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夫婦関係の質とコミュニケーション 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 行 動 科 学 ) 土 倉 玲 子

学 位 論 文 題 名 .

夫婦関係の質とコミュニケーション 学位論文内容の要旨

本論文 のテーマは「夫婦関係の質 」である。本論文の第1章で紹介されているように、これまで、夫婦

関係の 質に関して多くの研究が行 われてきた。本研究は、これ までの研究の蓄積の中で指摘されてき た2つ の 問 題 に 焦 点 を 絞 り 、 そ の そ れ ぞ れ に っ い て よ り 詳 細 な 分 析 を 試 み た も の で あ る 。

まず第1の問題は、夫婦関係の質( ないし夫婦関係への満足度 の評価)に存在している、妻 と夫との

間 のず れ の問 題で ある 。夫婦関係について妻が 感じている満足度は、夫が 感じている満足度を下回 るとい う事実が、これまで日本で行われた調査で繰り返し確認されているが、このような夫婦関係満足 度に関 する妻と夫との間のずれは 、アメリカで行われた調査で は見られていない。なぜ日本では、妻 は夫よ りも夫婦の関係により大きな不満を感じているのか、逆に言えば、なぜ夫は妻よりも夫婦の関係 に よ り 満 足 し て い る の か ー ー こ れ が 、 本 研 究 が 取 り 上 げ る 第 1の 問 題 で あ る 。

ま た、 第1の問 題 に関 して は、 上述 の 夫婦 関係 に対する満足感のずれと同 時に、もうーっのずれが

存在す ることカi、本研究の発端となった第1調査の結果から明らかにされている。すなわち、夫が妻の

活動を 実際に評価しているほどには、夫は自分のことを評価していると妻は思っていないという、実際 の評価と、相手からの評価の予想の間の「ずれ」である。この、相手に対して持っている評価が、正しく

相手に 伝わっていなぃという「評 価伝達のずれ」が、夫婦問の第2のずれとして本研究が取り上げてい

る問題 である。本研究では、第1の ずれ冖ー夫婦関係の様々な 側面において、妻と夫との評 価の間に

存在し ているずれー―を、「夫婦 聞での評価の乖離」と呼んでいる。これに対して、第2のずれーー一

方 の評 価 が他 方に 正確 に伝 わ って いな いー 一 は、 「夫 婦間 での 評 価伝達 問題」と呼ばれている。

本研究 が取り上げる第2の問題は、 夫婦間のコミュニケーショ ン行動と、夫婦関係の質ない し夫婦関

係 への 満 足感 との 関係 であ り 、特 に、 夫婦 関 係における上述の2種類の夫 婦間のずれ−―評価の乖

離と評価伝達問題―←と、夫婦間のコミュニケーション行動との関係の問題である。より端的に言えば、

夫婦聞 のずれは、夫婦間での適切 な情報伝達の不足により生み 出されているのか、それとも、それ以 外の要 因により生み出されているのかという問題である。この問題に関して、本研究では、社会的交換 理論の立場から、夫婦間の会話を中心としたコミュニケーション行動のもつ意味について検討している。

すなわち、夫婦問のコミュニケーション行動は、情報の伝達という機能だけではなく、「関心」という「心 理的資源」の交換としての機能を果たしているという観点から、コミュニケーション行動が夫婦間のずれ に対してもつ意味について検討している。

  本論 文 の中 心は 、上 述の2つ の問 題 を検 討す るた めに 学 位申 請者 が3度 にわたり実施した調査研 究 結果 の 分析 にあ る。 第1調査 は1994年に 実施 され 、札 幌 市内 の124組の 夫婦を対象にしている。

第2調 査 は 、 札 幌 市 内 を 中 心 と し た177組 の 夫 婦 を 対象 に1999年に 実施 され た。 第3調査 は 、札

幌市内 と名古屋市内を中心とした300組の夫婦を対象に実施さ れた。これらの調査の特徴は 、妻と夫

の双方 に対して同じ質問を尋ね、 同時に、相手がその質問に対 してどのように答えるかを予想させて いる点にある。この方法を用いることで、夫婦間に評価の乖離が存在していることを示すだけではなく、

