「認知症とそのケア」
平成24年6月3日
宮崎県介護支援専門員協会研修にて
けいめい記念病院 「物忘れ外来」 岡原一徳
認知症の親を持つ確率
本人が40歳以上
結婚していて夫婦の両親が健在で65歳以上 認知症有病率8%(65歳以上)本人が55歳以上
結婚していて夫婦の両親が健在で85歳以上 認知症有病率33%(85歳以上) 1人の両親どちらかが認知症である確率 =1-(1-0.08)2=約15% 夫婦の両親の誰かが認知症である確率 =1-(1-0.08)4=約28%
1人の両親どちらかが認知症である確率 =1-(1-0.33)2=約55% 夫婦の両親の誰かが認知症である確率 =1-(1-0.33)4=約80%
外来受診 1.地域 MMSE 時計描画テスト NPI 診察 問診 CT 2.もの忘れ外来 脳の健康教室 元気になろう体操 集団気功教室 健康体操教室 元気でるでる水中運動 心身健康広場 寝込まん体操教室 3.脳活性リハビリ 定期診察(1-3ヵ月) 6ヵ月ごとの 脳機能テスト 継続脳活性化リハビリ 4.フォローアップ (けいめい記念病院) (けいめい健康クラブ) 健常者 他疾患 外来および 入院治療 専門病院紹介 福祉施設紹介 地域にて認知症予防 早期発見 ・早期治療の啓蒙 (かなひろいテスト実施)
けいめい記念病院もの忘れ外来の流れ(診断・治療・予防)
被験者の教育年数の影響を受けやすい
質問が簡単すぎる
認知症初期の認知機能低下をとらえにくい
反復施行による学習効果が生じる
記憶と言語に関する課題は主に左半球(左頭頂
葉と左側頭葉)に機能を反映する
認知症に対する
CDT(時計描画テスト)のSensitivityとSpecificity
Sensitivity
Specificity
HDS-R
0.90-0.93
0.82-0.86
MMSE
0.76-0.87
0.82-0.96
CDT
0.52-0.57
0.97-1.0
初診患者の動向(年齢)
2007年2月~2011年12月
(2)年 代 人数 % 20代 1 0.1 30代 1 0.1 40代 3 0.2 50代 10 0.8 60代 102 7.7 70代 496 37.3 80代 627 47.2 90代 88 6.6 計 1328 100.0 平均年齢:79.9歳初診患者の動向(認知症の原因)
2007年2月~2011年12月
(3)病 名 人数 % AD 713 53.7 DLB・PDD 129 9.7 MCI 94 7.1 高齢者タウオパチー 51 3.8 VD 49 3.7 AD+DLB 31 2.3 FTD 19 1.4 AD+VD 15 1.1 正常圧水頭症 6 0.5 その他 127 9.6 認知機能正常 94 7.1 計 1328 100.0認知症の臨床診断の要点
「らしさ」を見つける
アルツハイマー病(AD)
取り繕い 場あたり的反応 物盗られ妄想レビー小体型認知症(DLB)
認知症の症状、意識状態が変動する(覚醒レベルの変化) 抗精神病薬による症状の悪化 パーキンソン症候・歩行障害脳血管性認知症(VaD)
注意力の低下(よく寝ている・呼びかけへの反応が鈍い) 初期からの排尿障害・歩行障害・嚥下障害 夜間せん妄、感情失禁があるが人格や病識が保たれる「らしくない」症例も当然するし、認知症の原因が複数存在する
場合もある。しかし、ADは「除外診断」から診断されるものと言う
考えは疑問である。高齢者では特に多様性があることを念頭に置く。
FAST7
慶明会における認知症の各ステージへの関わり
1.リスクの評価 2.生活習慣 3.地域の啓蒙 4.遺伝子解析 1.予防 2.早期診断 3.早期介入 1.認知機能評価 2.BPSDの治療 3.適切な薬物療法 1.食事の問題 2.誤嚥性肺炎 3.胃瘻・経管栄養 4.ターミナルケア FAST1・2 FAST3 FAST4・5・6 けいめい記念病院「もの忘れ外来」 サンメリー さくら苑 サンフローラ・おびの里 住吉けいめい館・サングラン・さくらの里 けいめい健康クラブ 40 50 60 70 80 年齢虹の会
家族会
「ようこそ!物忘れ外来へ」
加齢と老化
• 加齢とは、誕生・発育・成熟・衰退・死亡の
全過程をいう
• 老化とは、加齢にともなう身体的、肉体的
な生理機能の衰退の過程をいう
• 人はみな加齢により身体的能力が低下す
るのではなく、
人は加齢とともに個体差が
大きくなると理解すべきである。
高齢者の臨床的特徴
• 個人差が大きい
• 症状が非定型的
• 水・電解質代謝異常をおこしやすい
• 慢性疾患が多い
• 薬物に対する反応が成人と異なる
• 生体防御力が低下しており、疾患が治りにくい
• 一人で多くの疾患を持っている
