原 著
論文受付 2011年 8 月 9 日 論文受理 2012年 6 月 9 日 Code No. 333三次元 PET 収集における被写体断面積と画質の関係
大澤 敦 三輪建太 我妻 慧 滝口智洋 田村慎太郎 秋本健太
公益財団法人がん研有明病院画像診断センター核医学チームRelationship between Image Quality and Cross-sectional Area of Phantom in
Three-dimensional Positron Emission Tomography Scan
Atsushi Osawa,* Kenta Miwa, Kei Wagatsuma, Tomohiro Takiguchi,
Shintaro Tamura, and Kenta Akimoto
Department of Radiology Nuclear Medicine, Cancer Institute Hospital of Japanese Foundation for Cancer Research
Received August 9, 2011; Revision accepted June 9, 2012 Code No. 333
Summary
The image quality in 18FDG PET/CT often degrades as the body size increases. The purpose of this study
was to evaluate the relationship between image quality and the body size using original phantoms of variable cross-sectional areas in PET/CT. We produced five water phantoms with different cross-sectional areas. The
long axis of phantom was 925 mm, and the cross-sectional area was from 324 to 1189 cm2. These phantoms
with the sphere (diameter 10 mm) were filled with 18F-FDG solution. The radioactivity concentration of
back-ground in the phantom was 1.37, 2.73, 4.09 and 5.46 kBq/mL. The scanning duration was 30 min in list mode
acquisition for each measurement. Background variability (N10 mm), noise equivalent count rates (NECRphantom),
hot sphere contrast (QH,10 mm) as physical evaluation and visual score of sphere detection were measured,
respectively. The relationship between image quality and the various cross-sectional areas was also analyzed
under the above-mentioned conditions. As cross-sectional area increased, NECRphantom progressively decreased.
Furthermore, as cross-sectional area increased, N10 mm increased and QH,10 mm decreased. Image quality became
degraded as body weight increased because noise and contrast contributed to image quality. The visual score of sphere detection deteriorated in high background radioactivity concentration because a false positive detec-tion in cross-secdetec-tional area of the phantom increased. However, addidetec-tional increases in scanning periods could improve the visual score. We assessed tendencies in the relationship between image quality and body size in PET/CT. Our results showed that time adjustment was more effective than dose adjustment for stable image quality of heavier patients in terms of the large cross-sectional area.
Key words: three-dimensional positron emission tomography (3D-PET), 18F-fluoro-2-deoxy-D-glucose (18F-FDG),
cross-sectional area, image quality, overweight patient
*Proceeding author
緒 言
がんの早期発見から病期診断,再発診断に至るまで,
18F-fluoro-2-deoxy-D-glucose(18F-FDG)を用いた陽電子
放出断層撮影(positron emission tomography: PET)検査 の有用性が認識されている.近年,PET 研究の主流は 治療効果や予後予測である.これらの確立には,検査の 再現性や定量性を担保する必要がある.したがって,標 準化された撮像法が不可欠であり,本邦でも標準化ガ
イドラインが策定された1).標準化ガイドラインで使用
するファントムは,National Electrical Manufacturers Association 2001 NU-2 Standard2)で規定されたファント
ム(NEMA ファントム)である.
一方,臨床の被検者は個々に体格が異なるため,計 数率が一定とならず PET の画質は変化する.一般に体 格の大きい被検者ほど画質は低下する3).そのため,投
し,これらの報告は被検者の臨床データをレトロスペク ティブに評価したものであり,ファントムによる基礎的 な報告は少ない.本邦の標準化を前進させるために も,被検者の体格と画質の関係を,既知の断面積をも つファントムで明確にすることが重要である.この場 合,NEMA ファントムだけで複数の断面積を再現する ことは不可能である.われわれは,断面積の異なる 5 種類のファントムを作製した. 本研究の目的は,被検者の体格と画質の関係を,被 写体断面積の異なるファントムで評価することである. 1.方 法 1-1 使用機器 使 用 し た PET/computed tomography(CT)装 置 は Aquiduo(東 芝メディカルシステムズ 社 製)である. Lu2SiO(Ce)5 (LSO)シンチレータを搭載しており,収集
モードは three-dimensional(3D)収集のみである.PET 装置部分の仕様を Table に示す. 作製したファントムの概略を Fig. 1 に示す.縦 × 横 × 厚が,それぞれ 380×345×185 mm のポリエチレンタン クを 5 個連結した.これに18F-FDG溶液を注入した.注 入する溶液量は 30 L から,50 L,70 L,90 L,110 L と した.これによって,臨床で想定される幅広い体格差を 5種類の被写体断面積で実現した.また,体幹部を想 定してファントムの長軸方向を 925 mm とした.これ は,視野外からの散乱同時計数と偶発同時計数の混入 を考慮するためである. 5 個のポリエチレンタンクのうち,中央の内部に ホット球を設置した.これは,内径が 10 mm のアクリ ル製外殻からなり,内部に18F-FDG溶液を注入した. ホット球の位置は,NEMA ファントムと同じく中心か ら 57 mm の距離に設置した.撮像時はホット球が体軸 有効視野の中央に位置するよう設置した.
