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“Care in Normal Birth”から“Intrapartum care for a positive childbirth experience”へ:WHOの正常出産ガイドラインは,どのように変わったか?

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“Care in Normal Birth”から

“Intrapartum care for a positive childbirth experience”へ:

WHOの正常出産ガイドラインは,どのように変わったか?

From

“Care in Normal Birth” to

“Intrapartum care for a positive childbirth experience”:

How was the WHO guideline on normal birth changed?

笹 川 恵 美(Emi SASAGAWA)

春 名 めぐみ(Megumi HARUNA)

米 澤 かおり(Kaori YONEZAWA)

疋 田 直 子(Naoko HIKITA)

* 抄  録 目 的

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,2018 年「WHO recommendations: Intrapartum care for a positive childbirth experience」を出版した。このガイドラインは,1996年出版の正常出産ガイ ドライン「Care in Normal Birth: a practical guide」の改訂版として位置付けられる。本稿の目的は,新旧 ガイドラインを比較し,その変化を記述することである。 方 法 まず,新旧ガイドラインの基本特性を比較した。次に,新旧ガイドラインの推奨項目の内容を理解で きる小見出しを和文で作成した。新旧ガイドラインの小見出しは,対比可能な形で一覧表とし,項目別 の推奨レベルを示した。また,「新ガイドラインで新たに加わった項目」「旧ガイドラインにあったが新 ガイドラインに含まれなかった項目」「新旧ガイドラインで推奨レベルが変わった項目」を調べ,WHO の正常出産ガイドラインはどのように変わったかを表に取りまとめた。 結 果 新旧ガイドラインは,妊産婦を尊重するケアを推奨している点で,共通している。新ガイドラインの 主な改訂点は,分娩経過の多様性を尊重し,分娩第1期・第2期の定義や標準持続時間を見直したこと, 硬膜外麻酔中の産婦や新生児へのケアに関する推奨を増やしたことである。清潔な器具の使用の推奨な ど,出産現場に広く浸透したと考えられる項目は,新ガイドラインには含まれていなかった。推奨レベ ルが上がったのは,分娩第3期のオキシトシン投与や臍帯牽引,硬膜外麻酔に関する項目であった。助 産ケアに関しては,ポジティブな出産体験を促進するようなケアを推奨していたが,その具体的なケア 2018年5月31日受付 2018 年10月25日採用 2019年5月29日早期公開

東京大学大学院医学系研究科(Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)

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内容は,表現の違いはあるものの,新旧ガイドラインで一貫して変わらない項目であった。 キーワード:世界保健機関,ガイドライン,正常出産

Abstract Purpose

The World Health Organization (WHO) released “WHO recommendations: Intrapartum care for a positive childbirth experience” in 2018. The guideline is considered the revised edition of the ‟Care in Normal Birth: a practical guide” issued in 1996 dedicated to childbirth in healthy pregnant women. This study aimed to compare the old and new WHO guidelines, and to describe the changes that have been made.

Methods

First, the basic characteristics of both the guidelines were compared. Second, subheadings were created in Japanese to describe the contents of both the old and new guidelines. A comparable list of subheadings of the old and new guidelines was made, and the categories of recommendation were shown in the same table. Finally, we analyzed the following details:“newly added items in the new guideline”, “items that were present in the old guideline but were not included in the new guideline”, and “items in the new guideline for which the recommended levels have shifted”. Then, the overall changes in the WHO recommendations for normal childbirth were described.

Results

The old and new WHO guidelines were similar with regard to promoting the respectful maternity care. The major points that were revised included the respect for diversity of the progress of labor and modification of the definitions and standard duration of the first and second stages of labor. Additionally, the new guideline included recommendations on the care for women who have undergone epidural anesthesia, and for newborns. Recom-mendations considered to have been widely accepted in several birth settings, such as the use of clean instruments was not included in the new guideline. The category levels that elevated from the old guideline were the items related to oxytocin administration at the third stage of labor, umbilical cord traction, and care for women who underwent epidural anesthesia. The new guideline emphasized the midwifery cares which promote women's positive childbirth experience. However, the contents of midwifery cares were consistently unchanged in the new and old guidelines, although there were differences in expressions.

Key words: World Health Organization, guideline, normal birth

Ⅰ.緒   言

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は 1996年,初めての正常出産ガイドライン「Care in Normal Birth: a practical guide(正常出産時のケア:実 践ガイド)」を出版した(WHO, 1996)。このガイドライ ンは,産科領域で広く使われる医療介入やケアに関す るさまざまな科学的根拠を編纂し,明らかに有効な介 入・ケアや,明らかに害がある介入を示したものであ る。Care in Normal Birthは8ヵ国以上の言語に翻訳さ れ,自然出産を勧めようとする世界中のプロフェッ ショナル達が活用し,日本語では「WHOの59カ条お産 のケア実践ガイド(以下,WHOの59ヵ条)」として翻訳 された(戸田,1997)。我が国の助産技術の優位性を活 かした母子保健分野の国際協力プロジェクトが,1990 年代後半にブラジルで大成功を収め(三砂,2001),そ の後,世界各地で同様のプロジェクトが展開されたが (三砂,2011),どの国においても,Care in Normal Birthは重要なケア指針としての役割を果たしてきた。 そんな中,2018年2月にWHOは正常出産ガイドライン を 22 年ぶりに改定し,「WHO recommendations: Intra-partum care for a positive childbirth experience(WHO 推奨:ポジティブな出産体験のための分娩時ケア)」を 出版したのである(WHO,2018)。 我が国の出産現場では,ガイドラインを参照しなが ら医療介入・ケアに関する判断を行うことが根付いて おり,日本助産学会も「エビデンスに基づく助産ガイ ドライン―妊娠期・分娩期,2016年(第2版)」を策定 している(日本助産学会,2017)。今後,助産ガイド ラインが改訂される際には,新しいWHOガイドライ ンも吟味,統合されていくことが予測される。そし て,日本の助産師が世界で活躍する際,新WHOガイ ドラインを理解しておくことは,やはり必須であろ う。分娩時ケアに関する変化や昨今の潮流を知ること は,これからの助産師に求められている技術や知識を 得るうえでも役立つと考える。

