バレル 自転運動 公転運動 タレット回転軸 バレル回転軸 タレット バレル傾斜角 図1 傾斜型遠心バレルの運動原理
傾斜型遠心バレルによる超高速加工
清水 毅
*,孕石泰丈
*,倉島優一
*,萩原親作
*Ultra high-speed finishing by centrifugal inclination barrel
Tsuyoshi SHIMIZU, Yasutake HARAMIISHI, Yuichi KURASHIMA and Shinsaku HAGIWARA
バレル加工は小物部品のバリ取りや表面仕上げ等の加工に広く用いられている. その中でも,とりわけ遠心式 バレルは,他のバレル加工よりも加工能力が高く短時間で加工が行える.現在までに傾斜型高速遠心バレル加 工法の提案を行い,理論的取扱と試作機による実験的検討を行った.その結果,最大回転数1000min-1の時に, 傾斜角45 度で最も良い加工能力を示した.本報では,前報よりも詳細にバレル内部の遠心力による加速度分布 を計算し可視化した.さらに,タレット回転数を1000min-1から2000min-1へと超高速化を試み,加工能力の評価を 行った.実際に,ステンレス鋼(SUS304)でバリ取りを行った結果,極めて高いバリ取り能力を有することが確認で きた.
Key words : centrifugal barrel, deburring, media, centrifugal force, finishing, inclination angle of barrel
1.緒 言 バリ取りや表面仕上げ等の加工に用いられているバレル加 工には加工目的により複数の方式がある.中でも,とりわけ遠 心式は,他の方式よりも加工能力が高く,回転数の2乗以上に 比例し,加工量が大きくなると言われている1).そのため,その 加工能力に着目した研究がこれまでされてきた2)~6).遠心式 バレルの高速加工としては,歯科補綴物の研磨において,最 大回転数を1100min-1まで上げた報告がある5)6)が,さらに回転 数を増加することにより,ごく短時間で仕上げが可能になる可 能性も示唆されている. このような背景から,前報7)でバレル加工の高速化を検討し た.その結果, バレル回転数1000min-1,タレ ット回転数 を 333min-1の条件下でかつバレル自転軸をタレット回転軸に対 して45度傾斜させたとき,従来の遠心式バレルと比べ加工能 力が高くなることを確認した.本報では,運動中のバレル内の 遠心力による加速度分布について計算し,その可視化を行っ た.さらに回転数を上げ2000min-1とし,バレル加工としては, 超高速下での加工を行った. 2.バレル内遠心力分布シミュレーション 2.1 自公転運動の組合せに基づく遠心力 タレットとバレルの運動原理は図1の通りである.この特徴は, 自転と公転の運動の組み合わせとバレルに傾斜角をつけるこ とにより,容器内部で激しい研磨運動が期待できることである 7). 図2に前報7)で提案した傾斜型バレルの幾何学的運動モデ ルを示す.図2の(a),(c)におけるθがバレル傾斜角である.従 来の遠心バレル加工機の多くは,自転軸と公転軸が水平(横 型)方向で,かつ平行に配置されているが,ここでは立型で自 転軸がタレット上で自由に傾斜できる構造である.なお,詳細 は前報に示したので,ここでは,要点のみ簡潔に述べる. 図2(a) は自転と公転の座標系,(b)は(a)の視点 A から見た 図であり,(c)は(a)の視点 B から見た図である.バレルは(a)の ように傾斜して Z 軸回りに円運動する.また,タレットは角速 度で回転運動しており,バレルは角速度で自転運動して いるとする.なお,太字はベクトルを意味する.さらに,(b)に示 すように公転半径をR,自転半径を r とし,バレルの傾斜角θ は,(c)に示すようにタレット面(X-Y 平面)水平からの角度で表 す. いま,(b)のようにバレルが点 Q を中心に自転しているとき, 固定軸X-Y-Z,回転軸 x-y-z を図のように x 軸が常に半径方 向と一致するようにとり,点 P を(c)のように底面から l 離れた 外周上に取る.このとき,ある時刻の点P と x 軸とのなす角を とし,点P における速度を vpとすると, * 山梨大学大学院:〒400-8511 山梨県甲府市武田4-3-11 Graduate School, University of Yamanashi
〈学会受付日:2011年7月1日〉
