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九州大学学術情報リポジトリ

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

マイクロカロリーメータを用いたプルトニウム同位 体の高エネルギー分解能LX線スペクトル計測に関す る研究

前田, 亮

https://doi.org/10.15017/1441221

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

マイクロカロリーメータを用いた

プルトニウム同位体の高エネルギー分解能 L X 線スペクトル計測に関する研究

九州大学大学院工学府 エネルギー量子工学専攻

前田 亮

平成 26 年 1 月

(3)

i

目次

1

序論 ... 1

プルトニウム管理の必要性 ... 1

Pu

同位体の分析 ... 2

L X

線計測による同位体分析 ... 3

X

線検出器とスペクトル計測技術 ... 5

本研究の目的 ... 7

本論文の構成 ... 7

2 Pu

同位体の

LX

線放射と

TES

型マイクロカロリーメータ ... 9

Pu

同位体の生成 ... 9

同位体の性質 ... 11

超ウラン元素の

LX

線放射率 ... 13

SQUID

増幅器... 16

dc-SQUID

の動作原理 ... 17

磁束固定ループ ... 20

Serial SQUID Array

増幅器 ... 21

TES

型マイクロカロリーメータの動作原理 ... 22

マイクロカロリーメータの概要 ... 22

TES

の応答 ... 26

熱力学的雑音 ... 37

最適フィルタとエネルギー分解能 ... 44

過剰雑音 ... 48

大きい信号 ... 50

3 TES

型マイクロカロリーメータ

L X

線スペクトル計測装置 ... 52

無冷媒希釈冷凍機 ... 52

希釈冷凍機の動作原理 ... 52

無冷媒希釈冷凍機の概要 ... 53

温度制御システム ... 58

L X

線検出用

TES

型マイクロカロリーメータ ... 58

実験セットアップ ... 60

電気抵抗温度依存性 ... 61

測定法 ... 61

測定結果 ... 62

温度計感度温度依存性 ... 63

SQUID

増幅器出力とバイアス電流の関係 ... 64

(4)

ii

測定法 ... 64

測定結果 ... 65

4 TES

型マイクロカロリーメータを用いた

L X

線スペクトル計測 ... 67

L X

線の検出信号 ... 67

L X

線信号波形 ... 67

信号対雑音比から導出されるエネルギー分解能 ... 68

L X

線スペクトル作成 ... 69

立ち上がり時間と減衰時定数による信号の選別 ... 69

L X

線エネルギースペクトル ... 71

エネルギー領域別の最適フィルタ ... 72

温度揺らぎに対する補正 ... 73

スペクトル解析 ... 75

フォークト分布 ... 75

放射率評価 ... 78

Pu

同位体線源から放射される

L X

線スペクトル計測 ... 81

Pu

同位体線源 ... 84

L X

線スペクトル ... 85

5 4

ピクセル配置全面吸収体

TES

型マイクロカロリーメータによるスペクトル計測 ... 95

4

ピクセル配置全面吸収体

TES

型マイクロカロリーメータ ... 95

電気抵抗温度依存性 ... 96

SQUID

増幅器出力とバイアス電流の関係 ... 98

241 Am

線源から放射される

L X

線スペクトル計測 ... 98

L X

線スペクトル計測による

Am

Pu

の元素同定 ... 103

6

結論 ... 109

L X

線検出用

TES

型マイクロカロリーメータによるスペクトル計測 ... 109

4

ピクセル配置全面吸収体

TES

型マイクロカロリーメータによるスペクトル計測

110

今後の課題と展望 ... 111

謝辞 ... 112

参考文献 ... 113

(5)

1

1 序論

プルトニウム管理の必要性

現在,世界中で地球温暖化防止のため,温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減 の機運が高まっている。しかし世界のエネルギー需要は年々増加しており,二酸化炭素 を排出しない,クリーンなエネルギーの開発が望まれている。電気は主に火力・原子力・

水力などの発電方法にて作り出されているが,その中でも原子力発電は二酸化炭素の排 出量が少なく基幹エネルギーに位置付けられている。

プルトニウム

(Pu: Plutonium)

同位体の環境中濃度を調べることは,ウラン

(U: Uranium)

を燃料とする原子力発電における核燃料サイクルに係わる放射線防護上重要である。

Pu

同位体の中でも

239 Pu

240 Pu

はその存在量が多く特に注目されている。原子炉を運転す ると,燃料中の

238 U

の中性子捕獲反応に伴う

β

崩壊により

239 Pu

が生成する。この

239 Pu

が核燃料サイクルにおいて重要であるとともに,核兵器への転用の危険性を有する核分 裂性同位体である。さらに運転を続けると

239 Pu

は中性子捕獲により核分裂性のない

240 Pu

に変換する。表

1.1

に核兵器級と炉型別の原子炉級

Pu

の同位体重量比を示す

[1,2]

。 一般に原子炉級

Pu

では

239 Pu

の比率が低く

238 Pu

240 Pu

の比率が高い。核燃料のリサイ クルを行うと

239 Pu

の存在比は減少する。

現在,環境中に存在する

Pu

同位体の中で濃度が高いのは

239 Pu

240 Pu

であり,原子 力施設のモニタリング等で対象とされている。環境中の

239 Pu

240 Pu

のほとんどは

1960

年代に盛んに行われた大気圏核実験により大気中に放出されたフォールアウト

Pu

が地 表に沈着したものである。世界

60

地点の表層土壌試料中の

240 Pu/ 239 Pu

同位体比を調査 した結果,その平均値は

0.176

であると報告されている

[3]

。多くの地域でこれに近い 同位体比が得られているが,異なる値が報告されている地域がある。長崎県の西山地区 では,土壌中の

240 Pu/ 239 Pu

同位体比として

0.03

と小さな値が報告されており,これは長 崎に投下された

Pu

爆弾の同位体比組成を反映しているものと考えられている

[4]

。また,

イギリスのセラフィールド再処理施設周辺のアイリッシュ海の堆積物や魚を分析して 得られた

240 Pu/ 239 Pu

同位体比は約

0.21

という大きな値が報告されており,これは再処理 施設で処理された使用済核燃料の

240 Pu/ 239 Pu

同位体比を反映しているものと考えられて いる

[5]

。旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の周辺土壌では,

240 Pu/ 239 Pu

同位体比が 約

0.4

と大きな値が報告されている

[6]

。これは,この発電所の原子炉は黒鉛炉であり,

核燃料中の

240 Pu/ 239 Pu

同位体比が軽水炉と異なるためである

[1]

