズ に 興 味 を 持 ち そ う な 企 業 を ⾒ つ け 出 し 、 そ の 企 業 に 技 術 評 価 し て も ら う 必 要 が あ り ま す 。 こ の 時 点 か ら 、 思 わ ぬ ト ラ ブ ル を 未 然 に 防 ⽌ す る た め に も 、 情 報 開 示 や サ ン プ ル 提 供 等 の 段 階 に 応 じ て 、 必 要 な 契 約 を 締 結 し て お く べ き で す 。 ( 出 所 ︓ ( 独 ) 工 業 所 有 権 情 報 ・ 研 修 館 「 知 っ て お き た い 特 許 契 約 の 基 礎 知 識 」 )- 17 - 秘 密 保 持 契 約 ( N D A ) 技 術 移 転 に 向 け て 企 業 と 接 す る と き に 、 開 示 し た 秘 密 情 報 に つ い て 、 相 ⼿ か ら 第 三 者 へ の 漏 洩 や 相 ⼿ に よ る 目 的 外 使 用 等 を 防 ⽌ す る た め に 締 結 す る 契 約 。 秘 密 情 報 と し て は 、 公 開 前 の 特 許 出 願 の 内 容 等 が あ る 。 研 究 試 料 提 供 契 約 ( M T A ) 遺 伝 ⼦ や 細 胞 、 試 薬 、 実 験 動 物 等 の 研 究 試 料 を 相 ⼿ に 提 供 し 、 相 ⼿ の 実 験 系 等 で 技 術 評 価 す る と き に 締 結 す る 契 約 。 契 約 内 容 は 、 対 象 と す る 研 究 試 料 の 特 定 、 義 務 を 負 う 期 間 、 目 的 外 使 用 の 禁 ⽌ 、 知 財 の 取 り 扱 い 等 。 オ プ シ ョ ン 契 約 共 同 研 究 を 実 施 す る か 否 か 、 特 許 の 実 施 許 諾 を 受 け る か 否 か 等 の 選 択 権 ( オ プ シ ョ ン ) を 相 ⼿ に 一 定 期 間 与 え る 契 約 。 こ ち ら は 相 ⼿ に 対 し 、 選 択 に 必 要 な 情 報 や 研 究 試 料 等 を 提 供 し 、 相 ⼿ は 一 定 の オ プ シ ョ ン ⾏ 使 期 間 内 に 限 り 、 そ れ ら に 関 す る 技 術 評 価 を す る こ と が で き る 。 【 コ ラ ム 】 秘 密 保 持 契 約 は ⼀ 方 的 ︖ 双 方 向 ︖ 技 術 シ ー ズ に 興 味 を 持 つ 企 業 に 接 触 し 、 詳 細 な 説 明 を す る と き は 、 事 前 に 秘 密 保 持 契 約 を 締 結 す る こ と が 大 切 で す 。 秘 密 保 持 契 約 は 、 相 ⼿ が こ ち ら に 対 し て 一 方 的 に 義 務 を 負 う 誓 約 書 の 形 式 で も 構 い ま せ ん が 、 技 術 移 転 の 話 が 進 展 す る に つ れ て 、 相 ⼿ 側 の 特 許 の 活 用 方 法 や 活 用 目 的 、 将 来 の 事 業 構 想 な ど 、 相 ⼿ 側 の 秘 密 情 報 に 触 れ る 可 能 性 も あ り ま す の で 、 双 方 が 同 等 の 権 利 ・ 義 務 を 負 う 形 式 に し て も よ い で し ょ う 。 【 コ ラ ム 】 秘 密 情 報 を 受 け る 側 の リ ス ク 製 薬 企 業 等 で は 、 ベ ン チ ャ ー 側 か ら 技 術 情 報 を 受 け る 際 、 公 開 で き る 情 報 だ け で 説 明 し て ほ し い と 要 望 す る こ と が あ り ま す 。 こ れ は 、 ベ ン チ ャ ー 側 が 秘 密 に し て い る 技 術 が 、 既 に そ の 製 薬 会 社 等 に お い て も 独 自 に 有 す る 技 術 で あ る 可 能 性 が あ る た め で す 。 