4.指導にあたって
本単元では、ものを水に溶かし、その変化の様子を、水の温度や量などの条件や、溶かした ときの全体の重さに着目して調べる。ものが水に溶けるときの規則性についての見方や考え方 をもつようにすること、興味・関心をもって自ら課題を見いだし、計画的に追究することをね らいとしている。 ものが水に溶ける現象は生活経験の中でよく知っている。しかし、混合液と水溶液の区別や、 ものの溶け方の規則性についての概念は形成されていない。 本単元では「科学的な見方や概念」として、ものを粒子としてとらえる視点をもたせたい。 「粒子で表してみるとどうなるか」という視点を与えることで、溶けるという現象が具体的に イメージしやすくなる。そのことで、物質が粒子からできているという科学観を育てていくこ とができると考える。 新しく学習する科学言語として、水にものが溶けて一様に広がり、すき通った状態を水溶液 ということ、ものが溶けているときに見られる現象をシュリーレン現象ということなどをとら える。また、液の中に混ざっている粒をろ紙でこすことをろ過ということも学習する。 探究していく過程では、水に食塩やミョウバンを溶かしていき、ものが水に溶ける量には限 りがあるのか、溶けた後はどうなるのかなどの問題を主体的に解決することが大切である。そ のためには、与えられた手順で実験をこなしていくのではなく、疑問や興味・関心を抱いた中 から課題を見いだし、学習計画を立てて見通しをもちながら、ものの溶け方を多面的に追究す る能力を育てることが必要である。この単元での基本重要語彙
シュリーレン現象 水溶液 溶ける すりきり
ミョウバン 薬包紙 メスシリンダー ろ過 ろ紙
ろうと 蒸発皿
この単元で重視した言語活動
○ 食塩とミョウバンを溶かし、両者を比較しながら観察する ことにより、見付けたことを報告する。 ○ 水に溶けたものはどうなったのかを予想し、実験結果から わかったことを説明する。 ○ 食塩やミョウバンの溶け方の違いを、水の温度や量と関連 付けてとらえ、言葉やイメージ図で表現する。 ○ 結果を定量的に記録し、思考過程について説明する。5年 理科実践事例
1.単 元
もののとけ方(啓林館 5年下)
2.指導時期
1月~2月上旬3.目 標
○ ものを水に溶かし、その変化の様子を、水の温度や量などの条件に目 を向けながら調べたり、ものを水に溶かしたときの全体の重さを調べ たりする活動を通して、ものが水に溶けるときの規則性についての見 方や考え方をもつようにする。 ○ ものが水に溶ける現象の規則性を、興味・関心をもって計画的に追究 する能力を育てる。5.学習指導計画(全15時間)
次 時 学習活動(活動のねらい等) 指導上の留意点 Ⅰ 1 2 1.水に、食塩とミョウバンを 入れたお茶パックをつるし シュリーレン現象を観察す る。 2.観察して思ったことを3つ の観点から書く。 3.観察したことや思ったこと を話し合う。 ○何が同じで、何が違うのか比べながら観察する よう助言する。 ○取り出した情報を出し合いながら、共通してい ることを見付けたり、考えを交流したりする。 Ⅱ 3 1.学習課題をつかみ、予想す る。 【予想】 2.調べるための実験方法を考 える。 【実験方法】 ○溶けたものはどうなったのか、イメージ図に表 し、説明を書き込む。 ○なぜ、そのように考えたのか根拠を基に発表し たり、話し合ったりする。 ○重さを比較すること気付きにくい場合は、溶か した食塩の量に着目するよう助言する。 ①もやもやの出方が違うのはなぜだろう。 ②溶けたものはどこへいったの? ③なくなった食塩やミョウバンを元通りにで きないかな。 ・食塩は、もやもやがどんどん出てくるけど、 ミョウバンはゆっくり出てきている。 水に溶けた食塩はどうなったのだろう。 【ワークシート②】 「もののとけ方〔2〕」 食塩やミョウバンの溶け方を比べてみよう。 