。この様に

240 Pu/ 239 Pu

同 位体比を調べることでその起源が推定できる。

また,テロ組織への核兵器の流出の懸念など,核不拡散の観点から

Pu

同位体の分析 は重要である。

2009

年の米国オバマ大統領によるプラハ演説では,核セキュリティの

(6)

2

強化について強い決意が示された。我が国は原子力を平和利用に限定しているため核燃 料取扱施設では,

Pu

等の核物質が核兵器に転用されていないことを示す必要があり,

厳密な核物質の定量管理が欠かせない。国外では,秘密裏に行われている核兵器開発を 探知するため,環境試料が分析され,核兵器級の

Pu

等の有無が 国際原子力機関

(IAEA)

により検証されている。このように国土安全保障からも

Pu

同位体の分析は重要である。

Pu

同位体の分析

Pu

には多くの同位体があり,このうち放射線防護上で問題となる同位体は 質量数

236

238

239

240

241

242

Pu

で,そのほとんどが

α

放射体であり,

4.9~5.8MeV

α

線を放射して

U

に壊変する。

241 Pu

だけは

β

放射体であり,

20 keV

β

線を放射す る。

β

崩壊した

241 Pu

241 Am

となる。

241 Am

もまた

α

放射体であり,

5.5 MeV

α

線,

60 keV

γ

線を放射する

[7]

Pu

同位体の分析では,まず,水試料,土試料などの測定試料の形態に応じた前処理・

濃縮を行った後,イオン交換法または溶媒抽出法による化学分離が行われる。その後,

Pu

は分離精製され,ステンレス鋼版上に電着して計測試料となる。計測試料について,

シリコン半導体検出器による

α

線スペクトル測定を行うことにより

Pu

同位体が定量さ れる。この方法では試料の形態にもよるが,計測試料の作製にイオン交換法で

30

40

時間,溶媒抽出法で

40

50

時間を要する。さらに,

α

線スペクトル測定では

24

時間を 要し,

Pu

同位体の分析には,合計で約

3

4

日程度の日数が必要となる。

α

線スペクト ル測定時に判断出来るのだが,化学分離の際に不純物等が混入した場合は更に長時間を 要する

[8]

239 Pu

240 Pu

から放射される最大強度の

α

線エネルギーは,それぞれ

5.147 MeV

5.159 MeV

であり,シリコン半導体検出器による

α

線スペクトル測定では

239 Pu

240 Pu

は弁別できないので,両核種の合計量として定量される。

239 Pu

240 Pu

を 弁別するためには誘導結合プラズマ質量分析法

(ICP-MS)

等を用いた分析が必要である

[9]

1.1

核兵器級と炉型別の原子炉級

Pu

の同位体重量比[1,2]

同位体 核兵器級 沸騰水型炉 加圧水型炉 黒鉛炉 高速炉

238 Pu 0.07 1.7 2 0.05 0.03

239 Pu 93 52 63 81 74

240 Pu 7 28 19 16 23

241 Pu 0,7 12 12 3 3

242 Pu - 6 4 0.3 0.5

(7)

3 L X

線計測による同位体分析

241 Pu

以外の

Pu

同位体は

α

崩壊し,それに伴い

γ

線,

X

線を放射する。また,

241 Pu

β

崩壊後の

241 Am

α

崩壊し,それに伴い

γ

線,

X

線を放射する。

Pu

同位体の

γ

線,

K X

線の

α

崩壊当たりの放射率はどれも

0.05%

程度と低くスペクトル計測による同位体分析 には適さない。しかし,

L X

線の放射率は

5

10%

程度と

γ

線,

K X

線と比較すると高 い値を持つ

[10]

241 Am

γ

線放射率は

36%

L X

線放射率は

38%

である。

Komura

ら及

Arnold

らは

α

線スペクトル計測と

L X

線スペクトル計測を組み合わせて分析するこ

とで,

Pu

同位体分析が可能であることを示した

[11

12

13]

。この方法では,

239 Pu

240 Pu

α

崩壊に伴う

L X

線放射率が

2

倍程度違うことを利用しているため,正確な

L X

線放射率の数値が必要となる。しかし,

Pu

同位体,

241 Am

α

崩壊に伴う

L X

線放射率 は実験値と理論値の間に差異がある

[14

15]

この他に

L X

線計測による同位体分析の例として肺モニタがある

[16]

。肺モニタとは,

吸入事故により,

Pu

同位体が体内に侵入した際に吸入量を推定する方法である。

α

線は 飛程が非常に短く,体内に沈着したものを体外から測定することができないため,

L X

線,

γ

線の体外計測が行われる。図

1.1

に示すように,ベッド上に被検者を仰臥位で寝 かせ,肺モニタの検出器を胸郭上部に設置し,肺から胸部軟組織を透過して放射される

L X

線を測定して,肺沈着量を算定する

[17]

。なお,宇宙線などの自然放射線を低減さ せるために肺モニタの測定は鉄室内で行われる。この鉄室は遮蔽性能に優れたものが必 要で,一般に

20 cm

厚の鉄板に,薄い鉛,銅,プラスチック板などを内張したものが用 いられている。既知量の

Pu

線源を分布させた肺ファントムを肺モニタで測定して得た 標準計数効率値

(

校正定数

)

を用いて,肺モニタで得られた測定値から肺に沈着した

Pu

量を求める。図

1.2

に水ファントムの

X

線透過率と

X

線エネルギーの相関を示す

[18]

。 図より,

L X

線の平均エネルギー

17 keV

では,肺から体外に透過してくる

L X

線強度は 弱く,また,個人の体格,体形および筋肉と脂肪の割合など,個人差に依存して大きく 変化し,各個人ごとに実効的な吸収減弱量の正確な補正が必要となる。しかしながら,

Pu

同位体の

L X

線放射率が低いこと,測定対象である

L X

線が組織中で著しく吸収さ れること,さらには,

241 Am

から放射される

L X

線が妨害することなどにより,計測の 感度と精度が低いことが肺モニタの問題となっている。

一方,

L X

線スペクトル計測を用いて

Pu

の同位体分析が可能である。試料に含まれ ている各

Pu

同位体の放射能強度を

A i ( 238 Pu

239 Pu

,など

)

,計測されたスペクトルの各

L X

線強度を

I j ( L α1

L β2

L γ5

,など

)

,各

Pu

同位体の各

L X

線の放射率を

P ij

とすると

i ij i

j A P

I (1-1)