も し そ の 技 術 が ベ ン チ ャ ー 側 か ら 提 示 さ れ る 秘 密 保 持 契 約 の 対 象 に な っ て し ま っ た 場 合 、 製 薬 企 業 等 は 独 自 技 術 で あ る に も か か わ ら ず 自 由 に 実 施 で き な く な り ま す 。 そ の た め 、 公 開 で き る 情 報 に よ る 説 明 の み に 限 定 す る こ と で 、 リ ス ク を 回 避 し て い ま す 。 ◯ 共 同 研 究 共 同 研 究 を 効 率 的 に 進 め る た め に は 、 双 方 に 良 好 な 信 頼 関 係 が あ る こ と が 重 要 で す 。 し か し 、 共 同 研 究 を 開 始 す る 前 に い く ら 信 頼 関 係 が あ っ た と し て も 、 そ の 後 に ト ラ ブ ル が 発 生 す る こ と も あ り ま す 。 例 え ば 、 共 同 研 究 の 成 果 が 出 て か ら 、 特 許 の 持 ち 分 を 決 め よ う と し て も 、 実 際 の 寄 与 度 と 成 果 と を 正 確 に 対 応 さ せ る こ と は 困 難 で す の で 、 互 い の 主 張 が 対 ⽴ し 、 折 り 合 い が つ か な く な る 可 能 性 も あ り ま す 。 ま た 、 共 同 研 究 の 開 始 前 か ら 自 ら が 保 有 し て い た 技 術 を 特 定 し て お か な い と 、 相 ⼿ に そ の 技 術 も 共 同 研 究 の 成 果 と み な さ れ て 、 勝 ⼿ に 使 わ れ て し ま う お そ れ も あ り ま す 。 そ の た め 、 共 同 研 究 を 開 始 す る 前 に 、 共 同 研 究 契 約 を 締 結 し 、 権 利 の 取 り 扱 い や
- 18 - 役 割 ・ 費 用 の 分 担 等 を 予 め 定 め て お く 必 要 が あ り ま す 。 こ こ で 重 要 な こ と は 「 事 前 」 に 締 結 す る と い う こ と で す 。 事 後 に 締 結 し よ う と し て も 、 そ の と き に は 上 記 の 例 の よ う に 既 に 紛 争 が 生 じ て し ま い 、 締 結 が 困 難 に な る お そ れ が あ る た め で す 。 通 常 は 、 共 同 研 究 で の 成 果 物 は 共 有 と な り 、 特 許 も 共 同 出 願 と な る の で 、 注 意 が 必 要 で す 。 特 許 が 共 有 の と き に は 一 方 の 特 許 権 者 が 他 の 特 許 権 者 か ら 同 意 を 得 な け れ ば 第 三 者 へ の ラ イ セ ン ス 許 諾 等 が で き ず 、 自 由 な ラ イ セ ン ス 活 動 が で き な く な り ま す 。 ま た 、 特 許 の 実 施 は 両 者 と も 自 由 に で き ま す の で 、 共 同 研 究 相 ⼿ が 大 ⼿ 企 業 の と き は 、 生 産 ⼒ や 販 売 ⼒ 等 に 勝 る 大 ⼿ 企 業 と の 販 売 競 争 に 打 ち 勝 つ こ と は 難 し く 、 結 果 的 に 製 品 が ほ と ん ど 売 れ な い 状 況 に 陥 る お そ れ が あ り ま す 。 将 来 の 事 業 化 を 考 え る の で あ れ ば 、 特 許 出 願 費 用 を 負 担 し て も ら え る か ら と い う よ う な 目 先 の 理 由 か ら 安 易 に 大 ⼿ 企 業 等 と 共 同 研 究 を 開 始 す る の は 避 け る べ き で す 。 共 同 研 究 を ⾏ う か 否 か に つ い て は 、 特 許 が 共 有 に な る こ と の 意 味 を よ く 理 解 し 、 将 来 の 事 業 を ⾒ 据 え て 慎 重 に 判 断 し ま し ょ う 。
- 19 -
(b)研究者がバイオベンチャーを⽴ち上げるとき
