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米国における役員報酬をめぐる近年の動向 ― 一九 九〇年代の役員報酬額の増加と二〇〇〇年代初頭の 不祥事の後で ―

著者 伊藤 靖史

雑誌名 同志社法學

巻 58

号 3

ページ 1‑62

発行年 2006‑06‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000010952

(2)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向

米国における役員報酬をめぐる近年の動向

一九九〇年代の役員報酬額の増加と二〇〇〇年代初頭の不祥事の後で

伊  藤  靖  史

    目 はじめに 二〇〇二年改革までの動向 1 一九九〇年代初頭の改革によって形成された規律 2 一九九〇年代の動向と報酬をめぐる不祥事 二〇〇二年改革役員報酬に関連する部分を中心に 1 サーベンス・オックスリー法 2 上場規則の改正 3 ベスト・プラクティスの提案

4 会計基準ストックオプションの費用計上

論 説

︵一〇一九︶

(3)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向 5 小括近年の役員報酬に関する法規制の改革の意義 役員報酬をめぐる学説の動向業績なき報酬?

1 ベブチャックおよびフリードによる現状の認識 2 ベブチャックおよびフリードの提案 3 ベブチャックおよびフリードに対する批判 4 小括ベブチャックおよびフリードと従来の議論おわりに

はじめに

  ⑴ 会社法

趣従来お手盛り﹂の防止に求められ︑のは同条に関する解釈論は︑主に︑そのような﹁趣旨規定このような︒ていたの 制定前︑の商法二六九条は︑取締役の報酬が定款株主総会決議またはによって定められるべき旨を規定し 1︶

旨に照らして︑株主総会決議の内容としてどのようなものが許容されるか︵また︑許容されないか︶という点をめぐって展開されていた︒しかしながら︑取締役の報酬の決定には︑経営者を監督し︑インセンティブを付与する手段として

の側面もある︒経営者の報酬が経営者の監督・インセンティブ付与手段としての側面を有することは︑委員会等設置会社の執行役の報酬について顕著だが︵執行役の報酬は報酬委員会が決定する︶︑そうでない会社の取締役の報酬につい

ても変わらないはずである︒取締役や執行役の報酬としてストック・オプション等の業績連動型報酬が用いられることが多くなっている現在︑取締役・執行役の報酬の監督・インセンティブ付与手段としての機能を重視した議論を行う必

要性が高まっている︒以上の視点に立って︑私はこれまで︑いくつかの論考を公表してきた︒一九九七年・一九九八年 ︵一〇二〇︶

(4)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向 に公表した論考では︑一九九〇年代前半の米国および英国の執行役員・取締役の報酬についての規制の改革を紹介し︑わが国のその当時の規制についても若干の検討を加えた

後公表におけるその英国︑では論考したに三年〇〇二︑また︒ 2

の状況を紹介し︑わが国のその当時の規制を前提に︑一九九七年・一九九八年の論考よりも詳細に︑わが国の取締役・執行役の報酬に関する規制のあり方について検討を加えた

︒本稿は︑それらの論考に続くものとして︑一九九〇年代以 3

降の米国における︑CEO等の執行役員の報酬をめぐる法規制の動向・学説での議論を紹介するものである︒

  米国における執行役員の報酬をめぐる法規制の改革・学説における議論には︑ここ二〇年ほどの間に︑大きく二つの

ピークがある︒その一つ目は一九九〇年代初頭であり︑この時期の執行役員の報酬をめぐる議論の高まりは︑SECの規則の改正など一連の法規制の改革につながった︒しかし︑皮肉なことに︑そのような法規制の改革の後︑一九九〇年

代を通じて︑CEOをはじめとする執行役員の報酬は︑それまで以上のペースで増加を続けた︒このような状況を背景に︑一九九〇末から二〇〇〇年代初頭の景気の後退と︑二〇〇一年末から二〇〇二年にかけての︑エンロンやワールド

コムなどの米国大企業の不祥事と破綻を契機として︵本稿では︑これらの一連の不祥事を︑二〇〇一・二〇〇二年不祥事と呼ぶ︶︑執行役員の報酬が再び注目を集めた︒二〇〇一・二〇〇二年不祥事に対応して︑米国議会は二〇〇二年に

サーベンス・オックスリー法を制定し︑それにもとづいたSECによる規則の制定や︑上場規則の改正も行われた︵本

稿では︑サーベンス・オックスリー法とそれに関連する一連の施策を総称して︑二〇〇二年改革と呼ぶ︶︒この改革は︑執行役員の報酬に関連する内容も含む︒そのような中で公表されたベブチャックおよびフリード︵Lucian Bebchuk &

Jesse Fried︶の著書﹃業績なき報酬﹄は︑米国の執行役員の報酬をめぐる実務について批判的な検討を行い︑狭い意味での執行役員の報酬に関する規制にとどまらず︑米国の公開会社のコーポレート・ガバナンス構造の基礎に関わる改革 を提案して話題を呼んだ

︒現在されている展開に軸を同書では︑︒は議論をめぐる報酬の執行役員の米国 4︶

︵一〇二一︶

(5)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向

  本稿は︑以上のような動向を紹介することを目的としている

におけ二年改革米国の時期つ先立に〇〇二で︑以下︒ 5

る執行役員の報酬をめぐる動向を概観した後︑で二〇〇二年改革について検討する︒その後︑で︑ベブチャックおよびフリード﹃業績なき報酬﹄の内容を紹介し︑それへの批判についても触れる︒

  ⑵ に進む前に︑米国の公開会社のコーポレート・ガバナンス構造と︑執行役員の報酬の決定過程について︑ここで簡単に説明しておく︒

  米国の公開会社では︑一般に︑株式所有が分散し︑株主は︑会社の経営について効果的な監督ができない︵所有と支配の分離︶︒法律上︑株主総会において選任されるのは取締役であり︑取締役は取締役会を構成する︒取締役会の多数 を占めるのは非常勤の社外取締役︵outside director︶であり︑取締役会によって選任されたCEO︵chief executive officer︶等の執行役員︵executive officer︶が会社の経営を主に担当する︒取締役会の主な職務は︑会社および株主の 利益のために︑執行役員を監督する︵monitor︶ことである︒   CEO等の執行役員の報酬︵以下︑本稿では︑米国についてはCEOを含む執行役員の報酬を﹁役員報酬﹂と呼ぶ