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本稿は,新旧ガイドラインの比較を通じて,何が変 わったのか,特徴的な変化を記述することを目的とし ている。

Ⅱ.方   法

まず,旧ガイドラインであるCare in Normal Birthと 新ガイドラインである Intrapartum care for a positive birth experienceの基本特性を,発行年,推奨項目数, 特徴,作成経緯,構成,採用した推奨レベルの点から 比較した。次に,筆頭著者が和文に下訳した新ガイド ラインの推奨項目を基に,共著者と協議を通じ,推奨 項目の和訳を完成させた。新旧ガイドラインの比較を 容易にするため,翻訳は「WHOの59ヵ条」の日本語を 参考としている(戸田,1997)。さらに,新旧ガイドラ インの各推奨(勧告)に,読んだだけで推奨内容が理解 できるような小見出しを作成したうえで,新旧ガイド ライン推奨項目の小見出しを対比可能な形で一覧表と し,項目別の推奨レベルも同時に示した。また,「新ガ イドラインで新たに加わった項目」「旧ガイドラインに あったが新ガイドラインに含まれなかった項目」「新旧 ガイドラインで推奨レベルが変わった項目」を調べ, WHOの正常出産ガイドラインはどのように変わったか を取りまとめた。

Ⅲ.結   果

1.新旧ガイドラインの概要比較

旧ガイドラインCare in Normal Birthと新ガイドライ ン Intrapartum care for a positive childbirth experience の概要を表1に示す。両ガイドラインは,先進国・途上 国の区別なく,世界中の正常出産を対象としており, 出産の生理学的プロセスを促すようなケアの重要性を 説いている点で共通している。また,両者とも,エビ デンスに基づいたケアを受けることを女性の人権とし て捉えているが,新ガイドラインにその思いがより強 く込められているのは,推奨の第1番目に「妊産婦を尊 重したケア」を掲げていることから理解できる。 推奨項目数は,旧ガイドラインの59項目から新ガイ ドラインの56項目へと,3項目減ったのみだが,その 頁数は 58 ページから 212 ページへと大幅に増量した。 旧ガイドラインは,WHOが示した初めての正常出産の エビデンスの編纂であり,読破しやすいページ数だっ たことから多くの言語に翻訳された。しかし,新ガイ ドラインは,医療におけるエビデンスの質と推奨の強 さ を グ レ ー デ ィ ン グ す る 手 法(Grading of Recom-mendations Assessment, Development and Evaluation: GRADEアプローチ)を採用し,推奨項目の決定要因 を,impact(介入・ケアによる効果)やvalue(アウトカ ムの重要性や優先性),resource(必要となる資源や費 用 対 効 果), equity(健 康 の 公 平 性 に 対 す る 影 響), acceptability(受容可能性),feasibility(実行可能性)な どの観点から吟味し,その結果も多く開示しているこ とから,作成過程の透明性が確保されていると言える。 推奨レベルは,旧ガイドラインが「A.明らかに有効で 役に立つ,推奨されるべき」「B.明らかに害があった り効果がないのでやめるべき」「C.十分な証拠がない ので,まだはっきりと勧めることができない」「D.し ばしば不適切に使われたり,不適切に実施される」の4 区分であり,旧ガイドラインの推奨59項目は大きな偏 りなくそれぞれのカテゴリーに属していた。新ガイド ラインは「a.推奨される」「b.推奨されない」「c.特定 の状況において推奨」「d.厳格な研究的な状況下で推 奨」の4区分であり,推奨レベルcとdにカテゴリー化さ れたのは3項目のみと,ほとんどの項目が推奨レベルa かbかに大別されていた。 2.新旧ガイドラインの項目の比較 新旧ガイドラインが提示する推奨項目の小見出し を,推奨番号順に並記した一覧表を表2に示す。新ガ イドラインの項目のうち,Care in Normal Birth と関 連のある項目の横には,ガイドラインの推奨レベル (A~D)と項目番号(1~59)の組み合わせを表 2 の 「WHO59ヵ条との関連」の欄に記載した。よって,こ の欄が空白の場合,当該するものが「新ガイドライン で新たに加わった項目」となり,この欄に表記されな かった旧ガイドラインの項目番号は,「旧ガイドライ ンにはあったが,新ガイドラインには含まれていない 項目」である。これらの項目は表 3に別途とりまとめ た。表3 は「旧ガイドラインと新ガイドラインで推奨 レベルが変わった項目」も書き加えることで,WHO 正常出産の新旧ガイドラインの変化に関する全体像を 示した本研究のメイン・テーブルである。 3.新ガイドラインで新たに加わった項目 表 3 に示した通り,新ガイドラインに新たに加 わったのは計14項目であった。具体的には,「a.推奨 される」ケアが 7項目,「b.推奨されない」ケアが6項

