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博士(文学)学位請求論文審査報告要旨

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Academic year: 2021

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博士(文学)学位請求論文審査報告要旨 

論文提出者氏名  栁澤  正志 

論  文  題  目  叡山浄土教思想の研究  審査要旨 

  日本天台宗の仏教、すなわち比叡山の仏教は複合性を特色とし、『法華経』を基本とする天台教学と密教を中心 に様々な法門を展開させた。法然や親鸞の浄土教の源流となったのが、源信の『往生要集』であることは著明であ り、それは比叡山で天台宗ならではの浄土教が展開していたことを意味する。本研究は、そういった比叡山(叡山)

の浄土教を、特に天台教学との関わりから、思想研究によって論ずるものである。以下に示す目次のように、五章に 分けて問題を設定し、従来の研究を進めている。 

序論 

第一章  源信の天台教学研究        一  源信の義科研究を巡って    二  内熏自悟の解釈を巡る問題        三  源信の仏性論を巡る一、二の問題      四  むすび 

第二章  『法華経』と叡山浄土教      一  はじめに      二  顕密即身成仏説を巡る問題        三  『法華経』における往生思想について    四  むすび  第三章  叡山浄土教思想の諸様相  一  叡山浄土教における心の問題について 

      二  日本天台における『華厳経』唯心偈の受容と叡山浄土教における展開        三  浄土教における行位と階位      四  叡山浄土教における名聞利養        五  叡山浄土教における仏身論と仏像解釈 

第四章  叡山浄土教における往生と生死の問題      一  はじめに      二  来迎と往生を巡る言説について        三  叡山浄土教における生死観について      四  むすび 

第五章  実導仁空の浄土教思想と天台教学      一  実導仁空について    二  『観経疏弘深抄』について 

      三  実導仁空における凡夫位解釈    四  『観経』解釈における天台本覚思想       五  仁空の『観無量寿経』観    六  仁空の三心釈について    七  むすび  結語 

  第一章では源信の天台教学を扱っている。先ず、青蓮院所蔵の写本である『六即義私記』に見える草木成仏説 を検討する。次に、内熏自悟が中国天台と日本天台で問題になったことを論ずる。本章では、更に仏性論について 取り上げている。これらの検討は、浄土教の問題というよりは、成仏思想に関連する。要するに、源信が、しばしば

『往生要集』のみで論じられることに対し、異なった観点からその教学を見ることで全体的な見直しを図ったものと評 せよう。 

  第二章は、その前半が即身成仏思想の検討になっているが、叡山浄土教で観心門に立脚した場合には即身成 仏の問題は切り離せない。本章の第三節では、『法華経』の往生思想を、同経の薬王本事品によって論じている。

ここでは、中国天台の教義を見た上で、日本天台での思想展開を扱うことで、叡山浄土教ならではの展開を追って いる。 

  第三章では、思想の諸様相を幾つかの観点から分析する。先ずは、自性清浄心等の「心」についての理解を検 討し、続けて中国天台と日本天台における『華厳経』唯心偈の受容を論じている。そして、第三節では修行の階梯 の問題を、諸学匠の教説によって検討しているのであり、特に表による整理が有効になっている。第四節・第五節 は現実肯定思想(本覚思想)という観点からの論及がなされ、それぞれで名聞利養と仏身・仏像を扱っていることか らは、筆者の興味が窺える。 

  第四章では、往生・来迎に対する理解を探り、生死観に論及する。往生・来迎を論ずる上で、最初に言及がなさ 

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氏名    栁澤  正志     

れるのが源信の『往生要集』であるが、本論文では観心門の解明が中心となっている。すなわち、かつては源信の 真撰と言われた『観心略要集』が、観心念仏を論ずる代表かつ起点となることから、同書に触れた上で、『自行念仏 問答』等の他の文献における説示の差異に注目して、諸様相を論じている。生死観についても同様に、先ず『往生 要集』の記述に注目することで起筆する。但し、この生死観については観心門を中心としたものではない。 

  第五章で扱われるのは、実導仁空の業績である。仁空は浄土宗西山派の碩学であり、天台密教や戒律思想にも 通暁していた。従って、その浄土教思想の検討にも幅広い視野が要求される。仁空の密教や戒律については先行 研究があり、それらを踏まえた上で仁空の浄土教思想の特色を論じている。 

  本論文は、筆者が大学院在学中に発表した論考を中心として構成されている。課程による博士学位請求論文で あるので、時間的制約もあって今後の課題も残っている。というのは、それぞれ重要な課題を設けるものの、本論文 の題目が内容に比べて大きいからである。題目を絞るか、「観心門を中心に」というような副題を設けた方がよかっ たかもしれない。併せて、各章や各章内の諸節のつながりに幾らか不自然なところがあるので、各章の内容の一層 の充実と、新たな研究の追加が望まれる。また、第一章で扱った『六即義私記』は先行研究があるとしても、重要文 献であり、一般に見られない写本なので、そろそろ翻刻を作成すべき時期に来ているように思われる。今回は間に 合わなかったが、遠からず達成すべき課題である。 

  そのような問題点が見られるとしても、限られた時間内で筆者が興味を持つ分野の解明を進展させ、将来大きく展 開させるための基礎研究としてのまとまりを見せているので、博士(文学)の学位を授与するのに十分な業績と言え る。 

                             

公開審査会開催日  2010 年  6 月 23 日 

審査委員資格  所属機関名称・資格  博士学位名称  氏  名 

主任審査委員  早稲田大学文学学術院  教授  博士(文学)早稲田大学  大久保  良峻  審査委員  早稲田大学文学学術院  教授  Dr.Phil(ハンブルク大)  岩田  孝 

審査委員  早稲田大学文学学術院  教授    吉原  浩人 

 

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