と表される。各

L X

線ピークについて式を連立させ

A i

について解くことで各プルトニ ウム同位体の放射能強度が得られる。この式を解くためには,試料に含まれている

Pu

(8)

4

同位体の数より多くの

L X

線ピークを弁別する必要があり優れたエネルギー分解能を 有する検出器が要求される。また,この方法で

Pu

同位体分析を行うためには,

Pu

同位 体の正確な

L X

線放射率が必要である。

1.3

は,本研究でテルル化カドミウム

(CdTe)

半導体検出器を用いて測定した,

241 Am

線源と

238 Pu

線源から放射される

L X

線のエネルギースペクトルの一例である。青い線 は測定値,赤い線は理論値

[14

19]

を示している。この図からわかるように,

241 Am

と 各

Pu

同位体が混在する時には,半導体検出器で測定された

L X

線エネルギースペクト ルから

Pu

吸入量を定量することは困難である。このスペクトルにおいて,半値幅で表 されるエネルギー分解能

ΔE FWHM

は,それぞれ,

241 Am

17.75 keV

のピークで

ΔE FWHM =560 eV

239 Pu

17.22 keV

のピークで

ΔE FWHM =598 eV

である。しかし,

ΔE FWHM =50 eV

程度の優れたエネルギー分解能を有する検出器を用いて各ピークを分離

することが出来れば

L X

線の放射率の違いから各同位体の存在比を推定することが可 能である。

1.1

肺モニタ検出器[17]

1.2

厚さ

2cm,密度 1g/cm 3

の水ファントムの

X

線透過率[18]

(9)

5

X

線検出器とスペクトル計測技術

Pu

同位体と

241 Am

から放射される

LX

線は,狭い範囲に多くの近接した成分を持つの で,スペクトル計測により成分を弁別するためには

ΔE FWHM =50 eV

程度の優れたエネル ギー分解能が要求される。さらに図

1.2

より体外へ放出される光子はそれほど多くない ので高い検出効率が求められる。通常,

X

線のエネルギースペクトル計測には,波長分 散型スペクトル計測法とエネルギー分散型スペクトル計測法が用いられている。

1.3 CdTe

半導体検出器を用いて測定した

239 Pu (a)と 241 Am (b)の α

崩壊後に 放射される

L X

線エネルギースペクトル

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012 0.014 0.016 0.018

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

10 12 14 16 18 20 22 24

放射率

[Bq- 1s -1 ]

ウント

エネルギー[keV]

測定値 理論値

(a)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

10 12 14 16 18 20 22 24

放射率

[Bq- 1s -1 ]

ウント

エネルギー[keV]

測定値 理論値

(b)

(10)

6

波長分散型スペクトル計測法では,分光結晶によりブラッグ反射した

X

線の回折角 度の違いによって波長別に

X

線を分離し,特定波長の

X

線のみ検出部へ導き比例係数 管などで計数する。図

1.4

に波長分散型スペクトル計測装置の一例を示す

[20]

X

線管 球から発生した

X

線を試料に照射して発生した蛍光

X

線を,コリメータを通し分光結 晶に導きブラッグ反射して検出器に入射した

X

線をカウントする。波長分散型スペク トル計測では

5.9 keV

X

線に対して 半値幅が

10 eV

より優れたエネルギー分解能 に到達できるが,スリットを使うので発生した蛍光Ⅹ線の一部しか使えず,効率が数

%

しかないという欠点がある。

エネルギー分散型スペクトル計測法では,

X

線検出器自体がエネルギーに比例した信 号を生成し,多チャネル波高分析器を用いてそのエネルギーを選別する。このため,検 出効率がほぼ

100%

と高い値を持つが,エネルギー分解能は使用する

X

線検出器に依存 する。エネルギー分散型スペクトル計測法に使用される検出器の一つとして半導体検出 器が挙げられる。半導体検出器は,入射光子のエネルギーに比例する電子やイオンを信 号電荷として計測する。検出された

X

線信号は電荷由来であるため電荷の数に応じた 統計的な揺らぎが生じ,この揺らぎがエネルギー分解能の理論的限界値を決定してしま う。実際のエネルギー分解能

ΔE

は,

Fano

因子を

F

,放射線のエネルギー損失を

E 0

,信 号電荷生成の平均エネルギーを

ε

として,半値幅で,

0  2 ln 2

2 FE

E FWHM

 (1-2)

と表わされる

[21]

。現在,半導体検出器のエネルギー分解能は

(1-2)

式で与えられる理論 限界値に到達しており,

5.9 keV

X

線に対して 半値幅

120 eV

程度のエネルギー分 解能しか得られない。

近年,波長分散型と同程度のエネルギー分解能を有するエネルギー分散型の検出器と して,極低温動作型放射線検出器が注目されている。その中で最も代表的な検出器がマ イクロカロリーメータである。マイクロカロリーメータは,

100 mK

領域の低温に保持

1.4

波長分散型スペクトル計測装置[20]

(11)

7

された熱容量が非常に小さい物質で,

X

線光子のエネルギーを吸収した際の温度上昇を 精度良く計測する検出器である。マイクロカロリーメータの中でも広く研究されている のが,超伝導状態と常伝導状態との間の急峻な電気抵抗温度依存性を利用した超伝導相 転移端温度計

(TES: Transition Edge Sensor)

を有する

TES

型マイクロカロリーメータであ る。これは入射

X

線のエネルギーを吸収した際に起こるわずかな温度上昇により,超 伝導状態から常伝導状態への相転移領域に保持されている温度計の電気抵抗が急激に 変化することを利用している。実際に開発された

TES

型マイクロカロリーメータでは,

5.9 keV

X

線を半値幅

1.56 eV

で計測したという報告がある

[22]

本研究の目的

本章では

Pu

同位体の管理の必要性を述べ,現行の化学分離を使用した

Pu

同位体分析 と

L X

線分光分析を利用した同位体分析を示した。そして,従来の

X

線検出器とスペ クトル計測技術について述べ,近年注目されている

TES

型マイクロカロリーメータに ついて紹介した。

本研究の目的は,

Pu

同位体の非破壊分析を可能とする

LX

線エネルギースペクトル計 測法の確立である。本目的を達成するためには,

241 Am

線源と

Pu

同位体試料から放射 される

L X

線の各ピークを明確に分離することが要求される。そのために,

L X

線エネ ルギースペクトルに現れる個々のピークを半値幅

50 eV

程度の優れたエネルギー分解 能で計測することを可能とする

TES

型マイクロカロリーメータを使用した。

本論文の構成

本研究では,

2

種類の形状の

TES

型マイクロカロリーメータを用いて

241 Am

線源,

239 Pu

線源,

238 Pu

線源から放射される

L X

線を測定し,各

L X

線ピークの分離性能を示す。

以下に本論文の構成を記す。

2

章では,

Pu

同位体の基本的な性質と

L X

線の放射特性について述べる。さらに,

LX

線を検出する

TES

型マイクロカロリーメータの動作原理と,検出信号の読み出しに 使用する超伝導量子干渉素子

(SQUID : Superconducting Quantum Interference Device )

