報 告
パー
キ
ンソ
ニズ
ム患
者
に
対 す
る
補 高
が
足 圧
中
心
動
揺
・
歩
行
に
及
ぼ
す影
響
*重
症度別
の検討
奥
壽 郎
1)網 本
和
2)山 崎 裕
司
2) 要旨 パー
キ ン ソニ ズムに対する補 高の効 果 を,
立位 足 圧中心 動揺 (静的 立 位,
側 方動的立位,
前後動 的立 位 ),
歩 行 (速 度,
歩 幅 )の点から,
重 症 度 別に検 討 した。 対 象はパー
キ ン ソニ ズ ム患者 29 例で,
Yahr の重 症 度 分類に基づき,
軽 症 群 (1, ll)12 例, 中等度群 (HI, IV)11 例, 重 症群 (V ) 6 例 に分 け,
対 照 健 常 群 10例 を 含めて非 補 高 時 と補 高 時 と を比較分 析した。
その結果, 対照 健常群は全項 目で補 高に よ る変 化はな か っ た。 軽 症 群で は補 高 施 行に より側 方 動 的 立 位にお け る左 右 足 圧 中 心 動 揺 標 準 偏 蕪が増 加し た。 中 等 度 群で は補 高 施 行に より全測 定 条 件で足 圧中心は前 方に移動, 静的 立 位の動揺 距 離が減 少し,
側 方 及び前 方 立 位の左 右 及び前 後 動 揺 標 準 偏 差が増 加 した。 歩 行で は補 高 施 行により,
歩 幅が延 長し,
速度は増 大 した。
重 症 群で は補 高 施 行に よ り静 的 立 位の動 揺 距 離が減 少 する傾 向であっ た。 これ らの結 果より,
パー
キン ソニ ズム患 者に対 する補 高の効 果と して,軽
症 群で は側 方へ の随 意 的 重 心 移 動能力,
中等 度 群で は静 的立位バ ラン ス・
側方及び前後へ の随 意 的重 心 移 動 能 力 さ らに歩 行 能 力,
重 症群で は静的立位バ ラ ン ス の改善が期待で き るもの と考え ら れ た 。 キー
ワー
ド パー
キン ソニ ズ ム, 補 高, 重症度 は じ め に パー
キンソニ ズムに対する理学 療 法アブU一
チ は,
振 戦,
固 縮,
無 動,
姿 勢 調 節 障 害の4
大 徴 候の う ちADL
iEffectsof Heels Lift on the Posture and Gait in Pa
−
tients with Parkinsonism1)聖マ リアンナ医科大学病院リハ ビリ テ
ー
ショ ン部(現所属 :聖マ リ アンナ医科 大 学東横病院リ
ハ
ビリ テー
ション部 :〒211神 奈 川 県 川 崎市 中原 区小 杉 町3
−
435)Toshirou Oku
,
RPT :Dept,
of Rehabilitation Medicine,
St Marianna University School of Medic 孟ne Hospital
(Present: Dept
.
of Rehabilitatlon Medicine,
St.
