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は じ め に

 県では、消費者起点の販売を重視する「攻めの農林水産業」を展開するに当た

り、安全・安心で良質な農産物を安定的に生産・供給できる体制を整備するた

め、農業生産の基本である「健康な土づくり」を重点施策と位置づけており、市

町村・農業団体と一体となって県内すべての農業者が「健康な土づくり」に取り

組むことをめざす「日本一健康な土づくり運動」を強力に展開しています。

 一方、最近の農業生産を巡る情勢は、食品の産地偽装や事故などにより、安

全・安心な農産物を求める消費者の声が高まっているほか、肥料価格が急激に高

騰し、農業経営を圧迫する中で、土壌診断に基づいた適正施肥や堆肥の活用な

ど、化学肥料の使用を低減する施肥体系への転換が早急に求められています。

 また、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減が進まない中、炭素貯留機

能を持つ農地土壌の役割が急速に注目されており、地球環境保全の面からも農地

土壌を適正に管理する「健康な土づくり」の必要性が一層高まっています。

 本書は、土づくりに取り組む農業者を支援するため、生産現場で指導に当たる

普及指導員や営農指導員等の手引書として作成したものであり、本県の試験研究

成果のほか、国や他県の成果などをもとに新たに減肥基準や堆肥を施用する場合

の施肥設計の考え方を盛り込むなど、減肥指導に係る内容を充実させています。

今後の農業生産力の安定と増進、環境にやさしい農業の拡大、適正施肥の実践等

を促進するための一助として活用いただければ幸いです。

 終わりに、執筆並びに編集をいただきました各位の労に対して深く感謝申し上

げます。

平成20年12月

「日本一健康な土づくり運動」推進本部長

青森県農林水産部長

佐 藤 和 雄

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目    次

Ⅰ 土壌診断と対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 [1]土づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1 土づくりとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 物理性の改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 化学性の改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 4 生物性の改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 5 県内の耕地土壌について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 [2]土壌診断の方法と活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 1 土壌診断の進め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8  <一般的な土壌診断フロー>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2 土壌物理性の診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ⑴ 物理性の評価基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ⑵ 診断項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 3 土壌化学性の診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 ⑴ 土壌の採取方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 ⑵ 診断項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25    pH、EC、CEC、交換性塩基、塩基飽和度、有効態りん酸、りん酸吸収係数 ⑶ 土壌改良資材量のもとめ方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 ⑷ 簡易土壌診断の実施方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 Ⅱ 各作物の土づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 [1]水稲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 1 県内水田土壌の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 2 土づくりと稲の生育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ⑴ 養分と水稲の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ⑵ 水田土壌の理想的な条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 ⑶ 水田の土づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 3 施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 ⑴ 水田土壌タイプとその特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 ⑵ 地帯別施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 ⑶ 地帯別稲わらの施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 4 化学肥料の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 ⑴ 水稲の窒素吸収と収量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 ⑵ 利用率向上による施肥窒素量の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 ⑶ 有機質肥料の利用向上による化学肥料の減肥・・・・・・・・・・・・・・・ 64 ⑷ りん酸、カリの減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 [2]果樹・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 1 県内の樹園地土壌の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 ⑴ 土壌の種類と分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 ⑵ 樹園地土壌の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 2 土壌の性質と改良対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 ⑴ 排水不良の改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 ⑵ 深耕(根群域の拡大)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

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⑺ 改植障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 ⑻ 水田転換園の土壌改良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 3 果樹別土づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 ⑴ 各果樹の土壌感応性と土壌診断値の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 ⑵ りんご・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 ⑶ ぶどう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 ⑷ おうとう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 ⑸ 西洋なし、日本なし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 ⑹ もも(うめ、あんず)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 ⑺ その他の核果類(日本すもも、プルーン)・・・・・・・・・・・・・・・・105 ⑻ ブルーベリー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 4 減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 ⑴ 施肥の最適量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 ⑵ 施肥量増減の判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 [3]畑作・野菜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 【露地】 1 土壌の特徴と管理方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 ⑴ 露地畑土壌の一般的な特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 ⑵ 露地畑土壌の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 ⑶ 畑の準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 2 土壌改良基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 ⑴ 土壌の物理性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 ⑵ 土壌の化学性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 ⑶ 畑作物・野菜と土壌改良基準の主な項目の関係・・・・・・・・・・・・・・115 ⑷ 主な畑作物・露地野菜の土壌管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118 3 施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121 ⑴ 施肥の各要素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・123 ⑵ 主な畑作物・野菜の施肥及び養分吸収の特徴・・・・・・・・・・・・・・・123 4 減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 ⑴ 窒素の減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 ⑵ りん酸の減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 ⑶ カリの減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 【施設】 1 土壌の特徴と管理方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 ⑴ 畑土壌の一般的な特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 ⑵ 施設土壌の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132 ⑶ 施設土壌の土づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134 2 土壌改良基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144 3 施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・145 4 減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・148

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⑴ 窒素の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・148 ⑵ りん酸の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149 ⑶ カリの減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149 [4]花き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150 1 土壌の特徴と管理方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150 ⑴ 花き土壌の一般的特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150 ⑵ 県内花き施設土壌の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150 ⑶ 土づくりの方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・152 2 土壌改良基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・161 3 施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・162 4 減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 ⑴ 窒素の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 ⑵ りん酸の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 ⑶ カリの減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・164 [5]草地・飼料作物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165 1 土壌の特徴と管理方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165 ⑴ 草地土壌の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165 ⑵ サイレージ用トウモロコシ畑土壌の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・166 2 土壌改良基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・167 ⑴ 牧草・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・167 ⑵ サイレージ用トウモロコシ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・170 3 施肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・171 ⑴ 牧草・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・171 ⑵ サイレージ用トウモロコシ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177 4 減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・180   家畜ふん尿を施用する場合の減肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・180 [6]環境保全技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・183 Ⅲ 堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201 [1]堆肥の種類と特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201 1 家畜ふん堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201 ⑴ 家畜ふん堆肥の肥料成分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201 ⑵ 家畜ふん堆肥の作りかた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201 ⑶ 畜種ごとの特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・202 2 稲わら堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・202 3 もみがら堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・203 4 木質堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204 ⑴ せん定枝堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204 ⑵ バーク堆肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207 5 堆肥の腐熟判定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207   コマツナ幼植物による簡易腐熟判定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207 [2]堆肥施用時の施肥設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・208 1 堆肥使用による減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・208

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2 RQフレックスの使用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・213 ⑴ RQフレックス操作の概略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・213 ⑵ 各成分の測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・213 ⑶ 常法の堆肥分析と簡易分析の相関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・215  (参考)RQフレックスプラスを使用した簡易分析・・・・・・・・・・・・・・・216 Ⅳ 緑肥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・217 [1]緑肥の特徴と効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・217 1 特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・217 2 効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・217 [2]輪作の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 1 畑作物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 ⑴ 転換田での連作障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 ⑵ 転換田での基本的な輪作体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 ⑶ 田畑輪換の手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 2 野菜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219 ⑴ 輪作の基本型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219 ⑵ 輪作の機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219 ⑶ イネ科作物の導入による輪作体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・220 ⑷ ながいもの輪作栽培・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・220 Ⅴ 参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・223 [1]土壌改良基準一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・223 [2]耕地土壌の分類単位・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・228 [3]土壌統の設定基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・229 [4]土壌診断結果に基づく減肥基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・232

