• 検索結果がありません。

複合現実映像におけるクロスモーダル現象に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "複合現実映像におけるクロスモーダル現象に関する研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

複合現実映像におけるクロスモーダル現象に関する研究

― 視覚と触感の印象の観点から ―

A study on cross-modal experience by Mixed Reality images

― from viewpoint of visuo-tactile sensations ―

1W130299-8 瀬川 桐子 指導教員 河合 隆史 教授

SEGAWA Toko Prof. KAWAI Takashi

概要: 本研究は、複合現実映像におけるクロスモーダル現象に関する知見の取得に取り組んだものである。中 でも、複合現実環境において身体に接している物体のユーザー体験を操作することを想定し、座位姿勢における クロスモダリティに着目した。よって本研究では、複合現実環境で椅子の視覚情報を変化させた際の視覚以外の 感覚への影響を検討した。その結果、複合現実映像で椅子を変化させる際に生じるクロスモーダル現象について 幾つかの基礎的な知見を得ることができた。そして複合現実環境において、視覚情報により身体に接触している 物体の触感を変化し得る可能性が示唆された。複合現実映像におけるクロスモーダル現象の活用によって、臨場 感あふれる新たな体験を生み出し、人間の行動や情動を変えていくことが考えられる。

キーワード:複合現実感、ヘッドマウントディスプレイ、感覚間相互作用、触感、錯覚

Keywords: Mixed Reality, head mounted display, cross-modality, tactile sensation, illusion

1.はじめに

複合現実感(MR)とは、現実世界と仮想世界を融 合した複合環境の構築・描画技術を指す[1]。本研究で は、複合現実環境におけるクロスモダリティに関する 知見の取得に取り組んだ。クロスモダリティ(感覚相 互作用)とは、人間の感覚がもつ、ある感覚の情報か ら他の感覚の情報を補完して認知や解釈する特性のこ とである[2]

本研究では、複合現実環境において身体に接してい るユーザー体験を操作することを想定し、椅子に座る 際に起こるクロスモダリティに着目した。具体的に、

着席時に様々な椅子の

CG

刺激を実際の椅子に重ねて 表示し実際の椅子と比較することにより、複合現実空 間において視覚情報の変化が視覚以外の身体の感覚に 与える影響について検討した。

2.実験方法

実験装置には

HMD「MREAL Display MD-10」を

用いた。また予備実験で得られた知見を元に、座面が あいまいなやわらかさで、座面が見えず手すりや背も たれも無い、クロスモダリティを生起しやすい椅子を 用意した。実験条件は「ソファ」「ベンチ」「革張り」

の 3 種類の

CG

モデルを、それぞれ標準と拡大(1.4 倍)の 2 サイズ用意し、全 6 条件に設定した。実験環

境と呈示刺激の例を図 1 に示す。

実験参加者は 18 歳から 22 歳の男女 20 名であった。

参加者には

HMD

を装着させ、CGが呈示されていな い状態で 10 秒間足元を観察してもらい、その後

CG

が 呈示されている状態で 20 秒間刺激を観察してもらっ た。刺激はランダムな順序で呈示し、条件ごとに 6 つ の質問項目(視覚・触感・心地良さ・広さ・硬さ・温 かさ)に対する回答を評定尺度法(7 件法)とインタビ ューで求めた。6 条件の刺激呈示を 2 セット繰り返し た後、全体に関するインタビューを行なった。1 人当 たりの実験時間は約 1 時間であった。

図 1 実験環境および呈示刺激の例(ソファ)

(2)

2

3.実験結果と考察

評定尺度法について、サイズと呈示条件を要因とし 二元配置分散分析と多重比較を行なった。インタビュ ーについても、発言回数を元にグラフを作成した。そ の結果を図 3 および図 4 に示す。実験結果から以下の 4 点が考察できた。

1 つ目は、「革張り」は素材が分かり辛く実際の椅子 と近いため触感の変化が少ないということである。評 定尺度法において、「ソファ」「ベンチ」の方が「革張 り」よりも触感・硬さ・温かさの項目の平均評点が 5%