Marianna University School of Medicine Toyoko Hos
−
pital)
2)聖マ リ
アンナ医科大学病 院リハ ビリ テ
ー
ショ ン部Kazu Amimoto
,
MA,
RPT,
Hiroshi Yamasaki MA,
RPT :Dept of Rehabilitation Medicine
,
St Marianna Universi−
ty School of Medicine HospitaI
(受付日 1994年IQ月31日/受理 日 1995年/1月ll目) 障 害 との関連性よ り み ると
,
無動,
姿勢調 節障害な ど を 助 長する因子に対して行うこと が望ま しい こと は,
諸 家 に より報告されて い る1−
3)。 我々 はこ う し た観 点よ り,
パー
キンソニ ズム のADL
障害は 主 と して,
姿 勢 調 節 障 害を 基 盤 と してい る と考え 立位 足圧中心動揺を測定して き た。 静 止 立位のみ ならず 随 意的な動 的立位を 加 えて健常 者と比 較 することにより 分 析を試み た。 その結果,
本 疾 患で は静 止 立位に おい て 健 常人に比 し重 心が後方にあ ること を指 摘し た4)。 こ の こ とは最近の さ まざま な研 究におい て も注目さ れて お り5−
7), こ の こと が立ち上がり,
歩 行時に重 心が後 方に 残っ て し ま う という本疾患に特 徴的な立位・
歩行「璋害に 関与し てい る こ と が言わ れて い る5’
7)。 さ ら に新し い試 み と して本疾患 患者に対し補 高 (本稿では補高を踵部の みを高くす ること とする)を施 行し他動的に重心 を前方に変 位 させ た際の
,
立位足 圧中心動 揺, 歩行の改善につ い て報 告 して きた8)。 その中で,
立位足 圧中心動 揺にお いて, 側方へ の 随意的重心移 動能力の改 善は認め た が,
静的立位バ ラ ンスお よ び前 後の随 意 的 重 心 移 動 能力の改 善は認め な かっ た。 これ らの要 因と して,
本 疾 患は重 症 度が増すにっれ姿 勢 調 節 障 害 も重 症と な り, 補 高に対す る重 症 度によ る反 応の違いが関 与 してい るもの と考え ら れる。
こ の ことか ら,
パー
キン ソ ニ ズムの ア プロー
チ と して補 高を 選択す る場 合に患 者へ の適 応を合理的に行う ことがで きる と考え ら れ る。 本研究の 目的 は,
重 症度によ る補 高に対 する反 応の違 いを検討し,
パー
キンソニ ズムに対 す る補 高の適 応 を 明 らか にすることである。 対 象 1990 年 9月か ら1993
年9
月まで に当 院に通院ま た は 入院して い た,
立位・
歩 行 障 害を 主訴とするパー
キン ソ ニ ズム患 者29
例 (平 均 年wa
66、
5
±7.
9
di
,
男 性 19例,
女性 正0
例,
平均罹病期 間4,
4±3.
6年)を対 象と し た。
これらの患 者 は全 例が,
薬 物 治 療 (主な投 与 薬 物 は,
メ ネシ ッ ト,
シ ンメ トリル,
アー
テンで あっ た) 及 び理 学 療 法 を 受 けてお り,
Hohen & Yahr の重 症度分 類 (以 ド, Yahr stage とする)の内訳で は, 1
は5
例,
且 は7
例,
皿 は5
例,
IVは6
例,
V は 6 例で あっ た。 これら の うち21
例が屋 内 歩 行 が 自立であっ た。 ま た,
stageV の うち2例は立 位 自力 保 持が不 可 能で あっ た。
な お,
脳 血管 性パー
キ ン ソニ ズム 5例に は明らか な麻痺,
痙 縮は 認め られ な かっ た。
全例と も著 明な下肢 ROM 制限, 前 屈 姿 勢 並 びに精 神 症 状は認 め られ な かっ た。 そして,
こ れ らを stage I,
[を軽症群 (n=12
), 1
皿,
IVを中等 度 群 (n蕭
11),
V を 重 症群 (n=6
)に分類した 。 対照 群とし て同等 な年齢の健 常 者10
例 (平 均年齢 68.
5 ±2、
9
歳 )も併せ対象者と し た。 対 象 者に は,
検 査 内 容と 目的を1
分に説 明し同意を得た。 方 法 補 高は硬性ゴムであるEVA (啓 愛義肢社製)を使用 し た。
EVA を靴の ヒー
ル状の型 状に採 型 し靴 内の踵部 に装 着させた。
補 高の高 さは立 位 保 持 可 能なパー
キ ン ソ ニ ズム患 者 及 び対 照 群は 1cm とした。
Yahr stageV の 症 例は,
立 位 保 持が安 定 する高さ ま でO.
5 crn ずつ 高く して いっ た。
補 高の平均は 1.
75cm (1.
0〜
3.
