博 士 ( 工 学 ) 角 田 芳 忠
学 位 論 文 題 名
気流模型によるストーカ式ごみ焼却炉内の ガス流動と混合に関する基礎的研究
学位論文内容の要旨
一般廃棄物(都市ごみ)の焼却処理分野では,ダイオキシン類などの微量有害物質削減 対策からごみ焼却炉燃焼室内でのガス流動・混合に関する研究の重要性が増し,燃焼室内 でのガスの挙動を定量的に把握して定性的理解や経験だけに頼ることのない合理的なごみ 焼 却炉の設 計が求められている。ごみ焼却技術は40年近い歴史を持ちながら実用的分野 に関心が集中し基礎的研究がおろそかになっていた側面があり,焼却炉の設計ばかりでな く操炉条件などの検討に対しても実炉での正確な測定が難しいことから燃焼室内でのガス 流動・混合現象を把握するための基礎的実験データが必要となっている。一方,汎用熱流 動解析ソフトウェアが主として簡便性からごみ焼却炉燃焼室内の現象解析に利用されその 適用事例が増えているが,境界条件やパラメータ値の設定など基本的な計算条件の検討が 十分に行われているとは言えない状況である。
本研究では,ごみ焼却炉燃焼室内のガス流動および混合に関して,実験手法を確立して その特性を実験的に把握し基礎的実験データを蓄積するために,コールドモデルによる可 視化実験・気体卜レ←サ法実験・模擬反応実験を実施した。さらに,蓄積した基礎的実験 デ ータを汎 用熱流動解析ソフ卜ウェアCFX‑F:3Dによる数値計算結果と比較検討し,加え てセミホットモデルによる基礎的実験とその数値解析を行なった。これら一連の実験と計 算を通して,ごみ焼却炉の設計や操炉条件の設定ならびに熱流動解析計算の実施に必要な 基礎的な知見を得た。
以下に,本論文の内容をまとめ研究の成果を整理する。
第1章では,循環型社会の構築に向けて廃棄物処理分野でごみの焼却技術が果たすぺき 役割を含めて研究の背景を述ぺ,燃焼室内のガス流動・混合に関する既往の研究を整理し たっ既往研究は,実炉における改造効果報告・模型実験研究・汎用ソフトウェアによる数 値解析の3っに大別でき,特に近年は数値シミュレーション関連の研究が多くなっている。
また、研究の概要と目的を図解を交えて述べ,本研究がガス流動・混合の特性把握,基礎 的実験データの蓄積,汎用ソフ卜ウェアの検証を行うことによって,モデル実験と数値シ ミュレーションとの相互補完によりごみ焼却炉の最適設計・最適操作のための基礎的な知 見を得ようとしていろことを示した・
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第2章では,シャボン玉を用いたコールドモデルによる可視化実験について述べた.
1/10透明アクリル製気流模型とビデオ装置により,シャボン玉を粒子状トレーサとする注 入流跡法可視化実験手法を確立し,炉形状・二次空気噴流の影響を検討した。シャボン玉 流跡を画像処理し座標化して得られた流跡データから,流跡線図・流速ベク卜ル図を作成 したー色分けした流跡線図により炉内のガス流れや混合の状況を視覚的・感覚的にとらえ ることができ,流速ベクトル図により渦領域や二次空気噴流による流れの変化を実験的に 明らかにすることができたッまた,流れの重なりにより定義した重なり度・混合指標を用 いて, 二次空 気噴流の 本数・設置位置・流量およびノーズの影響を相対的に評価した。
第3章 では , 一 酸化 窒 素(NO)と オゾ ン(03)を 使用 し て 行な っ た 気流 模 型に おける 混合と 反応に 関する実 験について述べた、気体卜レーサNOの定常分布を実験的に求め、
焼却炉の乾燥帯・燃焼帯・後燃焼帯からのガス流れが燃焼室内にどのように広がるかにつ いて評価し,炉形状・二次空気噴流などの設定条件の混合特性に与える影響を明らかにし た」さ らに,NOと03を同時に注入して実際に反応を起こさせ反応率を求めて反応面から も混合特性を検討した。混合の程度を表す指標である重なり度と反応率との間に強い相関 関係が見出され,ごみ燃焼室内での反応において混合が最も重要であることが示唆された。
気体トレーサ法実験および模擬反応実験手法の確立とともに,トレーサ濃度分布・トレー サ量分布・反応分布・反応率など数値シミュレーションの検証に有効な基礎的実験データ を蓄積した。