• 状況、環境の変化への順応が難しいことがある
• 患者の予後が医療のみならず社会環境により影
響される
ADの病気と症候
• 第1期(初期):FAST4
記憶障害のために周囲の人たちに気づかれる。時間的な
見当識障害も伴う事が多い。
• 第2期(中期):FAST5
記憶障害がさらに目立ち、近時記憶のみならず、遠隔記憶も
傷害されて妄想も出現する事がある。場所の見当識失なわれ
われ、徘徊もみられる。介護を必要とすることが増えてくる。
• 第3期(後期)FAST6以降
記憶障害は高度となり、自分にとって身近な人も思い出せな
くなる。人物についての見当識障害もみられ、鏡に映った自分
に話しかけたりする。日常生活は徐々に前介助に移行する。歩
行も傷害され、臥床することが多くなる。
認知症と合併疾患の管理
第2期までの問題
身体的には大きな問題が起きることは少ないが、徘徊には注意が必要
熱中症・外傷による感染・凍傷・脱水・横紋筋融解症
対策
1.出入り口を一つにして、開いたときに音が鳴るようにする。
2.周辺の住民や、交番、親戚への周知
3.衣類に名前と住所を、本人に分からない、目立たないところ(裾の裏側や
襟元など)に縫い付ける。いつも持っているバッグの中に連絡カードを入れる。
認知症の第3期以降の問題
1.栄養障害(体重減少・肥満)
肥満・糖尿病(低血糖に要注意!)
体重減少 定期的な体重測定 拒食への対応
排便状況
2.難聴
3.骨折
パーキンソン症候 膝関節症 大腿骨頚部骨折
4.頭部外傷
転倒による慢性硬膜下血腫
5.じょく創
栄養障害 ADL低下
6.皮膚疾患
入浴を嫌がる オムツ 失禁 疥癬
7.歯科・口腔外科疾患
口腔内ケア 歯磨き 口腔洗浄
8.泌尿器疾患
前立腺肥大 前立腺がん
9.消化器疾患
貧血 腸閉塞 腹部の緊張 便の性状
10.悪性疾患
体重減少 治療の困難
主な緊急時の対応
• 病歴、自覚症状、
• バイタルサインの測定・観察
• 意識レベル、麻痺の有無
• 現在加療中の疾患と服用薬剤
• 既往症の把握
BPSDの悪化要因
①薬剤 37.7%
②身体合併症 23.0%
③家族・介護環境 10.7%
高齢者の主な精神症状
Depression うつ
Dementia 認知症
Delirium せん妄
Delusion 妄想
4D
1A
Anxiety 不安
BPSDへの対応
薬物療法が効きやすいものと、効きにくいものがある
• 精神症状(幻覚・妄
想)
• 抑うつ状態・うつ病
• 睡眠障害
• 易怒性・暴行行為・威
嚇行動
• 不安症状
薬物療法の対象となる
薬物療法の対象となりにくい
・徘徊・無断外出
・帰宅願望
・介護への抵抗(入浴拒否など)
・無目的な行動
・性的逸脱行動
JAAD
中核症状
認知機能障害
記憶障害
・見当識障害・判断力低下など
新しく経験したことを記憶 にとどめることが困難とな る。記憶障害
ここはどこで、今がいつな のか、わからなくなる状態。見当識障害
計画を立てる、組織化す る、順序立てる、抽象化す る、判断するということが 出来なくなる。判断力の低下
認知症の中核症状
アルツハイマー型認知症の進行様式
機 能 状 態 経過年数 自発性低下 ・記憶障害 ・見当識障害(時間→場所→人物) ・早期精神障害(作話、抑うつ、妄想) ・失語、失行、失認、実行機能障害 ・ADLの低下 (着替え・入浴・排泄などの障害) ・語間代、鏡現象 ・錐体路症状 ・歩行障害・嚥下障害 ・植物状態監視レベル
→介助レベル
MMSE29
25
19
14 57
9
13
FASTによる認知機能の評価
(Functional Assessment Staging)
FAST1:正常 FAST2:物の置き忘れ、喚語困難 FAST3:境界状態 初めての場所への旅行が難しい FAST4(軽度のAD):社会生活に支障 大事な約束を忘れる 買い物に支障 FAST5(中等度のAD):家庭生活に支障 季節にあった洋服を選べない 冷蔵庫の整理が出来ない 金銭・内服管理 FAST6(やや高度AD):着衣が出来ない 尿・便失禁 FAST7(高度AD):会話が困難 歩行障害
認知症の各ステージへの関わり
FAST
1・2
• 1次予防
• Preclinical AD
FAST3
• 2次予防
• MCI
FAST4・5・6・7
• 3次予防
• AD
1.リスクの評価 2.生活習慣 3.地域の啓蒙 4.遺伝子解析 1.予防 2.早期診断 3.早期介入 1.認知機能評価 2.BPSDの治療 3.適切な薬物療法 1.食事の問題 2.誤嚥性肺炎 3.胃瘻・経管栄養 4.ターミナルケア年齢 50 60 70 80 (歳)
自覚的・他覚的に正常
