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急性心筋梗塞の臨床

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パネルディスカッション

冠動脈疾患の治療

急性心筋梗塞の臨床

〔書道繕92第購63指骨〕

東京女子医科大学 ホン ダ

本 田

循環器内科学教室 タカシ

(受付昭和62年12月18日)

Clinical Manifestations and Management of Acute Myocardial Infarction Takashi HONDA

Department of Cardiology, Tokyo Wolnen’s Medical College

Clinical manifestations, pathophysiology and management of acute myocardial infarction were described in this paper. The rate of mortality of patients hospitalized with acute myocardial

infarction decreased from 30%to 15%for twenty years since the development of a coronary care unit(CCU)treatment. Death due to severe arrhythmia decreased markedly, and the target of recent treatment of AMI in CCU aims at the reduction of the mortality in the cases of pump failure, cardiac rupture, reinfarction and the reduction of myocardial necrotic size. Newly

developing aggressive techniques, such as intracoronary thrornbolysis, percutaneous trans− luminal coronary angioplasty and intra−aortic balloon pumping, should be performed these potentialy fatal patients,

はじめに

昭和42年8月,わが国で初めて東京女子医科大

学日本心臓血圧研究所に急性心筋梗塞(AMI)の

効果的な:初期治療(主に不整脈対策)を目的とし たCCU(coronary care unit)が開設されて,ちょ

うど2G年が経過した.その間,不整脈や血行動態 の自動監視装置の進歩とともに,種々の抗不整脈 薬,血管拡張薬,新しい強心薬(ドパミン,ドブ タミンな:どのカテコールアミン)などの開発,人 工ペースメーカーや大動脈内バルーンパンピング (IABP)による治療および心筋壊死巣の拡大防止 を目的とした冠動脈内血栓溶解療法(intracor・

onary thrombolysis, ICT)や経皮的冠動脈形成 術(percutaneous transluminal coronary angio・ plasty, PTCA)および各種の心臓外科的治療など

の進歩によってCCUに入院したAMIの急性期

死亡率は30%から!5%前後に減少している.しか し,心筋梗塞による死亡の40∼70%は梗塞発症後 1時間以内に集中し,かつ病院に入院するまでの 間に死亡するものが50∼74%あるといわれてい る1)∼3).AMIの診断および治療は迅速かつ的確で なければならない.本稿ではAMIに対する最近 のCCUでの治療の現況とその成果について述べ る. 1.心筋梗塞の診断 心筋梗塞の診断は,特徴的な胸痛と心電図変化 および心筋逸脱酵素の上昇をもって行われる.し かし,発症直後には心筋逸脱酵素の上昇は認めら

れず,また心電図上AMIに特有なST上昇や異

常Q波は認められなくて,T波の増高のみのこと もある.したがって発症直後の診断の最大の根拠 は問診である.突然起こってきた胸の痛み,胸苦 しさ,すなわち,前胸部,胸部全体,左前胸部, 心窩部などに締めつけられるような,押しつぶさ

(2)

れるような,圧迫されるような痛みを訴える,ま た,顔面蒼白,冷汗,悪心,嘔吐を伴うことも多 く,一見して重症感がある.時には呼吸困難や意 識障害が主訴となる例もある.痛みは持続性で, ニトログリセリン(NTG)錠の舌下投与は無効で ある場合が多い.心筋梗塞は特殊な状況で発症す ることは希で,安静時や夜間睡眠中の発症が半数 を占め,歩行中,食事中やその直後,排泄中など の日常生活動作中を含めると約90%の例がごく普 通の状況下で発症している4).そのほか,狭心症の 既往が半数以上に認められることも診断上有用で ある. AMIが疑われたら問診と理学的所見を検討し ながらすぼやく心電図を記録する.先に述べたよ うなAMIに特有な所見が得られれぽ診断は容易 である.梗塞の部位,虚血の広がり,不整脈の有 無を即座に読み取り,起こりえる病態を推察して 的確な処置を行わなけれぽならない.もし,心電 計がないときには問診のみでAMIの疑いとして 救命処置と救急入院の手はずを整えなけれぽなら ない.

2.CCU前治療とMobile CCU(MCCU)

AMIの治療にはCCUが有力であることは既

に衆知の事実である.AMIの疑いがあれぽ直ちに CCUへの入院の段取りをし,救急車で搬送する, その間に心電図モニター,酸素吸入,静脈路の確 保などを行い,次の項で述べるような救急処置を 行う(表3).また,搬送中には心室細動(VF)・ 心室停止,心破裂などの致死的合併症やポンプ失 調の悪化などに対する予防対策を十分たてておく 必要がある. AMI患者のCCU入院前(prehospital phase)

における救急医療を目的としたシステムに

Mobile CCU(MCCU)がある. MCCUとは救急

車を改造して,心電図モニター,除細動器,人工 ペースメーカー,人工呼吸器などの医療機器と救 急薬品を搭:証し,医師と看護婦が同乗して患者の

所に往診することによってAMI発症早期から

CCUと同様の治療を行うことを意味する.

MCCUは1966年Pantridgeら5)により,翌1967年

には当院でもCCU開設と同時に運行され始め

た.当院MCCUの出動回数は1985年12月までに

計2307回出動している(表1)6)7).表1からわかる ように,MCCUの出動回数は最近著明に減少して おり,その理由として東京都の救急医療体制の整 備やCCUネットワークシステム8)の発展による ところが大きいと考えられる.

1)MCCIJの活動状況

1979年1月から1985年12月までの7年間に

MCCUで取扱かった416例の疾患別の分類を表2 に示す.発症から72時間以内にCCUに入院した AMIは213例(51.2%),発症から1ヵ月以内の亜 急性心筋梗塞は50例(12%)と全症例の63%が心 筋梗塞であった.また不安定狭心症38例を含む狭 心症が60例(14.4%)みられ,MCCUで入院した 表1 MCCU出動状況 期 間 出動回数@(回) 急性心筋梗塞@ (例) 1967.11∼1971. 12 970 306(31.5%) 1972. 1∼1974. 12 305 152(49.8%) 1975. 1∼1978. 12 529 167(31.6%) 1979. 1∼1981. 12 270 109(40,4%) 1982. ト1985. 12 233 104(44.6%) 計 2β07 838(36.3%) 表2 MCCU取扱い患者の疾患別分類 (1979. 1∼1985. 12) 疾 患 名 例(%) 死亡例(死亡率)

急性心筋梗塞

213(51.2) 34(16.0)

亜急性心筋梗塞

50(12.0) 4(8.0) 狭 心 s 安 定 症型 60(14.4) R8(9.1) 2(3.3) P(2.6) 胸 痛 症 候 群 11(2.6) 0 うっ血性心不全 25(6.0) 4(16.0) 急性解離性大動脈瘤 4(1.0) 4(100) 急 性 心 膜 炎 3(⑪.7) 0 重 症 不 整 S室頻拍・細動 [室プロ ツ

エ不全症候群

yースメーカ不全 脈ク 22(5.3) V(L7) V(1.7) T(L2) R(0.7) 1(4.5) P(14.3) O00 そ の 他 28(6.7) 4(143) 計 416(100) 53(12.7) 一177一

(3)