こ こ で は 、 大 学 等 の 研 究 者 が バ イ オ ベ ン チ ャ ー を ⽴ ち 上 げ る 場 合 に 注 意 す べ き こ と と し て 、 利 益 相 反 、 権 利 の 承 継 、 権 利 関 係 の 整 理 、 法 人 設 ⽴ に つ い て 説 明 し ま す 。 ◯ 利 益 相 反 真 理 の 探 究 を 目 的 と す る 大 学 と 、 利 益 追 求 を 目 的 と す る 企 業 と は 、 基 本 的 な 性 格 や 役 割 が 異 な り ま す の で 、 大 学 の 研 究 者 が 産 学 連 携 活 動 に 伴 っ て 得 る 利 益 と 大 学 に お け る 研 究 者 と し て の 責 任 と が 衝 突 す る 状 況 も 生 じ え ま す 。 こ の よ う な 状 況 が い わ ゆ る 「 利 益 相 反 」 と い わ れ る も の で す 。 利 益 相 反 は 産 学 連 携 活 動 全 般 に 関 係 し ま す が 、 各 大 学 等 に は 利 益 相 反 ポ リ シ ー が あ り 、 独 自 の マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム が 構 築 さ れ て い ま す の で 、 各 大 学 等 の 利 益 相 反 担 当 部 署 に 適 宜 問 い 合 わ せ 、 ル ー ル に 則 っ て 適 切 に 対 処 す る 必 要 が あ り ま す 。 特 に 大 学 等 の 研 究 者 が 企 業 の 取 締 役 に 就 任 す る と き に は ⼗ 分 留 意 し ま し ょ う 。 ◯ 権 利 の 承 継 大 学 等 の 研 究 者 が 、 大 学 等 か ら 特 許 出 願 し た 発 明 を も と に ベ ン チ ャ ー を ⽴ ち 上 げ る 場 合 、 大 学 等 か ら ベ ン チ ャ ー へ の 権 利 譲 渡 や ラ イ セ ン ス 許 諾 が 必 要 で す 。 そ の 流 れ の 一 例 を 図 で 示 し ま す 。大学等の研究者
発明大学等
届バイオベンチャー
②ライセンス許諾 ①権利譲渡 ③交渉不成⽴ 発明委員会等で審議 大学等で特許出願 各種手続き(中間処理) 発 明 個人で特許出願 特許権の所有 ラ イ セ ン ス 交 渉 特許権の所有 特許権の実施 特許 権 の 所 有 特 許 権 の 実 施 許諾 対価 対価- 20 - 研 究 者 が ベ ン チ ャ ー を 起 業 す る と 、 研 究 者 は ベ ン チ ャ ー 側 の ⽴ 場 で 、 大 学 等 と ラ イ セ ン ス 交 渉 す る こ と に な り ま す 。 そ の 時 点 で は 、 元 々 の 発 明 は 研 究 者 が 生 み 出 し た も の で あ る に も 関 わ ら ず 、 職 務 発 明 規 程 に 従 っ て 、 権 利 は 大 学 等 が 所 有 し て い ま す 。 そ の た め 、 一 旦 大 学 等 に 移 転 し た 権 利 を 研 究 者 側 ( ベ ン チ ャ ー 側 ) に 引 き 戻 す 必 要 が あ り ま す 。 ラ イ セ ン ス 交 渉 の 結 果 は ケ ー ス バ イ ケ ー ス で 、 大 学 等 か ら ベ ン チ ャ ー に 低 額 ま た は 無 償 で 譲 渡 や ラ イ セ ン ス 許 諾 を し て も ら え る こ と も あ る か も し れ ま せ ん が 、 逆 に 、 大 学 等 か ら 高 額 な 対 価 を 要 求 さ れ 、 自 身 が 発 明 者 で あ る に も か か わ ら ず 特 許 を 使 え ず に 、 起 業 を 断 念 せ ざ る を 得 な い ケ ー ス も あ り え ま す 。 ま た 、 研 究 者 は 大 学 等 の 異 動 が 多 々 あ り 、 前 職 の 大 学 等 で 出 願 し た 特 許 を も と に 起 業 す る ケ ー ス も あ り え ま す が 、 そ の 場 合 の ラ イ セ ン ス 交 渉 は よ り 困 難 に な る か も し れ ま せ ん 。 