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Generation of Non-classical Light via Optical Parametric Amplification and Photon Detection

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(1)

光パラメトリック増幅と光子検出による 非古典光の生成

Generation of Non-classical Light

via Optical Parametric Amplification and Photon Detection

2017 2

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 光物理工学研究

髙橋 佑太

Yuta TAKAHASHI

(2)
(3)

1

目次

第1 序論 3

1.1 研究背景 . . . 3

1.2 本論文の構成 . . . 3

第2 量子光学 7 2.1 非線形光学 . . . 7

2.2 2高調波発生. . . 9

2.3 パラメトリック増幅 . . . 9

2.4 電磁場の量子化 . . . 11

2.5 スクィージング . . . 13

2.6 ホモダイン検出器の原理 . . . 19

第3 分散によるスクィージングと光子統計への影響 21 3.1 光子統計推定 . . . 21

3.2 実験系 . . . 22

3.3 実験結果 . . . 24

3.4 まとめ . . . 27

第4 Schr¨odingerの猫状態の生成時における光子検出器の影響 29 4.1 背景. . . 29

4.2 スキーム比較 . . . 30

4.3 実験系 . . . 31

4.4 不完全な光子検出器を用いた際のフィデリティ . . . 34

4.5 PNRDを用いた場合の解析 . . . 35

4.6 不完全なSPDを使用した場合の問題 . . . 41

4.7 近年の実験結果との比較 . . . 45

(4)

4.8 まとめ . . . 46

第5 結論 49 付録A 位相整合条件 51 A.1 角度位相整合 . . . 51

A.2 擬似位相整合 . . . 53

付録B Fn1n2n3 Pn1n2n3 の計算方法 55 付録C バランスドホモダイン検出器 57 C.1 ホモダイン検出器の製作 . . . 57

付録D 各分布の光子対統計について 61 D.1 単一光子検出器の計数 . . . 61

D.2 各状態の統計 . . . 63

D.3 各分布の検出計数 . . . 64

付録E 公式 67 E.1 角運動量演算子の交換関係 . . . 67

E.2 消滅・生成演算子 . . . 70

E.3 Campbell-Baker-Hausdorff公式 . . . 71

付録F Schr¨odingerの猫状態 73 F.1 変位演算子 . . . 73

付録G 最尤推定法による量子状態の推定 75 G.1 最尤推定法による量子状態の推定 . . . 75

G.2 Wigner関数W(x, p)の定義. . . 76

G.3 Wigner関数の性質 . . . 77

G.4 密度行列からWigner関数を求める方法. . . 81

謝辞 83

研究業績 85

参考文献 91

(5)

3

第 1

序論

1.1 研究背景

近年、量子情報処理と呼ばれる量子力学の原理を取り入れた情報処理の研究が注目を浴び ている。量子情報処理は量子力学の性質を利用することにより、従来の情報処理の性能限界 を超えることが可能で、既存のスーパーコンピュータでも解くのに宇宙の年齢ほどかかる問 題を瞬時に解く量子コンピュータや物理的に盗聴が不可能な量子暗号通信、シャノン限界を 超えた通信が可能になることなどが知られている。量子情報処理のキャリアは、光子、原 子、半導体中の電子といった量子であり、光を使った量子情報処理は、その系の安定性から めざましい発展を遂げている。光の量子情報処理のリソースは、単一光子、偏光エンタング ルメント光子対、スクィーズド光、光のSchr¨odingerの猫状態といった非古典光であり、こ れらの光源開発に関する研究が盛んに行われている。

そこで本論文では、特にスクィーズド光とSchr¨odingerの猫状態に焦点を当て、これらの 光の生成条件について解析を行った。スクィーズド光は光の直交位相振幅を情報の基底とし た連続量を用いた量子情報処理で重要となるリソースであり、シャノン限界を超える通信を 実現するにも欠かせないリソースであると考えられている。Schr¨odingerの猫状態は量子コ ンピュータや微弱力測定への応用方法が知られており、重要な光源の一つとなっている。ま

た、Schr¨odingerの猫状態はスクィーズド光から生成できることが知られており、スクィー

ズド光の応用例として位置づけることも可能である。

1.2 本論文の構成

本論文は5章からなり、第1章では序論として、光の量子情報処理について概説し、ス クィーズド光やSchr¨odingerの猫状態の研究背景について述べる。第2章では、非線形光学

(6)

や量子光学を中心に本論文で必要となる物理について解説する。第3章、第4章は、それぞ れスクィーズド光、Schr¨odingerの猫状態の生成についての研究内容について述べ、第5章 をまとめとした。

第3章では、フェムト秒レーザーにより光パラメトリック増幅を行った際の非線形結晶 中の分散のスクィーズド光に対する影響について議論する。十分減衰させたレーザー光は コヒーレント状態とみなせることが知られているが、コヒーレント状態は古典的にはノイ ズの存在しない正弦波であるが、量子的な観点から見ると,位相と振幅の不確定性関係から 生じる量子的なゆらぎに起因するショットノイズが存在する。スクィーズド光は1976年に Yuenによってショットノイズを抑圧する光源として、その存在が理論的に予言され、1985

年には、Slusher らによって非縮退の四光波混合で実験的に生成と検出に成功した。以来、

光のショットノイズを抑える光源として期待され、さまざまな研究が行われてきた。量子情 報処理では効率よく高いスクィーズレベル(ショットノイズの抑圧比)を実現することが要 求される。スクィーズド光の代表的な生成法の1つにパラメトリック増幅を用いたものがあ るが、この方法で高いスクィーズレベルを得るためには大きな非線形効果を生み出す必要が あり、効果的な方法の1つは共振器を用いる方法である。これはいわゆるパラメトリック発 振と呼ばれるもので、高いスクィーズレベルが得られるが、共振器の制御が必要なため系が 大きくなるという欠点がある。もう1つはパルス光のピークパワーを利用して結晶を励起す る方法である。結晶にパルス光を入射させるだけなので、簡単な装置で高いスクィーズレベ ルが実現可能である。

