博 士 (工 学 ) カゼ ム ナジ ム
学 位 論 文 題 名
Back Analysis of Supported Excavations ( 支 保 を 施 し た 空 洞 の 逆 解 析 )
学位論文内容の要旨
トン ネルや 坑道が 変形し たり 破壊し ている 場合, それら をも たらし た地圧 が推定されると,安 定性の 程度 が明ら かにな り,効 果的な 対策 を立て ること ができ る。 本研究 は地下空洞の変形の計 測 を基 に ,地圧 を逆解 析によ って 推定す る2っの方 法を考 案し, これ らを変 状を起 こした トンネ ルと, 長壁 切羽の 接近に より変 形・破 壊が 進行す る沿層 坑道に 適用 して有 用性を確認したもので ある。
本論 文は全6章 から構 成され ている 。
第1章 は 序 論 で , 本 論 文 の 目 的 と 意 義 , 研 究 の 背 景 に っ い て 述 べ て い る 。 第2章 は,初 期地圧 状態の 下で 開削し た空洞 が,付 加地圧 を受 けると きの変 形・破 壊挙 動を明 らかに する ために ,モル タル系 の材料 を用 いて行 った2次元 の物理模型試験にっいて述べている。
この時 ,ラ イニン グとシ テスム ボルト の施された空洞とその周辺岩盤を厚肉円筒として模型化し,
支保の 効果 も併せ て調べ ている 。試験 にお いては ,非接 触型の 距離 計を用 いることにより,空洞 壁面の 変位 に関し て,微 小な弾 性変形 から ,壁面 の剥離 を伴う 大き な変形 に至るまでの推移を連 続的に 捉え ること に成功 してい る。
空洞 に支保 がない 場合, 付加 地圧が 小さい 内から 空洞周 囲の かなり の部分 が能動状態になるの に対し て, 支保が 施され た場合 には, 空洞 周囲の 岩盤に 発生す る破 壊が目 視できる程度になるま で,か なり の部分 が受動 状態に 保たれ るこ とを明 らかに してい る。 また, 厚肉円筒状の支保は,
地圧の 増大 に対し ,破壊 の初生 を遅ら せ, 内空変 位を抑 制する 上で 効果が あることを見いだして いる。
物 理 模 型 試 験と 並 行 し て ,同 じ問題 に対す る2次元弾 塑性解 析を8節点 アイソ パラ メトリ ック 有限要 素法 を用い て行っ ている 。岩盤 と支 保はひ ずみ軟 化を示 す弾 塑性材 料とし,また,破壊条 件とし てモ ール・ クーロ ンの式 を仮定 して いる。 模型試 験結果 と数 値解析 結果を比較して,破壊 の初生 時の 地圧と 破壊箇 所,そ の後の 破壊 の進展 の様相 と空洞 の内 空変位 の挙動などがよい一致
を示す こと を確認 してい る。
第3章 は , 受 動抵 抗 法(Passive Resistance Method) と名 付 け た 逆 解析 方 法 に っ いて , 原 理と解 析方 法を述 べると ともに ,送 毛トン ネルへ の適用 例を示 して いる。 この方 法は,空洞の一 部が受 動状 態にな ってお り,そ れに 接する 岩盤が 弾性的 に挙動 する という 仮定の 下に,空洞のラ イニン グ内 のひず みや内 空変位 の観 測結果 を用い て,ラ イニン グに 作用す る地圧 を推定するもの である 。解 析領域 として ライニ ング しか必 要とし ないと ころに 本方 法の特 徴があ る。岩盤とライ ニング の相 互作用 は,受 動状態 の空 洞壁ー ライニ ング境 界にお いて 考慮さ れてい る。ここでは,
ライニ ング がバネ を介し て不動 点( 遠方の 岩盤) に固定 される もの として いるの で,常に安定し た解が 得ら れ,こ の種の 解析で 問題 となる 拘束条件の与えた方に合理的な解決が与えられている。
また, 空洞 を有す る岩盤 の応力 解析 を基に ,正確 にバネ 剛性を 評価 する手 法を開 発している。こ の剛性 は主 に岩盤 のヤン グ率に 依存 し,空 洞の形 状には ほとん ど関 係しな いこと を見いだしてい る。