大 学 側 の 対 応 は 、 基 本 的 に は 各 大 学 等 の ラ イ セ ン ス ポ リ シ ー に 従 い ま す が 、 ラ イ セ ン ス ポ リ シ ー は 大 学 等 に よ っ て 異 な り ま す し 、 実 際 に は 同 じ 大 学 等 で あ っ て も 、 担 当 者 に よ っ て 対 応 が 異 な る こ と も あ る よ う で す 。 ◯ 権 利 関 係 の 整 理 知 的 財 産 権 を 元 に し た 事 業 を ⾏ う 場 合 、 そ の 権 利 が 共 有 で あ れ ば 、 権 利 関 係 を 整 理 す る こ と が 重 要 で す 。 権 利 を 受 け て 実 施 す る 大 ⼿ 企 業 に と っ て は 、 権 利 者 が 誰 で あ る か 、 独 占 ま た は 非 独 占 の 実 施 権 の 設 定 は あ る の か 、 と い っ た 権 利 関 係 が ラ イ セ ン ス 交 渉 の 重 要 な フ ァ ク タ ー の 一 つ と 考 え ら れ て い ま す 。 権 利 関 係 の 整 理 は 、 将 来 の ラ イ セ ン ス 交 渉 を ⾒ 据 え て 、 細 心 の 注 意 を 払 っ て 検 討 す べ き で す 。 ○ 法 人 設 ⽴ 法 人 格 は 法 務 局 の 商 業 登 記 簿 に 登 記 す る こ と に よ り 認 め ら れ ま す 。 法 人 格 を 取 得 す る と 、 事 業 の 主 体 は 法 人 と な り 、 契 約 も 法 人 が す る こ と に な り ま す 。 会 社 形 態 は 、 株 式 会 社 と す る の が 一 般 的 で す が 、 事 業 の 目 的 や 内 容 等 に よ っ て は 、 合 同 会 社 ( 日 本 型 L L C ) や 有 限 責 任 事 業 組 合 ( L L P ) 等 の 別 形 態 と す る こ と も 考 え ら れ ま す 。 そ れ ぞ れ の 特 徴 を 以 下 に 示 し ま す 。 株 式 会 社 会 社 法 に よ る 運 営 規 制 、 社 会 的 信 用 大 合 同 会 社 定 款 自 治 、 配 当 自 由 設 定 、 株 式 会 社 へ の 組 織 変 更 可 有 限 責 任 事 業 組 合 ( L L P ) 法 人 格 を 有 し な い ( 不 動 産 の 登 記 、 知 的 財 産 権 の 登 録 に 表 示 は 可 ) 、 内 部 自 治 原 則 、 構 成 員 課 税 、 組 織 変 更 や 合 併 が で き な い
- 21 - 【 コ ラ ム 】 事 業 化 を 目 指 す の な ら 、 任 意 団 体 で は な く 法 人 で 複 数 の 企 業 や 大 学 等 が コ ン ソ ー シ ア ム 形 式 で 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト を 進 め て い た 場 合 、 任 意 団 体 ( 協 議 会 等 ) を ⽴ ち 上 げ る ケ ー ス も あ り ま す 。 し か し 、 任 意 団 体 は 法 人 格 を 有 し ま せ ん の で 、 契 約 ⾏ 為 は で き ま せ ん 。 事 業 化 を 目 指 す の で あ れ ば 、 新 た に 法 人 を 設 ⽴ す る こ と が 望 ま れ ま す 。 法 人 設 ⽴ の メ リ ッ ト は 一 般 的 に 信 用 面 や 税 ⾦ 面 等 が 挙 げ ら れ ま す 。 信 用 面 の メ リ ッ ト は 営 業 面 で 最 も 大 き な メ リ ッ ト で 、 事 業 を 発 展 、 拡 大 さ せ て い く た め に 重 要 で す 。 税 ⾦ 面 の メ リ ッ ト は 個 人 事 業 よ り も 節 税 効 果 が あ り ま す が 、 そ れ は 既 に 事 業 が 採 算 ベ ー ス に 乗 っ て 利 益 が で て い る こ と が 前 提 で す 。