6

の決定について最終的な責任を負うのは取締役会であるが︑米国の多くの公開会社では︑執行役員の報酬契約の詳細を決定する権限は報酬委員会︵compensation committee︶に委譲されている︒報酬委員会は︑通常三︑四人の取締役か ら構成され︑近年では︑そのほとんどが社外取締役である︒報酬委員会において報酬を決定する際の資料を提供させるために︑報酬コンサルタント︵compensation consultant︶が用いられることも多い︒

  株主が役員報酬の決定についてCEOや取締役の義務違反を理由として代表訴訟を提起したとしても︑株主の主張が認められる可能性は非常に低い︒役員報酬の決定については経営判断原則が適用されることに加え︑株主代表訴訟につ いては種々の手続的な︵CEOや取締役の義務違反を主張しようとする株主にとっての︶障害がある

7︶ ︵一〇二二︶

(6)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向   二〇〇二年改革までの動向   二〇〇二年改革に先立つ役員報酬に関する規律は︑一九九〇年代初頭の法規制の改革によって形作られた︒では︑まず︑一九九〇年代初頭の法規制の改革に至るまでの動向と︑従来の規律の特徴を確認する︵

1︶︒その後で︑一九九

〇年代の動向を見る︵

2︶︒

 1一九九〇年代初頭の改革によって形成された規律   ⑴ 米国の公開会社のCEO等の執行役員の報酬額は︑一九八〇年代を通じて増加した︒たとえば︑スタンダード& プアーズ五〇〇︵S&P 500︶構成会社のCEOの平均報酬額は︑一九七〇年に約八五万ドルであったものが︑一九八〇年代に四倍程度増加している

することができと概観のように次︑は変化の報酬内容︑増加の報酬額のOECの間この︒ 8

る︒

  一九七〇年代を通じて︑CEOの報酬パッケージは︑ほとんどが︑基本給と︑年度利益に連動したボーナスによって 占められていた

高め︑会社の価値をセンティブを︑与株価を上昇させるインセンティブを与えるものではなかったといわれるえたが 増加させるインを︒︑このような報酬パッケージは︑CEOに会社年度利益の規模を非効率に拡張し︑ 9︶

10

  一九八〇年代に入り︑ジャンク・ボンドを用いた企業買収手法の開発とともに敵対的企業買収が盛んになると︑CEOの報酬内容にも変化が現れる︒買収が成功した場合︑被買収会社の執行役員の自社株式保有割合を高めることによっ

て︑企業価値向上のインセンティブを与えることが目指された︒また︑機関投資家も︑ストック・オプション等のエクイティ報酬の積極的な利用によって︑役員報酬と企業価値を連動させることを求めるようになった︒その結果︑一九八

︵一〇二三︶

(7)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向

〇年代を通じて︑報酬パッケージの中に占めるエクイティ報酬の割合が増加した

︒エクイティ報酬の利用は一九九〇年 11

代に加速するが

年代始︑エクイティ報酬へのシフトは︑一九八〇まったのであるに敵対的買収ブームの副産物として 12

13

  一九八〇年代を通じた役員報酬の増加を背景に︑一九八〇年代末から一九九〇年代初頭にかけての米国の景気の下降

を契機として︑一九九〇年代初頭には執行役員の﹁高額﹂報酬が米国社会の関心を集め︑役員報酬に関する学界での議論もピークを迎えた︒執行役員の﹁高額﹂報酬と執行役員・従業員間の報酬格差の拡大は︑一九九二年の大統領選挙に

おいても取り上げられ︑議会では︑たとえば︑役員報酬のうち賃金額が最も低い従業員の二五倍を超える部分の損金算入を認めない法案が提出される︒このような動きの結果として︑一九九三年には内国歳入法典が改正され︑役員報酬の

うち業績に連動しないものの金額が一〇〇万ドルを超える部分について︑損金算入が認められなくなった

役が︑とし基礎を方え考だとする不公正が自体であること高額役員報酬︑は立法めない認を損金参入の一定額以上うち の役員報酬︒ 14

員報酬額の減少を目指すものである︒しかしながら︑米国の役員報酬をめぐる議論において︑そのような考え方が主流になることはなかった︒

  ⑵ 一九九〇年代初頭以降︑役員報酬に関する米国の学界での議論・法規制の改革において主流をなす考え方は︑役員報酬が業績と連動しているかどうかを問題とするものである︒そのような主張の代表的なものは︑ジェンセンおよび マーフィー︵Michael C. Jensen & Kevin J. Murphy︶の論考に見ることができる

べている ︒彼らは︑一九九〇年に次のように述 15

16

  ﹁公開会社の株主とCEOの間の利益衝突は︑プリンシパル

−例動行の者営経⁝︒るあで一エな的典古の題問トンェジーと

投資機会は︑⁝株主によって完全に観察可能なものではない︒実際︑株主は︑CEOがどのような行動をとりうるのか︑また ︵一〇二四︶

(8)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向 は︑これらの行動のうちいずれが株主の富を増加させるのかということを︑しばしば知らない︒このような状況において︑エ

ージェンシー理論は︑次のことを予測する︒すなわち︑報酬政策が︑株主の富を増加させる行動を選択し実行するインセンテ

ィブを経営者に与えるよう設計されるであろうと︒

  株主は︑特定の行動⁝の期待収益が期待費用を上回る場合には常に︑CEOがその行動をとることを望む︒しかし︑CEO

は︑特定の行動をとることから生じる個人的な収益と費用だけを比較する︒CEOのリスク回避の効果を捨象すれば︑CEO

の富を株主の富と連動させる報酬政策は︑選択肢となる行動の﹇CEOにとっての﹈私的な費用・便益と社会的な費用・便益

とを一致させることを助け︑CEOが適切な行動をとるインセンティブを付与する︒﹂

  ﹁報酬政策が﹇株主にとっての﹈価値を増加させるようなインセンティブを付与することができるメカニズムは︑多数存在

する︒これは︑業績に連動したボーナスや給与改定︑ストック・オプション︑業績に連動した解任の決定を含む︒﹂

  以上のような枠組みを基礎として︑ジェンセンおよびマーフィーは︑同年に公表された別の論考において︑次のように述べる

17

  ﹁CEOの報酬には深刻な問題があるが︑﹃過大な﹄報酬が最大の問題なのではない︒CEOがいくら︵how mach︶報酬を 支払われているかということについて執拗に焦点を当てることは︑公衆の注意を真の問題―CEOがどのように︵how︶報 酬を支払われているか―から逸らせる︒ほとんどの公開会社では︑トップ役員の報酬は︑業績とはほとんど関係がないもの