青畔 豆詣姉 ’: ,1王子 日野市 ● 酵市 東村山市 層瀬市 ● 東久留米市 ・ ・ ● ・●・ 田無市 小平市 9 国分寺市 小金二布 ● 町歩 過断 稲城市 鳩ケ谷市 . ● 草加市 り 埼玉県 、 川口市 . ・・ 1. 亀、 ヘ コ ゑ ㌧「 . ・ へ 、 .●● ■・ ● 、 ● ’ 。 ● 、、 .’・一メ一一!∴・3へ、・=ζ・一フ足立・・ /◇ ボ、1承’,:轡区旧yヒ区7妻一一、ぐ「量。区、・τ

論 r田谷r4嬉二寮、識響覧頭 1

理 ● 市 ・.。.. ・ 曙 ヒ ∴・.の∵ ,’・ ざヘ ノ コ ら へ ● ・ ● ㌧ 目黒区8 ,, ’ も じり ロ コ ロ へし ,_、1 川崎市 c ㌧’む 。● .r\・_一\ ∵横飾 ・●’`・で’@.、=・ ● ‘ ● ● ● 」●、膚勺, じ ロ く曽「@ ’v「」.{’ :’. ㌧一、 品川区4 ‘ ほノサの ロ ロ ● “一”鴨’と一’ ● o ・ ・太田区12 習志野市 舳市 港芦㌔ ・.市川市 千警 ● 平塚市 図1 Mobil CCUの出動範囲(1979.1∼1985.12) 患者の77%が虚血性心疾患であった.そのほか うっ血性心不全,急性解離性大動脈瘤,重症不整 脈などがあった.

図1はMCCUの出動範囲を示したものであ

る.当院が位置する新宿区が最も多く,その他都 22区内が主な出動範囲であるが,都下および他県 などの遠隔地から要請がある場合もある.

2)MCCUの効用について

MCCUの運行はAMIのprehospital phaseを

少しでも短縮し,発症早期の死亡を減少させるの が目的であり,有用とする報告もある9)10)が,わが 国ではMCCUを運行しても入院までの時間を短 縮することにはならないとする報告もある11)12>.

我々もMCCUを利用したもの(MCCU㊦)と,

一般救急車,自家用車その他の手段による場合 (MCCU(∋)の症例からCCU入院までの時間を 比較検討してみた(図2).MCCUθ群では発症3 時間以内の入院は409例中153例(37.4%)で,その うち院内発症の37例を除く116例の入院までの所 0 50% 100% MCCU㊥ 〔213例1 MCCロe {409例1 1 24−4 0∼3時間 @〔23.m

噛間騙甥・欝

一 @ 48∼ o9.41〔5,6) 〔37、4) {23.① 尽 ∫ 冗 、 r ‘ 、「 , f(12.0,’(13.2; ハ 苗 酔 舜 魚 ♂ (9.m{5.41 院内発症(9.0レ 〔12) {1.① {1.① 〔0.5}{0、5〕 〔31.91 {254} h P 臼 @ づ i14.11 (13、6b 」、 口 ・ ヒ7 〔9,4)〔5,6) 48∼72時間 MCCUの患家への 到着時を入院とした 場合(213例) 図2 急性心筋梗塞症患者の発症からCCU入院まで の所用時間(1979.1∼1985.12) 用時間は平均2.07時間であった.一方,MCCU① 群における発症3時間以内の入院は49例(23%) で,その平均は2.16時間と差はなかったが,

MCCUが患家に到着した時点をCCU入院とみ

なすと,図2の最下段に示すように発症から入院 までの時間が3時間以内は68例(31.9%)あり, その平均は1.64時間とMCCUθ群で院内発症例 を除いた場合に比べて有意に(p〈0.001)短時間 であった.以上のことから院内発症例を除き,か

(4)

つMCCUが患家へ到着した時点をCCU入院と

みなせばMCCU(∋の場合がCCU入院までの時

間は短いといえる. また,最近ではIABPが小型化されたため,

MCCUにIABPを搭載して使用することが可能

となった.AMIに合併した心室中隔穿孔(VSP) や乳頭筋断裂による僧帽弁逆流,梗塞後の内科治

療困難な狭心症などの患者はIABPを施行した

ままで心臓外科治療の可能な病院へ転送して救命 することができるようになった.

3.AMIの救急処置

AMIに対する救急処置を表3に示す13).心筋梗 塞に伴う胸痛に対しては麻薬性鎮痛薬(塩酸モル ヒネ)を使用するが,これは鎮痛,不安除去,鎮 表3 急性心筋梗塞症に対する救急処置 (文献13を一部改変) 1.心電図による不整脈のモニターと絶対安静. 2.静脈路の確保.エラスター針または中心静脈カテーテ ルを挿入し,側管から静注するための三方活栓をつな いでおくとよい. ・ 3.酸素吸入(経鼻またはフェイス・マスク) 4.胸痛にはニトログリセリンを1錠舌下投与する.3分 後に効果がなければ,塩酸モルヒネ3∼5mgまたは塩 酸ブプレノルフィソ(レペタン⑪)0.1∼0.2mgを静注 する. 5。心室性期外収縮が出れば,リドカイン(キシロカイソ ⑭)50∼75mgの静注と,1∼3mg/lninの点滴を行なう. 予防的にも使用する. 6.心拍数50以下の徐脈または60以下で血圧低下を伴うと きは,硫酸アトロピン0.5mgの静注を行なう, 7.血圧が低下しショック症状のあるときは,下肢を挙上 し,ドパミン(イノバン⑧)5∼15μg/kg/minの点滴を 行なう.(5%ブドウ糖液500mlにドパミン500mgを加 え,60滴が1miになる点滴セットにつないで,先に確保 した静脈路の三方活栓から注入する.体重50kgの人な ら30滴/minで10μg/kg/minとなる.) 8.呼吸困難があるときは,上体を起こして半日位とし, 軽度であればニトログリセリン1錠を舌下投与する. 重症のときは,塩酸モルヒネ3∼5mgの静注,利尿剤 (ラシックス⑭)の静注を行なう. 9.高血圧があるときは,ニトログリセリン1錠舌下投与 や,塩酸モルヒネ3∼5mgの静注,利尿剤の静注などを 行なう. 10.意識消失のあるときは,心電図が心室細動ならば直流 除細動を行なう.心電図不明のときも,頸動脈の拍動 を触知できないときは直流除細動を試みてよい, 11.心停止(ventricu丑ar standsdU),または除細動でぎな いときは,体外式心マッサージと人工呼吸を行なう. 静作用および中枢神経系での交感神経興奮の抑制 によって,血行動態上の心負荷を軽減するとされ ており14),最も適切な鎮痛薬と考えられる.しか し,麻薬であるため法的規則により救急の場では 使用しずらいことも少な:くな:い.最近,優れた鎮 痛効果を速やかに発揮し,血行動態にはほとんど 影響しない塩酸ブプレノルフィン(レペタン⑧)エ5) もしぼしぼ使用されている.なお,NTGは以前に は心筋梗塞の胸痛には効果がなく,血圧低下によ る冠細流の減少をもたらすので禁忌とされていた が,今日では,胸痛,呼吸困難,高血圧などに対 して使用してみるべき薬剤である.ときには

