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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ミャンマーにおけるコメの生産性および品質向上の ための実証的研究 : 水稲品種の種子増殖における遺 伝的純度の向上および作期と地域による農業形質の 変異

藤井, 知之

http://hdl.handle.net/2324/4110555

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

ミャンマーにおけるコメの生産性および

品質向上のための実証的研究

-水稲品種の種子増殖における遺伝的純度の向上および作期と地域による農業形質の変異-

藤井 知之

2020

(3)

要 旨

ミャンマー農業において稲作はもっとも重要な位置にあり、全耕地面積の

47.4 %を水田が占める。しかし生産量、とくに単収は3.9 t/haであり、他のア

ジア諸国の 5.0 t/ha 前後に比べて低い。これまで国際機関や援助国政府により 稲作技術の改善に関する支援が多数行われており、2011年からは日本政府によ る種子品質向上プロジェクトも実施されている。しかし、それら技術支援の効果 に関する科学的な実証研究はなされていない。

本研究は、ミャンマーのコメ生産における課題の分析、水稲品種の遺伝的安定 性の検証、および異なる環境下での品種特性の解明をつうじて、日本が同国で実 施している優良種子増殖普及システム支援に対する効果を科学的に検証し、ミ ャンマーのコメの生産性と品質向上に資することを目的とする。

まず、現地視察、関係者への聞取りおよび政府統計資料により、イネ品種の栽 培・普及、育種家種子(Breeder Seed: BS)から保証種子(Certified Seed: CS)

に至る種子増殖の現状を調査した。その結果、同国ではイネの生産に自家採種種 子を使用する農家が多いこと、CSの元種となるBSはバルクにした穂系統より 増殖されているため家系が混ざり、品種劣化が生じていることを示した。

次に系譜情報を付与した系統栽培法(Line cultivation method)によるBS増 殖の効果を検証するため、対象 9 品種の出穂期、稈長、穂長および穂数につい て、2012年から経年的に調査した。その結果、2016年には全品種の出穂始期か ら穂揃い期までの期間が平均 3 日短縮した。また、調査した農業形質の変異の 幅が有意に減少し、かつ全農業形質に対する分散比も高くなった。DNA多型の 解析では、代表的品種Sinthukha を用いて、遺伝的な均一性を分析した。その 結果、2014 年と 2016 年の BS には多型が検出されないことを確認した。以上 より、BS増殖には系統栽培法が遺伝的純度の向上と維持に有効であると結論づ けた。

さらに、系統栽培法により遺伝的純度が向上した種子を供試し、雨期と乾期の 農業形質の変異を解明するため、8 品種(非・弱感光性)を用いて、2014 年か

(4)

ら2016年まで、イエジン、モービー、およびミャウンミャで、栽培試験を行い、

出穂期、稈長、穂長、穂数および収量をTukey-Kramer法およびANOVAで評 価した。その結果、出穂期は全ての品種で雨期と乾期および場所の違いにより変 動し、品種の早晩性により変動の幅が異なること、稈長は雨期に伸長が促進され ること、および収量は短稈品種と中・長稈品種の収量が雨期と乾期で逆転する傾 向があることを確認した。これらは昼夜の気温の違いや日射量、および乾期水田 の乾土効果によるものと推察される。また出穂期、稈長および収量で、品種と作 期、および品種と場所の交互作用が認められ、作期および場所の違いによって農 業形質の品種間差が異なった。ミャンマーの環境は変化に富むことから、品種特 性を活かして生産性を向上させるためには、作期や場所に応じた奨励品種の選 定が重要であることが示唆された。

最後に、CSの供給によりコメの生産性がどの程度上がるかを検証した。農家 調査の結果、系統栽培法によるBS増殖に基づくCSを使用した農家の単収は使 用しない農家と比較して、雨期で14.6%、乾期で13.3% 増収した。ミャンマー の全農家が高品質のCS を使用すれば、単収は 4.4 t/haとなり、9.7%の増収が 期待できると試算された。

以上より、系統栽培法によるBS増殖は遺伝的純度を向上させ、品種の維持に 有効であることが示された。さらに、同一品種でも雨期と乾期の農業形質に有意 な違いが見られることから、ミャンマーの多様な環境の中で、本来の品種特性を 備えたCSを使用し、作期や地域に適合した品種を選定することの重要性が確認 された。これらより、高品質のCSを供給することはコメの生産性を上げること が本研究で示された。

(5)

目 次

第1章 緒論 1

第2章 ミャンマーのイネ品種-育種・栽培・普及の現状および課題 5

調査方法 6

1.作付け品種、育種および栽培等に関連する資料・情報の収集 6

2.種子増殖および普及に関連する資料・情報の収集 7

3.その他の資料・情報の収集 7

調査結果 8

1.ミャンマーにおける農地区分と農業立地区分 8

2.ミャンマーにおけるイネ品種の分類と分布 12

3.ミャンマーにおけるイネ生産の現状 18

4.ミャンマーのイネ品種育成の変遷と課題 24

5.ミャンマーにおけるイネの種子増殖と普及の課題 29

考察 38

第3章 主要水稲品種の遺伝的純化のための系統栽培法 (Line cultivation method) による育種家種子の増殖 40

材料および方法 43

1.供試品種 43

2.栽培方法 44

3.農業形質の調査方法 45

4.農業形質の調査結果の分析方法 49

5.DNAマーカー分析 50

結果 53

1.農業形質の分析 53

2.DNAマーカー分析 59

(6)

考察 61

第4章 主要水稲8品種の雨期と乾期における農業形質の変異 65

材料および方法 67

1.供試品種と栽培方法 67

2.試験地 67

3.調査方法 68

4.統計処理 68

結果 74

1.遺伝子型、作期、場所による表現型の違い 74

2.分散分析による遺伝子型と環境の交互作用(G×E) 83

考察 87

第 5章 総合考察 92

ミャンマーのコメ生産と品種 92

系統栽培法の導入によるBSの遺伝的純化の効果 94

農業立地環境と品種の選定 96

雨期と乾期の農業形質の変異の態様と環境要因 97

コメの生産性と品質向上の可能性 102

第6章 結論 106

謝辞 109

引用文献 111

SUMMARY 124

(7)

1

第 1 章 緒論

世界のコメ総生産量は食糧農業機構(Food and Agricultural Organization:

FAO)統計(2018)によれば、2017年現在、769,829千tである。その内、中

国、インド、インドネシアをはじめとする上位10ヵ国で660,465千t(85.8 %)

が生産されている。かつては世界一のコメ輸出大国であったミャンマーは、ベト ナム、タイに次いで第7位(25,625千t)の生産国となっている。更に、同国の 単位面積当たり収量(単収)は上位10ヵ国の平均(4.7 t/h)より低く、第9位