逆 毛 ト ン ネ ルの 事 例 に 本 方法 を 応用 し, ライニ ング内 の6っのひ ずみ計 測値 と6方 向の 内空変 位の測 定値 を用い て別々 に逆解 析を 行い, ライニ ングに 作用す る地 圧にっ いてほ ぼ同様の推定結 果を得 てい る。さ らに解 析結果 を基 に予想 したト ンネル 壁面の 変位 は,測 量で得 られた結果とよ く合い ,本 方法に よって 変位の 評価 が可能 なこと を示し ている 。ま た,ラ イニン グに作用する地 圧が遠 方の 一様な 地圧に よって もた らされ たもの と仮定 し,逆 解析 をした ところ 一軸的な応力状 態が予 想さ れたが ,その 作用方 向は (コア ボーリ ングや 孔内載 荷試 験から 推定し た)トンネル周 辺 に 形 成 さ れ た 楕 円 形 の 緩 み 域 の 長 軸 に 一 致 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第4章 は , 荷重 の 比 例 増 加法 (Proportional Loading Method) と名 付 け た 逆解 析の方 法を 述べて いる 。長壁 切羽の 接近に 伴う 沿層坑 道の変 形・破 壊の解 釈と 対策に 資する ことを目的に,
破壊を 考慮 しうる 逆解析 手法の 開発 を進め ている 。まず ,地圧 の増 加に伴 って生 じる内空変位の 水平・ 鉛直 成分の 比の推 移(こ の線 図を現 場の特 性曲線 と呼ぶ )が ,水平 ・鉛直 応力成分の比を 反映し っつ 破壊の 進展過 程を表 現し ている ことを ,物理 模型試 験結 果を基 に確認 している。そし て,こ の特 性曲線 が,地 圧状態 の推 定,並 びに空 洞の安 定性の 指標 として 使える 可能性があるこ とを見 いだ してい る。次 に,同 一問 題に対 して弾 塑性解 析を行 い, 垂直・ 水平地 圧が比例的に増 加する とき の内空 変位の 水平・ 鉛直 成分の 比の推 移(こ の線図 を予 測特性 曲線と 呼ぶ)を求めて いる。 同一 の水平 ・鉛直 応力成 分の 比に対 し,2っの 特性曲 線はよ い一致を示し,特性曲線から,
地圧の 水平 ・鉛直 応力成 分の比 を推 定しう ること を確認 してい る。
本方 法を太 平洋炭 鉱にお ける 矩形断 面の沿 層坑道 に対 して応 用し, 長壁切 羽の接 近に伴って生
じる 水平・ 鉛直地 圧の比 を推定 して いる。得られた推定は地圧の測定結果と符合しており,また,
坑 道周 囲 の 破 壊 の 形式 と 進 展 状 況に 関 し て も ,予 測 と 実 際 の間 で よ い 一致 が得ら れてい る。
第5章 は , 第3,4章 で 示し た 逆 解 析 法に 基 づ き ,空洞 の安 定性と 支保の 効果を 評価 する方 法 を事 例と共 に述べ ている 。受動 抵抗 法を用 いた場 合,空 洞の ライニ ング内 の応力分布が求まるの で, 破壊に 対して どの程 度の安 全率 を持っ ている かが評 価で きる。 この方 法を送毛トンネルに適 用 し , ラ イ ニ ン グ が 破 壊 に 対 し て 十 分 に 安 全 で あ る こ と を 示 し て い る 。 荷重 の比例 増加法 を基 に,太 平洋炭 鉱にお けるI沿層 坑道のボルト支保は,打設部分の岩盤の剛 性を 約1,9倍 高める 効果 がある と推定 してい る。ま た, 塑性域 の進展 状況に 関する比較を基に,
ボル ト支保 は従来 の鋼枠 支保に 比べ て坑道 天盤の 破壊を 抑制 する上 で効果 があると推定している が, これは 現場の 観察と 合致し てい る。
第6章は 結 論 で , 本研 究 で 得 ら れた 主 な 結 果 と今 後 に 残 さ れ た課 題 に っ い て述 べ て い る 。
主 副 副
学位論文審査の要旨
本 論 文 は,地 下空洞 に作用 する 地圧を 逆解析 によっ て推定 する2っの 方法 を研究 し,こ れらを 変 状を 起こし たトン ネルと ,長壁 切羽 の接近 により 変形・ 破壊 が進行 した沿 層坑道 に適用して有 用 性を 確認し たもの で,全6章 から構 成され てい る。
第 1章 は 序 論 で , 本 論 文 の 目 的 と 意 義 , 研 究 の 背 景 に っ い て 述 べ て い る 。 第2章 では ,2次 元 物理 模 型 試験 によ り,地 圧の増 加に伴 う空 洞の変 形・破 壊の進 行状況 を明 か にし ,併せ て支保 の効果 を調べ てい る。空 洞に支 保がな い場 合には ,地圧 が小さ い内から空洞 周 囲の 大部分 が能動 状態に なるの に対 し,支 保が施 された 場合 には, 模型岩 盤の破 壊が進行した 後 まで ,空洞 周囲の 多くの 部分が 受動 状態に 保たれ ること ,ま た,支 保は地 圧の増 加に伴い,変 位 を抑 制する 上で効 果があ ること を明 らかに してい る。