となっている︒﹂

︵一〇二五︶

(9)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向   ﹁報酬と業績をよりアグレッシブに連動させる︵そして︑劣った業績を理由とする解任の可能性を高める︶システムは︑能

力に乏しい経営者にはっきりと低い報酬を与える︒長期的には︑これらの能力に乏しい経営者は︑より能力が高く︑より高い

動機付けを与えられた役員に交替させられるだろう︒これらの能力が高い役員は︑平均的に︑より優れた業績を上げ︑より高

い水準の報酬を得るだろう︒残存する経営者は︑会社の業績を向上させる生産的な方法を見つける︑より大きなインセンティ

ブを有することになり︑その報酬も同様に増加するだろう︒

  このような―事業の業績の向上によってもたらされる―報酬の増加は︑株主から役員への富の移転を表すものではない︒

むしろ︑そのような報酬の増加は︑より大きなリスク負担︑努力︑および能力によって育まれたさらなる成功について︑経営

者を報いるものとなるだろう︒﹂

  以上に引用した箇所に示されているように︑ジェンセンおよびマーフィーは︑エージェンシー理論を基礎として︑C

EOの報酬をインセンティブ付与のための重要な手段と捉える︒この考え方からすれば︑CEOの報酬について重要なのは︑それが適切なインセンティブをCEOに与えるものになっているかどうかであり︑報酬の金額自体が問題となる

ことはない︒﹁報酬の額が低すぎてCEOに適切なインセンティブを与えることができない﹂という事態も︑ありえないわけではないのである

18

  ⑶ 一九九〇年代初頭に行われた役員報酬に関する一連の法規制の改革は︑以上のような考え方を基礎とする

役員報取締役会な最適して考慮を利益の株主が報酬委員会ないし︑させるために連動を業績と役員報酬︑では改革らの これ︒ 19

酬を決定すること︑ストック・オプションなどの業績連動型報酬を有効に利用することが期待された︒たとえば︑一九九二年に︑SECは︑証券取引法上の開示項目について統一的な定めを置くレギュレーションS

−Kのアイテム四〇二 ︵一〇二六︶

(10)

同志社法学五八 米国における役員報酬をめぐる近年の動向 を改正し︑役員報酬に関する開示を抜本的に拡充した

accountability酬︶の強化を目的とし︑要約報明︵などの表による役員報酬額の表任報株責委員会の酬主対する説明に ︑たな役員報酬の開示はについての役員報酬の決定取締役会・︒新 20

瞭な開示︑報酬委員会報告書による株主への説明︑および︑会社業績と市場全体の動向を比較するグラフの開示を主な内容とした︒これらの開示によって︑特定の事業年度に支払われた報酬額が株主に対して明瞭に示され︑取締役会・報

酬委員会が個別の執行役員の報酬額を決定した根拠︑とりわけ︑報酬額と業績との関係が株主に対して十分に説明されることが期待された

め役員報酬認を株主提案での形の勧告提案する関に︑はCES︑とともに拡充の開示このような︒ 21

るよう従来の方針を転換した︒これによって︑株主が役員報酬に関する意見を取締役会に対して直接に伝達する道を開くことが目指された

中・の提案プラクティスの・するベスト関ガバナンスにコーポレート︑が団体いくつかの︑また︒ 22

で︑報酬委員会の活動内容や独立性について扱っている︒これらの提案は︑主に報酬委員会の構成面からその活動の基礎を整えることを目的とする

︒すでに述べた一九九三年の内国歳入法典の改正も︑業績連動型報酬についてはその金額 23

に関わりなく損金の算入を認めるものであり︑役員報酬と業績の連動という考え方をも取り入れたものといえる︒

  ﹁はじめに﹂で述べたように︑米国の公開会社において︑会社の業務執行についての権限はCEO等の執行役員が有

しており︑取締役会は︑執行役員の監督を主な職務とする︒個別の執行役員の報酬の決定はそのような監督の一貫と位

置づけられ︑報酬の決定権限は取締役会または報酬委員会にある︒役員報酬に関する米国の従来の規律は︑このような報酬決定権限の所在を前提に︑取締役会・報酬委員会が︑執行役員に十分なインセンティブを与え︑それによって株主

の利益に資するような報酬内容を決定することを︑制度的にバックアップしようとするものといえる

報酬委︑・取締役会これによって︑であり強化の開示についての役員報酬とされたのが手段な主でそのための改革の頭 年代初〇一九九︒ 24

員会の株主への説明責任の強化が図られたわけである︒他方で︑米国では︑株主が会社の経営に関与できる度合いはも

︵一〇二七︶

(11)

同志社法学五八 一〇米国における役員報酬をめぐる近年の動向

ともと非常に限られており︑そのことは役員報酬の決定についても

妥当する︒このような役員報酬についての株主・取締役の間の権限分配は変更されず︑役員報酬についての株主提案も︑勧告提案の形

でしか認められなかった︒

 2一九九〇年代の動向と報酬をめぐる不祥事   ⑴ 一九九二年から一九九三年にかけて規制の改革が行われた

後︑役員報酬に関する学界での議論は︑一時沈静化する︒他方で︑一九九〇年代には︑CEO等の執行役員の報酬額は増加の一途をた

どることになる︒ある論考では︑一九九〇年代以降の米国の公開会社の役員報酬について︑以下のようなデータが紹介されている

︒デ 25

ータを構成する会社は︑スタンダード&プアーズ五〇〇︑スタンダード&プアーズ・ミッドキャップ四〇〇︵S&P Mid-Cap 400︶︑ス タンダード&プアーズ・スモールキャップ六〇〇︵S&P Small-Cap 600︶の構成会社である︒これらの会社について︑一九九三年から

二〇〇三年までの︑CEOの報酬総額および報酬額上位五人の執行役員に支払われた報酬総額について︑その平均︵mean︶の推移が

﹇表

1こデのていつに額酬報のでこ︒るいてれさ介紹にうよのー

[表 1 ] CEO・報酬額上位 5 人の執行役員の平均報酬額

(S&P 500, Midcap400, SmallCap600)

CEO 上位5人の執行役員

S&P 500 MidCap400 SmallCap600 S&P 500 MidCap400 SmallCap600

($ Million)($ Million)($ Million)($ Million)($ Million)($ Million)

