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マルチレー卜フィルタの音響エコーキャンセラヘの 応用に関する研究

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Academic year: 2021

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     博士(工学)古川      学位論文題名

マルチレー卜フィルタの音響エコーキャンセラヘの 応用に関する研究

学位論文内容の要旨

  通信会議システムの高度化には,画像信号のみならず,音声信号の高品質化が不可欠である。

マイク・スピーカを用いた音声通信会議およびテレビ会議等でtま,両者の音響結合により発生す るエコーによる通話品質の劣化が問題となっており,適応フィルタを用いたエコーキャンセラに よる高品質化の検討が進められている。

  これまでに,通信システムの高度化のために,適応フアルタは次のような場合に用いられてい る。

@伝送路の歪を補償するための適応等化

@長距離電話回線におけるエコーの消去

◎ビットレート削減のための適応予測符号化

  適応フィルタを用いた音響工コーキャンセラによりエコ―を消去する方式は,通話品質の向上 に寄与することが期待されている。

  一方,マルチレートフィルタは,複数のサンプリング周波数を用いてディジタルフアルタであ り,通信システムにおいて次のような場合に用いられている。

@ 原 サ ン プ リ ン グ 周 波 数 が 高 く 伝 送 等 の た め に 低 い 周 波 数 に 変 換 す る 場 合 。

◎ 原 サ ン プ リ ン グ 周 波 数 よ り 低 い 周 波 数 に お い て 複 雑 な 処 理 を 行 う 場 合 。

◎サンプリング周波数が異なるシステムを接続する場合。

  本論文では,まず,従来,定量的に検討されていなかった,適応フアルタを用いた音響エコー キャンセラの所要タップ長設計法に関して,適応アルゴルズムによるエコ一経路の推定誤差を解 析することによる設計法を明らかにした。

  次に,上記マルチレートフアルタの◎の機能を実現する帯域分割フィルタと適応フィルタとを 組み合わせた帯域分割形工コーキャンセラを音響エコーキャンセラとして提案し,その特性の解

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確 認を行1た 。

  本 論文は10章よ り構成 される 。以下 に各 章毎の 概要を まとめ る。

  第1章 におい ては, 本研究 の概 要,目 的にっ いて述 べた 。

  第2章 に お い て は, 第3章以下 で用 いる適 応フア ルタお よびマ ルチ レート フィル タの基 礎理 論 お よ び 本 論 文 で 扱 っ た 応 用 を 合 む 同 フ ィ ル タ の 通 信 へ の 応 用 例 に っ い て 述 べ た 。   第3章 におい ては, 音響系 の実 測イン ′くル ス応答 をもとに,適応アルゴルズムとして学習的同 定 法を用 いた場 合のエ コー 経路の 推定誤差を理論的に角罕析し,その結果から所要工コー消去量が 得 られる 音響工 コーキ ャン セラの タップ 長の設 計法を 明ら かにし た。ま た,通信用会議室の残響 時 間によ り,所 要夕゛ ソプ 長の設 計が可能であること,および室内雑音により所要タップ長が増大 す ること を明ら かにし た。

  第4章にお いて は,音 響工コ ーキャ ンセラ の各 種構成 法を比 較し, 帯域 分割形 音響工 コーキ ャ ン セラが 有望な 方式で ある ことを 示した 。

  第5章にお いて は,従 来,全 く理論 的な解 析が 行われ ていな かった 帯域 分割形 工コー キャン セ ラ に関し ,帯域 分割数 が任 意で均 等分割の場合に,時間領域において離散時間における補間定理を 用 いてタ ップ係 数の収 束値 を解析 した。 帯域分 割フア ルタ が理想 フィル タのタップ係数を有限個 で 打ち 切1た場合 におい て, 擬似工 コー作 成用固 定フ ィルタ の所要 夕ップ 長が音 響工 コ―経 路お よ び帯 域分割 フィ ルタの 応答長 をそれ ぞれM,N,帯 域分割 教をbとし て( (M―1) 十(N1))/

b十1であ る こ と , 工 コー 経 路 に 直 列に 必 要 な 遅 延量 が (N−1)/2で あるこ とを明 らか にし,

音 響工コ ー経路 応答・ 帯域 分割フ ィルタ の応答 が与え られ た場合 のタッ プ係数収束値を理論的に 求 めた。

  第6章 におい ては, 帯域分 割形 工コー キャン セラに 関し,帯域分割数が任意で均等分割の場合,

周 波 数 (z) 領 域 に お いて タップ 係数 伝達関 数を解 析し, 解が 第5章 の時 間領域 の解析 より容 易 に 得 ら れ るこ と を 明 ら かに し た 。 ま た, 得 ら れ た 解 が(Mー1)/bお よび(N―1) /bが整数 で あ る 場 合, 第5章 に おい て 時 間 領 域で 求 め た 解に 一致す ること を示し ,周波 数(Z) 領域の 解 が 時間領 域の解 より一 般的 な解を 与えて いるこ とを明 らか にした 。さら に,音響工コー経路のイ ン パルス 応答に 対し, 夕ッ プ係数 伝達関数の数値例を示し,その特性の分析結果から,音響エコー 経 路のよ うに応 答長が 非常 に長い 場合に は,各 帯域の エコ ―キャ ンセラ の所要夕ップ長は,ほぼ M/bとな る こ と を 明ら か に し , 全 帯域 形 の エ コ ーキ ャ ン セ ラ に比 べ て 所 要 演算 量 を ほ ぼ1/b に 削減可 能であ ること を示 した。