NTGの舌下投与により冠動脈の攣縮が軽減さ

れ,胸痛やST上昇の改善をみる場合もある.ま た,NTGは肺うっ血を改善し,呼吸困難を軽減す ること,血圧を下げることによって心負荷を減少 し心筋虚血を改善するなど,いわゆる血管拡張薬 療法の一つとして試みるべきものである. 4.不整脈に対する治療 近年,CCUの進歩により,AMIの急性期死亡に おける不整脈死の割合は数%にすぎなくなり, AMIに合併する不整脈の問題は既に解決したか のように考えられている.しかし,不整脈はAMI における最も頻度の高い合併症であり,その発生 機序,抗不整脈薬の選択と使用法,人工ペースメー カーの適応およびVFの予知と予防などまだ未解 決の問題も多く残されている. 1)AMIにおける不整脈の種類と発現頻度 AMIにはあらゆる不整脈が出現するといって も過言ではなく,特に心室性期外収縮(VPC)の 発現頻度は高い.表4はわが国における諸家の報 告16)であるが,VPCは50∼100%,心室性頻拍 (VT)は9∼42%, VFは6∼10%にみられてい る.われわれの最近の検討では,VPCは69.1%, VPC頻発または連発48%, VT(VPC 6連発以上 で心拍数110/分以上)14%,VF 9.1%であった. 徐脈性不整脈は第II度房室ブロック8.9%,第III度 房室ブロック8.2%,心室停止1.7%,洞房ブロッ ク・洞停止1.6%であった.最近のコンピューター 化不整脈監視システムの進歩と普及,救急医療体 制の整備や一般住民の啓蒙な:どによる発症早期の 一!79一

(5)

表4 急性心筋梗塞症の不整脈とその発現頻度 報 告 者 新谷ら 細田ら 五十嵐ら 徳永ら 笠貫ら 著者ら 症 例 数 172 263 100 84 295 515 洞頻脈 噛 68(36.6) 49(18.6) 67(22.7) 上室性期外収縮 80(46.5) 33(33) 72(86) 98(33.2) 上室性頻拍 14(8.1) 15(5,7) 12(12) 30(36) 22(7.5) 接合部調律 19(11,0) 36(13.7) 31(10.5) 心房駆動 S房細動 }・・(・2・・) }39(・4・・) 5(5) P0(10) }・3(・6) 5(1,7) T1(17.3) 31(6.0) W1(15.7) 心室性期外収縮 81(47.1) 138(52.5) 84(100) 179(60.7) 356(69.1) 散 発 40(40) 頻 発 ス面性 24(24) 54(64) 53(18.0) Q1(7,1) 247(48.0) 連発型 69(82) 47(15.9)

RonT

10(3,3) 心室性頻拍 `IVR 15(8.7) 29(11,0) }27(27) 35(42) V(8) 37(12,5) P8(6.1) 72(14.0) 心室細動 16(9.3) 15(5.7) 6(6) 8(10) 31(10.5) 47(9.1) 洞徐脈 エ房ブロック,心停止 }29(16・9) 37(14.1) 9(11) 22(7.5) Q0(6.8) 8(1.6) 房室ブロック 20(24) 第1度 11〔4.2) 10(10) 14(17) 第II度 7(4,1) 28(10,6) 6(6) 17(20) 30(10.2) 46(8.9) 第III度 20(11.6) 27(10.3) 5(5) 11(13) 35(10,5) 42(8.2) 心室内伝導障害 76(14.8) 心室停止 8(4.7) 7(7) 3(4) 9(1.7)

AIVR:Accelerated idioventricular rhythm

CCU入院例の増加などによって,不整脈の発現頻 度は今後ますます増大すると考えられる. 2)VFに対する救急治療

致死的不整脈であるVFの治療とその予防は

CCUにおける不整脈対策として最も重要な課題 である.VFが発生すると,その直後から血液循環 は停止し,アダムス・ストークス発作を起こし, 5分以上血液循環が再開しなけれぽ脳死にいた る.VFを確認したらただちに電気除細動を施行 しなければならない.初回から200∼320ジュール (200∼400ワット・セコンド)の高通電量を通電す る.除細動が不成功の場合には心マッサージを続 けながら,塩酸エピレナミン(ボスミン⑭)0.5∼1 mgの心腔内注射,アシドーシスや低酸素血症の 補正をして除細動を繰り返す.VF出現からの経 過時間が短いほど除細動の成功率は高い.除細動 の成功率は,Lawrieら17>によれぽ,心不全や心原 性ショックなどのポンプ失調を伴わない一次性 (primary)VFでは92%,ポンプ失調を伴う二次 ():% 性(secondary)VFでは87%,笠貫ら18)ではそれ ぞれ92%,79%と高いことが示されている.

3)VFの予知

VFの発現頻度ぱ梗塞発症からの時間経過に

よって異なり,一次性VFは発症後早期に多い. Shibataら19)の発症後2時間以内に入院したAMI 202例の検討では,一次性VFは27例(13.4%)あ り,その40.7%は15分以内,70.4%は60分以内で あった.また15分以内に入院したAMIは43例で, そのうち11例(25,6%)にVFが認められた.発 症早期の突然死の多くは不整脈による死亡とされ る由縁である. つぎにわれわれの施設におけるAMI 515例の うちVFを合併した47例(9.1%)で, VFとAMI の臨床像の関係について検討してみた’6)(図3). VFの合併頻度は,前壁梗塞群では11.0%,下壁梗 塞群では6.2%であり,冠動脈病変では0∼1枝病 変群で6.5%,多枝病変群では3.2%と両群で差は 認めなかった.入院時のKillip分類では1, II型

(6)

% 20 梗塞部位 (NS) % 40 K川ゆ分類 % 4G ショック (Pく00D

憶Jl鯉

% 心不全 (P〈 OD 40 20 0 %悪性VPC %冠動脈病変 %急性期予後

:il∴:iL一:盤

0∼1枝多枝 生存死亡 無し 有り □心室顕拍 猛心室細動 無し 有り 図3 急性心筋梗塞症における心室頻拍・心室細動と 臨床像の関係 はそれぞれ6.8,6.4%であったが,III, IV型は 17.2%,44%と高く,また入院中のショック合併 群では32.6%,非合併群では4.4%,心不全合併群 では14.3%,非合併群では6.8%とポンプ失調合併 群で有意に高率であった.VFの合併頻度と急性 期予後との関係をみると,生存群では4.9%に対し 死亡群では30.6%と有意に死亡群で高率であっ た.VTについてもほぼ同様の結果であった.

VFとVPCとの関連については種々検討され

ており,従来からVFを惹起しやすいVPCとし

てLownら20)の,いわゆる警告不整脈warning arrhythmiaが知られている.すなわち,①Ron T(VPCの連結詞/先行QRSのQT時間く0.85), ②short run(2連発,3連発),③多源性および, ④頻発型(5/分以.ヒ)のVPCは警告不整脈とし て注意されてきた.しかしながら,VFに,警告不 整脈が先行するかしないかで差はなく,また逆に VFを発現しない例の約半数に警告不整脈が認め られることから,最近ではこれらの警告不整脈に よってVFの予知が可能であるという考えは疑問 視されている.

