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EDFAの20年と将来展望

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招待論文

EDFA

20

年と将来展望

中沢

正隆

a)

20 Years of EDFA and Future Prospects

Masataka NAKAZAWA

†a)

あらまし 1989 年に開発された波長 1.47 µm InGaAsP 半導体レーザ励起のコンパクトなエルビウム添加光 ファイバ増幅器(EDFA:Erbium-doped Fiber Amplifier)から出発して,その後の 20 年と将来展望について 述べている.最初の EDFA はシリカ系ファイバをホストとして開発されたが,最近ではフッ化物系,リン酸系, ビスマス系,テルライト系などの様々な EDFA が出現しており,高利得,高出力,広帯域を実現している.今後 の光デバイスの方向として重要な集積化に向けても,小型導波路型 EDFA いわゆる EDWA が提案され,希土 類イオンの均一な高濃度化やナノ粒子の利用が始まっている.このような現状を見つめながら,本論文は,前半 では EDFA の基本技術について述べ,後半ではそれらについてまとめている. キーワード エルビウム添加ファイバ増幅器,EDFA,希土類添加ファイバ,広帯域ファイバ増幅,高出力ファ イバレーザ・ファイバ増幅器

1.

ま え が き

波長1.47μm InGaAsP半導体レーザを励起光源 と し た 小 型 高 性 能 な 光 ファイ バ 増 幅 器 ,今 日 で は 「EDFA」の略称で通じるエルビウム添加光ファイバ

増幅器(Erbium-doped optical fiber amplifier)を研

究開発してちょうど20年が経つ[1].「トランジスター が電子回路の基本素子として今日のエレクトロニクス を支えてきているように,小型の光増幅器が実現でき たならば,今後の光エレクトロニクスをより一層発展 させていくための基本能動素子として重要な役割を 果たすであろうことは想像に難くない.」との出だし で,応用物理学会誌の総合報告に「Erドープ光ファ イバーによる光増幅とその応用」と題して執筆したの が,つい先日のようにも感じられる[2].あれから20 年,EDFAは光通信を革新し,今も新しい伝送技術 や光装置が提案されるにつけ,その中には必ずといっ ていいほどEDFAが使われている.そしてこの間に

は,WDM(Wavelength Division Multiplexing)方

東北大学電気通信研究所,仙台市

Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University, 2–1–1 Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8577 Japan a) E-mail: [email protected] 式により爆発的な情報の大容量・高速化を実現し,イ ンターネットの出現とあいまって通信需要の拡大を加 速させてきた[3]. 総務省の報告によると,2009年時点で国内におい て1秒当りに情報のやり取りする量は1 Tbit/sに達 し,更に年率40%台で伸びているそうである.これは 2030年頃のデータ量が1 Peta bit/sに達することを 意味しており,光増幅器の更なる広帯域化・高効率・ 高集積化や新たなる光デバイスの出現が望まれている. 一般に,希土類元素はフッ化物系のガラスでは光 学活性になるものが多いが,シリカ系ガラスではフォ ノン緩和などでエネルギーを取られて発光しにくい. エルビウムイオンはたまたまシリカガラスの中でも 4I 13/2と4I15/2の間の1.5μm誘導放出が活発(非発 光緩和率が非常に小さい)であり,そのために, (1) 従来の通信用シリカファイバがそのまま使え たこと, (2) 信頼性の高い優れた励起光源に巡り会えた こと, (3) アモルファスであることが幸いして非常に広 帯域な増幅器になったこと, (4) ガラスファイバの光増幅特性には偏波依存性 がないこと, (5) 光ファイバとの結合損が小さく,雑音指数も

(2)

低いこと, 等がEDFAがタイムリーに実用化できた理由と考え られる.このどれ一つが欠けても使いにくく,今日の ような光通信の時代を迎えられなかったであろう. 本論文では,EDFAの基本的項目を説明し,次に最 近の高性能化について述べ,更に将来展望をしてみた い.なお,ここ20年のEDFAの光通信やレーザへの 応用はあまりにも多岐にわたるので,別の機会に譲り, ここではEDFAデバイスに集中してまとめることと する.

2.

小型

EDFA

研究・開発の歴史

コアに希土類元素を添加した光ファイバが光増幅器 あるいはレーザとして適しているのは, (1) コアが10μm以下の細径であるため,低い入 力でも励起密度を高くできる (2) 相互作用長が数10 cm∼数kmと長くとれる ため,単位長さ当りの利得が小さくても十分な総合利 得が得られる (3) MCVD,VAD法等の優れたファイバ製造技 術によりホスト材料が低損失な導波路となっている などが挙げられる. 最初のファイバレーザは,クラウンガラスにNd2O3 を添加したものであり,KoesterとSnitzerにより 1964年に発表されている[4].これはSnitzerがNd ガラスレーザを1961年に提案してすぐに,増幅媒体 がガラスであることから,クラッドをつけてファイバ レーザ化を考えたものと思われる.1960年のルビー レーザの発明後4年経ただけであり,ファイバレーザ 分野の立上りの早さがうかがえる.しかし,このレー ザはフラッシュランプによる横方向励起配置をとって おり,パルス発振は可能であるものの,CWの発振 や増幅はできなかった.70年代に入ると1973年に, StoneとBurrusによって,シリカ系のネオジム添加 ファイバを用いて波長0.514μmアルゴンイオンレー ザの光軸方向励起により1.06μmのCW発振が報告 されている[5].その後(3)のファイバ作製技術の進 展とともに,数多くのファイバレーザ,光ファイバ増 幅器が出現している.したがって,1960∼1970年代 を第1世代とすると,1989年に開発されたEDFAは いわば第2世代の光増幅器・ファイバレーザの出発点 だったといえる. 我々が他に先んじてコンパクトなEDFAを実現でき たのには大きく二つの理由がある.一つは,1983年に 100 kmを超える単一モードファイバ用光パルス試験 器(OTDR)の1.5μm帯パルス光源として,エルビ ウムという元素に着目したことである.当時の半導体 レーザ光源はOTDR用としてはまだ出力が低かった. そこで目をつけたのが,エルビウムを添加した波長 1.53μmのリン酸系ガラスレーザであった.大変だった のはリン酸ガラスへのエルビウムイオンの添加である. 当時はまだ製法の確立していないレーザガラス開発 だったのでほとんど手探り状態であり,レーザ発振が難 しかった.ようやくその原因がガラス中の残留水分に あることを突き止め,発振に成功した[6].そして,こ のエルビウム固体レーザを用いた波長1.5μm OTDR を世界で初めて作り,単一モードファイバ130 kmも の長距離障害点探索に成功した[7], [8].サザンプトン 大学から石英系のエルビウム添加光ファイバ増幅器の 最初の論文[9]が報告される3年前のことである.そ の後,我々もシリカ系のエルビウムファイバの研究に 突入していくのであるが,このようにエルビウムとい う素材に日本の研究者がいち早く目を付けていた事実 を知る人は多くない. 二つ目は光ファイバの損失を補償した「光アクティ ブ線路」という,いわば超伝導無損失線路の光版を実 現するために,早くから光ファイバ中の誘導ラマン散 乱による光増幅を用いた無損失光伝送路の研究をして いたことである[10]∼[13].誘導ラマン散乱を用いて 波長1.55μmにファイバ損を打ち消すだけの光増幅を 行うには,約440 cm−1 のストークスシフトを考慮し て波長1.47μm付近に励起光を設定する必要があった. このために高出力なCWのInGaAsP半導体レーザを 用いてラマン増幅の研究を進めていた[14].そのよう な折,波長が1.49μmのカラーセンタレーザを使って エルビウムイオンが励起できることが報告された[15]. しかし,利得は1 dB以下と小さく,また,カラーセン タレーザは大型でかつ液体窒素冷却が必要であり,実 用的ではなかった.それまでに大型のアルゴンレーザ, YAGレーザの第2高調波,あるいは色素レーザを励 起光源に使ってEDFAとして20 dB以上の利得が得 られており,EDFAの問題点は小型励起光源とエルビ ウム添加シリカファイバの低損失化に絞られていた. そこで,ラマン励起用の半導体レーザをエルビウムの 励起光源に切り換え,それまでに開発していた低損失 エルビウムファイバを組み合わせて小型EDFAの実 験を行った.その結果,大きな蛍光とともに10 dB以 上の利得がすぐに得られたのである[1].当時はベル研

(3)