増 幅器について説明する。

3

章では,本研究で使用する

TES

型マイクロカロリーメータを用いた

LX

線スペク トル計測装置について述べる。従来の

TES

型マイクロカロリーメータはエネルギー数

keV

程度の

X

線を測定対象としており,厚さ

0.5 μm

の金を

X

線吸収体としていたため,

Pu

同位体から放射される

10

22 keV

L X

線に対する効率が低い。本研究では,

L X

(12)

8

線検出用に開発した厚さ

5 μm

の金を

X

線吸収体とする

TES

型マイクロカロリーメータ を使用する。また,

TES

型マイクロカロリーメータの冷却には液体ヘリウムを使用しな い無冷媒希釈冷凍機を使用している。

TES

型マイクロカロリーメータを

100 mK

領域の 動作温度に保持し

TES

の特性を調べ,

LX

線検出器として動作する最適なバイアス条件 を決定する。

4

章では,

TES

型マイクロカロリーメータを用いた

Pu

同位体及び

241 Am

線源から 放射される

L X

線のスペクトル計測実験について述べる。まず,

241 Am

線源から放射さ れる

L X

線スペクトルを計測し

TES

型マイクロカロリーメータのエネルギー分解能を 確認する。得られたエネルギースペクトルを解析し

L X

線放射率を求める。その後,

238 Pu

線源,

239 Pu

線源から放射される

L X

線エネルギースペクトルを測定し,最後に

3

つの 線源を用いた

241 Am

Pu

同位体

L X

線同時測定を実施する。

5

章では,有感領域を増加するために試作した

4

個の配列配置

L X

線検出用

TES

型マイクロカロリーメータを用いて実施した,

Pu

同位体及び

241 Am

線源から放射され る

L X

線スペクトル計測実験について述べる。

6

章では,本論文のまとめと今後の課題,展望について記す。

(13)

9

2 Pu 同位体の LX 線放射と TES 型マイクロカロリーメータ

Pu

同位体の生成

Pu

1940

年,カルフォルニア大学のシーボーグ博士の研究グループにより生成され た。彼らは,

238 U

にサイクロトロンを用いて重陽子を照射しネプツニウム

-238( 238 Np)

を 生成した。この

238 Np

が半減期

2

日で

β

崩壊し

238 Pu

が生成された

[23]

。次いで翌

1941

年には放射性の

239 Pu

が発見された。

Pu

は原子番号

94

の人工元素であるが,天然にはウラン鉱石の中に痕跡的に存在する ことがある。元素の周期表ではアクチノイド類に属する超ウラン元素に含まれる。

234 Pu

から

246 Pu

までの

13

種類の同位体が存在するが,核燃料関連で問題になるのは,

236 Pu

238 Pu

239 Pu

240 Pu

241 Pu

及び,

242 Pu

6

種である。核兵器及び,核燃料として代表的 な同位体は

239 Pu

である。

Pu

同位体と超ウラン元素の生成過程を図

2.1[24]

に示す。図の ように各同位体の生成経路,機構は単一ではない。核反応で生成した

Pu

同位体及び超 ウラン元素はそれぞれ核崩壊によって様々な核種を生成する。

239 Pu

は基本的に原子炉 中で非核分裂性の

238 U

の中性子捕獲による核反応によって生成する。

239 Pu

以上の質量 数の

Pu

同位体は

239 Pu

から順次,中性子捕獲の積み重ねで生成する。

238 Pu

以下の質量 数の

Pu

同位体は

235 U

の中性子捕獲後,核反応の積み重ねで生成する。

(14)

10

2.1 Pu

同位体,超ウラン元素の生成過程[24]

(15)

11

同位体の性質

Pu

同位体と

241 Am

の基本的性質を表

2.1[24]

に示す。

代表的な

Pu

同位体と

241 Am

の特徴は以下の通りである。

236 Pu

236 Pu

237 Np

(n,2n)

反応によって作られる。この同位体は

2.85

年の半減期で

α

崩壊して

232 U

となり,それがさらに崩壊して

228 Th

ができる。

228 Th

は天然トリウムの

4n

崩壊系列に含まれる核種の一つである。この核種には,

228 Th

の子孫核種の崩壊に伴 う高エネルギー

γ

線を放射する。

238 Pu

:この同位体は,

237 Np

による中性子捕獲と,それに続く

238 Np

β

崩壊により 表

2.1 各核種の基本的性質[24]

核種 質量

(amu)

放射性崩壊

半減期 種類 実効エネルギー

(MeV)

全崩壊数 に対する 崩壊の割

236

Pu 236.046070 2.85

α 5.868

SF 8×10

-10

238

Pu 238.049511 86

α 5.592

SF 1.7×10

-9

239

Pu 239.052146 24,400

α 5.243

SF 4.4×10

-12

240

Pu 240.053882 6,580

α 5.255

SF 4.7×10

-8

241

Pu 241.056737 13.2

α 0.007 2.3×10

-5

β

242

Pu 242.058725 3.79×10

5

α 4.98

SF 5×10

-6

243

Pu 243.061972 4.98

時間

β 0.239

244

Pu 244.064100 8×10

7

α 4.66

SF 3×10

-3

241

Am 241.056740 458

α 5.64

SF 2.2×10

-12

※SFは自発核分裂

(16)

12

生成する。

238 Pu

86

年の半減期で

α

崩壊して

234 U

となる。これは

238 U

4n+2

崩壊系 列中の子孫核種である。ほぼ

1 ppm

236 Pu

を含む本質的に純粋な

238 Pu

は原子炉の照射 済燃料から回収された

237 Np

を中性子照射することによって作られる。同位体純度がよ り一層高い

238 Pu

は分離された

241 Am

を中性子照射して

242 Am

242 Cm

を作った後,そ の崩壊の子孫核種である

238 Pu

を化学的方法で回収することで作ることができる。

239 Pu

239 Pu

238 U

の中性子捕獲とそれに続く二つの

β

崩壊により生成する。この同 位体は,低濃縮ウランの中性子照射によって作られるプルトニウムの主要な同位体成分 であり,また熱中性子炉及び高速中性子炉で用いられるプルトニウム燃料の主な核分裂 性成分である。