VTもまたVFへ移行する危険の高い重症不整

脈である.今回われわれは6連続以上のVPCを

VTとし,また30秒以上持続するか,または何等か

の処置によって停止したVTをsustained VT

(S−VT)として以下の検討を行った16)(図4). VT の頻度は14%で,S−VTはそのうちの43%を占め ていた.VTを有する症例でのVFの合併頻度は

44%に対し,VFを有する症例でのVTの頻度は

68.1%であった. VTの出現時期は, AMI発症後12時間以内に 43.1%,12∼24時間以内に19.4%と62.5%のVT が24時間以内であり,S−VTもnon S・VTもほぼ 同頻度であった. VTからVFに移行した例は, S−VT群では31 例中13例(41.9%),non S−VT群では41例中6例 (14.6%)と有意にS−VT群に多かった.また入院 中の死亡率をS−VT群とnon S−VT群で比較す ると,それぞれ67.7%,24.4%とS−VT群で有意 に高率であった.このようにS−VTはAMI発症 早期から発現し,VFへの移行や急性期予後不良 の例に多いことが示された.

4)VFの予防

VF予防のため, VPCに対する抗不整脈薬の使 用についてはいろいろな考えがある2Dが,われわ れは現在のところAMI発症後24∼48時間に何ら かのVPCがみられたら,抗不整脈薬の禁忌がな い限り,VFの予防を目的に抗不整脈薬を使用し Sustained VT (31例) 十 ; † † f t † † 口:VTのみを認めた例 囮:Vτ・vrを認めた例 十:死亡例 や 発症から 0 3 6 9 12 18 24 36 48 72時間 7日 14日 21日 の時間 f ↑ † f † Non・ † sustained VT † (41例} ‘ 十 図4 急性心筋梗塞症における心室頻拍(VT)の出現時期 一181一

(7)

ている. 抗不整脈薬としてはりドカイソ(キシPカイン ⑧)が第一選択となる.最初に1∼2mg/kgを静注 し,その後1∼4mg/分の持続点滴を行う.リドカ インが無効の時はプロカインアミド(アミサリン

⑭,初回静注量1∼2mg/kgを5∼10分毎にVPC

が消失するまで繰り返すが,計1,000mgを越えな いようにする.次いで0.7∼!.5mg/分持続点滴す る.),ジソピラミド(リスモダン③,初回静注量50 mgを5∼10分間で投与し,次いで0.15∼0.3mg/ 分持続点滴する.)などに変更または併用する.し かし,これらの薬剤はリドカインと異なり陰性変 事作用を有しているのでポンプ失調の発現や悪化 には十分な注意が必要である. VTは, VFに移行したり,血行動態を著しく悪 化させることが多いので,発見次第すぐに治療し なけれぽならない.S−VTの治療はVFに準ずる. われわれのS−VT31例に施行した治療内容をみる と,心マッサージを含む電気除細動が27例,胸壁 書幅1例,プロカインアミド静注1例,』自然消失 2例であった16). 2∼3秒以内に自然消失するnon S−VTおよび S−VTの予防的治療は, VPCの治療で述べた方法 に準ずる.しかし,その効果判定は難しく,VPC が消失するか否かで判断せざるを得ない,われわ れのVT 72例中48例(66.7%)では,リドカイン を主とした何らかの抗不整脈薬を投与中にもかか わらずVTが発現していた. VTの予知と予防も 未だ不明な点が多い.また,薬物治療に抵抗性の VTに対して心室ペーシングによる頻回刺激が有 効な場合があり,試みるべき治療と思われる. 5.ポンプ失調 今日,Swan−Ganzカテーテルを使ったベッドサ イドでの血行動態モニターによる心機能の評価は もちろん,心エコー図法や心臓核医学的検査など によっても心ポンプ機能を評価し,病態に応じた 最も的確な治療を行うことが可能になってきた. また,血管拡張薬,カテコールアミン,人工呼吸 器,IABPなどを駆使した治療も可能となり,その 結果,心不全死は減少してきたが,心原性ショッ クによる死亡率は依然として高く,CCUの大きな 課題の一つである. 1)AMIの病態と臨床所見 心筋梗塞を発症すると,その直後から梗塞部の 収縮性は低下∼消失し,心拍出量は減少する.す

ると,心拍出量を正常に保つためにFrank−

Starling機序による内因性調節と交感神経活動に よる外因性調節による代償機序が働く.すなわち, 心容積の増大,細静脈の緊張特進による静脈還流 量の増加,細動脈の緊張充進による血圧の維持, カテコールアミンによる心筋収縮力の増強と心拍 数の増加が起こる.その結果,左房圧(通常左室 拡張終期圧とほぼ等しい)が上昇し,心拍出量は 増大する.しかし,心収縮力の低下が大きい例で は左房圧の上昇の割に心拍出:量の増加は小さく, 逆に左房圧上昇による肺うっ血を生じてくる.こ のような状態を左心不全と呼ぶ.左房圧の上昇, すなわち肺毛細管圧(PCP)が上昇すると,血漿 成分が血管外に漏出し,組織間液が増加して肺胞 と毛細管内血液との問のガス交換が妨げられ,低 酸素血症となる.左心不全が重症になれぽ呼吸困 難とともに著しい低酸素血症を呈する.また,左 心不全状態では肺野に湿性ラ音を聴取したり,胸 部X線写真で肺うっ血の所見を認めることがで きる.Killipら22)は理学所見によりポンプ失調を 次の4群に分類している.すなわちKillip I型は 心不全な:し,II型は軽度∼中等度心不全(湿性ラ 音が肺野の1/2以下で聴取される),III型は重症心 不全(肺水腫,湿性ラ音が肺野の1/2以上で聴取さ れる),IV型は心原性ショックを意味している. 左室の広範な壊死によって左室収縮力が著しく 低下すると,左房圧や静脈還流量をいくら増加さ せても心拍出量を増大させることは不可能とな り,ショック状態とな:る(心原性ショック).する と生体は,駆出された少ない血液をより重要な臓 器(脳・心臓,腎臓など)に配分し,消化管,皮 膚,骨格筋などへの血流量を減少させる.心原性 ショックの定義は諸家によって多少異なるが,通 常は,①収縮期血圧の低下(90mmHg以下,高血

圧症例では平常収縮期血圧の30mmHg以上の低

下),②脳循環不全に基づく意識障害,③尿量の減 少(20ml/時間以下)および,④末梢循環不全によ

(8)

る四肢冷感,冷汗,チアノーゼなどの所見が30分 以上持続し,不整脈や循環血液量の減少などによ らないものとされている.後に述べるが,心原性 ショックに陥ったAMIの予後は極めて不良であ り,そのためにAMI発症後はできるだけ早期か ら血行動態をモニターし,適切な治療により ショックへの移行を防止しなけれぽならない.