本研究では、現在の光通信への応用を考え、通信波長帯である1550 nm帯においてス クィーズド光の生成を行っている。非線形性を高めるために周期分極反転LiNbO3結晶と フェムト秒パラメトリック発振レーザーを採用している。フェムト秒レーザーを用いてパラ メトリック増幅を行う場合、高いピークパワーで励起できるという利点があるが、群速度分 散による影響を無視できない。本研究の目的は、フェムト秒レーザーで励起した際に、結晶 中での群速度分散がスクィーズド光に与える影響の解析である[1]。長さ0.9 mm10 mm の結晶と、焦点距離8.2 mm50 mmの集光レンズの組み合わせで、パラメトリック増幅の 相互作用長0.4 mm0.9 mm8.6 mmの条件を作り出し解析を行った。これまでの研究で は、ホモダイン測定によるスクィーズド光の雑音の測定が主であったが、本研究では加えて 2台の単一光子検出器による光子統計の推定を行うことにより、雑音だけでなく、光子統計 の側面からも群速度分散の影響の解析[2]を可能にしている。実験の結果、一定以上相互作 用長が長くなるとスクィーズレベルが増強されないこと、相互作用長を長くすると光子対統 計が熱平衡分布からポアソン分布になることがわかった。これらの結果は、群速度分散によ る時間的多モード化が原因であると結論づけている。

(7)

1.2 本論文の構成 5 第4章では、スクィーズド光から光子引抜をして、光のSchr¨odingerの猫状態を生成する 際の光子検出器の特性について議論する。ここで言う光のSchr¨odingerの猫状態は、位相を 反転したコヒーレント状態同士の重ね合わせ状態を指しており、1986年にYurkeStoler によって、初めて生成方法が提案された[3]。しかし、提案された方法は光Kerr効果の使用 を想定しており、この方法を実現するのに十分な3次の非線形性を持ったデバイスが現在で も開発されていないため、未だ実現されていない。1997年にはDaknaらによって、別の方 法として、真空スクィーズド状態から光子を引き抜く方法が提案されており[4]、近年、各研 究機関によって実験の成功報告がなされている[5, 6, 7, 8, 9, 10]。その方法は、生成したス クィーズド状態をビームスプリッターで分割し、片側のポートで光子検出を行い、もう一方 のポートから出力される状態に対して、光子検出に成功したイベントのみ状態として採用す ることにから猫状態が生成される。光子検出器のポートでN光子を検出した時のイベント のみ、状態として採用すれば、N光子を引き抜いたスクィーズド状態が生成される。真空ス クィーズド状態は偶数個の光子の重ね合わせ状態であるため、このN 光子を引き抜いたス クィーズド状態はSchr¨odingerの猫状態に似ており、引き抜いた光子の数が多いほど、猫状 態とのフィデリティが高まることが知られている[4]。量子情報処理では、大きな振幅の猫 状態が求められるため、効率よく振幅を大きくする必要がある。そこでNielsenMølmer は補助的なコヒーレント状態を加えて、光子検出を行うことによって、同数の引抜き光子

数でDaknaの提案したスキームより大きな振幅を持った猫状態が生成されることを示した

[11]

本研究では、NielsenMølmer の提案方法が未だ実験的に実現されていないことから、

彼らの論文で提案された実験系に対してより簡略化した実験系を提案し、さらに実験的な不 完全性を追加して、彼らのスキームの実現性を検討した[12]。新たに提案した実験系では補 助的なコヒーレント状態の入力数を削減でき、ロックしなければならない位相の数を減らせ るという利点がある。元の論文では光子数識別器の使用を前提としていたが、より入手が容 易な光子検出器として、光子数識別能力がなく、光子の有無のみを判別可能な単一光子検出 器についても解析を行った。光子検出器としてはガイガーモードのアバランシェフォトダイ オードを、光子数識別器としては超伝導転移端センサーのパラメータを採用して解析を行う ことで、結果として、現在の技術でも0.9以上のフィデリティを達成することができ、十分 に彼らのスキームを実現可能であることを示した。

第5章では、第3章、第4章の結果をまとめ、今後の展望について述べる。

(8)
(9)

7

第 2

量子光学

パラメトリック下方変換を利用した真空スクィーズド状態の生成には非線形光学の原理を 理解する必要がある。本章では非線形光学において重要な第二次高調波やパラメトリック増 幅の概念を説明し、これらを量子化してスクィージングの説明を行う。

2.1 非線形光学

結晶中のMaxwell方程式は式(2.1)〜式(2.4)のように表わされる。

∇ ×E+µ∂H

∂t = 0 (2.1)

∇ ·B= 0 (2.2)

∇ ×H− ∂D

∂t = 0 (2.3)

∇ ·D= 0 (2.4)

電束密度Dと電場Eには次の関係があり

D =ε0E+P   (2.5)

となる。レーザー光など入射電場強度が高い場合には分極P は電場Eに対して線形ではな く、2次以上の非線形効果も現われる。

P =ε0χE+PNL (2.6)

ここでχは電気感受率である。式(2.1), (2.3), (2.5), (2.6)より非線形媒質中を伝播する電 磁波の波動方程式は

2E =µε∂2E

∂t2 +µ∂2PNL

∂t2 (2.7)

(10)

となる。ただし、ε=ε0(1 +χ)、一様媒質(∇ ·E= 0)を仮定した。以後の議論では簡単の ため非線形分極PN Lと電場Eが平行だとし、スカラー量で考えることにする。

次に電場が角周波数ω1, ω2, ω3 z 方向に伝播する式(2.8)のような3つの平面波で構 成されている場合を考える。

E1)(z, t) = 1 2

(A1(z)ei(k1z−ω1t)+c.c.) E2)(z, t) = 1

2

(A2(z)ei(k2z−ω2t)+c.c.)