239 Pu

24,400

年の半減期で

α

崩壊して

235 U

となるが,この核種は

4n+3

崩壊系列の親核種である。比較的純粋な

239 Pu

は天然ウランを短期間低いレベルで照射 することにより作ることができる。

239 Pu

の含有率が

99%

以上のプルトニウムはウラン

を燃焼度

0.7 MWd/kg

以下で照射することにより得られる。原子炉で生成したプルトニ

ウムは,放射能と年摂取限度の比で定義される放射性毒性が強いため,取り扱いに十分 な注意を要する。

240 Pu

:この同位体は

239 Pu

の中性子捕獲によって作られ,熱中性子による核分裂は起 こさないが,他のすべてのプルトニウム同位体と同様に,高速中性子による核分裂を起 こす。

240 Pu

は中性子捕獲により核分裂性核種に転換される。それ故,

232 Th

238 U

と同 様,

240 Pu

も親核種である。

240 Pu

6580

年の半減期で

α

崩壊して

236 U

となり,それが また

α

崩壊して

232 Th

となる。

232 Th

4n

崩壊系列の親各種である。偶数の質量数を持 つ他の同位体と同様,

240 Pu

は自発核分裂により中性子を発生する。また

240 Pu

は原子炉 で生成するプルトニウム中で,偶数の質量数を持つ他の如何なるプルトニウム同位体よ りも高い濃度で存在する。

241 Pu

:この同位体は

240 Pu

の中性子捕獲により生成し,熱中性子によって核分裂を起 こすので,高燃焼度のウラン燃料やリサイクルされるプルトニウム中でのエネルギー発 生に対する寄与が大きい。

241 Pu

13.2

年の半減期で

β

崩壊して

241 Am

となり,さらに それが

α

崩壊して

237 Np

となる。

237 Np

4n+1

崩壊系列に含まれる核種である。

241 Pu

の 崩壊では低エネルギーの電子と

10~115 keV

の弱い

X

線しか発生せず,

α

粒子の発生は 全崩壊の

2.3×10 -3 %

に過ぎない。しかしながら,

241 Pu

β

崩壊の子孫核種である

241 Am

α

崩壊に伴い

γ

線を放射するので,原子炉で生成し分離されたプルトニウムを取り扱 うときは遮蔽を必要とする。

242 Pu

:この同位体は

241 Pu

の中性子捕獲により生成する。その半減期は

3.79×10 5

年で あり,原子炉で生成するプルトニウム中に有意な量で存在するすべてのプルトニウム同 位体のうちで最も寿命が長い。

242 Pu

α

崩壊を起こし,

4n+2

崩壊系列に含まれる

238 U

となる。

242 Pu

239 Pu

240 Pu

,及び

241 Pu

に比較して中性子吸収断面積が小さく,またそ の中性子捕獲により生成する

243 Pu

の寿命が比較的短いので,同位体純度の高い

242 Pu

は 原子炉で生成し分離されたプルトニウムを長時間照射することによって得られる。例え

(17)

13

ば,

1.6×10 22 n/cm 2

の熱中性子照射により,原子炉から生成分離されたはじめのプルト

ニウム

1 kg

当り約

60 g

の同位体純度約

99%

242 Pu

が作られる。その半減期は長く,し たがってその放射性毒性も低いので,

242 Pu

は実験室規模での化学的研究にとって有用 である。

241 Am

:この同位体は

241 Pu

の崩壊によって生成され,そして

458

年の半減期で

α

崩壊 して

237 Np

となる。同位体組成が純粋な

241 Am

は長期間貯留された原子炉級プルトニウ ムから抽出によって得られる。分離された

241 Am

の中性子照射はグラム量の

242 Cm

を作 る技術の基本であり,また超キュリウム元素を作る一つの方法でもある。しかしながら 中性子捕獲の最初の生成物は

242 Am

および

242m Am

であり,これらはかなり大きい核分 裂断面積をもつので,

242 Pu

を多く含むプルトニウムの照射から超キュリウム同位体を 作るのに比べるとかなりの熱の発生を伴う。

241 Am

は原子炉燃料の加工のためにリサイクルされるプルトニウム中で時間と共に蓄 積されてゆく。

241 Am

の崩壊に伴う

γ

線は外部被曝の原因となり,従業員の放射線防護 が必要となる。

241 Am

は実験用および原子炉起動用の中性子源における

α

粒子発生源で あり,ベリリウムとの合金

AmBe 13

の形で用いられ,

(α,n)

反応によりエネルギーの高い 中性子を発生する。

超ウラン元素の

LX

線放射率

Pu

同位体や

241 Am

等の超ウラン元素は

α

崩壊の後,内部転換に伴い

L X

線を放射す る。このため,同じエネルギー準位間の遷移によって放射される

L X

線であっても,そ の放射率は核種によって異なる。

内部転換では,崩壊後の励起状態にある原子核が

γ

線を放射して低エネルギー準位ま たは基底準位に遷移する代わりに原子核と軌道電子との相互作用により,そのエネルギ ーを軌道電子に与えて電子を放出する。内部転換は

γ

線放射との競合過程である。内部 転換電子はエネルギー

K γ e  E  

E (2-1)

の線スペクトルを与える。ここで,

E γ

2

つの準位間の遷移で生ずる

γ

線のエネルギー で,

ε K

は電子の束縛エネルギーである。内部転換の確率は以下の式で表される内部転換 係数

α

を用いて定量化される。

γ e

P

P

(2-2)

ここで,

P γ

P e

はそれぞれ

γ

線,内部転換電子の

γ

崩壊当たりの放出割合である。一般

(18)

14

的に内部転換係数は原子番号

Z

が大きくなると増加し,遷移のエネルギーが大きくなる と急激に低下する。このため,

Z

の大きい核での低エネルギーの

γ

崩壊では支配的な過 程である。

γ

線が角運動量

λ

を運んで遷移が起こる時,多重極度

(multipolarity) λ

の遷移と呼び,

この時の放射を

重極放射という。多重極放射にはパリティの違いから電気型

遷移 と磁気型

遷移があり,

λ

の変化が

1

でパリティが反転する遷移を

E1

遷移

(

電気双極 子遷移

)

λ

の変化が

1

でパリティが変わらない遷移を

M1

遷移

(

磁気双極子遷移

)

