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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 宮 本 泰 志

学 位 論 文 題 名

鉄筋 コンク リート 造柱梁 接合 部にお ける折 曲げ筋 の定着 性能

学位論文内容の要旨

  鉄筋コンクリート構造物では、外柱ー梁接合部で見られるように鉄筋の端部を他の部材 に定着させる際に、定着カが鉄筋の直線区間で確保できない場合には鉄筋端を折り曲げて 定着させることか一般的である。 鉄筋の折り曲げ角度は90度にする事が最も多く、この 折り曲げ鉄筋に作用するカは、直 線部・折り曲げ部・余長部の3区間からそれぞれに異な る伝達機構で周辺のコンクリートに伝わると予測される。しかし、各部の応力伝達機構は もとより、折り曲げ定着耐カに関しても充分に解明されていない。このために日本建築学 会鉄筋コンクリート配筋指針では、直線定着方式に適用される鉄筋の必要定着長を折り曲 げ定着部の合計長として要求し、極めて不合理な設計法を使用している。さらに、折り曲 げ位置や折り曲げ半径に関する構造規定の制限値は、直交梁を有する柱梁接合部やプレキ ヤスト部材の接合部における実構造物の配筋条件を著しく限定し、実務の設計施工側から の要求と大きくかけ離れている。折り曲げ定着が用いられる接合部は、柱と梁、大梁と小 梁、梁とスラブ、壁と壁、その他の広範囲の部位に亘る。このうち柱梁接合部は部材形状

・配筋方法・応力状態が最も多様で複雑であるため、柱梁接合部における定着機構を解明 することができれば、他の部位における理解も容易となる。またラーメン架構の終局限界 状態設計では、梁端または柱端に鉄筋降伏を期待するのでこれを確実に実現するために、

柱梁接合部のせん断破壊と定着破壊は絶対に避ける必要がある。このためにも、柱梁接合 部の折り曲げ定着機構の解明が強 く要求されている。

  これら の状況を背景にして、本研究では、鉄筋コンクリート造ラーメン架構の柱梁接合 部を対象 として、梁筋が接合部または柱内に90度で折り曲げ定着 される場合の定着性状 を実験的 に明らかにし、これに基づいて定着部の設計に必要な耐力算定式および応力変形 関係を導 くことを目的とした。まず、既往の研究と筆者らの外柱梁交差部の研究から、定 着破壊に は複数の破壊形式があること、従来の定着耐力算定式はこれらの破壊形式を混在 したまま で扱っていることを明らかにした。続いて破壊形式を側方割裂破壊型・局部圧縮 破壊型・掻き出し破壊型の3種に分類し、柱梁接合部の模型実験に基づし丶てそれぞれの定 着耐力推 定式を提案した。特に、掻き出し破壊型は、これまでに分類されていなかった定 着破壊形 式で著者らが新しく命名したものであり、破壊性状に及ぼす各種の影響要因につ いて総合 的な模型実験を行った。さらに掻き出し定着破壊に関しては、無負荷状態から最 大耐力後 の大変形に至るまでの鉄筋力一抜け出し関係を数値モデル化して、この種の定着 破壊を伴 う架構の弾塑性応力・変形解析を行えるようにした。

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  本論文は 全6章より構成されている。

  第1章は緒諭であり、鉄筋コンクリー ト造建築物の柱梁接合部における折り曲げ定着に 関する既往 の研究を概説してその問題点を指摘した後、本研究の目的と研究の範囲を明ら かにした。

  第2章では、定着破壊形式を次ぎの3種に分類できることを示した 。すなわち、側方割 裂定着破壊 形式は、梁筋の側方被り厚が薄い場合に折り曲げ部の支圧カによってコンクリ ートが皿状 に割裂剥離するもので、梁外側筋に生じる単独の破壊である。局部圧縮定着破 壊形式は、 折り曲げ半径が小さい場合に折つ曲げ部に内接するコンクリートが局部圧懐す るもので、 梁内側筋にも単独に生じる。掻き出し定着破壊形式は、直線定着長が短く多列 配筋された 場合に、折り曲げ部から発生する台形状の破壊面に沿う滑り破壊が生じ、全鉄 筋が同時に 耐カを失うものである。それぞれの破壊形式について縮小模型実験を計画し、