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目,「c.特定の状況下において推奨される」ケアが 1 項目であった。 「a.推奨される」ケアのうち,重要な新規項目は, 分娩第 1 期の潜伏期と活動期の定義の見直しであり, 分娩第1期潜伏期を,変動的な子宮頸管の変化にかか る時間と捉え直し,活動期を子宮口開大5cm以上とし たことである。また,硬膜外麻酔中の産婦の「自由な 分娩体位」や「いきむタイミング」についての推奨も 含まれている。産後については「子宮底硬度評価」「慣 例的な産後女性の全身評価」「産後 24 時間以上の産褥 入院」に関する推奨が新たに加わった。新生児ケアに 関する項目が増えたことも,新ガイドラインの特徴と いえ,「ビタミン K 投与」に関する推奨が新たに加 わった。なお,旧ガイドラインの「低体温予防」との 関連があるため表3には記載しなかったが,出生後の 沐浴を24時間まで遅延させることについての推奨は, 児の低体温予防をより具体的に示している意味で,新 たな項目ともいえよう。 「b.推奨されない」ケアには,「ルーティンで行う消 毒液による外陰部洗浄」「合併症のない経腟分娩への抗 生物質投与」「会陰切開後の慣例的な抗生物質投与」が 挙げられており,産褥熱や創部感染予防への効果を示 すエビデンスの低さから,「奨励されない」項目として 新規に挙げられていた。その他,分娩遷延予防を目的 とした「硬膜外麻酔中の促進剤」「抗けいれん薬」の使用 や,「新生児の吸引」も新たな推奨されない項目である。 表1 WHO正常出産に関する新旧ガイドラインの基本特性の比較 旧ガイドライン 新ガイドライン

Care in Normal Birth Intrapartum care for a positive birth experience

発行 1996年 2018年 推奨項目数 59項目 56項目 頁数 58ページ(PDF) 212ページ(PDF) 特徴  WHO による初めての正常出産のガイドライン。WHO の ベースとなる考え方は,証拠に基づく医学と母児の人権 尊重である。「自然な出産」を勧めようとするプロフェッ シ ョ ナ ル の 多 く が 先 進 国, 途 上 国 を 問 わ ず に 利 用。  読みやすい文章,読破しやすいページ数であり,英語・ 仏語・葡・日本語等,8ヵ国語に翻訳された。

 Care in Normal Birth の改訂版。正常出産における医療介入 やケアについて,新規・既存のエビデンスを統合している。  妊娠・出産・産後の全期間を通じて Respectful care を女性 の権利として捉えている。出産の医療化が進みすぎることで 女性の産む力を損なわせ,ネガティブなインパクトを与える ことを懸念し,良質なケアを通じポジティブな出産体験がで きるような支援を目指している。 作成経緯  1985 年,急増する科学技術が医療サービスへ急激に導 入される状況を鑑み,ブラジルで「出産のための適切な科 学技術地域間共同会議」が開かれ,「出産に使われる科学技 術の適正性を評価し,各国の保健関係省庁が共同研究を実 施し,具体的な方針を打ち出すべき」という主旨の勧告が 契機となり,ガイドラインが作成された。  2015年に採択された,持続可能な開発目標(SDGs)の目標3 「全ての年代の健康な生活の保障と福祉の促進」および,「女性 ・小児・思春期保健の世界戦略(2016–2030)」と調和し,単に 安全なだけではなく,母児の生命の潜在能力を引き出すケア を目指し,作成された。 構成  多くの国の正常出産で日常的に多用されている,産科的 医療介入やケアを正常出産の医療介入やケアとして,以下 の項目のエビデンスが編纂されている。 ①妊娠・出産の全過程に関わる一般的なケア:12項目 ②分娩第1期のケア:7項目 ③分娩第2期のケア:8項目 ④分娩第3期:7項目。 その後,59 項目の医療介入やケアの判定結果を,以下の 4 つの推奨レベルでカテゴリー化し,取りまとめている。  医療におけるエビデンスの質と推奨の強さをグレーディング する手法(GRADEアプローチ)により,以下の項目が選ばれた。 ①妊娠・出産・産後を通じたケア:4項目 ②分娩第1期のケア:28項目 ③分娩第2期のケア:8項目 ④分娩第3期のケア:6項目 ⑤新生児(と産後の母体)ケア:10項目。 推奨項目の多くに,推奨決定要因である6つの領域を記載して いる。 ①効果,②価値,③資源,④受容可能性,⑤実行可能性, ⑥公平性 推奨レベル A. 明らかに有効で役に立つ,推奨されるべき:22項目 a推奨される:31項目 B.明らかに害があったり効果がないのでやめるべき: 15項目 b推奨されない:22項目 C.十分な証拠がなく,はっきりと勧めることができない: 8項目 c特定の状況において推奨:2項目 D.しばしば不適切に使われたり,実施される:14項目 d厳格なリサーチ下において推奨:1項目

