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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 青 木 博 史

     学位論文題名

Characterization of Cytopathogenic Classical Swine Fever Virus      ( 細 胞 病 原 性 を 示 す 豚 コ レ ラ ウ イ ル ス の 性 状 解 明 )

学位論文内容の要旨

  豚コレラウイノレスはフラビウイノレス科ペスチウイノレス属の十鎖RNAウイノレスであ り、培養 細胞に病 原性(cytopathic effect:CPE)を示さず、END(The exaltationod Newcastle disease vlrus;ニューカッスル病ウイルスの増強)現象を示すとされていた。

しかし、 近年、ウ イルス株を 構成する 集団の中 にCPEを示す ウイルス が含まれ ている こと が わか っ た 。一 っ は 、subgenomic RNAを有す る不完全 干渉ウイ ルスであ り、そ れを含む ウイルス 株は、豚コ レラウイ ルスに感 受性の豚 由来培養 細胞にCPEを 示す。

も う ーっ は 、END現 象 を 示さ な いウ イ ル スで あ り、 無 血 清培 養 細胞 (FS‑L3細 胞 及 CPK‑NS細 胞 ) に 明 瞭 なCPEを 示 す 。 こ れ ら のCPEを 示 す ウ イ ル スが 培 養 細胞 や 生体に対して病原性を発揮するメカニズムは不明である。

  著 者は1982年 に日 本 国 内で 豚 コレ ラ の 症状 を 示し た イ ノシ シ から 分 離 され た 豚 コ レ ラ ウ イ ル スWB82株 の 遺 伝 子 構 造 を 明 ら か に し 、 培 養 細 胞 や 生体 に 病 原性 を 顕 す メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し た 。 さら に 、豚 コ レ ラウ イ ル ス非 構 造蛋 白 質NS2‑3 NS2NS3へ の 開 裂 と 、WB82株 及 びEND現 象 を 示 さ な い ウ イ ル ス 株 が 有 す る 細胞病原性との関係を解明した。

1. 細 胞変 性 効 果を 示 す豚 コ レ ラウ イ ルスWB82株 の性状 解明

  WB82株 は 、 試 験 に 用 い た6種 類 の 豚 腎及 び 精 巣由 来 培養 細 胞 (CPK細 胞、PK‑

15細 胞 、SK‑L細 胞 、CPK‑NS細 胞 、FS‑L3細 胞 及 ぴST細 胞 ) に 強 いCPEを 示 し た 。本 株 は 、END現 象を 示 す 非細 胞 病原 性(nCPE)ウ イ ルス (WB82/E十ウイ ルス)

と 、 そ の 約100分 の1の 量 のCPEウ イ ル ス両 方 を 含ん で いる こ と が判 明 した 。 こ WB82株 のウ イ ルス 遺 伝 子の 構 造を 解 析 した 結 果、 本 株 は、 通 常 のペ ス チウ イ ス ル に み ら れる 約12300塩 基のRNAを持 つ 完 全ウ イ ルス と 、Np か ら構 造 蛋白

CE E1及 びE2) 、p7及 びNS2ま で の4764塩 基 の 遺 伝 子 領 域 を 欠 損 し た 7600塩 基 のsubgenomic RNAを持っ不 完全ウイ ルスの両 方を含んだ ものであ っ た 。 さ ら に 、 階 段 希 釈 し たWB82株 を 感染 さ せ た細 胞 のう ち 、CPEを 示 す細 胞 か subgenomic RNAが 検出 さ れ 、CPEを 示さ な い 細胞 か ら は通常のウ イルス遺 伝子 RNAの み が 検 出 さ れ た 。 ま た 、WB82株 中 のnCPEウ イ ル ス を 他 のnCPE豚 コ レ ラ

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ウイルスに置換してもCPEがみられ、細胞病原性がsubgenomic RNAに依存して いることが判明した。以上の成績は、豚コレラウイルスWB82株がnCPE完全ウイ ルスと不完全干渉ウイルスの両方を含む細胞病原性豚コレラウイルス株であり、さ らに、その細胞病原性がsubgenomic RNAを有する不完全干渉ウイルスに依ること を示す。

2.豚コレラウイルスWB82株の豚に対する病原性とウイルス複製の解析

  不完全干渉ウイルス を含む豚コレラウイルスWB82株の豚に対する病原性を調 べる目的で感染試験をおこなったところ、本株は急性型の豚コレラの症状を引き起 こした。すなわち、感染した豚は、高熱、顕著な白血球減少及び重度な下痢などの 症状を呈し、感染後2〜3週間内に死亡した。WB82株中から単離したnCPE WB82/E

゛ウイルス(完全ウイルス)の豚に対する病原性の試験でも急性型の豚コレラの症 状が見られた。しかし、両方の結果を比較したところ、WB82株に含まれる不完全 干渉ウイルスが完全ウイルスによって引き起こされる急性症状を遅延・軽減するこ とがわかった。本株に感染した豚から得た血清及び各種臓器の材料を調べた結果、

完全ウイルスの増殖に続く不完全干渉ウイルスの複製が豚コレラの症状の遅延・軽 減に関与することがわかった。また、それらの材料に、完全ウイルスとその約100

‑1,000分の1の量の不完全干渉ウイルスが含まれることが判明した。さらに、直 腸ぬぐい液から通常の豚ニ三IレラウイルスRNAとともにsubgenomic RNAが検出さ れ、不完全干渉ウイルスが体外に排泄されていることが判明した。以上の成績は、