(c)中小企業が産学連携を始めるとき
中 小 企 業 が 大 学 等 の 技 術 シ ー ズ を 活 用 し 、 産 学 連 携 事 業 を 開 始 す る 場 合 に は 、 前 提 と し て 、 大 学 等 と 企 業 で は 根 本 的 な と こ ろ で お 互 い の 目 的 意 識 に 違 い が あ る こ と を 認 識 し ま し ょ う 。 大 学 等 の 使 命 は 研 究 ・ 教 育 ・ 社 会 貢 献 で す が 、 企 業 の 使 命 は 売 れ る 商 品 を つ く っ て 収 益 を 高 め る こ と で す 。 そ の た め 、 産 学 連 携 に よ り 生 み 出 さ れ た 知 財 の 取 り 扱 い に つ い て も 基 本 的 な ス タ ン ス に 違 い が 生 じ ま す 。 大 学 等 は 論 ⽂ 発 表 す る こ と 、 つ ま り 研 究 成 果 を 公 共 の も の に す る こ と に 重 き を 置 き 、 企 業 は そ の 知 財 で 事 業 を ⾏ う こ と 、 つ ま り 特 許 権 を 活 用 し 収 益 を 上 げ る こ と に 重 き を 置 き ま す 。 そ し て 、 こ の よ う な 違 い が 原 因 で 、 大 学 等 は 「 企 業 は 利 益 ば か り 気 に し て サ イ エ ン ス が わ か っ て な い 」 と 言 い 、 他 方 で 企 業 側 は 「 大 学 の 先 生 は 論 ⽂ ば か り 気 に し て ビ ジ ネ ス の こ と が わ か っ て い な い 」 と 言 っ て 、 お 互 い に 不 満 を 抱 い て し ま い が ち で す 。 し か し 、 こ の よ う な 目 的 意 識 の 違 い は 、 そ れ ぞ れ の ⽴ 場 を 踏 ま え る と 当 然 の も の で す か ら 、 無 理 に 目 的 意 識 を 完 全 に 一 致 さ せ る 必 要 も あ り ま せ ん 。 む し ろ 、 大 学 等 と 企 業 に は 上 記 の よ う な 目 的 意 識 の 違 い が 存 在 す る こ と を 前 提 に 、 お 互 い の ⽴ 場 を 尊 重 し な が ら 協 ⼒ 体 制 を 整 え る ほ う が 建 設 的 で は な い で し ょ う か 。 ○ 秘 密 保 持 契 約 大 学 等 に は ラ イ バ ル 企 業 が 相 談 に 来 る 可 能 性 も あ り ま す 。 こ の た め 、 相 談 の 段 階 か ら 秘 密 保 持 契 約 を 取 り 交 わ す こ と が 望 ま し い で す 。 ま た 、 共 同 研 究 先 の 研 究 室 の 学 生 ・ 院 生 は 卒 業 後 、 競 合 他 社 に 就 職 す る か も し れ ま せ ん 。 し か し 、 学 生 ・ 院 生 は 大 学 と 雇 用 関 係 が な い た め 、 大 学 等 と の 契 約 で は 守 秘 義 務 を 強 制 で き ま せ ん 。 そ の た め 、 学 生 ・ 院 生 に 対 し て は 、 誓 約 書 ・ 宣 誓 書 等 の 提 出 や 、 指 導 教 官 を 通 じ た 秘 密 保 持 の 指 導 等 が 必 要 で す 。 参 画 メ ン バ ー を 博 士 課 程- 22 - 以 上 や ポ ス ド ク の み に 限 定 す る こ と 等 を 考 え て も よ い で し ょ う 。 ○ 共 同 研 究 契 約 大 学 等 で は 契 約 の 雛 形 が 予 め 用 意 さ れ て い る こ と が 多 い で す が 、 ま ず は 研 究 者 や 産 学 連 携 担 当 者 等 と ⼗ 分 に 話 し 合 い 、 共 同 研 究 の 目 的 や 内 容 を 具 体 化 し 擦 り 合 わ せ ま し ょ う 。 