物理模 型と同 一の問 題に 対し, 有限要 素法に よる2次元 弾塑性解析を実施して得られた結果は,
破 壊の 初生時 の地圧 の大き さ,破 壊の 進展の 様相と 空洞の 内空 変位の 挙動な どに関 して,模型試
二 志
仁
洋 澄
島 口
村
石 樋
芳
授 授
授
教 教
教
査 査
査
験 結果と よい一 致を 示して いる。
第3章 で は , 受 動 抵 抗 法(Passive Resistance Method)の 名 付 け た 逆 解析 方 法 に っ いて , 原 理と解 析方法 を述 べると ともに ,送毛 トンネ ルへ の適用 例を示 してい る。この方法は,一部が 受 動状態 になっ てい る空洞 に関し て,ラ イニン グ内 のひず みや内 空変位 の観測結果を基に,地圧 を 逆解析 するも ので ,解析 領域と してラ イニン グし か必要 とせず ,また 岩盤とライニングの相互 作 用は, 受動状 態の 空洞壁 面にお いて正 確に考 慮さ れてお り,常 に安定 した解が得られるなど多 く の特徴 を有し てい る。
本 方法を 送毛 トンネ ルの事 例に応 用し ,ライ ニング 内のひ ずみ計 測値 から逆解析して得たトン ネ ル壁面 の変位 は, 測量で 得た結 果とよ い一致 を示 してい る。ま た,一 様な地圧が遠方から作用 す ると仮 定した 逆解 析によ り,作 用方向 がトン ネル 周辺に 形成さ れた楕 円形の緩み域の長軸に一 致 する一 軸的な 応力 状態が 予想さ れたが ,これ は変 状の原 因を推 測する 有カな手がかりを与えて い る。
第4章 で は , 長 壁 切 羽 の 沿 層 坑 道 を 対 象 に , 荷 重 の 比 例 増 加法 (Proportional Loading Method)と 名 付け た 破 壊 を 考慮 し う る 逆 解析 手 法 を開発 してい る。こ のため に, 地圧の 増加に 伴 う内空 変位の 水平 ・鉛直 成分の 比の推 移(現 場の 特性曲 線)が ,水平 ・鉛直地圧の比を反映し て おり, 地圧状 態を 推定す る手掛 かりと なりう るこ とを見 いだし ている 。その上で,同一問題に 対 し,垂 直・水 平地 圧が比 例的に 増加す るとき の内 空変位 の水平 ・鉛直 成分の比の推移(予測特 性 曲線 )を 弾塑性 解析で 求め, 同一 の水平 ・鉛直 地圧の 比の下 では ,2っ の特 性曲線 の形が 互い に よ く 合 い , 特 性 曲 線 か ら , 水 平 ・ 鉛直 地 圧 の 比 が推 定 し う る こと を 明 ら か にし て い る 。 太 平洋炭 鉱に おける 矩形断 面の沿 層坑 道に対 して, 長壁切 羽の接 近に 伴って生じる地圧の推定 に 本方法 を応用 し, 水平・ 鉛直地 圧の比に関する推定値が地圧の測定結果と合っていること,`ま た 坑道周 囲の破 壊の 形式と 進展状 況に関 しても ,予 測と実 際はよ く一致 していることを確認して い る。
第5章で は , 第3,第4章 で 示 した 逆 解 析 法 を応 用し, 空洞 の安定 性と支 保の効 果を 評価す る 方 法を事 例と共 に示 してい る。ラ イニン グ内の 応カ が求ま り,破 壊接近 度が評価できる受動抵抗 法 を送毛 トンネ ルに 応用し ,ライ ニング が破壊 に対 して十 分に安 全であ ることを確認している。
ま た,荷 重の比 例増 加法に よる解 析によって,.太平洋炭鉱における沿層坑道のボルト支保は,打 設 部分の 岩盤の 剛性 を約1.9倍高め ,坑 道天盤 の破壊 を抑制 する上 で効 果があると推定している が ,これ は現場 の観 察と合 致して いる。
第6章 は 結 論 で , 本 研 究 で 得 ら れ た 主 ナ ょ 結 果 に っ い て 述 べ て い る 。
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これを要するに,著者は,資源開発工学ならびに岩石力学に対して貢献するところ大なるもの が あ る 。 よ っ て 著 者 は , 博 士 (工 学) の学 位 を授 与さ れる 資格 あ るも のと 認め る。
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