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比較経済研究第 58 巻第 1 号 (2021 年 1 月 )1-23 頁 [ 論文 ] 欧州新興市場の金融と成長 メタ分析 * 岩﨑一郎 大野成樹 要旨 : 本稿において筆者らは, 欧州新興市場における金融の発展や自由化が, 経済成長に及ぼす効果を検証すべく, 先行研究 31 点から抽出した 33

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(1)

第58巻第1号(2021年1月)1-23頁

1 はじめに

金融の発展が経済成長に寄与するのかどうか

は,長らく経済学者の間で議論となってきた.

Schumpeter (1911) は,事業の新設や改良などの

ために企業者に供与される信用は,経済発展の一

要素を構成すると述べている.このことは銀行が

金融仲介機能を促進するならば,経済成長に貢献

することを示している.他方,

Robinson (1952)

は,経済が成長すると金融サービスに対する需要

が高まるため,金融の発展は経済成長に受動的に

反応すると述べている.Schumpeter (1911) と同

様に,金融制度の発展が経済成長を促進する上で

重要であると論じている古典的研究には,

Gurley

and Shaw (1955),Goldsmith (1969),Hicks (1969)

がある.

金融自由化が経済成長を促進するのかどうか

に関しても,多様な見方がある.

McKinnon (1973)

や Shaw (1973) は,人為的な低金利で供与された

融資は金融制度に歪みをもたらすため,不必要で

あると述べている.こうした歪みは預金を減少さ

せ,資本蓄積を妨げるため,効率的な資源配分を

不可能にする.金利が市場メカニズムに従い自由

に調整するならば,企業者は高利回りの事業に投

資する誘因を持つ.こうした考えに基づき,金融

自由化は経済成長に寄与すると両者は考える.こ

れに対して,Van Wijnbergen (1983) は,非整備金

融市場(

curbmarket)をモデルに含めたうえで,

途上国における高水準の定期預金金利が,生産量

の増大と経済成長を達成できるかを検討してい

る.その分析結果によると,高水準の定期預金金

利と,経済成長や生産増大との関係は一様ではな

く,

McKinnon (1973) や Shaw (1973) の主張は必

ずしも成り立たないと論じている.具体的には,

発展途上国において銀行の預金金利が上昇し,家

計がポートフォリオを非整備金融市場融資から

銀行預金に切り替えた場合,銀行は準備預金を積

み立てる必要があることから,融資可能な資金供

給が減少する.結果として,金利の上昇は投資及

び生産を減少させることになる.このことは,金

融自由化が必ずしも成長を促進するわけではな

いことを示している.

以上の議論に加えて,

Stiglitz (2000) は,金融危

機の頻度の増加は,金融部門の自由化が密接に関

係していると述べている.この主張も,金融自由

化が必ずしも経済成長に寄与するわけではない

ことを示している.

では,金融発展・自由化と経済成長との関係に

関する欧州新興市場の実証研究から,どのような

結論を導き出すことができるであろうか.経済体

欧州新興市場の金融と成長

―メタ分析―

*

岩﨑一郎・大野成樹

要旨: 本稿において筆者らは,欧州新興市場における金融の発展や自由化が,経済成長に及ぼす効 果を検証すべく,先行研究31点から抽出した330推定結果のメタ分析を試みた.抽出推定結果のメタ 統合は,金融発展や自由化の成長促進効果の存在を示すと共に,研究対象国,推定期間及び研究対 象分野の違いは,効果サイズに顕著な違いを生み出す可能性を強く示唆した.しかし,メタ回帰分 析や公表バイアスの検証から得られた分析結果は,メタ統合結果を容易に再現し得ない.欧州新興 市場における金融と成長の因果関係に関する真の姿を把握するために,更なる研究成果の蓄積が望 まれる. [キーワード:金融発展・自由化,経済成長,メタ分析,公表バイアス,欧州新興市場]

[論 文]

(2)

制転換以前,欧州新興諸国は,計画経済体制下に

あったが,これらの国々の銀行は,中央銀行及び

その管理下にある国有銀行から成り,融資は国の

計画に従って供与するに過ぎなかった.市場経済

への体制転換と前後して,銀行制度の自由化や民

間銀行の設立,国有銀行の民営化が進められた

Iwasaki and Uegaki, 2017).欧州新興諸国で市場

経済が導入された後,金融発展・自由化は経済成

長に寄与したと言えるのであろうか.後の第 2 節

でも論じる通り,このことに関する結論は多様で

あり,統一的な結論が導き出されているとは言え

ない状況にある.そこで本稿は,先行研究のメタ

分析を介して,欧州新興諸国における金融発展・

自由化と経済成長との関係に一定の結論を導く

ことを目的とする.

本稿の構成は次の通りである.第

2 節では,欧

州新興市場に関する先行研究を概観し,金融発

展・自由化と経済成長に関する仮説を提起する.

3 節では,文献調査及びメタ分析の方法と手順

を論じる.第

4 節では,メタ分析対象文献の概要

を解説する.第 5 節では,抽出推定結果のメタ統

合を試みる.第 6 節では,研究間の異質性に関す

るメタ回帰分析を行う.第

7 節では,公表バイア

スの有無及びその程度を検証する.そして最終第

8 節では,分析結果の要約と筆者らの結論を述べ

る.

2 先行研究のレビューとメタ分析のための

仮説設定

欧州新興市場に関する先行研究は,金融発展・

自由化と経済成長に関してどのような結論を導

き出しているのであろうか.分析に先立ち,本節

では当該分野における先行研究の概要を論じる.

欧州新興諸国における金融の発展と経済成長と

の 関 係 に 焦 点 を 当 て た 先 駆 的 研 究 は

Koive

(2002)

である.Koive (2002) は,金融発展指標と

し て 民 間 部 門 向 け 銀 行 融 資 の 対

GDP 比

(CREDIT)を使用し,1993~2000年における東欧

及び

CIS 諸国25か国を分析対象としている.実質

GDP 成長率を被説明変数とした回帰分析では,

CREDIT の 1 期ラグの係数が有意に負であった.

この結果について著者は,欧州新興諸国における

金融部門の規模の大きさは質の高さを意味する

訳ではないと述べている.具体的には,ソフトな

予算制約が多数の欧州新興諸国で浸透しており,

かかる条件の下で企業に供与された信用が非生

産的投資に使用された可能性がある

1)

.このほか

持続不可能な信用の増加により,1990年代に多数

の金融危機が発生したこととの関連も指摘され

ている.

Fink et al. (2006) は,証券市場の数値を金融発

展指標として使用している.同論文は,

EU 新規

加盟国

9 か国を分析対象とし,1996~2000年のデ

ータを用いて金融の発展と経済成長との関係を

論じている.分析結果によると,民間部門向け銀

行融資の対

GDP 比のみならず,株式時価総額の

対 GDP 比には,経済成長指標との間に統計的に

有意な関係が見られなかったが,銀行融資総額の

GDP 比には,経済成長指標との間に有意な正

の相関が見られた.銀行融資残高・株式時価総額・

債券発行残高の合計の対

GDP 比や債券発行残高

の対

GDP 比も金融発展指標として用いられてい

るが,これらは,経済成長指標との間に有意な正

の相関関係を示している.このほか,Fink et al.

(2006)

は,公的部門を含む融資や,政府が主な発

行主体となっている債券が,経済成長と有意に正

の相関を持つという結果を踏まえ,政府以外の経

済主体の金融仲介が効率的に機能するような改

革が必要であると述べている.