と呼ぶ。

内部転換電子がどの軌道

(K,L 1

・・・

)

から放出されるかはこの

γ

崩壊の形式に依存する。

Pu

同位体や

241 Am

線源では,内部転換電子が

L

殻から放射されるので,

L X

線が放射 される

次に

LX

線放射率の理論的な計算過程を示す。

L X

線は最終的な準位

(L 1

L 2

L 3 )

に応じて

3

つのグループに分けられる。

L X

線の 強度の計算では,まず,全

L X

線強度を求め,そして個々の準位に対応する

L X

線強度 を計算する。全

L X

線放射率は各

γ

崩壊

L X

線放射率

I XL

を足し合わせることで得られ る。ここで

L L γ

XL I  

I  (2-3)

と表され,

I γ

γ

崩壊の確率で

α L

L

殻の内部転換係数

ω L

L

殻の平均蛍光収率であ る。主要な

γ

遷移に限定すると

241 Am

では

E2

M1

E1

の遷移があり

3

つの内部転換係 数

(α L (E1)

α L (E2)

α L (M1))

を考慮する必要がある。原子の各小軌道

(subshell) Li

X

線 の相対強度は,外殻電子の

L

軌道の空孔当たりの各小軌道

i

への遷移率に依存する。こ れは軌道の空孔分布

V Li

と蛍光収率

ω Li

の積で得られる。

L

軌道の各小軌道

i

X

線放射 率は

L3 L3 L2 L2 L1 L1

L L

L   

V V

V

R i V i i

  (2-4)

となる。

V Li

はコースター・クローニッヒ遷移

[25]

確率

f Lij

と最初の空孔率

N Li

に依存する。

L1

L1 N

V  (2-5)

L1 L12 L2

L2 N f N

V   (2-6)

L13 L12 L23L1

L2 L23 L3

L3 N f N f f f N

V     (2-7)

N Li

は小軌道

Li

の内部転換係数

α

の関数である。小軌道

Tj

の電子により,小軌道

Li

の 空孔が埋まった時に出る

X

線の放射率を

Γ TjLi

とする。

L TjLi X (L α1

L β2

L γ5

,など

)

線 の強度を全

LX

線との比で表すと

i i j i

j R

Y T L   T L L (2-8)

そして,各

L TjLi X

線の放射率は

(19)

15

i

Y j

I

I XLqXL T L (2-9)

となる。異なる遷移過程

(E1

M1

)

がある場合には各遷移過程の相対強度を考慮する 必要がある。上記の計算で導出された放射率の精度は,内部転換係数や蛍光収率等の物 理データの精度に依存する。中でも,内部転換係数は精度の良いデータが得られておら ず,計算結果の誤差に大きく寄与している。

M.C.Lépy

らによって報告された

241 Am

及 び,

239 Pu

240 Pu

L X

線放射率の理論値と実験値を,それぞれ,表

2.2[19]

及び表

2.3[14]

に示す。

表 2.2

241 Am

L X

線放射率[19]

X-ray Energy (keV)

Emission Probabilities (%)

Experimental Theory

L l 11.87 0.837 (9) 1.04 L t 12.24 0.0260 (5) 0.013 L α2 13.76 1.398 (15) 1.7 L α1 13.95 11.60 (12) 14.9

L η 15.86 0.404 (5) 0.238 L β6 16.11 0.248 (3) 0.267 L β15 16.79 0.339 (4) 0.34

L β2 16.84 2.451 (26) 3.14 L β4 17.06 1.736 (18) 1.46 L β7 17.27 0.594 (6) 0.10

L β5 17.50 0.65

L β1 17.75 11.83 (12) 8.37 L β3 17.99 1.310 (13) 1.23 L β10 18.58 0.054 (1) 0.07

L β9 18.76 0.047 (1) 0.103 L γ5 20.10 0.087 (1) 0.065 L γ1 20.78 2.94 (3) 1.92 L γ2 21.10 0.467 (5) 0.40 L γ8 21.26 0.520 (6) 0.017

L γ3 21.34 0.39

L γ6 21.49 0.567 (6) 0.38

L γ4 22.22 0.173 (2) 0.193

L γ13 22.38 0.069 (1) 0.033

(20)

16

SQUID

増幅器

温度測定に超伝導を利用する

TES

は,その抵抗の低さから

(< 1 Ω)

インピーダンス整 合がその使用における障害となっていた。しかし,近年この問題は

SQUID

増幅器を使 うことによって解決された。

SQUID

は容易に抵抗の低い

TES

とインピーダンス整合で

表 2.3

239 Pu, 240 Pu

L X

線放射率[14]

X-ray Energy (keV)

239 Pu Emission Probabilities (%) 240 Pu Emission Probabilities (%)

Experimental Theory Experimental Theory

L l 11.62 0.1016 (17) 0.1163 0.240 (4) 0.23

L t 11.90 0.015 0.009 (6) 0.0029

L t 13.44 0.150 (18) 0.192 0.348 (23) 0.376 L α1 13.62 1.498 (31) 1.685 3.39 (4) 3.303 L η 15.40 0.0544 (9) 0.0393 0.120 (3) 0.116 L β6 15.73 0.0282 (10) 0.0297 0.064 (5) 0.058

L β15 16.39 0.0386 0.098 (8) 0.076

L β2 16.43 0.350 (9) 0.354 0.665 (17) 0.693 L β4 16.58 0.061 (4) 0.115 0.059 (20) 0.0191 L β7 16.84 0.0232 (60) 0.0108 0.030 (9) 0.021 L β5 17.07 0.0507 (35) 0.0741 0.080 (11) 0.145

L β1 17.22 1.72 (4) 1.395 3.95 (6) 4.11

L β3 17.45 0.0412 (36) 0.0998 0.046 (2) 0.0166 L β10 18.03 0.00312 (13) 0.0053 0.0096 (5) 0.0009 L β9 18.21 0.00433 (14) 0.0079 0.0034 (3) 0.00132 L γ5 19.51 0.0205 (5) 0.0107 0.0373 (20) 0.0314 L γ1 20.17 0.428 (14) 0.316 0.95 (2) 0.93

L γ2 20.49 0.0173 (8) 0.0310 0.0052

L γ8 20.62 0.0027 0.019 (5) 0.0080

L γ3 20.72 0.0179 (5) 0.0309 0.0051

L γ6 20.84 0.089 (13) 0.0612 0.252 (5) 0.180

L γ4 21.53 0.0053 (9) 0.0151 0.00045 (5) 0.0025

L γ13 21.73 0.0015 (2) 0.0026 0.00027 (10) 0.0004

(21)