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表 2W H O 正 常 出 産 に 関 する 新旧 ガイドラ インの 各 項 目 推 奨 レ ベルと 関 連 性 Care in Normal Birth ( WHO の 59 ヵ 条 ) Intrapartum care for a positive childbirth experience 項 目 項 目 推 奨 * レベル WHO59 ヵ 条 ** との 関 連 A. 明 らかに 有 効 で 役 に 立 つ , 推 奨 されるべき 出 産 中 を 通 して 行 われるケア 1. 妊 婦 個 人 の 出 産 計 画 の 尊 重 1. 妊 産 婦 を 尊 重 したケア a A5, A7, A8 2. 妊 娠 中 から 陣 痛 開 始 後 のリスク 査 定 2. 効 果 的 なコミュニケーショ ン a A10 3. 出 産 全 過 程 の 心 身 の 健 康 状 態 の 監 視 3. 女 性 が 選 んだ 人 の 陣 痛 ・ 出 産 中 の 付 き 添 い a A1, A9 4. 飲 み 物 の 勧 め 4. 助 産 師 主 導 の 継続 ケア c 5. インフォームド・チ ョイスの 尊 重 分 娩 第 1 期 のケア 6. 安 全 ・ 安 心 な 末 端 に 位 置 する 場 での 出 産 5. 分 娩 第 1 期 潜 伏 期 と 活 動 期 の 定 義 見 直 し a 7. プライバシーの 尊 重 6. 分 娩 第 1 期 の 持 続 時 間 の 多 様 性 a A10 8. 出 産 中 の 温 かいサポート 7. 分 娩 第 1 期 の 子宮 口 開 大 速 度 に 設 ける 閾 値 b A17 9. 付 き 添 う 人 の 選 択 の 尊 重 8. 子宮 口 開 大 速 度 による 分 娩 経 過 の 評 価 b A17 10. 情 報 と 説 明 の 提 供 9. 分 娩 第 1 期 潜 伏 期 の 分 娩 促 進 b D52 11. マッサージ 等 による 産痛 緩 和 方 法 10. 分 娩 第 1 期 活 動 期 からの 陣 痛 室 入 室 dA 2 12. 断 続 的 な 聴 診 による 胎 児 監 視 11. 入 院 時 のルーティンで 行 う 骨 盤 計 測 b B29 13. 使 い 捨 て・ 清 潔 な 器 具 の 使 用 12. 入 院 時 のルーティンで 行 う 分 娩 監 視 装 置 b A12, D49 14. 内 診 ・ 分 娩 介 助 時 の 手 袋 の 着 用 13. 入 院 時 のドップラー 聴 診 a A12 15. 自 由 な 姿 勢 と 動 き 14. ルーティンで 行 う 陰 部 剃 毛 b B24 16. 仰 向 け 以 外 の 姿 勢 15. 入 院 時 の 浣 腸 b B23 17. 分 娩 進 行 の 注 意 深 い 観 察 16. 4 時 間 ごとの 内 診 a D51 18. ハイリスク 女 性 の 第 3 期 予 防 的 オキシトシン 17. 出 産 中 の 継続 的 な 分 娩 監 視 装 置 b D49 19. 無 菌 状 態 での 臍 帯 切 除 18. 出 産 中 の 断 続 的 な 聴 診 a A12 20. 児 の 低体 温 予 防 19. 産痛 緩 和 のための 硬 膜 外 麻 酔 a D47 21. 早 期 母 子 接 触 20. 産痛 緩 和 のためのオピオイド 麻 酔 a D47 22. 慣 例 的 な 胎 盤 ・ 卵 膜 検 査 21. 産痛 管 理 のためのリラクゼーショ ン 法 a A11, C38 B. 明 らかに 害 があり , 効 果 がなく , やめるべき 22. 産痛 管 理 のためのマッサージ a A11 23. 慣 例 的 な 浣 腸 23. 分 娩 遷 延 予 防 のための 産痛 緩 和 b 24. 慣 例 的 な 剃 毛 24. 出 産 中 の 経 口 飲食 a A4, D46 25. 慣 例 的 な 静 脈 点 滴 25. 出 産 中 の 自 由 な 動 きと 姿 勢 a A15, A16, B27 26. 慣 例 的 な 予 防 的 静 脈 カテーテル 挿 入 26. ルーティンで 行 う 消 毒 液 による 外 陰 部 洗浄 b 27. 慣 例 的 な 仰 向 け 姿 勢 27. 積 極 的 分 娩 管 理 b D52 28. 直 腸 診 28. ルーティンで 行 う 人 工 破 膜 b C39 29. X 線 を 使 った 骨 盤 計 測 29. 早 期 人 工 破 膜 と 早 期 オキシトシン b C39, D51 30. 児 娩 出 前 の 薬 効 管 理 不 能 なオキシトシン 投 与 30. 分 娩 遷 延 予 防 目的 の 硬 膜 外 麻 酔 中 の 促 進 b 31. 慣 例 的 な 砕 石 位 31. 分 娩 遷 延 予 防 目的 の 抗 けいれん 薬 b 32. バルサルバ 法 32. 分 娩 遷 延 予 防 目的 の 静 脈 点 滴 b