合計67体の 柱梁接合部試験体を製作して加力実験を行った。これより各破壊形式毎の定着 耐カと変形 性能に及ばす影響要因を明確にした。

  第3章では、 まず実験結果から直線定着部の付着カを分離抽出して、その耐力算定式を 導いた。次ぎに、局部圧縮破壊型定着耐カを折り曲げ半径とコンクリート強度との関係で 表し、上記の直線部定着カとの合計カとして定着耐力算定式を提案した。また、側方割裂 破壊型については、柱軸カおよび2段配筋による耐カヘの影響係数を求めて、既往の定着 耐 力 算 定 式 に 修 正 を 施 し て 広 範 に 適 用 で き る 推 定 式 を 提 案 し た 。   第4章では、掻き出し破壊型 の定着破壊機構について検討した。多列に配筋された折り 曲 げ鉄筋によって囲まれるコンクリ―トブロックが梁の圧 縮域を中心とする回転変形を生 じ 、これに伴うコンクリートブロック境界面の滑り破壊に よって最大耐カが決定すること を 特定した。また、最大耐カはコンクリート負担カと帯筋 負担カとの和で表わされる事を 明 らかにした。この破壊機構に基づき、コンクリート強度 、水平定着投影長、接合部有効 幅 、帯筋比、柱軸力比、折り曲げ方向、その他の形状・材 料・応力条件を影響要因として 考 慮した精度良い定着耐力算定式を提案した。

  第5章では、掻き出し定着破 壊に伴う梁筋の応力変形関係のモデル化を試みた。鉄筋の 梁 端部における引き抜きカと抜け出し量(柱せいの中央部に対する相対変位)との関係は、

最 大 耐カ まで をTri−linearで表現し、最 大耐力以降は耐力低下域と耐力安定域との2直 線 で表すことによって、弾性変形から塑性変形に至る全域 をPolyーlinearモデルに置換し た 。提案した数値モデルは、実験結果に概ね良く適合する 事を示し、このモデルを用いて 柱 梁 ラ ー メ ン 架 構 の 荷 重 変 形 の 推 移 を 精 度 良 く 推 定 す る こ と を 可 能 に し た 。   第6章は総括であり、本研究 で得られた結果を要約して述べると共に、残された課題に つ いて言及している。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査    教 授    城    攻 副 査    教 授    石 山 祐 二 副 査    教 授    井 野    智 副 査    教 授    角 田 輿史 雄

学 位 論 文 題 名

鉄筋コンクリート造柱梁接合部における折曲げ筋の定着性能

  鉄筋コンクルート構造物では、鉄筋の端部を他の部材との接合部に定着させる際に、定 着カ が鉄筋の直線区間で確保できない場合には鉄筋端を折曲げて定着させることか一般的 であ り、鉄 筋の折曲 げ角度 は90度にす る事が 最も多い 。しかし、折曲げ定着部の応力伝 達機 構や定着耐カに関しては未解明な事項が多く、折曲げ位置や折曲げ半径に関する構造 規定 の制限値に従って設計するのが通常である。折曲げ定着は、柱と梁、大梁と小梁、梁 とス ラブ、その他の広範囲の部位で使用される。このうち柱梁接合部は部材形状・配筋方 法・ 応力状態が最も多様で複雑であるばかりでなく、近年、建築物の高層化や材料の高強 度化 に伴って部材断面の応力度が上昇する傾向にあり、柱梁接合部の設計条件が厳しくな って きている。これらは1995年の阪神・淡路大震災でも接合部被害が報告されていること から も明らかである。またラーメン架構の終局限界状態設計では、梁端または柱端に鉄筋 降伏を期待するのでこれを確実に実現するために、、柱梁接合部のせん断破壊と定着破壊は 絶対 に避ける必要がある。このためにも、柱梁接合部の折曲げ定着機構の解明が強く要求 されている。