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そ の乖離の大きさが如何なる要因と関連しているのかを分析することが可能となる。夫婦ペアを用いな い 従来の 研究方法では、妻の回答の平 均と夫の回答の平均の間に 差が存在することは明らかに でき る が、その差が如何なる要因と関連しているかを分析することはできなぃ。この点が、本研究のーつの 重 要な特徴である。

  3度 にわ た り実 施さ れた 質問紙調査 研究の結果は、本論文の第3章から第8章にわたって報告 され て い るが 、こ こで は、 そ こで 報告 され て いる 主要 な結 果に つ いて のみ 、そ の概 略 を紹 介す る。

◆ 夫婦関係に対する妻の満足 度は、夫の満足度を下回る。 この結果は、3つの調査で一貫して確認さ   れた。この差は、夫婦関係に対する満足度だけではなく、その他の評価項目でも見られた。一般に、

  夫に対する妻の評価の好意 度は、妻に対する夫の評価の好意度を下回っている。但し、会話時間、

  一 緒に 取る 食事 の 回数 など の客 観的 行 動に 対す る妻の回答と 夫の回答との間には差が見ら れな   い。

◆ 上述の 夫婦間での評価の乖離は、妻 の就業如何に関わらす一貫 して見られる。また、夫の収 入等   の人口学的変数も、評価の 乖離の大きさと関連をもたな い。

◆ 妻は、夫からの評価を過小 に見積もっている。これに対して、夫の場合には、妻からの評価を過小   に見積もる傾向があまり見られなぃ。妻による夫からの評価の過小見積もりは、夫婦関係に対する満 足 感 の み で は な く 、 相 手 が 自 分 に 対 し て 持 っ 好 意 度 の 見 積 も り 一 般 に 見 ら れ る 。

◆ 上述の夫婦問での評価伝達 問題に関しても、妻の就業如何に関わらす一貫して観察される。また、

夫 の 収 入 等 の 人 口 学 的 変 数 に 関 し て も 、 評 価 伝 達 問 題 の 大 き さ と 関 連 を も た な ぃ 。

◆ 会話時 間は、夫婦関係に対する妻の 満足度とは常に関係してい るが、夫の満足度とは関係し てい な い場合がある。

◆ 会話時 間は、夫婦間での評価の乖離 の大きさと関連している。 会話時間の長い夫婦ほど、夫 婦間 で の評価 の乖離が小さくなる。サンプ ル全体を会話時間の長さで 上位1/2と下位lt2とに分ける と、

上 位1/2では、評価の乖離は見 られなぃ。このことは、日 本人の夫婦に特有の評価の乖離が、実は、

会 話時間が短い夫婦に特有の 現象であることを意味してい る。

◆ 会話時 間は、夫婦間での評価伝達問 題の大きさとは関連してい なぃ。妻が夫からの評価を過 小に 見 積もる傾向は、会話時間が 長くなっても変化しない。このことは、会話時間が必ずしも夫婦問での 相 互の評価の伝達に役立って いるわけではなぃことを意味 している。

◆ 夫が家 庭に対していだく関心の大き さは、夫婦関係に対する妻 の満足度と夫の満足度の双方 と正 の 関連を もっが、夫婦問での評価の乖 離の大きさとは関係してい なぃ。この結果は、日本社会 に強 く 残 存す る性 別役 割 意識 が夫 の関 心を 家 庭に 向け させるのを阻 害し、そのために妻が夫婦関 係に 対 して不 満を感じることになるとする 、日本における夫婦間での 評価の乖離現象についての解 釈と 一 貫しなぃ結果である。