内 容 に よ っ て は 共 同 研 究 よ り も 受 託 研 究 の 方 が 適 切 な こ と も あ り ま す 。 そ の 上 で 、 契 約 担 当 者 を 交 え て 契 約 締 結 の 準 備 を 開 始 し ま す 。 こ の 際 、 契 約 の 雛 形 を も と に 、 費 用 負 担 や 期 限 、 成 果 物 で あ る 知 財 の 取 扱 い 等 の 各 条 件 を ⼗ 分 に 協 議 し 、 お 互 い に 納 得 す る こ と が 大 切 で す 。 一 方 、 い く ら 共 同 研 究 契 約 が あ っ て も 、 大 学 等 の 関 係 者 ( 研 究 者 や 産 学 連 携 担 当 者 等 ) と の 良 好 な 関 係 が な け れ ば 、 プ ロ ジ ェ ク ト の 円 滑 な 運 営 は 困 難 に な る で し ょ う 。 研 究 者 を は じ め と し た 大 学 等 の 関 係 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 密 に ⾏ い 、 プ ロ ジ ェ ク ト の 進 捗 管 理 や 情 報 管 理 は 大 学 等 に 任 せ き り に せ ず 、 大 学 等 側 と 定 期 的 に 意 ⾒ 交 換 し な が ら 企 業 側 も 主 体 性 を 持 っ て 産 学 連 携 プ ロ ジ ェ ク ト に 取 り 組 み ま し ょ う 。 な お 、 大 学 等 は 、 共 同 研 究 の 成 果 を も と に 自 ら 事 業 を 実 施 し 収 益 を あ げ る こ と は で き ま せ ん 。 そ の た め 、 特 許 を 実 施 で き な い 大 学 等 に 対 し 共 同 研 究 相 ⼿ の 企 業 が 実 施 料 を ⽀ 払 っ て 補 償 す る 不 実 施 補 償 を 契 約 の 中 で 求 め ら れ る こ と が あ り ま す 。 【 コ ラ ム 】 大 学 等 と の 契 約 書 に 雛 形 が あ っ て も 、 ノ ー チ ェ ッ ク で は ダ メ 各 大 学 等 に は ラ イ セ ン ス ポ リ シ ー が 定 め ら れ て い て 、 共 同 研 究 や 受 託 研 究 等 の 契 約 書 の 雛 形 が あ る こ と も 多 い で す 。 た だ し 、 共 同 研 究 等 は 一 件 一 件 事 情 が 異 な り ま す し 、 雛 形 の ま ま で は 権 利 関 係 の 条 項 が ベ ン チ ャ ー 側 に か な り 厳 し い 場 合 も あ り ま す の で 、 雛 形 を ノ ー チ ェ ッ ク で 使 う こ と は 避 け ま し ょ う 。 雛 形 の 内 容 変 更 を 申 し 出 た と き の 大 学 等 の 対 応 は 様 々 で 、 交 渉 の 末 、 こ ち ら の 事 情 を 理 解 し 、 柔 軟 に 対 応 し て く れ る こ と も あ り ま す が 、 内 容 の 変 更 は 一 切 認 め な い と の ⽴ 場 を 貫 か れ て 押 し 切 ら れ て し ま う こ と も よ く あ り ま す 。 い く ら 交 渉 し て も 変 更 が 無 理 な 場 合 に は 、 別 途 覚 書 を 交 わ す 等 の 対 応 を 検 討 し ま し ょ う 。 い ず れ に し て も 、 相 ⼿ が 大 学 等 だ か ら と 諦 め ず 、 契 約 書 は き ち ん と チ ェ ッ ク し 、 事 業 の 妨 げ に な る 条 項 が 含 ま れ て い れ ば 交 渉 す る こ と を お 勧 め し ま す 。 具 体 的 な 対 応 に お 困 り の と き は 弁 護 士 等 の 専 門 家 に ご 相 談 く だ さ い 。