Table Main PET technical characteristics of Aquiduo scanner Characteristic Description
Detector material Lu2SiO5(Ce) (LSO) Clystal size (mm3) 4.0×4.0×20 Detector ring diameter (mm) 830 No. of image planes/bed 81 Transaxial field of view (mm) 585 Axial field of view (mm) 162 Axial sampling interval (mm) 2.0 Coincidence window (nsec) 4.5 Energy window (keV) 425–650 Maximum ring difference 27 Random correction method delayed Scatter correction method single scatter simulation
Fig. 1 Illustration of the water phantom.
This phantom connected five polyethylene tanks. The size of the water phantom can be adjusted at amount of water.
1-2 撮像方法 5 種類の被写体断面積は,それぞれ 324 cm2,541 cm2, 757 cm2,973 cm2,1189 cm2となる.ホット球とバック グラウンドの放射能濃度比は 4:1 に固定した.今回 は,放射能濃度も評価項目とするため 1.37 kBq/mL, 2.73 kBq/mL,4.09 kBq/mL,5.46 kBq/mL の 4 種 類 とした. 撮像は 30 分間のリストモード収集を行った.放射能 濃度 2.73 kBq/mL の場合のみ,データ範囲を 1 分から 30分まで 1 分ずつ増加させたサイノグラムを作った. 得 ら れ た 三 次 元 サ イ ノ グ ラ ム は fourier rebinning (FORE)にて近似的に二次元サイノグラムに変換し, ordered subsets expectation maximization(OSEM)法で画 像再構成した.他の放射能濃度では 30 分間のみ同条件 で画像再構成した.再構成パラメータは matrix size 128×128,iteration 4,subset 14 とした.Gaussian filter は full width half maximum(FWHM)8 mm とした. 1-3 物理学的評価の項目 物理学的評価には,計数率特性,ファントム雑音等 価計数率(NECRphantom),%バックグラウンド変動性 (N10 mm),10 mm ホット球の%コントラスト(QH,10 mm), および,QH,10 mm/N10 mmの 5 項目を用いた.以下に算出 方法を示す. 1-3-1 計数率特性の算出 サイノグラムヘッダから即発同時計数率と偶発同時 計数率を参照した.また,即発同時計数率から散乱同 時計数率を減算し,真の同時計数率と散乱同時計数率 の合算値(真 + 散乱同時計数率)を算出した. 1-3-2 NECRphantomの算出 計数率と以下の式から NECRphantom(kcps)を算出した. NECRphantom= −( ) + + ++ ( ) ( ) ( ) 1 1 2 2 SF T S T S k f R ………(1) f= Sa 2 r π ………(2) ここで,T+S は真 + 散乱同時計数率,R は偶発同時 計数率,SF は散乱フラクションで文献値から 0.3417)と した.k は偶発同時計数の補正方法による係数である. 遅延同時計数を用いた実測のため 1 とした.f はファン トムが有効視野に占める割合である.Sa は被写体断面 積を CT 画像から実測した値.r は断面検出器間距離 (Table)の 1/2 である. 1-3-3 N10 mmの算出 ホット球が描出されたスライスを中央に,±10 mm と ±20 mm の計 5 スライスを測定対象とした.各スライス に 10 mm の円形 region of interest(ROI)を 12 個設定し た.計 60 個の円形 ROI でバックグラウンドの測定を行 い,以下の式から N10 mm(%)を算出した. N10 mm SD10 mm B,10 mm C = ×100 ………(3) SD C k C K k K 10 mm= B,10 mm − B,10 mm − =
∑