O cm )で あっ た。 そ して,
以 下の測 定 項 目につ いて 補 高 が足 圧 中 心動揺と歩行に与える影 響 を対照群, 軽症群, 中等度 群,
重症群にっ い て比 較 検 討し た。
正,
立 位 足 圧中心 動揺 測定 立位足 圧中心動 揺は,
ア ニ マ 製 重 心 計 Gravicorder SG− 1
を用い,
我々が考案し たパー
キン ソ ニ ズムに対 す る立位足圧中心動揺 測 定の プロ トコー
ルで測 定 した 。 す な わち静 的立位,
側方及び前 後にお け る随 意 的連 続 動 的 立 位の3
条 件である4)。 静 的立位で は,
被 検 者は重 心動揺 計上の フ ォー
ス プ レー
ト上の基 線に踵 部 を 10cm 離し,
前足部を 15° 外 旋 した立位をと り両 手を腹 部にて組み, Im
前 方の固 視 点 を 注視さ せ身体を動か さ ないように指示し,
20秒 間の測定を行っ た。 側 方 動 的立位で は,
足 部は静的 立位と同じ位 置で手を 体 側に置 き,
メ トロ ノー
ム の 50cpm の リ ズムに合わ せ,
随 意 的かっ 最 大に 10 秒間連続して左右に身休全体を振 幅 (25回 /分 ) させ るとい う課題 を行わ せ た。 前 後 動 的 立 位で は, 足部は静的立位と同じ位置で両 手を腹 部に て組み,
メ トロ ノー
ム の o「o
cpm の リズムに合わ せ,
随 意 的 かっ 最大に10
秒間 連続して前後に身体金 体を振 幅 させ るとい う課 題を行わ せ た。 足 圧中心動揺の サ ンプ リング周 波 数 は20Hz
である。
立位足 圧中心 動 揺 測 定の分 析は,
1
秒 当た り の足圧中心 動 揺距離 (以 ド,
LNGITIME と す る,
静的立位の LNG /T
王ME
は値の小さな方が静的立位バ ラ ン スが良い こ と に な る),
前後 足 圧中心動 揺 中心位 置 (以 下,
MY とする。MY
は両踵部最 後部を結ん だ線の中点 を 基 準 点 と して, 前後の 足 圧中心動 揺 中心 位 置 を 示 しており,
値 が大 きい ほ ど重 心位 置が前 方にあるこ と に な る),
左 右 足圧 中心動揺標 準 偏 差 (以 下,
SDX とする), 前後足圧 中心動 揺標準偏 差 (以 下,
SDY と す る) の項目につ い て行っ た。 なお動 的 立 位でのSDX
SDY
は各々50
msec 毎に得 られ,
圧中心デー
タの そ れ ぞ れの軸 」二で のパ ラツ キを 示 す もので あり,
側 方 動 的の SDX,
前 後 動 的のSDY
は, 値の大き な方が重 心 移 動 能 力 が高い こ とにな る。 静的1’
L位,
側 方動 的立 位,
前 後 動 的 立 位の順に非補 高時の測 定を2
回ずつ行っ た後,
補高施 行で同様に2
回 ずっ 測 定し た。 そ して測 定の イ ン ス ト ラクシ ョ ン に対し て, 忠実に課 題を遂 行で き た試 行の値 を 採 用し た。
つ ま り静 的立位で はLNG
/TIME の値が小さ い方を, 側 方 動 的立位で はSDX
の値が大きい方 を,
前 後 動 的 立 位で はSDY
の値が大きい方を採 用 した。2
,
歩 行 歩 行の測 定と して,
10m の歩行 路を設定し通常歩 行 と して,
「普 段 と同 じように歩い て ドさい」 と指 示 し,
10m 歩行の歩数 及び歩行 時 間を非 補 高 時に て 2回 測 定 し た後,
補高 施 行に て同様に 2回 測 定し た。 そ して,
そ れ ぞ れ歩 行時間の小さい方を採用し た。
以上の 項 目にっ い て補 高の影 響に,
重 症 度に よる違い が あ るのか を分 析し た。 統計学 的処理 に は対応の あるt一
検 定を用い,
両 側 5% を有意水 準と し た。 結 果 表1
静 的立位足圧 中心動揺の結果 MY難
1
鸚
(補高施行平均±SE
) 危 険率 対 照 群 (n=
10) 109.
0± 4.
6皿m 軽症群(n=12
)92.
8
±6.
9mm
中症群(n三11
)77.
2
±6,
1m
皿 重 症 群(n=
4)96.
5
±工2.
5mm
109.
7± 3,
0mm NS98.