究所,サザンプトン大学[9],NTTなどの間で熾烈な 開発競争が繰り広げられていたが,1989年のIOOC において世界で初めて小型の実用的EDFAが実現で きたことを実物とともに紹介した[16].これが最初の 小型EDFAの開発である.その後,エルビウムイオ ンの波長0.98μmの吸収線を利用するためにひずみ超 格子半導体レーザも開発され,EDFAの開発が加速さ れていくことになる. 今日ではシリカばかりでなく,ビスマス,テルライ ト,リン酸系の低損失光ファイバが開発され,高効率 な励起用半導体レーザ,小型アイソレータなどの豊富 な光部品とあいまって,様々なEDFAが実現されて いる.更には高出力半導体レーザとダブルクラッド 励起を用いて,波長1.1μmのYb(イッテリビウム) 添加のファイバレーザやYDFA(Ytterbium-doped Fiber Amplifier)ではその出力がkWにも達する報 告[17], [18]もあり,EDFAばかりでなく他の波長帯 でも大きな進展が報告されている. 図1に近年の光ファイバ増幅器の開発状況について それらの種類と動作波長域を中心に示す.光ファイバ 増幅器で中心となるのは波長1.5μm帯のEDFAで あるが,シリカをホストとし,その高効率化のために Yb3+,Al2O3,P2O5 等を共添加したEDFAが開発 されている.その他にも,フッ化物系[19],テルライ ト系[20],ビスマス系[21]などのホスト(ガラスマト リックス)を用いたEDFAも開発されている.これら はシリカ系EDFAにはない短尺,広帯域,高利得な どの特徴をもっている.様々な波長に増幅域をもつの はTm(ツリウム)元素であり,0.7,1.4,1.6μm帯 で高い利得が得られている[22].GaAs系の半導体が 図 1 各種光ファイバ増幅器とその動作波長域 Fig. 1 Various optical amplifiers and their operation

wavelengths.

利用できる0.8μm帯では,0.98μmの2光子吸収励 起を用いたEDFFA(Erbium-doped Fluoride Fiber Amplifier)が開発されているが,増幅帯域は3 nmと

狭い[23].また,1μm帯には帯域が狭いが増幅度の高

いNDFA(Neodymium-doped Fiber Amplifier)や

波長域が広いYDFAがあり,高出力ファイバレーザの

分野を担っている.波長1.3μm帯ではフッ化物ファイ

バにPr3+ を添加することにより増幅器が実現してお

り,PDFA(Praceodymium-doped Fiber Amplifier) と呼ばれている[24]. ここで波長1.5μmのEDFAの研究推移を三つの世 代に分けて概観してみよう.まず第1世代では,図1 にも示したようにEDFAの中心的な増幅帯である 1.55μm帯(いわゆるCバンド)からスタートして, その後シリカEDFへの高濃度Al共添加[25],利得平 たん化用イコライザの設置,並びにP共添加などによ り1540∼1560 nm域における利得平たん化が実現さ れた. 第2世代では,EDFのホストガラスを石英系から フッ化物ガラスに変更したエルビウム添加フッ化物系 ファイバ(EDFF)[26]を増幅媒体に用いる方法によ り,1530∼1560 nmの利得平たん化が達成された.更 にEDFAの第2の増幅域(Lバンド)1.58∼1.61μm 帯を有効に活用し,1.58μm帯利得平たん型EDFAと 1.55μm帯利得平たん型EDFAとを並列接続する方 法,Er3+/P 2O5 添加ファイバ増幅器とラマン増幅器 を直列接続する方法[27],EDF長の最適化あるいはエ ルビウム添加テルライトファイバを用いることにより 1.55μm帯と1.58μm帯を1台のEDFAで一括増幅 する[28]など,特性改善が進められた. 第3世代では,いっそうの広帯域化を目指し,1.48∼ 1.52μmのSバンド増幅器が短尺ファイバと利得等 化 フィル タ を 複 数 台 利 用 し て 実 現 さ れ て い る[29]. 更 に ,EDFAで は カ バ ー で き な い 波 長 域 で 増 幅 可 能な 1.45μm帯Tm3+ 添加ファイバ増幅器TDFA

(Thulium-doped Fiber Amplifier)並びに1.52μm 帯ラマン増幅器等を組み合わせる方法も提案されてい る.ここに至ってS+C+Lバンドの超広帯域光増幅が 実現されたといってよい[30].最近では誘電体のナノ 粒子やシリコンナノ結晶を用いることでエルビウムイ オンを高濃度にかつ均一に添加する方法などが研究さ れているが,これに関しては6.7.において述べる. 以上のような変遷の中で,今まで開拓されてきた 光ファイバ増幅器の応用分野を図2に示す.光通信の

(4)

図 2 光ファイバ増幅器の応用分野 Fig. 2 Application fields of optical fiber amplifiers.

分野では,WDM伝送及びそれを用いたフォトニック ネットワーク,超高速伝送,コヒーレント多値伝送, CATVを含むFTTH等へ広帯域・高出力EDFAが利 用されている.レーザ分野では,計測・通信・溶接など への応用を目指して,GHz帯のピコ秒レーザ,MHz 帯フェムト秒レーザ,単一周波数レーザ,CW高出力 ファイバレーザなどがある.また,光信号処理や非線 形光学応用については光信号のSNの確保のために低 雑音EDFAが不可欠である.更に誘導ラマン散乱な どは,最近,EDFAと組み合わせた広帯域大容量通 信[3], [27]に利用されている.

3.

希土類添加ファイバの基礎

本章では希土類添加ファイバの特徴,作製方法,ファ イバ構造などの基本技術について述べる. 3. 1 希土類添加ファイバの特徴 希土類の3価のイオンを活性物質としたレーザガ ラスは,波長2μm以下の様々な波長で遷移線を有す る.ガラス中の希土類元素はYAGまたはYLF等の 結晶の場合と異なり,複雑な結晶場の影響を受けて微 細構造をもたない幅広い準位を示すため,幅広い波 長域にわたって光増幅が可能となる.特徴的な物質は Er3+Nd3+Pr3+,及びYb3+イオンであり,それ らのエネルギー準位を図3に示す.特に重要なエルビ ウムイオンに関しては励起レーザと励起準位の関係も 併せて記載した.Er3+イオンの場合,1.531.55μm (4I13/2-4I 15/2)の遷移線がちょうど光通信の最低損失 波長帯に合致している.励起光源については1.48μm 帯はInGaAsP系[1],0.98μm帯はInGaAs系のひず み超格子構造を用いたもの[31],0.80∼0.82μm帯は GaAlAs系のレーザ[32]が用いられている. 図4にエルビウムイオンの波長1.5μm帯での光吸 図 3 Er3+,Nd3+,Pr3+及び Yb3+イオンのエネル ギー準位図

Fig. 3 Energy levels of Er3+, Nd3+, Pr3+, and Yb3+ ions.

図 4 Er3+イオンの吸収・誘導放出断面積及び ESA 断 面積

Fig. 4 Absorption and stimulated emission cross sec-tions and ESA (Excited State Absorption) cross section of Er3+ion.

収と誘導放出の衝突断面積の波長依存性を示す.波長 1.48μmの擬似2準位的な励起が可能なのは1.45∼ 1.51μmで反転分布を起こすだけの吸収が存在するこ とであり,励起波長と信号光波長が近いために量子効 率が高く,かつファイバ中でのモード径がマッチした 増幅が可能になっている.1.38μmのOH吸収を少な くすることにより1.48μm帯でのエルビウムへの効率 の良い吸収が実現していることも重要である. Nd3+イオンには4準位を構成する波長1.06μm (4F 3/2-4I11/2)と3準位である0.91μm(4F3/2-4I9/2) の 遷 移 線 が あ る .Nd3+ファイ バ に は0.9μm帯 と 1.1μm帯の光増幅作用のほかに,4F3/2-4I 13/2の間の 波長1.3μm帯遷移もある.Nd3+を添加したフッ化物 系ファイバZBLANなどでは,1.3μmで10 dB以上の 利得と高い飽和出力が報告されているものの[33],シ

(5)