(2.8) E3)(z, t) = 1

2

(A3(z)ei(k3z−ω3t)+c.c.) 全電場は

E =E1)(z, t) +E2)(z, t) +E3)(z, t) (2.9) となる。非線形分極PNL 2次まで考え,

PNL =deffE2 (2.10)

とする。ここでdeff は物質によって決まる非線形光学係数である。式(2.8),(2.9), (2.10) 波動方程式(2.7)に代入し、それぞれの角周波数成分ごとに式を分ける。ただし、角周波数 ω1, ω2, ω3には

ω312 (2.11)

の関係があるとする。式(2.11)を考慮すれば角周波数ω1の成分の式は次のようになる。

2E1)=µε12E1)

∂t2 +µdeff2

∂t2

[A3(z)A2(z)

2 ei[(k3−k2)z−(ω3−ω2)t]+c.c.]

(2.12)

式(2.8)を式(2.12)に代入して整理する。ただし、媒質中を進行する光の振幅は波長に比べ

てゆっくり変化すると仮定し

k1

dA1(z) dz

d2A1(z) dz2

  (2.13)

とする。整理された式は

dA1

dz = iω1 2

õ

ε1deffA3A2ei∆kz (2.14)

(11)

2.2 2高調波発生 9 となる。ただし∆k =k3−k1−k2 である。ω2, ω3 も同様に

dA2

dz = iω2 2

õ

ε2deffA1A3e−i∆kz (2.15) dA3

dz =−iω3 2

õ

ε3deffA1A2e−i∆kz (2.16) となり、式(2.14)(2.16)の式は非線形媒質中の光同士の相互作用を記述する基本方程式で ある。

2.2 2 高調波発生

角周波数ω の光を非線形結晶に入射させ、角周波数 2ω の光を発生させる第2 高調波 発生(second harmonic generation: SHG) について考える。式(2.14)(2.16)において、

ω12 =ω, ω3 = 2ωとする。

dA(2ω)

dz =−iω

√µ εdeff[

A(ω)]2

e−i∆kz (2.17)

A(ω)はほとんど変換されず一定であるとすると A(2ω) =−iω

√µ εdeff

[

A(ω)]2 e−i∆kL−1

−i∆k (2.18)

である。第2高調波の光強度は

A(2ω)

2 = µω2d2eff ε

A(ω)

4L2sin2(∆kL/2)

(∆kL/2)2 (2.19)

に比例するため、効率よくSHGを起こすには位相整合∆k = 0が必要であることがわかる。

∆k = 0を実現するためには、複屈折結晶や疑似位相整合結晶を使う必要があり、位相整合 については付録Aで扱う。

2.3 パラメトリック増幅

パラメトリック増幅の原理はブランコの振幅を2倍の周波数で屈伸運動することにより増 幅させることと全く同じで、角周波数ω2ωの光を非線形結晶に入射させ、角周波数ω 光を増幅するパラメトリック増幅(optical parametric amplification: OPA)を考える。式 (2.14)(2.16)において、ω1 = ω2 = ω, ω3 = 2ωとする。結晶の変換効率の低さからポン

(12)

プ光(角周波数ω3)の振幅は一定、位相整合条件(付録A参照)を満たしているものとする。

このとき、式(2.14)

dA

dz =−i1

2gA (2.20)

g =ωdeff

õ

εA3 (2.21)

となる。ただし、A1, A2 は区別しないので添え字は落とした。ポンプ光とシグナル光(角周 波数ω)の相対的な位相が重要なので

A3 =i|A3| (2.22)

とすれば式(2.20)は次のようになる。

dA dz = 1

2|g|A (2.23)

複素振幅Aを次のように実部と虚部に分ける。

A=a1+ia2 (2.24)

式(2.24)のように分ければ式(2.23) da1

dz = 1 2|g|a1 da2

dz =−1

2|g|a2 (2.25)

となる。結晶長がLだとすれば

a1(L) =a1(0) exp (1

2|g|L )

a2(L) =a2(0) exp (

−1 2|g|L

)

(2.26) となる。シグナル光のパワーP(ω)

P(ω)(L) = 1 2

√ε

µ|A(L)|2

= (cos2θe|g|L+ sin2θe−|g|L)P(ω)(0) (2.27) となる。ただし、A=|A|eとした。式(2.22)(2.27)から分かるようにポンプ光とシグナ ル光の複素振幅が同位相のとき(θ = 90)は減衰が起こり、90 位相がずれたときは増幅

(13)

2.4 電磁場の量子化 11 が起こる。上記の計算結果を図2.1に示す。ポンプ光を除去するフィルタを非線形結晶の出 力光を制限することにより、パラメトリック増幅したシグナル光を抽出している。

式(2.21,2.27)からOPAの大きさは結晶長,ポンプ光強度P(2ω) 、結晶の非線形性に 依存することが分かる。したがって、ゲインG± は次のようになる。

G± = exp(

±α√

P(2ω)L)

(2.28) ただし、αは物質によって決まる定数である。

2.1 パラメトリック増幅

2.4 電磁場の量子化

改めて結晶中の電場に関する方程式を書き下す。

∇ ·D= 0 (2.29)

∇ ·B= 0 (2.30)

∇ ×H = ∂D

∂t (2.31)

∇ ×E=−∂B

∂t (2.32)

D=ε0E+P (2.33)

B=µ0H (2.34)