(3.8 t/h)である(ミャンマー農業畜産灌漑省:MOALIの 2018年度統計では、

2017年の作付面積: 7,256千 ha、収穫面積: 7,169千 ha、生産量: 28,092千 t、単収: 3.92 t/ha)。アセアン8ヵ国の中でも、2000年から2017年まで順調に 単収を伸ばしてきたベトナム(5.5 t/h)、インドネシア(5.2 t/h)、ラオス(4.2 t/h)、マレーシア(4.2 t/h)、フィリピン(4.0 t/h)に対して、ミャンマーは2010 年以降、単収の増加が停滞し、作付面積および灌漑面積の拡大が停滞するなか、

生産量は横ばいとなっている(FAO, 2018; MOALI, 2018)。近年、コメの貿易 量は世界的に増加傾向にあり、タイおよびベトナムは1990年頃から急速に輸出 を拡大している(伊東, 2010)。

(8)

2

ミャンマーは一貫したコメ増産政策の下、70 年代末には高収量品種の導入に よる単収の増加、90 年代にはポンプ灌漑による乾期作で作付面積の拡大を図っ てきた。また、世界銀行(WB)、国連開発計画(UNDP)、国際イネ研究所(IRRI)

および2国間援助機関が灌漑、栽培、育種、種子増殖をはじめとしたコメ生産分 野の支援を行ってきた。しかし、同国は社会・経済政策や技術開発・普及に多く の課題を抱え、十分な成果を挙げることができなかった。

2011年にミャンマーは民主化路線を歩み始め、市場経済化とともに農業政策 も大きな転換期に入った。2012年に土地法が改正され、規制されていた土地利 用(計画栽培制度)が緩和され、農業灌漑省(当時)により統制されてきた作付 け作物や品種の選定に農家の意向が反映されるようになった。また、2012年に コメの輸出が全面自由化され、民間企業の参入により輸出量が大幅に増加した。

一方、輸出拡大に伴いミャンマーは、インド、ベトナム、タイ等、他の輸出国と の競争に曝され、売買価格に直接影響する生産性および品質の問題が浮き彫り になってきた。

ミャンマーが再びコメ輸出大国になるには,社会経済問題の解決、技術開発と 普及等さまざまな課題を解決していく必要がある。しかし,アジアの近隣国は農 業技術を発展させ、コメの生産性と品質を年々向上させて競争力を高めており、

ミャンマーを取り巻くコメの輸出環境は厳しくなっている。このような状況の 下、限られた資金、人材および時間のなかでミャンマーが採るべき方針は、コメ 輸出の量的拡大を優先するのではなく,まずは農家の生計向上を図り国内の生 産基盤を整備し、質・量のバランスを取りつつ安定した生産体制を構築、維持、

強化することが重要であると思われる。そのためには、灌漑インフラ整備、農業 技術開発・普及、育種、種子増殖、機械化等、山積する課題に優先順位をつけて 一つずつ着実に実行し、その成果を社会・経済面のみならす、科学的に評価する ことが重要である。この評価過程をつうじて関連分野の人材が育成され、技術が 発展してくと考えられる。ミャンマーでは、コメの生産性と品質向上のための 様々な課題の中で、高度な技術や高額な資金を必要とせず、費用対効果が高く、

農家や農業畜産灌漑省等ミャンマーの農業関係者にとって受入れ易い技術は、

(9)

3

優良種子の増殖・普及および立地環境に適応した品種の選定であると考えられ る。

筆者はJICAがミャンマーで2011年から2017年まで実施したプロジェクト 方式の技術協力「農民参加による優良種子増殖普及システム確立計画プロジェ クト」にチーフアドバイザーとして参加し、5年7か月間イネ種子増殖に携わっ た。当時、育種家種子の増殖は穂系統法と称して穂選抜により系統を維持してい たが、毎年姉妹系統を混ぜていたことから、当該年度の系統と前年度の系統の関 係が分からず、家系を遡及することができなかった。そのため育種家種子をはじ め原原種種子や原種種子の遺伝的純度が低かったと考えられた。また、肥料反応 が高い高収量品種が雨期の天水田で冠水したり、長稈・晩生の地方品種が灌漑水 田で倒伏したりする事例が散見され、奨励品種の選択にも課題があるように思 われた。このように同国のコメ生産が多くの課題と矛盾を抱えながらも、一方で は改善の余地が多く残されている、という点でミャンマーは生産性と品質向上 のポテンシャルが高いと思われる。

種子増殖において全国で唯一、育種家種子を増殖、配布する農業研究局イエジ ン本部での育種家種子の遺伝的純化は、全国の種子農場で増殖される原原種種 子、原種種子および種子生産農家が増殖する保証種子の品質に直接影響を及ぼ すことから、コメの生産性と品質を向上させるためには、効果・効率性が高いと 思われる。加えて、遺伝的に純化された品種の特性を評価することは、各地域に 栽培されている品種を見直し、適正品種を選定する上で重要であると考えられ る。

本論文では、ミャンマーのコメ生産に関する課題を抽出・分析し、主要水稲品 種の遺伝的安定性の検証と、異なる環境下での品種特性の解明をつうじて、JICA 技術協力による種子品質向上の取り組み効果を科学的に実証するとともに、同 国におけるコメ生産性と品質向上の可能性を検討することを目的とした。

この目的を達成するために、まず第 2 章で、ミャンマーのコメ生産性と品質 向上を念頭に、水稲品種の育種と普及に関する現状と課題を、同国農業畜産灌漑 省の統計データをはじめ、既存の文献、資料の調査・分析および現地視察と関係

(10)

4

者からの聞き取り調査等をつうじて明らかにした。第3章では、DAR-Yezinで 主要水稲 9 品種の育種家種子の増殖に系統栽培法を導入し、これら品種の農業 形質の経年変化の分析、およびSinthukhaのSSRマーカーによるDNA多型解 析をつうじて農業形質の遺伝的安定性と遺伝的純度の向上を検証し、育種家種 子の適切な増殖方法を検討した。第 4 章では、主要水稲 8 品種を対象に、雨期 と乾期に異なる場所における出穂期、稈長、穂長、穂数および収量の変異を

Tukey-Kramer 法および ANOVA で評価した。またこれらの評価をつうじて、地

域に適合する品種選定のための観点を検討した。最後に第 5 章で、第 1 章の調 査結果と第 2 章および第 3 章の試験結果に基づき、ミャンマーにおけるコメの 生産性および品質向上の可能性について考察した。

(11)