Ab-sorption)のため波長1.32μmの利得は小さい. Pr3+イオンにおいては,1.0μm帯の光によって基 底状態 3H4 準位から 1G4 準位まで光励起が行わ れ,1G4 準位から3H5 準位への誘導放出遷移により 1.3μm帯の光増幅が得られる[24], [34].また図より Nd3+Pr3+イオンは1.3μm帯の遷移は4準位動作 をすることが分かる.したがって,信号波長帯に基底 吸収が存在しないため増幅媒質の長さは長いほどよ い,利得のしきい値が存在しない,等の特徴を有して いる.Yb3+ 4F 5/2 と4F7/2の間の擬似2準位を 構成するが,Er3+1.48μm励起と同様に4F 5/2準 位のボルツマン分布の上準位部分を励起することによ り,3準位系の1μm帯高出力レーザ・増幅器となって いる[17], [18]. エルビウムの励起に伴う利得の波長依存性を図5に 示す[35].D = −1は励起光がない状態での利得係数, またD = +1 は完全に励起が実現した場合でのそれ を示す.励起とともに利得係数が負から正になり,波 長1.54μmを谷として双峰的なピークが見られるよう になる.これは吸収断面積と誘導放出断面積の波長依 存性に起因している.エルビウム添加シリカファイバ の場合,コアにAl2O3 やP2O5 などを共添加化する ことで増幅帯域を変化させることができる.その共添 加による蛍光特性の変化を図6に示す[36].一般に線 幅を広げる(帯域を広げる)にはAl2O3 を添加する のが一番良い.Geの濃度に対してAlを増加させてい くと,まず1.54μm近傍の利得のへこみが埋まり,更 に増量していくと短波長及び長波長側の利得が増大し て広帯域化される.この効果を利用して,前述したよ うに1540∼1560 nm(Cバンド)の利得特性が平たん 化されたEDFAが実現されている.また,P2O5 を 添加すると短波長側の利得が抑えられ長波長側の利得 が大きくなることも知られている.この効果を用いて P2O5 添加のEDFAとラマン増幅を組み合わせて長 波長帯のEDFAが提案され,20 Tbit/sのWDM伝 送が報告されている[27]. Al2O3 やP2O5などの共添加は,Er3+等の添加濃 度が高くなると局所的に起こるclusteringも防ぐこと ができる[37].これは共添加元素がエルビウムイオン の周りに集まって殻を形成し,エルビウムをガラス構 造の中にうまく取り込むことができるようになるため といわれている.またYb3+ にも同様な効果がある. これはYb3+ がEr3+ と同程度のイオン半径をもつ ためEr3+のかわりにクラスタの中に入り,この結果 図 5 異なる反転分布条件に対する信号利得の波長依存性 Fig. 5 Wavelength dependence of gain coefficient under

various population inversion conditions.

図 6 Al2O3,GeO2 及び P2O5を共添加したシリカガ ラスに対する Er3+イオンの 1.5µm 遷移の発光ス

ペクトルの変化

Fig. 6 1.5µm band fluorescence changes of Er3+ion in silica glass due to co-doping of Al2O3, GeO2, and P2O5. Er3+ 一つに対して複数のYb3+がペアとなった状態 が形成されやすくなる.これによりEr3+ 同士を遠ざ けることができるため,Er3+の濃度消光を抑えるこ とができる. 3. 2 エルビウム添加光ファイバの製作

エルビウム添加ファイバは主にVAD(Vapor Axial

Deposition)法,またはMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法を用いて分子スタッフィング法 あるいは液浸法と呼ばれる添加法により作製されてい る[38], [39].この方法は,蒸気圧が高いErを極めて 容易に石英ガラス中に添加することができ,かつ添加

(6)

濃度の均一性が高い,制御性に優れる,共添加が可能 である,等の特長がある.希土類の原料としては,塩 化物,フッ化物などハロゲン化物を使用するのが一般 的である.例えば,塩化物では900∼1200Cの温度に おいて,0.1∼10 mmHgの蒸気圧を有するため,石英 系ガラスファイバの制作温度範囲と合致している.し かし,希土類の酸化物については,2500C以上の融 点をもつため気相での原料輸送ができないだけでなく, マトリックスガラスとの相溶性がよくないので,それ らの使用は難しい. 3. 2. 1 VAD法    VAD法では,SiO2 スート(ガラス微粒子),ある いはGeO2,P2O5を添加したコアスートを作製する. このコアスートにEr塩化物,更に特性改良のために 各種塩化物(共添加剤)を加えたアルコール溶液を含 浸させた後,空気中で乾燥させて塩化物を沈着させる. He-Cl雰囲気で燒結を行い,Erコアロッドが得られ る.更に,スート法,あるいはロッドインチューブ法に よりクラッド部を作製して母材化は完了する.ファイ バ化は通常の線引条件で行われる.ErCl3 アルコール 溶液濃度とコアロッド中のEr添加量の相関は線形で あり,添加量の正確な制御が可能である[2], [38], [39]. 気相法により,希土類化合物をVADのスートに入れ る方法もある.この方法では希土類ハロゲン化物の昇 華量を制御しながらスートの粒子の間げきに原料を拡 散させ,次いで,加熱炉温度を上げて透明ガラス化す る.VAD法は種々の屈折率分布をもつ母材の制作が可 能であり,かつ大型化が容易である.偏波保持型,分 散シフト型等の特長をもつEr添加ファイバあるいは アクティブ光線路を目指した低濃度Er3+添加長尺光 ファイバ増幅ファイバ(線路)も既に開発されている. 3. 2. 2 MCVD法 気相法による希土類ファイバ作製では,まずガラ スの堆積前に希土類原料を適正温度で加熱して完全 に結晶水を除去する.次に,クラッドガラスを通常の MCVD法と全く同じプロセスで堆積させる.コアガ ラスについては,やや低めの堆積温度を設定すること により透明ガラスではなくガラス微粒子を堆積させ る.この状態でいったんプロセスを中断し,次に,第 2バーナの温度を上げて希土類原材料を昇華させ,コ アガラス微粒子のすき間を通じて,添加を行う.十分 にコアを脱水した後,温度を上げて透明ガラス化す る.最後に出発石英ガラス管全体をコラプスし,プリ フォームを完成させる. 液 侵 法 の 場 合 に は ,パ イ プ を 準 備 し て ,そ の 内 側にSiO2/P2O5/F組成のクラッドガラス層を合成 し,引き続いて,合成温度を下げてSiO2,あるいは SiO2/GeO2/P2O5 コアスート層に作製する.この石 英パイプを希土類元素の塩化物,また屈折率差を与え る塩化物を含む水溶液に浸漬し,塩化物をコアスート 層に含浸させる.含浸を完了させた後,アセトンで洗 浄して余剰水分を除去し,その後,Cl2/H2/O2 雰囲 気で脱水–燒結–コラプス工程を経て希土類元素添加母 材が得られる. 3. 2. 3 ロッドインチューブ法及びキャスティング法 希土類元素を含んだ軟化温度の低い多成分ガラスを 準備し,これを厚肉石英管に挿入して線引きする.い わゆるロッドインチューブ法により希土類元素添加ファ イバを作製することができる.フッ化物ガラスファイ バへのErの添加も可能であり,キャスティング法と 呼ばれる方法が用いられている[2], [39].フッ化物ファ イバへの希土類の添加は,石英系ガラスなどをホスト としたのでは得られない波長での増幅を実現するため である.例えば,Nd3+イオンを添加した石英ガラス中 では1.30μm付近での増幅は困難であるが,ZBLAN 系ガラスにNdを添加することにより1.32μmでの増 幅を実現している. 3. 3 エルビウム添加ファイバ(EDF)の構造 3. 2で述べたように,VAD法やMCVD法によりエ ルビウム添加ファイバ(EDF)は作製されるが,Er3+ イオンはコア部分に添加されている.大きな利得を得 るためには励起光の横モード分布と信号光のそれとが できるだけ一致するように設定することが望ましい. その意味で1.48μm帯励起法は1.53∼1.55μmでの モードフィールドがほぼ一致するため,優れた励起特 性を示す.0.98μm帯励起の場合には,モードのミス マッチは大きいものの吸収係数が1.48μm帯に比べて 約2倍程度大きいため,大きな利得係数を得ることが できる. 高効率な励起を実現する上でもう一つ重要な点は, 励起光の強度分布とEr3+イオンの径方向の分布であ る.Er3+イオンは3準位系であるため励起が弱いと ころでは信号光に対して吸収媒質となる.したがっ て,もし励起光の裾野のパワーの弱い部分にEr3+ オンが存在する場合,信号光は吸収されてしまい増幅 度が高くできない.重要な点は,励起パワー密度が高 いフィールドの中心部にのみEr3+イオンを入れるこ とである.すなわち,コアの中心部のみにエルビウム

(7)

を添加することが重要である.これは1%を超す高い 比屈折率差でかつ小さいコア径にエルビウムを添加す る方法,いわゆる二重コア法等によって実現されてい る[2], [38], [39].