非線形結晶中にレーザー光を入射する場合、その強電場のため分極P が電場Eに比例しな くなる。

P =ε0χ(1):E+ε0χ(2):EE+ε0χ(3):EEE· · · (2.35) ただしχ(j)j+ 1階のテンソルを表す。

ここで次式のようなベクトルポテンシャルA˜= (A0,A)を導入しMaxwell方程式を満た

(14)

すラグランジアンを構成する。

E=−∂A

∂t +∇A0, B=∇ ×A (2.36)

このときラグランジアン密度は次式で表せる。

L(A˜,A˜˙) = 1 2

(

ε0E2− 1 µ0B2

) + 1

0χ(1)ij EiEj + 1

0χ(2)ijkEiEjEk+· · · (2.37) 最小作用の原理より

δL=

t2

t1

V

δLdt d3r

=

t2

t1

V

i,j

[ ∂L

∂Ai δAi+ ∂L

∂(∂Ai/∂t)δ (∂Ai

∂t )

+ ∂L

∂(∂Ai/∂xj)δ (∂Ai

∂xj )]

dt d3r

= 0 (2.38)

であり、第2項と第3項に関しては部分積分と境界条件を用いて変形するとLagrange方程 式は次式となる。

∂L

∂Ai − ∂

∂t

∂L

∂(∂Ai/∂t) −∑

j

∂xj

∂L

∂(∂Ai/∂xj) = 0 (2.39) i= 0のとき式(2.29)、その他のi = 1,2,3は式(2.31)を表すことが確かめられるため、式

(2.37)のラグランジアン密度を正しく選べていることがわかる。場の一般化運動量は

Πi = ∂L

∂(∂Ai/∂t) =−Di (2.40)

で定義される。Π0 = 0からA0 は正準変数にはなれないため、クーロンゲージ(∇ ·A= 0) と式(2.36)から次式で決定される。

∆A0 =−∇ ·E (2.41)

ハミルトニアンは次のようになる。

H=

V

( ∑

i

Πii− L)

d3r (2.42)

=

V

1 2

0E2+ 1 µ0

B2) d3r+

V

(1

0χ(1)ij EiEj+ 2

0χ(2)ijkEiEjEk+· · ·) d3r

V

D· ∇A0d3r (2.43)

(15)

2.5 スクィージング 13 最後の項は部分積分可能で境界条件と式(2.29)よりゼロになる。したがって、

H=

V

1 2

0E2+ 1 µ0B2)

d3r+

V

(1

0χ(1)ij EiEj+ 2

0χ(2)ijkEiEjEk+· · ·) d3r

(2.44) である。次のようなテンソル積を定義して、ハミルトニアンをDで書き直す。

Eiij(1)Djijk(2)DjDk+· · · (2.45)

H = 1 2

V

1

µ0B2d3r+

V

(1

ij(1)DiDj + 1

(2)ijkDiDjDk+· · ·)

d3r (2.46) 次式のような交換関係を持つように量子化する。

[ ˆAi(r, t),Πˆj(r, t)] =iℏδijδ(r−r) (2.47) Coulombゲージ∇ ·A= 0を採用することにより、A,Dが横波として扱える。ここで波 数ベクトルk、偏光ベクトルekであるモードの消滅演算子は次のように書ける。

ˆ

ak(t) = 1

√ℏV

V

e−ik·rek·

[√ε0ωk

2

Aˆ(r, t)− iDˆ(r, t)

√2ε0ωk ]

d3r (2.48) 式(2.48)は次式を満たす。

[ˆak,aˆk] = [ˆak,ˆak] = 0, [ˆak,ˆak] =δkkδγγ (2.49)

2.5 スクィージング

ここでパラメトリック増幅を量子的に扱うため電磁場を量子化する。簡単のためED が平行であり、ハミルトニアンが次のように書けるとする。

Hˆ =

V

1 2

(εEˆ2+ 1 µ02)

d3r+

V

2

3deff3d3r

V

( 1

02+ 1 2εDˆ2)

d3r−

V

deff

33d3r (2.50) ただしε =ε0(1 +χ(1))である。式(2.50)の第1項を0、第2項をとし、非線形分極 に関するハミルトニアンを摂動項として扱う。ベクトルポテンシャルA,電束密度Dz

(16)

向に伝播する平面波であるとすれば次のように表せる。

A(z, t) =ˆ

3

j=1

√ ℏ 2εjV ωj

[ˆaj(t)eikjz+ ˆaj(t)e−ikjz]

(2.51) D(z, t) =ˆ

3

j=1

i

√ℏωjεj

2V

[ˆaj(t)eikjz−aˆj(t)e−ikjz]

(2.52)

B(z, t) =ˆ

3

j=1

i kj

√ ℏ 2εjV ωj

[ˆaj(t)eikjz−ˆaj(t)e−ikjz]

(2.53)

0 =

V

( 1

02+ 1 2εDˆ2)

d3r (2.54)

=

3

j=1

ℏωj

[ ˆ

ajˆaj + 1 2 ]

(2.55) ここで相互作用表示を利用すれば

I(z, t)≡eiHˆ0t/D(z, t)ˆ e−iHˆ0t/

=

3

j=1

i

√ℏωjεj 2V

[ˆaj(t)ei(kjz−ωjt)−ˆaj(t)e−i(kjz−ωjt)]

(2.56) HˆI ≡eiHˆ0t/e−iHˆ0t/

=−

V

deff

3I3d3r

≃ −ideff

3 ( ℏ

2V

)32

ω1ω2ω3

ε1ε2ε3

V

[aˆ1ˆa23e−i∆kz −aˆ1ˆa23ei∆kz]

d3r (2.57) である。ここで各周波数モード間にはω312 の関係があるとし、回転波近似により ei(ω12−ω3)以外の項は振動しているので平均化され無視できる。