  これらの状況を背景にして、本研究では、鉄筋コンクリート造ラーメン架構の柱梁接合 部を 対象と して、梁 筋が接 合部また は柱内に90度で折 曲げ定着される場合の定着性状を 実験 的に明らかにし、これに基づいて定着部の設計に必要な耐力算定式および応力変形関 係 を 導く こ と を目 的 と し てい る も ので 、 本 研究 の 成 果は 以 下 のよ う に 要約 さ れる。

  まず、既往の研究と筆者らの外柱梁交差部の研究から、折曲げ筋の定着破壊には複数の 破壊形式があること、従来の定着耐力算定式はlこれらの破壊形式を混在したままで扱って いる ことを明らかにした。これらの定着破壊形式は、梁筋の側方被り厚が薄い場合にコン クリ ートが皿状に剥離する側方割裂定着破壊形式、折り曲げ半径が小さい場合に折曲げ筋 の内 接部が圧懐する局部圧縮定着破壊形式、直線定着長が短く多列配筋された場合に折曲 げ部の内側コンクリートが塊状のままで抜け出てくる掻き出し定着破壊形式の3種である。

特に 、掻き出し定着破壊形式は、これまでに分類されていなかった破壊形式で著者が新し く命名したものである。

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  次に、そ れぞれの破壊形式について総合的な縮小模型実験を計画し、合計67体の柱梁接 合部試験体 を製作して加力実験を行い、各破壊形式毎の定着耐カと変形性能に及ぼす影響 要因を明確 にした。すなわち、側方割裂破壊型については、既往の定着耐力算定式に柱軸 カおよび2段配筋の影響を付加した修正 算定式を提案した。局部圧縮破壊型については、

定着耐カを 折り曲げ半径とコンクリート強度との関係で表し、直線部定着カとの合計カと して定着耐 力算定式を提案した。

  また、、新しく分類した掻き出し定着破壊形式についてfよ詳細な検討を行い、その定着破 壊機構とこれ に及ぼす影響要因を明確にした。すなわち、多列に配筋された定着筋の周辺 コンクリート が折曲げ側に中心を持つ回転変形を生じ、これに伴うコンクリートブ口ック 境界面の滑り 破壊によって最大耐カが決定することを特定した。この破壊機構に基づき、

最大耐カはコ ンクリート負担カと帯筋負担カとの和で表わされる事を明らかにして、コン クリート強度、、水平定着投影長、接合部有効幅、帯筋比、柱軸力比、折り曲げ方向、その 他の形状・材 料・応力条件を考慮した精度の高い定着耐力算定式を提案した。更に、掻き 出し定着破壊 に伴う梁筋の応力変形関係のモデル化を行った。鉄筋の梁端部における引き 抜きカと抜け 出し量との関係を、弾性変形から塑性変形に至る全域についてPolyーlinear モデルに置換 した。提案した数値モデルは、実験結果に良く適合する事を示し、このモデ ルを用いて柱 梁ラーメン架構の荷重変形の推移を精度良く推定するこ とを可能にした。

  これを要するに 、著者は、鉄筋コンクリート造柱梁接合部に折曲げ定着される梁筋の定 着性能について詳 細な実験的検討を行い、その破壊機構を解明すると共に精度の高い耐力 算定法および応力 変形関係の数値モデル化の提案を行ったもので、鉄筋コンクリート構造 物の設計に対して 有益な知見を得ており、建築構造学および構造工学の進歩に貢献すると ころ大なるものが ある。

  よって著者は、 北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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