4.

各種光増幅器の比較とエルビウム添加

光ファイバ増幅器の特徴

光増幅器は反転分布媒質からの誘導放出を用いる レーザ増幅器と,ラマン散乱,ブリルアン散乱などの 非線形光学効果による誘導散乱に基づく増幅器に分別 される.光増幅器の一般的な種類と特徴の比較を表1 に示す.レーザ増幅器には,ここで取り扱う希土類添加 ファイバ増幅器と半導体増幅媒質を用いる半導体レー ザ増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier) の二つがあり,前者は光励起により,また後者は注入 電流励起により光増幅器として動作させることができ る.レーザ発振器から増幅作用だけを抜き出して高利 得な光増幅を実現するためには,端面反射の除去,光 アイソレータの挿入,ASE(Amplified Spontaneous Emission)の除去等が重要である.非線形光学効果に よる増幅の特徴は,相互作用長を1 km以上にするこ とにより,単位長さ当りの利得は小さいものの全体と して高利得を実現している点である.光ファイバ中の 非線形光学効果による光増幅については詳しくは文 献[40]を参照されたい. 様々な用途が考えられる光増幅器が備えるべき特徴 としては (1) 十分大きな小信号利得 (2) 広い利得帯域 (3) 利得の偏波無依存性 (4) 大きな出力(利得が飽和しにくい) (5) 小さな雑音指数 などが挙げられる.EDFAは40 dB以上の小信号利 得,100 nm以上の広い利得帯域,利得の偏波無依存 性,1 W以上の高出力,3∼5 dBの低雑音指数など, 上記の要求条件をすべて満たしている.加えて,伝送 用光ファイバとほとんど無損失で接続できる,チャネ ル間のクロストークが小さい,温度変化に対して利得 が安定であるなどの特長も有している. 誘導放出を利用する光増幅器には3準位系の増幅器 と4準位系の増幅器がある.ここでは表2に示すよ うに3準位系と4準位系の光増幅の相異点を述べる. Er3+イオンの1.5μm帯での増幅は4I 13/2の上準位か ら4I15/2の基底状態への誘導放出であり,3準位系を 表 1 光増幅器の種類と特徴

Table 1 Various kinds of optical amplifiers and their characteristics.

表 2 3準位系と 4 準位系の光増幅の相違点 Table 2 Comparison of light amplification between

3-level and 4-level materials.

構成している.すなわち終準位が基底状態であり,こ のため基底吸収(Ground State Absorption)が存在 するため,励起が弱い場合には信号光は吸収されてし まう.これを超えて,正味の誘導放出を発生させるた めにはある程度の励起パワーが必要となってくる.そ して,この信号光が減衰しない(透明な条件の)励起 パワーのことを励起しきい値(Pump Threshold)と 呼んでいる.一方,4準位系では終準位が中間準位に あるため基底吸収がない. もう一つ両者の著しい相違点は,利得の飽和強度

(8)

Isat にある.3準位系の場合,表に示したように,励 起強度Wpが小さいときは4準位系同様Isat が信号 光のCross sectionσsと寿命τs とによって決定され るが,励起が強くなると励起に比例してIsat が大き くなる点である.すなわち4準位系では材料が決定さ れればIsat は一義的に決まるが,3準位系では励起パ ワーの関数となる.このため,エルビウム添加光増幅 器の励起パワーを増加すると,それに応じて(飽和) 出力が増大する重要な特徴をもっている.このことは パワー増幅が可能であることを示しており,WDM伝 送はこの効果によって実現されているのである. エルビウムイオンの4I13/2-4I15/2の1.5μm帯の放 射についてはほとんどのガラス中で非発光の緩和率は 1 [s−1]以下と非常に小さいため,効率の良い発光を する.4I 13/2 の自然放出率は100 [s−1]程度なので多 重フォノンによる発光効率の劣化はほとんどない.一 方,一つ上の準位間4I11/2-4I13/2での発光効率はホス ト材料に大きく依存している.4I11/2の自然放出率は 90 [s−1]程度であり,非発光緩和率が10000 [s−1]を超 えるリン酸塩ガラスやケイ酸塩ガラスなどのガラス中 では,4I11/2準位に励起されたEr3+イオンは,ほとん ど多重フォノン放出により非発光緩和して4I13/2の状 態に移る.これに対してフッ化物ガラス中でのEr3+イ オンは非発光緩和率が自然放出率と同程度と低いため, 発光の割合が高い.フッ化物ファイバ中の希土類イオ ンがよく発光するのは,シリカファイバ中より非発光 緩和率が小さいことに起因している.

5.

エ ル ビ ウ ム 添 加 光 ファイ バ 増 幅 器

EDFA

本章では,EDFAの構成とその基本的な増幅特性に ついて述べる. 5. 1 EDFAの構成 EDFAの構成を図7に示す.EDFAは励起用半導 体レーザ光源,ファイバカプラ,無偏波型アイソレー タ,Er添加シリカファイバ,狭帯域光フィルタの五つ の主要な光部品から構成されている.励起光源は波長 1.48,0.98,0.82μm等の半導体レーザが用いられて いる.信号光と励起光を重ね合わせるのには,ファイ バカプラ若しくは誘電体多層膜型のミラーが利用さ れる.励起光が1.48μm帯,信号光が1.53μmの場 合,両者の波長差が少ないためファイバカプラの結合 長を長くする必要があるが,結合効率が95%以上の ものが実現されている.一方,0.98μm/1.53 μm及び 図 7 エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)の構成図 Fig. 7 Configuration of Erbium-Doped Fiber Amplifier

(EDFA). 0.8μm/1.53 μmのカプラは結合長は短いが,両者の ファイバのカットオフ波長の選択によって単一モード 条件が異なるため,ファイバの選択及び延伸に工夫が 必要とされる. 無偏波型の光アイソレータはEDFAにおいて大変 重要な役割を果たしている.光ファイバの中のEr3+ イオンはガラスという非晶質媒質に溶け込んでいるた め,もともとその蛍光特性,増幅特性に偏波依存性が ない.前章で述べたように,半導体による光増幅では TEとTMのモード間による偏波依存性を除去するた めにいろいろな工夫を必要とするのに対し,エルビウ ムファイバでの増幅は偏波無依存であることに注目し たい.この性質を生かすため,無偏波型のアイソレー タ(常光と異常光とを空間的に分離して同一YIG中 を伝搬させ,出口において逆に両者を重ね合わせて出 力とする)を利用することにより,あらゆる偏波に対 して同一の利得を得ることができている.光伝送では 信号光の偏波が時間とともに変化するが,その変化に 対して同じ利得が得られることはシステムへの応用上 極めて重要である.この特長によりシステムが複雑に ならずに実用化されたといえる.このアイソレータは, 発振を抑えるばかりでなく,ASEのフィードバックを 除去することにより信号光の利得を増加させる役目も ある.すなわち,ASEがフィードバックすると不必要 な波長域でのSuper Luminescent的な発光が顕著と なるため,40 dB以上の高利得を得ようとする場合, 出力段(エルビウムファイバと光フィルタ若しくは出 力ポートと光フィルタの間)にもアイソレータを挿入 しなければならない.このようにして46.5 dBの利得 が実現されている[41]. 狭帯域の帯域フィルタをエルビウムファイバの後に 入れることも重要である.これにより,ASEをカッ

(9)