5

第2章 ミャンマーのイネ品種

-育種・栽培・普及の現状と 課題

ミャンマーはコメ増産を政策の最重要課題として掲げ 1974 年に IRTP (International Rice Testing Program、現在のINGER: International Network for Genetic Evaluation of Rice)に参加して以来、高収量品種 (HYV: High

Yielding Variety)の導入を推進するとともに、1990年代には乾期作の奨励、耕

作不適地への作付面積拡大等により生産量の増加を図ってきた。

2011年3月に民主化路線を歩み始めたミャンマーは、地域経済の発展と貧困 削減の有効な手段としてコメの生産性と品質の向上を推進するとともに、2012 年には輸出を全面自由化した。その結果 2017 年に 300 万トンを超えるコメを 輸出し、さらに2019/20年には350万トンの輸出目標を掲げており、2016年に 発足した新政権も基本的にこの方針を踏襲している。しかし、中国、ベトナム、

インドネシアなど他のHYV導入国が2000年代に入って、5.9 t/haあるいはそれ以上 の単収を得ている一方、ミャンマーでは 3.9 t/ha と横ばいの状態が続いており、生産 性、価格、品質面で輸出競争力が相対的に低いことから、輸出量も安定していな い(MOALI, 2018)。

その原因について、農業経済の観点から様々な調査・研究が行われ、灌漑イン

(12)

6

フラ整備等の公共投資や機械化、化学肥料、農薬等投入資材の不足、さらには、

歴代政権が執ってきた供出制度等コメ政策自体の矛盾が指摘されている(斎藤, 1987; 高橋, 1992;高橋, 2000; 藤田・岡本, 2005)。また、順調に単収を向上さ せているベトナムと比較して新品種育成の停滞および品質管理された種籾が充 分に流通しておらず、自家採種した種子が使用されていることが原因の一つで あるとする報告もある(Kubo, 2013)。一方、農学的観点から、コメの生産性と 品質を向上させるためには土壌管理、水管理、施肥方法および防除等、栽培技術 の改善、生産性の高い良食味品種の育成、優良種子の増殖・普及、適正品種の選 定、および収穫後処理方法の改善等様々な課題が挙げられる。ミャンマーではこ れらの課題解決のための取組が始まったばかりで、いずれの技術分野も生産性 と品質向上のポテンシャルは多く残されていると考えられる。

現在、ミャンマーのイネ品種に関するまとまった報告や資料が存在しないこ とから、本調査の結果は同国のコメ生産性および品質向上のための課題の抽出 のみならず、将来の開発計画策定にも有用であると思われる。

調査方法

1. 作付け品種、育種および栽培等に関連する資料・情報の収集

作 付 け 、 灌 漑 等 農 業 全 般 の デ ー タ は 国 家 計 画 ・ 経 済 開 発 省 が 発 行 す る

“Myanmar Statistical Yearbook 2018”および MOALI が発行する“Myanmar Agriculture at Glance 2018”から、雨期の地域・州および品種別作付面積に関 しては農業畜産灌漑省(Ministry of Agriculture Livestock and Irrigation:

MOALI)農業局(Department of Agriculture: DOA)普及課が発行する“Annual Report of Extension Division”の2008~2012年度版から引用した。乾期につ いては右資料に掲載されていないことから、DOA 普及課が取りまとめた内部 資料から引用した。データが欠落している年度については直接 DOA の地域・

州事務所へ問い合わせを行った。また、品種育成等についてはMOALI農業研

(13)

7

究局イエジン本部 (Department of Agricultural Research at Yezin: DAR- Yezin)、イエジン農業大学、DOA種子課 (Seed Division) インセイン事務所お よびヤンゴン経済大学の各図書室からの関連図書、資料収集および関係部局担 当者からの聞き取り調査を行った。

2. 種子増殖および普及に関連する資料・情報の収集

DAR-Yezinのイネ課が毎年増殖し全国のDOA種子課傘下の種子農場へ配布

している育種家種子(Breeder Seed: BS)の配布先リスト、DOA種子課が全国 種子農場の原原種種子(Foundation Seed: FS)および原種種子(Register Seed:

RS)生産量を集計した資料、DOA普及課が全県の保証種子(Certified Seed: CS)

増殖量を集計した資料および各種子農場職員からの聞き取り調査結果から引用 した。なお、上述した資料のうちミャンマー語の資料は適宜英語へ翻訳した。

3. その他の資料・情報の収集

歴代政権の執ったコメ政策についてはミャンマー農業・農村経済の文献を中 心に情報を収集した。また、藤井が従事した (独) 国際協力機構による「農民参 加による優良種子増殖・普及システム強化計画プロジェクト」(2011 年 8 月~

2017年3月)の各種活動および調査資料も本章の参考資料とした。

なお、ミャンマーの統計資料には独自の度量衡が使用されおり、統計値の単位 にはヤード・ポンド法、メートル法、在来法が混在している。2017 年からはメ ートル法への統一を図っているが、なお従来の単位で示されている場合もある。

度量衡の在来法としては以下がある:

1ジィン=約2.7㎡ (砂や砂利に計量単位で10フィート×10フィート×1フ ィートの容積)

1ピー(カップ)=約8カップ=2㎏ (精米の計量)

1ピー=8ロン=0.97㎏ (糠の計量)

1ロン=250cc (精米の計量)

1バスケット=20.9㎏ =16ピー (籾の計量)

(14)

8

1バスケット=31㎏ (精米の計量)

1バスケット=15㎏ (糠の計量)

1バスケット=33㎏ (コメ砕粒の計量)

1ビス=1.66㎏ (糠の計量)

1ティン=16ピー (籾を計量するバスケット)

1エィ(バッグ)=24ピー(精米の計量)=1.5バスケット=約50㎏ 1ペィーター=約1.633㎏=3.6バスケット

1テセィダー=約163g 1チャッタ=約16.3g

とくに、イネの生産量で用いられる「バスケット(basket)」は容積の単位であ り重量換算には注意を要する。

調査結果

1. ミャンマーにおける農地区分と農業立地区分 農地面積と農地の分類

ミャンマーの耕作面積は2017/18 年現在、13,395千haで耕作地は6 種類に 分類されている。すなわち、①水田 (Le) 47.4%、②マメ類、綿花等1年生作物 が作付される畑(Ya) 31.2%、③乾期に河川の氾濫原に野菜等が作付される畑 (Kaing) 4.1%、④果樹やゴム等の多年生作物が作付される樹園 (Uyin hcan) 15.3%、⑤ニッパヤシ園 (Dhani) 0.3%、⑥山間地の焼畑や常畑 (Taungya) 1.7%

である。耕作地の総灌漑面積は2,212千ha、灌漑面積率は16.5%で、うち水田 の灌漑面積は延べ1,999.0千ha、灌漑面積率27.5%であり、1995/96年の水田 灌漑面積率28.8%からほぼ横ばいの状態が続いている (MNPED, 2018)。他方、