( , ) /( ) 2 1 1 ………(4) ここで,CB,10 mmは直径 10 mm の円形 ROI(n=12)を用 いて算出したバックグラウンドの平均画素値,SD10 mm はバックグラウンドの標準偏差である.K は円形 ROI の総数で 60 となる. 1-3-4 QH,10 mmの算出 ホット球が描出されたスライスに直径 10 mm の円形 ROIを設定した.ホット球とバックグラウンドの測定を 行い,以下の式から QH,10 mm(%)を算出した. Q C C a a H,10 mm H,10 mm B,10 mm H B = − − × / / 1 1 100 ………(5) ここで,CH,10 mmは 10 mm ホット球に対する円形 ROI 内の平均画素値,aH/aBはホット球とバックグラウンド の放射能濃度比で 4/1 となる. 1-3-5 QH,10 mmと N10 mmの比(QH,10 mm/N10 mm)の算出 前項 1-3-3,および 1-3-4 から算出した値を用いて QH,10 mm/N10 mmを算出した. 1-4 描出能の視覚評価 核医学検査の経験年数が 3 年以上の診療放射線技師 7名によって,再構成画像を視覚評価することでホット 球の描出能を評価した. 視覚評価の基準は「ホット球が識別可能」を 2 点,「識 別可能だがホット球と同程度のノイズを認識」を 1 点, 「識別不可能」を 0 点とした.画像表示の color lookup tableを invert gray scale とし,window level の上限を standardized uptake value(SUV)=4,下限を SUV=0 に固 定した.なお,今回の視覚評価の結果を公表すること に関して各観察者の同意を得た. 2.結 果 真 + 散乱同時計数率は放射能濃度のみに依存した [Fig. 2(a)].偶発同時計数率は被写体断面積と放射能 濃度の双方に依存した.特に高放射能濃度で,被写体 断面積に対する偶発同時計数率の割合が増加した [Fig. 2(b)]. NECRphantomは被写体断面積の増加によって減少した.高放射能濃度ほど被写体断面積に対する NECRphantomの減少が顕著だった[Fig. 2(c)].
放射能濃度 2.73 kBq/mL における,収集時間と N10 mm の関係を Fig. 3(a)に示す.N10 mmは短い収集時間で高 値を示した.その傾向は,大きな被写体断面積で顕著 だった.N10 mmは収集時間の延長によって減少した.し かし,1800 秒まで延長しても N10 mmは各被写体断面積 で同じ値にならなかった. 1800 秒における,被写体断面積と N10 mmの関係を Fig. 3(b)に示す.N10 mmは被写体断面積に伴って増加し た.放射能濃度 1.37 kBq/mL は,大きな被写体断面積 で N10 mmがほかより高値になった. 放射能濃度 2.73 kBq/mL における,収集時間と QH,10 mm の関係を Fig. 3(c)に示す.QH,10 mmは短い収集時間で変 動が激しかった.また,被写体断面積が大きくなるほど 変動幅は拡大した.QH,10 mmは収集時間の延長によって 変動幅を縮小させながら収束したが,大きな被写体断 面積では収束に至らなかった. 1800 秒における,被写体断面積と QH,10 mmの関係を Fig. 3(d)に示す.QH,10 mmは被写体断面積の増加によっ
Fig. 2 (a) True + scatter count rate – cross-sectional area of the water phantom property
(b) Random count rate – cross-sectional area of the water phantom property
(c) NECRphantom – cross-sectional area of the water phantom property
て減少した.被写体断面積は,放射能濃度より QH,10 mm に与える影響が大きかった. 放 射能濃 度 2.73 kBq/mL における,収 集時間と QH,10 mm/N10 mmの関係を Fig. 3(e)に示す.QH,10 mm/N10 mm は収集時間によって増加した.その傾向は,小さな被写 体断面積ほど顕著だった. 1800 秒における,被写体断面積と QH,10 mm/N10 mmの関 係を Fig. 3(f)に示す.QH,10 mm/N10 mmは被写体断面積の 増加によって減少した. 放射能濃度 2.73 kBq/mL における,収集時間と描出 能スコアリングの関係を Fig. 4(a)に示す.描出能スコ アリングは,収集時間の延長に伴って上昇した.被写 体断面積が増加するほど,描出能スコアリングは低下 した. 1800 秒における,被写体断面積と描出能スコアリン グの関係を Fig. 4(b)に示す.描出能スコアリングは, 被写体断面積 757 cm2を超えると急激に低下した.そ の傾向は,放射能濃度 1.37 kBq/mL で顕著だった.