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Ⅰ 土壌診断と対策

[1]土づくり

1 土づくりとは

 土壌は、土壌の材料(母材)である岩石がただ単に細かくなり堆積したものではなく、母材の成分、 地形、気象、植生、動物、微生物などの影響を受けながら長い年月を経て生成されたものである。この ように生成された土壌を自然土壌という。  この自然土壌が人間に利用され、人間の影響を受けた土壌、特に農地は、ただ単に土壌本来の性質の みならず、各時代の様々な技術や農業的、工業的技術の進歩や社会・経済的な諸条件の影響を受けて、 現在の土壌の形を示している。  実際の農業生産においては、このような色々な種類の土壌に多種類の作物を栽培し、目的とする作物 生産ができるよう土壌を改善し、良い状態に保ちながら利用している。  このように、土壌の環境を改善し、作物が必要とする養分や水分をバランス良く十分に供給できるよ うな能力すなわち地力を高め、土壌の作物生産能力を維持していくことが「土づくり」である。  「土づくり」に関連した土壌の性質を簡単に、物理性、化学性、生物性の三側面からみることができ る。これらは、お互いに関連性を持っているので、それぞれが作物生産において調和がとれるようにす ることが大切である。

2 物理性の改善

 土壌の物理性は、透水性、通気性、保水性、易耕性などに関連し、土壌の三相つまり、固相、液相、 気相の分布状態で示される。  固相には、砂、シルト、粘土などの土壌粒子、動植物の遺体、腐植、微生物、ダニやミミズなどの土 壌動物が含まれる。液層は固相間の孔隙内にある土壌水のことで、気相は固相間の孔隙内で土壌水で満 たされない部分のことである。  土壌の物理性(三相)は、作物の根の伸長の難易や根への水分、養分、酸素の供給の可否に深く関係 しており、作物の生育にとって重要な性質である。  普通の土壌では、固相率が40%ぐらい、液層率と気層率は各30%ぐらいであるが、作物が正常に生育 するには、降雨直後を除き、気相率は少なくとも20%ぐらいは必要とされている。  土壌の物理性を改善(作土層)するためには、堆肥などの有機質資材及びバーミキュライトやパーラ イトなどの鉱物質系の物理性改良資材を施用する必要がある。(p20 エ 三相分布に詳述)

3 化学性の改善

 土壌は粘土と腐植からなる土壌コロイドや腐植等を含み、これらは電気を帯びイオン交換を行うた め、土壌の化学性が生じる主要因となっている。  土壌の化学性は、土壌pH、塩基交換容量(CEC)、りん酸吸収性、酸化還元性、生育阻害物質等の状態

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など、作物の生育に直接的に関係する各種性質が含まれている。  作物が正常に生育する土壌のpHは、作物の種類により異なるが、微酸性から中性である。  CECは、土壌中の陽イオンを土壌粒子表面に吸着できる能力を示すもので、これが小さいと施肥した肥 料成分や土壌養分が降雨などで流亡しやすい。  また、酸化還元は、土壌中の物質の形態変化に関連し、作物に対する酸素や養分の供給と関係があ る。  これら化学的な性質についは、作物別に改良目標値が細かく決められており、作付けする前に、土壌 分析を行い、その結果に基づき改良する必要がある。

4 生物性の改善

 土壌中には種々の生物(動植物、原生動物、微生物、ウイルスなど)が生息しており、土壌の生物性 を担っている。  土壌に施用されたり、土壌中に残った動植物遺体などの有機物は、生息している種々の生物による食 物連鎖で次々と利用分解される。これらの過程で作物の生育に有効な物質(アミノ酸、植物ホルモンな ど)が生産される。   また、有機物の分解から生成される腐植物質やミミズなどの土壌動物から排出される物質などの働き により土壌のCECや緩衝能が大きくなる。  土壌に施用された有機物は、最終的には無機イオンまで分解され、土壌の化学性に応じた安定した形 態になり、一部は作物に吸収され、一部は土壌中に蓄積される。  このように土壌の生物性は、多種多様な生物の働きにより担われており、土壌の生物性を望ましい状 態にするためには、土壌生物のエサとなる粗大有機物や良質な堆肥を施用することにより、微生物の種 類と数を多くし、お互いに一定の均衡状態を保ち、その相互作用により、ある種の病害性微生物などの 異常発生を防ぐようにすることが大切である。  土壌の生物性を良好な状態に保つことは、土壌の作物生産能力である地力の維持向上のためには極め て重要であり、環境への負荷軽減と持続的な農業を推進する上での要となるものである。

5 県内の耕地土壌について

 農業面においては、その生産基盤となる土壌を活用する場合、対象とする土壌の分布状況や土壌の特 徴をあらかじめ知って、その能力を維持・向上させていくことが必要である。  青森県が国の地力保全事業(のちに土壌保全調査事業と改称)により調査した結果では、本県の耕地 土壌は、12土壌群、27土壌統群に分類されている。  土壌統とは、「土壌断面の主要な特徴、母材、分布などについて、共通点をもっている一群の土壌」 をいうもので、土壌統では、数が多いので、断面形態など主要な共通点をもっている土壌統をまとめて 土壌統群、さらにまとめて土壌群としている。  県内の耕地土壌の土壌群、土壌統群の主な性質と分布状況は以下のとおりである。  