3
±6.
Omm
NS
99、
2
±5.
5mm
pく0.
01
124.
O
±12.
lmm
NS
1.
立位足 圧中心 動 揺の結 果1
)静的立位 (表1
) 静 的立位の課題 はYahr
stageV の 2症 例を除き測 定 可 能であっ た。 静 的、k
位のMY
において,
対照群と 軽症 群で は補 高 非 施 行と補 高施 行で変 化を認め な かっ た。 中等度群で は 77.
2±6.
1mm (平 均±SE
)か ら99.
2
±5.
6
mm と有意 に重 心 位 置が前 方に移 動し た (t=
4.
55, df−・
9 ,
p<O.
01
)。 重 症群で は 96.
5± 12.
5mm か ら124.
0
±12,
1
mm と増加す る傾 向にあっ た。
LNG
/TIME
に お いて は,
竝 照群,
軽症群で は変 化を 認 め な か っ た。 中 等 度 群では25.
2
±2.
7mm
か ら17.
3
± 3,
0mnl と有 意に減 少 し た (t≡
5.
23,
df=
9,
pくLNG
/TIME
対 照 群 (n=
10) 8.
7± 0,
6皿m 軽 症 群 (n−
12) 11.
6± 1.
2m
皿 中症群 (n≡
11) 25,
2± 2.
7m皿 重 症群 (n=
4) 65、
6±40、
1 8.
9± 0.
8mm
NS 12.
4± 1,
2皿m NS 17.
3± 3.
Omm p<0.
Ol 44,
5±29,
3mm NS MY :前後 足 圧 中 心 動 揺 中 心 位 置.
LNGITIME :1秒 当た りの足 圧 巾 心動揺距離 NS :有意 差な し.
O.
01)。
重 症 群で は 65.
6 ± 40.
1mm か ら 44,
5 ± 29,
3 mm と減 少 する傾 向にあっ た。 ま た,
Yahr stageV の 立位 自力保 持不 可能な 2症例が補 高施行に よ り, 20 秒 間の立位保 持が可能となっ た。
その うちの 1症 例 を 図 1 に示 す。 左が補高非施行 時, 右が補高施行 時の立位 姿勢 で あ る。
2) 動 的 立 位 (表2
) 側方及び前後 動的立位の課題は重 症群を除き, 測定可 能であっ た。 図1
重 症 群 (Yahr stage
V
)にお け る補 高 施行場 面(左は補 高非施行 時
,
右は補 高施行時 )1.
側方 動的 立位 表2
動的立位足圧中心動 揺の結果2.
前後動的立位MY
隔鑽
(平補高施行均±SE) 危 険率 対照群 (n=
10) 126.
9±5.
Omm 122.
5±5,
4皿皿 NS 軽 症群 (n・
=
12) 97.
7±7、
8mm lO5.
7±6.
Om
田 NS 中症 群 (n=
11) 86、
6
±6.
2mm
IO7.
9
±2.
8mm
pく0,
01
MY齶 鸚
( 補高施行 平 均±SE) 危 険率 対照 群 (n 謌 0) 123,
5±3,
5mm 121.
4±3.
6mm NS 軽症群 (n=
12) 100.
8±5.
3mm 104,
5±5,
7mrn NS 中症 群 (n三
II)90,
6
±5.
2mm
lO6,
6
±4.
7mm
pく0,
01
SDX SDY 対 照群 (n=10
)104,
5d
:4,
1
皿m103,
6
±4,
0mm
NS
軽症群 (n=
12)73.
0±7.
正皿m 83.
9±6.
8mm p<0.
05 中症群 (n=
ll)52.
4±6.
8
皿m 66.
8±5.
9mm p〈0.
01 対照群 (n;10
)53.
1±3,
lmm
54.
4
±2.
2
皿mNS
軽症 君羊(n≡
12) 33.
4±4、
Omm 33,
0±3.
5mm NS 中症 君羊(n=
=
ll) 21.
4±2,
0mm 28.
6士3.
2mm p<0.
el MY l前後 足 圧 中心 動 揺 中心 位 置,
SDX
:左 右 足 圧 中心 動 揺 標 準 偏 差.