I =−i 2ℏ[

gˆa1ˆa2ˆa3−gˆa1ˆa2ˆa3]

(2.58) 式(2.58)よりHeisenbergの運動方程式

daˆj dt = 1

iℏ

[aˆj,HˆI

] (2.59)

(17)

2.5 スクィージング 15 より、

daˆ1

dt = 1

2g23 (2.60)

daˆ2

dt = 1

2g13 (2.61)

daˆ3

dt =−1

2gaˆ12 (2.62)

である。ポンプ光は十分強くc-数として扱えば daˆ1

dt = 1

2g2a3 (2.63)

daˆ2 dt = 1

2g1a3 (2.64)

である。この式の解は、

ˆ

a1(t) = ˆa1(0) cosh (1

2|ga3|t )

+eˆa2(0) sinh (1

2|ga3|t )

(2.65) ˆ

a2(t) = ˆa2(0) cosh (1

2|ga3|t )

+e−iθ1(0) sinh (1

2|ga3|t )

(2.66) である。ただしθ= arg(ga3)である。ここでq(t),ˆ p(t)ˆ を次のように定義し、

ˆ

q(t)≡ ˆa(t) + ˆa(t)

2 (2.67)

ˆ

p(t)≡ ˆa(t)−ˆa(t)

2i (2.68)

θ = 0にとり、r= 12|ga3|tとすれば ˆ

q1(t)−qˆ2(t) = [ˆq1(0)−qˆ2(0)]e−r (2.69) ˆ

p1(t) + ˆp2(t) = [ˆp1(0) + ˆp2(0)]e−r (2.70) という関係があり、このようにシグナル光とアイドラ光の振幅に量子相関が存在することが 知られている。このような角周波数ω のポンプ光で非線形結晶を励起し、ω +δω, ω−δω の波長の異なるシグナル光とアイドラー光を増幅する方法は非縮退パラメトリック増幅 (nondegenerate optical parametric amplification : NOPA) と呼ばれている。シグナル光

(18)

とアイドラー光を入力しない場合は次のようになる。

II⟩= exp [

−iHˆI

ℏ t ]

|0,0⟩

= exp[

rˆa1(t)ˆa2(t)−rˆa1(t)ˆa2(t)]

|0,0⟩

= 1

coshr

n=0

[−tanhr]n|n, n⟩ (2.71) このような状態は2モード真空スクィーズド状態と呼ばれている。n対の光子対が生成され る確率Pn

Pn = tanh2nr

cosh2r = µn

(1 +µ)n+1 (2.72)

となる。ただしµ= sinh2rは平均光子対数を表す。このように光子対の分布が熱平衡分布 になることが知られている。

次にシグナル光とアイドラー光の波長が同じ場合である縮退パラメトリック増幅(degener- ate optical parametric amplification : DOPA) について述べる。DOPAのハミルトニア ンは次式で与えられる。

I =−i 2ℏ[

ga3ˆa2−ga3(ˆa)2]

(2.73) Heisenbergの運動方程式は

dˆa

dt =ga3ˆa (2.74)

であり、その解は ˆ

a(t) = ˆa(0) cosh (|ga3|t) +eˆa(0) sinh (|ga3|t) (2.75) である。θ = 0にとり、ξ = 12|ga3|tとすれば

ˆ

q(t) =eξq(0)ˆ (2.76)

ˆ

p(t) =e−ξp(0)ˆ (2.77)

入力状態がコヒーレント状態であるとすると ˆ

a(0)|α⟩=A|α⟩ (2.78)

⟨q(t)ˆ ⟩=⟨α|q(t)ˆ |α⟩=eξq (2.79)

⟨p(t)ˆ ⟩=⟨α|p(t)ˆ |α⟩=e−ξp (2.80)

(19)

2.5 スクィージング 17

OPA

2.2 パラメトリック増幅

となり古典と同じ結果が得られる。また、それぞれの複素振幅の分散は

⟨∆ˆq(t)2⟩= 1

4e (2.81)

⟨∆ˆp(t)2⟩= 1

4e−2ξ (2.82)

であり、スクィージングが生じることがわかる。角周波数ωの光を入射しない場合は

⟨0|q(t)ˆ |0⟩= 0 (2.83)

⟨0|p(t)ˆ |0⟩= 0 (2.84)

⟨0|∆ˆq(t)2|0⟩= 1

4e (2.85)

⟨0|∆ˆp(t)2|0⟩= 1

4e−2ξ (2.86)

となり、真空場がスクィージングされる。このような状態は真空スクィーズド状態と呼ばれ、

このような過程は自発パラメトリック下方変換(spontaneous parametric down conversion

(20)

2.3 真空スクィーズド状態

: SPDC) として知られている。次にこの真空スクィーズド状態の光子統計に注目する。

sv⟩= exp [

−iHˆI

ℏ t ]

|0⟩

= exp [

−ξ

2ˆa2+ ξ 2(ˆa)2

]

|0⟩

= 1

√coshξ

n=0

[(2n)!]1/2

2nn! [−tanhξ]n|2n⟩ (2.87) 式からも分かるように真空スクィーズド状態は偶数個の光子しかもたない非古典的な光であ る。2n個の光子が生成される確率P2n

P2n = (2n)!

