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武道学研究 48 (1): 29 33, 2015 海外事情報告 ポーランド共和国の教育システムと武道教育 曽我部晋哉 The education system and budo education of the Republic of Poland Akitoshi SOGABE Key word

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ポーランド共和国の教育システムと武道教育

曽我部 晋 哉

The education system and budo education of the Republic of Poland

Akitoshi SOGABE

Key words : Judo, Physical education, Number of players

キーワード:柔道,体育,競技人口 Ⅰ 変化を遂げたポーランド共和国  ポーランドの人口は約 3,853 万人1)(世界人口 33 位)であり,日本の人口約 1 億 2709 万人(世 界人口 10 位)の約 1/3 程度である。ポーランドは, 1989 年に共産党一党支配が崩壊し,民主主義国 家となってまだ 25 年しか経過していない。しか しながら,経済成長率[(当年の GDP -前年の GDP)÷ 前 年 の GDP × 100] は,1989 年 以 降 1990 年,1991 年とマイナス成長となるも,1997 年には 7.09% を記録し,2014 年までに年平均 3% 以上の急速な成長を遂げている1)  また,経済のみならず教育分野においても著し く向上しており,OECD(Organisation for E�o�E�o� nomi� Co�operation and Development:経済協力 開発機構)が実施している PISA(Programme for International Student Assessment) の 2000 年時の平均得点は,読解力 479,数学的リテラシー 490,科学的リテラシー 498 であったのに対し, 2012 年には読解力 518,数学的リテラシー 518, 科学的リテラシー 526 まで上昇している5)。この PISA の得点は,OECD 加盟国の平均点が 500 点 となるように算出されていることを考えると,全 ての指標において平均点を上回る点数を獲得した ことになる。ちなみに我が国の PISA 平均得点を みてみると,2000 年は読解力 522,数学的リテラ シー 534,科学的リテラシー 531,2012 年は読解 力 538,数学的リテラシー 536,科学的リテラシー 547 であった5)。このような教育分野における躍 進は,1999 年の教育改革によるところが大きい。 Ⅱ ポーランドのスポーツにおける競技人口  前述のように,ポーランドは経済のみならず, 教育の分野でも急成長を遂げた国であり,世界の 中でも注目すべき国の一つである。更に着目すべ きは,ポーランドのスポーツにおける競技人口の 構成である。表 1 は 2013 年度の各スポーツの登 録競技人口である4)。競技人口の多い順にサッ カー(274,777 人),空手および伝統空手(31,685 人),バレーボール(26,212 人),射撃(15,917 人), バスケットボール(15,857 人)と続き,柔道は 11 番目(8,101 人)となっている。興味深いのがポー ランドの空手の人気であり,空手・伝統空手の総 人口に占める割合は日本の約 1.3 倍にも上る。ま た,空手,柔道の他にも,統計データに反映され ていないが,剣道,合気道などの日本発祥の武道 の人気は高い。さらには,日本ではほとんど聞く 1) 甲南大学 スポーツ・健康科学教育研究センター 〒 658�0032 兵庫県神戸市東灘区向洋町中 9�4 TEL/FAX:078�857�1961 E�mail:sogabe@�enter.konan�u.a�.jp

1) Edu�ation and Resear�h Center for Sport and Health S�ien�e, Konan University

9�4, Koyo��ho�naka, Higashinada�ku, Kobe, Hyogo 658� 0032, Japan

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―  ―31 ことのない Hapkido*1という武術であるが,小 学校の授業にも導入されるほど普及している。特 に着目すべき点は,各武道の全体の登録者数に占 めるジュニア世代の割合が高く,それぞれ空手: 76.7%,伝統空手:80.2%,柔道:85.4% となって いる。この要因の一つに,ポーランドの小学校教 育における武道教育の在り方が影響しているので はないかと考えられる。武道は,人間形成におい て非常に有用であることが多く報告されてお り2)3),幼少期の教育として武道のもつ価値が欧 州を中心に高く評価されているものと考えられ る。 Ⅲ ポーランドの教育システムと武道教育  社会主義国であった 1989 年以前のポーランド の教育は,主として共産主義国家を支えるための 労働者育成教育であった。1991 年には教育法が 制定されたことにより,共産主義思想を植え付け る科目が一掃され,必修科目であったロシア語も 廃止された。1999 年の新教育法の制定以前は, 小学校(Szkoła podstawowa)8 年間の共通教育 である義務教育を終えると,それぞれ別の目的と なる普通高校,中等技術高校,職業学校へ進学す るシステムであった。新教育法制定以降は,修学 準備(Zerówka)1 年(写真 1),小学校 6 年,中 学校(Gimnazjum)3 年が共通教育となり,10 年間の共通授業を受けることが出来るようになっ た。その後,普通高校(Li�eum ogołnokształ�a�ogołnokształ�a� �e),専門高校(Li�eum profitowana),テフニク ム(Te�hnikum),職業学校(Zasadni�ze szkoły zawodowe)に進学し,18 歳まで義務教育を受け ることになる。  2004 年,ポーランドは EU に加盟し 1999 年の ボローニャ宣言(2010 年までに世界的に魅力あ る欧州高等教育圏の構築を目指した合意)に基づ いたボローニャ・プロセス*2により高等教育制 度を整備した。その結果,義務教育の卒業試験に 合格すれば,大学入試共通試験(Matura)の受 験資格を得ることができ,総合大学(Uniwersy�Uniwersy� tet:最低 12 分野で博士号を授与できる),技術 大 学(Uniwersytet te�hni�zny:12 分 野 で 博 士 号を授与でき,うち 8 分野は技術系),専門大学 (Uniwersytet medy�zny, …:最低 6 分野で博士 号を授与でき,うち 4 分野は医学などの専門分 野),工科大学(Polite�hnika:最低 6 分野で博士 号を授与でき,うち 4 分野が技術系),アカデミー (Akademia:最低 2 分野で博士号を授与できる) に進学できるようなシステムへと変化した。  義務教育におけるカリキュラム編成の一部は現 場に委任されている。その代わりに,小学校,中 学校修了時には国内共通学力テストが実施され, 学校ごとに成績が公表される仕組みとなってい る。クラクフ公立第 7 小学校(Społe�znej Szkoły Podstawowej nr 7 STO w Krakowie)では小学 校 1 年生~ 3 年生までは体育・英語などの専門授 業を除いて,担任の先生が授業を行う(写真 2,3)。  小学校における体育のカリキュラムについて は,既定の種目以外に専門教員の裁量で種目を選 択することが出来る。ポーランドの小学校では, 何らかの武道種目を導入しているところも少なく ない。ポーランドの首都であるワルシャワにある 公立第 26 小学校(Społe�zna Szkoła Podstawo�Podstawo� wa nr 26)では,柔道が必修科目となっており, 別名嘉納治五郎小学校(Szkoła Jigoro Kano) と も呼ばれている。今回視察を行ったクラクフ公立 第 7 小学校では,Hapkido の授業が導入されてお り,放課後にも Hapkido のクラスが開講されて 写真 1 小学校に併設されている修学準備クラス ゼロクラスと呼ばれており,小学校に入学す るための基礎知識を学習する。