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土壌群及び土壌統群の表 土壌群名 土壌統群名 主な性質 岩 屑 土 (01)  下北地域の古成層地帯で、石灰岩を採掘している地域の台地上の平 坦部(東通村尻屋、母衣部、尻労)及び下北半島の津軽海峡に面した 洪積台地上の平坦部及び緩傾斜地に分布し、畑地利用である。表層腐 植層はなく、表土・有効土層とも一般に深い。また、表層、次層とも 礫に頗る富む土壌で土性は強粘~粘質である。一般に保肥力は大きい が固定力は小さい。また、土層の塩基状態は、小~中であるが、有効 態の養分は少なく、傾斜地に分布する割合が大きいので水蝕を受けや すい。 砂 丘 未 熟 土 (02)  屏風山砂丘地帯の一部と陸奥湾に面した田名部低地帯の平坦部に分 布し、畑地利用である。表土は浅いが有効土層は深く腐植含量は極め て少ない。表土、次層とも粗粒質で透水性が大きく、かつ保水力が小 さいので干ばつの害を受けやすい。固定力、土層の塩基状態は中庸で あるが、保肥力が小さいので養分の流亡を受けやすく、交換性の石 灰、苦土、有効態りん酸含量は少なく酸性である。 黒 ボ ク 土 (03) 厚 層 多 腐 植 質 黒 ボ ク 土 (03A)  県南地方(主として三戸町、八戸市に存在するが、新郷村、田子 町、五戸町:旧倉石村にも分布する)の台地、山間地及び緩傾斜地に 分布し、畑地利用である。全層多腐植質の火山灰土壌で表土、有効土 層とも一般に深いが、透水性が大きく、また、表土が軽しょうなため 過乾燥及び風蝕のおそれがある。保肥力、固定力は中庸であるが、土 層の塩基状態はやや劣り、交換性の石灰、苦土及び有効態りん酸は少 ない。 厚 層 腐 植 質 黒 ボ ク 土 (03B)  県南地方の洪積世段丘上の平坦地及びそれに連なる緩傾斜地に主に 分布するが、一部岩木山麓裾野の小河川によって開折された傾斜地に も分布し、畑地利用である。表土及び有効土層は深い。一般に透水性 は大きく、表土が軽しょうなため一時的に過干になりやすく、風水蝕 のおそれがあるが、土壌統によっては、強粘質のものもあり保水性が 大きく、地形によっては過湿のおそれのある土壌も一部みられる。全 般に保肥力は大きいが、固定力、土層の塩基状態は低位にあり、交換 性塩基及び有効態りん酸は少ない。 表 層 多 腐 植 質 黒 ボ ク 土 (03C)  主として、山麓台地や、洪積世段丘上の平坦部及び緩傾斜地に分布 する火山灰土壌で全県的にみられるが、主に上北地域に分布する割合 が多い。土地利用形態は、水田・畑地である。土性は、粗粒質のもの から強粘質まで多岐にわたるが、一般的には表層、次層とも粗粒で有 効土層がやや浅く、下層に粟砂(火山浮石砂土)が介在する。畑地で は表土が極めて軽しょうで、透水性が大きいため耐風水蝕性は小さ い。水田では透水性が大きいため冷水かんがいとなりやすい。土壌は 腐植含量が高く、保肥力は中庸であるが、りん酸固定力は大きく、土 層の塩基状態及び、有効態養分に欠ける土壌が多い。 表 層 腐 植 質 黒 ボ ク 土 (03D)  主に山麓台地の波状地形及び、洪積世台地の平坦部、並びにこれに 連なる緩傾斜地、あるいは海岸段丘上の平坦部に分布する火山灰土壌 で全県的に分布し、ほとんどが畑地利用であるが一部水田に利用され ている。畑地利用のうち山麓台地(波状地形)では果樹(りんご)が 栽培されている。土性は強粘質から砂質で土壌統によって異なるが、 一般に表土の腐植含量は高い。自然肥沃度は劣る~中程度で、土壌の

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状態も悪く、一般にやせた土壌が多い。また、土壌統によっては、表 土、有効土層とも一般に浅く、下層に粟砂(火山浮石粒)の混在する もの(桜統)、あるいは火山性風化小円礫(通称ゴロタ)層が介在 し、透水性が大きく、過干になりやすいものや、粘質のため一時過湿 のおそれのある土壌(大川口統)もみられる。 淡     色 黒 ボ ク 土 (03E)  洪積台地の波状丘陵地形の平坦部及び緩傾斜地、海岸段丘の緩傾斜 地、山麓裾野の波状大地に分布し、下北半島の基部(横浜町、野辺地 町)の中山山脈の西麓、岩木山南麓に主にみられる。土性は強粘質か ら壌質で表層腐植をもたない火山灰土が主体である。土地利用は畑地 利用で、津軽地域では主に果樹(りんご)を栽培している。有効土層 は一般に深いが表土はやや浅い。保肥力は中庸であるが、固定力は大 きく、土層の塩基状態及び反応はやや劣る。また、土性が粗粒で透水 性の大きい土壌(清水沢統、峰の宿統、上来島統)では、過干のおそ れがあり、土性が強粘質な土壌(丸山統)では一時的に過湿害の生ず るおそれのある土壌、あるいは傾斜度が大きく、水蝕のおそれのある 土壌(大河内統)等もみられる。 多     湿 黒 ボ ク 土 (04) 厚 層 腐 植 質 多     湿 黒 ボ ク 土 (04B)  主に県南地域の山間部に分布し、地形的には中小河川によって解析 された河岸段丘の平坦部に存在するが、一部谷床地形及び山裾の凹地 にもみられる。主として水田利用であるが、畑地(樹園地:りんご) に利用されているものもある。表土、有効土層とも一般に深く、水田 に利用されている所は自然肥沃度及び、養分の豊否等は中庸である が、有効態窒素に乏しい。畑地に利用されているもの(深井統)は、 山裾の凹地にあり、長雨時等には一時的に過湿となるおそれがあるば かりでなく、土壌の塩基状態及び交換性の石灰、苦土並びに有効態り ん酸に乏しい。 表 層 腐 植 質 多 湿 黒 ボ ク 土 (04D)  全県的に分布するが、主に中南地域に多く、地形的には山裾及び、 これに連なる台地で、小河川の河岸段丘、低位段丘上に主として分布 し、土地の利用形態は水田がほとんどであるが、畑地利用も1割程度 みられる。水田の場合表土の土性は壌質から強粘質で一般には湛水透 水性の大きい土壌が多いが、台地上の窪地に存在するため、湛水透水 性の劣る水田もみられる(吉岡統)。また、自然肥沃度はやや劣り、 有効成分に乏しい土壌も存在するが、概して養分の豊否については問 題が少ない。  畑地に利用されているものには、堆積様式が風積の場合と水積によ るものがあるが、概して窪地に分布するため過湿になりやすく、土壌 の塩基状態も不良である。 黒 ボ ク グ ラ イ 土 (05) 腐 植 質 黒 ボクグライ土 (05B)  上十三、東青地域に分布し、地形的には河岸段丘及び谷床地形ある いは山間地、扇状地の開始地点、海岸沼周辺に主に分布し、水田利用 である。主として表層腐植層で、土性は砂質から強粘質の多岐にわた る。土壌統によっては下部に砂礫層の存在するものもみられるが(一 の渡統)、一般に表層、有効土層とも深い。概して保肥力は中で、固 定力が大きく、土層の塩基状態が悪いなど自然肥沃度が劣るほか、有 効態りん酸、ケイ酸、交換性の塩基等養分的にも劣る。また、排水が 不良なため、強還元になりやすく、水稲の根系障害をおこすおそれが ある。