  第7章 に お い て は, 帯 域 分割形 工コー キャン セラに 関し ,帯域2分 割の場 合にお いて, リサ ン

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プル 領域で の最小 二乗解 の表 示式を 求め, 正規方 程式を 解く ことに より得 られた所要タップ長が 5章お よ び6章 で得 ら れ た も の と一 致 す る こ とを 示した 。ま た,そ の解析 手法が 帯域b分割 の場 合に 容易に 拡張可 能であ るこ とを示 した。 さらに ,リサ ンプ ルによ る帯域 分割フアルタのエリア ジン グ雑音 に起因 するエ コ一 消去量 の劣化 に関す る理論 式を 求め, 計算機 シミュレーション結果 と良 く一 致する ことを 示した 。それ に加 えて, 第6章と同 様に, 夕ップ 係数 収束値 の分析 結果か ら, 音響工 コ一経 路のよ うに 応答長が非常に長い場合には,各帯域のエコ―キャンセラの所要タッ プ 長 は, ほ ぼM/bと な る こ とを 明 ら か に し た。 また ,この 解析法 が任 意の帯 域分割 フィル タに 関し て実行 可能な ことを 示し ,工コ 一消去 量に着 目した 帯域 分割形 工コー キャンセラに関する設 計法 が確立 された ことを 明ら かにし た。

  第8章に おいて は,ク 口スタ ーム を付加 した帯 域分割 形工コーキャンセラに関し,゛ソリー状の 帯 域 分割 構 造 を 新 たに 提 案し, 第6章の解 析手法 を周波 数(z)領 域に おいて ク口ス 夕一厶 消去 用適 応フア ルタの 係数伝 達関 数行列 を求め るため に適用 する ことに より, 行列要素の対称性から 適応 動作を 行わせ るタッ プ数 を直接 分割形 の帯域 分割フ アル タを用 いる場 合に比べて減少可能な こと を明ら かにし た。

  第9章に おい ては, 解析お よび計 算機 シミュ レーシ ョン結 果をも とに ,国内 網の最 大往復 伝搬 遅 延60ms, およ び 残 響 時 間400msの 中 程 度 の 大き さを持 った会 議室を 使用 する場 合にお ける要 求使 用を満 たす帯 域分割 形工 コーキ ャンセ ラのハ ードウ ェア 構成を 明らか にし,試作装置により 基本 特性の 確認を 行った 。そ の結果 ,白色 雑音お よび疑 似音 声信号 入力時 のエコ一消去量として 34dB, 音 響 工コ 一 経 路 のエコ 一損 失を併 せて40dB以上の 全工コ 一経路 損失 が得ら れ,実 音声信 号入 力時に も音声 信号レ ベル の大な る領域 で同等 のエコ 一消 去量が 得られ ることから,所望の特 性が 得られ ること を明ら かに した。 また, ハーモ ニック プロ セッサ と合わ せたハウリング抑圧特 性 の 実験 か ら , ハ ウリ ン グマー ジンの 改善量42dBが得 られ ,スピ ーカの 音量を かなり 大き くし ても ハウリ ングの 発生を 阻止 できる ことか ら,快 適な通 話環 境が提 供可能 であることを明らかに した 。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授

永井 小川 伊藤 栃内

信夫 吉彦 精彦 香次

  通信会 議シス テムの 高度 化には ,画像 信号の みなら ず, 音声信 号の高 品質化 が不可欠である。

マ イク ・スピ ーカを 用いた 音声通 信会 議およ びテレ ビ会議 等で は,両 者の音 響結合により発生す る エコ ーによ る通信 品質の 劣化か 問題 となっ ており ,近年 ,工 コーキ ャンセ ラを用いた高品質化 の 検討 が進め られて いる。

  本論文 では, 音響工 コー キャン セラの 設計に 資する こと を目的として,(1)適応フアルタを用 い た音 響工コ ーキャ ンセラ の所要 夕ッ プ長設 計法, (2)マルチレー卜フィルタと適応フアルタと を 組み 合わせ た帯域 分割形 工コー キャ ンセラ の新規 提案, 解析 ,計算 機シミ ュレーション,およ び 試作 ハード ウェア を用い た解析 の検 証を行ワたものである。本論文は10章より構成されており,