【ワークシート①】 「もののとけ方〔1〕」 ・食塩とミョウバンが溶ける様子を観察して ①なぜだろう・不思議だなと思ったこと ②どうなるだろうと思ったこと ③やってみたいこと を書きましょう。 ・食塩とミョウバンが溶ける様子を比べて、同 じところや違うところに気を付けながら、観 察しましょう。 ・食塩が水の中に入るとどんどん小さな粒に分 かれて目に見えなくなるだけで、すべて残っ ていると思う。 ・水に入ったらすぐにもやもやになって気体に 変化して、水の外に逃げていくのだと思う。4 5 1.溶かす前と溶かした後の重 さの変化を調べ、結果を記 録する。 【実験】 2.結果を発表する。 3.結果から何がわかったかを 考える。 【結果・考察】 4.水溶液の定義を知る。 水溶液のイメージ図 ○水溶液の定義(水にものが溶け全体に広がり、 すき通った液)をイメージ図(左図参照)を使 用するなどして、しっかりと押さえる。 Ⅲ 6 7 ) 本 時 ( 1.学習課題をつかみ、予想し て、実験方法を考える。 【予想・実験方法】 2.食塩・ミョウバンをそれぞ れ尐しずつ水に入れて溶か す実験をし、結果をまとめ る。 【実験・結果】 3.結果から何がわかったかを 考える。 【結果・考察】 4.学習を振り返る。 ○正確に調べるための道具として、スポイトの正 しい使い方、メスシリンダーの目盛りの読み 方、計量スプーンのすりきり一杯の仕方を指導 する。 ○グラフやイメージ図などに表現し、ものが水に 溶ける量には限りがあること、ものによって水 に溶ける量には違いがあることを押さえる。 ・最初はよく溶けたが、だんだん溶けなくなっ た。 ・ものが水に溶ける量には限りがある。 ・もっと溶かすにはどうすればいいのかな? 食塩やミョウバンが水に溶ける量には、限りがあるだろうか。 【ワークシート③】 「もののとけ方〔3〕」 ・水に溶けた食塩は、目には見えなくても、水 の中にあることがわかりました。 ・食塩を溶かす前の水と食塩をあわせた重さ と、溶かしてからの食塩水の全体の重さは変 わらない。 ・実験の結果を発表しましょう。 ・結果から何がわかりますか。 食塩やミョウバンが水に溶ける量には、限りがあるのだろうか。 ・溶けた食塩はすべて水の中にあるということ は、だんだん水の中の食塩がいっぱいになっ て、溶けなくなると思う。だから、ものが水に 溶ける量には限りがあると思う。
8 9 1.学習課題をつかみ、実験方 法を考える。 【実験方法】 2.水の温度を変えながらミョ ウバンが溶ける量を調べ、 結果を記録する。 【実験・結果】 3.水の温度を変えながら、食 塩が溶ける量を調べ、結果 を記録する。 【実験・結果】 4.結果から何がわかったかを 考える。 【結果・考察】 5.学習を振り返る。 ○先にミョウバンの実験を取り上げた方が、温度 の違いで溶け方に大きな差があることがとらえ やすい。 ○ミョウバンの実験結果から「食塩も温度を上げ ればたくさん溶けるはずだ」という予想をもつ ことが考えられる。 ○安全面を考えて、加熱する温度は 60℃を上限と する。 Ⅳ 10 1.前時に使ったミョウバンの 水溶液の様子を観察する。 2.水溶液の状態にするため、 ろ過の方法を知る。 ○白い粒を取り除く必要性を理解させ、ろ過の方 法を教える。 ○ろ過に使う器具の名前や使い方を知らせる。 11 1.ろ過してできた水溶液から、 溶かしたミョウバンを取り 出す方法を考える。 【実験方法】 ・冷めたらミョウバンが出てきたよ。水の温度 をさらに下げたら、もっとミョウバンが出て くるのではないかな。 ・水を蒸発させればいいのではないかな。 ・紅茶を飲んだとき、熱いお湯には砂糖がよ く溶けたよ。水をあたためてみたらどうか な。 ・お湯にしたら、食塩とミョウバンでは違い があるのかな。 水の量を変えずに、食塩やミョウバンをもっと溶かす方法はないだろうか。 【ワークシート④】 「もののとけ方〔4〕」 ミョウバンの水溶液を観察し、粒を取り除くためのろ過の方法を知る。 ・白い粒が見えるよ。ミョウバンかな。 ・なぜ、白い粒が出てきたのだろう。 水溶液から、溶かしたミョウバンを取り出す方法を考えよう。