Caporale et al. (2015) は,金融自由化と経済発

展との関連を論じている.同論文は,EU 新規加

盟国10か国の1994~2007年のデータを利用して

いる.広義流動性の対 GDP 比及び株式時価総額

の対 GDP 比が金融発展指標として使用されてお

り,経済発展指標と統計的に有意な正の相関関係

が示されている.しかし両変数の係数の値は小さ

く,経済発展に対する効果は限定的である.これ

は,多額の不良債権や

EU 新規加盟国で勃発した

金融危機に起因する可能性があると著者は述べ

ている.これに対して,金融自由化の指標,すな

わち著者が EBRD のデータベースをもとに算出

した金融機関改革指数は,経済成長の指標と有意

な正の相関関係があり,係数も比較的大きな値で

ある.外国の銀行を受け入れ,国有銀行を民営化

するといった改革を実施したことで,取引コスト

(3)

が減少し,融資が利用しやすくなったほか,銀行

部門の効率が向上したと考えられると,著者は指

摘している.

Asteriou and Spanos (2019) では,1990~2016年

のデータが利用されており,2008~2009年の世界

金融危機を考慮に入れた上で,金融の発展と経済

成長との関係が分析されている.金融発展指標と

して,広義流動性の対 GDP 比 (LLY ),商業銀行資

産の,商業銀行資産・中央銀行資産の合計に対す

る 比 率

(BTOT ), 株 式 時 価 総 額 の 対 GDP 比

(

MCAP),株式売買代金の株式時価総額に対する

比率 (TOR) が使用されている.BTOT は危機前の

みならず,危機期間中や危機後も,経済成長と有

意に正の相関関係があった.他方,世界金融危機

期間中及び危機後の時期には,

LLY は経済成長と

の間に負の相関関係が見られた.

MCAP の係数は

危機前も危機後も有意ではなかった.

BTOT の係

数が有意に正であることは,銀行の資本が十分に

存在することで,金融制度の安定性が確保された

ことを示している.

ここで,先行研究の分析から得られた,金融発

展・自由化指標の係数の符号を整理しておこう.

Koive (2002) においては,民間部門向け銀行融資

の対

GDP 比の係数が有意に負であった.Mehl et

al. (2005),Petkovski and Kjosevski (2014),Musta

(2016),

Jimborean and Kelber (2017) においても,

Koive (2002) と同じく,民間部門向け銀行融資の

対 GDP 比が,金融発展指標として使用されてお

り,経済成長との相関関係は負であった.また

Mehl et al. (2005) では,広義流動性の対 GDP 比も

金融発展指標として使用されており,経済成長と

の相関は負であった.

Narayan and Narayan (2013)

における金融発展指標は,銀行融資の対

GDP 比

であり,経済成長との相関は負であった.

さらに,Bouzid (2013) 及び Özdemir (2014) の

ように,金融自由化指標と経済成長との相関関係

が負であることを示す研究もある.

上記の研究結果とは反対に,金融発展・自由化

が,経済成長と正の相関関係を示す研究もある.

Akimov et al. (2009) , Cojocaru et al. (2011) ,

Cojocaru et al. (2016) , Rama (2018) は , Koive

(2002) と同様に,金融発展の指標として民間部

門向け銀行融資の対

GDP 比を使用しているが,

経済成長との間に正の相関関係が存在すると論

じている.また,Akimov et al. (2009),Petkovski

and Kjosevski (2014) , Caporale et al. (2015) ,

Yaroson (2015),Fetai (2018) は,広義流動性の対

GDP 比を金融発展指標として使用し,いずれも経

済成長との間に正の相関を見出している.

Fink et

al. (2005b),Fink et al. (2006) は,民間融資・株式

時価総額・債券発行残高の合計の対 GDP 比や,債

券発行残高の対 GDP 比などを金融発展指標とし

て使用し,経済成長との間に正の相関関係がある

としている.また

Caporale et al. (2015) は,金融

自由化が経済成長を促進することを示している.

このほか,金融の発展と経済成長との間に有意

な関係を見出せなかった研究もある.民間部門向

け銀行融資の対 GDP 比の係数が有意でないこと

を示す研究には,

Mehl and Winkler (2003),Fink et

al. (2005b),Fink et al. (2006),Fink et al. (2009),

Caporale et al. (2015),Yaroson (2015)がある.株

式時価総額の対

GDP 比の係数が有意でない結果

が得られた研究には,

Fink et al. (2005b),Fink et

al. (2006),Fink et al. (2009),Yaroson (2015),

Asteriou and Spanos (2019)などがある.

上記の欧州新興諸国に関する先行研究のサー

ベイから,以下のことが明らかになった.第

1 に,

金融発展・自由化が経済成長を促進するのかどう

かは,文献により結論が異なる.ゆえに,個別の

先行研究のみでは,金融発展・自由化と経済成長

との関係を確定することができない.第 2 に,金

融発展・自由化の指標として様々な数値が使用さ

れている.異なる指標が用いられることで,異な

る結論が導き出される例が見られた.また,たと

え同一の指標が使用されたとしても,結論が異な

る場合もあった.

こうしたことから,欧州新興諸国において金融

発展・自由化が,経済成長を促進するか否かとい

う問いに対して一定の結論を導き出すには,先行

研究の実証結果を統合・比較するメタ分析が大い

に有効である.そこで,本稿では,他地域の分析

で広く確認されている金融発展・自由化の経済成

長促進効果が,欧州新興諸国においても確認でき

るのか否か,またその理由は何に起因するのか

を,既存文献のメタ分析を以て考察する.

メタ分析を行うのに先立ち,本節に述べた議論

(4)

を踏まえて,筆者らは,以下 4 つの仮説を提起す

る.

1 および図 2 は,それぞれ1997年および2007

年の銀行改革指数と銀行融資の対

GDP 比の状況

を示している

2)

.1997年における銀行融資の対

GDP 比と銀行改革指数の相関係数は0.40である

のに対して,2007年における相関係数は0.76とな

っており,両者の相関が強まっていることがわか

図1 1997年における各国の銀行改革指数(縦軸)と銀行融資の対

GDP 比(横軸)

出所:EBRD, Transition Report 各年版および IMF, International Financial Statistics をもとに筆者作成.

図2 2007年における各国の銀行改革指数(縦軸)と銀行融資の対

GDP 比(横軸)

(5)

る.これらの図及び各国統計から,金融発展指標

(ここでは銀行融資の対 GDP 比)や金融自由化指

標が右上方にシフトしている中で,各国の国内総

生産が増加傾向にあることが確認された.このた

め,金融発展・自由化と経済成長は,正の相関関

係にあると考えられる.上述の通り,民間融資の

GDP 比などを金融発展指標として使用した論

文では,経済成長との間に負の相関が示される場

合もあった.しかし,銀行融資の対 GDP 比に関す

る限り,経済成長との間に有意な負の相関を示す

研究は皆無である.また,金融自由化に関しても,

経済成長と負の相関を示す研究が見られたが,金

融自由化の指標として直接投資・証券投資等の合

計の対

GDP 比が使用されており,図 1 や図 2 の

銀行改革指数とは異なるものであった.そこで,

本稿は次の仮説を提起する.

【仮説 1 】金融発展や自由化は,欧州新興市場の

経済成長に正の効果をもたらす.

EU 新規加盟諸国では,市場経済が機能するた

めに必要な法体系が整備されているほか,金融機

関に対する監督も厳格である.また,EU に加盟

することにより,金融機関間の競争が促進され,

金利が低下するなどして,銀行融資が増加すると

考えられる.具体的には,ハンガリーでは,

EU 加

盟を前に資本移動規制が撤廃され,バルト諸国で

は,金融機関の監督が強化された.また,これら

の国では,外国資本の持ち株比率の高い銀行が多

数活動している.このように,EU 新規加盟国に

おける方が,金融発展や自由化が経済成長に及ぼ

す効果が大きいと予測される.そこで,以下を第

2 の仮説として提起する.

