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島根大学審査学位論文審査結果の要旨(k688)

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Academic year: 2021

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論文審査及び最終試験又は学力の確認の結果の要旨

⑲ • 乙 氏名

山下瞳

Relationship between Microsatellite Instability, Immune Cells

学 位 論 文 名

!Infiltration, and Expression of Immune Checkpoint Molecules in

Ovarian Carcinoma: Immunotherapeutic Strategies for山

e-._

Future

学位論文審査委員 論文審査の結果の要旨 主査 副査 副査 竹谷 健 丸山 理留敬 管野 貴浩 卵巣癌は婦人科癌の中で最も予後不良であり、新たな治療戦略が必要である。近年免疫チェックポイント阻害 薬である抗

PD-1/PD-Ll

抗体が全世界で注目を集めている。

2017

年に米国食品医薬品局は高頻度マイクロ サテライト不安定性

(MSI-H)

またはミスマッチ修復機構の欠損の固形癌を対象として、抗

PD-1

抗体

Pembrolizumab

を承認した。しかし、これまで卵巣癌における

MSI

についての報告は少なく、

MSI

と腫瘍ヘ のリンパ球浸潤•免疫チェックポイント分子の発現の相関について報告されていない。そのため卵巣癌に対す る免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検討する目的で、

136

(serous carcinoma 76

例、

mucinous

carcinoma 13

例、

endometrioid carcinoma 23

例、

clear cell carcinoma 24

例)の上皮性卵巣癌につい て免疫組織染色を用いたミスマッチ修復蛋白の発現と、免疫細胞

(CDS)

の浸潤、免疫チェックポイント分子

(PD-1/PD-Ll)

の発現の相関について解析した。ミスマッチ修復蛋白が欠損した

MSI

症例は

136

例中

6

(4.4%)

であった。この

6

例に関して

DNA

を用いた解析でも

MSI

を確認した。しかし、ミスマッチ修復蛋白が 欠損した

MSI

、ミスマッチ修復蛋白が正常である

MSS

2

群間において、年齢・進行期・手術時の残存腫瘍 の有無について検討したが、いずれにおいても

2

群間で有意差はみられなかった

(p=0.496, p=0.357,

p=0.202)

。また、

MSI

MSS

2

群間で

PD-Ll

PD-1

CDS

発現についても検討したが、

2

群間で有意差 はなかった

(p=0.423, p=0.653, p=0.126)

。これらの結果は卵巣癌における

MSI

の頻度が非常に少ないこと が影響していると思われた。また、免疫チェックポイント阻害薬単剤で有効である症例も非常に少ないことが推 測された。近年、化学療法や

PARP

阻害薬を投与することにより、

PD-Ll

の発現が上昇することが報告されて いる。したがって、卵巣癌の予後改善のためには免疫チェックポイント阻害薬と化学療法や分子標的治療薬と の併用療法が必要であると考え、現在マウスモデルを用いた実験を進めている。具体的には、マウス卵巣癌細 胞株を免疫機能が正常である

B6C3Fl

マウスヘ腹腔内投与し、抗

PD-1/PD-Ll

抗体の単剤療法および抗癌 剤

·PARP

阻害剤との併用療法の治療効果を検討する予定である。また、分子生物学的検討を進めることで、 免疫チェックポイント阻害薬の有効性を裏付ける機能解析を行う。これらの結果は、今後の卵巣がんの新たな 治療法への発展が期待できる優れた研究成果であり、博士(医学)の学位授与に値すると判断した。 最終試験または学力の確認の結果の要旨 申請者は、予後不良な卵巣癌の抗

PD-1

抗体に対するバイオマーとして

MSI

を検討した結果、

MSI

症例数が少なく、

MSI

MSS

2

群間での臨床像や免疫細胞浸潤および免疫チェックポイント分子発現に 相関はみられなかった。しかし、今後の新たな治療法の開発につながる研究成果であり、周辺領域の知識も 豊富であるため、学位授与に値すると判断した。 (主査:竹谷健) 申請者は、上皮性卵巣癌における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を予測するバイオマーに関して 検討を行った。結果的にはMSI症例は少なく、MSIとMSSの2群間で免疫チェックポイント分子の発現等に有 意差を認めなかったが、今後の治療展開につながる臨床的に意義のある研究である。審査にあたっても質疑 応答は的確で、周辺知識も豊富であるため、学位授与に値すると判断した。 (副査:丸山 理留敬) 申請者は、卵巣癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性を検討する目的から研究を立案し、得られ た成果から、臨床応用までに関する一貫した知識と関連事項の見識も豊富であり、学位授与に相応しいと評 価した。 (副査:管野 貴浩)

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