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いた(写真 4)。  このように,小学校低学年より正課授業の中に 武道が導入されており,児童たちも武道になじみ が深く,好意的な印象を持っているように感じる。 小学校の教育において武道を導入することの利点 は,「正しい礼法を覚えることができる」,「相手 との近い距離でお互いを感じることができる」「相 手が痛くないように行うことでお互いを尊重し合 える」「黙想を通じて心を落ち着かせることがで きる」などの,武道そのものの特性から学べるこ とが多いことである。武道を学習する上で,専門 的な技術の習得も重要な要素の 1 つではあるが, 武道に触れることで日本の文化に親しむというこ とも重要ではないかと考える。 謝辞  本視察に際し,これまでに日本とポーランドの 良好な関係を構築され,多くのご助言を賜りまし た福島大学名誉教授佐々木武人先生,また,ポー ランド国内で様々なご手配を頂きました Univer�Univer� sity of Physi�al Edu�ation in Krakow の Stani�of Physi�al Edu�ation in Krakow の Stani�Stani� slaw Sterkowi�z 教授には大変感謝申し上げま す。 写真 2 小学校 2 年の英語の授業 低学年より英語の授業が専門教員により実施 されている。 写真 3 小学校 4 年の体育の授業 バスケットボールの授業では,ボールを用いた コーディネーション・トレーニングを行い児童 の発育・発達を促す。シュート時の足運びを指 導するために,床に右足,左足のステップ順序 を書き込み,丁寧な指導が行われていた。 写真 4 放課後の Hapkido 教室の様子 授業の中で行われていることもあり,Hapkido の人気は高い。練習前後には,礼,黙想を行い, 指導者は児童に心を落ち着かせるように指示 をしている。

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―  ―33 本文註 * 1 Hapkido  合氣道(ハプキドウ)は,戦後,韓国の崔 龍術(チェ・ヨンス)が日本の柔術の流派の 一つである大東流合気柔術にテコンドーやボ クシングなどの打撃系の技術を取り入れた武術 である。ハプキドウは日本ではあまり知られ ていないが,国際連盟 HAPKIDO 連盟,世界 HAPKIDO 連盟,世界 HAPKIDO 本部(World Hapkido Headquarters)などの国際連盟があ り,世界中に普及している。 * 2 ボローニャ・プロセス  ボローニャ・プロセスとはボローニャ宣言に 基づいた取り組みのこと。以下の項目を 10 年 以内に達成することを目的とした。 1.容易に価値が比較可能な学位制度の導入 2. 大学教育において学部(学士)・大学院(修 士)課程の 2 サイクルを導入 3. ヨーロッパの教育機関における単位互換性 の導入 4. 学生・教員・研究者・大学職員の移動性・ 流動性の促進 5. ヨーロッパ内における大学教育の質保障の 協力 6. 高等教育をヨーロッパ視点として普及・促 進 参考文献

1)International Monetary Fund: World E�o�E�o� nomi� Outlook Databases O�tober 2014, 2014. 2)Lamarre BW and Nosan�huk TA: Judo��the

gentle way: a repli�ation of studies on martial arts and aggression, Per�ept Mot Skills, 88(3), 992�996, 1999.

3)Matsumoto D, Konno J and Ha HZ: The effe�ts of judo parti�ipation on �hara�ter traits, Resear�h Journal of Budo, 39(2), 17�26, 2006.

4)The Ministry of National Edu�ation for s�hool libraries: Statisti�al Yearbook of The Republi� of Poland, 2013. 5)文部科学省国立教育政策研究所:OECD 生 徒の学習到達度調査~ 2102 年調査分析資料集 ~,2013. 平成 27 年 3 月 21 日 受付 平成 27 年 5 月 25 日 受理

表 1 ポーランドにおける各種スポーツの登録競技者数

参照

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