SDY :前 後 足 圧 中 心 動 揺 標 準 偏 差.
NS :有 意 差なし.
側 方 動 的立位の MY に おい て, 対照群は補 高の有無 に よ る変 化を認め な かっ た。 軽 症群では97.
7
±7.
8mm
か ら105.
3±6.
O
nlm と補 高に より増加す る傾 向に あっ た。
中 等 度 群で は 86.
6
土 6.
2mm
か ら107.
9
±2.
8
m 皿 と 有 意に重 心 位 置が補 高に よ り前 方に移 動し た (t=
3.
85, df.
一
.
9,
p< O.
Ol).
SDX
におい て は,
対 照 群は補 高によ る変 化を認め な かっ た。 軽症 群で は73.
0± 7.
1mm か ら83.
9±6.
8
rrlm に有意に増加し た (t−
2.
77,
df=
10,
p<O.
05
)。 中等 度群で は52.
4
±6.
8mm
か ら66.
8
± 5.
9 mm に有 意に 増加 した (t=3.
31,
df;
9,
pく 0.
ODD 前 後動的立位のMY
に おいて,
対照 群,
軽 症 群は補 高に よ る変化を 認め なかっ た。
中 等 度 群で は90.
5± 5,
4 mm か ら106.
6
±4.
7
mm と有 意に前 方に移 動 した (t=3,
40,
df=9
, p< 0.
Ol)oSDY
におい て,
対照群,
軽症群は変化を認めな かっ た。 中 等 度群で は2L4
±2,
0
mm か ら28.
6
± 3,
2 mm と有意に増 加 し た (t=3.
31,df
=9 ,
p<O.
Ol
)。
表3 10m 歩 行にお け る歩 数と歩行時 間醗 齲
( 補 高 施 行 平 均±SE
) 危険 率 2.
歩行の結果 (表 3)10m
歩行の測定は重 症 群 を 除 き,
測定 可 能であっ た。 lOm 歩行に お け る歩 数は, 対照群で は補高によ る変 化を 認めな かっ た。 軽 症群で は21.
2 ± 2.
0 歩か ら20.
6
:LF1.
9
歩と補 高に より減少 する傾 向にあっ た。 中等度群 で は39.
7
±1.
6
歩か ら3L9
士5.
8
歩に補高に よ り有意に 減 少し た (t=3.
75,df=9,
pくO.
Ol
)。 10m 歩 行にお け る歩 行 時 間で は,
対照群,
軽症群で は補 高に よ る変 化は認め な か っ た。 中等度群で は34.
5
± 18.
5秒 か ら25.
4± 12.
4秒と有 意に減 少 を 認め た (t=
3.
39,
df=
9,
pく O.
01)o考
察
歩数 対 照群(nコ
10)16,
5±0.
3
歩16,
5
±0.
3
歩NS
軽 症 群 (n=
12) 21.
2
±2.
O歩 20.
6±1.
9
歩NS
中症群 (n=
1D39.
7±1.
6
歩31、
9±5.
8歩 pく0.
01 歩行時間 対照群(n;10
)12.
0
±0,
2
秒 12.
0±0.
2秒 NS 軽症群 (n− 12
)14,
3
±1.
5
秒14.
3
±1.
J「 秒NS
中症 群 (n−
11) 34.
5±4,
8 秒 25.
4±3.
2
秒 p<0.
01
NS :有 意差な し.