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褐 色 森 林 土 (06) 細 粒 褐 色 森 林 土 (06A)  中南地域の東部丘陵地帯の傾斜地に分布し、畑地(樹園地:りん ご)利用である。表土、有効土層ともやや深く、礫を含み、土性は強 粘質である。保肥力、固定力は中庸であるが、土層の塩基状態はやや 劣り、交換性塩基、有効態りん酸は少ない。  また、土壌の有機物含量が少なく15~25度と傾斜が大きいため水蝕 を受けやすく、過干のおそれが多い。 礫 層 褐 色 森 林 土 (06D)  中南地域の東部丘陵地帯及び青森平野南部周辺の丘陵地帯の傾斜地 に分布し、畑地(樹園地:りんご)利用である。表層腐植層はなく、 土性は壌質から強粘質で30~60㎝より下部に礫層があり、表土、有効 土層もやや浅い。保肥力、固定力は中庸であるが、土層の塩基状態は 劣り、反応も弱酸性から強酸性で養分状態も一般に悪い。また、土壌 有機物含量も少なく、3~15度とやや傾斜が大きいため、過干あるい は水蝕のおそれがある。 黄 色 土 (10) 細 粒 黄 色 土 斑 紋 あ り (10D)  本土壌は上北地域(横浜町)に一部みられるが、主として、下北地 域の第三紀層の丘陵地及び、河岸段丘上に分布し、水田に利用されて いる。表層に腐植層を欠き、表土は20㎝内外でやや浅いが、有効土層 は深く、強粘質であるため耕うん砕土はやや困難で透水性が悪い。一 般に保肥力及び土層の塩基状態が劣り、かつ交換性の塩基、有効態り ん酸、有効態ケイ酸の少ない土壌である。また、下層にち密層があ り、水稲根の伸長を阻害している場合もみられる。 褐 色 低 地 土 (12) 礫質灰色低地 土・斑紋あり (12F)  県南地方の三戸郡にほとんど分布し、主に中河川流域の平坦地にみ られるが、一部谷床台地にも分布しており、水田利用である。表層腐 植層を欠き、表土の有機物含量は少なく小円礫を含む。下層に砂礫層 を有し、有効土層は浅い。一般に透水性が大きく、又保肥力が弱いた め、有効態養分(窒素、りん酸、ケイ酸等)に乏しい土壌が多い。 灰 色 低 地 土 (13) 礫層灰色低地 土 ・ 灰 色 系 (13C)  県内一円の河川流域に分布し、水田利用である。下層に礫層あるい は砂礫層を有し、透水性がやや大きく、有効土層は浅い。土性は壌質 から強粘質で、一般に固定力及び土層の塩基状態が劣り、また、窒 素、りん酸、ケイ酸等の有効成分が劣る。 細粒灰色低地 土 ・ 灰 褐 系 (13D)  河成沖積地の平坦地及び段丘上に分布するが、河川の下流域に行く に従って分布少なくなる。土地利用は主に水田利用であるが、畑地に も利用されている。土質は強粘~粘質で耕うん砕土にやや難がある。 固定力、土層の塩基状態はやや悪いので自然肥沃度がやや劣る。養分 の豊否については特に問題はないが、有機物含量が少なく、有効態窒 素、りん酸、ケイ酸等が不足する場合もみられる。 中粗粒灰色低 地土・灰褐系 (13E)  県内一円の河川流域に広がる河岸段丘及び低位段丘上に分布し、大 部分水田利用であるが、一部(約1.2%)畑地に利用されている場合も ある。土性は壌質から砂質で一般に透水性が大きく、有効土層は深 い。保肥力は中庸で、固定力は小さく、土層の塩基状態は中である。 養分的にも問題は少ないが、鉄などの溶脱がみられる場合もある。  畑地の場合は立地的な関係で地下水位の高い所がみられ、一時過湿 になるおそれがあるほか、土層の塩基状態がやや劣り、反応も強酸性 で交換性の石灰、苦土、有効態のりん酸に乏しいものが多い。

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灰色低地土・ 下 層 有 機 質 (13H)  主に奥入瀬側、五戸川河口付近、あるいは馬渕川流域に分布するが その面積は少なく、土地利用は水田、畑地である。一般に有効土層は やや深く、土色は灰~灰褐色で下層(50㎝以下)に黒泥層を有する。 水田の場合、透水性は大きいが地下水位が高く、弱いグライ斑を示 す。保肥力、土層の塩基状態は中庸であるが、固定力は大きく、交換 性の加里及び有効態りん酸の含量がやや劣る。畑地では土性が粘~強 粘質で反応が強酸性のものが多く、また、過干のおそれのある土壌が 多いが、反面強粘質のところでは過湿害を生ずるおそれのある所も一 部みられる。 灰色低地土・ 斑 紋 な し (13I)  主として新井田川、馬渕川流域、岩木川及び岩木川支川流域の川原 地帯に分布し、河川の堆積作用を強く受けている土壌で、土地利用は 畑地(ほとんど樹園地であるが普通畑も若干みられる)である。土性 は壌質~砂質で、土壌統によっては下層(50㎝前後)に砂礫層を有 し、表土及び有効土層の浅いものもある(真宮統)。土壌の反応は一 般に酸性から強酸性で、保肥力及び土層の塩基状態がやや劣る場合が 多い。また、交換性の石灰、苦土、有効態りん酸も一般に少ない。 グ ラ イ 土 (14) 細 粒 強 グ ラ イ 土 (14A)  津軽、下北地域の沖積平坦部の低地に主として分布するが、1部谷床 地形及び低位段丘、海岸段丘にも分布し、水田利用であるが地下水位 が高く、作土直下よりグライ層となっている。表土及び有効土層は一 般に深い。土性は強粘質で透水性が小さく、土壌の易分解性有機物が 多い反面遊離酸化鉄が少ないので強還元になりやすく、水稲の根系障 害を起こすおそれが大きい。また、保肥力は大~中、固定力は中~小 で自然肥沃度は比較的良好であり、養分の豊否についても特に問題は ない。 中 粗 粒 強 グ ラ イ 土 (14B)  主に河川流路の変遷跡や河口周辺、自然堤防の後背湿地及び海岸低 湿地などに存在し、下北地域に一部みられるが、大部分、津軽地域に 分布し水田利用である。土性は壌質から砂質であるが、湧水面が高く 湛水透水性の劣る土壌である。さらに、土壌の易分解性有機物含量が 多く、酸化還元性が劣り、水稲の根系障害を起こすおそれが大きい。 固定力は中~小、保肥力は大~中で自然肥沃度は中庸であるが、一般 に有効態りん酸、ケイ酸及びその他の塩類の含量が少ない。 礫 質 グ ラ イ 土 (14C)  岩木川支流の相馬川及び、その支流の藍内川、作沢川の河岸段丘の 凹地並びに、五戸川、浅水川及びその支流の小河川流域に主に分布し ており、水田利用である。有効土層はやや浅く、下層に砂礫層がある が、地下水位が高くグライ化しており還元が強いので、水稲の根系障 害を起こすおそれが大きい。保肥力、固定力は中~小で自然肥沃度は やや劣る。また、一般に交換性の石灰、苦土、加里および、有効態の 窒素、りん酸等に乏しい土壌が多い。