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33. 第 2 期 の 会 陰 マッサージ 分 娩 第 2 期 のケア 34. 第 3 期 のエルゴメトリ ン 経 口 投 与 33. 分 娩 第 2 期 の 定 義 見 直 しと 持 続 時 間 a A10, D56 35. 第 3 期 の 慣 例 的 なエルゴメトリ ン 非 経 口 的 投 与 34. 分 娩 第 2 期 の 自 由 な 分 娩 体位 a A15, A16, B27, B31 36. 児 娩 出 後 の 慣 例 的 な 子宮 洗浄 35. 硬 膜 外 麻 酔 中 の 自 由 な 分 娩 体位 a 37. 児 娩 出 後 の 慣 例 的 な 用 手 子宮 内 検 査 36. 努 責 感 に 合 わせたいきみ a B32, D55 C. 十 分 な 証 拠 がなく , はっきりと 勧 められない 37. 硬 膜 外 麻 酔 中 のいきむタイミング c 38. ハーブ・ 水 中 出 産 による 産痛 緩 和 38. 第 2 期 の 会 陰 裂 傷 予 防 技 術 a B33, C41, C42 39. 第 1 期 の 慣 例 的 な 人 工 破 膜 39. ルーティンで 行 う 会 陰 切 開 b D58 40. 出 産 中 の 子宮 底 圧 迫 40. 児 娩 出 促 すための 第 2 期 の 子宮 底 圧 迫 b C40 41. 娩 出 時 の 会 陰 保 護 操 作 分 娩 第 3 期 のケア 42. 児 娩 出 時 の 積 極 的 胎 児 操 作 41. 第 3 期 の 収 縮 剤 による 産 後 多 量 出 血 予 防 a A18, B34, B35, C43 43. 第 3 期 の 慣 例 的 オキシトシン 投 与 ・ 臍 帯 牽 引 42. オキシトシンによる 産 後 多 量 出 血 予 防 a A18, C43 44. 臍 帯 早 期 結紮 43. オキシトシン 以 外 の 産 後 多 量 出 血 予 防 a B34, B35, C43 45. 第 3 期 の 子宮 収 縮 促 す 乳 頭 刺 激 44. 臍 帯 遅 延 結紮 a C44 D. しばしば 不 適 切 に 使 われたり , 実 施 される 45. 必 要 時 の 臍 帯 牽 引 a C43 46. 出 産 中 の 飲食 制 限 46. 予 防 的 オキシトシン 投 与 後 の 子宮 マッサージ b C43 47. 全 身 性 鎮 痛 剤 による 産痛 緩 和 新 生 児 へのケア 48. 硬 膜 外 麻 酔 による 産痛 緩 和 47. ルーティンで 行 う 新 生 児 の 吸 引 b 49. 分 娩 監 視 装 置 48. 早 期 母 子 接 触 a A21 50. 分 娩 介 助 者 のマスク・ 滅 菌 服 着 用 49. 出 生 直 後 からの 母 乳 a A21 51. 繰 り 返 し・ 頻 繁 な 内 診 50. 新 生 児 へのビタミン K 投 与 a 52. オキシトシンによる 分 娩 促 進 51. 出 生 後 24 時 間 まで 遅 らせる 沐 浴 a A20, A21 53. 第 2 期 の 慣 例 的 な 部 屋 移 動 褥 婦 へのケア 54. 導尿 52. 弛 緩 出 血 識 別 のための 子宮 底 硬 度 評 価 a 55. 努 責 感 を 感 じる 以 前 のいきみ 誘 導 53. 合 併 症 がない 経 腟 分 娩 への 抗 生 物 質 投 与 b 56. 第 2 期 の 制 限 時 間 への 固 執 54. 会 陰 切 開 後 の 慣 例 的 な 予 防 的 抗 生 物 質 投 与 b 57. 機 械 的 分 娩 55. ルーティンで 行 う 産 後 女 性 の 全 身 評 価 a 58. 多 用 ・ 慣 例 的 な 会 陰 切 開 56. 経 腟 分 娩 後 24 時 間 以上 の 産 褥 入 院 a 59. 児 娩 出 後 の 用 手 子宮 内 検 査 * 推 奨 レベル : a. 推 奨 される , b. 推 奨 されない , c. 特 定 の 状 況 において 推 奨 , d. 厳 格 な 研 究 的 な 状 況 下 で 推 奨 ** WHO59 ヵ 条 との 関 連 : 新 ガイド ライン の 項 目 のうち , Care in Normal Birth と 関 連 のある 場 合 , 旧 ガイド ライン の 推 奨 レベル ( A ~ D )と 項 目 番 号( 1~ 59 )を 組 み 合 わ せて 記 載 した。

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最後に,「よくトレーニングされた質の高い助産師 が十分いる場合」と,「c.特定の状況下」に限定されて いるものの,「助産師主導の継続的ケア」が推奨されて おり,助産師の役割への期待が表れていた。 4.旧ガイドラインにあったが新ガイドラインに含ま れなかった項目 新ガイドラインに含まれなかったのは,計 14 項目 であった。具体的には,旧ガイドラインにおいては 「A.明らかに有効」な「安全・安心な末端に位置する 場での出産」「使い捨て・清潔な器具の使用」「無菌状 態での臍帯切除」「慣例的な胎盤・卵膜検査」の 4 項 目,「B.明らかに有害」な「慣例的な静脈点滴」「慣例 的な予防的静脈カテーテル」「直腸診」や,筋肉注射に よる「薬効管理不能なオキシトシン投与」「児娩出後の 慣例的な子宮洗浄」「慣例的な用手子宮内検査」の6項 目である。「C.はっきりと勧められない」ケアとして は,「分娩第3期に子宮収縮を促すための乳頭刺激」の 1項目が新ガイドラインから削除され,「D.しばしば 不適切に使用・実施」されるケアの「分娩介助者のマ スク・滅菌服着用」「導尿」「児娩出後の用手子宮内検 査」の3項目も含まれていなかった。 5.新旧ガイドラインで推奨レベルが変わった項目 旧ガイドラインと新ガイドラインで,推奨レベルが 変わった項目は,計 13 項目であった。「A.明らかに 有効→b.推奨されない」と推奨レベルが下がった「分 娩第1期の持続時間と多様性」「分娩第1期子宮口開大 速度」「子宮口開大速度による分娩経過評価」「潜伏期 の分娩遷延」「分娩第 2 期の持続時間と多様性」の 5 項 目は,分娩第1 期と分娩第 2期の定義と持続時間に関 する見解が変わったことに関連している。また,新ガ イドラインでは分娩第2期持続時間を,初産の場合は 通常 3 時間以内,経産の場合は通常 2 時間以内とし, 初産・経産の分娩第2期の95パーセンタイル値を適応 していた。 新ガイドラインで「d.厳格な研究的な状況下で推 奨」に分類されたのは1項目で,「A.明らかに有効」か らの変更だった。具体的には,「分娩第1期活動期から の陣痛室入室」についてで,自然に陣痛が始まった健 康な産婦であれば,分娩第1期の活動期に至るまで陣 痛室入室を遅らせるという方針である。旧ガイドライ ンでは「妊娠中から陣痛開始後のリスク査定」を「A. 明らかに有効」としていたが,陣痛室入室のタイミン グにまでは言及していなかったため,「新たに加わっ た項目」とも言えるかもしれない。なお新ガイドライ 表3 新WHO正常出産ガイドラインに新たに加わった項目,含まれていない項目,推奨レベルが変わった項目の一覧 No. 旧ガイドラインになくて, 新ガイドラインで新たに加わった項目 (No.は新ガイドライン番号) No. 旧ガイドラインにあり, 新ガイドラインに含まれていない項目 (No.は旧ガイドライン番号) No. 旧ガイドラインと新ガイドラインで, 推奨レベルが変わった項目 (No.は新ガイドライン番号)