【仮説 2 】金融発展や自由化が経済成長に及ぼす

効果の大きさは,

EU 新規加盟諸国が,他の欧州

新興市場諸国に優る.

経済移行から一定の時間が経過した時期と比

較すると,経済移行当初,財・サービスに対する

人々の需要が十分に満たされていなかったのは

疑問の余地が無い.このため,移行初期は,収益

が高い事業が比較的多く,企業からの資金需要も

潜在的に大きかったと思われる.他方,金融機関

は,計画経済期とは異なり,収益の高い事業に対

し自らの判断で融資を供与することが可能とな

った.このため,経済移行当初は,金融発展・自

由化が経済成長に与える効果は相対的に大きく,

経済移行から時間が経過するにつれて,競争が激

化し全般的な利益率が低下することが予想でき

る.欧州新興市場において,金融発展や自由化が

経済成長に及ぼす効果は,時間の経過と共に減衰

する傾向にあると推察されることから,次の仮説

を提起する.

【仮説 3 】欧州新興市場における金融発展や自由

化が経済成長に及ぼす効果は,時間の経過と共に

減衰する.

欧州新興諸国では,金融自由化が大幅に進展す

る一方で,金融監督業務が不十分であったことな

どから,銀行危機が勃発する例が見られた.具体

的には,1992年のエストニア,1995年のラトビア

及びリトアニアのほかに,1996年のチェコ及びブ

ルガリアの事例がある.さらに,ロシアにおいて

は金融自由化が銀行の多額の対外借入を可能に

し,このことが1998年の金融危機を勃発させる要

因の一つとなった(OECD, 2000; Ono, 2012).

また,金融自由化それ自体が,経済成長に寄与す

るわけではなく,金融自由化の下で融資が増大す

ることなどによって,経済成長が促進されると考

えられる.こうしたことを考慮すると,金融発展

が経済成長に及ぼす効果は,金融自由化のそれよ

りも大きいとの仮説を提起することができる.即

ち,

【仮説 4 】欧州新興市場において,金融発展が経

済成長に及ぼす効果は,金融自由化のそれに優

る.

以上の考察結果を踏まえて,次節以降では,上

記の 4 つの仮説を検証すべく,欧州新興市場研究

の実証結果に基づいたメタ分析を行う.

3 文献調査及びメタ分析の方法と手順

本節では,前節に提起した一連の仮説をメタ分

析で検証する第一歩として,メタ分析対象研究の

探索・選択手続き,並びにメタ分析の方法と手順

を順次解説する.

(6)

欧州新興市場における金融の発展や自由化が,

当該地域の経済成長に及ぼす効果を実証的に検

証した先行研究を特定するため,筆者らは,電子

学術文献情報データベースである

EconLit 及び大

手学術出版社のウエブサイトにアクセスして,関

連文献の探索を行った

3)

.これら電子文献データ

ベースの利用に際しては,論文タイトルを対象

に,“finance” 又は “financial” の何れか一語と,

“growth” の AND 検索を行った.かかる論文タイ

トル検索の結果,

EconLit では,2,700点に迫る文

献が,大手学術出版社のウエブサイトでは,500

点を超す追加文献がヒットした.これら機械検索

ヒット文献の重複を除いた結果,この研究分野に

おいては,少なくとも2,500点超の文献が発表さ

れていることが確認された.無論,これらには,

欧州新興市場の実証分析を目的としない研究が

数多く含まれている.

そこで,次に筆者らは,これら機械検索ヒット

文献ひとつひとつについて,その研究対象国は,

欧州新興市場諸国

4)

であるのか否か,そうである

場合,当該文献は,メタ分析の対象となり得る推

定結果を含有しているのか否を逐一精査し,かか

る文献選定作業の結果として,総数31の先行研究

を,メタ分析対象文献として採用した.筆者らは,

これら31文献より,データ形式,回帰モデルの推

定式,推定期間及び推定量の少なくとも一項目に

ついて,実証方法論上の差異が認められるなら

ば,その限りにおいて,一研究から複数の推定結

果を抽出した.その結果は,次節で詳しく報告す

る.以下,本稿では,抽出した推定結果の総数を,

K で表す(k=1,

, K

次に,抽出推定結果を用いたメタ分析の方法と

手順を解説する.

本研究では,抽出推定結果の統合や比較に,偏

相関係数(partial correlation coefficient)を用いる.

偏相関係数は,他の条件を一定とした場合の従属

変数と問題となる独立変数の相関度と方向性を

表す「ユニットレス」な統計量であり,いま第 k

推定結果(k =1, …, K )の t 値と自由度を,各々 t

k

及び

df

k

で表せば,次式

(1)

によって算出される.標準誤差は,

1

である.この偏相関係数(

r )を,現在最も標準的

なメタ統合法である固定効果モデル(

fixed-effect

model)と変量効果モデル(random-effects model)

の両方で統合し,均質性の

Q 検定結果や,研究間

異質性の程度を測る

I

2

及び H

2

統計量に基づい

て,いずれかの統合値を参照値として採用する.

推定結果のメタ統合に続いて,文献間異質性の

メタ回帰分析を行う.具体的には,

y

k

を第 k 推定

結果の偏相関係数,

β

0

を切片,β

n

を推定すべきメ

タ回帰係数(n =1, 2, …, N ),x

kn

を推定結果に差

異をもたらすと考えられる研究上の諸要因を表

すメタ独立変数,

se

k

を第 k 推定結果偏相関係数の

標準誤差,e

k

を残差項とする次式,

,

1, ⋯ , (2)

を,推定結果を文献毎にクラスター化した上で,

標 準 誤 差 を 頑 健 推 定 す る 最 小 二 乗 法 推 定 量

(Cluster-robust OLS),同様のクラスター法を採用

し,なおかつ標準誤差の逆数(1/

SE ),自由度(df )

又は文献別抽出推定結果数の逆数(1/

EST )を分

析的重みとする加重最小二乗法推定量(Cluster-robust WLS),多段混合効果制限付最尤法推定量

Multi-level mixed effects RLM),クラスター法変

量効果パネル一般最小二乗法推定量(Cluster-robust random-effects panel GLS)及びクラスター

法 固 定 効 果 パ ネ ル 最 小 二 乗 ダ ミ ー 推 定 量

(Cluster-robust fixed-effects panel LSDV)から成る

合計 7 種類の推定量を用いて推定し,その上で,

仮説検定のために採用するメタ独立変数の係数

と統計的有意性を相互比較するのである.

メタ分析の最終段階として,「公表バイアス」

publication selection bias)の検証を行う.公表バ

イアスとは,実際に行われた研究の一部しかその

成果が公のものとならず,その弊害として,公表

された研究成果のみに基づく効果サイズや統計

的有意性の評価結果が,真の値から乖離する問題

を意味する(岩﨑,

2018).筆者らは,本研究領域

におけるこの問題の影響度を検証するため,公表

バイアスの視角的判定に用いる「漏斗プロット」

(7)

(funnel plot)に加えて,Stanley and Doucouliagos

(2012) が提唱し,先行メタ研究においても広く

利 用 さ れ て い る 漏 斗 非 対 称 性 検 定 (

funnel-asymmetry test:

FAT),精度=効果検定(precision-effect test: PET),標準偏差を用いた精度=効果推

定法(

precision-effect estimate with standard error:

PEESE)という3種類の仮説検定法を組み合わせ

た公表バイアスの FAT-PET-PEESE 検証手続きを

実行する.