k j i v sin cos ] cos ) sin ( ) cos ( [ sin ) sin ( r r l R r p (1) となる.ただし,i,j,k は,x,y,z 軸方向の単位ベクトルを表 す. また,点 P における加速度 apは,vp を時間微分すること で得られ, k j i a ] cos 2 ) cos cos sin ( [ cos sin ) sin 2 ( ] cos ) sin 2 ( ) cos cos sin ( sin [ 2 2 2 r l r R r r l r R p (2) と表せる. 2.2 バレル傾斜角による加速度分布 2.1で示した式(2)により,バレル内に働く加速度を計算した. 前報7)では,バレル底面の内端と外端の加速度のみを算出し たが,粒子運動に直接影響を及ぼす容器内部全体の加速度 分布が,とくにθとバレルの状態でどのように変化するかを調 べた. 加速度分布の計算条件は,バレル半径18mm,タレッ ト半径100mm,バレル自転数を333min-1,タレット公転数が 1000 min-1であり,バレル傾斜角度はθ=0度~90度である. 図3に計算結果を示す.図の(a)~(e)は,それぞれθ=0, 30,45,60,90度の場合である.図中(i)はx軸がタレット平面を 表し,θを変化させた時のバレルの姿勢を示している.また, (ii)はzx断面を示し,z軸を通るバレル断面の加速度分布を表 し,x=0は,図2(c)におけるQ点を表わしている.すなわち,x=0 がバレルの中心であり,x<0で内端側となり,x>0で外端側とな る.さらに,(iii)は,xy平面で見たときのバレル底面の加速度 分布を表している.(ii),(iii)における黒矢印は,加速度の方向 を示しているが,わかりやすいように加速度の方向を大きな白 矢印で示してある.また,加速度の大きさは,色の濃度で表さ れ,濃度が濃いほど(より黒いほど)大きくなる. 前報7)によれ ば,θ=0,30度では,加工能力が低い結果であった.このこと と,今回の計算結果を見れば,大きな特徴は,θ=0,30度とθ =45,60,90度では,(iii)のバレル底面において,外端と内端 で加速度の最大値が逆である.すなわち,前者では,外端より 内端の値が大きく,後者は外端が内端より大きい.しかし,(ii) のバレル断面方向に関しては,明確な傾向は得られていない. 松永も指摘している1)ように,バレル加工の基本は貼り付き現 象を起こさない状況が重要である.そのため,本条件下では, バレル底面における加速度について外端が内端より大きいこ とが重要と考えられる.すなわちこのとき,粒子群は貼り付きを 起こしにくくなり流動運動しやすいと思われる. まず,図3(a)のθが0度では,(ii)を見ると,加速度の方向は, バレル上面から下方向へ向いている.加速度の大きさを示す 濃度もバレル底面へ向かうに従い濃くなっており,強い加速 度が発生していることがわかる.また,(iii)のバレル底面を見る と,バレル円周方向に向かって加速度が働いており,加速度 の大きさは,x<0つまり,内端側が大きくなっている.また,内端 部では,加速度の方向成分は,バレル円周方向には作用して いないことがわかる.これらのことから,θ=0度の時は,バレル の底面において,内容物が白矢印方向のバレル内壁へ押し 付けられてしまい,加工が行われ難い状況にあると考えられる. 実際に,前報での結果もθ=0度の時は,ほとんど加工が進ま ず,加工が行われにくい状況にあった. 次に,図3(b)θ=30度について (ii)のバレル断面の加速度 分布を見ると,バレル上面から底面方向へ濃度が濃くなり,加 速度が大きくなっている.また,加速度の方向に関しては,白 矢印のように,バレル上面内端側からバレル底面外端側に向 いている.さらに,(iii)のバレル底面の加速度分布は,バレル 内端側の方が,加速度が大きくなる結果となったが,加速度 の方向に関しては,内端から外端への方向となった.これらの ことからバレル内端から外端へ向けて加速度が発生し,その 大きさは徐々に小さくなっていると考えられる.よって,バレル 内に発生する加速度の大きさの割に,バレル内壁に発生する 押し付け力が小さいのではないかと考えられる.実際に,前報 での加工結果もθ=30度では,ほとんど加工できていなか X Y Z 0 z x y 視点B 視 点 A X Y r z y x P バレル外周 内端 外端 公転軌道 X-Y 平面 Z R R 0 z y x P l Q Q
(a)バレル回転モデル (b) (a)の視点 A から見た図 (c) (a)の視点 B から見た図
x z ターレットの回転 Z O Q x z 30° ターレットの回転 Z O Q x z 45° ターレット の回転 Z O Q x z 60° ターレット の回転 Z O Q x z ターレットの回転 Z O Q -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 900 950 1000 1050 1100 1150 1200 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 50 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 1030 1035 1040 1045 1050 1055 1060 1065 1070 1075 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 50 600 700 800 