(n!)222n

νn

(1 +ν)n+1/2 (2.88)

である。ただしν = sinh2ξ は平均光子数である。

(21)

2.6 ホモダイン検出器の原理 19

2.6 ホモダイン検出器の原理

真空スクィーズド状態のスクィーズレベルの測定方法として、バランスドホモダイン検出 (2.4)がある。未知の光の量子状態を測定する量子トモグラフィーにおいても有効な手段 としてしられている[13]。シグナル光S と局部発振光(LO) ˆaLOをそれぞれ50:50ビーム スプリッターBS の入力ポートに入射させる。射出される光bˆ1,bˆ2はそれぞれ

1 = 1

√2 ( ˆaS+ ˆaLOe) (2.89) bˆ2 = 1

√2 ( ˆaS−aˆLOe) (2.90) となる。φはピエゾ素子PZTによって作られるシグナル光とLO光の位相差である。シグ

PZT BS

2.4 バランスドホモダイン検出器

ナル光aˆSとLOLOを式(2.91),(2.92)のように平均値と揺らぎ部分に分ける。

ˆ

aS = ∆ ˆaS,1+i∆ ˆaS,2 (2.91) ˆ

aLO=ALO+ ∆ ˆaLO,1+i∆ ˆaLO,2 (2.92) ただし、ALOは実数である。BSからそれぞれ射出される光子の数の差∆ˆn

∆ˆn= ˆb11−bˆ22

= ( ˆaSLO+ ˆaLOS) cosφ+ ( ˆaSLO−aˆLOS) sinφ

≈2ALO(∆ ˆaS,1cosφ+ ∆ ˆaS,2sinφ) (2.93)

(22)

となる。実験ではそれぞれのフォトダイオードPDから流れる差電流の雑音電力を測定す る。電流i(t)は測定に要する時間をT、量子効率が1とすれば

⟨ˆi(t)⟩

= e

T ⟨nˆ⟩ (2.94)

となり、差電流の雑音電力は

⟨∆ˆi(t)2

= 4e2A2LO

T2 (cos2φ⟨

∆ ˆaS,12

+ sin2φ⟨

∆ ˆaS,22

) (2.95)

と書ける。式(2.95)から位相差φφ = 0のときに

∆ ˆaS,1

2

、φ = π

2 のときに

⟨∆ ˆaS,2

2⟩ が測定できる。以上のようにバランスドホモダイン検出器で真空スクィーズド状態の揺らぎ の測定が可能である。実際のホモダイン検出器では差電流を増幅器で増幅し、スペクトラム アナライザで雑音を測定するかオシロスコープで差電流パルスを測定することになる。レー ザー光でホモダイン検出を行う場合、レーザーの繰返し周波数ごとに差電流の中に打ち消し きれなかったレーザーの繰返し雑音が発生する。この雑音が検出器のアンプを飽和させない ようにフィルタをつくるなどして、除去する工夫が必要である。実際、本研究で作成したホ モダイン検出器については、付録Cで扱う。

(23)

21

第 3

分散によるスクィージングと光子統 計への影響

本章ではスクィーズド光の生成実験について述べる。連続波のスクィーズド光生成実験 では、共振器を用いて非線形性を高め、高いスクィージングレベルの実現に成功している

[14, 15]。パルス光を用いたスクィーズド光生成実験では、パルス光の高いピークパワーを

利用することによりシングルパスの実験系で高いスクィージングレベルを実現でき[16, 17] 量子情報処理への応用に向いている。しかし、群速度分散の影響を抑えるため[18]、相互 作用長を短くするなどの工夫が必要である[2]。今回、高いピークパワーのフェムト秒レー ザーを用いて2つの異なる結晶長の周期分極反転LiNbO3 結晶(PPLN)を励起しスクィー ズド光の生成を行い、ノイズ測定を行うとともに、2つの単一光子検出器を利用することに より光子統計の推定を行い、群速度分散がスクィージングレベルや光子統計に与える影響を 調べた[1]

3.1 光子統計推定

生成した真空スクィーズド状態を50:50に分けそれぞれを単一光子検出器で測定した時の 同時計数率から光子統計を見積もることができる[19]。真空スクィーズド状態は光子対の重 ね合わせ状態であるとみなすこともできるので、単一光子検出器k(k = 1,2)で光子を検出 する確率は次式で表される。

PSk =

n=0

p(n) [

1− (

1− T ηk 2

)2n]

(3.1)

(24)

このときp(n)n対の光子対が生成される確率、T は系の透過率、ηkは検出器kの量子効 率である。同様に同時計数率は

PC =

n=0

p(n) [

1− (

1− T η1 2

)2n

− (

1− T η2 2

)2n

+ (

1− T(η12) 2

)2n]

(3.2) である。

縮退パラメトリック増幅(DOPA)では真空スクィーズド状態が生成され、光子対は次の ような統計分布に従うことが知られている。

PSV(n) = (2n)!

(n!)222n

νn

(ν+ 1)n+1/2 (3.3)

ただし、ν は平均光子数である。

また、アイドラー光子とシグナル光子の波長が異なるような非縮退パラメトリック増幅

(NOPA) では2モード真空スクィーズド状態が生成され、その光子対統計は熱平衡分布に

従う。

P2(n) = µn

(µ+ 1)n+1 (3.4)

ただし、µは平均光子対数である。OPA過程において光子対のコヒーレント長に対して相 互作用長が十分長い場合は、群速度不整合のため、状態が時間的に多モード化し光子対統計 はポアソン分布になってしまう。

PM(n) = µne−µ

n! (3.5)

それぞれの分布にしたがった光子統計については付録Dで扱う。

3.2 実験系

ホモダイン検出器によるノイズ測定及び単一光子検出を用いた光子統計推定の実験系を図 3.1に示す。光源はフェムト秒チタンサファイアレーザー(Ti:S)を励起光としたフェムト秒 光パラメトリック発振器(OpalSpectra Physics社製、中心波長1557 nm、スペクトル幅 35 nm、繰返し周波数 80 MHz) を使用した。

光源から出た光を2つの波長板(HWP)と偏光ビームスプリッター(PBS)を用いて、そ

(25)