漏斗プロットは,効果サイズ(本稿では偏相関

係数)を横軸,推定精度(同様に,自由度又は標

準誤差の逆数)を縦軸に置いた分布図である.仮

に公表バイアスが存在しないなら,複数の独立し

た研究が報告する効果サイズは,真の値の周りを

ランダムかつ対称的に分布するはずである.ま

た,統計理論の教えるところでは,効果サイズの

分散と推定精度は負に相関する.従って,その様

は伏せた漏斗の姿に似ることが知られている.故

に,抽出した推定結果を用いて描いた漏斗プロッ

トが,左右対称ではなく,いずれか一方に偏った

形状を示すなら,問題となる研究領域において,

特定の結論(符号関係)を支持する推定結果が,

より高い頻度で公表されるという意味での恣意

的操作を疑うことになる.

他方,

FAT-PET-PEESE 検証手続きは,公表バイ

アス及び真の効果の有無を厳密に検証するため

に開発された統計的検定の組み合わせであり,以

下に述べるメタ回帰モデルの推定によって実行

される.

漏斗非対称性検定(

FAT)は,第 k推定結果の t

値を,標準誤差の逆数に回帰する次式

1⁄

(3)

を推定し,同式の切片

γ

0

がゼロであるという帰無

仮説の検定によって行う.

v

k

は残差項である.切

γ

0

が有意にゼロでなければ,効果サイズの分布

は,左右対称形ではないと判断できる.この

FAT

によって公表バイアスが検出されたとしても,入

手可能な研究成果の中に,効果サイズに関する正

真正銘の証拠が存在することはあり得る.

Stanley

and Doucouliagos (2012) によれば,上記 (3) 式の

係数 がゼロであるという帰無仮説の検定によ

って,その可能性を検証することができる.帰無

仮説:

0 の棄却は,正真正銘の証拠の存在を

示唆する.この

γ

1

が推定精度の係数であること

が,この検定が,「精度=効果検定」(precision-effect test: PET)と呼ばれる所以である.更に,彼

らは,定数項を持たない下記

(4) 式を推定し,係

数 γ

1

を得ることで,公表バイアスを修正した効

果サイズの推定値を得ることができると述べて

いる.即ち,帰無仮説:

0 が棄却されるなら,

問題となる研究領域には非ゼロの効果が実際に

存在し,係数

γ

1

がその推定値と見なし得るのであ

る.

1⁄

(4)

この (4) 式を用いた正真正銘な効果サイズの

推定方法が,「標準誤差を用いた精度=効果推定

法」(

PEESE)と呼ばれるものである.なお,上記

(3) 式及び (4) 式の推定に際しては,最小二乗法

の他,研究間の異質性に対処し得るその他

4 種類

の推定量を用いた推定結果も報告し,回帰係数の

頑健性を点検する.

4 メタ分析対象文献の概要

表 1 には,前節に述べた文献探索・選択手続き

に基づいて筆者らが選定したメタ分析対象文献

が,発表年順に列挙されている.我々の文献検索

結果によると,欧州新興市場諸国における金融の

発展や自由化とマクロ経済成長との因果関係を

実証的に検証した文献は,2000年代初めから発表

され始め,その後は,ほぼ毎年数点が公表されて

いる.前節でも述べた通り,この分野の草分け的

研究は,

Koivu (2002) であり,最新研究には,

Asteriou and Spanos (2019) や Dombi and Grigoriadis

(2020) がある.

1 の通り,先行研究の大多数は複数国研究で

あり,特定国研究は,アルバニア研究の

Musta

(2016) とセルビア研究の Radjenovic and Rakic

(2017)

に限られる.これら 2 点の単独国研究を

除く全ての研究が,2013年までに

EU への加盟を

果たした中東欧11カ国(以下,

EU 加盟諸国)の全

て又は一部を研究対象としており,一方,非

EU

東欧諸国は,16文献において,バルト諸国を除く

旧ソ連諸国は,13文献において,それぞれ選定文

献の研究対象となっている.かかる先行研究の分

析対象国構成には,近年におけるパネルデータ分

(8)

表1

欧州新

興市場に

おけ

る金融発

展の

経済成長

効果

に関する

抽出

推定結果

内訳

著者 (発表年 ) 発表媒体 研究水準 20段階 評価 1) 研究対象国構成 推定期間 金融変数 3) 抽出 推定 結果数 EU 加盟 諸国 非 EU 東欧諸国 旧ソ連 諸国 その他 2) K oiv u (2 00 2) 未刊行( Disc us sio n Pa per ) 1 1 1 2 1 2 19 93 -2 00 0年 B 10 D aw son ( 20 03 ) A ppli ed E con om ic s L ette rs 18 1 0 3 19 94 -1 99 9年 A 4 M ehl a nd Wi nk le r ( 20 03) 未刊行( C on fer en ce Pap er ) 1 3 4 1 19 93 -2 00 1年 A, B 12 Fin k et al. (2 00 5a ) 未刊行( Wor ki ng P ap er ) 1 5 19 93 -2 00 1年 C, E, H, I 60 Fin k et al. (2 00 5b ) 未刊行( C on fer en ce Pap er ) 1 9 19 96 -2 00 0年 B, C, E, F , H 16 Fin k et al. (2 00 6) L iebs ch er e t al. ( 20 06) 10 9 19 96 -2 00 0年 B, C, E, F , H 18 Me hl et a l. (2 00 6) Lie bsc he r et a l. (2 00 6) 10 3 4 1 19 93 -2 00 3年 A, H 4 B ussi er e an d Fr at zs ch er ( 20 08) R eview o f In te rn ati on al E co nom ic s 19 9 19 90 -2 00 2年 J 6 M ast en e t al. ( 20 08) Jou rn al o f In ter na tio nal M one y a nd F in anc e 20 1 1 2 19 96 -2 00 4年 C, H 7 A kim ov et al. ( 20 09 ) A ppli ed Fin an ci al E co nom ic s 1 6 1 0 3 1 0 3 1 98 9-20 04 年 A, B, D 16 F ink e t a l. ( 20 09 ) Jo ur na l of F in an cia l S tab il ity 20 9 19 96 -2 00 0年 B, C, E, F , H 18 C ojoc ar u et al. (2 01 1) 未刊行( Wor ki ng P ap er ) 1 1 1 4 1 0 19 90 -2 00 8年 A, B, C 11 D jalil ov an d Pi ess e (20 11 ) E m ergi ng M ark ets Fin an ce & T ra de 1 6 1 1 2 1 2 2 1 99 2-20 08 年 D, H, I 6 Z ago rc he v et a l. (2 011) 19 8 19 97 -2 00 4年 H 7 B ouzi d ( 20 13) R om ani an E con om ic an d B usi ne ss R ev iew 1 5 1 1 8 19 90 -2 00 5年 K 7 D udi an a nd Po pa ( 201 3) T heo ret ic al a nd A ppli ed E co nom ics 15 8 19 96 -2 01 1年 B 3 N ara ya n an d N ar ay an ( 20 13 ) Int er nat io nal R evi ew of Fin an ci al A na lysis 18 1 0 2 3 1 19 95 -2 01 1年 C, E, F 3 G aff ao a nd G aral ov a (2 01 4) E con om ic C han ge a nd R es tru ct uri ng 15 1 1 2 19 95 -2 00 7年 A, C, H 18 Ö zdem ir (2 01 4) A ppli ed E con om ic s L ette rs 18 9 2 19 95 -2 00 7年 L 6 Pet ko vs ki a nd K jo sevs ki ( 20 14 ) E con om ic R ese arc h - E kon om sk a Ist ra zi va nj a 1 0 1 1 5 19 91 -2 01 1年 A, B 2 C apo ral e et al. (2 01 5) Int er nat io nal Jo urn al of Fi na nc e a nd E con om ics 17 1 0 19 94 -2 00 7年 A, B, E, M 16 G eor ga nto po ul os e t al. (2 01 5) Jou rn al o f E co nom ic A sym m et rie s 5 9 2 19 99 -2 01 2年 C, E, F 6 Y aros on (2 01 5) A m eric an J ou rn al o f E con om ic s 4 1 1 3 1 1 19 95 -2 01 3年 A, B, E 3 C ojoc ar u et al. (2 01 6) E m ergi ng M ark ets Fin an ce & T ra de 1 6 1 1 4 1 0 19 90 -2 00 8年 A, B 6 M ust a (2 01 6) E uro pe an J ou rn al of E conom ic s an d B usin ess Stu di es 4 1 19 94 -2 01 5年 B 2 Jim bo re an an d K elb er ( 20 17) C om par ati ve E con om ic St udi es 16 1 0 19 93 -2 01 4年 B 6 R adje no vi c a nd R ak ic (2 01 7) Jou rn al o f B alk an and N ear E ast er n St ud ie s 5 1 19 97 -2 01 3年 A, E, F , G 12 Fet ai ( 20 18 ) Jou rn al o f Fi na nci al E conom ic P oli cy 15 1 1 4 3 2 19 98 -2 01 5年 A, H 2 R am a (2 01 8) E uro pe an J ou rn al of M ark eti ng a nd E co nom ic s 1 3 6 1 20 02 -2 01 4年 A, B, C, I 4 As te ri ou a nd Sp an os ( 201 9) F ina nc e Res ea rc h Le tte rs 16 1 1 19 90 -2 01 6年 A, D, E, G 19 D om bi a nd G ri go ria dis ( 20 20 ) E con om ic S ys tem s 1 8 1 1 4 1 0 1 1 99 3-20 14 年 B, C 20 注:1)詳細は, 本稿補論を参照. 2)トルコ,ベト ナム他アジア旧社会主義諸国,中国,非ユーロ圏 EU 加盟国等 3) A : 金融深化 度, B : 民間融資 対 GDP 比, C : 銀行融資対 GDP 比, D : 民間銀行融 資・資産シェア, E : 市場資本化度 , F : 証 券市場規 模, G : 証券回転 率, H : 総合金融 発展指標, I: そ の他金融発展指標, J: 資本勘定開 放度, K : 金融市 場自由化度, L : 金融自由化総合指標, M : その他金 融自由化指標 出所:筆者作成.