900 1000 1100 1200 (ii) バレル断面 (iii) バレル底面 z m m x mm z m m x mm y m m ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 ac ce le ra tio n m /s 2 (ii) バレル断面 (iii) バレル底面 (ii) バレル断面 (iii) バレル底面 (ii) バレル断面 (iii) バレル底面 (ii) バレル断面 (iii) バレル底面 x mm y m m x mm (b) バレル傾斜角θ=30 度の場合 (c) バレル傾斜角θ=45 度の場合 (d) バレル傾斜角θ=60 度の場合 (e) バレル傾斜角θ=90 度の場合 (a) バレル傾斜角θ=0 度の場合 ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) (i) バレルの状態 (i) バレルの状態 (i) バレルの状態 (i) バレルの状態 (i) バレルの状態 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 50 1000 1020 1040 1060 1080 1100 1120 1140 1160 1180 1200 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 960 980 1000 1020 1040 1060 1080 1100 1120 1140 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 50 650 700 750 800 850 900 950 1000 1050 1100 1150 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 1030 1035 1040 1045 1050 1055 1060 1065 1070 1075 1080 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 980 1000 1020 1040 1060 1080 1100 1120 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 50 750 800 850 900 950 1000 1050 1100 1150 1200 z m m x mm z m m x mm y m m x mm y m m x mm x mm x mm z mm y m m ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) ( 内端) ( 外端) 図3 バレル傾斜角と遠心力による加速度分布
った. 一方,図3(c)のθ=45度の場合は,(ii)のバレル断面の加速 度分布では,θ=30度と同様の結果となったが,(iii)のバレル 底面の加速度分布については,バレル内端から外端方向へ 加速度が発生し,加速度の大きさもバレル内端から外端方向 へ大きくなった.この点において,θ=30度と大きく異なってい ることがわかる.この状態は,バレル断面の加速度分布以外 は,山本ら2)が示している遠心バレル内の加速度分布状態と 同様の状態である.実際に前報の加工結果では,θが45度 以上のとき,加工は良好であった. 図3(d)のθ=60度では,バレル上面からの押しつけ力が緩 やかになる.また,図3(e)のθ=90度ではバレル上側からの加 速度は発生せず,バレル壁面方向のみに加速度が発生して いる.そのため,バレル上面からの押しつけ力は働かない.こ れは,通常の遠心バレルの加速度分布と同じである. 図3(e)θ=90度と図3(c)θ=45度のバレル断面での加速度分 布を比べると,θ=45度では,白矢印のようにバレル内端上側 からバレル外端底面方向に加速度が向き,大きさも増してい る.このことから,θ=45度の時は,上面方向からの加圧も加わ ることで,θ=90度よりも複雑な加工流動が発生していると考え られる.実際に,前報では,θ=45度が最もよい加工結果とな った. ここまで,バレル傾斜角度を変化させて遠心力による加速 度分布を計算することで,加速度の分布状態が変わることが わかった.そこで,バレル底面における内端部,外端部の加 速度がバレル傾斜角によりどのように変化するか比較するた め加速度を計算した.その結果を図4に示す.横軸は,バレル 傾斜角度であり,縦軸が遠心力により発生する加速度である. この結果から,θ=0度では,内端に発生する加速度の方が大 きく,θ=45度付近で,内端と外端の加速度はほぼ等しくなり, θが45度より大きいと外端の加速度が内端よりも大きくなること がわかった.このことから,θ=45度では,内端部と外端部での 加速度差が少なくなり,バレル上面から下面への流動が加工 に大きな影響を与えていると考えられる. 3.超高速バレル加工 3.1 実験装置 図5に試作した装置を示す.