3.2 実験系 23 れぞれローカル光(LO)、第二高調波発生のための基本波として分けた。

第二高調波発生のために結晶長0.9mm、分極反転周期19.0µmPPLNのバルク結晶を 使用した。今回、使用したPPLNはフォトリフラクティブ効果を抑圧するために5mol% MgOが添加されている。平均パワー300 mWの基本波をPPLNに入射した際、中心波長

778 nm、スペクトル幅 6 nm、平均パワー 70 mWの第二高調波が発生し、この光をOPA

のポンプ光(Pump)とした。OPAのための非線形結晶は結晶長0.9 mm10mmPPLN を使用した。

図のガラスフィルタ(GF)とダイクロックミラー(DM)は基本波をカットし、第二高調波 のみを取り出すために用いている。ホモダイン検出をするときのみミラー(M) を加えて測 定を行う。

ノイズ測定を行う場合、OPAにより発生した真空スクィーズド状態とローカル光(LO) をPBS3で合波し、ミラー(M) で反射させ、PBS450:50に分けてホモダイン測定を行 う。ここでHWP4PBS4での分岐比を調節するのに用いた。

光子対統計の推定を行う場合はローカル光をブロックし、ミラー(M)を外し、真空ス

Ti:S

OPO

SHG OPA

HWP1 HWP2

HWP3

HWP4 PZT PBS1

PBS4

PBS3

PBS2 DM1

DM2

DL

GF

PD1

PD2

Pump

LO

IF

SMF 50/50 fiber coupler

SPD1

SPD2

counter Homodyne

Detector

M

rf-spectrum analyzer

3.1 実験系

クィーズド状態をシングルモードファイバ(SMF)に結合し、ファイバカップラーで50:50 に分けてそれぞれを単一光子検出器(SPD)で測定する。このとき半値幅30 nm、中心周波

(26)

数1550 nmの干渉フィルタ(IF)を用いてポンプ光をカットしている。

3.3 実験結果

3.3.1 光子統計推定

OPAによって生成した真空スクィーズド状態をシングルモードファイバ(SMF)に結合 し、ファイバカップラーで 50:50に分けてそれぞれを単一光子検出器(SPD)で測定する。

このとき半値幅30 nm、中心周波数1550 nmの干渉フィルタ(IF)を用いてポンプ光をカッ トしている。実験結果を図に示す。図の理論曲線は式 (3.1)(3.5)を使用しており、結晶 長0.9 mmPPLNを使用したときT = 0.13, η12 = 0.20である。結晶長10 mm PPLNに焦点距離50 mmのレンズでポンプ光を集光した場合、T = 0.14, η12 = 0.20 である。実験結果は結晶長が0.9 mm の場合、熱平衡分布となり、光子対の多くは DOPA よりNOPAによって生成されていると考えられる。結晶長が10 mmの場合ポアソン分布 に一致しており、生成される状態は群速度不整合の影響で時間的に多モード化されていると 考えられる。

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08

× 10−3

Coincidence-count probability PC

Single-count probability PS1+PS2PC

Single-mode squeezed vacuum Thermal distribution

Poissonian distribution

3.2 結晶長0.9 mm、焦点距離8.2 mmの場合の実験結果

(27)

3.3 実験結果 25

0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

0 0.005 0.010 0.015 0.020

× 10−4

Coincidence-count probability PC

Single-count probability PS1+PS2PC

Single-mode squeezed vacuum Thermal distribution

Poissonian distribution

3.3 結晶長0.9 mm、焦点距離50 mmの場合の実験結果

0 0.5

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08

Coincidence-count probability PC

Single-count probability PS1+PS2PC

× 10−3

Single-mode squeezed vacuum Thermal distribution

Poissonian distribution

3.4 結晶長10 mm、焦点距離50 mmの場合の実験結果

3.3.2 ホモダイン検出器によるノイズ測定

OPAによって生成された真空スクィーズド状態とローカル光(LO)PBS3で合波し、

HWP4PBS4で光を5050に分け、ホモダイン検出を行い、出力をスペクトラムアナ

(28)

ライザーで観測した。フォトダイオード(PD)InGaAs pin PD(Hamamatsu, 量子効率

85% )を使用した。ここでダミーレンズ(DL)はローカル光とスクィーズド光の空間モード

を合わせるために用いている。ピエゾ素子(PZT)で振動させたミラーでローカル光の位相 を変えることによりスクィージングの測定を行った。結晶長10 mm、焦点距離50 mm 場合は最大1.6 dBのスクィージングしか観測できなかったが、結晶長0.9 mm、焦点距離 8.2 mmの場合は最大3.1dBのスクィージングを観測できた(図3.5。焦点距離50 mm 場合は結晶の長さに関係なく1.6 dB程度のスクィージングしか観測できなかったのはロー カル光が切り出すスクィーズド光は全く同じだからである。光子計数ではほとんど違いの見 られなかった低ポンプ光強度の領域においても明らかなゲインの違いを確認できた。時間的 に多モード化している状況では1モード当りのゲインが低く、ホモダイン検出の際には平均 化されてしまい、検出されるゲインも低くなってしまう。また、生成されるスクィーズド光 のパルス幅がローカル光よりも長くなり、検出されないモードが存在するためでもある。

-4 -2 0 2 4 6 8 10

0 10 20 30 40 50 60 70

Pump power (mW)

Squeezing level (dB)

Small focus Short crystal Long crystal

3.5 スクィージングのポンプ光強度依存性

(29)

3.4 まとめ 27

-4 -2 0 2 4 6 8

0 100 200 300 400

Noise compared to vacuum (dB)