(9)

析の隆盛,EU 加盟国への国際社会的・学術的関

心の高さ及びデータ上の諸制約が強く反映され

ていると思われる.いずれにしても,

EU 加盟諸

国だけでなく,非

EU 東欧諸国や旧ソ連諸国につ

いても,少なくない数の文献が,これらの国々を

対象とした実証結果を報告しており,仮説

1 及び

2

のメタ分析による検証を大いに可能としてい

る.

選定文献31点は,全体として,1993年から2016

年の24年間をカバーしており,文献当たりの推定

期間の平均及び中央値は,各々14.5年及び15年で

ある.24年に亘る長期を網羅した研究成果の存在

は,仮説

3 の検証にとって好条件である.また,

Beck et al. (2000) や Levine et al. (2000) らが先鞭

を着け,いまやこの研究領域の標準的な実証手法

として,数多くの研究者が用いている一連の金融

変数は,欧州新興市場研究においても積極的に利

用されており,このため,表 1 の通り,金融深化

度からその他金融自由化指標に至る合計13種類

の金融変数それぞれについて,選定文献31点は,

メタ分析で統合・比較するに十分な数の推定結果

を報告している.いま,金融深化度からその他金

融発展指標までの

9 種類の変数を,金融発展の水

準を捉える変数群とし,残る資本勘定開放度から

その他金融自由化指標までの 4 種類の変数を,金

融自由化の程度を捕捉する変数群とすれば,前者

は,28文献において,後者は,4

文献において,

各々その推定結果が報告されている.この通り,

欧州新興市場研究の焦点は,経済成長に及ぼす金

融発展の効果に重点が置かれているが,金融自由

化効果の実証成果も少なくはなく,仮説

4 の検証

にとって不足はない.

表 1 右端欄の通り,筆者らは,以上の研究属性

によって特徴付けられる31文献から,総計330の

推定結果を抽出した.1

文献当たりの平均抽出推

定結果数及び中央値は,各々10.7及び6.5である.

次節以降では,前節で解説した手法に基づいて,

これら330抽出推定結果のメタ統合,メタ回帰分

析及び公表バイアスの検証を順次試みる.

5 メタ統合

本節では,メタ分析の第一段階として,前節で

その概要を述べた抽出推定結果のメタ統合を試

みる.

はじめに,抽出推定結果の分布を確認しておこ

う.表

2 には,全研究に加えて,研究対象国,推

定期間,研究対象分野別に抽出推定結果を区分し

表2 抽出推定結果の記述統計量,

t 検定及び正規性検定

抽出推定 結果数 (K) 平均値 中央値 標準 偏差 最大値 最小値 尖 度 歪 度 t 検定 1) Shapiro-Wilk 検定(W)2) (a)全研究(仮説 1 ) 330 0.108 0.066 0.281 0.946 -0.779 4.431 0.380 6.945*** 0.959 ††† (b)研究対象国による比較(仮説 2 ) 観測値に占める EU 加盟諸国の比 率が50%以上の研究 224 0.140 0.087 0.291 0.946 -0.779 3.837 0.547 7.215*** 0.963 ††† 観測値に占める EU 加盟諸国の比 率が50%未満の研究 106 0.038 0.039 0.246 0.700 -0.766 5.390 -0.478 1.591 0.930 ††† (c)推定期間による比較(仮説 3 ) 推定期間平均年が2000年以前の 研究 188 0.162 0.103 0.292 0.946 -0.779 4.065 0.577 7.615*** 0.948 ††† 推定期間平均年が2000年以降の 研究 142 0.036 0.017 0.251 0.700 -0.766 4.250 -0.243 1.692* 0.969 ††† (d)研究対象分野による比較(仮説 4 ) 金融発展研究3) 307 0.108 0.070 0.275 0.946 -0.779 4.912 0.371 6.917*** 0.947 ††† 金融自由化研究4) 23 0.096 -0.108 0.367 0.674 -0.393 1.564 0.452 1.256 0.835 ††† 注:1)帰無仮説:平均値が 0 .***:1 %水準で有意,*:10%水準で有意. 2)帰無仮説:データは正規分布に従う.†††:1 %水準で有意. 3)金融変数として,金融深化度,民間融資対 GDP 比,銀行融資対 GDP 比,民間銀行融資・資産シェア,市場資本化度, 証券市場規模,証券回転率,総合金融発展指標,その他金融発展指標を用いた研究を指す. 4)金融変数として,資本勘定開放度,金融市場自由化度,金融自由化総合指標,その他金融自由化指標を用いた研究 を指す. 出所:筆者算定.

