90 (脳神経センター神経内科) 内山真一郎・堤 由紀子・曽根 玲子・ 長山 隆・柴垣 泰郎・小林 逸郎・ 丸山 勝一 脳虚血患者において血栓形成能の示標として各種血 小板機能検査を施行し,抗血小板療法の有効性を評価 した.血小板凝集にはADP,アラキドン酸(AA), PAF を介する経路があるのでADP, AA, PAF刺激による 血小板凝集能(PA)を施行し,生体内での血小板機能
を評価するため血漿放出因子(βTG, PF4), Pros・ tanoid(TXB2,6keto PGF、α), Duke法・Simplate 法・Fi正ter bleeding time(FBT)法(内山&Didisheim) による出血時間,1111n標識法による血小板寿命・lysis を測定した.PAは皮質枝血栓(C)ではAA二進例が 多く,発症直後正常でその後充湿し,穿通枝血栓(P) ではADP山守例が多く,発症直後より充乱していた. 脳塞栓(E)では発症直後正常で,その後ADP, AAが 一過性に充進した.血漿βTG, PF4はC, Pとも全期 間増加していたが,Eでは急性期のみ増加していた,こ のような病型による血小板機能の差異は基礎病態の相 違を,CとEでの発症直後のPAと放出因子との解離 は脳内や心腔内での血小板活性化と疲弊を反映すると 考えられる. 抗血小板剤未投与の脳虚血患者にアスピリン(Ax) 300mg,チクロピジン(Tx)200mg,またはAx 81mg とTx 100mg(Ax/Tx)を投与した. PAはAx投与 後AAで著明抑制, ADPで部分抑制, PAFは不変, Tx投与後ADP, PAFで抑制, AAは不変, Ax/Tx投 与後ADP, AA, PAF全て著明に抑制された.βTG, PF4はAx後不変, Tx後軽度減少, Ax/Tx後著減し た.血漿TXB2はAx, Ax/Tx後著減, Tx後不変で, 6keto PGF1αはAx後のみ軽度減少した.出血時間は Duke法ではいずれの投与後も不変であったが, Sim・ plate法, FBT法ではAx, Tx後軽度延長, Ax/Tx後 著明に延長した.血小板寿命・lysisはAx, Tx後部分 的に改善し,Ax/Tx後正常化した.以上よりAx/Tx 併用療法はAx, Tx単独療法に比し血小板凝集の multipathwayを阻害し,生体内血小板放出反応,消 費,破壊を抑制する強力な抗血小板療法と考えられた. 3.虚血性心疾患の凝血能の検討一血小板寿命を中 心として一 (国立横浜病院循環器科1), 心急循環器内科2),心研研究部3)) 青崎 正彦1)2)・森 英記2)・大木 勝義3)・ 甫仮 妙子3>・上塚 芳郎2)・岩出 和徳1)2)・ 福井 尚見2}・木全 心一2)・関口 守衛2)・ 広沢弘七郎2) 〔目的〕虚血性心疾患(IHD)における凝血能の変 化を知るため,血小板寿命を中心に血小板,凝固・線 溶能を調べ,冠状動脈造影所見との対比,正常冠状動 脈造影像を示す胸痛症候群(CPS)および健常者の成 績との比較も行なった. 〔方法〕IHDは発症後20日から30日までの急性心筋 梗塞(AMI)13例,陳旧性心筋梗塞(OMD 7例,狭 心症(AP)10例で, CPSは7例,健常老は31例であっ
た.凝血能は血小板寿命,血小板凝集能,β一
thromboglobulin(β・TG),血小板数アンチトロンビン III(ATIII),フィブリノゲン(Fbg),プラスミノゲン (Plg), FDPを測定した.血小板寿命はアスピリン0.591回負荷によるMDA産生能の推移により測定し