1993 3.7 2.2 1.3 9.5 5.8 3.2

1994 4.4 2.6 1.6 10.7 6.4 3.9

1995 4.8 2.9 1.5 11.9 6.8 4

1996 7 3.3 1.9 15.8 8.1 5

1997 9.1 4.2 2.2 20 9.9 5.4

1998 10.7 4.6 2.4 23.7 10.4 5.6

1999 12.7 5.1 2.3 28.3 11.4 5.7

2000 17.4 5.1 2.5 36.6 12.1 5.9

2001 14.3 4.7 2.6 31.9 10.6 5.7

2002 10.3 4.7 2.2 23.5 10.3 5.2

2003 9.1 4 2 21.4 9.4 4.7

︵一〇二八︶

(12)

同志社法学五八 一一米国における役員報酬をめぐる近年の動向 タは︑ExecuComp︵スタンダード&プアーズが運営する役員報酬についてのデータ・ベース︶にもとづく︒このデータ・ベースで報告さ

れた執行役員の給与︑ボーナス額︑長期インセンティブ計画による報酬額︑譲渡制限付株式の付与日現在の価値︑および︑ストック・オプ

ションの付与日現在の価値︵ブラック・ショールズ式によるもの︶を合計したものが報酬総額とされ

︑金額は︑二〇〇二年の価格に調整さ 26

れている︒

﹇表

1員を代年〇九九一︑が酬報役の社会開公の国米︑はらか通

じて上昇し︑二〇〇〇年代に入ってやや減少していることが分かる︒この傾向は︑CEOの報酬総額で見ても︑報酬額上位五人の執行役員

の報酬総額で見ても同様であり︑スタンダード・アンド・プアーズ五〇〇︑ミッドキャップ四〇〇︑および︑スモールキャップ六〇〇のい

ずれにおいても同様である

27

  役員報酬の構成要素別のデータとしては︑次の数値が紹介されている︒CEO︑および︑報酬額上位五人の執行役員について︑エクイテ

ィ報酬︵譲渡制限付株式の価値とストック・オプションの価値の合計︶が報酬総額に占める割合は︑﹇表

2﹈﹇表 3﹈のように推移している︒   ﹇表

2﹈﹇表 3﹈からは︑米国の公開会社の役員報酬に占めるエクイ

[表 2 ] CEOの報酬総額に占めるエクイティ報酬の割合

(S&P 500, Midcap400, SmallCap600)

CEO

S&P 500 MidCap400 SmallCap600 New Economy New Economy以外

1993 41% 46% 47% 58% 42%

1994 48% 53% 53% 63% 49%

1995 49% 48% 48% 72% 44%

1996 56% 55% 52% 76% 51%

1997 63% 60% 55% 77% 58%

1998 70% 66% 61% 86% 63%

1999 71% 70% 56% 87% 63%

2000 78% 67% 57% 92% 66%

2001 76% 66% 58% 86% 66%

2002 67% 59% 53% 83% 59%

2003 59% 54% 44% 76% 53%

︵一〇二九︶

(13)

同志社法学五八 一二米国における役員報酬をめぐる近年の動向

ティ報酬の割合が︑一九九〇年代を通じて上昇し︑二〇〇〇年代に入

ってやや減少していることが分かる︒この傾向は︑CEOの報酬総額で見ても︑報酬額上位五人の執行役員の報酬総額で見ても同様であ

り︑スタンダード・アンド・プアーズ五〇〇︑ミッドキャップ四〇〇︑および︑スモールキャップ六〇〇のいずれにおいても同様である︒ま

た︑いわゆるニュー・エコノミーに属する業種の企業の方が︑そうでない企業よりは︑エクイティ報酬の割合が全体的に高い

28

  以上に見たように︑一九九〇年代の執行役員の報酬をめぐる動向は︑報酬額の大幅な増加と︑エクイティ報酬の占める割合の増加によ って特徴付けられる︒このような執行役員の報酬の変化は︑二〇〇一・二〇〇二年不祥事の原因の一つとも考えられている

︒すなわち︑報酬 29

が主にエクイティ報酬で構成されるようになったことで︑経営陣は︑一九八〇年代の敵対的買収ブームの際には会社の株価と解体価値との

関係に主要な関心を有していたのが︑会社の株価の短期の将来的動向に関心を向けるようになった︒エクイティ報酬は︑敵対的買収よりも

はるかに︑経営陣に会社の日々の株価を注視させるものだった︒そしてまた︑エクイティ報酬によって︑経営者が公認会計士等のゲートキ

ーパーに対して短期の市場操作を支持するよう働きかける圧力も強ま

[表 3 ] 報酬額上位 5 人の執行役員の報酬総額に占めるエクイティ報酬の割合

(S&P 500, Midcap400, SmallCap600)

上位5人の執行役員

S&P 500 MidCap400 SmallCap600 New Economy New Economy以外

1993 37% 41% 34% 50% 36%

1994 42% 45% 43% 57% 41%

1995 42% 42% 40% 62% 38%

1996 50% 49% 46% 69% 45%

1997 57% 54% 49% 72% 52%

1998 63% 58% 52% 80% 55%

1999 65% 63% 50% 82% 58%

2000 72% 63% 50% 87% 60%

2001 72% 60% 52% 83% 63%

2002 62% 54% 48% 77% 54%

2003 55% 51% 41% 69% 50%

︵一〇三〇︶

(14)

同志社法学五八 一三米国における役員報酬をめぐる近年の動向 ったといわれる︒

  ⑵ 二〇〇一・二〇〇二年不祥事は︑米国のコーポレート・ガバナンス・システムへの信頼を揺るがすものであった︒

その中で︑不正会計が問題となった企業において経営者が得ていた報酬や貸付けも︑しばしば問題とされた︒

  たとえば︑エンロンの会長であったケネス・レイ︵Kenneth Lay︶は︑二〇〇〇年度中にストック・オプションの行 使によって一億二〇〇〇万ドル余りの価値を実現した

保有にの損失を公表︶の間に︑従業員対はしては自社株式の購入を促しながら︑自らは多額同社に月この︵月〇年一︑ 一年二月レイが︑ある新聞報道は︑から︑二〇〇︒二〇〇一また 30

する自社株式を処分して七〇〇〇万ドル余りを手にしたとする︒さらに︑レイは︑会社から七五〇万ドルの融資枠を通じて借入れを行い︑その返済には保有する自社株式を充てたとされる