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細 粒 グ ラ イ 土 (14D)  津軽平野の東南部から西北部にかけて主に分布しているが、三八地域 及び、西海岸地域にも分布している。地形的には河川沖積地の平坦部で 標高のやや低いところにみられ、大部分水田利用であるが、畑地(樹園 地:りんご)に利用しているところもある。地下水位がやや高く、土性 は粘質~強粘質で湛水透水性はやや劣るが、グライ層は50㎝内外より下 層に存在し、還元も弱いので水稲の根系障害を起こすおそれは少ない。 一般に保肥力は中、固定力は小~中で自然肥沃度あるいは養分の豊否等 は中庸であるが、交換性の石灰、苦土や有効態の窒素、りん酸及びケイ 酸の少ない土壌もみられる。畑地では、周囲が水田のところが多く全体 的に排水不良で、一時的に過湿になる場合が多い。 中 粗 粒 グ ラ イ 土 (14E)  本土壌はほとんど津軽地方に分布しており、地形的には河成沖積地の 平坦部及び砂丘湿地、山裾並びに山間地に分布し、水田利用である。土 性は壌質から砂質で地下水位が比較的高く、50㎝前後より下層にグライ が存在するが、還元化が弱く水稲根系に障害をおよぼすおそれは少な い。一般に保肥力・固定力にやや劣るが養分的には問題の少ない土壌で ある。しかし土壌統によっては自然肥沃度が劣り、また、有効態養分や 塩基に乏しい土壌(八幡統)も存在する。 グ ラ イ 土 下 層 有 機 質 (14G)  東青、西北、中南地域にみられるが、主に五所川原市を中心とした西 北地域に多く、沖積平野の平坦部及び低位段丘、山間地に分布する。本 土壌は、泥炭土の周辺部に出現する割合が多く水田利用である。下層に 泥炭層あるいは黒泥層を有するが、面積的には泥炭層を有する場合が多 い。一般に湧水面が高く作土直下よりグライ層となっている。表土の最 微な土性は粘質~強粘質で、湛水透水性が小さく、酸化還元性が劣るた め、水稲の根系障害をおこすおそれが大きい。保肥力は大、固定力は小 ~中で自然肥沃度は比較的良好であり、養分状態も問題は少ないが、有 効態窒素の少ない土壌のみられる場合もある。 黒 泥 土 (15)  上北地域、中南地域の小河川流域の沖積平坦地に主として分布する が、三戸郡、下北郡、五所川原市にも一部分布し、水田利用である。作 土の土性は粘質~強粘質のものがほとんどで、地下水位が高く、易分解 性有機物含量も多く、還元になりやすいので、水稲根系の障害を受ける おそれが大きい土壌である。一般に自然肥沃度は中庸であるが、土壌統 によって固定力の大きい土壌もみられる。全般に有効態のりん酸、ケイ 酸のやや劣る土壌である。 泥 炭 土 (16)  県内一円の大小河川流域の低湿地帯及び平坦地と山地の接する排水不 良地の水田、あるいは谷床地形、海岸低湿地に分布するが面積的には西 北地域、上北地域に分布する割合が大きい。表土の土性は粘~強粘質 で、湛水透水性が小さい。地下水位が高く、易分解性有機物含量も多 く、酸化還元性が極めて劣る土壌である。保肥力は中、固定力はやや大 きく、有効態のりん酸及びケイ酸がやや少ないばかりでなく、その他の 塩基に欠乏している土壌が一般に多い。

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[2]土壌診断の方法と活用

1 土壌診断の進め方

 土壌診断には予防診断と対策診断とがある。予防診断は、土壌悪化を事前に把握して、土壌の状態を 点検しようとするものである。一方、対策診断は作物の生育が何らかの原因で不良になってから治療を 行なうものである。この両者を包括して土壌診断の手順を整理すると図1の通りである。         最初は過去の調査結果、資料などを収集、整理して診断地域の概況を把握する(①)。次に診断の対 象となる現地での聞き取り、観察、調査により判断をする(②、③)。次に採土(④)した試料を分析 (⑤)し、以上の結果を総合的に考察して処方せんを作成(⑥)する。処方せんに従い、土壌改良、施 肥改善、栽培改良を行い、その効果を確認する。  この手順は場合によって部分的に省略されることがある。①、②の下調べ、聞き取り、観察の省略が できるのは、前もって概況なり問題点なりの把握がしっかりできている場合である。はじめてのほ場や 概況、問題点の把握が十分でない場合は省略するべきでない。③の現地調査が省略できるのは、①、② の下調べ、聞き取り、観察の結果、土壌の分析を行なえば十分診断ができると判断した場合である。し かし、現地の土壌や作物を観察しない診断は誤りをおかしやすいので、③は原則として省略するべきで はない。④、⑤の採土、分析を省略できるのは、①、②の資料、聞き取り、観察で問題の解決方法が分 かった場合と、③の現地調査で解決した場合である。

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 土壌診断に基づく改良対策が所期の成果をあげたかどうかを確認することが、次の機会によりよい土 壌改良をするための大切な経験となる。深耕は有効だったか、かん排水対策は十分だったか、土壌の化 学性はどこまで改善されたか、作物の生育収量の回復状況などを確認する必要がある。

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2 土壌物理性の診断

⑴ 物理性の評価基準

 土壌物理性の診断項目は①表土の厚さ、②有効土層の深さ、③表土の礫含量、④耕うんの難易、⑤ 湛水透水性、⑥酸化還元性、⑦土地の乾湿である。「表土の厚さ」などは15㎝以上、25㎝以上などの 厚さだけで判断できるが、「耕うんの難易」「土地の乾湿」などは、関連するいくつかの要因項目ご とにその強度をきめ、それらを総合して判定しなければならない。たとえば「耕うんの難易」の場合 は、表土の土性、表土の粘着性、表土の風乾土の硬さを要因項目とし、各項目の強度が異なっている 場合は、安全性をみて、低い項目に合わせて等級を判定する。  等級と各診断項目の分級基準は次の通りである。 ア 等級  各診断項目について、制限あるいは阻害因子の強度によってⅠ~Ⅳ等級に分類する。改良対策が 著しく困難な場合を除いて、第Ⅰ等級を改良目標とする。 【第Ⅰ等級】  正当な収量をあげ、また正当な土壌管理を行う上で、土壌的にみてほとんど制限因子あるい は阻害因子がなく、土壌悪化の危険性もない良好な耕地とみられる土地。 【第Ⅱ等級】  土壌的にみて若干の制限因子あるいは阻害要因があり、また土壌悪化の危険性が多少存在す る土地。 【第Ⅲ等級】  土壌的にみてかなり大きな制限因子あるいは阻害要因があり、また土壌悪化の危険性がかな り大きい土地。 【第Ⅳ等級】  土壌的にみて極めて大きな制限因子あるいは阻害要因があり、また土壌悪化の危険性がかな り大きい土地。 イ 分級基準  水稲、普通作物をはじめ、果樹、牧草など、作物別に基準項目およびその内容を考慮して等級値 が決められている。 ア 表土の厚さ  表土というのは土層の最表層で、作物の根が水分および養分吸収のため容易に伸長できる土層 のことである。