コメの作付け環境では天水田地域 46%、灌漑水田地域 22%、深水・冠水地域 14%、乾燥地域12%、塩害地域3%および陸稲地域3% (Hmwe, 2016) となっ ている。

(15)

9

農業立地区分

ミャンマーの国土の大部分は季節風の影響によって雨期(5 月下旬~10 月下 旬)と乾期(11月上旬~5 月中旬)に分けられる(図2-1)。すなわち、湿った 南西モンスーンが吹く雨期は地域により700mmから5000mmと降水量の差が 著しく異なるものの全国的に降雨がある。一方、乾期は大陸から吹く乾燥した北 東モンスーンにより全国的に雨が少なく、特に1月、2 月はほとんどの地域で 10mm以下となる。さらに、乾期は12月から2月に夜温の下がる涼期と昼夜気 温の高い暑期に分けられる。ミャンマーの農業立地区分はこの気候条件および 地理的条件によりデルタ地域(Delta Zone)、中部乾燥地域(Central Dry Zone)、 丘陵山岳地域(Mountainous Zone)および沿岸地域(Coastal Zone)の4つに 区分されている(Matsuda, 2009)。

a. デルタ地域:

エイヤーワディ地域、ヤンゴン地域、バゴー地域はエイヤーワディ川およびシッ タウン川の河口平野部に広がるデルタ地域にあり「下ミャンマー」と呼ばれてい る。植民地期の1900年代初頭に入植政策や輪中堤建設によりデルタ地域の開発 が行われた。ミャンマーの米櫃(Rice bowl) と称され、雨期と乾期を合わせて 全国コメ生産量の約50%を生産している。同地域は熱帯モンスーン気候区(Am)

に属し雨期に3000~4000mmの降雨があり、ほぼ全域で天水田稲作が行われて いる。一方、乾期はエイヤーワディ地域ミャウンミャ県と周辺地域およびヤンゴ ン地域の一部で河川からのポンプ灌漑、バゴー地域では河川からの重力灌漑に より灌漑稲作が行われている。また、その他の地域ではケツルアズキ、緑豆、蔬 菜、花卉等が栽培されている。

b. 中央乾燥地域

ミャンマーのほぼ中央、マンダレー地域、ザガイン地域南部、マグウェイ地域 に跨る平原地帯で「上ミャンマー」と呼ばれている。サバナ気候区(Aw)に属 し雨期の降水量が 600~1000mm と寡雨地帯であるが、西暦 1000 年代のバガ ン王朝時代から溜池灌漑やエイヤーワディ川から取水してマンダレー、チャウ セ、シュエボーなど一部の地域では雨期のみならず乾期も灌漑稲作が行われて

(16)

10

きた農業地帯である(根本, 2014)。一方、灌漑施設のない地域では落花生、ゴ マ、キマメ、緑豆、玉葱等が栽培され、これらの作物は全国生産量の約50~90%

を占めている。首都ネピドーの行政地区も中央乾燥地の南に位置しており、一部 では雨期・乾期を通じてダムや溜池よる灌漑稲作が行われている。

c. 丘陵山岳地域

温暖冬季少雨気候区(Cwa)に属し、東部はタイ、ラオス、北部は中国、イン ド、西部はバングラデシュに接するカチン州、カヤー州、カイン州、チン州、シ ャン州およびザガイン地域北部が含まれる。これらの地域は多様な民族、文化、

社会が混在している。以前はトウモロコシやイモ類を主食としていた地域もあ ったが、軍事政権時代のコメ増産政策により、現在ではほとんどの地域でコメが 主食となっている。これら多くの地域では陸稲やトウモロコシ、野菜、果樹等が 栽培されているが、標高1000m前後の一部の丘陵山岳地域では小規模河川によ る灌漑稲作が雨期・乾期を通じて行われている。

d. 沿岸地域

熱帯モンスーン帯(Am)に属する沿岸のラカイン州、モン州、タニンダーイ ー地域ではデルタ地域より多い4000~5000mmの降雨がある。雨期は天水田に おける稲作、乾期はマメ類が作付されている。また,ゴム、バナナ、パイナップ ル等の栽培も広く行われている。

(17)

11

図 2-1.ミャンマーの農業立地区分と降雨量および平均気温

Gullivar and Latham, 2005に基づく

600 800 1400

1000 1200

400 200 0 15

20 35

25 30

10 5 0 15 20 35

25 30

10 5 0

600 800 1400

1000 1200

400 200 0

ダウェー シットウェ

15 20 35

25 30

10 5 0

600 800 1400

1000 1200

400 200 0

マンダレー

15 20 35

25 30

10 5 0

600 800 1400

1000 1200

400 200 0

タウンジー パテイン

600 800 1400

1000 1200

400 200 0 15

20 35

25 30

10 5 0

ヤンゴン

J F MA MJ J A S O N D 15

20 35

25 30

10 5 0

600 800 1400

1000 1200

400 200 0 J F MA MJ J A S O N D

J F MA MJ J A S O N D

J F MA MJ J A S O N D

J F MA MJ J A S O N D J F MA MJ J A S O N D

mm mm

mm mm

mm

mm

インド

カチン

シャン

中央乾燥地域 沿岸地域

カヤ マンダレー

バゴー ザガイン

チン

ラカイン

マグウェイ

モン エイヤ-ワディ

ヤンゴン

タニンターリー カイン

デルタ地域 丘陵山岳地域

(18)

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2. ミャンマーにおけるイネ品種の分類と分布 イネ品種の分類

ミャンマーの主要品種を表2-1に示す。MOALIではこれら栽培品種を高収量 品種 (High Yielding Variety: HYV)、高品質米 (High Quality Variety: HQV)、

地方品種 (Local Variety: LV)およびハイブリッド品種 (F1)に分類し、それらが 同省の作付け計画や統計資料等に広く利用されている。HQVは、HYVとLVの なかで商品価値の高い香り米や輸出用の超長粒米で、Pawsan 種、Innmayebaw、

Ayeyarmin、Hmawbi-2、Sinakari-3 等が分類されている。

一方、植民地政府の農業技術者Beal は1927年に籾と精米を、長さおよび長 さを幅で除した長幅比により A: Emata (籾の場合:長さ 9.4mm 以上、長幅比 3.3)、B: Letywesin (長さ8.4~9.8、長幅比2.8~3.3)、C: Ngasein (長さ7.75~

9.0、長幅比2.4~2.8)、D: Meedon (長さ7.35~8.6、長幅比2.0~2.4) およびE:

Byat (長さ 9.0 以上、長幅比 2.25~3.0) に 5 分類した (Grant, 1932; MOAI, 2004)。当時コメ輸出により外貨獲得を促進してきた植民地政府は、この分類を 純系選抜育種したLVの登録から普及、流通、貿易まで一般的な品種分類とし使 用していた。現在も仲買、精米等の流通・加工業界のみならず、MOALIも品種 分類として広く使用している。他方、生育期間により、125日以下はThet-lyin

(早生)、126日から150日まではThet-lat(中生)、151日以上はThet-kyi(晩 生)と分類されている (MOAI, 2004)。この分類方法はHYV導入以前のパガン 王朝時代には、Kaukyin :150日以下、Kauklat:150~170日、Kaukkyi:170日 以上、Mayin: 雨期後の作付け種に分類されていた (Grant, 1932)。これらは現 在もLV名あるいはLVの総称として使用される場合がある。

表2-1から、後述する1990年代からMOALIが推進したポンプ灌漑による乾 期作の拡大にともない、同時期に短稈・早生のHYVが多くリリースされている ことがわかる。

(19)

13

2-1. ミャンマーの主要イネ品種

品種名 育成年 系譜・系統 用途 原産国等 日数 品種分類1)

Kamarkyi 1917 D17-88 深水 在来種 172-178 LV

Ngakywe 1925 D 25-4 深水 在来種 179-185 LV

Sitpwar 1928 C28-15 浮稲 在来種 152-158 LV

Hnangar 1934 B 34-1 深水 在来種 152-158 LV

Hnanwar-Meegauk 1936 A 36-3 冠水 在来種 165-171 LV

Tadaungpo 1937 C37-19 浮稲 在来種 165-171 LV

Pawsanhmwe 1944 D 44-8 Pawsan種(晩生) 香り 在来種 186-192 HQV

Pawsanyin 不明 Pawsan種(中生) 香り 在来種 152-158 HQV

Taungyar 不明 陸稲 在来種 LV

Innmayebaw 不明 長粒 在来種 165-171 HQV

Kauknyin 不明 糯米 在来種 LV

Khaonamkhan 不明 長稈 在来種 138-144 LV

Pawsanbaykyar 1960 D 60-8 Pawsan種(晩生) 香り 在来種 179-185 HQV

Yarkyaw-2 1968 IR5 短稈 フィリピン 145 HYV

IR-747 1972 IR747-B2-6-3 短稈 フィリピン 100 HYV

Shwewartun 1974 IR5 γ線突然変異種 中稈 DAR育成種 145 HYV

Manawhari 1974 Mashuri 中稈 マレーシア 140 HYV

Ayeyarmin 1977 Machando 長粒 マレーシア 140 HQV

Manawthukha 1978 Mashuru-M 短稈 マレーシア 135 HYV

Kyawzeya 1980 X 70-18-32 (IR5/Aungzeya) 中稈 DAR交配種 140 HYV

Yarsaba-1 1981 C-22 陸稲 フィリピン 125-130 HYV

Shwethweyin 1982 IR50 短稈 フィリピン 105 HYV

Yarsaba-8 1984 YN 92-17 (C-22/IR 2135-26-3-5-2) 陸稲 DAR交配種 125 HYV

Sinakari-3 1985 RD-23 B 長粒 タイ 135 HQV

Hmawbi-2 1985 IR21836-90-3 長粒 フィリピン 140 HQV

Nantharhmwe 1985 Basmati 370 香り パキスタン 120 HQV

Lonethwehmwe 1986 KDM 105 香り タイ 152-158 HQV

Theedatyin 1991 IR13240-108-2-2-3 短稈 フィリピン 110 HYV

Yadanaraung 1994 IR41985-111-3-2-2- (PSBRC-4) 短稈 フィリピン 105 HYV Shwemyanmar 2001 RP1674-690-39-14 (M63-83/IRAT-8//N-22) 短稈 フィリピン 115 HYV

Thukhayin 2001 Manawthukhaγ線突然変異種 短稈 DAR育成種 115 HYV

Yezinlonethwe 2001 KDM 105γ線突然変異種 短稈 DAR育成種 125 HYV

Sinthwelatt 2005 IR53936-60-3-2-3-1 長粒 フィリピン 135 HYV

Sinthukha 2007 IRYN 1068-7-1 (Mashuri-M/IR BB-21) BLB DAR交配種 140 HYV

Yadanartoe 2008 Thai-1-9-3 E 中稈 タイ 120 HYV

Sinnweyin 2008 YN 2883-12-2-1 (IR-64/Basmati 370) 短稈 DAR交配種 110 HYV Shwepyihtay 2008 YN2841-B-1-UL26 (Htunthiri/KDM 105) 香り DAR交配種 127 HYV Salt tolerant STL 2011 YN3220-MAS-62-24 (Sinthwelatt/Pokkali) 耐塩 DAR交配種 142 HYV Yeamyokekhan-1 2011 Swanasub-1 (Swana/IR49830-7-1-2-2) 冠水 インド 155 HYV Yeanaelo-2 2011 UPLRI-7 (C22/IR26//C22/OS4) 耐乾 フィリピン 112 HYV Ministry of Agriculture and Irrigation (2004), Rice Variety in Myanmar、農業局種子部資料(2016)および農業研究局資料 (2005,2007,2008および2011)から抜粋.

1)品種分類:LV: Local variety (地方品種), HQV: High quality variety (高品質品種), HYV: High yielding variety (高収量品種).

(20)

14

イネ品種の分布

前述したミャンマー農業立地区分における雨期および乾期のイネ品種の分布 を明らかにするため表2-2を作成した。同表から、エイヤーワディ、ヤンゴン地 域等のデルタ地域では雨期はほぼ全域で天水田稲作が行われ、水管理が困難で 深水や冠水する地域が多いにもかかわらず、短稈・早生および短稈・中生HYV の作付面積が約 45%を占めている。また、エイヤーワディ地域の深水や沿岸地 域を中心に、長稈で感光性が強いLVが約32%(1,000.41 千ha)栽培されてい る。これら LV のうち香り米で高値な Pawsan 種、Pawsan 種と同じ形状の

Meedonグループ、および加工用としても利用されるHnangarが多く栽培され

ている。また、ニャウンドン郡ではTataungpoやSitpwar等の浮稲が現在も作 付けされている。一方、乾期はエイヤーワディ地域のミャウンミャ県および周辺 地域、バゴー地域等、灌漑水田の約 51%で短稈・早生 HYV の Theedatyin が 作付けされている。