(10)

た 場 合 の 記 述 統 計 量 , 平 均 値 の

t 検 定 及 び

Shapiro-Wilk 正規性検定の結果が,図 3 には,表

2

の分類に対応したカーネル推定密度が,それぞ

れ示されている.表

2 (a) の通り,全研究の平均値

と中央値は共に正であり,平均値の

t

検定は,平

均がゼロであるという帰無仮説を,有意水準

1 %

で棄却している.これに加えて,図

3 (a) は,正方

向に偏ったカーネル推定密度を表している.従っ

て,仮説 1 に違わず,選定文献31点は,その全体

として,金融の発展や自由化は,欧州新興市場の

経済成長に資する効果を発揮していることを示

唆する研究成果を提示しているといえよう.更

に,表 2 (b) から (d) の通り,観測値に占める EU

加盟諸国の比率が50%以上の研究,推定期間平均

年が2000年以前の研究及び金融発展研究の推定

結果は,観測値に占める

EU 加盟諸国の比率が

50%未満の研究,推定期間平均年が2000年以降の

研究及び金融自由化研究のそれよりも,その全て

の場合について,平均値と中央値がより高く,な

おかつ,図 3 (b) から (c) の通り,前者は,後者よ

りも正方向により偏った分布を示している.抽出

推定結果の分布形状から得られるこうした観察

図3 抽出推定結果のカーネル密度推定

1) 注:1)縦軸は推定密度,横軸は変数値. 2)金融変数として,金融深化度,民間融資対 GDP 比,銀行融資対 GDP 比,民間銀行融資・資産シェア,市場資本化度, 証券市場規模,証券回転率,総合金融発展指標,その他金融発展指標を用いた研究を指す. 3)金融変数として,資本勘定開放度,金融市場自由化度,金融自由化総合指標,その他金融自由化指標を用いた研究 を指す. 出所:筆者作成.推定対象データの観測数及び記述統計量は,表 2 を参照.

(11)

結果は,筆者らが提示した仮説 2 から 4 のいずれ

とも整合的である.

以上を踏まえて,抽出推定結果のメタ統合結果

に目を転じよう.表

3 には,固定効果モデルと変

量効果モデルを用いたメタ統合結果と共に,研究

間異質性の検証結果も併せて報告されている

5)

同表 (B) の通り,均質性の

Q 検定は,全 7 ケース

について,帰無仮説を 1 %水準で棄却している.

また,研究間異質性の程度を測る I

2

及び H

2

統計

量も,揃ってその存在を強く示している.従って,

以下では,同表 (A) に報告した変量効果モデルの

推定値を,統合効果サイズの参照値に採用する.

3 (a) の通り,全抽出推定結果を用いたメタ

統合値は,1

%水準で有意に正であり,欧州新興

市場における金融発展や自由化の経済成長促進

効果の存在を示しているという意味で,仮説

1 を

支持している.但し,経済学研究における偏相関

係数の評価に関する

Doucouliagos (2011) の基準

に従えば,変量効果モデルによる0.081という統

合効果サイズは,低位の水準にも満たないもので

あり,従って,現実経済におけるその実際的なイ

ンパクトは,極めて顕著なものであるとは云えな

6)

表 3 は,仮説 1 に加えて,仮説 2 ,3 及び 4 に

ついても,これらを裏付けるメタ統合結果を示し

ている.即ち,同表 (b) から (d) の通り,観測値に

占める

EU 加盟諸国の比率が50%以上の研究,推

定期間平均年が2000年以前の研究及び金融発展

研究に分析対象を限定したメタ統合値は,比較対

象研究のそれを各々上回っているのである.更

に,観測値に占める

EU 加盟諸国の比率が50%以

上の研究及び推定期間平均年が2000年以前の研

究 の 統 合 値 は , そ れ ぞ れ 0.105 及 び 0.130 と ,

Doucouliagos (2011) が提案する低位効果の下限

閾値を超えるものであり,統計的に有意ではある

が,その統合値が,各々0.038及び0.020と大変小

さい比較対象研究とは対照的である.

推定期間の違いが,選定文献の実証結果に及ぼ

表3 抽出推定結果のメタ統合

抽 出 推 定 結果数 (K ) (A)メタ統合 (B)研究間異質性の検証 固定効果 モデル (漸近 z 値)1) 変量効果 モデル (漸近 z 値)1) 均質性の Q 検定 (p 値)2) I 2 統計量 3) H 2 統計量 4) (a)全研究(仮説 1 ) 330 0.012*** 0.081*** 2142.330*** 99.72 356.05 (2.92) (6.14) (0.00) (b)研究対象国による比較(仮説 2 ) 観測値に占める EU 加盟国の比率が 50%以上の研究 224 -0.002 0.105*** 1720.300*** 99.83 572.43 (-0.35) (6.18) (0.00) 観測値に占める EU 加盟国の比率が 50%未満の研究 106 0.044*** 0.038* 397.680*** 98.49 65.28 (5.72) (1.94) (0.00) (c)推定期間による比較(仮説 3 ) 推定期間平均年が2000年以前の研究 188 0.071*** 0.130*** 907.100*** 99.34 150.18 (11.86) (7.35) (0.00) 推定期間平均年が2000年以降の研究 142 -0.048*** 0.020*** 1041.190*** 99.52 207.24 (-7.87) (1.06) (0.00) (d)研究対象分野による比較(仮説 4 ) 金融発展研究 5) 307 0.033*** 0.084*** 1730.730*** 99.65 287.46 (7.26) (6.45) (0.00) 金融自由化研究 6) 23 -0.159*** 0.057 220.760*** 97.74 43.15 (-12.11) (0.79) (0.00) 注:1)帰無仮説:統合効果サイズが 0 . 2)帰無仮説:効果サイズが均質. 3) 0 ~100%の値を取る.値が大きいほど,研究間異質性の程度が大きいことを意味する. 4)値が 0 であれば,均質的であることを意味する. 5)金融変数として,金融深化度,民間融資対GDP比,銀行融資対 GDP 比,民間銀行融資・資産シェア,市場資本化度, 証券市場規模,証券回転率,総合金融発展指標,その他金融発展指標を用いた研究を指す. 6)金融変数として,資本勘定開放度,金融市場自由化度,金融自由化総合指標,その他金融自由化指標を用いた研究 を指す. 出所:筆者推定

(12)

す影響に関する表 3 (c) のメタ統合結果を補完す

るため,抽出推定結果を推定期間平均年毎に細分

化して,その時系列的変動を検証したものが,図

4

である.同図に採画された近似線によれば,推

定期間平均年が 1 年現在へ進むと,効果サイズは

1

%水準で有意に0.0191低下する.この結果も,

仮説

3 が予想する時系列的減衰傾向の存在を強

く裏付けるものである.

以上,本節で行ったメタ統合及び単回帰分析の

諸結果は,筆者らの一連の予測に合致して,欧州

新興市場における金融の発展や自由化の正の経

済成長効果の存在を表すと共に,その効果サイズ

は,研究対象国,推定期間及び研究対象分野の違

いに応じて,著しく相違する可能性を強く示唆し

た.しかしながら,これらの結果は,選定文献の

研究水準やその他一連の研究条件の違いを殆ど

考慮していない.この観点から,本節の分析結果

が,様々な文献間異質性を同時に制御した上でも

再現されるのか否か,その頑健性を点検する必要

がある.次節では,この点を,メタ回帰分析の手

法によって厳密に検証する.

6 メタ回帰分析

メタ分析の第二段階として,本節では,文献間

異質性が,選定文献の実証結果に及ぼす影響を,

前述した (2) 式の回帰推定によって検証する.第

3

節で解説した通り,推定するメタ回帰モデルの

従属変数は,抽出推定結果の偏相関係数である.

一方,メタ独立変数としては,仮説

2 から 4 の検

証を目的とする研究対象国構成,推定期間,並び

に研究対象分野の差異を捉える一連の変数及び

標準誤差に加えて,研究対象国数,データ形式,

推定量,経済成長変数タイプ及びその他属性,金

融変数属性,内生性制御の是非,各種制御変数採

用の有無及び研究水準の差異を表現する全41種

類の変数を採用した.表

4 には,これらメタ独立

変数の名称,定義及び記述統計量が一覧されてい

る.