た, 〔成績〕血小板寿命(日)は,IHD 8.4±1.3, AMI 8.4±1.3,0MI 7.4±0.3, AP 8.8±1.5, CPS 8.8± 0.9,健常者9.2±0.6で,IHDでは, AMIで6.3,0MI で7.1,APで5.3と短縮を示す例が認められたごとく, 概して短縮の傾向を示した.血小板寿命と冠状動脈狭 窄の程度との間には一定の関係は認められなかった. 4μMADP,1μg/mlコラゲン,1μg/m1エピネフリン 凝集能,β・TGはいずれもIHDで有意の充進あるいは 増量を示した.血小板数,ATIII, PlgはいずれもIHD, CPS,健常者間に明らかな差異を認めなかった. FbgはAMIで増量傾向を認めた. FDPはAMIの1例で
20μg/mlの増量を認めた. CPSでは凝血能に明らかな 異常を認めなかった. 〔結語〕IDHでは概して血小板寿命の短縮,血小板 凝集能の二進,β一TGの増量が認められたことなどか ら,血小板機能を中心に凝血能が充回し,易血栓形成 傾向にあることが推測された. 特別講演 血管壁と血液凝固反応 (三重大学医学部検査医学)鈴木 宏治 血液循環の目的は,血液を通じて体細胞と物質の交 換を行うことにある.血管内膜の血液と接する面は, 一層の扁平な内皮細胞を覆われており,この内皮細胞 が,血管の機能発現に重要な役割を果している.内皮 細胞の主な機能は,1っには,血液中の成分の血管壁 や組織への移行を制御調節する選択的透過作用であ り,他の1つは,抗血栓性表面を提供し,血液の凝固 を阻止し,その流動性を保ち,血液循環が円滑に行わ 一452一91 れるようにする作用である. 内皮細胞の主な抗血栓作用には,次のものが知られ ている.(1)プロスタサイクリン(PGI、)を産生・分 泌して,血小板凝集の阻止,平滑筋の弛緩作用を促す; (2)血液中のアンチトロンビンIII(ATIII)に反応の場 を提供する.内皮表面には,ヘパリンと同様の作用を 示すヘパラン硫酸が存在し,ATIIIのコファクターと して不要なトロンビンを効率よく中和する;(3)プロ テインC(PC)制御系を活性化させる,トロンビンは 内皮表面に存在するトロンボモジュリンに結合し,プ ロテアーゼ前駆物質のPCを活性化する.活性化PC は,内皮細胞や血小板表面に存在するプロテインSに 結合し,これをコファクターとして,Va, VIIIa因子 を失活化し凝固反応を制御する;(4)プラスミノゲン アクチベーター(PA)を産生・分泌し,形成されたフィ ブリン血栓を溶解させる;などである. 他方,内皮細胞には,血栓の形成を促進する作用も 存在する.傷害細胞膜面には組織因子(組織トロンボ プラスチン)が露呈し,血栓が形成される,内皮細胞 は,またトロンビン刺激にによりPAインヒビター (PAI)を産生・分泌し,形成された血栓を線溶から保 護する. 以上のように,血管内皮は,血小板,血液凝固,線 溶機序の進展と阻止に深くかかわり,血液の流出を阻 止し,流動性を保ち,血液循環を維持していると考え られる. 本日は,主に血管内皮の凝固制御機序について生化 学的観点から述べる. 第2回 東京女子医科大学血栓止血研究会 日 時:昭和63年9月9日(金)6:00∼8:00pm 場 所:第一臨床講堂 当番世話人挨拶 丸山勝一(神経内科) 一般演題 6:05∼7:00 座長 小林逸郎(神経内科) 1.Lupus anticoagulantの存在が確認された1例 金井由美子・長原 光・ 小幡 裕(消化器病センター) 押味和夫・溝口秀昭(第一内科) 井上美幸(臨床検査部) 2.虚血性脳血管障害におけるIndium−111−tropolone血小板標識法による血小板lysisの測定 内山真一郎・堤由紀子・長山 隆・小林逸郎・ 丸山勝一(脳神経センター神経内科) 日下部きよ子(放射線科) 3.血小板容積からみた体外環境の影響 上塚芳郎・青崎正彦・田中直秀・岩出和徳・ 福井尚見・細田瑳一(循環器内科) 小柳 仁・遠藤真弘(循環器外科) 大木勝義(心研研究部) 4.各種造血因子のヒト巨核球系前駆細胞に与える影響 寺村正尚・片平潤一・溝口秀昭(血液内科) 5.妊娠中毒症と漫性DIC 村岡光恵・武田佳彦(産婦人科) 中林正雄・坂元正一(母子総合医療センター) 雨男lj講演 7:00∼8:00 一453一