31

  ワールドコムのCEOであったバーナード・エバース︵Bernard Ebbers︶に対して会社が行った貸付けについては︑次のようにいわれている

い〇〇低よりも市場利率して対にかけてエバースに二年二から年〇〇〇二︑ワールドコムは︒ 32

利率での無担保の貸付けや債務保証を行った︒未返済額はエバースの辞任時には四億ドル余りに上り︑二〇〇八年までに返済することが合意されたが︑合意どおりの返済は見込めない︒

  ⑶ 二〇〇一・二〇〇二年不祥事のほかにも︑一九九〇年代以降に役員報酬が議論を呼んだ事件は︑いくつかある︒   一九九〇年代半ばには︑ウォルト・ディズニー社が︑わずか一年余りで退職したマイケル・オービッツ︵Michael Ovitz︶社長︵president︶に多額の退職金を支払ったことが話題を集めた︒この退職金の支払いについて提起された株 主代表訴訟の判決によれば︑次の事実が認定されている

EisnerMichael タしたオービッツを︑社長とてあ雇用した︒オービッツは有名なっ人でー・アイズナル︵の長年の友︶ 社︒一九九五年に︑ディズニーCは︑会長兼EOであるマイケ 33

レント・ブローカーだったが︑経営者としての経験はなかった︒オービッツと会社の任用契約は︑五年の任期を定め︑

︵一〇三一︶

(15)

同志社法学五八 一四米国における役員報酬をめぐる近年の動向

報酬として︑毎年一〇〇万ドルの基本給のほか︑ボーナスと︑二種類のストック・オプションの付与を定めていた︒こ

のうち﹁A﹂オプションと呼ばれたものは︑合計で三〇〇万株を会社から取得することができ︑オービッツの社長就任後満三年経過時以降に権利確定するものであった︒任用契約によれば︑同契約の期間満了前の終了に正当理由があれば︑

以後オービッツに報酬を支払う必要はなかった︒他方で︑正当理由がなければ︑オービッツは︑残りの契約期間についての基本給の現在価値︑一〇〇〇万ドルの退職金︑﹁残りの事業年度数×七五〇万ドル﹂の支払いを受け︑﹁A﹂オプシ

ョンはただちに権利確定するものとされていた︒オービッツは結局︑社長就任後一四月で辞任したが︑取締役会はこれを正当理由のない任用契約の終了と扱った︒オービッツに支払われた退職金や権利確定したストック・オプションの価

値総額は︑一億四〇〇〇万ドルにも上るといわれる︒

  二〇〇二年には︑ジェネラル・エレクトリック社︵GE︶の会長ジャック・ウェルチ︵Jack Welch︶が退職に伴って 得た様々な役得︵perquisite︶が話題となり︑SECの調査も行われた︒SECによれば︑GEによる不適切な開示は︑年次報告書・委任状説明書についての証券取引所法および同規則に違反するとされ︑その是正を命じる排除命令にGE が同意している

万︑〇〇一年に退職した後の初年度にはコンサルティング︑料として八万六千ドル余りのほか︑約二五〇二もとづいて のにによれば︑ウェルチはGEとの間﹁︒雇用および退職後のコンサルティングに関する契約﹂同命令 34

ドルに上る価値を有する便益を得た

記載をしていなかったな具体的ら︒ 何において委任状説明書︑役得について退職後このような︑はEG︑ところが︒の 35 ︵一〇三二︶

(16)

同志社法学五八 一五米国における役員報酬をめぐる近年の動向   二〇〇二年改革

役員報酬に関連する部分を中心に   では︑二〇〇一・二〇〇二年不祥事後の役員報酬をめぐる動向を概観する︒二〇〇二年に制定されたサーベンス・オックスリー法と︑その後のSEC規則の改正︑証券取引所の上場規則の改正について︑役員報酬に関連する部分を中

心に見た後で︵

13のれる触に簡単にも改訂会計基準︶︑する関にオプション・ストック︵

︵のする確認を関係との規律する関に役員報酬の米国従来︑意味する有が動向の 4︶︒これら︑に最後の 5︶︒

 1サーベンス・オックスリー法   ⑴ 二〇〇一・二〇〇二年不祥事に対応して︑米国議会は︑二〇〇二年にサーベンス・オックスリー法を制定した

が規定たな新︑されるとともに改正多数設のが一九三四年取引所法・一九三三年証券法によって同法けられた規定 36

︒同 37

法の規定に従い︑SECは多くの規則を新設した︒また︑ニューヨーク証券取引所およびナスダック︵NASDAQ︶は上場規則を改正した︒二〇〇二年改革は︑会計制度の改革や企業開示の強化と並んで︑公開会社のコーポレート・ガバ ナンスの強化を内容とする

38

  サーベンス・オックスリー法は︑コーポレート・ガバナンスの強化策として︑会社の監査委員会︵audit committee︶ の独立性・専門性の強化を図る︒このための規制の手法の一つとして︑SECが規則を定め︑それを通じて上場規則をコントロールする方法がとられた

︒そして︑これにもとづいて改正された上場規則は︑役員報酬についても規定を改正 39

するものであった

い言である公開会社︑ばえれ換 をの下で証券登録で行う会社所あり︑法引な取のような規制の対象とる︒会社は︑一九三四年証券こ 40

41

︵一〇三三︶

(17)

同志社法学五八 一六米国における役員報酬をめぐる近年の動向

  ⑵ 役員報酬に関連するサーベンス・オックスリー法の規定の中には︑以上の規制に比べて︑より直接的な規制手法 をとるものがある︒以下では︑このような規定の内容を概観する︒ここでの規制対象も公開会社であるが

に﹁会社﹂という︒ ︑以下では単 42

  ① 信用供与の禁止  二〇〇一・二〇〇二年不祥事では︑エンロンやワールドコム等の執行役員が多額の貸付けを会社から受けていたことが批判された︒これを受けて︑サーベンス・オックスリー法の前身となる法案では︑当初︑会社 から取締役または執行役員への信用供与について︑開示を要求することとされていた

そのようなされ変更に規定する禁止を信用供与 ︑で過程の審議での上院︑これが︒ 43

︑サーベンス・オックスリー法四〇二条として成立した︒同条によって 44

改正された一九三四年証券取引所法一三条⒦項は︑会社が︑直接的または間接的に︵子会社を通じて行うものも含め︶︑その会社の取締役または執行役員に対して︑貸付け等の信用供与を行うことを禁止する

