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学校・地域における運動器対策と理学療法士の取り組み

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 643 ~ 644 学校・地域における運動器対策と理学療法士の取り組み 頁(2015 年). 643. 合同シンポジウム 1(日本整形外科学会). 学校・地域における運動器対策と理学療法士の取り組み* 大工谷新一**. はじめに. 運動器機能チェックでは,事前研修として基本的な注意事項 と理学療法士が行う学校での活動の意義を講義で学習したの. 超高齢社会を迎えた我が国の運動器の健康について,日本学. ちに,DVD「学校の運動器疾患・障害に対する取り組み」(監. 術会議臨床医学委員会運動器分科会は,運動器の健康の重要性. 修:一般財団法人運動器の 10 年・日本協会,制作:財団法人. に関する啓発や学問としての推進,総合的研究体制の構築と人. 日本学校保健会)をもとに運動器機能のチェック方法を実地練. 材育成,運動器検診のエビデンスの構築と実現,および運動器. 習も含めて習得させた。研修修了者から希望する者について. 障害者の活動低下予防の重要性を提言している 1)。この提言で. は,大阪府理学療法士会が実施する運動器機能チェック担当者. は,多くの人が遭遇する運動器障害についての認識が不足して. 名簿に登録した。事前研修は 6 ヵ月間で 3 回実施し,合計 287. いること,ライフステージごとの評価法と治療法,および予防. 名が登録した。実際の運動器機能チェックは市立中学校 1 校の. 法のエビデンスが不足していることを課題とし,それらの解消. 2 年生を対象に次のとおり実施した。1 学年 6 クラスの生徒の. に立脚した運動器の健康の維持・増進に向けた人材育成の必要. 体育実技の時間を利用して,1 クラスにつき 3 名の担当者を配. 性が導かれている。これより,運動器対策としての運動器疾患. 置し,体育授業の準備体操の観察により運動器機能を独自の評. の予防のキーワードとしては,「啓発」,「子どもから高齢者ま. 価チャートによりチェックした。準備体操中にチェックできな. で」ということが考えられる。. かった項目については,追加で運動を指示して観察した。運動. 運動器対策としての運動器疾患の予防には子どもから高齢者. 器機能チェックの所要時間は,すべてのクラスで 10 分以内で. を通じた様々な年代と性別に配慮した対応が求められ,その. あった。運動器機能チェックの結果としては,277 名の生徒の. フィールドは学校,企業,地域と多岐にわたる。学校において. うち 29 名(13%)に今後なんらかの継続的な観察を要する所. は,児童・生徒と教職員に対する介入が必要であり,特に,児. 見が得られた。. 童・生徒に対しては学校医や養護教諭と連携した運動器機能の. 生徒への講義としては,市立中学校 1 校の最終学年の全クラ. チェックと健康教育が重要である。また,地域においては,特. スを対象に,保健体育の授業時間(1 時限)を利用して,クラ. に高齢者における運動器機能や生活機能の低下を予防するため. スごとに姿勢や健康についての講義を実施した。また,全学年. に,生活に密着したなかでの介入が重要となる。. の保健委員(生徒)35 名を対象に 50 分間の講義を特別研修と. 本稿では,運動器対策としての運動器疾患の予防における理. いう位置づけで実施した。講義内容は,乳幼児からの発達と成. 学療法士の取り組みについて,学校と地域というふたつの領域. 長,骨の役割と成長,筋と骨の成長のバランス,睡眠と成長,. での実例を紹介し,理学療法士の運動器対策における可能性に. 座位・立位姿勢についてであった。. ついて考える一助としたい。. 養護教諭向けの研修としては,市内の小中学校の養護教諭部. 学校における理学療法士の取り組み(公益社団法人大 阪府理学療法士会における学校保健に関連する事業). 会研修会において,側弯症とスポーツ外傷・障害の予防をテー マに 1 回ずつの講義を実施した。 この取り組みは,子どもの頃から運動器の健康に興味をもっ. 公益社団法人大阪府理学療法士会では,筆者が会長であった. てもらうことや,実際に子どもの健康を守る最前線にいる養護. 2014(平成 26)年に,中学校の生徒と教職員に対する健康・. 教諭,体育教諭への正しい知識や啓発を目的に実施した。. 予防の啓発と運動器の異常チェックを公益事業として試行的に 実施した。具体的には,市立中学校の養護教諭,体育教諭と連 携しながら,生徒の運動器機能チェックと生徒および養護教諭 への健康教育(講義)を実施した。. *. Intervention and Physical Therapist’s Commitment to the Prevention of Musculoskeletal Disorder for Students and Elders ** 株式会社リビングケア (〒 220–0004 神奈川県横浜市西区北幸 2–9–10 横浜 HS ビル 3 階) Shinichi Daikuya, COO: Living Care Company limited キーワード:運動器対策,学校,地域. 地域における理学療法士の取り組み(株式会社リビン グケアにおける地域在住の高齢者の運動器機能,生活 機能向上に対する取り組み) 筆者の所属する株式会社リビングケアでは,高齢者に対して 低価格で住居を提供し,通所介護事業所,訪問看護ステーショ ン,訪問介護ステーション,診療所との連携のもとに高齢者の 運動器機能をはじめとした生活機能の維持と向上を目的に理学 療法士の監修のもとで種々の職種が介入している。高齢者の生.