第4章では ,汎用熱 流動解 析ソフ卜 ウェアCFX‑F3Dを用 いて実 験と同じ 設定条件にて 数値計算を行ない,可視化実験・気体トレーサ法実験および模擬反応実験で蓄積した基礎 的実験データと比較検討した。実験値と計算値は,流速ベクトル・濃度分布・トレーサ量 分布に関すろ同軸上でのプ口ットによる直接比較と,実験値と計算値との2乗平均誤差に よる一致度指標を導入して照合した。また,数値計算では流入境界条件における乱流運動 工ネル ギーkとエネ ルギー消 散率Eに関し て,流 れの乱れ 状態が異 なる1次空気と2次空 気噴流に対して別々の設定形式を適用しその適合性を検討した。乱れ状態が小さい1次空 気にお いては 入口の乱 れが平均流の10%のときに適用されるkとEの設定式が実験値と良 好に一 致する ことを示 し,2次空気 噴流に対 してはkとEの流入境界設定式の係数値の影 響が小さいことを示して流入流速値の設定が重要であることを指摘した。さらに,計算の 収束判定に関する検討では,汎用ソフトウェアで用意されている残差表示での判断では不 十分であり,異なった繰り返し計算回数よって計算結果を比較する必要性を計算例を示し つつ述べ、加えて乱流モデル定数の検討を行なって汎用熱流動解析ソフトウェアのごみ焼 却炉への適用条件を示した。
第5章では,1/'20耐熱ガラス製気流模型と300℃加温空気によるセミホットモデル実験 手法を確立し,それに対応する汎用熱流動解析ソフトウェアによろ数値計算について述べ た。ホット条件.コールド条件の双方において,シャボン玉トレーサによる可視化実験と 気体ト レーサNOによるト レーサ法実験を行ない,流速ベクトル・卜レーサ量分布・温度 分布に関して実験値と計算値を比較した。ホット条件とコールド条件での実験と数値計算 によって,浮カと噴流との相互作用や噴流と周辺流体との密度差による影響についても考 察した。さらに,ごみ焼却炉において汎用性の高い向かい合う二次空気噴流を伴う設定条
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件では,温度条件の相違. Re数の影響がともに小さいことを計算によって確かめたュ 第6章でjよ,本論文を総括した ,
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
気流模型によるストーカ式ごみ焼却炉内の ガス流動と混合に関する基礎的研究
一 般 廃 棄 物 ( 都 市 ご み ) の 焼 却 処 理 で は , ダ イ オ キ シ ン 類 な ど の 微 量 有 害 物 質 削 減 の た め に ご み 焼 却 炉 燃 焼 室 内 で の ガ ス 流 動 ・ 混 合 に 関 す る 基 礎 的 研 究 の 重 要 性 が 増 し て い る 。 し か し 、 実 炉 の 燃 焼 室 内 で の ガ ス 流 動 ・ 混 合 現 象 を 正 確 に 測 定 す る こ と は 難 し い 。 ま た , 汎 用 熱 流 動 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア が 主 と し て 簡 便 で あ る こ と の た め に ご み 焼 却 炉 燃 焼 室 内 の 現 象 解 析 に 利 用 す る 事 例 が 増 え て い る が , 境 界 条 件 や パ ラ メ ー タ 値 の 設 定 な ど 、 基 本 的 な 計 算 条 件 の 検 討 が 十 分 に 行 わ れ て い る と は 言 え な い 状 況 で あ る 。 こ の 研 究 で は 気 流 模 型 ( コ ー ル ド モ デ ル ) を 用 い , 模 型 形 状 や 操 作 条 件 を 変 え な が ら 可 視 化 実 験 ・ 気 体 ト レ ー サ 法 実 験 ・ 模 擬 反 応 実 験 を 実 施 し 、 ご み 焼 却 炉 燃 焼 室 内 の ガ ス 流 動 お よ び 混 合 に 関 す る 基 礎 的 実 験 デ ー タ を 蓄 積 し て い る 。 さ ら に , 得 ら れ た 基 礎 的 実 験 デ ー タ を 汎 用 熱 流 動 解 析 ソ フ ト ウ ェ アCFX―F3Dに よ る 数 値 計 算 結 果 と 比 較 検 討 す る と 共 に , 加 え て セ ミ ホ ッ 卜 モ デ ル に よ る 基 礎 的 実 験 と そ の 数 値 解 析 を 行 な っ て い る 。 こ れ ら 一 連 の 実 験 と 計 算 を 通 し て , ご み 焼 却 炉 の 設 計 や 操 炉 条 件 の 設 定 な ら び に 熱 流 動 解 析 計 算 の 実 施 に 必 要 な 基 礎 的 な 知 見 を 得 て い る 。