トして信号光に対する雑音成分の比率を小さくするこ とができる.通常1∼3 nmのフィルタを用いるが,こ のEDFAを複数個用いて多中継伝送する場合,信号 光のみを通過させるようなフィルタを挿入することに よりASEの増幅を抑制することができる.信号光は 図7に示すように入力ポートからWDMファイバカ プラ,光アイソレータを経てエルビウムファイバに導 かれる.増幅された信号は光フィルタを経て出力ポー トより出力される. エルビウムの添加濃度は用途にもよるが,一般的な 増幅器では100∼1000 ppm程度,Alを共添加して濃 度消光を抑えた5000 ppm程度の濃度のものが開発さ れている.このような高濃度のファイバでは長さ1 m 程度でも20 dB以上の利得を得ることができるため, 共振器長をできるだけ短くするようなファイバレーザ に用いられている. SOAのような光増幅器では,光信号の伝搬方向に 沿って,反転分布が一様に形成されているとみなして よい.しかし,EDFAの場合には励起光が軸方向に伝 搬することにより反転分布を形成するために,反転分 布の大きさが,励起光の吸収とともに伝搬方向に沿っ て変化する[42].このために,信号光を順方向入射す るか逆方向入射するかにより雑音の発生量が異なるこ と,飽和パラメータが長手方向に変化することなどの 特徴が現れる.例えば,エルビウムファイバが長い場 合には,後方励起は前方励起に比べて雑音指数は劣化 する.これは信号光の入射端近傍では後方からの励起 光が減少しているので十分な励起が行えないためであ る.このため,後方励起はプリアンプとしてよりもパ ワーアンプとしてよく利用されている.一方,前方励 起では微弱な信号光が反転分布の高い媒質で効率良く 増幅されるために雑音指数は低い.このため,出力は 小さいがプリアンプとして利用されている.両方向励 起を用いると,エルビウムファイバの全長にわたって 効率良く励起できるため,雑音指数も低くかつ高出力 のEDFAが実現している.これらの特徴はレート方 程式により詳しく解析されている[43]. 5. 2 0.98 µm及び1.48 µm励起のEDFAの増 幅特性の比較 シリカファイバ中のエルビウムイオンの0.98μm帯 励起は吸収係数が大きくまたESAも起こらないため 効率が良い.0.98μmを中心にして,0.975∼0.985μm の3∼5 nmが効率の良い励起波長帯となる.この帯域 は1.48μm帯の励起波長域に比べて有効波長域が狭く, 図 8 0.98µm 及び 1.48 µm 励起による高効率 EDFA

Fig. 8 Highly efficient EDFAs at 0.98µm and

1.48µm pumpings.

しかも長・短波長の両域で急激に利得が減少してしま

う[2].このため励起半導体レーザの波長選択の自由度

は小さくなるが,FBG(Fiber Bragg Grating)を用 いて発振光の再注入により励起波長を安定化する方法 が開発されている[44].図8 (a)に高NA(Numerical Aperture:開口数)ファイバの増幅度の励起入力依 存特性の一例を示す.このファイバの比屈折率差は 1.67%,モードフィールド径は4.8μm,Er添加濃度は 210 ppmである.ファイバ長30 m,励起パワー9 mW で39 dBの増幅度が得られ,ファイバ長が10∼23 m の場合,利得効率も10.2 dB/mWと高い値が得られて いる[45].0.98μm励起の雑音特性は雑音指数(Noise Figure:NF)が3.4 dB以下とほぼ量子限界に近い値 が得られており[46], [47],前置増幅器としてよく利用 されている. 1.48μm帯における最適励起波長は1.475μm付近 であるが,1.450∼1.485μmの広い波長域において 高い利得が得られる[48], [49].それゆえ,ファブリペ ロー型の縦多モード発振(スペクトル幅がおおよそ 20 nm)するInGaAsP半導体レーザを用いて効率の 良い励起が可能となる[1].前述の高NAファイバの 増幅度と励起入力の関係を図8 (b)に示す.ファイバ 長90 mのとき,励起パワー9 mWで33 dB,利得係 数5.1 dB/mWが得られている[45].0.98μmと比べ ると吸収係数が小さいために,必要なファイバは長く なる.1.48μm帯励起の雑音指数は4∼5 dBであり, 0.98μmと比較すると1∼2 dB劣化する[46], [50]. この状況を図9で説明しよう.1.48μm帯励起にお ける雑音指数の増加はこの励起が擬似2準位的に起こ

(10)

図 9 0.98及び 1.48µm 励起における反転分布形成の比較と雑音指数の推定

Fig. 9 Comparison of population inversion mechanism in 0.98µm and 1.48 µm

pumpings and their noise figure estimations.

ることに由来する.0.98μm励起のN3は4I11/2準位 であり,最大の励起となって励起パワーがTransparent になるのはN3=N1= 0の条件である.したがって, 励起分布パラメータμμ = 1となりNF = 3 dB の雑音指数となる.一方,1.48μm帯励起では,誘 導放出の上準位 4I13/2 の高エネルギー側のエネル ギー準位 EU(NU の分布をもつ)にEr3+イオンを 励起させる.しかし,この準位でのシュタルクレベル の分布はボルツマン分布をしている.そのため,誘 導放出の起こる準位 EL での分布を NL とすると, NU =NLexp(−ΔE/kT ) = 0.38NL の関係で結ば れている.前と同様に励起のTransparentな条件は NU=N1であるから,μ = NL/(NL−N1) = 1.61と なる.したがって,NFは5.1 dB程度となり,0.98μm に比べると2 dB程度悪い.しかしながら,SOAで得ら れている8∼10 dBの雑音指数よりも小さく,1.48μm 励起EDFAが低雑音光増幅器であることを示してい る.多中継光伝送のようにたくさんの光増幅器を用い る場合には,雑音指数が小さいことが大きな利点と なる. 最近では0.98μm及び1.48μmを併用した低雑音・ 高出力EDFAがよく利用されている.これはパワー 増幅を必要とするWDM伝送には不可欠であり,前段 には低雑音増幅が可能な0.98μm励起EDFAを,ま た後段には量子効率の高いパワーアンプ型の1.48μm 励起EDFAを用いて1台のEDFAとしている. 5. 3 EDFAの利得帯域の等化 最近のEDFAでは,増幅スペクトルの波長依存性 を補正する光フィルタ(利得等化器)を出力端に装備 することにより,その利得平たん性を向上させている. この技術は,EDFAを用いて多中継伝送をする場合, わずかな利得の波長依存性が長距離伝送後には大きく なって,信号チャネル間の伝送品質が劣化することを 防いでいる.当初,1540∼1560 nm帯の利得平たん化 (Er3+ 添加ファイバの有する二つの利得ピークの一

方)については,PLC(Planer Lightwave Circuit) 型マッハツェンダ[51],Split-beam Fourier型フィル タ[52],音響光学フィルタ[53]等の利得等化器を用い て改善された.その後,利得等化器の高性能化が進め られ,1525∼1535 nm帯及び1540∼1560 nm帯に存 在する二つの利得ピークを平たん化するための複雑な 透過特性が長周期グレーティング[54],複数のファブ リペローエタロンからなるバルク型フィルタ及び多段 型音響光学フィルタ[55]により実現されている.これ により,1530∼1564 nm帯で利得平たん度が0.8 dB 以下の利得平たん型EDFAが実現されている. 5. 4 Lバンド(長波長)帯EDFA及びSバンド (短波長)帯EDFAの実現 波長1530 nm以上の波長帯では図5に示したよう に誘導放出断面積が吸収断面積より大きいために有効 な反転分布が形成され,1560 nm付近までは比較的利 得が平たんである.しかし,波長がそれより長くなる と,利得係数の波長依存性が大きくなるとともに,利 得係数が小さくなってしまう.そこで利得特性が劣化 する長波長帯増幅(Lバンド)では,Al2O3 を共添加 し,更にエルビウムファイバ長を長くして短波長の利 得を抑制しながら,長波長帯の利得を大きくする方法 がよく用いられている.この方法により,エルビウム 濃度1300 ppm長さ150 mの条件で,波長1610 nm あたりでも10 dB以上の利得が得られている. 一方,1480∼1520 nmの短波長帯(Sバンド)では, エルビウムファイバ長を短尺にして何段も強励起す

(11)