2)AMIの血行動態評価(Forresterのhe・

modynamic subset;H) Forresterら23)はSwan−Ganzカテーテルに よって得られたPCPと心拍出量の値から心機能 を評価し,AMIの血行動態を次の4群に分類して いる(図5).H−1はPCP 18mmHg以下, CI 2.2 L/min/m2以.ヒで,臨床的には肺うっ血も末梢循 環不全もないもの,H−IIはPCP 19mlnHg以上, CI 2.2L/min/m2以上で,肺うっ血のあるもの, H −IIIはPCP 18mmHg以下, CI 2.2L/min/m2未満、 で,末梢循環不全のあるもの,H−IVはPCP 19 mmHg以上, CI 2.2L/min/m2未満で,肺うっ血 も末梢循環不全もあるものにそれぞれ相当すると

している.したがって,H−II, III, IVがポンプ 失調の血行動態を示し,なかでもH−IVは心原性 ショック例に多い.PCP 18mmHg, CI 2.2L/min/ m2を4群に分類する基準にしたのは, PCPが18 mlnHgを越えると肺うっ血が出現し始め, CIが 2.2L/lnin/m2以下となると脳や腎臓などの臓器 への血流量が低下し始めることによるとされてい る.今日,Forresterの分類は日常臨床において AMIの重症度評価や治療方針の決定に最もよく 利用されている.ポンプ失調の治療の基本は,図

6に示すようにForrester分類のH¶では血管

拡張薬療法,H−IIIでは適切な輸液療法とカテコー ルアミン,H−IVでは血管拡張薬療法とカテコール アミンの併用(時にはIABPの使用)を行う24). これらの治療によって血行動態上H−1への改善 を図ることが治療の目標となる. 6.心室中隔穿孔 心室中隔穿孔は,心室中隔部の梗塞による壊死 心筋の一部が穿孔して左右短絡をきたしたもの で,AMIに伴う重篤な合併症の一つであり,重症 ポンプ失調に陥り,死亡することが多い.しかし, 近年の内科的および外科的治療の進歩により,重 症ポンプ失調の合併にもかかわらず救命できる例 も増加してきた. 心室中隔穿孔は突然出現した,第3∼4肋間胸 骨忙裏に最強点を有する,全収縮期雑音によって 診断されることが多い.中隔穿孔の発症当初は柔 らかい弱い収縮期雑音のこともあるが,経過とと もに荒々しい雑音となり(スリルを伴うこともあ る),強さも増してくる.乳頭筋断裂や乳頭筋機能 不全による僧帽弁逆流雑音との鑑別が困難なとき もあるが,心室中隔穿孔では拡張終期の左右短絡 に伴う前収縮期雑音によって診断可能な場合があ る25).また,超音波断層で破裂孔を,超音波ドップ 心f系数(GI) L/min/m2 3、0 2.0 ,G 0 H.! (0[>2,2,PCP≦18) 死亡率 3% (5%) H一川 (CI≦2.2, PCP≦18) 末棺循環不全 死亡率23% (37%〉 H一日 (OI>2.2, PCP>}8) 肺うっ血 死亡率9% (19%) H−IV (C1≦2.2, PGP>18) 肺うっ血 末楕循環不全 死亡率51% (64%) 10 20 30mmHg 肺毛細管圧(PGP) 図5 Forresterらのhomodynamic subset23)〔死亡率 の(%)は東女医大心研CCU 1982.4∼1986.7〕 急性心筋梗塞 │ンプ失調(心不全ショッのの臨床症状 Oz,利尿剤,モルフィン PaO2<50 } 管 Swan−Ganzカテーテル挿入 oOP>t8mmHg CI≦2,2L/mln/m2 F−2 F−4 F−3 蜷仙薬離 贈驚ア∼ア・ BP↓,Ot≦2,2,ショック Jテコールアミン併用 図6 急性心筋梗塞症に伴うポンプ失調の治療指針24) 一!83一

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ラー法で左右短絡の血流を確認すれぽ診断でき る.Swan−Ganzカテーテルを挿入し,右室で酸素 飽和度の上昇を確認すれば診断を確定することが でぎる. 心室中隔穿孔の病態は,梗塞部心筋収縮力の低 下による左室ポンプ失調に,左右短絡による左右 心室容量負荷が加わった両心ポンプ失調である. 左室充満圧・肺動脈圧の上昇と低心拍出が認めら れ,著明な肺うっ血像を呈する例が多いが,なか には心原性ショックに陥る例もある. 心室中隔穿孔の治療は,内科的に肺うっ血の軽 減と左右短絡血流量の減少によるポンプ失調の改 善を図り,梗塞部が譲痕化する2∼3週間以後に 中隔穿孔閉鎖術を行うのが基本的である.安静, 酸素吸入,利尿薬,血管拡張薬,カテコールアミ ン,IABPなど,ときには人工呼吸器,人工透析な どの強力な治療手段も加えてポンプ失調を管理す る.しかし,これら内科的治療には限界があり, ポンプ失調が進行性で,腎不全など多臓器障害を 合併する可能性の高い症例では梗塞発症後早期で も緊急手術に踏み切ることもある26>.当CCUに おける最近10年間の心室中隔穿孔は29例で,22例 に手術を施行し,17例を救命し,死亡率は23%で あったが,手術未施行の7例は全例入院中にポン プ失調で死亡した2η.手術まで内科的治療で維持 できない例の予後は非常に悪いと言える. 7.乳頭筋断裂 乳頭筋断裂はAMIの合併症の中では非常に稀 なものである(295例中4例,1.4%)28).前乳頭筋 は対角枝と鈍縁枝の二重支配をうけているのに対 し,後乳頭筋は右冠状動脈または左回旋枝の末梢 による単独支配であるため,乳頭筋断裂は後乳頭 筋が6∼12倍多い.心電図所見からも粗壁梗塞例 に合併することが多い.本症が発生すると,突然 大量の僧帽弁逆流が発生するため急速に左心不全 状態が出現し,肺水腫となる.心尖部に全収縮期 雑音を聴取し,超音波断層で僧帽弁逸脱・断裂 した乳頭筋を,ドップラー法で僧帽弁逆流を観察 できれぽ診断可能である.また,Swan−Ganzカ テーテル検査で酸素飽和度の上昇がなく,PCPお よびv波の異常高値が得られれぽ診断は確定す る.心室中隔穿孔と同様強力な内科的治療が必要 であるが,それでも救命することは難しく,早期 の僧帽弁置換術が勧められる. 8.右室梗塞 右心梗塞は急性鋤彫心筋梗塞症の約30%に認め られ,左室単独の梗塞とは異なった臨床像を示し, 治療法も異なるためAMIの一合併症と考えられ ている.右室梗塞の病態としては,①右下の収縮 不全による右室拍出量の低下,②右室compliance の低下とcomplianceの低い心膜の拡張制限によ る右室拡張不全,および③皇室容量の増加によっ て心膜腔内圧が上昇し,左室前負荷の減少をもた らし,心拍出量の低下がみられる29)などである.し かし,通常右室梗塞は左室梗塞と合併しているた め左右心室の梗塞巣の大きさによってその病態は 異なる.小範囲の右室梗塞であれぽ左室単独の梗 塞と同じであるが,広範囲の右室梗塞を合併すれ ぽ右謡曲心拍出によるショック状態となる場合も あり,しかも肺うっ血を伴わない.また,左室梗 塞巣が大であれぽ左心不全または両心不全など幅 広い臨床像を呈する. 右室梗塞の臨床診断は,理学所見で頸静脈の怒

張と深吸気時の怒張の増強(Kussmaui徴候陽

性),心電図で右側胸部誘導(V3R∼V6R)のlmm 以上のST上昇,心エコー図で右室腔の拡大と心 室中隔の奇異性運動,右鼠壁の収縮異常,心臓核 医学的検査による梗塞巣の陽性像や右室壁運動異 常などの所見によって行われているが,主にはそ の特徴的な血行動態所見によってなされる30).診 断上重要な1血行動態所見は皇室充満面一平均右房 圧,自室拡張終期圧一の上昇(6∼10mmHg以上) である.また右室充満圧が左室充満圧一左室拡張 終期圧,PCP一と等しいかまたはそれ以上の圧を 示すのも特徴的である.そのほか露虫圧波形でy