中部乾燥地域では雨期の作付面積の約90%がManawthukha、Ayeyarmin等 の HYV である。マンダレー地域チャウセ郡では Ayeyarmin、ザガイン地域シ ュエボー県ではLVのPawsan種が10数年前にエイヤーワディ地域から導入さ れ雨期の灌漑水田を中心に作付面積を拡大し、ブランド米“Shwebo Pawsan” と して国内では高値で取引されている。また、乾期作は短稈・早生 HYV の

Shwethweyinが広く作付けされている。

丘陵山岳地域では陸稲 (Yarsabar、Taungya)が多くの地域で作付けされてい るが、一部灌漑稲作が行われている地域では Sinaykari-3、Manawthukha 等 HYV や F1も作付けされている。Khaonamkhan をはじめシャン州全域で作付 けされるKhao種はやや粘りのある良食味品種が多く ”Shan Rice” として国内 では高値で取引されている。沿岸地域では雨期の天水田おいてHYVが広く作付 けされている。また、一部の深水地域ではPawsan種等のLVも作付けされてい る。

(21)

15

2-2. ミャンマーの雨期と乾期における農業立地区分別主要イネ栽培品種と作付面積

農業立地区分 雨期 (2017/181) ) 乾期 (2017/18)

品種名 作付面積 (ha (%)) 品種名 作付面積 (ha (%)) 丘陵山岳地域

(カチン州、

カヤ州、

カイン州、

チン州、

シャン州)

Yarsabar*(陸稲) Sinaykari-3 Tqungyar*(陸稲) Manawthukha Thukhatun Shweyinaye Ngasein*

Sinshwewar Kuaknyin*(糯米)

183,418 (19.6) 127,318 (13.6) 162,219 (17.3) 86,311 ( 9.2) 39,607 ( 4.2) 38,849 ( 4.2) 26,338 ( 2.8) 25,098 ( 2.7) 13,199 ( 1.4)

Manawthukha Sinthukha Shweyinaye F 1 Sinshwewar Sintwelatt Ngasein*

Sinaykari-3 Others

22,165 (34.0) 18,691 (28.7) 5,362 ( 8.2) 3,112 ( 4.8) 3,023 ( 4.6) 2,747 ( 4.2) 2,259 ( 3.5) 1,815 ( 2.8) 5,961 ( 9.2) Others 146,621 (15.7)

小計 935,709 (100 ) 65,133(100 )

中央乾燥地域

(ザガイン地域、

マグウェイ地域、

マンダレー地域、

ネピドー行政区)

Ayeyarmin Manawthukha Pawsan*

Sinthukha Sinaykari-3 Hmawbi-2 Shwethweyin Manawhari Yadanatoe

315,756 (24.3) 291,657 (22.4) 129,011 ( 9.9) 96,634 ( 7.4) 91,157 ( 7.0) 68,722 ( 5.3) 53,350 ( 4.1) 35,020 ( 2.7) 30,918 ( 2.4)

Shwethweyin Manawthukha IR-747 Yadanartoe F1 Hnan Gout Shwemanaw Sinaykari-3 Others

113,509 (43.2) 36,099 (13.8) 26,414 (10.1) 16,799 ( 6.4) 13,501 ( 5.1) 6,372 ( 2.4) 5,642 ( 2.1) 5,027 ( 1.9) 34,820 (13.3) Others 188,743 (14.5)

小計 1,300,969 (100 ) 262,463 (100 )

沿岸地域

(ラカイン州、

モン州、

タニンターリー地域)

Pawsan*

Shwewartun Sintwelatt Meedone*

Kyawzeya Yezin-3 Ngasein*

Manawthukha Theedatyin

115,667 (14.1) 106,683 (13.0) 89,260 (10.9) 67,373 ( 8.2) 63,195 ( 7.7) 58,012 ( 7.1) 54,071 ( 6.6) 48,299 ( 5.9) 29,903 ( 3.6)

Manawthukha Yet-90 Theedatyin Shwethweyin MR-219 Shwewartun Others

5,585 (26.9) 5,307 (25.5) 2,267 (10.9) 1,876 ( 9.0) 1,212 ( 5.8) 1,185 ( 5.7) 3,366 (16.2)

Others 188,511 (23.0)

小計 820,976 (100 ) 20,798 (100 )

デルタ地域

(エイヤーワディ地域 ヤンゴン地域 バゴー地域)

Sinthukha Manawthukha Pawsan*

Hnangar Meedon*

Shwewartun Ngaseine*

Theedatyin Yadanatoe Sinthwelatt Yarkyaw-2 Ayeyarmin Inmayebaw Hmawbi-2 Ngakywe Kyawzeya Yet-90

640,816 (20.7) 460,607 (14.8) 284,335 ( 9.2) 237,814 ( 7.7) 211,261 ( 6.8) 160,689 ( 5.2) 150,575 ( 4.9) 121,625 ( 3.9) 119,717 ( 3.9) 106,587 ( 3.4) 94,191 ( 3.0) 88,296 ( 2.8) 72,360 ( 2.3) 67,926 ( 2.2) 44,069 ( 1.4) 39,528 ( 1.3) 34,303 ( 1.1)

Theedatyin Yet-90 Sinthukha Yadanartoe Manawthukha Pakhanshwewar Shwethweyin Others

379,921 (50.8) 115,847 (15.5) 102,773 (13.7) 52,684 ( 7.0) 36.568 ( 4.9) 15.781 ( 2.1) 11,385 ( 1.5) 33,312 ( 4.5)

Others 167,115 ( 5.4)

小計 3,101,813 (100 ) 748,271 (100 )

合計 6,159,467 1,096,665

Department of Agriculture (DOA), Extension Division資料から抜粋して集計.

斜字は在来品種、*は品種グループ名. 1):2017/18の標記はミャンマー会計年度

(22)

16

ミャンマーの米穀政策と施策による品種普及の変遷

前述した品種の分布は歴代政権により実施されたコメ増産のための様々な政 策および施策により普及し、作型にも大きな影響を与えた。すなわち、HYVの 全国普及を目的として1977年から1986年まで全国314郡のうち主要コメ生産 地82郡(全作付面積の52%、約2,600 千ha)で実施された全郡特別高収量米 生産計画(Whole Township Special High Yielding Paddy Production Program:

SHYP)では灌漑水田地帯の中央乾燥地域38郡で中稈・中生のManawhari、短

稈・中生のSintheingi (BR51-91-6)、Manawthukha、Sinthiri (BG90-2)、天水 田地帯のデルタ地域44郡では中・長稈、中・晩生のShwewartun、Shwetasoke (農民の選抜による在来のHYV)、Ayeyarmin、Kyawzeya等約30品種が対象地 域の立地・気象条件に応じて作付けされた(MOAF, 1982;1988; 斎藤, 1987;