図 10 Al共添加 Er3+添加石英系ファイバ増幅器と Er3+添加フッ化物ファイバ増幅器 の増幅特性比較

Fig. 10 Comparison of amplification characteristics between Al-codoped Erbium-doped silica amplifier (EDFA) and Erbium-Erbium-doped fluoride fiber amplifier (EDFFA). ることにより,比較的平たんな利得特性を得ること ができる.図5から分かるように,短波長側では吸 収断面積と誘導放出断面積の波長依存性が大きいた め,利得係数の波長依存性が大きい.また,この波長 依存性は長波長帯よりも大きく,励起が弱い場合には 吸収が強く有効な利得が得られない.そこで高効率 化するために強励起を行い,更に吸収を抑えるため に短尺なエルビウムファイバを複数回用いるような 手法がとられている.Onoらは九つの光増幅部,八 つのASE抑制フィルタ,二つの利得等化器を用いて, 利得が20 dBで1490∼1520 nmの波長範囲で利得フ ラットなEDFAを実現している[56].最近では1台 の1450 nm励起EDFAをダブルパス構造にして用い ることで,10∼28 dB利得を1500∼1520 nmの波長 帯で得ている[57]. 5. 5 EDFAの高出力化 3準位系の性質から,希土類イオンがすべて励起さ れるまでは励起パワーが強いほど出力が大きくなる. しかし,励起光のファイバへの結合が問題となる.そ こでよく用いられているのが二重クラッド希土類添加 ファイバである.二重クラッド型エルビウムファイバ では第1クラッドを励起光用のコアとして,励起光を 伝搬させる[58].その励起光の中心にはエルビウム, ネオジムあるいはイッテリビウムなどが添加された単 一モードのコアが存在し,励起光はそのコアによって 吸収される.第1クラッドがない場合は励起光が効率 良くコアの周りを伝搬しないが,このクラッドがある ことによって効率的な励起が可能となる.この方法で は比較的断面積が広い第1クラッドに励起光が効率良 く結合できるため励起パワーが増加する.このため, 単一活性層の半導体レーザに比べて高出力特性を有す るアレー型半導体レーザを利用できる利点がある. EDFAの更なる高出力化の方法として,Yb3+を増 感材として共添加する方法もよく用いられている.これ は図3からも分かるように,Yb3+の0.98μmの吸収 帯(4F5/2)とEr3+の0.98μmの吸収帯(4I11/2)とが 一致することから,励起エネルギーのYb3+からEr3+ のエネルギー伝達を使って1.55μm帯の増幅に変換す る方法である.これは増感作用と呼ばれ,Yb3+の吸収 帯が広いので同じ0.98μm帯の増幅でも各種の高出力 励起が利用できる特長がある.最近の高出力EDFAに はその出力が100 W近いものも報告されている[59]. また,Yb3+ の吸収帯は7001100 nmと広いため, 短波長側の吸収波長,例えば0.98μmの半導体レーザ を励起に使うことにより,波長1.07μmの光増幅器並 びに高出力ファイバレーザも実現されている[17], [18]. 5. 6 エルビウム添加フッ化物光ファイバ増幅器 (EDFFA) エルビウム添加フッ化物ファイバは,1530∼1560 nm の信号波長域で利得変化が少ないことから,WDM信 号(1532∼1560 nm)が一様に増幅できる(利得偏差 1.5 dB以下)利得平たん型エルビウム添加フッ化物 ファイバ増幅器(EDFFA)として開発されている[26]. 図10に1.48μm励起EDFFAとAl共添加EDFAの 増幅特性の比較をそれぞれ(a)と(b)に示す.EDFFA はEDFAに比べ,1530∼1560 nmの広い信号波長域で 利得変動が小さいということが分かる.当初,EDFFA では励起光ESA(4I11/2 から4F7/2への遷移)のた

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図 11 0.98µm/EDFA 及び 1.48 µm/フッ化物 EDFA を用いたハイブリッド型 Er3+

添加ファイバ増幅器の構成

Fig. 11 Configuration of hybrid EDFA with 0.98µm/silica EDFA and 1.48µm/fluoride EDFA. め,0.98μm励起が効率良く利用できないという課題 があったが,4I 11/2の0.97μm励起[60]により解決し ている.0.97μm励起を用いると,4I11/2 準位に励起 されたEr3+イオンはESA過程で4F7/2 準位へ再励 起され,その後増幅始準位である4I13/2準位に無ふく 射緩和される.このため,4I13/2準位と4I15/2準位間 の反転分布が形成され,低雑音増幅が実現できている. 一方,通常の0.98μm帯励起では,Er3+ 添加フッ化 物ファイバの 4I11/2 準位の蛍光寿命が長い.そのた め,その準位に励起されたEr3+イオンは0.98μm励 起光による誘導放出で4I11/2 準位から4I15/2 準位に 緩和される.よって,効率の良い反転分布が形成され ず,低雑音増幅は難しい. 1.48μm 励 起EDFFA と そ のEDFFAの 前 段 に 0.98μm帯励起のEDFAを配置するハイブリッド構成 により,低雑音で広帯域・利得平たん特性を有する増幅 器が実現されている.図11にハイブリッド型EDFFA の構成を示す[61].

6.

最近の光ファイバ増幅器の研究展開

図1に示したように,波長1.5μm帯以外の増幅 波長として1μm帯のYDFA,1.3μm帯のPDFA, 1.45μm帯のTDFA等がある.最近の展開としては, Ce3+を添加したテルライトガラスEDFA [62],ビス マスガラスを用いたBi-EDFA [63],フッ素リン酸系 EDFA [64],PLCを用いた小型集積型EDFA [65],エ アクラッドを用いたクラッド励起型高出力EDFA [66] 等の重要な技術が報告されている.本章ではこれらに ついて述べる. 6. 1 Ce3+を共添加したテルライトガラスEDFA テルライトガラスはエルビウムイオンを添加すると 1.53μm帯において大きな遷移断面積をもち,長波長 側に蛍光断面積がなだらかに変化する.これにより広 図 12 Er3+/Ce3+共添加テルライト EDFA の利得特性 Fig. 12 Gain characteristics of Er3+/Ce3+codoped

tellurite EDFA. 帯域でCバンドからLバンドに及ぶ超広帯域EDFA が実現されている[28].従来のEDFAでは980 nm励 起が有効であったが,テルライトガラスEDFAでは 4I 11/2から4I13/2 へのゆっくりとした遷移時間と,高 い誘導吸収率のためにシリカEDFAのような高い利得 特性は実現できなかった.最近この問題をCe3+イオ ンを共添加することで解決できることが報告され,短 尺・高効率なテルライトEDFAが実現している[62]. これはCe3+イオンの共添加により4I 11/2 から4I13/2 の遷移率を増加させ,発光緩和を抑制(すなわち誘導 放出の抑制)できたためである. 図12にEr3+/Ce3+ 共 添 加 テ ル ラ イ トEDF を 980 nm励起した場合の利得特性を示す[62].用いた テルライト EDFAは長さが22 cm,Er3+イオンが 0.9 × 1020cm−3Ce3+イオンが2.1 × 1020cm−3 濃度で共添加されたものと,同じ長さのEr3+イオンの みが同じ濃度で添加されたテルライトEDFAの特性の 比較を行っている.励起パワーに対する利得特性を見る と,Er3+/Ce3+共添加テルライトEDFAは励起パワー

(13)

の増加に対する利得の上昇率が早く,励起190 mWで は22 dBの利得が得られている.一方,Er3+イオンの み添加したテルライトEDFAでは190 mWの励起で 利得が11 dBであるので,Ce3+イオン添加の効果が 大きいことが分かる.また,NFにおいても従来のテ ルライトEDFAより1 dBほどの改善が図れている. 6. 2 ビスマスガラスを用いたBi-EDFA Bi2O3ガラスをホストとしたEDFAは,濃度消光を 起こさずに高濃度にエルビウムを添加できる,1530∼ 1620 nmという広帯域の増幅が可能である,従来の融 着機によるシリカファイバへの融着可能である,など の特長を有している[67].更に重要な特性として,L バンドへの増幅帯域の拡大,また短尺化ができるため 群速度分散によるパルス広がりの効果が抑えられるな どの効果がある[63]. Lバンドへの増幅帯域拡大の様子(利得とNF)を 図13 (a)に示す[63].Bi-EDFにはLaが共添加され ており,Erの濃度は6500または3250 wt-ppm,La の濃度は4.4 wt%である.そのコア径は6.2μmであ り,コアの屈折率は2.03,またファイバの挿入損は 0.55 dB/mであった.ファイバとしての損失は大きい が,非常に短尺で高利得が得られるため問題にはなら ない.ここで示すように,+20 dBm以上の高い出力パ 図 13 Bi-EDFAの利得と NF の波長特性 (a) 及び Bi-EDWの構成 (b)