a.推奨される A.明らかに有効 A.明らかに有効 →b.推奨されない

5. 分娩第1 期潜伏期と活動期の定義見直し A6. 安全・安心な末端に位置する場での出産 6. 分娩第 1 期の持続時間と多様性 35. 硬膜外麻酔中の自由な分娩体位 A13. 使い捨て・清潔な器具の使用 7. 分娩第 1 期子宮口開大速度 37. 硬膜外麻酔中のいきむタイミング A19. 無菌状態での臍帯切除 8. 子宮口開大速度による分娩経過の評価 52. 弛緩出血識別のための子宮底硬度評価 A22. 慣例的な胎盤・卵膜検査 9. 潜伏期の分娩遷延 50. 新生児へのビタミン K 投与 B.明らかに有害 33. 分娩第 2 期の持続時間と多様性 55. ルーティンで行う産後女性の全身評価 B25. 慣例的な静脈点滴 A.明らかに有効 →d.研究的な状況下で推奨 56. 経腟分娩後 24時間以上の産褥入院 B26. 慣例的な予防的静脈カテーテル挿入 10. 分娩第 1 期活動期からの陣痛室入室 b.推奨されない B28. 直腸診 B.明らかに有害 →a.推奨される 26. ルーティンの消毒液による外陰部洗浄 B30. 薬効管理不能なオキシトシン投与 41. 第 3 期の収縮剤による産後多量出血予防 30. 分娩遷延予防目的の硬膜外麻酔中の促進 B36. 児娩出後の慣例的な子宮洗浄 43. オキシトシン以外の産後多量出血予防 31. 分娩遷延予防目的の抗けいれん薬 B37. 児娩出後の慣例的な用手子宮内検査 C.はっきりと勧められない →a.推奨される 47. 新生児の吸引 C.はっきりと勧められない 42. オキシトシンによる産後多量出血予防 53. 合併症ない経腟分娩への抗生物質投与 C45. 第 3 期子宮収縮を促すための乳頭刺激 45. 必要時の臍帯牽引 54. 会陰切開後のルーティンの抗生物質投与 D.しばしば不適切に使用・実施 C.はっきりと勧められない →a.推奨されない c.特定の状況下において推奨される D50. 分娩介助者のマスク・滅菌服着用 40. 第 2 期の子宮底圧迫 4. 助産師主導の継続ケア D54. 導尿 D.不適切な使用・実施 →a.推奨される D59. 児娩出後の用手子宮内検査 19. 産痛緩和のための硬膜外麻酔 20. 産痛緩和のためのオピオイド麻酔

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ンの中で「d.厳格なリサーチ下において推奨」とは, 「エビデンスが十分確立されていないため,この方針 に関しては,更なる研究が必要な項目である」ことを 意味している。今回のガイドライン改訂で,分娩第1 期活動期を子宮口開大5cm以上と変更したため,この 方針に関して,経産婦の場合や急速な変化に対応でき るだけのスタッフ配置など,検討事項が残されている ためであろう。 他方,「B.明らかに有害→a.推奨される」と推奨レ ベルが上がった2項目と,「C.はっきりと勧められな い→a.推奨される」と同じく推奨レベルが上がった2 項目は,産後多量出血に関連した項目であり,分娩第 3期のオキシトシンやエルゴメトリンの予防的投与に よる「産後多量出血予防」や分娩第 3 期の持続時間短 縮のための「必要時の臍帯牽引」であった。 「C.はっきりと勧められない→b.推奨されない」と 推奨レベルが下がったのは「分娩第2期の子宮底圧迫」 の1項目のみだった。「D.しばしば不適切な使用・実 施」がなされていた「産痛緩和のための硬膜外麻酔」や 「オピオイド麻酔」も,新ガイドラインでは「a.推奨さ れる」へと推奨レベルが上がった。 6.新旧ガイドラインで共に推奨された項目 本稿は,新旧ガイドラインの変化の記述を目的とし ているが,表3に記載されていない項目は,新旧ガイ ドラインで共に推奨されているケアとみなされる。新 ガイドラインは,ポジティブな出産体験を促進するよ うなケアをとりまとめているが,「出産中を通じて行 われるケア」として推奨されている,「妊産婦を尊重し たケア」「効果的なコミュニケーション」「女性が選ん だ人の付き添い」「助産師主導の継続ケア」は,表現の 違いはあるものの,新旧ガイドラインで一貫して変わ らない助産ケアに関する推奨項目であった。