Khin, 1991; Kyaw, 1999)。HYVの多くは消費者の嗜好に合わなかったが、LV より収量が高いことから低価格で政府が買取る供出制度向けの米として農家に 受入れられた。一方、食味・香りが良好なNgakywe種等LAはHQVとして一 定の作付面積割合を維持し、自由市場では高値で売買された(斎藤, 1987; 高橋, 1992)。

SHYPにより、1985年には全国のHYV作付面積は計画前の約5倍 (2,598千 ha)、単収の全国平均は約1.6倍 (3.1t/ha)、生産量は約1.5倍 (14,317千t)と大 きく向上した(Khin et al., 1981; Khin, 1991; 高橋, 2000)。1980年代において もIRRIの支援により育種事業が継続され多くの HYV・系統が導入・育成され たが、SHYP期間中の1982年頃にはHYVの作付面積および単収は頭打ちとな った。その主な原因として、SHYPと並行して灌漑・排水施設整備事業が実施さ れず、HYV の特性が発揮できる立地が限られていたことが挙げられる(斎藤, 1987; 高橋, 1992;2000)。すなわち、水管理が困難で 11 月上旬頃まで降雨の あるデルタ地域で、感光性の強い長稈・晩生の在来品種に替わって、感光性の無 い短稈・中生のHYVの導入は、既存の作型に適応できなかったものと考えられ る。

さ ら に 、1992/93 年 か ら 実 施 さ れ た 乾 期 稲 栽 培 計 画 (Summer Paddy

(23)

17

Production Program)では全国の乾期作付面積が 332 千 ha (1992/93 年)から 1,221千ha (1995/96年)へ拡大し、Theedatyin、Shwethweyin 等の短稈・早生 HYVが急速に普及した。しかし、1995/96 年の全灌漑面積 1,757千 ha のうち

47.4%が農民の負担によるポンプ灌漑によるものであったため、翌 1996/97 年

のディーゼル、化学肥料価格の高騰および政府補助金の減額により、乾期作付面 積は852千haと大幅に縮小した (高橋, 2000; 藤田・岡本, 2005)。その後も、

重力灌漑施設整備が立ち遅れるとともに、高値の緑豆、ケツルアズキ等の作付け 拡大により、乾期作付面積は2017/18年の1,097千ha (表2-2) と現在に至るま で拡大せず、新たなHYVの導入・育成は継続されるも新品種の普及は停滞して いる。

また、1990年代半ばから実施されたコメの地域内自給促進と稲作限界地への 作付け拡大施策では、計画推進のため中央乾燥地に新たに灌漑施設を建設し、乾 期作の拡大を図りYadanatoe 等早生品種を普及した。さらに、焼畑や棚田で自 給 米 を 栽 培 し て い た 丘 陵 山 岳 地 域 の シ ャ ン 州 北 部 等 を 中 心 に 陸 稲 品 種 の YarsabarやHYVを普及するとともに、1997年に中国からF1を導入し、2004 年雨期には作付面積を 74.5 千 ha まで拡大させて域内の自給を図った(岡本, 2008; Matsuda, 2009;田中・松田, 2010)。しかし、いずれの施策も作付面積の 拡大が優先され、一部の地域を除き品種の選択について当該地域の立地環境や 市場性等が十分考慮されず、加えて、種子増殖・普及体制の未整備から農家の自 家採種が常態化して品種の劣化を招き、単収が頭打ちになったと考えられる。

(24)

18

3. ミャンマーにおけるイネ生産の現状 作付け品種、収量および生産量の推移

作付面積、生産量、単収の推移を把握することを目的に、MOALIの統計資料 に基づき、図2-2を作成した。同図から、2017/18年のミャンマーのコメの作付 面積は7,256千ha(収穫面積は7,169千ha)、生産量は28,092千t、単収は3.9 t/haであるが、2009~2010年にかけて栽培面積8,402千ha、生産量32,681千 t および単収 4.0 t/ha の最高値を示して以来、伸び悩んでいることが分かる (MOALI, 2018)。1970年代中頃まで約1.7 t/haであった単収が、増産政策の下、

HYVの導入により1976年から飛躍的に伸びたが、1984年から1998年頃は再

び約3.0 t/haで低迷した。1992年頃からは主に乾期稲栽培計画および稲作限界

地への作付け拡大施策により作付面積を拡大して生産量を増加させることがで きたが、単収は 1990年代後半からの F1導入でやや増加したものの限定的であ ったことがうかがえる。

次に、雨期と乾期の品種ごとの作付面積の推移を把握するために、農業局の統 計資料に基づき、表2-3および表2-4を作成したところ、以下のことが明らかに なった。即ち、雨期・乾期合計作付面積の約 85%を占める雨期作の作付け品種 は、2017/18年は 67.7%が HYV、31.8%が LV、および0.5%がF1である。こ の割合は、2004年から大きな変化はない。2017/18 年度において全国作付面積

上位10品種が61.6%を占めている。これらの内、HYVは8品種(49.1%)で

あるが、2000年以降にリリースされた HYVは SinthukhaおよびYadanartoe

の2品種で14.5%に留まっている。他方、HQVに分類され、香り米として下ミ

ャ ン マ ー で は 高 値 で 売 買 さ れ る LV の Pawsan 種 (感 光 性 が 強 い 順 に Pawsanhmwe、 Pawsanbaykyar および Pawsanyinの 3 品種に分類) の作付

面積が2017/18年では8.6%で、2012年以降徐々に拡大している。

一方、乾期作は2017/18年度においても雨期・乾期合計作付面積の約15%に 留まっている。作付け品種数も雨期より少なく、その96.7%がHYVである。ま た、これらHYV のうち 2017/18年度の上位 10 品種中 7 品種が早生品種で、

2000年以降にリリースされた品種はYadanartoe の1品種のみで全作付面積の

(25)

19

6.3%を占めている。他方、民間人がタイから持ち込んだと言われている短稈・

早生のYet 90が全国で栽培面積を拡大している。乾期作が拡大しないのは灌漑

施設の整備が進まないことが主要因と考えられる。また、雨期作および乾期作と もに新しいHYVの作付け品種数と面積が少ないのは、後述する育種と普及体制 の原因があると思われる。ミャンマーで現在作付されている品種の多くはIRRI (International Rice Research Institute) の支援によりINGERを通じて導入さ れている。また、LVは植民地政府が純系選抜により育成した品種である。

(26)

20

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000

1962 1965 1968 1971 1974 1977 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016

作付面積 および単収 生産量

生産量 (000 t) 作付面積 (000 ha) 単収/ha (kg)

2-2.ミャンマーにおけるコメの作付面積、収量および生産量

(1) Varietal Information on Rice Production of Burma 1988, Ministry of Agriculture and Forests,

(2) Agricultural Statistics (1985/86 to 1995/96), (1989/90 to 1999/00) and (1997/98 to 2009/2010) Central Statistical Organization, Ministry of National Planning and Economic Development, (3) Myanmar Statistical Yearbook 2018, Central Statistical Organization, Ministry of National Planning and Economic Development.を集計.