水準で有意に高いという結果が得られた。またインタ ビューにおいて、「革張り」では硬さ・温かさの感じ方

(変化の方向)に偏りがないことが示された。さらに、

「革張り」で変化がない時の理由としては「材質が分 からない」「実際の椅子と変わらない」という意見が多 かった。よって

MR

環境において、接触する物体に対 してクロスモーダル現象を生起させる際には、CG の 精度が高くリアリティがあり、実物体との触感の差が ある

CG

が適するという知見が得られた。

2 つ目は、「拡大」は「標準」より触感が変化すると いうことである。評定尺度法の触感の項目において、

「拡大」の方が「標準」よりも平均評点が 5%水準で 有意に高いことが示された。インタビューにおいても、

「拡大」の方が硬さや沈み込みの変化を強く感じると いう意見が多くあった。よって

MR

におけるクロスモ ダリティ特性として、実物よりも大げさな

CG

の方が 触感の変化を感じる傾向があるという知見が得られた。

3 つ目は、MRクロスモダリティにおいては個人差 が大きいということである。参加者の評定尺度法のデ ータを階層クラスター分析し、視覚的な情報の変化に よる触感への影響を、受けやすい人 11 名(「高スコア 群」)と受けにくい人 9 名(「低スコア群」)に分けた。

両者を比較したところ、「低スコア群」は、視覚や広さ の感覚の変化は感じやすいが、座り心地・触感・硬さ・

温かさの感覚の変化は感じにくいことが示された。

4 つ目は、MR空間で椅子を変化させる際にクロス モーダル現象の影響を受けやすい感覚があるというこ とである。まず、評定尺度法の平均評点を質問項目ご とに比較したところ、椅子の質感変化などの基礎的な 知覚よりもサイズ変化などの総合的な知覚の方が錯覚 を生起しやすいことが示された。さらに、インタビュ ーでの触感の変化に関する発言回数の分析から、触感 知覚の中では硬さ・素材・温度の順で視覚による影響 を受けやすいことが分かった。

4.まとめ

本研究では、複合現実映像で椅子を変化させる際に 生じるクロスモーダル現象について探索的な検討を行 ない、以下の 4 つの知見を得ることができた。

・実物体との触感の差があり精度が高い

CG

が適する

・大げさな

CG

は触感の変化を生起しやすい

・個人差が大きい

・視覚による影響を受けやすい感覚がある

そして

MR

環境において、視覚情報により身体に接触 している物体の触感を変化し得る可能性が示唆された。

MR

クロスモダリティの活用によって、臨場感あふれ る新たな体験を生み出し、人間の行動や情動を変えて いくことが考えられる。今後も複合現実映像における クロスモーダル現象に関してさらなる知見を得るため に、研究を進めていく必要がある。

参考文献

[1] 田村秀行, 大田友一. 複合現実感. 映像情報メ ディア学会誌 : 映像情報メディア. 1998, vol.52, no.3, p.266-272.

[2] 鳴海拓志他編. “URCF クロスモーダル設計調査分 科会について”. URCF クロスモーダルデザイン WG.

http://crossmodal-design.tumblr.com/about.

図 3 評定尺度法(座面の触感の変化)

図 4 インタビュー(座面の硬さの変化)

参照

関連したドキュメント

仮想空間(VR:バーチャルリアリティ)における 触覚情報呈示は,提供できる体験の拡張や臨場感 の向上のために重要であり,とりわけ

ディまたは変化メロディを呈示した。RR 条 件では,基準刺激として基本リズム,比較刺

参加者の腕に触れて触刺激を提示した。実験Ⅱにおい

呈示刺激は、赤の線画(ターゲット)と緑の 線画(ディストラクター)を重ね合わせた図 形であった(Fig.1 参照)

典型色と非典型色とで対象認知における正誤や反応時間 を記録するプログラムを作成し 、被験者に実験を行っても

実験参加者は正常な視機能を持つ男女 21 名で、10 秒間の刺激呈示後、立体感の評価を求めた。刺激は 2009 年に国立科学博物館で展示された「インカ帝国の

概要:

インタビューにて面白かった刺激画像のランク 付けを行ってもらった結果、その順位が首_Pitch の総回転量の順位と一致する結果になった。刺激 呈示時間を 10 秒ごとの 6