2.考えた方法で実験し、結果 をまとめる。【実験・結果】 12 13 1.ろ過してできた水溶液から、 溶かした食塩を取り出す方 法を考える。 【実験方法】 2.考えた方法で実験し、結果 をまとめる。【実験・結果】 3.2つの実験の結果について 話し合う。 【考察】 4.学習を振り返る。 Ⅴ 14 15 1.今までの学習を振り返り、 ミョウバンの飾りがどのよ うにしたらできるか、方法を 考える。 2.ミョウバンの飾りを作る。 ○これまでの学習で得られた知識を関係付け、どの ようにして作るのか予想する。 ○児童の意見を生かしながら、ミョウバンの飾りの 作り方を教える。(児童が作り方を調べて取り組ん でもよい。) 水溶液から、溶かした食塩を取り出す方法を考えよう。 ・ミョウバンは冷やしたら、取り出せたね。 ・食塩もミョウバンも水分を蒸発させたら取り 出せたけど、ミョウバンは大きな粒は取れな かったね。 ・水の量や水の温度によって溶ける量が違うこ とをうまく使って、水溶液から、溶かしたも のを取り出すといいんだね。 ・食塩は水の温度を変えても溶ける量はあまり 変わらなかった。冷やしても出てこないと思 うよ。 ・食塩は熱して水分を蒸発させればいいと思う よ。 ・2つの実験結果から、どんなことがわかるかな。 ・ミョウバンは冷やしたら粒が出てきたね。そ のことを利用するといいのかな。 【ワークシート⑤】 「もののとけ方〔5〕」
6.本時の展開(6/15~7/15)
使用するワークシート【ワークシート③】
学習活動(活動のねらい等) 指導上の留意点 1.学習課題を確認する。 2.予想してイメージ図 を描き、発表する。 3.実験方法を考える。 4.食塩・ミョウバンそ れぞれを尐しずつ水 に入れていく。 5.1さじごとに、溶け たときの様子を記録 し、棒グラフを作成 していく。 6.結果を表にまとめ、 発表する。 7.食塩・ミョウバンが 水に溶けている様子 を イメー ジ図に描 く。 ○なぜ溶ける量に限りがあると思うのか、あるいは限 りがないと思うのか、イメージ図を使い、根拠を もって説明する。 ○水の量50mℓに1さじずつ溶かし、1粒も残って いない状態になったら次の1さじを溶かす方法を 確認する。 ○50mℓの水にどれだけ溶けるか調べる。 ○塩・ミョウバンがどれぐらい溶けたのか、また溶け たときの様子を発表する。 ○塩がたくさん溶け、ミョウバンはあまり溶けないこ とをイメージ図に描いて表す。 「溶ける」とい うことはどうい うことか、粒子 という考え方を 用いて説明する よ う に 助 言 す る。 ものが溶ける量 には限りがある ことを、イメージ 図を用いて説明 できるようにす る。 溶けるときの様 子を1さじごと に記録し、溶ける ときの様子を詳 しく表現できる ようにする。 ものが水に溶ける量には、限りがあるかどうかを考える。 【課題・予想・実験方法】 食塩・ミョウバンが水に溶ける量には限りがあるのかどうか調べる。 【実験・結果】 実験の結果を基に、食塩・ミョウバンが水に溶けている様子をイメージ図に書き、話 し合う。 【考察】 ・限りがあると思います。目には見えないけ れど、水の中に粒があるのだから、いずれ溶 けなくなると思います。 ・いくらでも溶けると思います。どんどん溶 けて、液体のかさが増していくと思います。 ・ミョウバンは1さじ目から溶けにくい。 ・塩は1さじ目はあっという間に溶けたよ。 ・塩は4さじ目から溶けにくくなった。 ・どちらも、溶ける量には限りがありました。 ミョウバンは食塩と比べ、あまり溶けません でした。 ・ミョウバンは食塩よりも溶けにくいという ことがわかりました。8.全体で話し合う。 ○ものが水に溶ける様子を考え、説明する。