(27)

21

2-3. ミャンマーの雨期におけるイネ品種別作付面積の推移-2004/05~2017/18 3) 年 (%)

品種名1) 2004/05 2006/07 2008/09 2010/11 2012/13 2014/14 2015/16 2016/17 2017/18 HYV

Manawthukha 22.0 20.4 20.2 20.7 20.4 18.9 18.1 15.5 14.4

Sinthukha 0.03 1.0 4.1 8.1 8.9 11.3 12.0

Ayeyarmin 4.1 3.2 3.1 3.8 4.7 4.9 5.3 5.7 6.6

Shwewartun 8.3 6.0 5.1 5.1 5.4 5.2 4.7 4.6 4.4

Sinaykari-3 2.9 2.9 3.2 3.7 3.7 3.8 4.0 4.2 4.1

Theedatyin 3.9 5.4 4.3 3.9 3.5 2.8 2.7 3.0 2.7

Yadanartoe 0.01 0.1 1.1 2.4 2.9 2.9 2.5

Hmawbi-2 2.2 2.0 1.6 1.7 1.8 1.9 1.8 2.1 2.4

Sinthwelatt 0.2 5.7 10.9 9.2 4.6 4.1 4.1 3.6 2.0

Kyawzeya 6.0 4.5 3.8 3.7 3.3 2.9 3.0 2.4 1.7

Yarkyaw-2 1.2 1.1 1.1 0.02 1.2 1.2 1.4 1.5

Salt-tolerant STL 0.0 0.0 0.0 1.3

Shwethweyin 0.5 0.7 0.6 1.4 1.5 2.1 2.0 1.5 1.0

Manawhari 3.6 2.1 0.8 0.8 0.6 0.8 0.5 0.8 0.9

Others 13.7 14.7 18.5 14.9 12.2 9.4 9.0 9.2 10.2

小計 67.4 67.6 72.1 70.0 66.9 67.3 67.0 68.2 67.7

Local var. 2)

Pawsan 2.6 2.4 2.1 3.1 6.3 7.7 8.5 8.2 8.6

Meedone 3.7 3.1 2.9 3.3 3.9 4.2 3.7 3.8 4.5

Hnangar 4.5 3.7 3.5 3.4 3.5 3.8 3.6 4.3 3.9

Ngasein 4.2 4.0 3.6 3.8 3.7 4.1 3.9 3.9 3.8

Yarsabar 3.1 3.3 3.5 3.4 3.1 3.0

Taungyar 2.7 2.9 4.4 4.1 2.5 3.0 2.4 2.7 2.3

Inmayebaw 3.5 2.3 1.6 1.6 1.5 1.1 1.1 1.2 1.2

Others 10.6 13.0 8.7 6.5 7.1 3.7 4.4 3.8 4.5

小計 31.8 31.4 26.8 28.9 31.8 31.1 31.0 31.0 31.8

F1 var. 0.8 1.0 1.1 1.1 1.3 1.6 2.0 0.8 0.5

小計 0.8 1.0 1.1 1.1 1.3 1.6 2.0 0.8 0.5

合計 100 100 100 100 100 100 100 100 100

総面積 (千ha) 5,824 6,895 6,816 6,793 6,293 6,231 6,218 6,167 6,159

Annual Report of Extension Division, Department of Agriculture (DOA), Ministry of Agriculture and Irrigation (MOAI) 2008~12 年度版およびSeed Division, DOA, MOAI所収を集計.

1) HYV: High Yielding Variety, Local var.: Local Variety, F1 var.: F1 Hybrid Variety,

2) *MeedoneおよびNgaseinは粒形分類の総称で多くの地方品種が含まれる.

3) 2017/18の標記はミャンマー会計年度

注)本表では、表1.でHQVに分類されている在来種はLocal var.へ、それ以外はHYVに分類した.

(28)

22

2-4. ミャンマーの乾期におけるイネ品種別作付面積の推移-2003/04~2017/18 2) 年 (%)

品種名1) 2003/04 2005/06 2007/08 2011/12 2013/14 2015/16 2016/17 2017/18 HYV

Theedatyin 49.5 43.9 41.5 40.8 41.0 45.1 42.2 35.0

Shwethweyin 4.6 4.8 6.6 12.9 13.8 12.2 4.1 11.6

Sinthukha 3.9 9.5 9.6 10.6 11.5

Yet 90 0.7 0.7 2.9 7.4 11.1

Manawthukha 18.7 17.8 18.4 15.6 11.4 9.5 9.1 9.2

Yadanartoe 4.0 6.7 6.4 5.1 6.3

IR 747 6.8 7.0 5.4 5.4 1.8 2.0 2.2 2.4

Pakhanshwewar 0.1 0.1 0.3 1.5

Sinthwelatt 3.8 3.0 1.7 1.7 0.7 0.6 0.6

Shweyinaye 0.5 1.0 0.9 0.5 0.6 0.5

Yadanaraung 2.7 2.1 2.4 1.4 1.2 0.8 0.4

Sinnweyin 0.8 2.2 1.3 0.4 0.02 0.04

Others 11.8 17.3 18.4 10.2 5.9 6.0 13.8 6.6

小計 94.1 96.7 96.5 97.4 95.2 96.0 96.8 96.7

Local var. 5.4 2.4 2.8 1.8 2.0 1.4 2.1 1.4

小計 5.4 2.4 2.8 1.8 2.0 1.4 2.1 1.4

F1 var. 0.5 0.9 0.7 0.8 2.8 2.6 1.1 1.9

小計 0.5 0.9 0.7 0.8 2.8 2.6 1.1 1.9

合計 100 100 100 100 100 100 100 100

総面積 (千ha) 1,108 1,152 1,269 1,063 1,058 994 994 1,097

Seed Division, Department of Agriculture (DOA), Ministry of Agriculture and Irrigation (MOAI)所収 (2015)を集計、

1) HYV: High Yielding Variety, Local var.: Local Variety, F1 var.: F1 Hybrid Variety,

2) 2017/18の標記はミャンマー会計年度

図  2-1.ミャンマーの農業立地区分と降雨量および平均気温
表 2-6.  イエジン農業研究局  (DAR)  から農業局  (DOA)  への育種家種子  (BS)  配布量および DOA にお
図 3-1.  系統栽培法による BS 増殖     (Fujii et al. 2016)
表 3-4.  BS の農業形質の標準偏差値(SD)の推移(2012年~2016年)
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参照

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