17

きる

[25]

SQUID

とはその名が示す通り超伝導の量子性を利用した装置である。

SQUID

には大

きく分けて

dc-SQUID

rf-SQUID

とに分類される。

rf-SQUID

はジョセフソン接合を

1

ヶ所持つ超伝導リングを利用しており,そのリングには通常

rf

(20

30 MHz)

の循 環交流電流を流して動作させる。これに対し

dc-SQUID

2

つのジョセフソン接合を直 流電流でバイアスして用い,接合を揃えるのは難しいが感度が高いという特徴を持つ。

TES

型マイクロカロリーメータの信号読み出しには,優れたエネルギー分解能を達成す るためにより低雑音である

dc-SQUID

を用いる。

dc-SQUID

の動作原理

dc-SQUID

とは,前節で述べたようにジョセフソン効果を利用した素子で図

2-2

のよ

うに2つのジョセフソン接合を並列に持つリングである。

簡単のため,2つの接合とループの左右部分は同一であるとする。

SQUID

を通る全電 流を

I

とすると,

I c >0

として

 

 

 

 

 

 

sin 2 cos 2

2

sin sin

2 1 2

1 C

2 1

2 1

I

I I

I I

I C C

(2-10)

と与えられる。

ここで,超伝導体のクーパー対の巨視的波動関数の位相を

θ

とし,∇

θ

を図に示した 積分路

C

に沿って周回積分すると,

2πn (n

:整数

)

になる。すなわち,

) (

) (

) (

) (

2

s b a c b d c a d

C                     

d n (2-11)

図 2.2 dc-SQUID素子の模式図

(22)

18

1

3

項は接合を横切っての位相差であるから,ゲージ不変位相差の式

 

2

0 1 2

1  2  A  (r, t) d s 

(2-12)

を用いて,

 

b

0 a 1 a

b

2  Ad s

(2-13)

 

d

0 c 2 c d

2  Ad s

 (2-14)

となる。

一方,第

2

4

項は超伝導体内部の位相差である。磁界は熱力学的臨界磁界

H C

より十 分小さく,秩序パラメータ

 

の空間的変化が無視できるとして,

   r  

   exp i

θ

 (2-15)

のように,空間的に一様な

 

と空間的に変化する位相

θ(r)を用いた記述が可能である。

この場合,電流密度

J

s

は,

f n

S

( n S

:電子対密度)を用いると,

e A

m f e

J n

2

*

*

* s S

)

(   

  (2-16)

ここで

Λ=m*/n S |f| 2 e* 2

Φ 0 =h/2e=2.07×10 -15 (Wb)

とすると

c

0 b c

0 b c

b b c

2

2 J d s A d s

s

d       

θ Λ (2-17)

a

0 d a

0 d a

d d a

2

2 J d s A d s

s

d       

θ Λ (2-18)

となり,式

(2-13)

(2-14)

(2-17)

(2-18)

を式

(2-11)

に代入すると

 

c

b 0 a

d 0 C

0 1

2

2 2

π 2

2 n Ad sJd sJd s  Λ

Λ 

 

(2-19)

超伝導線の太さが磁束侵入深さ

λ

よりはるかに大きいとすると,

J S =0

ととってよい。

また,

A

の積分は積分路

C

内の磁束

Φ

に等しい。したがって,

0 1

2

π 2

2 

 

  

n (2-20)

となり,式

(2-11)

に代入すると

(23)

19 π ) sin(

π ) cos(

2

0 1 0

C 

 

I  

I (2-21)

また,図の超伝導ループのインダクタンスを

L

とする。全磁束は,外部から加えられ た磁束

Φ ext

と,ループを流れる電流によって作られた磁束の和で与えられる。ここで,

電流

I 1

I 2

を次のように表わす。

cir

1

I I

I   (2-22)

cir

2

I I

I   (2-23)

ここで,

I

は平均電流とし,

I cir

は循環電流とする。平均電流は磁束を生じないが循環電 流は磁束を生じるため,これを

LI cir

とする。

したがって,全磁束

Φ

2 ) cos(

2 ) sin(

) sin 2 (sin

2 1 2

1 C

ext

2 1

C ext

cir ext

 

LI LI LI

(2-24)

となる。ここで,式

(2-20)

を用いると

π ) cos(

π ) sin(

0 1 0

C

ext 

 

 

LI(2-25)

となる。よって,式

(2-21)

(2-25)

を解くことにより

SQUID

の振る舞いを求めることが できる。

本研究では循環電流が無視できるとして,与えられた

Φ ext

に対して式

(2-21)

φ 1

につ いて極大をとることにより,

I max

を数値的に求めることができる。

 

 

 

0 ext C

max

cos π 2 I

I (2-26)

これより

I max

は周期

Φ 0

で変化することがわかる。

この素子にバイアス電流

I B

を流すと

I B > I max

で電圧が出始める。つまり有限の磁束に 対しては臨界電流が減少し,ジョセフソン接合に電位差が生じることから,磁束の変化 を電圧の信号として読み出すことができる。常伝導トンネルの抵抗値を

R

とすると,

2 max 2

B

I

I R

V   (2-27)

(2-26)

を代入し,

I B ≈2 I C

とすると

 

 

 

0 ext C

sin

2 

RI

V (2-28)

(24)

20

と表わせる。したがって,

I B >2I C

で電圧が磁束と共に周期的に変化することがわかる。

(2-27)

(2-28)

を見てわかる様に

SQUID

は出力電圧

V

が入力電流

I

に比例するので はなく,電流の差に比例していることが分かる。ここが他の電流計とは異なる特徴であ り,それゆえ大きな定電流に変動する小さな信号電流を定電流とは無関係の信号電流の み測定できる利点があるが,電流の絶対値を知るには異なる操作が必要となってくる。

磁束固定ループ

SQUID

は外部磁束に対して周期的な応答をするため,動作点が少しずれただけでも

増幅率が大きく変動してしまい,応答は非線形である。さらに,大きな入力に対しては 出力の折り返しが出来てしまう。そのため,一般的にはフィードバックをかけて動作さ せる。これは,

SQUID

を貫く磁束が一定に保たれるようにフィードバックをかけるこ とから,磁束固定ループ

(FFL

Flux Locked Loop)

と呼ばれる。

フィードバック回路を簡単に図

2.3

のように示す。増幅器の応答関数

A(ω)