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表1 作物別表土の厚さの等級 分級基準 等    級 水稲 普通作物・野菜 果樹 草地 25㎝以上 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 15~25㎝ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅰ 15㎝未満 Ⅱ Ⅲ~Ⅳ※1 Ⅲ~Ⅳ※1 ※2  注)※1:有効土層の深さがⅣの場合にはⅣとする。    ※2:有効土層の深さがⅢの場合はⅢとする。 イ 有効土層の深さ  作物の根がかなり自由に貫入しうると認められる土層のことである。すなわち、基盤、盤層お よび硬度計で29以上を示し、厚さ10㎝以上の土層あるいは極端な礫層までを有効土層としてい る。 表2 作物別有効土層の深さの等級 分級基準 等    級 水稲 普通作物・野菜 果樹 草地 100㎝以上 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 50~100㎝ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅰ 25~50㎝ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅰ~Ⅱ 15~25㎝ Ⅲ Ⅲ Ⅳ Ⅱ~Ⅲ 15㎝未満 Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅲ~Ⅳ ウ 表土の礫含量  礫の含量と大きさ、風化の程度を考慮して等級を決める。 表3 作物別表土の礫含量の等級 分級基準 等    級 水稲 普通作物・野菜 果樹 草地 5%未満 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 5~10% Ⅰ Ⅱ Ⅰ Ⅰ 10~20% Ⅰ~Ⅱ Ⅱ~Ⅲ Ⅰ~Ⅱ Ⅱ 20~50% Ⅱ~Ⅲ Ⅲ~Ⅳ Ⅱ~Ⅲ Ⅲ~Ⅳ 50%以上 Ⅳ Ⅳ Ⅲ~Ⅳ Ⅳ

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エ 耕うんの難易  表土の土性、粘着性、風乾土の硬さを要因項目とし、これらを総合して判定する。 表4 要因項目別耕うんの難易の等級 要因項目 等級 備考 土性 粘着性 風乾土の硬さ 湿潤度 1 2 2 2 3 2 3 1 2 2 2 3 2 3 (2) 2 2 3 3 3 3 1 1 2 2 1 3 2 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ

耕うんし易い~     わずかに困難

中度に困難

非常に困難 表5 要因項目別要因強度 要因項目 要因強度 (2) 1 2 3 表土の土性 表土の粘着性 表土の風乾土の硬さ 表土の湿潤度 軟 乾~半乾 中粗粒 なし~弱 やや硬 半湿 細粒質 中 硬 湿 微粒質 強 極強 多湿 注1:要因強度を( )で表したのは、風乾土の硬さが基も耕うんし易い状態の1に対して軟らか    すぎるための耕うんし難さを示す。  2:土性区分    祖粒質:砂土(S)、壌質砂土(LS)    中粒質:砂壌土(SL)、細砂壌土(FSL)、壌土(L)、シルト質土(SiL)    細粒質:砂質埴壌土(SCL)、埴壌土(CL)、シルト質埴壌土(SiCL)    微粒質:砂質埴土(SC)、軽埴土(LiC)、シルト質埴土(SiC)、重埴土(HC) オ 湛水透水性  この項目は水田のみについて、作土下50㎝の土性およびその最高ち密度によって等級を決定す る。 表6 要因項目別湛水透水性の等級 要因項目 等級 備考 作土下 50㎝の土性 最高ち密度 1 1 2 3 3 1 2 2 2 3 Ⅰ Ⅰ Ⅰ~Ⅱ Ⅱ Ⅲ

透水性 弱

透水性 中~良好  透水性 良~過良 注:土性は微粒質1、細粒質2、中粒質3に区分し、   最高ち密度は硬度計の読みで25以上は1、11~24は2、10以下を3に区分する。

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カ 酸化還元性  この項目も水田のみについて、作土の易分解性有機物含量、作土の遊離酸化鉄含量及びグライ 化度を要因項目として、水田土壌の酸化還元性を判定する。ただし、湛水透水性がⅢ等級で良~ 過良の場合および冷水が原因で地温が低いところでは酸化還元性を1等級引き上げて決定する。 表7 要因項目別酸化還元性の等級 要因項目 等級 備考 易 分 解 性 有機物含量 遊離酸化鉄 含 量 グライ化度 1 1 2 1 1 2 3 2 3 3 3 1 3 1 1~2 3 1~2 1 3 2 3 1 2 2 2 3 3 3 2 3 2 2 3 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ

根の障害 なし~弱

根の障害 中~強

根の障害 極強 表8 要因項目別要因強度 要因項目 要因強度 備考 1 2 3 作土の易分 解性有機物 風乾生成量 10以下 10~20 20以上 乾土100g当たりの NH4-N生成量(㎎) 高温生成量 10以下 10~15 15以上 作土の遊離酸化鉄含量 1.5%以上 0.8~1.5 0.8%以下 グライ化度 50㎝以内にグライ層のないもの 50㎝以内より下部にグライ層の あるもの 全層グライ、作 土直下からグラ イ層のあるもの キ 土地の乾湿  透水性、保水性、湿潤度を要因項目として総合的に判定する。通常は普通作物、果樹、牧草を 対象とする。干ばつのおそれがある場合には要因強度、等級とも( )で表現する。 表9 要因項目別土地の乾湿の等級 要因項目 等級 備考 透水性 保水性 湿潤度 1 1 1 1 2 1~3 3 3 3 2 1 2 1 2 (2) 1 1 1 2 3 3 (Ⅳ) (Ⅲ) (Ⅱ) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 干ばつの危険性 大         中         小         なし 過湿の危険性  小         中         大

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表10 土地の乾湿の要因項目別要因強度 要因項目 要因強度 (2) 1 2 3 透水性 保水性(ほ場容水量~萎凋係数) 湿潤度 乾~半乾 大 20以上 半湿 中 20~10 湿 小 10以下 多湿 注)保水性:土壌100g当たりの水分(g)