Fig. 3 (a) N10 mm – duration time property
(b) N10 mm – cross-sectional area of the water phantom property (c) QH,10 mm – duration time property
(d) QH,10 mm – cross-sectional area of the water phantom property (e) QH,10 mm/N10 mm – duration time property
3.考 察 良好な PET の画質を担保するには,偶発同時計数率 と散乱同時計数率を減少させ,真の同時計数率を増加 させる必要がある.そのため,発光減衰時間の短いシ ンチレータや,高速な信号処理能力をもつ電子回路が 開発され,物理学的特性の報告がされてきた7).しか し,体格の大きい被検者の画質は低下する傾向にあ る.また,全身18F-FDG PET/CT検査は,三次元収集が 主流になりつつある.これは,高感度化に有効4)である が,偶発および散乱同時計数率の増加を招く8). 計数率特性から,真 + 散乱同時計数率は放射能濃度 のみに依存して増加した[Fig. 2(a)].しかし,偶発同時 計数率は放射能濃度と被写体断面積の双方に依存して 増加した[Fig. 2(b)].これは,体格の大きな被検者に投 与する放射能量を増やしても,真 + 散乱同時計数率よ り偶発同時計数率が増加することを示す.また,被写 体断面積の増加は,放射能濃度が一定でも視野内の放 射能量を増加させ,偶発同時計数率を増加させたと考 えられる.
NECRphantomは,この関係を明確に示した[Fig. 2(c)].
放射能濃度を 1.37 kBq/mL から 5.46 kBq/mL に変化さ せると,最小の被写体断面積 324 cm2で NECR phantomが 3.7倍になる.しかし,最大の被写体断面積 1189 cm2で は 2.4 倍にしかならなかった.つまり,NECRphantomを増 加させる目的で投与する放射能量を増やしても,体格 の大きな被検者では偶発同時計数率が NECRphantomの 増加を妨げることになる. N10 mmは収集時間の延長によって,各被写体断面積 で急速に減少した[Fig. 3(a)].これは,収集時間の延長 が N10 mmを減少させるのに有効なことを示す.しかし, 1800秒まで延長しても,N10 mmは同じ値にならなかっ た.また,1800 秒における N10 mmは,各放射能濃度で 被写体断面積に伴って増加した[Fig. 2(b)].これは, ファントム内の放射能量に依存して,偶発同時計数が 増加したためと考えられる.1.37 kBq/mL で N10 mmが高 値を示したのは,計数率の減少でノイズが増加したた めと考えられる. QH,10 mmは短い収集時間で変動が大きかった[Fig. 3 (c)].これは,N10 mmの増加で(5)式の CH,10 mmが変動す るためと考えられる.CH,10 mmは 10 mm ホット球の平均画 素値を,円形 ROI から算出した値である.この円形 ROI は単一であり,複数の円形 ROI で算出される CB,10 mmよ り,ノイズの影響を受けやすい.被写体断面積の増加 による計数率の減少は,ノイズに起因する偽陽性と偽 陰性を生じさせた.これが円形 ROI と重なり CH,10 mmの 信頼性を低下させ,QH,10 mmの変動を大きくしたと考え られる.収集時間の延長によって QH,10 mmは収束した. しかし,被写体断面積の増加は偶発同時計数率を増加 させ,画像コントラストを低下させた.これは,ノイズ の増加によって CB,10 mmが高値となり QH,10 mmを減少さ せたためと考えられる[Fig. 3(d)]. 被写体断面積によって偶発同時計数率が増加するの は Fig. 2(b)から明らかである.つまり,高放射能濃度 による真の同時計数率の増加から,被写体断面積が増 加したことによる偶発同時計数率の増加が,N10 mmと QH,10 mmを劣化させたと考えられる.また,本研究に用 いた PET/CT 装置は偶発同時計数を遅延同時計数に よって補正している.この場合,データ処理過程で減 a b
Fig. 4 (a) Visual score – duration time property