Fig. 13 Wavelength dependence of gain and NF of Bi-EDFA (a) and configuration of Bi-EDW (b). ワーが実現できており,入力パワーが−2 dBmのとき 利得は20 dB以上得られている.シリカ系EDFAは 数十mの長さを必要とするため,ピコ秒パルス増幅に は分散補償あるいはゼロ分散EDFAを必要とする場合 がある.しかし,Bi-EDFAは数十cmで10 dB以上 の利得を得ることができるため,短光パルスの増幅に 好適であり,またシリカ系EDFと比較して大きな非 線形耐力がある.今までに,長さ23 cmのBi-EDFA (帯域1520∼1600 nm)を用いて1 psのパルスの増幅 が報告されている. 最近では図13 (b)に示すような超小型エルビウム添 加ビスマス系ガラス導波路型光増幅器(

Multicompo-nent Bismuthate Er-doped Waveguides:Bi-EDW)

も実現されている[68].この導波路はRFマグネトロン スパッタ法,リソグラフィー及びドライエッチング技術 により作製されたもので,導波路コア部のEr添加濃度 は6250 ppm,導波路のΔは1.8%程度が得られてい る.この導波路を1 cm2のパッケージ内にらせん状に 配置し,全長24 cmの導波路型光増幅器を作製した結 果,140 mWの1480 nmポンプ光により双方向励起の 場合,1530∼1565 nmのCバンド全域において15 dB 以上の利得及び8 dB以下の雑音指数が実現されている. 6. 3 フッ素リン酸系EDFA フッ素リン酸ガラスは融点は500Cと低いが,シリ カ系ガラスに比較して非線形感受率が低く,更に濃度 消光を引き起こすことなく高濃度に希土類イオンを添 加できる特長がある.これまでCバンドのエルビウム 添加フッ素リン酸ガラスファイバ光増幅器[69]が報告 されている.しかし,フッ素リン酸ガラスファイバの挿 入損が融着による接続損も含めて12 dB/mと非常に 大きいことから,Lバンド帯域におけるエルビウム添 加フッ素リン酸ガラスファイバ光増幅器(EDFPFA) は実現されていなかった.ところが最近では,これら の欠点を克服したリン酸ガラスEDFA(Er3+添加濃 度が5000 ppm,挿入損が0.7 dB/m)が報告されてお り,低い非線形感受性による4光波混合の低クロス トークが特長となっている[64].作製したエルビウム 添加フッ素リン酸ガラスファイバのコア径は7.6μm であり,DSFとの融着損を1箇所当り0.3 dB/m以下 に低減できたため全体で0.7 dB/mと低損失な特性が 実現されている. 本EDFAに100 GHzの間隔の44チャネルのCW光 (波長1571∼1607 nm)を入力し,出力側で1チャネル を抜き出し,4光波混合(Four Wave Mixing:FWM)

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図 14 エルビウム添加フッ素リン酸系ファイバ増幅器 (EDFPFA)の FWM のクロストークの波長依

存性

Fig. 14 Wavelength dependence of FWM cross-talk of erbium-doped fluorophosphate glass fiber amplifier (EDFPFA). によって生成される信号のクロストークの波長依存性を 図14に示す[64].いずれの増幅器を用いた場合におい ても最も大きなFWM-クロストーク値でFWM信号 が発生している.しかしEDFPFAを用いた場合では, 従来のEDFA(ここではEDSFAと記述)と比較し て,クロストークを10 dB低減することができている. リン酸ガラスファイバEDFAもBi-EDFA同様短尺 で高利得が得られ,更に特長的なこととして数cmの 長さで数ワットのCWパワーを達成することができ る.このためフェムト秒モード同期レーザなどへの応 用に適している.実際に,1%のEr3+イオンと8% Yb3+を共添加した長さ20 cmのリン酸ガラスファイ バを用いて高調波モード同期リングレーザが報告され ている[70].励起は975 nmのLDで行っており,∼ 5 Wの励起パワーで1.1 Wの出力が得られている.繰 返し周波数が7.2 GHzの場合,パルス幅は570 fsであ り,時間バンド幅積は0.336と報告されている.この ように高繰返しのフェムト秒レーザがEDFPFAを用 いて実現できている. 6. 4 PLCを用いた小型集積型EDWA PLC技術を用いたエルビウム添加シリカ系導波路型 増幅器(PLC-EDWA)は,利得20 dB程度のものが 既に報告されている[71].更に最近ではEDFAの小型 化,低コスト化を目的として,アイソレータ,WDM 図 15 PLC-EDWAの概略構成 Fig. 15 Schematic of PLC-EDWA.

カプラ,PD,スプリッタ,可変光減衰器などの光学部 品を集積化したEDWAが報告されている[65].この PLC-EDWAの概略構成を図15に示す.PLCチップ のサイズは31 mm× 83 mmであり,励起光源,EDF コイル,利得平たん化フィルタはPLCの外部にあり, ファイバアレーでPLCと接続されている.導波路間の クロストークは60 dB以下と小さく,PDLは0.4 dB 以下である.PLCの損失に伴い通常の構成に比べて NFが増大するという問題点がある.しかし,この PLC-EDWAの利点である励起光の可変スプリッタ機 構により各EDFの励起を調整することで,NFをむ しろ低減することができている.今後光デバイスの集 積化とあいまって,Bi添加導波路型EDFAも含めて 集積型EDWAが重要な課題となっていこう. 6. 5 エアクラッドを用いたクラッド励起型高出力 EDFA ク ラッド 励 起 エ ル ビ ウ ム 添 加 ファイ バ 光 増 幅 器 (CP-EDFA)は光電力変換効率が高く,コストパフ ォーマンスの良い光増幅器として期待され,最近では 33 dBmの高出力が報告されている[66].CP-EDFA を構成するダブルクラッドファイバは,信号光を伝搬 させるための内側のシングルモードコア部とその外側 に励起光を結合するためのマルチモードコア部より なっている.その励起方式には,ファイバの側面に付 与したV溝より励起光を結合する方式と,空間結合の 波長分割多重器を用いる方式及びマルチモードコア部 に融着接続したテーパファイバを介する方式がある. 更に利得を向上させるためにファイバ構造の改良が いくつか報告されている.一つは,シングルモードコ ア部の周りにリング状の希土類添加部を設けることに より,信号光と希土類元素との重なりを低減させ飽和 利得を増大させる方法である.これにより高い反転分 布を得ることができるため,CバンドEDFAの高出 力化に有効であり,Cバンド全域において33 dBmの

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図 17 偏波保持高出力光増幅器(PM-HPOA)の構成

Fig. 17 Configuration of polarization-maintained high-power optical amplifier (PM-HPOA).

図 16 エアクラッドファイバの断面写真 Fig. 16 Cross section of air-clad fiber.

高出力及び33.1%の高い光電力変換効率を実現してい る.二つ目は,エアクラッド部を設けマルチモードコ ア部のNAを増大させる方法である.これにより,直 径の小さいマルチモードコア部に励起光を閉じ込める ことができるため,シングルモードコア部に高い反転 分布を形成することができる.エアコアクラッドファ イバの一例を図16に示す[66].マルチモードコア部の 直径は52μm,NAは0.5であり,直径5μmのシン グルモードコア部にエルビウムイオンを添加している. 本光増幅器ではCバンドにおいて最大出力33 dBm, 光変換効率21.3%が実現されている. Wysocki ら は49 dBの 利 得 ,13 Wの 出 力 電 力 , 30 dB の 偏 波 消 光 比 ,12.9%の 電 気–光 変 換 効 率 , 42%のスロープ効率を有する偏波保持Er/Yb共添 加クラッド励起光増幅器を実現している[72].その偏 波保持高出力光増幅器(PM-HPOA)の構造を図17 に示す.1台のPM-EDFAと2台のEr/Yb共添加ク ラッド励起光増幅器がカスケード接続されている.長 期運転の信頼性を保持するために計18台の最大5 W 出力可能なマルチモード励起用LDと2台のシングル モード励起用LDを使用し,更にパワーモニタ用の光 カプラ,ポラライザ,アイソレータ,ASEノイズを除 去するために狭帯域フィルタ素子を用いている.

7.