︒本条の禁止の例外として︑た 45

とえば︑会社と取締役・執行役員の間の住宅貸付け︑消費者信用等の取引で︑当該会社の通常の消費者信用事業の過程で行われ︑当該会社が公衆に一般的に提供する種類のものであり︑かつ︑市場条件または公衆に対して会社が提供する

条件よりも有利でない条件で行われるものが定められる

void信た︶︵効無は与供用りれなわ行てし反違に条本︒と 46

willfullyは以の罰金もしくは二〇年の下以禁固に処せられ︑また下ルにドた︑故意に︵︶規定違反した者は︑五〇〇万 ︑ま 47

それらが併科される

にある傾向される ︑許容では現在︑されていたが禁止かつてはけは貸付への執行役員・取締役の会社︑州会社法上︒ 48

︒本条は︑公開会社の取締役・執行役員についてはそのようなルールを否定するものとなっている︒ 49

  本条の文言は広汎な信用の供与を含みうるものであり︑適用除外規定が定められているとはいえ︑本条の適用範囲には不明確なところが残されている︒たとえば︑旅行費用等の立替え︑社用車の利用︑転居費用の立替え等の役得が︑本 条にいう信用の供与に該当するかどうかは明らかではない

の次てれわ行も判批なうよ︒︑るはていつに条本︑たま︒い 50 ︵一〇三四︶

(18)

同志社法学五八 一七米国における役員報酬をめぐる近年の動向 すなわち︑本条は︑特定の形態の報酬︵貸付け︶を禁止するものであるが︑これによって経営者は︑報酬契約について再交渉をし︑報酬パッケージの中の他の構成要素を増額する︒そして︑この増加額は︑当初の貸付けの額よりも多くな るはずである︵経営者は︑そもそも貸付けを他の形態の報酬よりも高く評価していたからこそ報酬の一部を貸付けという形で得ていた

︶︒ 51

  ② 利益修正時の報酬の返還  二〇〇一・二〇〇二年不祥事では︑エンロンやワールドコム等の会社が粉飾決算を行い︑その一方で執行役員達がストック・オプション等によって取得した自社株式を売却して多額の利益を得ていたこと が問題とされた︒このような粉飾決算による利益の獲得を防止するため

misconduct︑務報告についての規制の重大のな違反を行ったことによって財下で︑正行為︶の結果︵会が証券諸法の社 法三︑サーベンス・オックスリー︑〇四条は不 52

会計の修正︵restatement︶を要求された場合︑当該会社のCEOおよびCFO︵chief financial officer︶は︑次のものをいずれも会社に返還しなければならないと定める

時時した提出にCESかした公表に最初が会社を当該財務諸表︒ 53

の︑いずれか早い時に先立つ一二ヶ月間において︑会社から受領したボーナスその他のインセンティブ報酬またはエクイティ報酬︒同じ一二ヶ月間において会社の株式の売却によって実現した利益︒

  SECは本条の適用除外者を規則で定めることができるが

︑そのような規則はまだ制定されていない︒また︑本条は︑ 54

解釈を必要とする文言をいくつも含む︒たとえば︑不正行為はどのようなものであるか︑不正行為は誰によるものであるか︑会計の修正はどのようなものであるか︑どのような違反が﹁重大﹂なのか︑返還を求められるのは具体的にはど

のような報酬か︑﹁利益﹂をどのように決定するか︑といったことが問題となる

enforceのEムを定めておらず︑本条がSCニう条本︑かのるれにさ行執てっよズメカ執法は︑本の条行︵︶のための ベ︒さらに︑サーリンス・オックスー 55

下での返還を請求するために訴訟を提起する権限を会社の取締役会が有するのか︑株主による代表訴訟が可能なのか

︵一〇三五︶

(19)

同志社法学五八 一八米国における役員報酬をめぐる近年の動向

は︑明らかではない

56

  ③ 取引停止期間中の自社持分証券取引禁止  エンロンの破綻時には︑エンロンの確定拠出型年金の基金の多くが自社株式に投資され︑しかも︑エンロンが破綻する直前の株価下落時に加入者による投資先変更が停止されたために自社 株式の処分ができず︑加入者が損失を被ったことが問題とされた︒同じ期間にエンロンの取締役や執行役員は保有していた自社株式を処分したとされる︒このような事態に対処するため

︑サーベンス・オックスリー法三〇六条は︑会社の 57

取締役または執行役員が︑取引停止期間︵blackout period︶中に︑その会社の持分証券を︑直接的または間接的に︑買い入れ︑売却し︑または︑その他の方法で取得ないしは譲渡することを禁止する︒ただしこれは︑取締役または執行役 員が︑その持分証券を︑取締役または執行役員としてのサービスまたは雇用と関連して取得した場合に限る

individual planaccount 個年型出拠定確型座口別する︵営運が社会︑はと間期金 ︒取引停止 58

座%口人個︑が上以〇五の者入加の︶ 59

に含まれるその会社の持分証券を取得または譲渡することを︑会社または年金受託者によって一時的に停止されている期間で︑連続三営業日以上にわたるものと定義される

︒本条に違反した取引によって取締役または執行役員が実現した 60

利益は︑当該取締役または執行役員の意図に関わりなく︑会社による返還請求に服する

のために返還請求をできる場合も定められる ︒会社の持分証券保有者が会社 61

62

  以上のような取引の禁止に加えて︑取引停止期間の︑SEC︑取締役︑執行役員︑および︑年金加入者への通知について定めが置かれる

をすし規則めるための定を例外の取引停止期間︑また︑明確化を適用範囲の本条はCES︑また︒ 63

でに制定している

64

  ⑶ サーベンス・オックスリー法は︑企業開示の強化を目指す規定を多数含む︒そのうち︑タイムリー・ディスクロ

ージャーに関する四〇九条によって︑役員報酬についての情報開示も強化されることになった︒同条によって追加され ︵一〇三六︶

(20)

同志社法学五八 一九米国における役員報酬をめぐる近年の動向 た証券取引所法一三条l項は︑SECに証券を登録している発行者に対して︑SEC規則に従い︑発行者の財務状況または経営状況における重要な変更に関する追加的情報を即時に︵on a rapid and current basis︶開示することを要求