谷降下の急峻化や右外圧波形でdip and plateau などのnoncompliant pattern(NCP)を示すこと (図7),陽性Kussmaul徴:候,肺動脈の交互脈な ども診断上有用な所見である. 右室梗塞の治療は,低心拍出状態やショックを

呈する場合には冠灌流を考慮して平均血圧70

mmHg, CI 2,2L/min/m2以上を目標に,右房圧・

(10)

心電図 右房 右室

匡聯.糎樹

一20 mm“9 X

∠y: P黛,.▽

・一一一・一一・一…一・・「・一・一〇

壷ノ

一20 =8。

肺動脈紬)㌔転

二… ズー、 一〇 図7 68歳,右室梗塞を合併した下壁梗塞例 右房圧波形で急峻なy谷降下,右室圧波形でdip and plateauがみられる. PCPをモニターしながら低分子デキストランな どによる輸液療法を行う.右房圧15mmHg以上ま

たはPCP 18mmHg以上になっても低心拍出状

態の改善が得られなけれぽカテコールアミンを併 用する.左心不全を合併しているときには利尿薬 や血管拡張薬を使用する.また,右室梗塞には房 室ブロックや洞機能不全などの徐脈性不整脈を合 併しやすいため人工ペーシングを必要とする場合 が多い.その際心室ペーシング(VVDよりも心 房・心室同期ペーシング(DDD)がより高い心拍 出量を得ることができるのでDDDペーシングを 行うことが望ましい. 9.心破裂 心破裂は心筋梗塞急性期の合併症の一つで,一 旦発症すると致命的である.その頻度はBates ら31)の文献検索では死因の8.0%(4∼24%),われ われの施設では20年前16.1%,最近では12.5%で ある.心筋梗塞急性期の死亡率を減らすためには 心破裂の予知・予防と治療法の開発が重要な課題 である. 従来から心筋梗塞後に高血圧が持続する例は心 破裂の危険性が高いと言われているので,積極的 な心破裂対策として,われわれは収縮期血圧110 1nmHg以下を目標に降圧療法を行っている.表5 は積極的な降圧療法を行っていなかった時期[昭 和47年7月∼昭和49年12月(第1期)]と降圧療法 を行った時期[昭和57年4月∼昭和60年12月差第 II期)]の心破裂の頻度を比較したものである.第 1期には心破裂死が5.8%で死因の25%を占めて いたが,第II期にはそれぞれ1.7%,9.2%に減少 している.心破裂例の臨床所見は表6に示した. 心破裂は貫壁性前壁梗塞,高齢者,Killip分類1・ 表5 心破裂の頻度 心筋梗塞例数 死亡数(%) 心破裂死(%) 全死亡例に ホする比率 第1期 コ和47.7∼昭和49。12 172 40(23.3) 10(5.8) 25.0% 第II期 コ和57.4∼昭和60.12 353 65(18.4) 6(1.7) 9.2% 表6 心破裂例の臨床所見 性 梗塞部位 Killip分類 発症から心破裂までの期間 @ (時間) 心破裂前の血圧 年齢 男 女 前壁 下壁 1 II III IV ∼24 ∼48 ∼72 ∼96 96hr ネ降 ∼120 121∼150 151∼ 計 第1期(’72∼ワ4) 68.6 }11.0 7 3 9 1 9 1 0 0 8 1 0 0 1 2 3 5 10 第II期 b83∼’85) 73.5 }8.14 6 0 5 1 2 3 0 1 4 1 1 0 0 3 2 1 6 一185一

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II型の例が多かった.また,心破裂時に最も近い 時点での収縮期血圧が121mmHg以上であった例 は11/16例(69%)みられた.心破裂の発生時期は, 壊死組織の最も脆弱な梗塞発症後7日以内が圧倒 的に多い.われわれの成績でも75%の例が梗塞発 症後24時間以内に,残り25%の例も6日以内に心 破裂を発症していた(表6).したがって,梗塞後 7日以内は積極的な心破裂防止対策として厳重な 血圧管理を行うことが重要である.図8は昭和60 年に貫壁性梗塞で入院し,入院時の収縮期血圧が 121mmHg以上で,心破裂を発生しな:かった46例 の入院後血圧の推移を平均±標準偏差で表したも の(川中斜線の部分)である.入院時の収縮期1血 圧が平均152±16mmHgあったが,硝酸薬,トリメ タファン(アルフォナード⑪),ニフェジピン(ア ダラート⑪),ジルチアゼム(ヘルベッサー⑧)など による降圧療法で入院2時間後には128±13.2 mmHg,3.6±3.8時間後には120mmHg以下に維 持することができた.この図の上に心破裂を生じ た例の破裂直前までの血圧をプロットしてみる

と,24時間以内に心破裂を生じた14例中9例

(64%)が斜線の部分から上方に外れており,さら に強力な降圧療法が必要であったと思われた.し かし,血圧が120mmHg以下で心破裂を生じた例 が4病みられ,1血圧以外の心破裂危険因子の管理 にも十分な注意が必要である32). 10.冠状動脈内血栓溶解療法(Intracoronary Thrombolysis, ICT) 1)ICTの臨床的意義 m旧H9 睾180 密160 庄 §140 面120 無 題100 ω 2.一_\ ’一ツ’へ_ 〆○\一、_ ’一.n X 、 o \ 『一 一』一一一「○ \ 『 一〇 つ 。第1期目’レ破裂例 ●第且期 な破裂例 囮SBP mean士5D 降圧療法施行四 一…D2h「 多\」\一つ12,h「 一_一__一_一.__→一→》一____ 0 4 8 12 16 20 24 48 72 hr 入院後経過時間 図8 心破裂例における収縮期血圧(SBP)の経過 心筋梗塞発症後早期の冠状動脈造影(CAG)や, 病理所見から梗塞部を射流する冠動脈内に高率に 血栓の存在することが知られている33).しかしな がら,AMIの発生機序に関してはいまだ不明の部 分が多く,冠動脈内血栓がAMIの原因か結果か については議論の分かれるところである.最近, この冠動脈内血栓形成がAMI発症の第一義的役

割を果たすという説に対して有力な反論もあ

る34>.いずれにせよAMI発症後早期にこの冠動 脈内血栓を溶解さぜて冠血流を再開させることに より,危機にさらされている梗塞周辺部の虚血心 筋の壊死を阻止し,壊死巣の縮小をもたらし,心 機能を改善することができるのではないかという 考えのもとに,ICTが行われるようになってき た.ICTには,血栓溶解薬一欧米ではstrepto− kinase(SK)が使用されているが,本邦では主に urokinase(UK)が使用されている一を直接冠動 脈内に注入する方法(percutaneous transluminal coronary recanalization, PTCR)と静脈内に投 与する全身投与法がある.1979年Rentropら35) は,SKをカテーテルにより直接冠動脈内に注入

して冠血流の再開通をCAGで確認したPTCR

の臨床例を報告した.それ以来本法による多くの 臨床成績が報告され,その有用性と限界が明らか にされつつある36). 2)ICTの適応

PTCRを施行するにはCAGが前提となるの

で,先ずCAGが可能な症例でなけれぽならない. また血栓形成による虚血心筋の壊死を少なくし, 梗塞後の心機能をより改善させるためには梗塞発 症後できるだけ早期に冠血流を再開通させること が重要である.心筋の虚血時間が長くなれぽなる ほど心筋障害は非可逆的になる. 現在PTCRの適応とされているのは,①心筋梗 塞発症後4時問以内,おそくとも6時間以内の症 例,②硝酸薬舌下によっても胸痛が消失せずに持 続する例,③心電図上AMI発症早期の変化が認 められる例,④CAGで完全閉塞または亜完全閉 塞に近い病変が認められる例,⑤心電図上の梗塞 部位と閉塞冠動脈の湘南領域が一致する例,⑥年 齢は75歳以下とする施設が多いが,CAGができれ

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ぽ特に制限を加えない,な:どの条件を兼ね備えた 症例である.