早期診断・予防
タウ、神経原線維変化
神経細胞脱落
アミロイド
軽度認知機能障害 (MCI)認知症
アルツハイマー病アルツハイマー病における病理形成過程と臨床の相関
アルツハイマー病患者への対応の注意点
1.自分が病気になっていることを理解していない、深刻に考えていない 病識がないことを介護する家族や周囲が認識する必要が大切。 自分が病気でないと考えている患者に対して、病気か否かを説明する、 誤った行動を直すように説得するといった接し方は適切ではない。 2.取り繕いが上手い、外面が良い 他人と接する際、普段家族と接するときにみられるとんちんかんな行動や 言動とは異なり、上手に対応している場面をよく経験します。外面がよい ことを利用して、デイサービスなど他人が大勢いる介護施設の利用を勧める とよい。自宅ではすぐ怒り出す患者が、施設では愛想のよい人として他の 利用者や介護スタッフから親しまれていることも多い。 3.些細なことで怒る 怒りっぽいこともADの特徴の一つです。ADの患者さんと接するときに、 必要以上に叱る、注意する、指導するなどの接し方をすると、患者さんは怒り 出すことが多い。患者さんの不適切な行動や言動に対して家族がいらいら する気持ちは理解できるが、だからといって患者を叱っても何の効果もない。 むしろ患者の感情が不安になり、その後の介護に支障を来たす。 4.ひとつのことに関心を持つと注意を他に向けない、こだわりが多い 注意の他に変換することが苦手で、そのことばかりが気になって、デイサービス の曜日を何回も家族に聞いてきたりします。ひとつのことにこだわる患者には、 好きなようにさせることも選択肢の一つです。困ったときに患者の関心を別にむけ させるように対応するのもよい方法で、直前までこだわっていたことを忘れてしまう ことも多いようです。症状を分析して、対応を考える
1.同じことを何度も尋ねる
自分が何の目的で、どういう状況で、今ここにいるのか、それがわかっていないと 環境とは上手くつながらない。記憶によって環境としっかりつながっているという 感覚が、「私」の存在を安定化させる。
記憶障害によって、環境とのつながりが希薄になり、今そこにある現実のよそよそ しく空虚なものになってくる。そこに、不安、孤独感、恐怖心が生まれやすく、そこから 反発や妄想も起こりやすい状態になる。
症状を分析して、対応を考える
1.なぜ同じことを何度も尋ねるのか?
尋ねる質問の内容は、記憶障害のために同じ内容になってしまうが、実は質問の 答えを本当に知りたくて尋ねているのではない場合も多いのではないか。 何となく不安で、なにかにつながっていたくて話しかける場合も多いのではないか。 多くの場合、何かとは環境のことであり、認知症の人の傍らにいて尋ねられる人こそが、 その環境の中で大きな役割を占めていると考えられる。 環境とのつながりを求めて質問を繰り返すとすれば、答えるその口調が素っ気ないもの になっていたとすると、つながっているという感覚は与えられない。再度つながりを求めて、 また同じ質問をすることにしまう。 認知症の人が何度の同じ質問をするときには、不安で寂しいのだから、人とつながって いたくて尋ねるのだから、その時にはなにかを一緒にして楽しむくらいのことをしないと いけないのかもしれない。人は人とのかかわりの中でしか生きられない
• 人の究極の幸せは「人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、 人に必要とされること」 • 他の人との関係性が人の幸福感を大きく左右する • とくに日常の平凡な生活の中での小さな出来事や家族や知人との語らいなどに 喜びを見いだしている慎ましやかな高齢者の場合、周囲の人、とくに家族との関 係性は、その人の幸福にとって、決定的な意味をもっている。 • 認知症は本人と周囲の関係性を徐々に破壊することが多い 「しっかり者のおばあさん」→「家族の厄介者」 本人が反発を示すほど、周囲はかかわりをなるべく避けようとする • 認知症の人は「人に愛されず、ほめられず、役に立たず、必要とされない」存在 になっている。 認知症にたいする医療・介護の役割のひとつは、本人と周囲の人との現在の関係性を 見極め、関係性が良好な場合にはそれが長続きするように、関係性が破壊されていれば、 それを修復することであるすべての土台に感情があり、その上に認知が築かれ、意思がその上に形成される。 感情の上に認知が築かれるとすれば、感情が不安定であると認知機能も崩れ、
意思も不安定になることが理解される。つまり、認知症の治療やケアでは、まず「感情が 安定している」ことが目標になることを知るべきである。