(2) 644. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 ける入居者の最大能力のプレゼンテーション,居室や共有ス ペースの模様替えなどを行った。理学療法士による介入は継続 的な介入を要する場合を除き,原則として 1 ヵ月に 1 回の頻度 とし,介入後はケアスタッフを中心とした施設全体の取り組み として理学療法士の評価指導内容を継続させた。結果として は,理学療法士の訪問による平均介入回数は 3(1 ~ 5)回/人, 平均介入期間は 3(1 ~ 5)ヵ月であり,143 名の歩行が自立し, 車いすは常時不使用となった。また,840 名が介助や見守りで の歩行が可能となり,車いすの使用は間欠的となった。 地域在住の高齢者の運動器機能や生活機能の低下の要因とし ては,内的要因としての心身機能の低下,外的要因としての過. 図 株式会社リビングケアの生活機能向上コンセプト(文献 2 より引用). 剰な介護や過度のバリアフリーによる“使わなさすぎ”,社会 からの疎外感や人間関係などの要因から起こる閉じこもりや引 きこもり状態となることなどが考えられる。理学療法士の取り 組みとしては,内的要因に対する直接的理学療法と,外的要因. 活機能の維持と向上には,運動器対策をはじめとした筋力や柔. に対するスタッフ指導や環境整備といった間接的理学療法の双. 軟性,神経調整力という内的要因への介入と,外的要因として. 方が重要となる。さらに,閉じこもりや引きこもりに対しては,. の介護スタッフの教育や施設・設備の整備が重要となる(図)。. 高齢者の役割や居場所を明確にし,小さいコミュニティのなか. その双方において,理学療法士の視点を活用した個別ケアを実. で,スタッフも一緒となった家族的な関係のなかで,活動と参. 践している。以下に株式会社リビングケアでの介入前の基礎的. 加を促進していくことも必要であると考えられる。. 縦断的研修として実施した,車いすからの離脱を目的とした理 学療法的介入の実践例を供覧する。. おわりに. 某有料老人ホーム運営会社が経営する 98 施設の入居者のう. 冒頭でも述べたように超高齢社会における運動器の健康に. ち,施設内の介護支援専門員または看護師から,車いす離脱. は,次の 3 点が重要と考えられる。. 候補者として提示された入居者(のべ 9,731 名,2007 年 1 月~. 1.多くの人が遭遇する運動器障害の認識不足(社会全体). 2013 年 1 月)を対象とした。車いすからの離脱を目的とした. 2.ライフステージごとの評価法,治療法,予防法のエビデ. 理学療法的介入は,車いすを使用している(歩行できない,歩. ンス. 行していない)要因に対して,以下のように実施した。まず,. 3.運動器の健康の維持・増進に向けた人材育成. 内的要因の改善には体力向上を目的として,理学療法士による. これらに対する理学療法士の取り組みとしては,1.子ども. 身体機能評価から得られた結果をもとに,身体機能を最大限に. の頃からかかわることによって意識を変化させること(啓発),. 活用するための動き方や介助・介護方法,身体機能の維持・向. 2.内的要因(個人因子)と外的要因(介護者,保護者を含め. 上のための自主練習方法をケアスタッフに指導し,ワークスケ. た環境因子)の双方への介入と客観的結果の蓄積,3.理学療. ジュールに反映させ,日常的に実施させた。車いすの常時使用. 法士のキャリアデザインと他の学会から認められうる認定制度. に関連する外的要因には,ケアスタッフの介護技術や「移動」. などの生涯学習の仕組みに裏づけられた学校保健や介護領域へ. に対する意識,施設の問題が挙げられた。具体的には,歩行や. の展開が必要と考えられる。. 移乗の介護技術に自信がないために車いすを使用してしまって いる場合や,歩行が可能である入居者の能力に気づかずに車い すを使用している場合,居室のレイアウトや共有スペースの使 い方に問題がある場合などが抽出された。それらへの理学療法 的介入としては,ケアスタッフに対する実際の技術指導(On the Job Training)や理学療法士による直接的理学療法後にお. 文 献 1) 日本学術会議 臨床医学委員会 運動器分科会:提言 超高齢社会に おける運動器の健康 ─健康寿命延伸に向けて─.2014,9,1. 2)Daikuya S, Kuki S, et al.: Physical therapy as health support for frail older citizens living in private nursing homes. Archives of Complex Environmental Studies (ACES). 2010; 16: 16–20..

(3)

図  株式会社リビングケアの生活機能向上コンセプト(文献 2 より引用)

参照

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