今 回,
パー
キン ソニ ズム患 者 を 対 象として,
補 高が立 位バ ラ ン ス, 歩 行に与え る影響を重 症度別に分析した。 対 照群に おげる1cm の補 高は立 位 足 圧 中 心 動 揺,
歩 行に影 響を与え る操 作で はなかっ た。 健常 者で は,
1 cm の補高とい う外乱刺 激に対 し姿勢調 節 反 応の 働 きに よ り, 重心位置を 正常な範囲内にコ ン トロー
ル し ている もの と考え ら れ た。 パー
キ ンソ= ズム患 者で は軽症群の側方動 的立位に お いて,
重心 が前 方に移 動す る傾 向にあ り,
ま た,
側方へ の随意 的 重 心移動能力の改善を認め た。 しか し,
静的立 位,
前 後 動 的 立 位,
歩 行で は変 化を認めず, 補 高はこれ らに影響を与え る操作で は ない と考え ら れ た。 これ ら に対し, 中等 度 群で は足 圧中心動揺に おい て, 静 的 立 位,
側 方 及 び前 後 動 的 立 位の 3条 件 と も重 心は有 意に前方へ 偏位し , 静的 立 位バ ラン ス の改善, 側方お よ び前 後へ の随 意 的 重心 移 動 能 力の改 善,
歩 行の改 善 を認 め た。重 症 群で は
,
静的 立位バ ラ ン ス が改善し, 自力 立位保 持不 可能な症例が立位保 持可能と なっ た。 この よ うに補 高によ る影 響は,
重症度別で異なり中等度群か ら重症群 で立位バ ラ ン ス,
歩 行を改 善さ せ た。 立 位 足 圧 中心 動 揺へ の補 高の影 響が重 症 度により異な る原因と して, 静的・
動 的立位で の重 心 位置が重 症で あ る ほど後 方に位 置してい る (重 心位 置の踵部か らの 足 長 に対 する比 率,
対 照 群35.
7
%,
軽症 群32、
0
%, 中等 度群 28.
9%,
重 症 群26.
2%,
対 照 群・
軽 症 群,
中 等 度 群,
重 症 群の間に それ ぞ れ有 意 差を認めて い る)こ と が挙 げら れ る。 静 的立 位で考えてみ る と,
対 照 群,
軽 症 群で は補 高の 操作に対し て,
姿 勢 調 節 反 応によ っ て重 心 位 置は修 正 さ れて し ま うの に対し,
中 等 度 群,
重 症 群で は,
姿 勢 調 節 障害9)10)の 影響が大き く な り, 他 動的な重 心の偏位刺 激 に対 して対応 が困 難であ るこ と よ り重 心の前方偏位効果 が大き く,
また,
重 心 位 置が より後方に偏 位して いるこ と もあっ て, 重 心 位 置 が 適 正な位 置に修 正 さ れ た もの と 考え られ る。
重 心線が落ちる支持基底面を考えて み ると,
後方に偏 位して いた重 心を前 方に移 動させ ることに よ っ て,
支 持 基底面の後方 部分が増大し静的・
動 的 立 位バ ラン ス の改 善にっ な がっ たもの と推察さ れ る。 ま た, 立位 保持不可 能な2 症例が補 高施 行によ り,20
秒 間の立位保 持が可 能 となっ たことは,
立 位保持困難な症例にっ い て は,
立 位 保 持 能 力の改 善に有 効な こと を示して いる。 さらに歩 行においても,
軽 症 群では変 化 はなかっ たの に対して, 中等度群に おいて は歩幅が延 長 し,
速 度が増 大し た。 パー
キ ンソニ ズム患 者の 特徴 と して,
歩 行 時,
前 後左右へ の重心移 動が小さい こと11)12>が知ら れ て お り, 前述し た側 方お よ び前後の随意 的な重心移動能 力の改善 が片 脚 支 持 期を延長さ せ,
下 肢の振 り出し を向上さ せ た 結果, 歩幅が延 長し歩 行 速 度を上 昇さ せ たもの と考え ら れた。
以上の ことか ら,
パー
キ ン ソ ニ ズム患 者に対 する補 高 の アプ ロー
チ は,
中 等 度 群か ら重 症 群で有 効で ある と考 え られ た。今後の課 題と して
,
補 高 施 行 時の足 関 節へ の影 響8),
ADL
面へ の効 果,
さ らに前 足 部へ の補 高13’
15)の効 果・
適 応な どを検討する必要がある。 こ の論文の要 旨は,
第29
回日本理学 療 法士学 会に 口 述 発 表し た もの であ る。 文 献 1) 中 村 隆一,
長 崎 浩・
他1パー
キン ソニ ズム の運 動・
動 作 障害.
−
hastening phenomenen を中心と し て一.
医学のあ ゆ み 96(7}:494−
498,
1976.
2)杉下 知子,
祖父江逸郎・
他 : パー
キン ソン病患者のロ常生 活 勤 作と神 経 症 状との関 連.