 

i A A

  ) 1

( (2-29)

とする。ただし

1/2πτ

は遮断周波数で,

A

は直流成分増幅率である。また,入力された 磁束を

Φ in

SQUID

素子から読み出された電圧を増幅器のゲイン倍された出力を

V out

と する。この時磁束

Φ in

と電圧

V out

には次の関係がある。

( )

)

( in out

out AbV

V    (2-30)

これと式

(2-30)

を用いると

 

 

i Ab b bA

V A

 

 

1

) ( ) 1

) ( ( 1

)

( in

in

out (2-31)

となる。ただし

bA

1

と近似した。したがって

bA

1

より十分に大きいならばシステ ム感度はフィードバック量

b

で決定され,

A

の変化はほとんど影響がなくなる。又実質 入力量は次のようになる。

) ) (

( )

( ) ) (

( out in in

out

in  

     

A bA

bV V (2-32)

これよりフィードバックをかけることで

bA

倍広い入力範囲を得る事が出来る。

またフィードバック抵抗を

R fb

,フィードバックコイルと

SQUID

の相互インダクタン スを

M fb

,フィードバック磁束を

Φ fb

とすると

out fb

fb

fb

V

R

M

 (2-33)

(25)

21

ここで式

(2-32)

より

bA

1

とすると

out fb  bV

(2-34)

とかけるので,フィードバック量

b

は次のようになる。

fb

1

fb

M R

b  (2-35)

実際の回路では図

2.3

のようにフィードバック抵抗とフィードバックコイルが組み込 まれている。

Serial SQUID Array

増幅器

SQUID

素子自体の利用可能な周波数帯域は

dc

GHz

と非常に広いが,

FLL

回路な どでインピーダンス整合をとるためにロックイン増幅などの複雑な回路系によって,周 波数帯域が制限されてしまう。そこで近年実現されてきたのが

SQUID

増幅器である。

SQUID

増幅器は図

2.4

のように,信号を複数のコイルを用いて数十~数百の直列に並べ

SQUID

へと入力し,それらの出力電圧の和をとることで信号を増幅する。多数の

SQUID

が直列に並んでいるため,単体の

SQUID

に比べてインピーダンスが数十~数百

倍に大きくなっており,インピーダンス整合がとり易くなっている。このため

SQUID

増幅器の周波数帯域は単体

SQUID

よりも遥かに向上する。さらに低温環境で信号を増 幅できるので,室温に置かれた増幅器による雑音の影響が小さくなる。

以下に本研究で使用した

Serial SQUID Array

増幅器について説明する。図

2-3

のよう に入力電流を複数のインプットコイルを用いて,

SQUID

アレイに入力し,直列に並ん

SQUID

の出力電圧を足し合わせる構造をしている。

2

段式

SQUID

アンプのように初

段・後段の

2

段階の増幅ではなく,知りたい情報

(

信号

)

の最も近いところで,磁束電 圧変換と増幅を行うので雑音の寄与が小さくなる。ただし,信号の増幅としては

SQUID

アレイの電圧の足し合わせになるので,増幅度は

2

段式

SQUID

アンプよりも小さくな

図 2.3 フィードバック回路

-b

A(ω)

Φ

in

(ω) V

out

(ω)

(26)

22

る。増幅度を大きくしようと

SQUID

アレイの数を多くすると,その分

SQUID

の特性が 揃い難くなり,接合の弱い部分があったりするとそこの周りで磁束のトラップが起こる などの問題もある。

TES

型マイクロカロリーメータの動作原理

マイクロカロリーメータの概要

マイクロカロリーメータは図

2.5

に示すように

X

線吸収体,温度計,冷熱浴及び温度 計と冷熱浴との間の熱リンクから構成される。

X

線吸収体が検出器の有感部であり,入 射

X

線のエネルギーを吸収し熱に変換する。温度計は吸収体と結合されておりその温 度上昇を正確に測定する。熱リンクは冷熱浴と温度計との間を弱く結合しており信号が 無いときに吸収体の温度をある一定の値に保つ。入射

X

線のエネルギーを

E

X

線吸収 体の熱容量を

C

とすると,

X

線入射前の温度

T 0

からの温度上昇

ΔT

C TE

 (2-36)

となる。この温度上昇は,熱伝導度

G

を持つ冷熱浴との熱リンクを介して緩和され,

カロリーメータの温度は再び

T 0

に戻り,

X

線測定ができるようになる。この温度変化 を微分方程式で表わすと

図 2.4 Serial SQUID Arrayアンプの回路図

(27)

23

T t G

CT    d

d (2-37)

これより,

 

 

 

 

T t

T 0 exp (2-38)

となる。ここで

ΔT 0

X

線が

X

線吸収体に入射した時刻

t=0

のときの温度上昇の値で,

減衰時定数

τ

は,

G

C

 (2-39)

となり,信号の減衰はカロリーメータの熱容量と熱リンクの熱伝導度によって決まる。

マイクロカロリーメータのエネルギー分解能は原理的には検出器の熱力学的な内部エ ネルギーの揺らぎによって制限されている。正準分布の分配関数を

i

T k E

i B

e

Z / (2-40)

とすると内部エネルギー

U

i

T k E i e

i B

Z E

U 1 /

(2-41)

で表される。ここで

k B

はボルツマン定数

(=1.38×10 -23 (J/K))

である。内部エネルギー

U

を温度

T

で微分したものは熱容量

C

を表すので両辺を

T

で微分すると

2 2

2 / 2 /

1 1

E E

e Z E e

Z E C

i

T k E i i

T k E

i

i B i B



 



 

 

 

 

 

 

  

(2-42)

となる。また,ここで

E E 22 E 2 2 E E E 2 E 2 E 2 (2-43)

であるので,式

(2-42)

右辺は分散を表しており,その平方根である標準偏差を内部エネ ルギーの揺らぎ

ΔU

とすると

C T k T k N

UBB 2

(2-44)

となる。これより極低温マイクロカロリーメータの原理的なエネルギー分解能は半値幅 で次のように表わせる。

C T k E FWHM 2 2 ln 2 B 2

Δ   (2-45)

ここで

ξ

は温度計の特性に由来するパラメータである。

図 1.2  厚さ 2cm,密度 1g/cm 3 の水ファントムの X 線透過率[18]
図 2.1  Pu 同位体,超ウラン元素の生成過程[24]
図 2.4 Serial SQUID Array アンプの回路図
図 3.9 TES ホルダ。右の写真は拡大写真。
+7

参照

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