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東京女子医科大学学会 第53回総会演説抄録
〔パネルディスカッション〕
冠動脈疾患の治療
(司会)林
1,急性心筋梗塞の臨床
循環器内科 本田
2.経皮経管冠動脈形成術
循環器内科 田中
3.A℃バイパス術
循環器外科 遠藤
4.心筋梗塞合併症の手術
循環器外科 西田
5.病理学的立場より
循環器内科 堀江
(序言)
久恵
喬
直秀
真弘
博
俊伸
冠動脈疾患すなわち冠動脈の硬化に起因する狭心
症・心筋梗塞については内科的治療も外科的治療も一
般的に普及しているものの,その接点についての境界
は明瞭でない.そこで日本心臓血圧研究所の第一線で
直接払出にあたっている内科・外科医の面々によるパ
ネルディスカッションを計画し検討して頂くことに
なった.まず患者が急性心筋梗塞になった場合,何を
すべきか,について述べるとともに,どのような状態
の時には冠動脈内血栓溶解療法(PTCR),補助循環,
について,また手術を考えるか等々について述べる.
冠動脈撮影の結果,その所見によって内科療法を行な
うか,外科療法を考えるか,また経皮経管冠動脈形成
術(PTCA)を行なうかについてその適応,合併症,
成績あるいはまた遠隔成績についての検討を行なう.
そしてPTCAを行なう施設では必ず外科医のstand
byを必要としなければならないとの制約のあること
等についても検討する.また外科治療については,す
でに一般的になったA℃バイパス術,心筋梗塞の合併
症である心破裂,心室中隔穿孔(VSP),乳頭筋断裂に
よる僧帽弁閉鎖不全症,左室瘤,仮性動脈瘤の手術に
ついてもそれぞれ内科的,外科的立場より意見を頂き,
また病理学的立場より意見を加える.パネルディス
カッションの特徴は司会者の提示により演者が問題を
それぞれ意見を述べあい解決することにある,
要するに冠動脈疾患の治療は内科・外科医の協力に
よって行ないうることである.
1.急性心筋梗塞症の臨床
(循環器内科)本田 喬
当院CCUは開設して20年になる.急性心筋梗塞症
(AMI)の死亡率はその間に30%から16%へと半減し,
特に心破裂死と心不全死が減少した.しかし心原性
ショックによる死亡は依然として多い.今回AMIの
死因を検討し,現在もなお問題となっている,心原性
ショックに対するIABP療法,冠動脈血栓溶解療法
(ICT),梗塞後狭心症(PIA)などについて述べる.
①AMIの死因分析:最近のAMI連続440例の死
亡は72例(16.4%),心臓死は66例(15.0%)であった.
死因の内訳は心原性ショック70%,心不全8%,不整
脈5%,心破裂9%,心室中隔穿孔5%,突然死5%
であった.入院時Killip分類1,2型であったが心原
性ショックや心不全で死亡した例が22例あり,これら
の2/3は再梗塞またはPIAによる増悪であった.不整
脈死の3例と突然死の1例も再梗塞との関連が考えら
れる症例であり,再梗塞予防は重要な課題である.
②IABP療法:AMIの58例(13%)にIABPを使用
した.心原性ショック31例では5例が離脱可能で2例
が生存退院,心不全16例では14例が離脱可能,10例が
生存退院した.反復するVT・VF 3例とPIA 8例で
は,それぞれ2例,6例を救命できた.IABPは心不全
やPIAには有用であるが,心原性ショックの治療には
限界がある.
③ICT療法:心筋壊死巣の拡大予防を目的とした
治療法で,梗塞発症後6時間以内に入院した54例に
ICTを施行し,その有用性を検討した.28/39例(72%)
に再開通がみられた.既開通又は再開通例は言開通例
や対照群に比し,壊死巣成立過程が短く,壊死巣の拡
大をある程度抑制し得たと考えられたが左室機能の改
善は乏しかった.
④PIA:31%の例に合併し,非隔壁性梗塞多枝病
変,入院中の再梗塞が多く,また梗塞巣は小さいにも
かかわらずショック,心不全の合併頻度も高く予後不
良であった.
2.経皮経管冠動脈形成術
(循環器内科)田中 直秀
経皮経管冠動脈形成術(以下PTCA)は,1977年,
GrUntzigにより初めて,臨床成功例が報告された.近
年,バルーンカテーテルやその他のカテーテルシステ
一800一