以 上が、 本論文で紹介されている主要 な知見の概要である。なお 、調査結果の報告をその内容 とす る 第3章か ら第8章にかけてが本論文の 中心であるが、それ以外の 章に関して、ここで簡単に紹 介し て おく。序論では、本研究で 取り上げる問題に関しての大まかな説明と本論文の構成についての概要 が 説明されている。その後第1章「夫婦関係の質に関する これまでの研究」では、本論文の中心的な テ ーマである夫婦関係の質を 扱ったこれまでの研究を検討 し、本研究で取り上げる2つの問題の意義 を 、既存研究の文脈の中に位 置付けている。続く第2章で は、本論文で紹介されている、学位申請者 が 実 施し た3つの 調査 研究 の具 体 的内 容に っい て の紹介が、それ ぞれの調査ごとに行われた 後、3 つ の調査で用いられた変数の うち、一貫している変数と異なっている変数に関しての説明がなされて い る 。最 後の 第9章は 総合 考察にあて られ、第3章から第8章にか けて紹介された調査結果の分 析の 意 味が検討されている。

2―

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

夫婦関係の質とコミュニケーション

  本論 文は、 夫婦関係 の質、 特に夫 婦のそ れぞれ が夫婦 関係に 対する 満足感に 見られる2種類のず れに焦 点を当 て、夫 婦関係 の主観 的評価 に夫婦 間でず れが見られる原因を、学位申請者が実施した 3つの 調査研究 の結果 を基に 考察し たもの である 。本研究で取り上げられた第1のずれは、夫婦関係 に関し て妻が感じている満足度が、夫が感じている満足度を下回るという、夫婦間での関係の質(夫 婦関係 満足度 )の評 価にお けるずれである。また、第2のずれは、夫が妻の活動を実際に評価してい るほどには、夫は自分のことを評価していると妻は思っていないという、実際の評価と、相手からの評 価の予想の間の「ずれ」である。

  本論 文の中 心は、上 述の2つ のずれ の問題 を検討 するために、学位申請者が3度にわたり実施した 調査研究結果の分析にある。これらの調査の特徴は、妻と夫の双方に対して同じ質問を尋ね、同時に、

相手がその質問に対してどのように答えるかを予想させている点にある。この方法を用いることで、夫 婦間に 評価の乖離が存在していることを示すだけではなく、その乖離の大きさが如何なる要因と関連 してい るのかを分析することが可能となる。夫婦ペアを用いなぃ従来の研究方法では、妻の回答の平 均と夫 の回答の平均の間に差が存在することは明らかにできるが、その差が如何なる要因と関連して いるかを分析することはできなぃ。この点が、本研究のーつの重要な特徴であり、以下に紹介される本 研 究 の 成 果 も 、 こ の 方 法 を 用 い る こ と で は じ め て 明 ら か に さ れ た 結 果 で あ る 。   本論 文の成 果は、ま ず第1に 、夫婦ペアデータを用いた調査を実施することで、以下に諸点を明ら かにしたことにある。

@夫婦 間の評 価の乖 離は、 夫婦関 係に対 する満 足度に 関してのみではなく、相手に対する評価一般 に見られる現象であることを明らかにした点。

◎夫婦 間に、これまで知られていた評価の乖離が存在するのみではなく、相手からの評価を低く見積 もるという評価伝達問題も存在することを明らかにした点。すなわち、妻は夫婦関係や夫に対して夫よ りも低い評価を下しがちであると同時に、夫が実際に評価しているよりも、夫は夫婦関係や自分のこと を低く評価していると過小に見積もる傾向があることを明らかにした点である。この点は、これまでの研 究 で は 指 摘 さ れ て お ら ず 、 申 請 者 が 始 め て そ の 存 在 を 明 ら か に し た 点 で あ る 。

◎夫婦 間の評価の乖離の大きさが、会話時間と密接に関連していることを明らかにした点。会話時間 が夫婦 間の評価の乖離を低下させるのは、会話時間が主として妻の満足感を上昇させるからである。

この知見は、夫婦ペアデータを用いることで始めて明らかにすることができた点であり、ペアデータを 用いた本研究の意義を明らかにしている。

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