Ⅳ.考   察

旧ガイドラインである Care in Normal Birth と,22 年ぶりに改訂された新ガイドライン Intrapartum care for a positive childbirth experienceの変化を概説した。 本セクションでは,「新ガイドラインで新たに加わっ た項目」「旧ガイドラインにあったが新ガイドライン に含まれなくなった項目」「新旧ガイドラインで推奨 レベルが変わった項目」の中で,特筆すべき変化やそ の経緯について考察する。 先ず,「新ガイドラインで新たに加わった項目」のう ち,「分娩第1期潜伏期と活動期の定義の見直し」は特 に大きな変化と言える。旧ガイドラインが発表された 当時,WHOは分娩遷延を評価するツールとしてWHO パルトグラフを開発し,潜伏期を「分娩開始以降,8 時間以内に完了する期間」,活動期を「子宮口開大 3cm以上~子宮口全開大までの期間」と定義していた (WHO, 1993)。当時の WHO パルトグラフの特徴は, 分娩第 1 期活動期の理想的な子宮頸管開大速度を 1cm / hourとし,この閾値(警戒域ライン)を越えた場 合には遷延分娩として,他施設への母体搬送や陣痛促 進の医療介入の検討を進めていた。その後,WHOは 1996年~2001 年の間に,妊産婦死亡の主要死因であ る産後過多出血,遷延分娩,産後敗血症,子癇,人工 中絶に関する 5 つの助産教育モジュールを開発する。 その第2版の遷延分娩に関する助産教育モジュールは 2008年に改訂され(WHO, 2008),当時のエビデンス を再統合した結果,潜伏期に8時間の制限を設けるこ とをやめ,活動期は子宮口開大4cm以上と定義され直 すこととなった。そして今回,新ガイドラインでは潜 伏期における個人の多様性を認め,活動期を子宮口開 大 5cm 以上と再定義するに至ったのだが,このこと は,科学的根拠とは,常にアップデイトされ得るもの であることを示している。また,実際,「子宮口開大 5cm以降であれば,これからお産が進むであろう」と 感じる,助産師の臨床感覚とも合致している。さら に,新ガイドラインでは「ルーティンで行う消毒液に よる外陰部洗浄」「合併症のない経腟分娩への抗生物 質投与」「会陰切開後の慣例的な抗生物質投与」が新規 に推奨されない項目として挙げられたが,この推奨 は,消毒液や抗生物質という基本的な薬剤が常に不足 し資源が限られている途上国においては,より大きな 意味を持つと考えられる。しかし,これらのルー ティンは日本国内の多くの医療施設で今でも目にする ことが多いため,我が国でもどのように最新のエビデ ンスを臨床に導入していくかを考えていく必要がある だろう。 次に「旧ガイドラインにあったが新ガイドラインに 含まれなくなった項目」として,「直腸診」や,筋肉注 射による「薬効管理不能なオキシトシン投与」を行わ ないように推奨する項目が挙げられた。これらは,現 在でも重要であることに変わりはない。しかし,世界 中の出産現場に広く浸透したことで,GRADE アプ ローチを採用して新ガイドラインを作成する際,