⑵ 診断項目

ア 表土の厚さ  表土とは、農耕地では一般に作土あるいは耕起されている土層のことである。黒ボク土の畑土壌 では単に作土だけでなく、土壌断面の最上層の腐植層を表土とする場合もある。  作土とは、作物の根が水分および養分を吸収するために、容易に根が伸長していくことができる 土層のことで、人工的に耕起などの影響を直接受けた膨軟な土層の部分である。作土の厚さは、耕 起に使う農具あるいは機械によって異なる。くわでは10~12㎝、ロータリでは12~15㎝、ディスク プラウでは20~25㎝、ボトムプラウでは15~30㎝耕起されるので、その深さが作土の厚さになる。  表土の浅い場合には、根域は狭くなり、過湿過乾になりやすく、養分供給力は小さく、作物の生 産力は著しく低下することになる。  表土の厚さを規制している要因は、礫、火山砂礫の存在、盤層、ち密層など不良土層の存在など である。礫、火山砂礫が存在する場合は、土性は一般に粗粒質で透水性過良のため、養分の溶脱を まねき、水田では用水過多による冷水かんがいとなり、畑、樹園地では水分不足になりやすい。  盤層、ち密度など不良土層の存在する場合には、透水性が不良となり、根の活力低下に基づく養 水分の吸収阻害が起こることになる。  改良対策としては、次層が砂礫層の場合は除礫や客土を行なう。客土材料の性質によっては、改 良資材の施用や有機物の投入も必要である。盤層、ち密層などの不良土層の存在する場合、あるい は次層の母材、堆積様式が著しく異なっている場合は、深耕、混層耕、心土耕、盤層除去などの土 層改良を行なうが、下層土の性質に応じて、土壌改良資材の施用、有機物の増施につとめる必要が ある。なお、畑、樹園地、草地では、土壌浸食が表土の厚さを規制している場合も多いので、浸食 防止による表土の保全をはかることも重要である。 イ 有効土層の深さ  有効土層とは、作物の根がかなり自由に貫入しうると認められる物理状態の土層を意味する。そ の深さは、おおむね基岩、盤層、ち密度29以上のち密層あるいは極端な礫層までと考えればよい。  ただし、地表下50㎝以内で、有効土層を制限している土層が、機械力により比較的容易に破砕混 入または除去しうる場合は、その層または下層までを有効土層に含めることができる。したがって 有効土層は、作物の根が十分に伸長する可能性のある全土層のことであり、作土層とは区別される ものである。  有効土層が浅い場合には、根系の活動範囲が制限され、養水分の吸収に直接的な影響を与え、ま た過湿・過乾になりやすい。水稲の場合、土層の状態によって、漏水過多になったりあるいは酸素

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不足になって還元が進んだりし、間接 的に根系の発達、養分の吸収機能の低 下をもたらすことになる。  有効土層の改良法はこれを制限して いる要因によって異なり、礫層が浅く 出現する場合には、除礫による有効土 層の拡大、耕土量の増大、漏水防止対 策の実施が最重要であり、盤層、ち密 層が存在する場合には、土層改良によ る根圏の拡大と透水性を与えることが 目的となる。  岩盤、基岩が存在する場合の改良は 極めて困難であるが、客土によって可 能な限り有効土層の拡大をはかる必要がある。  ち密度と根群の分布(図2)との関係をみると、火山灰土では、ち密度20~23㎜、非火山灰土で は20~22㎜を境にして根群の分布が激減していることから根群はち密度おおむね20㎜未満でよく発 達するようである。 ウ 表土の礫含量  多量の礫が表土中に存在する場合、細土量が少なく養分の供給力が小さく、保肥力も小さいため 肥料成分が溶脱しやすい。また、保水力が小さいため過乾になりやすい。しかしながら、畑、樹園 地などの土壌では、ある程度の礫の存在は通気性や透水性を良好にし、かえって好適な条件を作り 出している場合もある。また礫の存在は一般には耕起、砕土など農作業面に対して能率を低下させ る。  礫含量の高い土壌は除礫あるいは客土などによって、養水分供給の大きい農作業を行いやすい土 壌に改善しなければならない。  具体的には、細、小、中礫含量50%以上または大巨礫が存在する場合には除礫を、細、小、中礫 含量20~30%の場合には、客土、混層耕、ブルドーザによる代かきを行なう。客土、混層耕を行う ときは改良資材および有機物の施用が必要である。 エ 耕うんの難易  耕うんの難易は、耕起、砕土に関する評価であり、土壌のコンシステンシーに関連した諸性質と して表土の土性、粘着性、風乾土の硬さなどが関与している。  表土の土性は耕起、砕土時における土塊の大小、粘着性、風乾土の硬さと密接な関係を持ってい る。一般に粘土含量が高いほど、またモンモリロナイト系粘土はアロフェン系粘土よりも耕起、砕 土時に大きな土塊を作りやすく、発芽、苗立ちに影響を与える。粘着性は湿潤時において、土壌が 農機具へ付着する性質を示すもので、腐植含量が少なく、粘土含量が高いほど、また保水力の大き い性質を持った土壌ほど付着力は強くなる。風乾土の硬さは乾燥時、土壌の農機具に対する抵抗性 の指標になるもので腐植含量が少なく、粘土含量が高いほど、またモンモリロナイト系の粘土を多 図2 ち密度と根群の分布(三好、1971)

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く含む場合に、乾燥時に強い団結力を示し、農機具に対する抵抗が大きくなる。  耕うんの難易に対する改善策として、農機具による耕起、砕土などの作業効率をあげるととも に、作業適期を拡大するための土壌条件の改善が必要である。  表土の土性が強粘質の場合には、一般に砂客土を行うが、水田の場合には代かき作業によって砂 の部分は作土直下に沈降し、盤層を形成する懸念がある。  有機物施用によって土壌中の腐植含量を高めると土壌の粘着性や団結力を低下させて易耕性を高 める。  下層に盤層、ち密層など不透水層が存在したりあるいは地下水位が高い場合には過湿になりやす く、作業適期が限定され、農機類のスリップ、沈下など機械走行に大きな支障をきたすので心土破 砕、深耕などによって透水性を付与するとともに暗きょなどによって地下水位を下げることが重要 な改善対策である。 オ 湛水透水性  透水性の問題には、透水性がよすぎる場合と、悪い場合とがある。転換畑や野菜ではおもに透水 不良が問題になり、水田では透水性がよすぎる漏水田が問題とされる。  透水性の表し方は、表11のように透水係数と減水深の二つがあり、これらは互換性がある。 水田の透水性は土性によって異なり、透水係数(㎝/秒)で示すと粗粒質(砂質~砂壌土)10-4、中 粒質(壌土)10-5、細粒質(埴壌土~埴土)10-6位である。畑地では10-3~10-4が適正とされている。 一般に畑地では、土性が強粘質の場合や耕盤が形成されている場合以外は、透水性に問題がなく最 も問題になるのは転換畑で、排水対策が必要な場合が多い。  透水過多な水田は肥料および養分の溶脱流亡が激しいために、水稲は養分欠乏を起こしやすく、 秋落ち型の生育となって収量の低下、地力の低下などを起こしやすい。さらに、透水性が大きいた めに過度の用水量を必要とし、田面水温が上昇しにくく、水稲の活着不良、冷水害、養分の吸収能 力低下を生じやすく、水稲の生育、収量に悪影響を与えることになる。(図3)  水田で透水性が良すぎる場合の改善対策は透水を抑制することにあるが、改善目標は日減水深を 20~30㎜とする。作土下50㎝までの土性が中粗粒質で透水性が極めて大きい場合には、作土に客 土、ベントナイトのような優良粘土の客入によって漏水防止をはかる。作土50㎝までの最高ち密度 が疎の場合には、転圧、破砕転圧によって床締めを行い山中式硬度計で25~28とするか、または盤 ねり工法(作土を除去し、砂礫層の上に強粘質の湿潤土を、壁に塗ったようにする)によって透水 性の小さいすき床をつくる。透水過多な水田は一般に鉄や塩基も欠乏している場合が多いので、含 鉄資材や土壌改良資材の施用も必要である。このほか、代かき回数の増加による減水深の抑制、迂 回水路を用いてのかんがい水温の上昇、ゼオライトの施用や肥料の分施による施肥効率の向上、有 機物施用による地力消耗の防止などの肥培管理が大切である。  転換畑や野菜畑における透水不良の場合は暗きょの効果が大きい。畑では耕盤破壊も必要にな る。