Polák (2019) や Havranek and Sokolova (2020)

に代表されるベイズ派メタ分析研究者が指摘す

る通り,メタ回帰分析は,真のモデルが事前に特

定出来ないという意味での「モデル不確定性」問

題を抱えている.また,多数のメタ独立変数の同

時推定は,多重共線性を引き起こす恐れも高い.

図4 抽出推定結果の推定期間平均年順配列(

K=330)

注:近似式における回帰係数直下の括弧内数値は標準誤差.F 検定の帰無仮説は,全ての係数がゼロ.***:1 %水準で有意. 出所:筆者作成.

(13)

表4 メタ回帰分析に用いる独立変数の変数名,定義及び記述統計量

変 数 名 定 義 記述統計量 平均 中央値 標準偏差 非 EU 加盟諸国多数派研究 観測値に占める 以外(=0) EU 加盟諸国の比率が50%未満の研究(=1),それ 0.321 0 0.468 平均推定年2000年以降研究 推定期間平均年が2000年以降の研究(=1),それ以外(=0) 0.430 0 0.496 金融自由化研究 金融自由化の経済成長効果に関する研究(=1),それ以外(=0)1) 0.070 0 0.255 EU 加盟諸国比率 観測値に含まれる EU 加盟諸国の比率 0.115 0 0.233 東欧非EU加盟諸国比率 観測値に含まれる非 EU 東欧諸国の比率 0.111 0 0.167 旧ソ連諸国比率 観測値に含まれる旧ソ連諸国の比率(バルト諸国を除く) 0.016 0 0.040 推定期間平均年 推定に用いたデータの平均年 1999.877 1998 3.234 民間融資対 GDP 比 民間融資対 GDP 比を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.212 0 0.409 銀行融資対 GDP 比 銀行融資対 GDP 比を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.109 0 0.312 民間銀行融資・資産シェア 銀行部門に占める民間銀行融資・資産のシェアを金融変数に用 いた研究(=1),その他(=0) 0.042 0 0.202 市場資本化度 市場資本化度を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.103 0 0.304 証券市場規模 証券市場規模を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.058 0 0.233 証券回転率 証券回転率を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.024 0 0.154 総合金融発展指標 総合的金融発展指標を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.255 0 0.436 その他金融発展度指標 金融深化度及び上記以外の変数を金融変数に用いた研究(=1), その他(=0) 0.009 0 0.095 資本勘定開放度 資本勘定開放度を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.018 0 0.134 金融市場自由化度 金融市場自由度を金融変数に用いた研究(=1),その他(=0) 0.021 0 0.144 金融市場自由化総合指標 総合的金融自由度指標を金融変数に用いた(=1),その他(=0) 0.018 0 0.134 その他金融自由度 金融深化度及び上記以外の変数を金融変数に用いた研究(=1), その他(=0) 0.012 0 0.110 研究対象国数 研究対象国数の対数 2.176 2.197 0.885 横断面データ 横断面(クロスセクション)データを用いた研究(=1),その他(=0) 0.055 0 0.227 時系列データ 時系列データを用いた研究(=1),その他(=0) 0.042 0 0.202 OLS 最小二乗推定量を利用した推定結果(=1),その他(=0) 0.224 0 0.418 IV/2SLS/3SLS 操作変数法又は2/3段階推定法を利用した推定結果(=1),その他(=0) 0.079 0 0.270 実質 GDP 経済成長を実質 GDP で測定した研究(=1),その他(=0) 0.221 0 0.416 非変換経済成長変数 経済成長変数になんら加工を行わない研究(=1),その他(=0) 0.009 0 0.095 対数変換経済成長変数 経済成長変数に対数変換を行った研究(=1),その他(=0) 0.452 0 0.498 非線形効果 金融効果の非線形性に配慮した推定結果(=1),その他(=0) 0.073 0 0.260 ラグ変数 金融変数がラグ変数(=1),その他(=0) 0.161 0 0.368 交差項同時推定 金融変数とその他変数の交差項の同時推定を伴う推定値(=1), その他(=0) 0.094 0 0.292 内生性制御 経済成長と金融発展・自由化の内生性を制御した研究(=1),そ の他(=0) 0.058 0 0.233 国家固定効果 国家固定効果を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.418 0 0.494 時間固定効果 時間固定効果を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.167 0 0.373 マクロ経済安定性 インフレーション及びその他マクロ経済安定性を制御した推定 結果(=1),その他(=0) 0.385 0 0.487 政治安定性 政治安定性を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.042 0 0.202 貿易開放度 貿易開放度を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.188 0 0.391 人的資本 人的資本を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.039 0 0.195 投資・資本形成 投資・資本形成を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.482 0 0.500 教育水準 教育水準を制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.452 0 0.498 制度的クオリティ 制度的クオリティを制御した推定結果(=1),その他(=0) 0.076 0 0.265 研究水準 研究水準の20段階評価 注) 10.224 15 7.574 標準誤差 偏相関係数標準誤差 0.117 0.080 0.076 注:1)金融変数として,資本勘定開放度,金融市場自由化度,金融自由化総合指標,その他金融自由化指標を用いた研究 を指す. 2)詳細は,本稿補論を参照. 出所:筆者算定.

(14)