SKやUKは冠状動脈内に直接注入しても全身

線溶能の充進を来して出血傾向をもたらす.した がって,血栓溶解剤として最近大いに期待されて いる薬剤として組織プラスミノゲソ・アクチベー ター(t−PA)やPro−urokinase(Pro−UK)がある. これらの薬剤はフィブリン親和性が高く,血栓塊 でプラスミノゲンをプラスミンに活性化するため 全身の線溶能には影響しないと言われている.t− PAにはヒトメラノーマ細胞由来のrecombinant t−PA,ヒト子宮細胞やヒト正常肺細胞由来のt− PAなどがあり,また, Pro−UKはヒト腎細胞の培 養上清から得たものである.現在,わが国でも AMIに対してこれらの薬剤の臨床治験が進めら れているが,わが国で開発されたAK−124(旭化成 工業および興和株式会社製)をAMIに点滴静注 したときのわれわれの成績では,有効率70%で あった37).

3)PTCAの有用性と限界

(1)血栓溶解率(表7)

AMI発症早期のCAGでは80%以上の例に梗

塞責任冠動脈内に血栓が認められる.そしてSK によるPTCR(投与量21.2∼34.3万単位,投与時 間30∼90分置の再開通率は約74%(60∼87%)であ り,無作為試験によるSKの再開工率はplacebo

に比し有意に大である.またUKによるPTCR

の再開通率も62∼94%である47).わが国ではもっ ぱらUKが使用されており,多施設共同研究の成 績ではUK48∼96万単位までは用量依存的に再開 通率は増大し,96万単位投与で76.4%であった48). また,PTCR終了時の残存狭窄の程度は投与量が 多くなるほど軽減する傾向が認められた48).した

がって現在ではPTCRに際してはUK96万単位

まで投与する施設が多い.われわれの施設におけ る再開通率は59.5%であった(表8). (2)心機能に及ぼす効果 ヒトの心筋梗塞症で,冠状動脈の閉塞後何時間 以内に再応流すれぽ心筋の壊死を防止することが できるかは不明である.Reimerらの犬を使った 実験では,40分間冠動脈血流を遮断すると心内膜 側に壊死を生じ,6∼24時間の血流遮断で貫壁性 の壊死となる.そのため,冠動脈血流遮断後3時 間以内に再灌流すれぽ虚血部心筋を壊死から救う ことが可能であるが,6時間での再灌流では殆ど 救助することはできないと報告している49>,した がって,ヒトでICTの効果を得るためには,その 施行時にまだ生存心筋が残存していることが必要 であり,少なくとも発症後3時間以内に梗塞部の 冠血流を再開しなければICTの効果を得ること 表7 冠動脈内血栓溶解療法の治療成績(Randomized study) 報告者 例数 テまでの時間発症から治 投与量 投与時間 血栓溶解率 急性期死亡率 (報告年) (時間) (×1041U) (分) 治療群 対照群 治療群 対照群 P K鵬§㌫ 134 4.5 28.6±7.78 72±24 69% 一% 3.7% 11.2% 0.02 (1985)39) Khaja4ω 40 5.4 25 50 60 10 5 10 NS (1983) Anderson4D 50 3.97 21,5±7.9 66.4±27 79 4.2 15.4 NS (1983) LeibofF42} 55 4 24 75 68 17 9.1 5.6 NS (1984) Anderson43) 50 43±L4 21.21C 56±20 87 一 4.3 15 NS (1984) 27 2.8±1,0 84.51V 300 85 一 18.5 Alderman44) 28 3.38 34,33751C 80 73 一 6.7 『 NS (1984) 72.52051V 85 62 7.7 』 Raizner45) 64 6 25 65 72 16 14 11 NS (1985) De Coster461 48 4.08±0,95 23.6957 45 87 29 4.2 12.5 NS (1985) IC:冠動脈内注入 IV:静脈内投与 一187

(13)

表8 冠動脈内血栓溶解療法の成績(東女医大心研CCU) 血栓溶解療法終了直後 の冠動脈狭窄度 完全閉塞 37例 (72.5%) 不完全閉塞 再開通群 22例 (59.5%) 既開通群 14例 (27.5%) 非開通群 15例 (40.5%) ニトログリセリン投与後 の冠動脈狭窄度 99% 7で 旺(50%) 90% 6イ列(43%) 75% 1イ 匹( 7%) 99% 9イ列(41%) 90% 11イ 旺(50%) 75% 2fダ0( 9%) 100% !4イ 畦(93%) { 99% 1で列( 7%) (造影遅延著明) 99% 3イダ唖(21%) 90% 9イ σ(64%) 75% 1イダ岨( 7%) 25% 1{列( 7%) は難しいと考えられる.しかし,ヒトの場合には 心筋梗塞発症前にすでに梗塞責任冠動脈には動脈 硬化が高度に進展していることが多く,そのため に側副血行を有していることもあり,再開通まで の時間を厳密に規定することはできないが,冠動 脈の閉塞時間は短時間であれぽあるほどICTの 有効性は高いと思われる.そのほか,梗塞責任冠 動脈の支配領域の大きさ,再開通後の冠血流の程 度,側副血行路の発達程度,再開通後の再閉塞の 有無,非梗塞部の壁運動の状態などの要因が複雑 に関与するため,ICTの心機能に及ぼす効果の評 価は簡単ではない.表9に最近のいくつかの成績 をまとめてみた.左室駆出率(左室造影法やアイ ソトープによる心プール法など)でみた心機能は, 成功群でぱ血流再開通直後には改善を認め難い が,10∼14日以後には改善されたのに対し,不成 功群では不変ないし悪化したとする報告があ る41)43)4‘)46>50)52)∼54).一方,再開通に成功しても不成 功群や対照群に比べて差が認められない,改善ぱ わずかにすぎないとする報告もみられる42》51), (3)心筋梗塞症急性期の死亡率からみたICT の効果 急性期の死亡率からみたICTの有効性につい ては無作為試験による成績を表7に示す.治療群 の急性期死亡率ば3.7∼18.5%,平均7.7%に対し て対照群のそれは5.6∼15.4%,平均11.5%で, ICT治療群がより低率であった.しかし,有意差 がみられたのはわずかにKennedyら38)39)の報告 のみであった.