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value(アウトカムの重要性や優先性)の観点から削除 されたのであろうと推測される。同様に,「A.明らか に有効」な「安全・安心な末端に位置する場での出産」 が 新 ガ イ ド ラ イ ン か ら 削 除 さ れ た の も, Care in Normal Birthが出版された 1996 年から 20 年以上経過 し,途上国では出産場所の多くが施設分娩に移行し自 宅分娩率は減少し,先進国では日本のように出産場所 が集約化されたことで,value 評価において優先度が 下がったと推測される。このことは,出産はもはやプ ライマリー・ヘルスではなく,医療の枠組みにしっか りと入ってきたことを示していると言えよう。しか し,「B.明らかに有害」な「慣例的な静脈点滴」「児娩 出後の慣例的な子宮洗浄」や「児娩出後の慣例的な用 手子宮内検査」も,新ガイドラインから消えてし まったが,国内外で未だに目にする医療介入であるた め,今後,エビデンスと臨床のギャップを埋めていく 努力が求められている。 「C.十分な証拠がなく,はっきりと勧めることがで きない」項目の「導尿」も,新WHOガイドラインでは 言及されていなかった。しかし,昨今の麻酔分娩に関 するエビデンスは,硬膜外麻酔を用いた女性の産後に 排尿トラブルが多いことを示している(Anin-Somuah, et al., 2018)。排尿トラブル予防のため,麻酔分娩中の 排泄ケアとして,留置カテーテルの挿入と定期的な導 尿のどちらが総合的によりよいアウトカムをもたらす のか,その結果にはバラツキがあり,利益と不利益の バランスが十分にわかっていない。例えば,留置カ テ ー テ ル が 帝 王 切 開 率 を 上 昇 さ せ る と い う 結 果 (Wilson, et al., 2015),定期的な導尿が産後の尿路感染 のリスクを増加させるという結果(Millet, et al., 2012), または留置カテーテル・定期的な導尿,双方の産後の 尿路感染症の発症割合に差はないという相反する結果 が報告されている(Evron, et al., 2008;Wilson, et al., 2015)。そのため,近年ますます増加傾向にある硬膜外 麻酔下の排泄ケアは,更なる調査が必要な領域だと考 えられる。 最後に,「新旧ガイドラインで推奨レベルが変わった 項目」として,旧ガイドラインでは「A.明らかに有 効」とされていた分娩第 1期の持続時間の制限時間を 設けることや,分娩第1期活動期の子宮頸管開大速度 として1cm/hourという閾値を設けることを「b.推奨 されない」とし,推奨レベルが下がったことが挙げら れる。このことは,これまで閾値(WHOパルトグラフ の警戒域ライン)を越えた際に考慮されていた,陣痛 促進剤等の医療介入を抑える意図があることを理解で きた。分娩第2期の定義と持続時間に関する見解が変 わったことで,第2期遷延による器械分娩や帝王切開 の削減の可能性も示唆している。これまでの遷延分娩 に関する WHO 助産教育モジュールが,分娩第 2 期持 続時間が 2 時間以上の場合は吸引分娩を勧めたり (WHO, 2008),我が国においても産婦人科診療ガイド ライン(日本産婦人科学会,2017)で,吸引・鉗子分 娩の適応の1つに分娩第2期遷延を挙げ,分娩第2期遷 延の診断基準を初産婦で2時間以上,経産婦で1 時間 以上としていることを鑑みると,必要以上の吸引分娩 や鉗子分娩を削減しようとするWHOの意図が伺えた。 他方,旧ガイドラインで「B.明らかに有害」とされ ていた臍帯牽引は,「わずかな出血量の抑制とわずかな 分娩第3期持続時間の削減が必要と考えた場合には,臍 帯牽引は推奨される」とし,「a.推奨される」へと推奨 レベルが上がった。この推奨の根拠となった論文は, 2012年にLancetで発表された「臍帯牽引をした群」「胎 盤剥離兆候を待った群」の2群で産後出血量を比較した 研究において,臍帯牽引群は,平均で分娩第3期の持続 時間が 6 分短く,産後出血量が 11mL 少なかったもの の,両群間で産後多量出血発生のリスクに差はなかっ た と い う 結 果 を 引 用 し て い る(Gülmezoglu, et al., 2012)。しかし,日々,産後の出血量を測定している者 にとって,11mLの出血量は誤差範囲とも言え,臍帯牽 引が子宮内反や胎盤遺残のリスクと関連した侵襲性の ある医療行為だけに,臨床的にこの11mLの差をどのよ うに解釈していくかは,医療従事者が出産現場の個々 の状況に合わせて判断していく必要がある。硬膜外麻 酔に関する項目も推奨レベルが上がったが,これらの 医療行為は医療従事者の技術レベルや,人的・物的資 源の状況によっては適切に実施できず,母児へ有害な 影響を与える可能性もあるため,特に途上国において は,この推奨の導入にも注意を要すると考えられる。 過去 20 年の間に麻酔分娩は増加し,麻酔分娩中の ケアに関する研究が進んできたが,WHO新ガイドラ インは硬膜外やオピオイド麻酔による産痛管理に関す る「医療化」を肯定的に捉えていることが理解できた。 確かに,麻酔分娩は産科分野で重要な医療介入であ り,麻酔分娩を選ぶ女性の選択は尊重されるべきであ る。しかし我が国において,地域に根差した活動をし ている開業助産師は,医療介入が法律で禁止されてい る中,非薬理的な疼痛緩和ケア等を施しながら,女性 の産む力,生まれる力を最大限に引き出し,豊かな出

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産体験,ポジティブな出産体験に向けたケアを実践し てきた。日本は,他の先進国と比べて未だに極端に低 い麻酔分娩率だが,都市部を中心に増加傾向にあり, 今後ますます麻酔分娩は増えていくであろう。そこ で,医療行為が禁止されているからこそ進んだ開業助 産師たちが行う非薬理的な緩和ケアや助産ケアを評価 すること,麻酔分娩の利益と不利益のバランスを評価 していくことは,日本の助産師の役割として期待され ていると考える。 本稿の限界は,新旧ガイドラインの変化に着目した ため,医療介入に関する議論が中心となり,助産ケア について考察を深めることができなかったことであ る。例えば,新ガイドラインの「出産中を通して推奨 されるケア」には助産ケアが多く含まれていたが,表 現の違いはあるものの,新旧ガイドラインで共に推奨 されている項目であった。今後は,新旧ガイドライン で一貫して重要であり続けている正常出産における助 産ケアについての分析・考察を深めていくことが求め られると考える。

Ⅴ.結   論

WHOの新ガイドラインは,生理学的プロセスを促 し,女性に敬意を表するケアを推奨している点で,旧 ガイドラインと共通していた。新ガイドラインの主な 改訂点は,分娩第1期・第 2期の定義や持続時間を見 直したことと,硬膜外麻酔中のケアや新生児ケアにつ いて新規の推奨を増やしていることである。現在も重 要で在り続けているが,清潔な器具の使用や,無菌状 態での臍帯切除など,出産現場に広く浸透したと考え られる項目は,新ガイドラインには含まれていな かった。旧ガイドラインから推奨レベルが上がったの は,弛緩出血予防を目的とした,分娩第3期のオキシ トシン投与や臍帯牽引,硬膜外麻酔に関する項目で あった。助産ケアに関する項目は,新ガイドラインは ポジティブな出産体験を促すケアを推奨していたが, その具体的なケア内容は,新旧ガイドラインで一貫し て推奨されていた。 謝 辞 本稿を執筆するにあたり,筑波大学の福澤利江子先 生が翻訳された,WHO 新ガイドラインの Executive Summaryを参考とさせて頂きました。 利益相反 本研究に関する利益相反はありません。 文 献

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参照

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