前報で試作した装置を改良し, 2000min-1にも耐えられる構造とした.バレルは内径80mm,深 さ50mmであり,これまでの結果をふまえ,バレル傾斜角は45 度とした.また,駆動モータは,速度制御モータ(オリエンタル モータUS590-001C)を用い,タレットとバレルはタイミングプー リを介して接続されている.バレルは,タレットが回転すること により,タレットと逆に回転する.バレルの自転数とターレットの 公転数は,直径の異なるタイミングプーリを交換することで変 化させる.また,高速回転時に危険を回避するためにバランス 調整用重りをバレルに対向させ配置した. 3.2 加工量の変化 まず,加工量の変化について実験を行った.加工条件を表 1に示す.タレット回転数は1000min-1,2000min-1の2条件とし, それぞれ,ドライ加工と加工液として水を用いた.バレルの回 図5 改良した試作機 表1 加工条件 ワーク SKD11(□2mm,□6mm,□10mm)立方体 形状で,焼入れ硬さHRC 58 メディア アルミナ系研磨石(平均径約3mm) 50g 加工液 ドライ,水 50ml 回転数 タレット1000min -1(バレル400min-1) タレット2000min-1(バレル800min-1) 加工時間 10 分(2 分ごとに総加工量を測定) 転数に関しては,前報の結果を受け,タレット回転数の1/3とし た.ワークはSKD11(焼入れ硬さHRC58)を用い,ワイヤ放電 加工で一辺2mm,6mm,10mmの立方体形状に製作した.製作 したワークの表面は,放電痕となっており,加工前の表面粗さ は2μm(Ra)程度であった.加工時間は,全体で10分間とし,2 分ごとに研磨量(mg),表面粗さを測定してワーク表面の様子 をマイクロスコープで観察した. 加工量の変化を図6に示す.(i)は,ドライ加工時の加工量, (ii)は,加工液として水を用いた場合の加工量を示す.測定 は,加工の前後で精密天秤によりワーク10個の重量差を調べ 平均した.また,それぞれの図の(a)は回転数1000min-1,(b)は 2000min-1,横軸は加工時間,縦軸は,ワークの累積加工量を 示している. 図6(i)の(a)を見ると,ワークサイズが□2mm,□6mm,□10 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 内端 外端 遠 心 力 に よ る 加 速 度 m /s 2 バレル傾斜角 度 図4 バレル底面における遠心力による内端外端の加速度 バレル おもり プーリ
総加工量 m g 加工時間 min 総加工量 m g 加工時間 min □10mm □10mm □6mm □6mm □2mm □2mm 0 10 20 30 40 50 0 2 4 6 8 10 0 10 20 30 40 50 0 2 4 6 8 10
(a) タレット 1000min-1,バレル400 min-1での加工 (b) タレット 2000min-1,バレル800min-1での加工
(i) ドライ加工における加工量 総 加 工 量 m g 加工時間 min 総 加 工 量 m g 加工時間 min □10mm □10mm □6mm □6mm □2mm □2mm 0 10 20 30 40 50 0 2 4 6 8 10 0 10 20 30 40 50 0 2 4 6 8 10
(a) タレット 1000min-1,バレル400 min-1での加工 (b) タレット 2000min-1,バレル800min-1での加工 (ii) 加工液に水を用いた場合の加工量 図6 SKD11 の加工量 表 面 あ ら さ (R a) μ m 表 面 あ ら さ ( R a) μ m 加工時間 min 加工時間 min □10mm □10mm □6mm □6mm □2mm □2mm 0 1 2 3 0 2 4 6 8 10 0 1 2 3 0 2 4 6 8 10
(a) タレット 1000min-1,バレル400 min-1での加工 (b) タレット 2000min-1,バレル800min-1での加工 (i) ドライ加工における表面粗さ 表 面 あ ら さ (R a) μ m 表 面 あ らさ (R a) μ m 加工時間 min 加工時間 min □10mm □10mm □6mm □6mm □2mm □2mm 0 1 2 3 0 2 4 6 8 10 0 1 2 3 0 2 4 6 8 10
(a) タレット 1000min-1,バレル400 min-1での加工 (b) タレット 2000min-1,バレル800min-1での加工 (ii) 加工液に水を用いた場合の表面粗さ