WB82株は致死性の豚コレラウイルス株であるが、株の中に含まれるsubgenomic RNAを有する不完全干渉ウイルスが、豚コレラウイルスの豚に対する病原性を低 減させる作用をもつことを示している。

3.非構造蛋白NS2‑3の開裂と細胞病原性の関係解明

  豚 コレ ラウ イル ス非構 造蛋 白NS2‑3のNS2とNS3への開裂と、不完全干渉 ウイ ルス を含 むWB82株及 びEND現 象を 示さ ない ウイルスが示す細胞病原性 の関係を、抗NS3モノクローン抗体を用いたウエスタンブロティング法により 解析した。その結果、WB82株は試験に用いた全ての豚由来培養細胞(FS‑L3 細 胞 、CPK‑NS細胞 、PK‑15細胞 、SK細胞及 びST細胞 )に強 いCPEを示し 、 それ らの 細胞 内にNS3蛋白 がNS2‑3蛋白よ り優 位に検出された。また、END 現象 を示 さな いウイルス株(ALD‑END一株、Ames‑END一株及ぴGPE一株)が 感染 した 細胞 では 、CPEを 示したFS‑L3細 胞及 びCPK‑NS細胞内にNS3蛋白が NS2‑3蛋白より優位に検出され、CPEを示さない他の細胞内には主に未開裂の NS2‑3蛋 白 が 検出 さ れ た 。END現 象 を 示す ウイ ルス 株(ALD株、Ames株 、 WB82/E十株、FukuShjma/80株、恥yazaH/80株、Shimane/80株、Yamagatソ80株、

Chiba/.80株及びOgatamurむ58株)では、試験に用いたいずれの細胞にもCPEを

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示さ ず 、細胞内 に未開裂のNS2‑3が優位 に検出され た。ALD株 (END現 象陽 性株 ) 及びALD‑END―株(END現象陰性株 )に感染し たFS‑L3細胞 を経時的 に解析した 結果、ALD‑ENDーウイルスのNS2‑3蛋白の開裂が進むにっれてCPE が強くなることが明らかとなった。以上の成績は、不完全干渉ウイルスを含む 豚コレラウイルス株の細胞病原性だけでなく、END現象を示さない豚コレラウ イルスがFS‑L3細胞やCPK‑NS細胞で示す細胞病原性においても非構造蛋白質 NS2‑3の NS2と NS3へ の 開 裂 が 重 要 で あ る こ と を 示 し て い る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Characterization ofC 舛OpathogemCClasSiC 甜鋤dneFeVerVirus      ( 細 胞 病 原 性 を 示 す 豚 コ レ ラ ウ イ ル ス の 性 状 解 明 )

  豚コレラウイルスは培養細胞に病原性(CPE)を示さず、END (exaltation of Newcastle disease vIrus:ニューカッスル病ウイルスの増強)現象を示す(END゛)とされていた。しかし近年、ウイル ス株を構成する集団の中に細胞病原性ウイルスが含まれることがわかってきた。すなわち、多くの 豚由来培養細胞に細胞変性効果(CPE)を示す不完全干渉ウイルスと、END現象陰性(ENDー)で、無 血清培養細胞(FS−L3細胞およびCPK−NS細胞)にCPEを示すウイルスである。これらのウイルスが 培養細胞と生体に対して病原性を発揮するメカニズムは不明である。

  著者は豚コレラの症状を示したイノシシから分離した豚コレラウイルスWB 82株の遺伝子構造を 明らかにし、培養細胞と生体に対する病原性との関係を解析した。さらに、豚コレラウイルス非構 造 蛋 白NS23の 開裂 とWB 82株 及びEND− ウイ ルス が示 す細 胞病 原性 の関 係を 解 析し た。

  多くの豚由来培養細胞で強いCPEを示すWB 82株には、通常の遺伝子(12,364塩基のRNA)を持つ 完全ウイルス粒子(END゛,non CP)と4,764塩基の遺伝子領域を欠損した7600塩基のRNAを持つ 不完全干渉粒子の両方が1001の比で含まれることが判った。階段希釈したWB 82株を感染させ た細胞のうち、CPEを示す細胞から欠損RNAが検出され、CPEを示さない細胞からは通常のウイル ス遺伝子構造をもつRNAのみが検出された。また、WB 82株中の非細胞病原性ウイルスを他の非細 胞病原性豚コレラウイルスに置換してもCPEがみられたことから、細胞に対する病原性が不完全粒 子に依ることがわかった。

  CPEを示す豚コレラウイルスWB 82株を実験感染させた豚は、典型的な急性豚コレラの症状を呈 した。しかし―方で、不完全干渉粒子は完全ウイルス粒子による急性豚コレラの症状を遅延・軽減 することもわかった。′

  ウイルス非構造蛋白NS2−3の開裂と細胞病原性の関係を解析した結果、CPEを示さないウイルス 感染細胞内にNS2―3の開裂はほとんど見られないが、WB 82株やEND―株の感染によってCPEを示 した培養細胞内にNS23の開裂産物であるNS3が優位に検出された。また、ENDウイルスのNS2―3 の開裂が進むにっれてCPEが出現することがわかった。以上の成績は、不完全干渉粒子を含む鵬82

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宏 操

夫 司

   

   

郁 孝

田 沼

島 村

喜 小

高 梅

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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株と同様に、END一株が無血清培養細胞で示 す細胞病原性においてもNS2―3蛋白のNS2とNS3 の開裂が重要であることを示す。

  本研究成果が豚コレラウイルスの病原性の分子基盤の解明に資するところが大きいので、審査量 一同は責木博史 氏が博士(獣医学)の学位を授与されるに十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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