する

した拡充に大幅を開示事項 臨時報告書︑するとともに短縮に四営業日を提出期限の︑二︒改正を規則に四年〇〇しはCES︑これにもとづいて 65

︒拡充された開示事項のうち︑フォーム八 66

−Kアイテム一・〇一は︑会社の通常の事業の過 程外で締結された重要な契約︵material definitive agreement︶と︑そのような契約の重要な変更について︑締結または変更の日・当事者・契約条件の概要等の臨時報告書での開示を要求する

︑記ばれよに意注の上載るす関にムテイア同︒ 67

レギュレーションS

にへの該当しない限り︑臨時報告書記載例外を要する重要な契約にあたる −K契約に六〇一b項一〇号⒜および⒝定はめられた事項に関するめられた定に⒞アイテム︑同

︒レギュレーションS 68

−Kアイテム六〇一b

項一〇号⒜および⒝は︑会社の取締役またはCEOを含む報酬額上位五人の執行役員が参加する報酬契約ないし計画︵ストック・オプション︑退職報酬︑後払い報酬︑ボーナス等を含む︶について定めており︑同⒞は︑従業員・役員・

取締役に一般的に与えられ︑同じ基準で運営される報酬契約ないし計画を適用除外とする

︒また︑フォーム八 69

におよび選任の役員︒する要求を開示での臨時報告書︑について選任辞任の役員な主要または取締役︑は二〇・五テム −Kアイ ついては︑役員の名・地位・会社との一定の取引関係・任用契約の概要等が開示されなければならない

︒以上のことか 70

ら︑たとえば︑会社が新たなCEOを選任し︑報酬について合意した場合には︑報酬契約の内容が︑契約締結から四営業日以内に提出される臨時報告書に記載されることになる

71

︵一〇三七︶

(21)

同志社法学五八 二〇米国における役員報酬をめぐる近年の動向

 2上場規則の改正   ⑴ サーベンス・オックスリー法三〇一条によって改正された証券取引所法一〇A条m項と

︑これにもとづく規則一 72

〇A

−三を受けて

同年にかかるものをのうち︑エクイティ報酬の株主による承認二の〇〇三年六月三〇日に︑その他のものを改正場規則 を上証券取引所とナスダックは︑それぞれ︑上場規則改正︑した︒SECは︑これらのニューヨーク 73

一一月四日に承認している

︒の︒以下では︑改正された上場規則内容含のうち︑役員報酬に関連するものを紹介するむを内容とどまらない 法の改正は︑サーベンス・オックスリーによって︒要求された監査委員会の強化に上場規則 74

  ⑵ ニューヨーク証券取引所は︑上場会社に対して︑過半数の独立した取締役︵independent director︶を有することを要求する︒このことによって︑取締役会の監督の質を高め︑利益衝突によって会社が損害を被る可能性を減らすこ とが目指される

であるかした積極的に決議しないかぎり︑そのは独立取締役取締役がとはならないした独立取締役取締役はどの会社︒ material relationshipこが会役締取をとない・︒ある取締役が会社と直接間接の重要な関係︵︶を有し 75

を決定し︑そのような決定の根拠を開示しなければならない

役とはされている厳格化は要件の独立性︑され列挙が者されない評価 取締した独立︑では上場規則された改正︑えて加に以上︒ 76

︒また︑経営陣に属さない取締役が経営陣に対し 77

て効果的なチェックを行えるように︑経営陣に属さない取締役だけの会合を定期的に設けなければならないものとされる

78

  改正された上場規則によれば︑上場会社は︑監査委員会︑指名/コーポレート・ガバナンス委員会︵nominating/

corporate governance committee︶︑および報酬委員会を設置することを要求され︑これらの委員会は独立した取締役だ けで構成されなければならない

委員会︑および︑責任と目的ののによって委員会委員会規則の書面︑は報酬委員会︒︑ 79 ︵一〇三八︶

(22)

同志社法学五八 二一米国における役員報酬をめぐる近年の動向 パフォーマンスについての年次評価について定めなければならない︒委員会が最低限負うべき責任として︑次のことが定められている

and objectivesgoals するこ目標承認し審査について︶︵目的およびの会社した関連と報酬のOEC①︒ 80

と︑それらの目標および目的に照らしてCEOの業績を評価すること︑および︑この評価にもとづいて︑︵取締役会の指示に従い︑︶報酬委員会として︑または︑他の独立した取締役と共同して︑CEOの報酬水準を承認すること︒②C

EO以外の執行役員の報酬について取締役会に対して勧告をし︑インセンティブ報酬とエクイティ報酬については取締役会の承認を受けること︒③委任状説明書・年次報告書の一部としてSECへの提出を要求される報酬委員会報告書の

作成︒

  以上のほか︑改正された上場規則の注釈には︑報酬委員会における報酬の決定について︑以下のことが記されている

81

すなわち︑CEOの報酬のうち長期のインセンティブを付与する要素について決定する際︑報酬委員会は︑会社の業績と相対的な株主利益︑比較対象となる会社でCEOに付与された同様のインセンティブ報酬の価値︑会社のCEOに過

去に付与された報酬を考慮しなければならない︒また︑報酬コンサルタントが取締役︑CEOまたは執行役員の報酬の評価を補助する場合︑報酬委員会規則によって︑コンサルタント会社の任用・任用終了・報酬等の条件を決定する権限

を報酬委員会だけに与えなければならない︒

  ニューヨーク証券取引所は︑従来から︑上場規則によって一定のエクイティ報酬については株主の承認を要求してきた︒改正された上場規則は︑従来よりも︑株主の承認を要しない範囲を狭めている

︒すなわち︑株主には︑いくつかの 82

例外を除き

つ会いて︑決議を行う機がに与えられなければない定なィ︑すべてのエクイテ報改酬計画とその重要なら 83

とのために抑制ついてに希釈化な潜在的よるされることに付与が株式報酬エクイティ︑は理由すべき要求を承認の株主 ︒ 84

均衡を与えるためだと説明される

85

︵一〇三九︶

(23)

同志社法学五八 二二米国における役員報酬をめぐる近年の動向

  ⑶ ナスダックは︑ニューヨーク証券取引所と同様に︑上場会社に対して︑過半数の独立した取締役を有することを 要求する︒取締役会が独立した取締役であると決定した取締役について︑上場会社は開示しなければならない