一方,無作為試験ではないがSociety for Car−

diac Angiographyによる多数例の報告55)によれ ぽ,1,029例にPTCRを行い,再開通魔が71.2% で,再開通例の死亡率5。5%は非開通例の14.7%に 比し有意に低率であった.また,Weinsteinは224 例のPTCRで78.6%に再開通をみ,再開通例の死 亡率は4.5%で,非開通例の18.8%,PTCR非施行 例の14.6%に比し有意に低値であったと述べてい

る56).TimmisらもPTCR施行例の死亡率が

4.7%に対し,非施行例では11.8%と有意に低率で あったとしている57).これらの結果から心筋梗塞 発症早期にICT療法を行い,再開通が得られれぽ 急性期の死亡率を減少させることが可能ではない かと思われる.

11.AMIの急性期予後

図9に著者らのCCU発足時から最近までの20

年間における院内死亡率と死因の変遷を示す.1 ∼VI期の区切りは便宜的なものである.全体を通 じての死亡率は1,639例中342例(20.9%)である が,各期毎に死亡率は減少している.心電図や血 行動態の連続監視,抗不整脈薬の進歩,積極的な 降圧療法,ドパミンやドブタミンなどのカテコー ルアミン,血管拡張薬療法,呼吸管理,人工透析, IABPなどの補助循環および外科治療の進歩など によって,心不全死,不整脈死,心破裂死などの 減少していることがわかる.

昭和57年4月から61年12月までに当院CCUに

(14)

表9 冠動脈内血栓溶解療法の心機能に及ぼす効果 報告者 心機能 適応 例 成功例 例 不成功罪ないし対照群 (報告年) の指標 (時間 ネ内) 数 急性期→慢性期 P 数 急性期→慢性期 P Schuler5D) 201Tl欠損像 4 16 36%一→19% <0.001 5 40 41 NS (1982) SK十CABG Sheehan5D 駆出率 3 22 57% 59% NS 10 53 46 0,005 (1983) (左室造影) 20 54%SKのみ50% NS

RentrOP52) 駆出率 6 89 」EF 2.4%増 0.04 17 」EF 2.5%減 NS

(1984) (造影法) 42 4EF 4.6%増 @ (側副血行+) く0.Ol 83 ∠EF 1.5%増 @ (側副血行一) NS 19 ∠EF 7.6%増 演 造影時既開通群 0.03

Anderson41) 駆出率 4 23 」EF 3.9±4.6%増 22 』EF 3.0±8.4%減 成功例との

(1983) (アイソトープ) 間にP〈0.01

局所壁運動 22 」index O.208増 20 Jindex O.003増 〃

(心エコー) Anderson43) @(1984) 駆出率 iアイソトープ) 4 21 48,5%一49.7%@ (IC群) NS 22 」LVEF 3.0±8.4%減 2! 47.7%一一一→53.8% @ (IV群) <0.08 局所壁運動 i心エコー) 20 ∠index O.29増 @ (IC群) <0,01 20 ∠index O.31増 @ (IV群) <0.02 LeibofE42} 駆出率 4 18 41.4%一→40.3% NS 20 46.2%一→44% NS (1984) (アイソトープ)

Charuzi53) 壁運動 3 !8 index 39%一→43% <0.0005 10 index 38%一→39% NS

(1984) (心エコー) 18 %NCP 22%一→13% 〈0.0005 10 %NCP 24%一→22% NS Schwarz54) 駆出率 6 20 46%一→51%(IC群) NS 9 46%一一→41% 〈0,05 (1984) (造影法) 15 46%一→61%αV群) 〈0,001 局所駆出率 20 24%一→29%(IC群) NS 9 23%一一一→21% NS (造影法) 15 24%一→42%(IV群) <0.001 20’sl欠損像 20 38%一→26%(IC群) <0,01 9 37%一→31% NS 15 41%一→21%(IV群) <0,01 De Coster46) 201Tl欠損像 3 26 40%一→14% <0.001 18 37%一→33% NS (1985) Raizner45} 駆出率 6 16 42%一→49% 0,023 6 45%一→39%(不成功例) NS (1985) (アイソトープ) 16 48%一50%(対照例) NS 局所駆出率 25 33%一→45% 0,003 9 37%一→32%(不成功例) NS (アイソトープ) 22 34%一→38%(対照例) NS IC:冠動脈内注入 IV:静脈内投与

入院したAMI連続440例の院内死亡は72例

(16.4%)で,うち心臓死は66例(15%)であった (心臓死以外は肺炎3例,脳障害1例,胃癌からの 出血1例,腹部動脈瘤破裂1例)(表10).主要死 因として最も多い心原性ショックは46例(69.7%) で,今日でも依然として多い.そのほか表10に示 すように左室自由壁破裂,心不全,不整脈,心室 中隔穿孔,原因不明の突然死(臨床的には心破裂, 再梗塞,不整脈各1例の疑い)の順であった. 入院時Killip分類1,2型に計22例(33.3%) のポンプ失調死がみられる(表11)が,これらの 主なものは虚血発作の反復または再梗塞によって ポンプ失調を合併し死亡している.不整脈死の3

例中2例も再梗塞発症早期のVT・VFによるも

のであった.Killip 1,2型で入院したにもかかわ らず再梗塞や梗塞後狭心症の関与によって死亡し ており,今後これらに対する十分な対策が死亡率 減少のためにも必要である. 一189一

(15)

o 10 20 30% 1期 {’67,日一169,10レ 62〆207 11期 c69,11−P72.6レ 70/263 1H期 (72,7」74.12, 40/η2 1V期 {ワ5.1−73.12レ 59/286 V期 C79.響」82,31 39/η1 Vi期 〔B2.4∼’66,121 丁2/440 図9 急性心筋梗塞症の死亡率と死因の変遷(東女医 大心研CCU) 表10 急性心筋梗塞症連続440例の院内死亡(心臓 死の内訳)(東女医大CCU 1982.4−1986.12) Killip分類 死因(心臓死) 例(%) 1 2 3 4 心原性ショック 46(69.7) 11 7 5 23 心不全 5(7.6) 4 0 1 0 不整脈 3(4.5) 0 2 0 1 左室自由壁破裂 6(9.1) 2 3 0 1 心室中隔穿孔 3(4.5) 1 0 1 1 突然死 3(4.5) 2 1 0 0 計 66(100) 20 13 7 26 表11 Killip分類1,2型の死因の内訳 態の詳細な:評価と病態に応じた的確な治療が可能 となってきた.また,梗塞発症後早期に再戦流療 法などの積極的な治療がなされるようになって急 性期予後も改善されてきた.しかし,依然として 心原性ショック死や再梗塞にともなうポンプ失調 死は多く,救命のために,人工心臓などのさらに 強力な治療手段の進歩が待たれるとともに,今後 は心筋梗塞の発生機序の解明とその予防の研究が 期待される. Killip分類1,2型のポンプ失調死 ・狭心発作の反復による悪化 ・再梗塞による悪イヒ ・梗塞発症早期のVfを契機とした悪化 ・PTCA施行中の悪化 ・入院後自然悪化 不整脈死 ・再梗塞発症早期のVT・Vf ・梗塞発症3日目に突然Vf(K・4) 突然死 ・心破裂疑い ・再梗塞疑い ・不整脈死疑い 22イ 暉(33,3%) 8 7 3 2 2 3{列( 4、5%) 2 1 3イ U(4.5%) 1 1 1 おわりに

CCUの進歩によって,ベッドサイドでの

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参照

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