将 来 展 望

ここでは将来展望として,EDFの更なる高性能化に 向けてのナノ粒子を用いる方法[73],ナノクリスタル Siを増感材として用いたシリカ導波路型光増幅器[74], 並びにシリコンにエルビウムを添加したシリコン光増 幅器[75]等の発展性について述べる. フォトニック結晶や量子ドットに代表されるナノ構 造に希土類元素を添加して,効率的な発光やコンパク トで広帯域・高利得な光増幅ができるようになれば, 様々な分野へ応用できる小型能動光デバイスが実現で きる.特に,高い屈折率差の小型PLCや自発光が難 しいSi導波路にナノ構造を利用してエルビウムイオ ンを効率良く閉じ込めて増幅作用をもたせることは, 大変興味深い.ここでは,ナノ粒子の添加とナノクリ スタルSiを増感材として用いたシリカ導波路型光増 幅器並びにエルビウムを添加したシリコンの光増幅器 の可能性について述べる. EDFAの増幅帯域を拡大し利得効率を向上するに は,エルビウムイオンをシリカガラスにいかに均一に そして高濃度に添加するかが大変重要である.しかし, 純シリカは非結合酸素の数が非常に少ないためエルビ ウムが混ざりにくい.またエルビウムを高濃度化する と濃度消光により利得効率が低下してしまう.これら の問題点を解決するためにAl2O3を共添加するが,こ れはAl2O3 が非結合酸素の数を増大させることから エルビウムの分散性が向上するためである. その一方で最近,ナノ粒子を用いることにより,エ ルビウムを均一にかつ高濃度に添加できることが報告 されている.例えばナノ粒子を直接堆積させるDND

(Direct Nanoparticle Deposition)法と呼ばれる方法

がある[73].この方法はガラス粒子を堆積させる段階

(16)

図 18 ナノクリスタル Si を増感材として用いた Er 添加シリカ導波路型光増幅器の構造 Fig. 18 Erbium-doped silica waveguide amplifier with nanocrystal Si as a

sensitizer. などのナノ粒子を同時に添加する.3. 2. 13. 2. 2で 述べたコアスートを作ってから後で添加物を拡散させ る方法とは異なり,この方法ではエルビウムを均一に 添加することができる.更に添加を高速にできるこ とからエルビウムイオン同士のクラスタも形成され ず,高濃度な添加が可能である.実際にDND法でプ リフォームを作製したところ,コア中の添加濃度はそ のばらつきが5%以下と均一に分散されていることが 確認されている.また,エルビウム濃度が異なる4種 類のEDFに対して利得スペクトルを測定したところ, 濃度による違いは見られていない.またDND法によ りエルビウムイオン周辺の結晶場もうまく制御され, 1525∼1610 nmの広帯域にわたるASEスペクトルも 観測されている[73].

誘電体ナノ粒子(DNP:Dielectric Nano Particles) の中にエルビウムイオンを封入して添加することによ り,シリカ系ファイバ増幅器でも利得帯域が拡大でき ることも報告されている[76].このDNP添加ファイバ の作製は,前述したDNDの手法とは異なり,MCVD 法で作製されたプリフォームにおいて,シリケイト とCaOのような2価の金属酸化物が互いの強い非混 和性により相分離を起こすことを利用している.数 mol%のCaOを含むシリケイトガラスを熱すると,シ リカの多い相とCaOの多い相とに自然に分離すると いう性質を用いる.このときCaOの多い層は球状粒 子を形成する.そこで溶液含浸法によりカルシウムに エルビウムを含浸させ,更にGeO2 とP2O5 を加え SiO2 と混合して熱することにより,エルビウムイオ ンをナノ粒子に封入した状態でエルビウムを添加する ことができる.カルシウム濃度が0.1 mol/l以上のと きにDNPが観測されており,DNPの平均的な大き さは100 nm程度である.DNPの有無によるエルビ ウムの発光スペクトルではその帯域が拡大できること が分かっている[76]. また,シリコンナノ結晶(Si-nc)を増感材として用 い,ErとTmを共添加したシリカ導波路型超広帯域 光増幅器も提案されている[74].Si-ncより1.54μm の蛍光が放出される様子及びそれを利用したEr添加 シリカ導波路型光増幅器の構造を図18に示す.Si-nc の吸収断面積はEr3+イオンと比べ4けた大きいため, 安価なLEDを用いた導波路上面からの光励起が行え る.また,Si-ncを用いた励起機構では励起光と希土類 イオンとの共鳴を必要としない.例えばErとTmを 共添加することにより1台の励起LEDにより1.5∼ 1.9μmの超広帯域の光増幅を実現することができる. 直接ErとTmを共添加した場合にはErの蛍光がTm の周波数上方変換(up conversion)を介して吸収さ れてしまう問題点があるが,高効率に両方の蛍光を得 るために,ErとTmを添加したナノ結晶を交互に重 ねた多層フィルム構造が提案されている[74].作製さ れたEr/Tm共添加フィルムの構造と層の厚さに対す る蛍光スペクトルの関係を図19に示す.層の厚みを 増すにつれ,Tmの蛍光強度は一定に保たれたままEr の蛍光強度が増大していく様子が分かる.その結果 1.4∼1.9μmの超広帯域な蛍光スペクトルを得ること に成功している. 最近はシリコンフォトニクスと呼ばれる分野が脚光 を浴びるようになってきており,安価なシリコンで発 光,変調,伝送,受光ができれば新たなる光通信の可能 性もある.特にシリコンは屈折率が高いため導波路に すると小型化が可能であり,電子デバイスとしての機 能と光デバイスの機能を数十ナノに近接して共存させ る新たなる光エレクトロニクスデバイスが実現できる. しかし,シリコンは直接遷移をもたないのでもともと 光りにくい.その中で,シリコンによる発光デバイス の可能性が最初に注目されたのは1985年エルビウム 添加シリコンの1.54μm LEDの報告である[77].そ の後,シリコンのラマン増幅[78]やラマンレーザ[79]

(17)

図 19 Er/Tm共添加フィルムの構造と層の厚さに対する蛍光スペクトルの関係 Fig. 19 Er/Tm co-doped film structure and the effect of the layer thickness on

the luminescence spectra.

図 20 シリカ中の Er と Si-nc の様子 (a) 及び Er-Si-O 結晶の構造 (b)

Fig. 20 Er3+ ion and silicon-nano crystal in silica glass (a) and Er-Si-O super lattice struc-ture (b). の発表もあり,進展が著しい. 希土類添加半導体を光励起し,生成された電子正孔対 の再結合エネルギーで希土類イオンを励起する方法で は,Si [77],GaAs [80],GaN [81]において,それぞれ Er,Eu,Tmからの可視から近赤外までのエレクトロ ルミネセンスが報告されている.GaN:Euでは光励起 による誘導放出も報告されており,電流注入型LDの期 待もある[82].また,高いQ値のSiフォトニック結晶 にエルビウムイオンなどを封入することで発光の緩和 時間を長くし,発光効率を上げることも考えられよう. 単結晶シリコンへのErの溶解度はもともと小さい. このため高濃度を目指すと,凝縮,析出,欠陥の生成 などが起こり,高濃度化が難しい.そこで酸素をEr に共添加することにより高濃度化や欠陥の抑制が達成 されるが,その一方で電気抵抗が高くなる欠点がある. 木村らはEr,Si,Oを構成元素とするEr-Si-O結晶 を提案し,それが自己組織化により周期0.9 nmの自 然超格子的構造になることを見出している[83].図18 図 21 Er-Si-O超格子の 1.54µm 室温発光スペクトル Fig. 21 1.54µm electro luminescence of Er-Si-O

super lattice at room temperature.

で述べたSi-ncとエルビウムイオンがシリカ中に共存 している様子とEr-Si-O結晶の様子を図20 (a)と(b) にそれぞれ示す[75].この図20 (b)の構造ではErが 高濃度であるにもかかわらず欠陥が少なく,図21に 示すような,室温でシュタルク分裂の微細構造も見え る強い発光が観測されている[83].このEr-Si-O結晶 の主要組成はEr2SiO5 と同定されており,1.5μm帯 の新たな増幅器の可能性も指摘されている.

8.

む す び

本論文ではEDFAの黎明期から始まり,ここ20年 の技術革新について述べた.分野の異なる読者のため に,光ファイバ増幅器の基礎について最初に述べ,そ

図 2 光ファイバ増幅器の応用分野 Fig. 2 Application fields of optical fiber amplifiers.
図 6 Al 2 O 3 ,GeO 2 及び P 2 O 5 を共添加したシリカガ ラスに対する Er 3+ イオンの 1.5 µm 遷移の発光ス ペクトルの変化
表 2 3 準位系と 4 準位系の光増幅の相違点 Table 2 Comparison of light amplification between
図 9 0.98 及び 1.48 µ m 励起における反転分布形成の比較と雑音指数の推定 Fig. 9 Comparison of population inversion mechanism in 0.98 µ m and 1.48 µ m
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参照

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