厚 生 省 特 定 疾 患 調 査 研 究 班 1981年度 研究報告集:278−
288,
1982.
3) 木 村 貞 治 :パー
キ ン ソ ン病における姿 勢 反 射 障 害.
理学 療 法 2(2〕:131−
137,
1985,
4) 奥 壽 郎,
網 本 和・
他;パー
キン ソ= ズムの平 衡 機 能一
静的・
動 的重 心動 揺にお け る健 常 者との比較一.
理学 療法 学 18(2):125−
13Q,
1991.
5)Bronstein AM
,
HQodJD
:Visuai control of balance incerebellar and Parkinsonian syndrome
.
Brain 113(3>:767
−
779,
1991.
6)Schieppati M
,
Nardone A:Free and supported stancein Parkirユsons disease
.
Brain 114〔3}:1227 1244,
1991.
7)井上 隆三 :パ
ー
キン ソ ン病及 びパー
キン ソン症候群の重心 位 置,
重 心 移 動,
重 心 動 揺の変 化.
理 学 療 法 学 19 :545−
550,
1992.
8) 奥 壽 郎,
網本 和・
他 :パー
キン ソニ ズム にお け る補高 の効 果にっ いて一
重 心 動 揺・
歩 行 能 力での検 討一.
総 合リ ハ ビリテー
シ ョ ン22(5):391−
394,
1994.
9)早原敏之:パー
キン ソ ン病の臨床.
新興 医学出版社, 束 京, 1986,
pp 36〜
77.
10)加藤正夫;パー
キン ソ ン病の臨床像 織田敏次・
他 (編 ),
基 底 核 疾 患,
永 井 書 店,
大 阪,
1982,
pp lO3〜
114.
11)上 国英雄 (編);起 立・
歩行・
姿勢の異常,
南江堂,
東京,
1981,
pp 146〜
168.
12)外 山治人,
岡西哲夫・
他;す くみ足・
小 刻み歩行を 呈 する パー
キ ン ソン病 患 者に対 する歩 行 訓 練につ い て.
理学 療 法 学 18 :521−
527,
1991.
13)Roger CD :パー
キン ソ ン病一
患 者と家 族の手 引き一一
室 隆 雄 (訳 ),
医 学 書 院,
1983,
pp 44−
46.
136−
138.
14) 三 根 茂美:パー
キ ンソ ン病の足 底 傾 斜 刺 激にお け る重 心 動 揺の改 善にっ い て,
理学 療 法 学 11〔6):355−
358,
工984.
15) 山口 明 : パー
キン ソニ ズム の リハ ビ リテー
シ ョ ン中等 症 例の治 療
.Journal
of Clinical Rehabilitation 2 :99−
<Abstract>
Effectsof Heels Lifton thePosture and
Gait
inPatients with ParkinsonismToshirou
OKU,
RPT
Dept
ofRehabilitation
Mbdicine,
St,
Mtirtannatiniversit),
School
of
Mbdict'neHbspital(Pn2sent:
Dopt
of
RehabilhationMedict'ne,
St
Mlririanna
UitiveTsity
School
of
A4bdici'ne
lbNoko HbsPital)Kazu
AMIMOTO,
MA,
RPT,
Hiroshi
YAMASAKI,
MA,
RPTDept,
ofRehabilitation
Medicine,
St,
Mtirianna U)tiversit],Schoolof
hedicine
HbspitalThe purpose of this study waG to examine the relationship between the severity of
Parkinsonism and the effects of heels lifton the postural sway in standing and walking
ab-ilities.
A
total
of 29 patientswith Parkinsonism(mean
age66,5
years)were participatedin
the
study and classified by the severity scale of Yahr into 3 groups, mild
(n=!12},
moderate(n=
11},
and severe(n=6).
Arso 1O normal controls were enrolled. The posturalsway was measuredwith the center of pressure moniter in2 heelsconditions
(norrnal
and with the heelslifted)and3 standing conditions
(static,
lateral
shift,anterior-posterior shift).There were no significanteffects of the
lifting
heels
on any iternsfor
normal controls. Analysis of variance revealed thatrnoderate group showed significant improvement inall measured variables, whereas mild and
severe groups showed significant