mmの順に加工量が大きくなった.また,回転数が(a)と比べて 2倍である(b)を比較すると,加工量はどのワークも3倍程度多く なった.一方,図6(i)と(ii)を比べると2000min-1における加工量 の増加傾向は,2000min-1の場合と同じような傾向となった.し かしながら,1000min-1における増加傾向は,□2mmと□6mm では,加工液を用いた方が若干多くなったが,これを特徴づ ける明確な理由は見いだせなかった. 全体的には,タレット回転数を上げると,加工量が大幅に向 上したが,加工液の有無には大きな違いはなかった. 3.3 表面粗さの変化 図7に研磨時間と表面粗さの関係を示す.(i)は,ドライ加工 時の表面粗さ,(ii)は,加工液として水を用いた場合の表面 粗さを示す.また,それぞれ,(a)は,回転数が1000min-1,(b) は,2000min-1での加工結果である.横軸に加工時間をとり, 縦軸は表面粗さ(Ra)を示している. 図7(i)の(a)を見ると,ワークサイズに関係なく,表面粗さは, 向上した.また,(b)を見ると,(a)と同様にワークサイズと関係な く表面粗さは改善された. 一方,図7(ii)の(a)を見ると,ドライ加工よりも表面粗さは改 善されなかった.同様に(b)においても,ドライ加工時よりも表 面粗さの改善は少なかった.しかしながら,ドライ加工ほど急 速ではないが,粗さは改善される傾向となった. 3.4 表面の状態 次にマイクロスコープにより観察した結果の一例を図8に示 す.加工前のワークの放電加工面が,加工後は研磨されてお り,光沢がみられる.これは,ワークの大きさに関係なく観察さ れた.表面状態は,加工液の有無により異なり,水を用いた場 合,すべての面でムラがなく均一に光沢が観察された.ドライ 研磨の場合は,ワーク表面にとくに研磨ムラは観察されなかっ たが,水を用いて研磨したワーク表面と比較して,凹凸が見ら れた.また,すべてのワークについてエッジ部は丸みをおびて いることが確認され,短時間でバリ取りが行える超高速バリ取 り装置として有効であることが確認できた. 3.5 ステンレス鋼のバリ取り これまでに,超高速でのバレル加工が十分に行えることが 確認できた.また,加工能力が高いことがわかったので,バリ 取り実験をバリの出やすいステンレス鋼(SUS304)にて行った. ステンレス鋼(SUS304)は,直径 10mm の丸棒を用い,帯鋸盤 で切断した.硬さはSKD11 に比べ,HRC でおよそ 1/5 である. 図9 にその様子を示す.本装置で 2000min-1,アルミナ系研磨 石(平均径約3mm)でバリ取りを行ったところ,6 分の加工でバ リを完全に除去することができた.さらにワーク表面も加工が 行われている.このことから,バリ取り能力は十分であることが 確認できた. 4.結 言 本報では,傾斜型高速遠心バレル加工について,タレット 回転数を2000min-1まで上げたときの加工性能を評価した. まとめると, (1) バレル内の加速度分布の計算方法を示した.さらに, バレルを傾斜させたときのバレル内の加速度分布を計 算し,バレル断面と底面の加速度分布を可視化した. (2) 可視化した結果,バレル傾斜角が 45 度付近で,内端部と 外端部の加速度がほぼ等しくなり,バレル上面から下面 方向へ加速度が働いていることがわかった.このため,複 雑な流動が行われていると考えられる. (3) 2000min-1という超高速運転でSKD11を研磨を行った結 果,数分で粗さが改善されることを確認した. (4) ステンレス鋼(SUS304)でバリ取りを行った結果,良好なバ リ取り能力を有することを確認した. 5.参考文献 1) 松永正久:金属表面技術講座3(表面研磨法),朝倉書店,(1963) 165. 2) A. YAMAMOTO, K. KITAJIMA, Y. SAKURADA and S. NOROTA: Study on Centrifugal Barrel Finishing (1st Report)-Charging Ratio of Media-, J. Jpn. Soc. Precis. Eng., 63, 3(1997)399(in Japanese).
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4)A. YAMAMOTO, K. KITAJIMA: Finishing characteristics on titanium alloys in dry centrifugal barrel finishing, J. Jpn. Soc. Abras. Technol. 52(12),(2008) 730.
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7) Shinsaku HAGIWARA and Tsuyoshi SHIMIZU, High-speed finishing by centrifugal inclination barrel, Journal of the Japan Society for Abrasive Technology, 53, 5(2009)297. (a)加工前 (b) 6 分加工後 図9 ステンレス鋼(φ10×15mm)の加工例 図8 10 分加工後の様子 (a) ワーク表面 (×50 倍) 加工前 10 分加工後 (b) エッジ部 (×50 倍)