算補正される偶発同時計数が多いほどノイズを増加さ せる9).したがって,偶発同時計数率の増加は PET/CT 装置の補正方法にも依存すると考えられる. QH,10 mm/N10 mmは収集時間に伴って増加した[Fig. 3 (e)].これは,収集時間の延長による N10 mmの減少に起 因すると考えられる.しかし,大きな被写体断面積では 収集時間を延長させても,QH,10 mm/N10 mmの増加は僅か である.これは,大きな被写体断面積の場合,収集時間 を延長して N10 mmを減少させても QH,10 mm/N10 mmの向上 は期待できないことを示している.また,QH,10 mm/N10 mm は被写体断面積の増加に伴って減少した[Fig. 3(f)].こ れは,ファントム断面積の増加による QH,10 mmの減少と N10 mmの増加が,QH,10 mm/N10 mmに作用したと考えられる. 描出能スコアリングは,収集時間の延長によって上昇 した[Fig. 4(a)].これは,視覚的評価の向上に収集時間 の延長が有効なことを示している.評価者の半数以上 がホット球を認識する描出能スコアリングは 1.5 であ る.この場合,被写体断面積 324 cm2なら収集時間が 60秒で,描出能スコアリングは 1.5 を超える.しかし, 541 cm2では 180 秒以上,757 cm2では 660 秒以上の収 集時間が必要になる.923 cm2と 1189 cm2においては, 1800秒でも描出能スコアリングは 1.5 に届かなかった. これは,Fig. 3(e)の結果と矛盾しない.また,1800 秒の 描出能スコアリングにおいて,大きな被写体断面積で 1.37 kBq/mLが低値になった[Fig. 4(b)].低値を示した 計測点は N10 mmで高値を示している[Fig. 3(b)].これ は,低い放射能濃度と大きな被写体断面積によるノイ ズの増加が,視覚的評価の妨げになったと考えられ る.ファントム断面積が 757 cm2を超えると,描出能ス コアリングは著しく低下した.この範囲は QH,10 mm/N10 mm が 2.0 を下回り,物理学的評価と視覚的評価が深く関係 することが示唆された. 本研究は LSO シンチレータを搭載した PET/CT 装置 を用いた.LSO シンチレータは発光減衰時間が短く計 数損失が少ないため,高放射能濃度に適応している. しかし,今回のファントムによる画質の検討では,大き な被写体断面積の場合,放射能濃度の増加より収集時 間の延長が有効であった.Masuda ら10)は 120 症例の PET/CT検査で,放射能濃度と収集時間の最適化をプ ロスペクティブな手法で検討している.彼らは,肥満患 者の画質を向上するのに,放射能濃度ではなく収集時 間の延長が有効だとしている.また,Nagaki ら11)の報 告も,体格の大きな患者に収集時間の延長が,有効だ としている.これらの報告は,本研究と同様に LSO シ ンチレータ搭載の装置を用いており,われわれのファン トムを用いた検討と矛盾しない. 今回の検討に含まれる 757 cm2から 1189 cm2のファ ントムは,NEMA ファントムの 1.4 倍から 2.2 倍の被写 体断面積をもつ.Fig. 3(a),(c)から,この範囲の被写 体断面積では,N10 mmの急速な減少が 300 秒から 600 秒まで継続した.また,QH,10 mmの変動幅が縮小するに も 300 秒から 600 秒の収集時間を必要とした.NEMA ファントムを体重 60 kg の被写体断面積とした場合12)の 比較は,単純換算で体重 85 kg から 130 kg となる.こ の範囲では,体重 60 kg と同一の N10 mmと QH,10 mmを得 ることはできないが,物理学的評価の結果として 300 秒から 600 秒の収集時間が必要と考えられる.しか し,被検者の拘束時間を考慮すると,選択できる収集 時間には限度がある.また,Fig. 4(a)の結果から,体格 の大きな被検者で収集時間を延長しても,必ずしも描 出能の向上には繋がらない.現状の PET/CT 装置で は,体格の極端に大きな被検者の画質を,標準的な体 格の被検者と同一な画質まで向上させることは困難で ある.したがって,PET/CT 装置の飛躍的な高感度化, time of flight13)による信号雑音の低減など,更なる技術 的革新を期待する. 4.結 論 PET の画像において,被写体断面積と画質の関係 を,物理学的評価と視覚的評価によって検討した.本 研究に用いた PET/CT 装置では,被写体断面積の増加 に伴う偶発同時計数の増加が,PET の画像に大きな影 響を与えることが明らかになった.体格の大きい被検者 による被写体断面積の増加には,放射能濃度より収集 時間の延長が有効である.しかし,臨床の収集時間に は限度があり,PET/CT 装置の飛躍的な技術革新に期 待する. 謝 辞 本研究を行うにあたり,笠井雅之氏(東芝メディカル システムズ株式会社)にご協力をいただきました.ここ に,深く感謝の念を表します. 本研究は,がん研究会臨床研究センター第 2 回助成 金「PET/CT 検査における被写体断面積と画質の関係」 の援助を受けた.本論文の要旨は,第 38 回日本放射線 技 術学会秋 季学 術大 会(2010 年 10 月,仙台)および European Association of Nuclear Medicine(2011 年 11 月,Birmingham,UK)にて発表した.
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Table Aquiduo 16におけるPET装置部分の仕様
問合先
〒 135-8550 江東区有明 3-8-31