各 章の 概略は 次の通 りであ る。

  第1章 では ,本研 究の背 景,目 的, 概要に っいて 述べて いる。

  第2章 では, 適応フ アルタ および マル チレー トフア ルタの 基礎 理論お よび本 論文で 扱った 応用 を 含む 剛フィ ルタの 通信へ の応用 例に っいて 述べて いる。

  第3章 では, 音響系 の実測 インパ ルス 応答を もとに ,適応 フア ルタに よるエ コ一経 路の推 定誤 差 を理 論的に 解析し ,所要 工コ一 消去 量が得 られる 音響工 コー キャン セラの タップ長の設計法を 明 かに してい る。こ の設計 法を通 信用 会議室 の残響 時間に 適用 可能な こと, および室内雑音によ り 所要 夕ップ 長が増 大する ことを 明か にして いる。

  第4章 では, 音響工 コーキ ャンセ ラの 各種構 成法を 比較し ,帯 域分割 形音響 工コー キャン セラ が 有望 な方式 である ことを 示して いる 。

  第5章 では, 帯域分 割数が 任意で 均等 分割の 帯域分 割形工 コー キャン セラに 関し, 時間領 域の 離 散時 間にお ける補 間定理 を用い てタ ップ係数の収束値を解析しており,工コー経路,分割フアル タ の応 答長を それぞ れM,N,帯域 分割数 をbとした 時,所 要夕ップ長は((M―1)十(N―1))/

b十1, 工 コ ー 経 路 に 直 列 に 必 要 な 遅 延 量 は (N―1)/2で あ る こ と を 明 か に し て い る 。   第6章 では ,帯域 分割形 工コー キャ ンセラ の周波 数領域 におけるタップ係数伝達関数を解析し,

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(Mー1) /bお よ び (N―1)/bが 整 数 で あ る 場 合, 第5章 の 解に 一 致 し , 一般 に 解 は 第5章 の解 析より 容易に 得られ るこ とを示している。また,その結果を音響工コー消去の問題に適用し,

各 帯 域の 所 要 タ ッ プ長 が ほ ぼM/bと な る こ と, 演 算 量 を 全帯 域 形 に 比 べて ほ ぼ1/bに 削 減 可 能で あるこ とを明 かにし てい る。

  第7章 で は ,帯 域2分 割の 帯域分 割形 工コー キャン セラに 関し ,リサ ンプル 領域に おいて 正規 方 程 式を 解 き , 所 要タ ッ プ 長 が5章 お よ び6章の もの と一致 する ことを 明かに し,帯 域b分割の 場合 にも容 易に拡 張可能 なこ とを示 してい る。ま た, リサン プルに よる帯 域分割フィルタのエリ アジ ング雑 音に起 因する エコ 一消去 量の劣 化に関 する 理論式 を求め ,計算 機シミュレーション結 果と 良く一 致する ことを 示し てる。 以上を まとめ て, 工コ一 消去量 に着目 した帯域分割形工コー キャ ンセラ 設計法 を確立 して いる。

  第8章 では, ク口 スター ムを付 加した 帯域 分割形 工コー キャン セラに 関し ,ツリ ー状の 帯域分 割構 造を新 たに提 案し, 適応 動作を 行わせ るタッ プ数 を,直 接分割 形の帯 域分割フアルタを用い るの に比べ て少な くする こと が可能 なこと を明か にし ている 。

  第9章 で は ,国 内 網 の 最 大 往復 伝 搬 遅 延60ms, およ び 残 響 時 間400msであ る中規 模会 議室用 の要 求仕様 を満た す帯域 分割 形工コ ーキャ ンセラ のハ ードウ ェアの 試作, 実験により,工コ一消 去 量 とし て34dB, 音 響 工コ ー経路 の損 失を合 わせた 全工コ 一経 路損失 として40dB以上 を得て い る。 また, ハーモ ニック プ口 セッサ と組合 わせた ハウ リング 抑圧特 性の実 験結果から,ハウリン グ マ ー ジ ン の 改 善 量42dBが 得 ら れ , 快適 な 通 話 環 境 を提 供 で き る こと を 明 か に して い る 。   第10章 で は , 本 論 文 で 述 べ た 内 容 を 総 括 し , 本 研 究 の 成 果 を 要 約 し て い る 。   以上 を要す るに ,本論 文は, 音響エ コーキ ャン セラの 所要タ ップ長 設計 法およびマルチレート フィ ルタと 適応フ ィルタ との 複合系 である 帯域分 割形 工コ― キャン セラの 設計法を与えたもので あ り , 音 声 ・ 音 響 デ ィ ジ タ ル 信 号 処 理 お よ び 電 子 工 学 に 寄 与 す る と こ ろ が 大 き い 。   よ っ て , 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

参照

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