Number of phase steps

vacuum noise squeezed

light

3.6 3 dBスクィージング

3.4 まとめ

相互作用長が長い場合は、光子対の発生率は高くなるが、群速度分散の影響で時間的に多 モード化され、高いスクィージングレベルを実現できないことがわかった。相互作用長を短 くすることで、時間的な多モード化を防ぐことはできるが、光子対統計が熱平衡分布になっ てしまう。これは、縮退パラメトリック増幅で発生する光子対よりも非縮退パラメトリック 増幅で発生する光子対が多いことに起因していると考えられる。期待値である真空スクィー ズド状態の分布を得るためには、検出器の前に波長フィルタを置き、非縮退パラメトリック 増幅過程で生成される光子対を取り除く必要がある。

(30)
(31)

29

第 4

Schr¨ odinger の猫状態の生成時におけ る光子検出器の影響

本章ではSchr¨odingerの猫状態の生成時における光子検出器の影響について述べる。

4.1 背景

偶数(+)、奇数(−)の光のSchr¨odingerの猫状態は次式で定義される。

cat± ⟩ ≡ 1

√2(1±e−2|α|2)(|α⟩ ± | −α⟩) (4.1)

|α⟩ はコヒーレント状態で、例えばレーザー光を減衰させることで準備することができる。

複素振幅 α aˆ|α⟩ = α|α⟩を満たす。このような状態は量子力学の原理証明 [20, 21, 22]

や量子情報処理(量子計算[23, 24] ,量子テレポーテーション [25] , 量子中継器[26, 27]、量

子計量 [28, 29])で用いられることが知られている。

Yurke Stolerによって光Kerr効果を使った最初の理論的生成方法の提案が1986年に なされている [3]。しかし、彼らの方法を実現するためには、非線形効果が強く、ロスの無 いデバイスが必要であり、現状、実験的に成功された報告は私の知る限りない。代替案と して登場したのがDakna 達によって提案された方法で、真空スクィーズド状態から光子を 引き抜くというものである [4]。すでに1光子 [5, 6, 7]、2光子 [8, 9]3光子 [10]を引き 抜く実験が報告されている。しかし、1光子引抜でよく猫状態と近似できる領域は |α|≲1 に限られてしまうが、量子情報処理ではより大きな振幅が求められる。例えばフォールト トレラント量子計算には |α| > 1.2 [24]、量子計量には |α| > 1.52 [10] が要求される。

そこで解決策の1 つとして、NielsenMølmer によって別の光子引抜スキームが提案さ

(32)

れている [11]。本論文中では彼らのスキームを NMスキームと記載する。NMスキームは2k ≡∏k

i=1(ˆa2−βi2) 2k+1 ≡∏k

i=1(ˆa2−βi2)ˆaをそれぞれ真空スクィーズド状態に操 作するというものである。操作後の状態はそれぞれ偶数個、奇数個の光子の重ね合わせ状態 になるため、係数βi や入力スクィーズレベルを適切に選ぶことにより、猫状態が生成可能 である。図 4.2に示す実験系はNielsen Mølmerによって提案された3 の実験系であ る。ここでβiは補助コヒーレント状態の複素振幅に比例する定数である。

3台の光子数識別器(photon-number resolving detector: PNRD)が同時に1個の光子 を検出したときに、猫状態が生成される。このオペレーションに近い方法として、Takahashi らによって時間モードで分離して2光子引抜を行う実験で|α|= 1.4の猫状態の生成に成功 している[8]。また、条件付きで任意の猫状態を生成する方法[30]も提案されている。

NielsenMølmerは論文中で検出器を理想的に取り扱っている[11]。しかし、現実の検 出器は、1でない量子効率を持ち、ダークカウントも存在する。また、PNRDは市販されて おらず、まだ研究段階で一部の研究者のみ使用可能なものとなっている。そのため、実際の 光子引抜実験では、PNRDの代用として、単一光子検出器(single-photon detector: SPD) が使用されている。SPDPNRDと異なり、光子数識別能力はなく、光子の有無のみを検 出できる検出器である。理論計算の面では、1光子引抜については、実験的不完全性を考慮 した計算結果が報告されている[31, 32]。論文[11]中で、彼らはPNRDの使用を前提とし ていたが、本論文では、NMスキームを実現するために必要な検出器の特性を評価するため に、不完全なPNRDSPDを想定して計算している。

4.2 スキーム比較

図4.1にスキーム同士の比較を図示する。図4.1は猫状態と生成状態のフィデリティ

F = |⟨ψcat|Oˆ3|S(ζ)⟩|2

⟨S(ζ)|Oˆ33|S(ζ)⟩ (4.2) をDaknaスキーム(β = 0)β を最適化したNMスキームについて図示した図である。こ こではスキームの性能を比較するため、測定環境の不完全性は考慮せず、理想的な操作が行 われた場合の状態で比較する。F = 0.99のときのα値はそれぞれ0.81, 2.1であり、NM キームの方が振幅の大きい猫状態が生成可能であることがわかる。ただし、ζβ はぞれぞ れ次式で決まる[11]

(33)

4.3 実験系 31

ζ =

(5 +√

10)2+ 4α4−(5 +√ 10)

2 (4.3)

β2 = 3 7 + 2√

10α2 (4.4)

Dakna scheme NM scheme

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 1 2 3 4 5

C a t- st a te f id e lit y

4.1 生成状態に対する猫状態のフィデリティ

4.3 実験系

論文[11]の中で提案されたように、演算子 Oˆ3 は、高い透過率を持ったビームスプリッ ターと2つの補助コヒーレント状態と3つの完全なPNRDで実現できる(4.2)。全体の 系は次式で表わせる。

total⟩= ˆBFD5) ˆBAD3) ˆBEC4) ˆBAC2) ˆBAB1)|S(ζ)⟩|0⟩|0⟩|0⟩|γ+⟩|γ⟩ (4.5) 入力するスクィーズド状態はFock空間で次式となる。

|S(ζ)⟩= (1−ζ2)14

n=0

√(2n)!

2nn! ζn|2n⟩ (4.6)

参照

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