同様と利益衝突と強化の監督︑にに場合防止の証券取引所ニューヨーク︑は目的うなルールの求められるの ︒このよ 86

︒独立した 87

取締役とは︑上場会社またはその子会社の役員または従業員ではなく︑かつ︑上場会社の取締役会の見解によれば︑取締役の責務を果たす際に独立した判断を行使する妨げとなる関係を有する者ではない者をいう︒これに加えて︑独立し

た取締役とは評価されない者が列挙され︑独立性の要件は厳格化されている

設ばである同様と場合の証券取引所ニューヨーク︑合がならないのもけられなけれ 定期的会だけの取締役さない属に経営陣︒ 88

89

  上場会社は︑原則として独立した取締役だけで構成される監査委員会を有するほか

Eに要求される︒執行役員の報酬ついて行具体的に見れば︑Cわれることをよって報酬取締役した独立︑が決定のにの ︑執行役員や選定の取締役候補者 90

Oおよびその他の執行役員の報酬の決定または取締役会への勧告が︑独立した取締役の多数決︑または︑独立した取締役だけから構成される報酬委員会によって行われなければならない

︒報酬委員会が三人以上で構成される場合︑独立し 91

た取締役の定義には当てはまらないが︑本人または家族構成員が当該上場会社の現在の役員または従業員ではない者を︑一人だけ︑報酬委員会構成員に任命することができる︒ただし︑このためには︑例外的かつ限定された状況下であ

ること︑および︑取締役会が︑そのような者を報酬委員会構成員とすることが会社および株主の最善の利益によって要求される旨を決定することが必要であり︑そのような取締役と会社の関係︑および︑そのような決定の理由が開示され

なければならない

︒書面の委員会規則の作成やその内容については特にルールが定められていない 92

取締役会役員報酬決定な適切が各上場会社︑しつつ確保についてのコントロールをによる取締役した独立︑ルによって のようなルー以上︒ 93

構成を柔軟に選択できることが目指される

94 ︵一〇四〇︶

(24)

同志社法学五八 二三米国における役員報酬をめぐる近年の動向   ナスダックは︑従来から︑上場規則によって一定のエクイティ報酬については株主の承認を要求してきた︒改正された上場規則は︑従来よりも︑株主の承認を要しない範囲を狭める︒すなわち︑上場会社は︑いくつかの例外を除き

︑エ 95

クイティ報酬契約の創設と重要な改定について︑株主の承認を求めなければならない

さ希釈化に︑株式の潜在的なについてと株主が発言することを確保するためだと説明同様証券取引所ニューヨーク︑は 求主の承認をす要︒べき理由株 96

れる

97

  以上に述べてきた規定のほか︑ナスダックの改正された上場規則の特徴として︑関連当事者取引︵related party transaction︶についての承認が求められる点が挙げられる︒すなわち︑上場会社は︑潜在的な利益衝突状況を表す関連当事者取引すべてを︑継続的に︵on an ongoing basis︶適切に審査しなければならず︑そのような取引は︑会社の監査

委員会またはその他の独立した取締役会下部組織によって承認されなければならない︒関連当事者取引とは︑SECのレギュレーションS

−Kアイテム四〇四に従い開示を要求される取引のことをいう

98

  ⑷ 以上に概観してきたニューヨーク証券取引所とナスダックの上場規則改正は︑基本的には同様のルールを定める︒いずれも︑エクイティ報酬に株主の承認を求め︑独立した取締役の要件を厳格にし︑独立した取締役・監査委員会 の機能を強化することを目指す︒もっとも︑より細かく比較をすれば︑次のような相違もある

︒一方で︑執行役員の報 99

酬の決定と取締役の指名について︑報酬委員会・指名委員会の設置以外の遵守方法を認める点︑報酬委員会規則やコーポレート・ガバナンス・ガイドラインの作成を明示的には要求しない点で︑ナスダックの上場規則の方が柔軟性を持っ

たものになっている︒他方で︑関連当事者取引の承認を要求する点では︑ナスダックの上場規則の方が厳格である︒

︵一〇四一︶

(25)

同志社法学五八 二四米国における役員報酬をめぐる近年の動向

 3ベスト・プラクティスの提案   二〇〇一・二〇〇二年不祥事と︑二〇〇二年改革を受け︑米国では︑いくつかの団体が︑コーポレート・ガバナンス に関連したベスト・プラクティスの提案を行っている︒ここでは︑カンファレンス・ボード︵The Conference Board︶︑ビジネス・ラウンドテーブル︵Business Roundtable︶︑および︑全米取締役協会︵National Association of Corporate

Directors︶による役員報酬に関する提案の内容を︑いくつかの共通する項目ごとに概観していく

100

  ①役員報酬決定の機能・目的  業績連動型報酬によって︑執行役員には︑会社の長期的利益を増進するインセンティ

ブを与えなければならない︒二〇〇一・二〇〇二年不祥事において︑ストック・オプションによる利益を得るための短期的な株価の吊り上げが問題となったことを受け︑会社の利益はあくまで﹁長期的利益﹂であることが強調され︑執行

役員は自社の株式をある程度の割合・期間にわたって保有すべきものとされる

101

  ②報酬委員会の役割・独立性  役員報酬の決定については︑独立した取締役からなる報酬委員会が主たる責任を負う︒

取締役会から報酬委員会にどのような権限が委譲されるかは各会社に委ねられる問題だが︑その権限を書面の規則に定めるべきものとされ︑最低限の権限として︑会社の報酬構造・政策・計画全体の監視︑執行役員の業績目標の設定と業

績達成過程の評価︑CEOの報酬の決定または取締役会への勧告が挙げられる︒また︑報酬委員会は︑独立した外部のコンサルタントを雇用する権限を有するべきだといわれる

︒他方で︑報酬委員会が役員報酬についての調査・統計を過 102

度に信頼することを避けるべきことも指摘される︒そのような統計や︑当該会社の過去の報酬実務・水準に従って報酬を決定することによって︑過大な報酬が与えられる可能性があるからである

︒役員報酬の決定に際して報酬委員会が考 103

慮すべき事項として︑さらに︑次のことがいわれる︒すなわち︑報酬委員会は︑様々な状況を前提として︑報酬契約が ︵一〇四二︶

参照

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 中国では漢方の流布とは別に,古くから各地域でそれぞれ固有の生薬を開発し利用してきた.なかでも現在の四川

16)a)最内コルク層の径と根の径は各横切面で最大径とそれに直交する径の平均値を示す.また最内コルク層輪の

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