複合現実映像における実写と CG の呈示条件とユーザ体験
User experience on presentation condition of photographing and CG in Mixed Reality
1W120096-9 大澤 壮斗 指導教員 河合 隆史 教授
OSAWA Masato
Prof. KAWAI Takashi
概要: 本研究は、複合現実感によって再生される映像の実写と
CG
の割合に着目し、それを変化させた際のユーザ体験 の評価実験に取り組んだものである。呈示刺激として観察と同時にその実写とCG
の割合を変化させることのできる複合 現実環境を構築した。また実写とCG
の割合によって呈示条件を作成し、その割合は0%から 100%の範囲で変化する。
主観評価の質問項目として、「自然さ」「広さ」「形状」「好ましさ」という語彙を抽出し、呈示条件の評価を行った。実写 と
CG
の割合が「自然さ」、「形状」や「好ましさ」に影響を与えることが示唆された。キーワード:複合現実感、ハンドマウントディスプレイ、実写、CG
Keywords: Mixed Reality, hand Mounted display, photographing, CG
1.
はじめに複合現実感とは、現実世界と仮想世界を融合した 複合環境の構築および描画技術のことである[1]。本研 究では、複合現実感によって再生される映像の実写 と
CG
の割合に着目し、その割合を変化させた際に 生じるユーザ体験への影響に関する知見の取得に取 り組んだ。呈示刺激として実写とCG
の割合を観察 時に変化させることのできる複合現実環境の構築を 行った。実写とCG
の割合の度合いを6
段階に分け て呈示条件を設定し、抽出した4つの評価項目を元 に、評価実験を実施した。2.
実験方法複 合 現 実 環 境 の 構 築 環 境 と し て 、 早 稲 田 大 学
55S-04-05(以下、実験室)をその対象とした。この
環境を図1
に示す。次に実験室を模した仮想モデル の構築を行い、実写とCG
の複合を試みた。完成し た仮想モデルを図1
に示す。この仮想モデルを構成 する大まかな要素は、扉・棚・壁・床・天井の5
つ である。これらのCG
オブジェクトをMaya
や3dsMAX
を用いて作成し、既存のゲームエンジンである
Unity
によってそれらを統合した。またサイズや座標位置の調整など、仮想モデルの制御は主に
Unity
上で行った。また本研究ではキヤノンITS
社製の
MREAL
システムを用いて、この仮想モデルを実空間と合成し、複合現実映像を呈示する環境を構 築した。また
Unity
上のスクリプト機能によって、各
CG
オブジェクトの表示・非表示をキー操作によ って行うことのできるシステムも実装した。このキ ー操作によって、複合現実映像の実写とCG
の割合 を観察時に変化させることが可能となった。呈示条件に関しては
6
種類を用意した。具体的に は、実写とCG
の割合に応じて6
段階で表示するCG
オブジェクトを変更した。実写とCG
の割合によっ て設定した6
条件を表1
に示す。図
1 構築環境(左)と仮想モデル(右)
表
1 実写と CG
の割合による条件参加者にはこれらの条件を順に呈示し、条件
1→
条件
2→条件 3→条件 4→条件 5→条件 6
の順序で呈 示していくものを「上昇系列」とし、条件6→条件 5
→条件
4→条件 3→条件 2→条件 1
の順序で呈示して いくものを「下降系列」とした。予備実験の結果に 対してテキストマイニングを行い、抽出した4
つの 質問項目(自然さ・広さ・形状・好ましさ)に対する回 答を評定尺度法(7件法)で求めた。また条件ごとに自 由回答によるインタビューを行った。参加者は20
代 の男女10
名とし、実験装置にはキヤノンITS
社製 のビデオシースルー型HMD「MREAL HM-A1」を
用いた。実験環境と呈示条件の例を図2
に示す。図
2 実験環境
3.
実験結果および考察評定尺度法の結果の一部を図
3
に示す。自然さに ついては、交互作用が認められ、上昇系列において は条件2
がその他の条件より有意に平均評点が低く、下降系列においては条件
5
と条件3
の間に有意差が認められた。形状と好ましさに関しては互いに類似 する結果が得られ、条件の主効果と系列の主効果が 認められた。またどちらも上昇系列の条件
2
と条件5
の間に有意差・有意傾向が認められた。インタビューより、条件
2
と条件3
の間で条件の 判断基準が実写からCG
へと移り変わっていること がわかった。また実写とCG
の割合の増減に伴い、CG
の表現特性(鮮明度・明瞭度・解像度)について 述べる意見も多かった。したがって、観察者は異なる基準で条件の自然さ を判断し、またその基準は
CG
の割合が29%〜70%
の間に入れ替わることが示唆された。また
CG
の割 合と形状・好ましさの間には相関が見られ、これはCG
の表現特性が関連しているのではないかと考え られる。また、広さの評価項目において差が見られ なかったのは条件を通して両眼視差が変化しなかっ たためであると考えられる。4.
まとめ本研究において、実写と
CG
の割合は「自然さ」「形 状」「好ましさ」に影響を与えることが示唆された。今後の課題としては、実写と
CG
の割合の細分化に よる検証や、自然で好ましい複合現実映像の表現手 法の確立などがあげられる。参考文献:
[1] 田村秀行
,
太田友一,
“複合現実感”,
映像情報メディ ア学会誌, Vol.52, No.3, pp.266-272, 1998.
図