以 下 に , 各 章 の 概 要 を ま と め る 。
第1章 で は , ス ト ー カ 式 焼 却 炉 で の ご み 燃 焼 の 特 徴 を 整 理 し た 後 , こ の 研 究 が ご み 燃 焼 後 の ガ ス 流 動 と 混 合 現 象 に 着 目 し た 基 礎 的 研 究 で あ る こ と を 述 べ て こ の 研 究 の 位 置 付 け を 明 確 に し て い る 。
第2章 で は ,1/10ス ケ ― ル 透 明 ア ク リ ル 製 気 流 模 型 と ビ デ オ 撮 影 装 置 に よ り , シ ャ ボ ン 玉 を 粒 子 状 ト レ ー サ と す る 注 入 流 跡 法 可 視 化 実 験 手 法 を 確 立 し , ス ト ー カ 上 の 異 な っ た 位 置 か ら 注 入 し た シ ヤ ボ ン 玉 の 流 跡 の 重 な り に よ り 定 義 し た 重 な り 度 ・ 混 合 指 標 を 用 い て , 炉 形 状 ・ 二 次 空 気 噴 流 の ガ ス 混 合 に 与 え る 影 響 を 検 討 し て い る 。 ま た 、 シ ャ ボ ン 玉 流 跡 デ ー タ か ら , 流 跡 線 図 ・ 流 速 ベ ク ト ル 図 を 作 成 し 、 汎 用 熱 流 動 解 析 ソ フ 卜 ウ エ ア
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壽 徹
美 勝
彦
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川 谷
藤
田 古
恒 木
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教
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助
査
査
査
査
査
主
副
副
副
副
を検証するための基礎的データを与えている。
第3 章では,同じ気流模型において、気体トレーサとして NO (一酸化窒素)を用いて 流れの広がりを測定している。分子サイズのトレーサを用いてもシャボン玉トレーサと 同じ重なり度が得られることを明らかにしている。さらに, NO と03 (オゾンガス)をス卜 ーカ上の異なった位置から同時に注入して実際に反応させ、反応率からも混合特性を検 討している。混合の程度を表す重なり度と反応率との間に強い相関関係を見出し,ごみ 燃焼室内での反応において混合が最も重要であることを明らかにしている。トレーサ濃 度分布・トレーサフラックス分布・反応時の濃度分布・反応率など数値シミュレーショ ンの検証に有効な基礎的実験データを蓄積している。
第4 章では,汎用熱流動解析ソフトウェア CFX ―F3D を用いて数値計算を行ない,可視化 実験・気体トレーサ法実験および模擬反応実験で得た基礎的実験データと比較検討して いる。乱れが小さぃ1 次空気においては入口の乱れが平均流の10% のときに適用される乱 流運動エネルギー々とエネルギー消散率E の設定式が実験値と良好に一致することを示し,
乱れの大きい 2 次空気噴流に対しては女とE の流入境界設定式の係数値の影響が小さいこ とを示し、流入流速値の設定が重要であることを指摘している。加えて乱流モデル定数 の検討を行なって汎用熱流動解析ソフトウェアのごみ焼却炉への適用条件を示している。
第5 章では,1/20 スケール耐熱ガラス製気流模型と 300 ℃加温空気によるセミホットモ デル実験を行い、混合が促進されるほどコールド条件とホット条件で流動・混合現象に 差が見られなくなること、ごみ焼却炉において一般性の高い向かい合う二次空気噴流を 伴う設定条件では,温度・レイノルズ数( Re )の影響がともに小さぃことを計算によって 確かめている。
第6 章では,本論文の内容をまとめて研究の成果を整理し,さらに今後の展望と課題 にっいて言及し本論文を総括している。
これを要するに、著者は、ごみ焼却炉内の流動・混合現象の基礎的な実験データを蓄 積すると共に、流動・混合現象から見た炉形状や噴流の吹き込みについて有益な知見を 示 し てお り 、 廃 棄 物 工 学 、 環 境 工学 の 進 歩 に 寄 与 す る ところ 大な るも のがあ る。
よって、著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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