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表11 透水係数と減水深(三好) 透水係数 (㎝ / 秒) 減水深 (㎜ / 日) 1× 10-7 0.1 1× 10-6 0.9 1× 10-5 8.6 1× 10-4 86.4 1× 10-3 86.4 カ 酸化還元性  水田の湛水前の作土は、畑地と同じようにたくさんの空気を含んでいる。しかし、湛水してから 代かきをすると空気は追い出され、残り少ない酸素は有機物の分解に消費される。酸素の多い状態 を酸化状態といい、酸素が少なくなった状態を還元状態と呼んでいる。その程度をあらわす単位と して酸化還元電位(Eh)が用いられ、ミリボルト(mV)で表現することになっている。  Ehは水田だけで問題になる診断項目で、土壌中における還元の過程は、第12表のようになると報 告されている。水田の酸化と還元状態の境のEhは300mV付近にあるといわれ、Ehが150mV以下になる と、水稲の根の活性が衰えるとされている。  泥炭土や黒泥土などの水田、稲わらなどを多施用した水田、都市の雑排水などが流れ込む水田 は、地温が上がると急激に有機物の分解が進み、異常還元になりやすい。  湛水下土壌の還元化は、りん酸の有効化、pHの上昇、窒素利用率の向上など、水稲にとってはプ ラスの働きをするが、還元が過度に発達すると硫化水素、有機酸のような有害物質が集積し、水稲 根の呼吸や養分、水分などの吸収を阻害することになる。  一般に易分解性有機物の多いほど、また遊離鉄含量の少ないほど、強度に還元化がすすみ、グラ イ層、泥炭層、黒泥層の位置が高いほど強度な還元になりやすい。還元性の高い土壌の改善対策と しては、暗きょ排水に加えて、弾丸暗きょなどの表層排水も必要である。  作土の遊離鉄含量の少ない土壌に対しては、含鉄資材の施用、鉄含量の高い土壌の客入などを実 施し、あわせて間断かんがい、中干し、無硫酸根肥料の施用などに努める。 図3 減水深と水稲収量(五十嵐、1956)

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表12 水田土壌の還元化の過程(渡辺) 堪水後 の経過 大きな区分け 土壌中での物質の変化 酸化還元電位(Eh、mV) 有機物からのアンモニアの発生 発生する問題 前期 後期 第一期 好気→半嫌気段階 酸素ガス→消失 硝酸→窒素ガス 二酸化マンガン→一酸化マンガン 酸化鉄→亜酸化鉄 600 ~ 500 600 ~ 500 600 ~ 400 500 ~ 300 活発に進む 脱窒 水田の老朽化 水田の老朽化 第二期 嫌気段階 硫酸→硫化水素 有機物→水素ガス 炭酸ガス→メタンガス 0 ~- 190 - 150 ~- 220 - 150 ~- 190 ゆっくり進む 根腐れ ごま葉枯れ 表13 土壌の状態による還元化の判定指標 項目 土壌の状態 土壌中での物質の変化 作土の土色 青灰色 二価鉄が生成している 黒色 硫化物ができている 臭い 卵の腐臭がする 硫化水素が発生している 泡 足を入れると出る ガスが発生している ブクブク湧きあがる ガスが大量に発生している 注)物質の変化状況から表12によって判定する。       キ 土地の乾湿  土壌中の水分が不足すると作物は水分吸収、光合成、呼吸作用などの生理作用に異常をきたすこ とになる。逆に、土壌中の水分は過剰になると土壌中の通気が不良となり酸素が不足することに よって、根の呼吸障害、養分吸収が妨げられるほか、地温上昇の抑制、根の伸長、活力低下に伴う 根ぐされの多発および微生物活性の低下をもたらす。したがって、作物栽培に対して、土壌水分を 最適に保つことはきわめて重要である。さらに、過湿地では地耐力が弱いため、機械作業の能率、 精度が悪いばかりでなく、機械運行に伴う土地の物理性の悪化を招きやすい。 ア 土壌水分の種類  土壌水分は作物の側からみると図4のように分類される。  重力水は、雨が降って24時間のうちに流れてしまう水のことで、土の一番大きな孔隙を通って 流れ落ちてしまうため、作物には直接利用されない水である。作物に利用される水は主として毛 管水と呼ばれ、土の中の毛管孔隙中に保持される水である。さらに小さな孔隙に保持される水は 吸湿水と呼ばれ、土の粒子と強く結びついているため、作物には利用できない水である。  雨が降って重力水が流れ落ちた24時間後に残った水分をほ場容水量といい、作物がしおれ始め る水分量を初期しおれ点と呼んでいる。この間の水分を有効水と呼んでいるが、作物が普通に生 育するために必要な水分は初期しおれ点よりは多く、ほ場容水量と毛管連絡切断点との間の易効 水である。毛管切断点とは、水分量が減った場合、毛管現象が断たれ作物に水分供給がスムーズ

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にいかなくなる状態のことである。  水分量を示す指標として一般にpFが 使われている。pFとは、水が土壌にひ きつけられている強さの程度を示す数 値で、ほ場容水量はpF1.8にあたり、毛 管連絡切断点はpF2.7に相当する。  作物にとって重要なのは有効水の量 であるが、これは土壌の保水量や機械 による圧密などによって変化するもの である。表14は、土壌の種類による保 水力のちがいをみたもので、粘土が多 くなると保水力は大きく、砂が多いと 保水力は小さくなり、同じ粘土分で も、腐植が多い火山灰土壌などは、ほ かの土壌に比べて保水力は大きい傾向 がある。 表14 土性と保水力(松尾、1964) 土壌 粒径組成(%) ほ場容水量 (%) しおれ点 (%) 保水力 ※1 シルト 粘土 洪積層土壌 16 12 9 7 5 4 2 0※2 45 35 25 20 15 10 5 0※2 24.4 16.8 11.7 10.0 7.9 5.6 3.6 2.1 18.2 12.8 9.1 7.1 5.8 3.5 2.1 1.5 6.2 4.0 2.6 2.9 2.1 2.1 1.5 0.6 洪積層土壌 25 〃 〃 〃 〃 〃 50 40 30 20 10 0 26.3 21.3 18.5 15.4 12.5 8.6 18.0 14.1 11.5 8.8 6.5 3.4 8.3 7.2 7.0 6.6 6.0 5.2 火山灰土壌 25 〃 〃 〃 〃 40 30 20 10 0 34.7 28.6 23.8 19.6 16.2 24.3 21.0 16.2 12.4 8.4 10.4 7.6 7.6 7.2 7.8 注)※1:保水力=ほ場容水量-しおれ点   ※2:砂100%     図4 土壌水分の種類とpFおよび水分恒数(三好)

参照

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