そこで,ベイズ派研究者の接近法に従い,筆者ら

は,仮説検定に必要な諸変数及び標準誤差以外の

メタ独立変数を対象に,ベイジアン・モデル平均

法(

Bayesian model averaging: BMA)で各々の事

後含有確率(posterior inclusion probability: PIP)を

推定した後,PIP が0.50を超える変数を対象に,

OLS による頻度主義者検定(Frequentist check)を

行い,その推定値が有意水準10%以上の変数を,

(2) 式の制御変数に利用する方針を採用した.そ

の結果,表 4 に一覧されているメタ独立変数の

表5 文献間異質性のメタ回帰分析

推定量 1) Cluster-robust OLS Cluster-robust WLS [1/SE] Cluster-robust WLS [d.f.] Cluster-robust WLS [1/EST] Multi-level mixed effects RML Cluster-robust random-effects panel GLS Cluster-robust fixed-effects panel LSDV メタ独立変数(デフォルト・カテ ゴリ)/モデル [1] [2] [3] [4] [5] [6] 2) [7]3) 研究対象国構成(EU 加盟諸国多数 派研究)(仮説 2 ) 非EU加盟諸国多数派研究 -0.0419 -0.0450 -0.0292 -0.1322 -0.1107 -0.1338 * dropped (0.048) (0.043) (0.036) (0.085) (0.070) (0.078) 推定期間(平均推定年2000年以前 研究)(仮説 3 ) 平均推定年2000年以降研究 -0.0393 -0.0548 * -0.0566** -0.1240 -0.1010 -0.1222 * dropped (0.040) (0.032) (0.026) (0.092) (0.066) (0.074) 研究対象分野(金融発展研究) (仮説 4 ) 金融自由化研究 0.0590 -0.0040 -0.0476 0.0069 0.0420 0.0459 0.0437 *** (0.064) (0.057) (0.042) (0.081) (0.046) (0.032) (0.002) データ形式(パネルデータ・時系 列データ) 横断面データ 0.4270 *** 0.4399 *** 0.2560*** 0.4413 *** 0.4367 *** 0.4317 *** 0.4166 *** (0.085) (0.082) (0.087) (0.111) (0.111) (0.117) (0.109) 経済成長変数タイプ 実質 GDP(国民当たり実質 GDP) -0.1423 ** -0.0874 * -0.0559 -0.1491 ** -0.1632 *** -0.1561 ** 0.1354 *** (0.057) (0.043) (0.033) (0.060) (0.063) (0.066) (0.023) 経済成長変数その他属性 非変換経済成長変数(加工経済 成長変数) 0.6140 *** 0.5779 *** 0.5248*** 0.6491 *** 0.4440 *** 0.3641 *** dropped (0.066) (0.052) (0.043) (0.083) (0.051) (0.053) 金融変数属性 非線形効果(線形効果) -0.2269 *** -0.1632 *** -0.1188** -0.2124 ** -0.2579 *** -0.2619 ** dropped (0.069) (0.059) (0.051) (0.090) (0.097) (0.107) 制御変数 政治安定性 0.1171 0.0567 0.0029 0.1871 ** 0.1167 0.0921 0.0211 *** (0.094) (0.068) (0.035) (0.090) (0.081) (0.076) (0.000) 人的資本 -0.4114 *** -0.3361 *** -0.2830*** -0.4036 *** -0.4392 *** -0.4509 *** dropped (0.069) (0.050) (0.044) (0.104) (0.100) (0.111) 投資・資本形成 0.1610 *** 0.1377 *** 0.1097*** 0.1318 *** 0.1289 *** 0.1171 ** dropped (0.035) (0.032) (0.029) (0.046) (0.046) (0.049) 制度的クオリティ -0.1901 ** -0.1228 ** -0.0847* -0.1159 -0.0985 -0.0549 0.0053 *** (0.074) (0.056) (0.044) (0.076) (0.075) (0.064) (0.000) 標準誤差 標準誤差 -0.2565 0.3374 0.7850** -0.4448 -0.6458 -0.7484 -0.8374 (0.487) (0.385) (0.342) (0.783) (0.599) (0.646) (0.679) 切片 0.1310 ** 0.0622 0.0145 0.2118 0.2419 ** 0.2710 ** 0.1484 * (0.061) (0.038) (0.025) (0.131) (0.110) (0.123) (0.079) K 330 330 330 330 330 330 330 R2 0.398 0.418 0.434 0.405 - 0.339 0.005 注:1)OLS:最小二乗法,WLS:加重最小二乗法(括弧内は推定に用いた分析的重み),RML:制限付き最尤法,GLS:一 般最小二乗法,LSDV:最小二乗ダミー推定法. 2)Breusch-Pagan 検定:χ2=1.22, p=0.1344 3)Hausman 検定:χ2=9.96, p=0.1264 括弧内は,White の修正法による分散不均一性の下でも一致性のある標準誤差.***:1 %水準で有意,**:5 %水準で有意, *:10%水準で有意.OLS,WLS 及びパネル変量効果・固定効果推定に際しては,研究毎に抽出推定結果をクラスター化し たクラスター法を採用している. 出所:筆者推定.メタ独立変数の定義及び記述統計量は,表 4 を参照.

(15)

内,横断面データ,実質

GDP,非変換経済成長変

数,非線形効果,政治安定性,人的資本,投資・

資本形成及び制度的クオリティの

8 変数が,モデ

ル不確定性や多重共線性に対して頑健なモデレ

ーターとして選択された

7)

以上のモデレーター選定作業を踏まえて,(2)

式を推定した結果が,表

5 に披露されている.同

表の通り,横断面データから制度的クオリティに

至るモデレーターの殆どが,多くのモデルで繰り

返し有意に推定されているのは,これらが望まし

い制御変数であることの証左である.さて,ここ

での焦点は,仮説 2 から 4 を検証するために導入

した非

EU 加盟諸国多数派研究,平均推定年2000

年以降研究,並びに金融自由化研究をそれぞれ

1

で指定するメタ独立変数の推定結果であるが,表

5

の通り,メタ回帰分析の結果は,筆者らの理論

的予想を支持しているとは言い難い.実際,非

EU

加盟諸国多数派研究及び金融自由化研究は,双方

共に

1 モデルでのみ有意な推定値を示している

に過ぎない.一方,平均推定年2000年以降研究は,

6 モデル中 3 モデルで有意に負に推定されてい

る.しかし,

Breusch-Pagan 検定は,帰無仮説を棄

却しておらず(

χ

2

=1.22,

p =0.1344),従って,モ

デル [6] のパネル変量効果推定よりも,モデル

[1] の

OLS 推定の方がより望ましいと判断する

なら,平均推定年2000年以降研究の推定結果も頑

健とは云えない.

そこで,上記 3 変数に代わり,研究対象国別構

成比率や平均推定年という連続変数や,金融変数

タイプをより細分化したダミー変数群を,(2) 式

の右辺に導入した推定も行ってみた.その結果

が,表 6 である.同表の通り,資本勘定開放度と

その他金融自由化度の

2 変数を除けば,これらの

代替変数も,その推定値は悉く統計的に非有意で

ある.従って,表 5 及び表 6 に報告されたメタ回

帰分析の諸結果は,前節のメタ統合結果に反し

て,筆者らの仮説

2 ,3 及び 4 のいずれも,その

確からしさには疑問があることを指し示してい

8)

7 公表バイアスの検証

続く本節では,メタ分析の最終段階として,漏

斗プロット及び

FAT-PET-PEESE 手続きによる公

表バイアスの検証を行う.

5 は,全研究の抽出推定結果を用いて彩画し

た漏斗プロットである.同図の通り,推定精度を,

自由度と標準偏差の逆数の何れで代理しても,抽

出推定結果の分布形状には,正方向への偏りが見

て取れる.従って,真の効果がゼロであるのか,

それとも正の値を取るのかという想定に応じて,

公表バイアス発生可能性と程度の評価が大きく

左右される.この点を適合度検定で検証した結果

が,表

7 に示されている.同表 (a) の通り,仮に

真の効果を図 5 に点線で描かれたゼロと仮定す

る場合,抽出推定結果の正負比率は,219対111と

なり,正負比率は等しいという帰無仮説は,適合

度検定によって強く棄却される(z =5.9452, p

=0.000).一方,図

5 に実線で示した変量効果モ

デル統合値を,真の効果の近似値と仮定する場

合,抽出推定結果は,表 2 に報告した統合値0.081

を境に,左右172対158とほぼ同数に分かれるた

め,帰無仮説は棄却されない(

z =-0.7707, p

=0.441)

.表 7 (b) から (d) の通り,同様の分析結

果は,研究対象国,推定期間及び研究対象分野で,

抽出推定結果を区分した場合の殆どにも認めら

れる.

以上の通り,真の値を如何に想定するのかによ

って,漏斗対称性の判定は大きく相違する.そこ

で,方法論的により厳密な

FAT-PET-PEESE 検証

手続きに最後判定を委ねることとする.全抽出推

定結果を用いたその結果は,表 8 の通りである.

同表 (a) によれば,

FAT 検定は,切片 (γ

0

) がゼロ

であるという帰無仮説を,5 モデル中 4 モデルで

棄却する.即ち,抽出推定結果に漏斗非対称性が

生起している可能性は高く,従って,この研究領

域における公表バイアスの恐れは高いと判定さ

れる.但し,公表バイアスが惹起しているとして

も,抽出推定結果の中に,正真正銘な実証的証拠

が存在している可能性はある.これを検証するの

が PET 検定であるが,再び表 8 (a) の通り,同検定

は,標準誤差の逆数(1/SE)の係数(γ

1

)がゼロ

であるという帰無仮説を,全

2 モデルで棄却して

いるに過ぎないから,実証的証拠の存在は否定さ

れる.かかる PET 検定の結果と歩調を合せるよう

に,同表 (b) に報告された

PEESE 法は,非ゼロな

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