学校・地域における運動器対策と理学療法士の取り組み
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(2) 644. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 ける入居者の最大能力のプレゼンテーション,居室や共有ス ペースの模様替えなどを行った。理学療法士による介入は継続 的な介入を要する場合を除き,原則として 1 ヵ月に 1 回の頻度 とし,介入後はケアスタッフを中心とした施設全体の取り組み として理学療法士の評価指導内容を継続させた。結果として は,理学療法士の訪問による平均介入回数は 3(1 ~ 5)回/人, 平均介入期間は 3(1 ~ 5)ヵ月であり,143 名の歩行が自立し, 車いすは常時不使用となった。また,840 名が介助や見守りで の歩行が可能となり,車いすの使用は間欠的となった。 地域在住の高齢者の運動器機能や生活機能の低下の要因とし ては,内的要因としての心身機能の低下,外的要因としての過. 図 株式会社リビングケアの生活機能向上コンセプト(文献 2 より引用). 剰な介護や過度のバリアフリーによる“使わなさすぎ”,社会 からの疎外感や人間関係などの要因から起こる閉じこもりや引 きこもり状態となることなどが考えられる。理学療法士の取り 組みとしては,内的要因に対する直接的理学療法と,外的要因. 活機能の維持と向上には,運動器対策をはじめとした筋力や柔. に対するスタッフ指導や環境整備といった間接的理学療法の双. 軟性,神経調整力という内的要因への介入と,外的要因として. 方が重要となる。さらに,閉じこもりや引きこもりに対しては,. の介護スタッフの教育や施設・設備の整備が重要となる(図)。. 高齢者の役割や居場所を明確にし,小さいコミュニティのなか. その双方において,理学療法士の視点を活用した個別ケアを実. で,スタッフも一緒となった家族的な関係のなかで,活動と参. 践している。以下に株式会社リビングケアでの介入前の基礎的. 加を促進していくことも必要であると考えられる。. 縦断的研修として実施した,車いすからの離脱を目的とした理 学療法的介入の実践例を供覧する。. おわりに. 某有料老人ホーム運営会社が経営する 98 施設の入居者のう. 冒頭でも述べたように超高齢社会における運動器の健康に. ち,施設内の介護支援専門員または看護師から,車いす離脱. は,次の 3 点が重要と考えられる。. 候補者として提示された入居者(のべ 9,731 名,2007 年 1 月~. 1.多くの人が遭遇する運動器障害の認識不足(社会全体). 2013 年 1 月)を対象とした。車いすからの離脱を目的とした. 2.ライフステージごとの評価法,治療法,予防法のエビデ. 理学療法的介入は,車いすを使用している(歩行できない,歩. ンス. 行していない)要因に対して,以下のように実施した。まず,. 3.運動器の健康の維持・増進に向けた人材育成. 内的要因の改善には体力向上を目的として,理学療法士による. これらに対する理学療法士の取り組みとしては,1.子ども. 身体機能評価から得られた結果をもとに,身体機能を最大限に. の頃からかかわることによって意識を変化させること(啓発),. 活用するための動き方や介助・介護方法,身体機能の維持・向. 2.内的要因(個人因子)と外的要因(介護者,保護者を含め. 上のための自主練習方法をケアスタッフに指導し,ワークスケ. た環境因子)の双方への介入と客観的結果の蓄積,3.理学療. ジュールに反映させ,日常的に実施させた。車いすの常時使用. 法士のキャリアデザインと他の学会から認められうる認定制度. に関連する外的要因には,ケアスタッフの介護技術や「移動」. などの生涯学習の仕組みに裏づけられた学校保健や介護領域へ. に対する意識,施設の問題が挙げられた。具体的には,歩行や. の展開が必要と考えられる。. 移乗の介護技術に自信がないために車いすを使用してしまって いる場合や,歩行が可能である入居者の能力に気づかずに車い すを使用している場合,居室のレイアウトや共有スペースの使 い方に問題がある場合などが抽出された。それらへの理学療法 的介入としては,ケアスタッフに対する実際の技術指導(On the Job Training)や理学療法士による直接的理学療法後にお. 文 献 1) 日本学術会議 臨床医学委員会 運動器分科会:提言 超高齢社会に おける運動器の健康 ─健康寿命延伸に向けて─.2014,9,1. 2)Daikuya S, Kuki S, et al.: Physical therapy as health support for frail older citizens living in private nursing homes. Archives of Complex Environmental Studies (ACES). 2010; 16: 16–20..
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